「エアウルフ ニュー・センチュリー 〜新世紀の狼〜」第二章 その2

 

第二章 『新たなる担い手』

<第20特殊作戦飛行隊>

 翌日の正午、二人はフロリダ州ハルバートフィールド空軍基地のゲートに空港で借りたレンタカーで乗り付けた。
 既にマークから連絡が来ていたらしく、ゲートをすんなりと通って警備員に教えられた道を通って第16特殊作戦航空団の司令部に向かった。

モンタナ・シルフィールド大佐「カンパニー(CIAの俗称)は何時もこうだ。パイロットを貸せだ、ヘリを貸せだ・・・・ブツブツ」
 執務室で二人を出迎えた第16特殊作戦航空団所属第20特殊作戦飛行隊司令官、モンタナ・シルフィールド大佐は見るからに不機嫌な様子で開口一番に愚痴を言い始めた。
ジョン「大佐、我々は貴官の愚痴を聞きに着たのではない。空軍士官学校校長のマーク・リーバース少将からの正式な紹介でパイロットを探しに着たんだ」
モンタナ「ふん・・・パイロット泥棒め」
ストリング「おいおい、俺達の名前は泥棒じゃない。俺はストリング・フェロー・ホーク。こっちはセント・ジョン・ホークだ」
モンタナ「セント・ジョンにストリング・フェロー・・・・どこかで聴いたような・・・」
 モンタナは二人の名前を聞いて考え込むように愛用の椅子に座り、執務机の引き出しから取り出した棒付きキャンディーを咥えながら少し考えた。
モンタナ「思い出したぞ! 73年のハノイの酒場だ。こっちがいい気分で酒を飲んでたらそっちが『空軍は固定翼だけに乗れ』ってバカにして・・・」
ジョン「俺も思い出したぞ。そっちも『陸軍は地面に張り付いていろ』なんて言うから乱闘になったんだったな」
モンタナ「あの右ストレートは効いたぞ」
ストリング「そっちの左フックだって効いたぞ」
3人「・・・・・・ふふ・・ふはははは!!」
 今までの険悪な雰囲気は消え、部屋には和んだ空気が流れる。
モンタナ「大騒ぎはMPどもが来てお終い、3人とも営倉に放り込まれて一晩中罵りあったもんだ」
ストリング「ところがどっこい、3人とも翌日は作戦があって朝には釈放だ」
ジョン「たんこぶと二日酔いで頭が痛むのに作戦で一緒に飛ぶことになった空軍のヘリのパイロットが・・・」
モンタナ「俺だった」
 自分を指差しながらモンタナは楽しそうに笑みを浮かべた。
モンタナ「誰がこんな連中と飛ぶかと思っていたがな。いざ飛んでみるとお前さん達の操縦には恐れ入ったもんだぁ」
ジョン「あんたの操縦技術だって凄いもんだぞ」
ストリング「ああ、それに度胸もあった。べトコンどもがバカスカ撃ちまくってくる中を躊躇わずに着陸して取り残された兵士を助けるなんて早々出来るもんじゃないからな」
モンタナ「お前さん達も度胸があった。待てよ、確か・・・ジョン、お前さんがベトナムで行方不明になったって噂を聞いたが?」
ジョン「あの戦争の終わり頃に捕まってね。しばらく、あっちの別荘に居たんだ」
モンタナ「・・・・・・・あの戦争が終わった後、俺が所属していた第1SOW(特殊作戦飛行隊)はベトナム領海ギリギリまで強襲揚陸艦で近づいて何度もベトナムのレーダーを掻い潜って捕虜を探しに行った。だが、何時も目星を付けていた場所は空だった」
 場に重い空気が流れ、沈黙が訪れる。
 その沈黙を破ったのはストリングだった。
ストリング「そう言えば・・・俺の記憶じゃあ、あんたは何時もタバコを咥えてたへヴィースモーカーだったはずだがタバコは辞めたのか?」
モンタナ「娘がタバコ臭いって言うもんだからな。タバコの代わりにキャンディーを舐めるようになったって訳さ。まあ、今度はキャンディー中毒になったがな」
ジョン「娘さんが居るとは初耳だな」
モンタナ「戦争が終わって帰国した後に結婚してな、15年前は可愛い双子だったんだが今じゃ美人の双子だ」
 モンタナは二人にデスクに立てられた写真を見せた。
 写真にはフロリダの大学の校舎の前でモンタナが年齢18歳ぐらいのブラウンヘアーの双子の女性と一緒に写っていた。
モンタナ「アヤとユキだ。去年、大学に入学した・・・16年前に女房が事故で死んでから男手一つで育てたんだ。二人に食わせる為に料理も覚えた・・・驚くな、実はお菓子作りの腕はヘリを飛ばすのと同じぐらい上手くなったんだ」
ジョン「・・・俺にも息子が居る。今じゃ29で10年前に空軍士官学校に入って最近になってからNASAに移ったんだ。驚く事に俺の息子は宇宙飛行士の候補生なんだ」
モンタナ「10年前に入学・・・という事はあいつの同期だな」
ストリング「あいつ? 誰の事だ?」
モンタナ「お前さん達、パイロットを探しに来たんだろう? 俺の部下をどんなヘリに乗せるつもりだ?」
ジョン「何でヘリだって分かる? 俺達は一度もヘリに乗せるとは言ってないんだぞ?」
モンタナ「いいか、我が第20特殊作戦飛行隊はヘリ専門の部隊だ。まあ、支援機にコンバットタロン(MC−130。C−130輸送機のの特殊作戦部隊支援仕様)を使ってるがほとんどがヘリパイロットだ。」
ストリング「こりゃぁ・・・話すしかないな?」
ジョン「俺が話す。実はな・・・」

