<ホーク兄弟>
東南アジアでのエアウルフの活躍から約一ヶ月前・・・
美しき山々に囲まれた湖・・・
その湖の丁度真ん中辺りに一隻のFPR製ボートが浮いていた。
強化プラスチッックの船体に船外機と電動船外機を搭載したそのボートには二人の男が釣りをしている。
年上の男「クソ、また餌を食い逃げされた」
年上らしい男が釣竿をあげると見事に釣針からは餌が消えていた。
年下の男「ここの魚は利口だからな。餌の食い逃げの連続なんか何時もの事さ」
年下の男も釣竿を上げると釣針には餌が無かった。
年下の男「兄貴、ここのは簡単には釣れないが釣れればでかいんだ。所でリーはどうしてる?」
年上の男「2年前に空軍からNASAに移ったのは話しただろう? この前、新しい宇宙船の乗組員に選定されたそうだ」
弟らしい年下の男の問いにそう答えて年上の男は缶ビールを飲み干した。
年下の男「あのリー坊やが今じゃ宇宙飛行士とはね・・・」
年上の男「ストリング、時間が経つのってのは早いもんだな。リーも立派な大人になって俺も歳を感じるようになったよ」
この二人・・・・皆さんはお気づきだろうか?
そう、かつてエアウルフを操縦したストリング=フェロー・ホークとセント=ジョン・ホークの二人だ。
ストリング「歳・・・か。ウルフで飛んでた頃が懐かしいよ」
ジョン「今はもう、あいつに乗るのは無理だな。この前、久しぶりにヘリで派手に飛んだら翌日は腕が肩より上に上がらなかった・・・四十肩だ」
ジョンの悲しげな声にストリングは話しかけれなかった。
ジョン「最後にウルフに乗ったのは・・・そう、湾岸戦争の直前だったな。もう、10年以上もアイツは飛んでいないんだな・・・」
ジョンはエアウルフが今も眠り続けている神の谷の方角に視線を向ける。
それに気が付き、ストリングも同じ方向に顔を向けた。
その方向を見ていれば今でも秘密基地の中で静かに佇み続けるエアウルフが見えるかのように思えた。
二人はしばらくの間、無言でいた。
静寂を破ったのは低い高度で飛んできた白いベル・ジェットレンジャーヘリだった。
ストリング「あのヘリ、どっかで見た事あるような・・・・・」
ジェットレンジャーは二人の乗るボートの真上を飛び、湖畔のストリングの山荘の側の桟橋兼ヘリポートに着陸した。
ジョン「珍しいものだ。久しぶりのCIAからのお客さんとはな」
ストリングは答える事無く船外機を始動させてボートは音を立てて山荘へと進みだす。
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