The appeal of the KNIGHT RIDER

(2016/3/23 加筆・修正)

 

 

APPEAL

『ナイトライダー』は、1982年から1986年まで、4期に渡ってアメリカで放送されていた人気テレビ映画です。日本では、1984年12月16日に「日曜洋画劇場」で初放映され、私自身は、その2年後に放送された「ナイトライダー6」で、この作品を知ることになりました。その翌年の1987年、いよいよ日本でもテレビシリーズがスタートしました。なんと言ってもこの作品の最大の魅力は、「K.I.T.T.」と呼ばれるコンピュータを搭載したスーパーカー、ナイト2000が登場することです。

紫色の砂漠を疾走する黒い車。見たこともないデザインのその車は、ボンネットの前に赤いセンサーを光らせ、ダッシュ・ボードには、たくさんのメーターやゲージ、ボタンがあり、ハンドルも見た事のない形をしている。まるで宇宙船のコクピットのようである。そして当時では、まだ珍しかったデジタル数字のスピードメーターもついていた。この作品が放映されていた当時の日本の車と言えば、まだ丸みを帯びたデザインの車は、ほとんどなく、ボタンを押して自動開閉する窓もなければ、オートマティック車と言う概念もまだまだ定着していなかった時代だった。だからこそナイト2000は、その時はるかに輝いて見えたのです。

一度聞けば耳に焼き付いて離れることのないテーマ曲も、この作品の魅力です。劇中も、そのテーマの色んなアレンジバージョンが流れ、ナイト2000のカッコ良さを演出しています。そのどれもカッコ良く、思わず口ずさんでしまいます。そのテーマと共に繰り広げられる数々の壮大なカーチェイスと物語。日本のテレビドラマでは、考えられないほどのスケール感。それを毎週目の当たりにできたのだからなんて良い時代に生まれたのだろうと、我ながら嬉しく思う。当時の俳優やスタッフのパワーの凄さと勢いには、敬服するばかりだ。今の日本のテレビ関係者にこんな真似がはたしてできるだろうか?1クールでへたばる今の日本のドラマなんかより、断然夢や希望が満ち溢れているこの作品は、きっと時代を超えて、お茶の間を楽しませてくれることでしょう。

自分の意思で自由自在に走行し、障害物があれば、ジャンプをし、ウィリー走行で狭い道を潜り、スキャナーでありとあらゆるものを判断し、時には、敵に妨害を加えたりもできる。K.I.T.T.と呼ばれるコンピュータは、人間と同じように意志や感情を持ち、自由に喋ることができる。まさに未来の車の理想型。この車の性能を上回る車は、現実でも映画の中でもまだ出てこない。

その昔、21世紀の未来には、車は、必ず宙を浮き、空を走っているものだと信じ込んでいた。しかし、現実2010年代を迎えた今になっても車は、今までのようにタイヤを履いて、地面の上を走っている。自動走行をする車は、海外や日本でも開発中で、そろそろ実現化されそうですが、公道を出て走れるようになるまでには、まだ様々な問題があります。20年前には、一般に誰も知られていなかったインターネットと言う概念でさえ、今となっては、常識になっている現実を見れば、この先10年のうちに何が起きてもおかしくはない。また新たなコンピュータの概念が生まれて、車も新しい進化を遂げる日が必ず訪れるでしょう。

映画の世界では「ナイトライダー」の後を追って、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン、「処刑ライダー」の黒いカスタムターボ、「ブラックライダー」の長方形型のユニークな車、「バットマン」のバット・モービルなど様々な車が登場しているが、いずれもドライバーは欠かせない。「007」シリーズには、ピアーズ・ブロズナン演じる五代目ボンドになってからBMW750iLと言う車がリモコン操作で自動走行していた。「ダイ・アナザー・デイ」では、ボンドの乗るアストンマーチン・ヴァンキッシュがアイスバーンの上を華麗に疾走していた。ボディに詰めこまれていたミサイルで、敵の車を狙い打ち、ボディが逆さまに倒れた状態からカッコ良くひっくり返したり、ラストでは、ナイト2000を意識させるような大ジャンプを見せてくれた。しかし、ナイト2000ほど性能に満ち足りた車の存在は、皆無に等しいのである。

 

MICHAEL KNIGHT

このテレビムービーのもう一つの魅力、それはナイト2000を操る正義感溢れる主人公・マイケル・ナイトの存在です。マイケル・ナイトの誕生は、刑事のマイケル・ロングが犯罪組織を追跡中に犯人の女に顔を撃たれてしまい、ナイト財団の総帥ウィルトン・ナイトに命を救われた事から始まります。

マイケルは、整形手術により顔を変え、身分も彼の養子に変えられます。そして、ウィルトン・ナイトが開発したドリームーカー、ナイト2000が彼に与えられるのです。ウィルトンは、年老いた自分の代わりに巨大な悪と戦って欲しいとマイケルに夢を託し、その遺言を残してこの世を去ります・・・このシーンこそ、彼がマイケル・ロングからマイケル・ナイトに生まれ変わった瞬間。彼は、ナイト2000と呼ばれる最新鋭の装備を身に付けたドリームカーを操り、自分の命を狙った巨大な犯罪組織に一人で立ち向かっていくのです。その勇ましさは、現代ならなおさら魅力的に見えるでしょう。

