『BELIEVE IN KNIGHT』 作 ガース「ガースのお部屋」


―ACT1―
○ コニー・フィールド郡(深夜)
  街灯のない暗闇の丘。緩やかなカーブを走る一台のパトカー。
  ヘッドライトの光が闇夜を裂き、一直線に伸びている。

○ パトカー車内
  運転席に座る女性保安官マーニー・シャリフ。少し赤毛のショートカットの髪型、小顔、
  細身の体型。制服姿で、帽子とサングラスをつけている。
  ダッシュボードに設置されている無線機が鳴る。
  レシーバーを握るマーニー。
マーニー「こちら、053」
男性保安官の声「今どこにいる?」
マーニー「グレンズ・ヒル・シティの近くです」
男性保安官「ちょうど良かった。近くのアパートの住人が女の悲鳴が聞いたらしいんだ。確認してくれ」
マーニー「了解」

○ グレンズ・ヒル・シティ・住宅街
  一戸建ての住宅が並ぶ通り。
  パトランプを光らせ走ってくるパトカー。
  青色の木造住宅の前に立ち止まる。
  車から降りるマーニー。
  玄関の前に歩いて行く。

○ ソートン家・玄関前
  ドアの前に立ち、ノックをするマーニー。
マーニー「こんばんは…」
  ノックを続けるマーニー。しかし、反応がない。
  ドアノブを回すと、ドアが開く。
  リビングに続く廊下の灯りがついている。
  
○ 同・中・廊下
  リビングに向かって歩くマーニー。

○ 同・リビング
  整然としている部屋。静まり返っている。部屋の明かりがついている。
  辺りを見回すマーニー。
マーニー「ソートンさん!」
  部屋の奥のソファの前に行くマーニー。
  テーブルにワインの入ったグラスと瓶が置かれている。
  キッチンのほうで物音がする。
  ハッと振り向くマーニー。

○ 同・キッチン
  中に入ってくるマーニー。
  流し台の蛇口が開き、水が流れ続けている。流し台にこびりつく赤い液体を見つめるマーニー。
  部屋の左側を覗く。
  床に仰向けに倒れている金髪のセミロングの美女。
  腹にナイフが刺さり、辺りに血だまりができている。
  女に近づくマーニー。女の首に手を当て、脈を確認する。
  慌てて、立ち上がり、部屋を出て行くマーニー。
  入口に、両手で拳銃を構えている男が立ち、マーニーの行く手を阻む。薄毛で眼鏡をかけた
  長身の男、ウィル・ソートン。
  ウィルが着ている白いシャツのあちこちに血がこびりついている。
マーニー「私は、保安官のマーニーよ」
ウィル「拳銃を渡せ。それから自分の手首に手錠をかけろ。リビングの下の物置に入ってもらう」
  マーニー、腰のホルダーに入れていて、拳銃を抜き、ウィルに手渡す。
  手錠を出し、右の手首にかける。
  マーニー、ウィルの腕が微かに震えているのに気づき、
マーニー「どうしてあの女性を殺したの?」
ウィル「僕じゃない。あの女が俺を撃とうとしたんだ」
マーニー「なら、自首して、起こった事をありのまま話しなさい」
  ウィル、銃の引き金に指を当て、
ウィル「警察なんか当てにしてない。時間いるんだ」
  ウィル、動揺した面持ち。マーニー、悠然としている。

○ 草原地帯・国道(翌日・朝)
  青々とした草原の真ん中を通るアスファルトの道。緩やかに走行する黒いトランザム・ナイト2000。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル・ナイト。黒い革ジャン姿。うたた寝をしている。
  ハンドルの根元上部に設置されているインジケータ。自動走行を示す『AUTO DRIVE』のランプが
  点灯している。
  インジケータのイコライザーの赤い光が上下に伸び、KITT(キット)が喋り出す。
キット「マイケル」
  ハッと目を覚ますマイケル。
マイケル「もう着いたのか?」
キット「いいえ。移動本部まであと5キロほどです」
マイケル「だったら、なぜ起こした?」
キット「6時に起こせと言ったのは、あなたです」
  左腕につけているコムリンクの時計を見るマイケル。
マイケル「ホントだ」
  腕を上げ、大きく欠伸をするマイケル。
キット「マイケル、前方を見てください」
  前を見つめるマイケル。
  フロントガラス越しに交差点で衝突事故を起こしているワゴンとセダンの様子が見える。
  道沿いに白バイが止まり、警官にドライバーが事情聴取されている。
マイケル「こんな見通しの良い場所で…居眠りでもしてたのかね」
キット「全米の去年の交通事故死亡者数は、4万5821人。そのうちの35%は、
 酒帯びによる居眠りが原因です」
マイケル「俺は、飲んじゃいないぜ」
キット「当然です。私がいなければあなたもとっくの昔にそのデータの仲間入りをしています」
マイケル「おまえみたいなコンピュータとは、違って人間には、睡眠が必要不可欠なの」
キット「人間は、人生の半分を睡眠に使うそうですね。なんとも勿体無い話しです」
マイケル「そうでもないぞ。おまえみたいに24時間眠らずにいたら、ますますデボンに
 こき使われるかもしれないしな」
キット「あなたが私をこき使っている事は、どう説明するつもりです?」
マイケル「おっと、そろそろ、移動本部に到着するぞ」
キット「誤魔化さないで」