モンタナ「噂は聞いた事がある。よくある都市伝説の一つだと思っていたが・・・まさか、超音速ヘリが実在したとはな」
 二人からエアウルフの事を聞かされたモンタナは未だに信じられないといった表情だった。
ジョン「俺達二人はもう歳だ。エアウルフを飛ばしたら四十肩で肩が使い物にならん」
モンタナ「歳か・・・俺ももう直ぐ退役だ。とりあえず、俺の部下で一番腕のいい奴を貸そう。あいつならそのエアウルフを操縦できるはずだ」
ストリング「そのパイロットの名前は?」
モンタナ「コールサインは『ハートブレイク・ツー』・・・本名はインディアナ・カタヤイネン、階級は中尉だ。そろそろ訓練飛行から戻ってくるはずだからここに呼ぼう」

<空軍中尉>

 コンコン・・・・誰かがモンタナの執務室のドアをノックした。
モンタナ「入れ」
パイロット「カタヤイネン中尉、出頭しました」
 許可が出てフライトスーツ姿で左手にヘルメットを持った黒髪黒い瞳で長身のパイロットが部屋に入ってきた。
モンタナ「おいおい、着替えぐらいしてきたらどうだ?」
カタヤイネン「ボスの来いは直ぐに来いって命令ですからペイブ・ローを止めたら直ぐに来たんですよ」
モンタナ「まあいい、楽にしろ。お前に紹介したい人物がいる。そこにいるミスター・ジョンとミスター・ストリングだ」
 楽な姿勢をとったカタヤイネンはチラッと椅子に腰掛けた二人を見た。
モンタナ「お二人はカンパニーからパイロットを探しに来てるんだ。とびっきり腕のいい奴をな・・・中尉、貴官はしばらく特別任務についてもらう」
カタヤイネン「どのような特別任務でありますか?」
モンタナ「極秘だ。後でミスター・ジョンから説明を受けろ。俺から言えるのは今まで乗った事の無い最高のヘリに乗れると言うだけだ」
カタヤイネン「・・・失礼ですがそのヘリは自分に操縦できる機体なんでしょうか?」
 カタヤイネン中尉は疑うような視線をジョンたちに向けた。
ストリング「操縦できるかはお前さんの腕次第だ」
ジョン「自信が無ければ拒否しても構わないが・・・どうする?」
 ジョンとストリングの挑戦にカタヤイネンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
カタヤイネン「そこまで言われて拒否するなんて第20特殊飛行の名折れってもんですよ。大佐、インディアナ・カタヤイネン中尉はこれより特別任務に就きます」
 ビシッと敬礼して答えるカタヤイネンにモンタナも敬礼した。
モンタナ「うむ、ムリはするなよ。支援要員としてバリーを貴官に随伴させる。あいつももう直ぐ退役だから特殊任務手当てを与えておいた方がいいからな」
カタヤイネン「バリーも来るのなら心強いってもんですよ」
モンタナ「1時間で荷物を纏めろ」
カタヤイネン「了解しました、ボス」
 腕を下ろすと踵を返し、カタヤイネンは執務室を出て行った。
 ドアが閉まると同時にジョンが口を開いた。
ジョン「いい目をしてる男だ・・・任せても問題は無いだろう」
ストリング「問題無しだな。ところでバリーってのは何者だ?」
モンタナ「バリー・ライバック最上級曹長。うちの隊専属の整備兵で空軍で使用された機種のほとんどを整備した事があるベテランだ。エアウルフは10年近く飛んでいないそうだから飛ばすには整備が必要だろう?」
ストリング「確かに俺たちじゃ簡単なメンテナンスが限界だからな・・・それで信頼できる男か?」
モンタナ「ベトナムの頃から隊のヘリの整備を任せられてきた口の堅い男だ」
ジョン「じゃあ、後はエアウルフだけだな」

