野蛮人のように
(1986年東映)
監督 川島透 出演 薬師丸ひろ子 |
薬師丸ひろ子と言えば、一番思い出すのが「野生の証明」。「おと〜うさん」と叫びながら線路の上を走っている姿が印象に残っているのですが、この時代になると、彼女も大人びて、成熟したラブロマンス映画にもはまる女優になっています。彼女の相手役は柴田恭兵。この頃の姿を見ると、どうしても「あぶない刑事」のユージを連想してしまうのだが、今回の役どころは、やくざの世界を生きる一匹狼の男ってところでしょうか。今回この映画を採り上げたのも実は、この人が出ているので書き込んだしだいです。この二人が、偶然巡りあい、そして危険な逃避行を始めるわけですが、中盤早くも柴田演ずる中井が撃たれ、薬師丸演じる小説家のタマコが彼を自分の住んでいるコテージへ連れ込む辺りから一体どんな展開になるのだろうと少し期待してみていたのですが、確かに考えてみると、この当時の作品って、今ほどカットの切り替わりも早くないし、その分、1つ1つのシーンが丁寧にきれいに描かれている。スローモーションも多用し、そんな場面の連続が言わば腕の見せ所でもあったような気がします。この映画の中でもっとも印象に残ったシーンは、中井を追いかけて来たやくざ達がタマコのコテージを取り囲み銃撃を始めてくる夜のシーン。銃撃戦と言えど、そんなに派手なものではなく、どこか非現実的で、不思議な空間。あんなに真夜中にやくざに踏み込まれたら、たとえ花火を打ち上げて応戦したところであっという間に殺されてしまうのがおちだと思うのですが、銃撃戦の最中、窓際で拳銃を向けていた二人が、場所を入れ替わる途中で手をつなぎ、まるでダンスでも踊るかのように部屋の中をぐるっと回っている場面が、とても良かった。
どうやらこのストーリーは話の筋立てよりも、その不思議な空間と瞬間を楽しむ映画のようです。ハードボイルドな二人の魅力が一番の見所でしょうか。
小説家のタマコは、最近スランプ気味。ある日、彼女は街でひょんなことから一人の男と巡りあう。男は、中井と言う名で、やくざ達に追われていた。タマコは、中井のことを毛嫌いながらも、彼と共に逃避行を始める。そしてタマコは、いつしか中井のことを「野蛮人」と呼ぶようになっていた・・・。
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