○ 草原地帯・道路
  緩やかなカーブを走行しているナイト財団移動本部の黒いトレーラー。
  トレーラーのコンテナの扉が開いている。
  その後方から勢い良く走ってくるナイト2000。
  コンテナの中に乗り込む。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  コンピュータの前のテーブルに座るデボン・シャイア。グレイのスーツを身につけている。
  新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる  デボンの前に立つマイケル。
マイケル「おやおや、こいつは、珍しいね」
  新聞をテーブルに置くデボン。
デボン「何が珍しいんだ?」
マイケル「トレーラーで会うのは、何ヶ月ぶりだっけ?」
デボン「ボニーもRC3も休暇で羽を伸ばしてる真っ最中だ。誰かがサポート役を引き受けとんな」
マイケル「デボンがボニー達の代わりをしてくれるらしいぞ、キット。心強いな」
キットの声「部品を間違えて取り付けられそうです…」
  不機嫌そうに顔を歪めるデボン。
デボン「私が機械音痴だとでも言いたげだな」
マイケル「まぁまぁ。誰にも不得意な分野は、あるもんさ」
デボン「昨夜、ウィル・ソートンから連絡があった。覚えてるか?」
マイケル「ああ…交通事故の時、助けてやったあの男ね。もう1年も前の話になるかな」
キットの声「川に沈みそうになっていた彼の車を私が引き上げたんです」
デボン「そのソートンから依頼を受けた。自分の会社に不穏な動きがあるから調べて欲しいそうだ」
マイケル「不穏な動きって?」
デボン「ソートンが働いているサーベイ・マックス社は、核燃料のリサイクル・システムを
 開発・研究している専門会社だ。彼は、そこの科学研究部門の担当主任だ」
マイケル「つまり、内部告発って事?」
デボン「研究施設の増設のため、今度、新しい工場を建設することになったらしいのだが、その件で、
 ソートンは、良からぬ事を知ってしまったらしい。詳しい事は、君と会ってから話すと言っていた」
マイケル「それなら、俺達じゃなく、直接警察に話せばいいのに」
デボン「私もそう言ったが、どうやら警察には、話せない事情があるようだな」
マイケル「それで、ソートンは、今どこに?」
デボン「グレンズ・ヒル・シティにある自宅だ」

○ グレンズ・ヒル・シティ・住宅街
  ソートン家の前に止まる数台のパトカー。
  物々しい空気。警官達がソートンの自宅を慌しく出入りしている。
  ソートンの自宅の前にやってくるナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
  ソートンの自宅の前を横切る。
マイケル「こりゃあ、どうなってるんだ?」
キット「ソートンの自宅で何かあったようですね…」
  険しい表情を浮かべるマイケル。

○ グレンズ・ヒル・シティ・住宅街
  ソートンの自宅から少し離れた道路脇に立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  ゆっくりとソートンの自宅の前に歩いて行く。

○ ソートン家・玄関
  家の中から出てくる保安官達の前に近づき、声をかけるマイケル。
マイケル「何があったんです?」
保安官の男「おまえは?」
マイケル「マイケル・ナイト。調査会社のものです」
保安官の男「何のようだ?」
マイケル「彼から頼まれた事があって、話を聞きに来たんです」
保安官の男「ソートンは、殺人事件の容疑者として、指名手配された」
マイケル「ソートンが殺人を?それで、誰が殺されたんだ?」
保安官の男「女だが、素性は、まだわかっていない」
マイケル「本当に彼が犯人なのか?」
保安官の男「女の腹に刺さっていたナイフからソートンの指紋が出た」
  自宅から出てくる金髪、唇の上に髭を蓄えた初老の男・ブローリー・マクソン警部。
  マイケルを睨みつけるブローリー。
ブローリー「おい」
  振り返る保安官の男。
保安官の男「ブローリー警部」
  保安官の男の隣に立つブローリー。
ブローリー「こいつは?」
保安官の男「マイケル・ナイト。調査会社のものらしいです」
ブローリー「ソートンの居所を知ってるのか?」
マイケル「いいや。彼とは、まだ一言も喋っちゃいない」
ブローリー「そうか。なら、おまえの仕事は、ここで終了だ」
マイケル「…まだスタート地点に立ったばかりなのに?」
ブローリー「そりゃあ、気の毒にな。別の仕事に専念しろ。他にいくらでもあるはずだ」
マイケル「あんたに言われなくても、やるべき事は、わかってる」
  マイケル、ブローリーを睨みつけながら、その場を立ち去る。
  怪訝な表情でマイケルを見つめているブローリー。

○ ナイト2000車内
  運転席に乗り込むマイケル。
キット「ソートンは?」
マイケル「いなかった。彼は、殺人事件の容疑者として指名手配されている」
キット「なぜそんなことを?」
マイケル「さぁな。警察は、証拠を握っているそうだが、何か解せない。キット、警察無線を追って、
 事件の情報をできるだけ集めてくれ」
キット「わかりました」
  マイケル、エンジンをかける。