 アメリカ西部の砂漠地帯・・・ストリングが運転する年季の入ったジープは悪路を走り続けていた。
ストリング「もう直ぐ付くぞ。ここは神の谷と言われてる場所でこの通り、景色がいいだろう」
カタヤイネン「景色のいい辺鄙な所って事か? ミスター・ストリング」
 ストリングの声に後部座席に腰掛けた中尉が景色を眺めながら答えた。
ストリング「ミスターはよしてくれ。ストリングでいい」
ジョン「俺もミスターと呼ばれるのは歳を取ったみたいだから遠慮する。ジョンだ」
カタヤイネン「インディと呼んでくれ。バリー、起きろよ」
 インディに小突かれて隣の席に座っていた中年のバリーは目を覚ました。
バリー「ふわぁ? 中尉、もう着いたんで?」
インディ「もう直ぐだ」
 後席の二人は空軍の制服ではなく私服姿だ。
ジョン「ところで実戦経験はどれくらいある?」
インディ「コソボとイラク、コソボじゃえらい目にあった」
バリー「機体を穴だらけにして整備班を泣かせてくれたんですよ」
ジョン「穴だらけだって?」
インディ「SEAL(海軍特殊部隊)の連中が虐殺を指示したハドビッチとかベドビビッチとか言うセルビア軍の将軍をとっ捕まえるんで支援で飛んだんですよ。
 将軍を捕まえるまでは問題なく進んだんですけど、撤退する時に殿を勤めるチームが敵に囲まれて孤立したんで俺のチームが救出に行ったんですがセルビア軍の連中が撃ちまくってきて機体は穴だらけさ」
バリー「帰ってきた中尉のペイブ・ロー(MH−53M)の有様と言ったら・・・正真正銘の蜂の巣でしたよ。
 エンジンは3基の内2基が停止してコックピットのキャノピーは銃撃で無くなってるは機体の側面にはRPG(対戦車ロケット弾)の不発弾が突き刺さってるは57mm砲弾が貫通したでかい穴があるは・・・
 乗ってる連中も酷い有様でコパイ(副操縦士)は肩にカラニコフの弾を食らって意識を失ってるし、機関士とミニガン担当の作業員2名は防弾チョッキに何発も食らって肋骨が折れてるは乗せたSEALも無傷なのは居ないほどでこの中尉も左の太股に弾を食らってたんですから」
ストリング「よく帰還できたな」
 振り返ったストリングにインディは余り嬉しくなさそうな顔を見せた。
インディ「苗字のおかげでね」
ストリング「苗字のおかげか? カタヤイネンってのはよほど縁起のいい苗字なんだな」
インディ「反対さ。第2次大戦でフィンランド空軍にニルス・カタヤイネンってパイロットが居たんだが・・・」
ジョン「分かったぞ。そいつ、墜落死したんだな」
インディ「外れ。エースパイロットだったんだが出撃する度に機体を壊すんで『ついてないカタヤイネン』なんて呼ばれてたんだ」
ストリング「えらい奴と同じ苗字だったんだな・・・・!?」
 それまで快調にジープを走らせていたストリングが突然急ブレーキをかけた。
ジョン「おい、急ブレーキなんて危ないじゃないか」
ストリング「・・・・・・あれ、見ろよ」
 ストリングが前方を指差す。その先には幾つものコンテナハウスとキャンピングカーで構成された集落があった。
ジョン「いつの間にあんなのが・・・」
インディ「景色がいいからキャンプ場でも出来たんじゃないのか?」
ジョン「バカな事を言うな、ここは景色はいいが住むには不向きな場所だ。ストリング、先に行ってくれ。俺はあそこを見てくる」
 ジョンを降ろすとジープは再び走り出した。

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