 

シリーズで見る「ナイトライダー」の魅力

「ナイトライダー」は、全4シリーズ計84話放送されましたが、その魅力は、シリーズごとにも読み取れます。第1シリーズは、パイロット版で見せた「ナイト2000」の性能の凄さを見せつけると共に、エピソードごとに過激なカーチェイスと、マイケルの捨て身の超アクションが展開します。それと同時に描かれる犯罪も凶悪かつ卑劣なもので、当時の時代性を伴ったハードなタッチで描かれているのが特徴です。アメリカで初レギュラー枠(一時間枠)で放送されたエピソード、「ナイトライダー6前半・重戦車砲撃網大突破!」を見るだけで、このドラマがどれほどパワフルであるかは、一目瞭然で感じとれます。砲弾を撃ち続ける戦車や装甲車がたくさんいる演習場に臆することもなく突進していくナイト2000。砲弾の爆撃をもろに受けながらも、疾走する勇姿には、度肝を抜かされました。

アメリカでは、第3話に当たる第20回「荒野の大戦争!地獄の暴走族スコーピオンズ対ナイト2000」では、バイク集団とナイト2000が真っ向から対立。そこで展開されるカー/バイクチェイスも壮烈であり、またここでナイト2000は、とてつもない池越えのターボジャンプを披露してくれます。第4話、Slammin' Sammy's Stunt Show Spectacular(日本未放映)では、マイケルがスタントマンになり、ナイト2000と共にスタントショーに参加するユニークかつアクション豊富なエピソードが展開されます。第2シリーズの冒頭では、マイケルの宿敵とも言うべき男、ガース・ナイトが登場し、マイケルと骨肉の争いを繰り広げる事になります。このシリーズではストーリーも重きに起き、時にアドベンチャーテイストであり、時にファンタスティックでもありと、バラエティ豊富な魅力のあるエピソードが存在します。また、登場人物にまつわる様々な人間達が登場し、マイケル達の人間模様がより深く描かれているのも特徴の一つです。そして、ナイト2000の機能が前シリーズよりもさらに進化していく場面も見ることができます。

 

SINCE THEN 34year

パイロット版の放送から今年(2016年時点)で34年を迎え、ここ十数年、日本では、様々な関連商品が発売されてきました。一昨年には、日本未放映エピソードや地上波放送でカットされた部分にオリジナルキャストによる吹替えを完全収録した日本のファン待望のブルーレイBOXが発売されました。このテレビムービーが未だに色褪せない魅力を放ち続けている理由の一つには、その当時から未来に訪れるであろう、コンピュータ社会をいち早く予見し、テーマにふんだんに取り入れているところにあると思います。

現在こうしてコンピュータは、見事な進化を遂げ、社会や経済の中心となり、インターネットでこのようにHPなどを閲覧できたり、見知らぬ相手とメールやツイッターやフェイスブックなどで知り会え、アマゾンなどの通販サイトで物も買え、いろんな情報が自宅のパソコン一台で入手できると言う大変便利な世の中になりました。しかし、残念なことにそれを扱う人間の方は逆行しています。それは、マイケルのようなモラルや正義感のある人間が減り、それこそドラマや映画のストーリーを地で行く、あるいはそれをはるかに越えるような事件や事故ばかりがこの日本でも起こり、凶悪さが増してきています。これから人間よりもはるかにコンピュータが台頭し、人間の方がコンピュータにコントロールされていくようにも見えます。毎日、短絡的で非情な殺人や、自己中心的な大事件のニュースばかり起きるのは、今の人間に何かが欠けてきているからだと思う。そういう人にこそ、ぜひともこの「ナイトライダー」を見て欲しい。マイケルは、友情や正義を教えてくれる。このテレビムービーが好きな人に悪い奴はいないと私は信じています。

日本のゴールデンタイムの放送から来年でちょうど30年を迎えます。しかし、どれだけ時間が過ぎようとも、このテレビムービーの存在は、自分の中で消えることはありません。今の日本のテレビや劇場映画の現状と比較しても、この作品のスケールを超える面白いアクションドラマが存在しないからです。アメリカでは、「ナイトライダー」の続編が数多く登場し、「新ナイトライダー2000」「ナイトライダー2010」、テレビシリーズとして放送された「TEAM KNIGHT RIDER」、2008年の新シリーズ(日本では「ナイトライダーNEXT」と言うタイトルで2012年に放送された)などが製作されました。しかし、残念ながらこれらのどの作品も、このオリジナルを超えることはありませんでした。それらを見た上で、改めてこのテレビムービーが魅力的であることを再確認させてくれます。昨年末、またまたナイトライダーのリメイク映画製作のアナウンスがありました。今度こそは、オリジナルの魅力を活かした作品を期待しています。

 

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