○ 勢い良く走り出すナイト2000。

○ ナイト2000車内
マイケル「ソートンの家族構成は?」
キット「8年前に妻のミゼルと結婚。1人の男の子がいますが、半年前に離婚しています。ソートンの母親は、
 ここから4キロ先にあるマンションに住んでいます」
マイケル「まずは、母親を当たろう」
キット「事件の事で一つ気になる情報が…」
マイケル「何かわかったのか?」
キット「昨夜ソートンの自宅を訪ねた女性保安官が行方不明になっているそうです」
マイケル「その保安官が消えた時間は?」
キット「昨夜の11時頃だそうです。10時43分頃に、近所の住人の通報を受けて、ソートンの自宅に向かった
 そうです。彼女が乗っていたパトカーも消えています」

○ 加速して走り去って行くナイト2000

○ カリフォルニア州内・オズロー国際空港・滑走路
  一機のジャンボ機が着陸態勢に入る。ゆっくりと高度を下げ滑走路に降りてくる。

○ 同・管制塔
  ガラス張りの塔の中で管制業務に当たる管制官達の様子が見える。

○ 同・管制室
  数十人の管制官達が各管制卓に座る。ヘッドマイクをつけ、モニターを見ながら各機と
  通信のやりとりをしている。
  入口の電子ロックが解除される音が鳴る。中に入ってくる警備員の男。警備員の後ろに密着し、
  姿を隠すように歩いているもう1人の男。
  男が天井に向けて銃を発射する。高鳴る銃声。
  管制官達が一斉に入口のほうに顔を向ける。
  警備員の首に腕を回し、こめかみに銃口を当てる男。男は、ウィル。
ウィル「大人しく僕の言う事を聞けば、何もしない」
  固まる管制官達。
ウィル「いいか、業務は、通常通り続けろ。ただし、外部に助けを求める連絡をした奴は、
 見つけ次第射殺する」

○ ロス市内・高層マンション12階・ウィルの母親の自宅
  ドアの前で話しをするマイケルとウィルの母・ミゼル。少し小太りで白髪。
ミゼル「いいえ、息子は、こっちには、戻ってきていませんけど…」
マイケル「彼から連絡は?」
ミゼル「あの…ウィルに何かあったんでしょうか?」
マイケル「落ち着いて聞いてください。ウィルは、殺人事件の容疑者として手配されているんです」
  愕然とするミゼル。
ミゼル「そう言えば…二日前の夜に見知らぬ女性から連絡があったわ」
マイケル「相手の名前は?」
ケリー「名前を聞く前に電話が切れてしまって…ウィルの会社の同僚だとか言っていたわ…」
  神妙な面持ちのマイケル。

○ 国道
  住宅地の通りを走行するナイト2000。
  対向車線からパトランプをつけた覆面車のセダンとパトカーが走ってくる。
  ナイト2000を横切り、走り去って行く。
マイケルの声「俺達のほうが一足早かったようだな」

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
  後ろを向き、走り去るパトカーを覗き見ている。
キット「ソートンの自宅で死んだ女の身元が判明しました。名前は、リンジー・ランドン。4年前、
 金銭のトラブルで友人を殺害し、一ヶ月前に刑務所を出所しています。出所してからの行動は、
 まだわかっていません」
  通信を知らせる電子アラームが鳴り響く。
キット「デボンさんからです」
  モニターの映像。
  ナイト財団移動本部コンテナ内のコンピュータルームの前に立つデボンが映し出される。
デボンの声「カリフォルニア州にあるオズロー国際空港の管制搭がジャックされた。その犯人は、
 ウィル・ソートンだ」
  愕然とするマイケル。
マイケル「ウィルが?どうして?」
デボンの声「さっき、ウィルが財団に連絡してきた。殺人事件での自分の潔白を証明するために、
 1時間以内にある女性を探して、管制搭に連れて来て欲しいと」
マイケル「その女性ってのは?」
デボンの声「フィービー・ステア。サーベイ・マックス社の社員で、ウィルの助手を勤めている女性だ。
 自宅に連絡したがつながらなかった」
マイケル「警察は、この事を知っているのか?」
デボンの声「いや、警察には、まだ何も要求していない。だが、一時間後に滑走路を閉鎖して、
 飛行中のジェット機同士を空中衝突させると言ったそうだ」
  溜息をつくマイケル。
マイケル「とにかく一度行ってみるよ」
  モニターが消える。
マイケル「キット、フィービー・ステアの資料を頼む」
  モニターにフィービーの写真と経歴が映し出される。色白の美形、黒髪のボブカット。
キット「1978年にコロラドの工業大学を卒業し、82年までシリコンバレーの電子メーカーに勤務。
 サーベイ・マックスの社長に引き抜かれ、現在の会社の科学研究部門に4年半勤めています」
マイケル「フィービーの自宅の最短コースを出せ。スーパーモードで行くぞ」
キット「了解」
  マイケル、コンソールのパネルの『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  Uターンした後、爆音を立てながら、ハイスピードで走り出す。
―ACT1 END―

―ACT2―
○ カリフォルニア州内・オズロー国際空港・管制塔前
  数十台のパトカーが建物前に群がる。
  護送車、SWATを乗せたトラックが敷地の中に入り、パトカーの群れの前に立ち止まる。
  パトカーの前で話すブローリーと東洋人の刑事・パク。小柄、精悍な顔。
ブローリー「市警のブローリーだ。中の様子は?」
パク「警備員が人質に取られていますが、管制官は、全員通常の管制業務を続けています」
  ブローリー、左腕につけている腕時計を見つめる。
  ブローリー、トラックのコンテナからSWAT部隊が降りているのを見つめる。
ブローリー「SWATを呼んだのか」
パク「長引けば、空港の機能に支障が出る事は、確実です。管制官達は、一歩も外に出られない
 状態ですし、極度の緊張状態が続けば、何かのミスを引き起こす可能性もあります。それに奴が
 管制室のシステムに発砲する事も考えられます…」
ブローリー「奴は、殺人犯だ。早急に手を打つべきだ」
パク「わかっています」

○ 砂漠地帯
  爆音を立てながら、砂漠の真ん中の道を猛スピードで駆け抜けているナイト2000。

○ ナイト2000車内
  デジタルのスピードメーターの数値が「230」を上回る。
キット「今のところ空港は、正常に機能しているみたいです。管制室の人質に怪我人は、出ていません」
マイケル「フィービーの自宅まで後どれぐらいだ?」
キット「1分50秒」
マイケル「元に戻すぞ」
  マイケル、『EMERGENCY BRAKING SYSTEM』のボタンを押す。

○ ナイト2000と屋根と後部フェンダー部に設置されている空気抵抗板が勢い良く開く。
  緊急ブレーキシステムが作動させ、急激にスピードを落とす。
  元の形に戻るナイト2000。

○ マンション前
  吹き抜けの駐車場の前に立ち止まるナイト2000。

○ ナイト2000のスキャナー音が鳴り響く

○ ナイト2000車内
  モニターにフィービーの部屋の断面図が映る。リビングに赤い丸点が点灯している。
キット「マイケル、フィービーの部屋で生体反応を感知しました」

○ マンション前
  車から降り、走り出すマイケル。
  階段を上り、2階の通路を駆けて行く。

○ 同・2階・フィービーの自宅前
  ドアの前に立つマイケル。ドアノブを回す。鍵が開いている。

○ 同・中
  ゆっくりと部屋の中に入って行くマイケル。
マイケル「こんちは…」
  リビングの中に入って行くマイケル。
  マイケルの背後に迫る人影。右手に銃を持つ女の手。
  女、リボルバー式の拳銃の激鉄を起こし、引き金に指を当てる。
  物音に気づき、立ち止まるマイケル。
女の声「両手を上げて」
  マイケル、ゆっくりと両腕を上げる。
  女、銃を向けながら、マイケルの体に手を当て、調べている。
マイケル「武器は、持ってない」
女「ここへ何しに来たの?」
マイケル「君を探してたんだ」
女「フィービーは、ここには、いないわ」
  唖然とするマイケル。
女「本当に武器は、持っていないようね。こっちを向いて」
  振り返るマイケル。女の顔を見つめ、唖然とする。
マイケル「1人で鑑識作業ですか?」
  女は、マーニーである。
マーニー「警察は、まだ、来ていないわ」
マイケル「じゃあ、おたくは、何屋さん?」
マーニー「ちょっと事情があってね…」
マイケル「フィービーが戻ってくるまでここでお留守番しろって、上司に命令されたとか?」
マーニー「あなた、ウィルを殺そうとした女の仲間なの?」
マイケル「そう見える?」
マーニー「とぼけてると痛い目見るわよ。仲間のところに案内して」
マイケル「思い出したぞ、その制服…グレンズ・ヒル・シティの保安官が着ていたのとそっくりだ」
マーニー「一体何者なの?」
マイケル「俺は、マイケル・ナイト。ウィルに頼まれて、フィービーを探してる。君は、もしかして、
 ウィルの自宅の前で行方不明になった女性保安官?」
マーニー「私は、マーニー・シャリフ。あなたの言う通り、コニー・フィールド郡の保安官よ」
マイケル「コニー・フィールドの保安官がなぜロスに?」
  銃をホルダーにしまうマーニー。
マーニー「ウィルは、何者かに狙われているの。だから彼をパトカーに乗せて、カリフォルニアにある彼の
 別荘まで送ってあげた」
マイケル「その別荘ってのは、もしかして管制搭のことか?」
マーニー「管制搭?」
マイケル「彼は、今、カリフォルニアの空港の管制塔にたてこもってる」
マーニー「なんですって?」
マイケル「45分以内にフィービーを見つけ出して、彼の元に連れていかないと、空港の機能が
 麻痺してとんでもない事が起きるかもしれない」
マーニー「フィービーを見つけて、別荘へ連れて行く約束をしたのに…」
マイケル「どうやらウィルは、君を信じなかったようだな。保安官、あんたは、どうして警察のルールを
 破ってまでウィルを守ろうとした?」
マーニー「彼の会社の内情を聞いたからよ。核に関わる問題よ。それを証明するための資料の
  コピーも見せてもらった。警察には、色々と嫌な思い出があるらしくて信用できないって言うから…」
マイケル「その極秘資料って何?」
マーニー「その話は、後。早くここから出ないと。そのうち警察がやってくるわ」
マイケル「まだ来たばかりだ。ちょっとぐらい部屋を調べてもいいだろ?」
マーニー「手がかりなら、あるわ。ガス欠でパトカーが使えないの」
マイケル「心配ご無用。ついてきてくれ」
  部屋を出て行く二人。

○ 国道
  高級住宅地の通りを加速するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。助手席に座るマーニー。
マーニー「フィービーは、絵が趣味で、自宅から5キロ程離れた場所にある倉庫を借りて、
 そこを自分のアトリエとして使っているそうよ」
マイケル「じゃあ、彼女は、そこに?」
マーニー「ウィルの話だと、週末しか行かないそうだけど。隠れるには、絶好の場所だし、もしかしたら…」
マイケル「さっき言ってた資料の事だけど…」
マーニー「サーベイ・マックス社の新しい施設のものよ。本物は、フィービーが持っているらしいわ。
 建設は、すでに始まっているみたいだけど、ウィルは、それをなんとしても阻止しなければ
 ならないと言っていた」
マイケル「工場は、ウィル達が使うものなんだろ?」
マーニー「そうだけど、その内部については、ウィル達にも秘密にされていたそうよ。不思議に思ったウィルが
 フィービーを使って、工場の資料を持ち出した。それを調べてみたら、研究とは、無関係の機械がいくつも
 発注されている事に気づいたらしいの」
マイケル「ウィルの自宅で死んでいた女の事は?」
マーニー「二週間ほど前から尾行されていたらしいわ。昨夜、自宅にやってきて、その時、初めて顔を
 合わしたそうよ。そこで、突然銃を向けられて、台所でもみ合いになって、咄嗟にナイフで…」
マイケル「その女は、ウィルの資料を狙っていたって事か」
マーニー「彼は、極度の人間不信に陥っているのよ。誰も信じられなくなっているんだわ」
マイケル「信用できる人間は、フィービーただ一人ってわけか…」

○ 住宅街・倉庫
  横一列に並ぶ小さな倉庫。
  敷地の中に入ってくるナイト2000。
  倉庫の前を通り、4番倉庫の付近に立ち止まる。
  車から降りるマイケルとマーニー。
  マイケル、倉庫のシャッターを開けようとするが、鍵がかかっている。
マーニー「バールか何か持ってない?」
マイケル「そんなものは、必要ない。キット!」
  ナイト2000のスキャナーがフラッシュし、音を奏でる。
  カチッと、錠が開く音がし、シャッターが自動的に開き始める。
  唖然とするマーニー。
マーニー「キットって何?」
マイケル「ああ…ちょっとした御呪い」
マーニー「もしかして、前職は、手品師?」
マイケル「サーカスで車と一緒に火の輪を潜った事は、あるけどね…」
  二人、中に入って行く。

○ 4番倉庫・中
  奥の物置に棚があり、いろんな画材が置かれている。棚の前にたくさんのキャンバスが
  重ねて置かれている。
  高らかに声を上げるマイケル。
マイケル「フィービー、いるなら返事をしてくれ」
  マイケル、チェアと数枚の画板が不自然に倒れているのに気づき、
マイケル「この様子だと、もう誰かに連れ去られた後かも…」
マーニー「諦めちゃ駄目よ。とにかく、部屋の中をじっくり調べましょう」
  コムリンクのアラームが鳴り響く。
  コムリンクに応答するマイケル。
マイケル「どうした?」
  キットの声が聞こえる。
キットの声「不審な黒いバイクがこちらに接近しています」

○ 同・前
  エンジンを唸らせ、敷地に入ってくる黒いオートバイ。
  赤いヘルメットに黒のつなぎを着た男が乗っている。
  男、右手にウージー銃を持ち、4号倉庫に近づいてくる。

○ 同・中
キットの声「マイケル、男は、銃を持っています。早く隠れて」
マイケル「マーニー!こっちに来い!」
マーニー「どうしてよ!」
  倉庫の前で立ち止まるバイク。
  男、倉庫の中に銃口を向け、ウージー銃を乱射する。
  激しく鳴り響く銃声。
  けたたましく乱れ飛ぶ弾丸。
  マーニー、急いで逃げ、壁際の棚の影に屈み、身を隠す。
  マイケルも奥の棚の影に隠れている。
  
○ 同・前
  男、撃つのをやめると、バイクを発進させ、倉庫に向かって突進する。

○ ナイト2000車内
  コンソールのLEDが一斉に光り、エンジンがスタートする。
  インジケータの『AUTO CRUISE』のゲージが光る。
  シフトレバーが自動的にDレンジに入り、アクセルが動く。

○ 前進するナイト2000
  4番倉庫の入口を塞ぐナイト2000。
  バイク、急ブレーキをかけるが、間に合わずナイト2000のボディの側面に激突。
  バイクから投げ出される男。ナイト2000のボンネットの上を飛び越え、倉庫の中に転がり落ちる。
  呆然と様子を窺うマーニー。
マイケル「ありがとよ、キット!」
  倒れている男の前に近づくマイケル。
  男のヘルメットをはぎ取る。
  銀髪の若い男の顔が露になる。
  男の胸倉を掴み上げるマイケル。
マイケル「俺達を殺しに来たのか?」
男「違う」
マイケル「じゃあ、何が目的だ?」
男「絵だ」
マイケル「何の絵だ?」
男「『密会』と言うタイトルの絵を探しに来た」
マイケル「マーニー、探してくれ」
マーニー「…わかった」
  立ち上がり、油絵が書かれたキャンバスを一枚ずつ調べ始める。
マイケル「誰に雇われたんだ?」
男「金は、受け取ったが、相手の顔は、見ていない」
  マーニー、あるキャンバスを持ち、
マーニー「あったわ」
  マイケルの前に向かうマーニー。
  マーニー、男に絵を見せる。
  絵は、公園の一角で、雨の中、青い傘を差し、寄り添いながら歩く白いドレスを着た中年の女と
  コートを着た中年の男が描かれている。
  マイケル、マーニーから絵を受け取り、まじまじと見つめる。
マーニー「でも、どうしてこんな絵を欲しがっているのかしら…」
  マイケル、ナイト2000のほうを向き、
マイケル「キット、このキャンバスを調べてくれ」
  ナイト2000のスキャナーが唸る。
キットの声「そのキャンバスの布は、二重になっています」
  マイケル、表の布を引き剥がす。
  その下にもう一枚布があり、真ん中に工場の資料が入った封筒が貼りつけられている。
  封筒を手に取るマイケル。
マイケル「目的は、これさ」
―ACT2 END―

―ACT3―
○ カリフォルニア州内オズロー国際空港・管制塔
  後ろ手に縛られ、正座させられている警備員の男。
  男の背後に立っているウィル。男の後頭部に銃口を向けている。
  周囲では、管制官達がいつもと変わりなく業務を続けている。
    
○ 同・前
  管制室の前の通路と階段に並んで立っている警官隊。
  パクが先頭に立ち、険しい表情を浮かべている。
  SWATのチームリーダー・オウブがパクの前にやってくる。
オウブ「作戦を開始します」
パク「…始めてくれ」
  立ち去るオウブ。

○ 同・中
  ウィルの前にある電話が鳴り響く。
  ウィル、受話器を取り上げ、警備員の男の耳元に当てる。
警備員の男「はい…いいえ、私は、警備担当のものです…ええ…」
  ウィルに話しかける警備員の男。
警備員の男「警察があんたと話をしたいと言ってる」
  電話に出るウィル。
ウィル「…僕を説得しようとしても無駄だぞ。今すぐここにモニターを持って来い。ビデオカメラを設置して、
 外の様子を確認できるようにしろ。わかったな」
  電話を切るウィル。
  ウィルのそばに近づいてくる管制官の男。
  ウィル、男に銃を向ける。
ウィル「どうした?」
管制官の男「ワシントン行きの飛行機に乗った妊婦が陣痛を起こしたらしいので、
 緊急着陸させたいんだが…」
ウィル「いちいち僕の判断を仰がなくてもいいってさっき言っただろ?勝手にやれ」
  男、力なく頷き、立ち去って行く。

○ ビジネス街・駅前
  人通りが激しい通り。
  交通量の激しい道路。溢れるタクシー。
  売店で新聞を買うマイケル。
  店から立ち去り、近くの柵の上に腰をかけ、新聞を開く。
  新聞を読みながら、辺りを見回しているマイケル。
  マイケルから数メートル離れた道路脇に止まっているナイト2000。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマーニー。
  フロントガラス越しにマイケルの様子を見つめている。
  マーニー、漫然とコンソールを見つめ、
マーニー「目がチカチカするわ…派手に装飾し過ぎなのよ…」
  ハンドル周りのボタンを覗き見るマーニー。ボタンを押そうとする。
キット「余所見をしている場合では、ありませんよ」
  マーニー、唖然とし、辺りを見回す。
マーニー「誰?どこにいるの?」
キット「ここです」
  インジケータを見つめるマーニー。
キット「私は、KNIGHT INDUSTRY 2000。この車を管理するコンピュータです」
  マーニー、失笑し、
マーニー「そう言えば、さっきの倉庫でもその声を聞いたわね。こんな時にくだらない冗談はやめなさい」
キット「マイケルが紹介するのを忘れているようなので、自ら名乗りました。驚かせてすいません」
マーニー「私はね、未来科学とか超能力には、興味はないし、嫌いなの。それにドッキリ番組も大っ嫌い」
キット「まだわかっていないようですね」
マーニー「マイケルの仲間なんでしょ?どこに無線を取り付けてるの?悪ふざけは、
 やめて、顔を見せなさいよ」
キット「生憎取り付けられているのは、音声回路だけでして」
マーニー「いいわ、じゃあ、今マイケルが何をしているか、当ててみなさい」
キット「売店のそばで新聞を読んでいます」
マーニー「…車のどこかにカメラを取り付けてるのね」
キット「私の後ろに止まっているタクシーの前で、タクシーの運転手と客がもめています」
  マーニー、後ろを覗き込む。
  ナイト2000の後ろに止まるタクシー。その前で、対峙しているドライバーの男と客の中年の男。
  激しく言い争っている。
マーニー「どうせ後ろにもカメラをつけてるんでしょ?」
キット「男が近づいてきます」
マーニー「えっ?」
  マーニー、前を見つめる。

○ ビジネス街・駅前
  マイケルの前に立つ背の高い筋肉質の黒人。スキンヘッド、ギョロとした目つきでマイケルを見ている。
  新聞を閉じるマイケル。
男「連絡してきたのは、おまえか?」
マイケル「あんたがプレスコットさん?」
  静かに頷く男・プレスコット。
プレスコット「絵は、どこだ?」
マイケル「渡す前に聞きたい事がある」
プレスコット「金の事か?」
マイケル「金は、要らない。あの絵を誰に渡すのか教えて欲しいだけだ」
  プレスコット、突然、マイケルの腹を殴る。気絶するマイケル。
  プレスコット、マイケルを肩に乗せ、歩き出す。
  道路脇に立ち止まる白いワゴン。
  マイケルを担いだまま、後部席に乗り込むプレスコット。

○ ナイト2000車内
  ワゴンの様子を見つめるマーニー。
マーニー「まずいわ…」
  モニターにマイケルの体の3Dイメージが移り、サーチしている。
キット「気を失っているだけです。命に別状はありません」
マーニー「いい加減な事言わないで。早く助けに行かないと」
  マーニー、ドアを開けようとする。ドアをロックするキット。
  必死にドアをこじ開けようとするマーニー。
マーニー「なんで開かないの?」
  自動的にエンジンがかかる。
  呆然とするマーニー。
マーニー「ちょっと、やめてよ…」
  フロントガラス越しに見えるワゴンの様子。
  ワゴン、車線に出て、勢い良く走り出す。
  シフトレバーが自動的にDレンジに入る。
  光を放ちながら動くアクセル。
  悲鳴を上げるマーニー。

○ 車線に入り、勢い良く走り出すナイト2000
  向こう側の路肩に止まっている青いローバー車。

○ ローバー車内
  運転席に座っているブローリー。
  バックミラーで、走り去るナイト2000を見つめている。

○ 丘の上
  うねる坂道を猛スピードで走るワゴン。
  ワゴンから数百メートル後方を走るナイト2000。

○ ナイト2000車内
  魂が抜けたように呆然と俯いているマーニー。
キット「これでもまだドッキリだと思いますか?」
マーニー「遠隔操作技術がこんなに発展しているとは思わなかったわ…運転代わって!」
キット「良いですが、くれぐれも向こうに気づかれないように注意してください」
マーニー「誰に向かって言ってるの?馬鹿にしないで」
  インジケータの『AUTO CRUISE』のゲージの光か消え、『NORMAL CRUISE』のゲージが光り、
  通常運転に切り替わる。
  ハンドルを握るマーニー。
  獣のような鋭い目つきになるマーニー。
マーニー「見てなさい」
  アクセルを踏み込むマーニー。

○ エンジンを高鳴らせ加速するナイト2000

○ ビル解体現場
  地上3階建ての古びた建物。最上階は、骨組みだけになっている。周囲は、
  工事車両が並んで止まっている。
  駐車場跡地の広い敷地に勢い良く入ってくるワゴン。建物の前に急ブレーキで立ち止まる。
  サングラスをかけた痩せ型の男・サムが運転席から降りる。
  ワゴンの後部のスライドドアを開ける男
  中からプレスコットが降りてくる。
  プレスコット、シートに座り、気絶しているマイケルを抱き上げ、肩に乗せる。
  ビルの入口に入って行くサムとプレスコット。
  しばらくして、入口前にゆっくりと近づいてくるナイト2000。静かに立ち止まる。

○ ナイト2000車内
  様子を窺うマーニー。
マーニー「一体何なのかしら、ここ…」
  モニターに映る解体ビルの3Dイメージが映る。
キット「以前は、病院施設だったようです」
マーニー「どうやって調べたの?」
キット「私のセンサーを使ったんです」
マーニー「テキトーな事言って…いいわ。自分で確かめてくる」
キット「危険です。相手は、豪腕のマッチョマンですよ」
マーニー「ほっといたらマイケルは、あいつらに殺されるわよ」
キット「私に考えがあります」

○ 解体ビル・地下一階
  手術室。暗闇の中、手術台に寝かされているマイケル。
  スイッチの音が響く。手術用のライトが光り、照らし出されるマイケルの顔。
  マイケル、うっすらと目を開ける。
  マイケル、腕と足と胴を皮のバンドで縛られ、身動きが取れない。
  マイケルの前にやってくるサムとプレスコット。
サム「絵のある場所を教えてもらおうか?」
マイケル「俺も質問がある。おまえ達のバックにいる奴は誰だ?」
サム「おつむを手術する必要があるな。さっそく始める。麻酔はなしだ」
  プレスコット、いきなり、マイケルの顔面を殴る。
  さらにもう一発、さらに二発…マイケルの顔面が徐々に赤く膨れ上がって行く。
マイケル「やるなら一思いにやれよ。その代わり、一生絵は、拝めないぞ」
  プレスコット、部屋の奥へ行き、壁に立てかけていた日本刀を持つ。
  鞘から刀を抜き、音を立てながら軽く振って見せる。
  そして、両手で構え、大きく振り上げ、マイケルの首目掛けて、刀を振り落とす。
  寸前で動きを止めるプレスコット。
  マイケルの額から汗が滲み出ている。
サム「俺の合図一つで、お前の体は、千切りキャベツになっちまうぞ」
  外でクラクションが鳴り響く。
  刀を下ろすプレスコット。

○ 同・前
  入口からプレスコットが刀を持って表に出てくる。
  ビルの前に止まっているナイト2000。
  誰も乗っていない。
  運転席を覗き込むプレスコット。
キットの声「絵は、私のトランクの中です。欲しければ、腕づくで取り返してみたら、どうです?」
  怪訝な表情で辺りを見回すプレスコット。
  プレスコット、ナイト2000のトランクの前に立つ。
  力づくでトランクを開けようとするプレスコット。しかし、中々開かない。
キットの声「どうしたんです?その体は、見かけだけですか?」
  憤然とするプレスコット。
  プレスコット、足元に置いていた刀を持つ。両手で持ち、大きく振り上げ、真ッ逆様にナイト2000の
  リヤ・ウイング目掛けて振り落とす。
  刃がリヤ・ウイングに当たるが、傷一つついていない。
  プレスコット、リヤ・ウイングに向け、何度も刀を振り落とす。
  リヤ・ウイングは、無傷。
  急に動き出すナイト2000。
  土煙を上げながら、敷地の中を駆け回る。
  プレスコットの周りをぐるぐると走り回るナイト2000。
  激しく動くナイト2000を目で追っているプレスコット。

○ 同・手術室
  マイケル、サムの後ろにある出入り口にマーニーが立っていることに気づく。
サム「あいつが戻ってきたら、じわじわとお前の体を切り刻んでやる」
マイケル「どうして今やらない?」
サム「何?」
マイケル「そうか、おまえは、あいつなしじゃ何もできないおぼっちゃまってわけだ」
サム「そんなにお望みなら、そのクソ生意気な口から切り落としてやる」
  サム、ズボンのポケットから小型ナイフを出し、マイケルに差し向ける。
マーニーの声「やめなさい!」
  振り返るサム。
  マーニーが両手で銃を構え、立っている。

○ 同・前
  プレスコットの周りを回り続けているナイト2000。
  プレスコット、両手で日本刀を握る。動き回るナイト2000に向かって、突進。叫びながら、
  刀でナイト2000のボディを切りつける。擦れて、火花を上げるナイト2000のボディ。
  ナイト2000が目の前に近づく度に、ボディを切りつけるプレスコット。
  少し息が上がっている。

○ 同・手術室
  立ち上がり、サムの胸倉を掴むマイケル。
  サムの背中に銃口を向けたままのマーニー。
マイケル「フィービーは、どこだ?」
サム「言ったら、見逃してくれるのか?」
マーニー「駄目」
マイケル「いいだろう。但し、嘘だったら、この手術台で心臓を抉り出してやるぞ」
マーニー「マイケル、そんな取り引きは、私が許さないわ」
マイケル「ウィルとフィービーを助け出すためだ」
  サム、マーニーを見つめ、
サム「あんたの同業者に頼まれたんだ」
  唖然とするマーニー。
マーニー「名前は?」
サム「名前は知らねぇ。会ったのは一度っきりだ。直接その目で確かめてみろ」
  愕然とするマーニー。
マーニー「…まさかとは、思っていたけど…これで、ウィルが警察を嫌っていた理由がはっきりしたわ」
  サムの胸倉を締め上げるマイケル。
マイケル「場所は?」

○ サーベイ・マックス社
  6階建て。黒色のガラス張りのビル。

○ 同・6階・社長室
  社長の席に座り、書類を読んでいるサーベイ・マックス社長レスティア・クルーズ。
  背は、小柄、ベージュのスーツに身を包む。
  レスティアの前に立つブローリー。
レスティア「絵は、見つかったの?」
ブローリー「ええ。ただ、少々面倒な事が…マイケル・ナイトとか言う男とコニー・フィールドの
 女保安官が嗅ぎ回っている…」
レスティア「マイケル・ナイト…何者なの?」
ブローリー「身元を調べても何も出てこなかった」
レスティア「保安官も一緒って事は、もう、あの資料の存在は、警察に伝わっているかもしれないわね」
ブローリー「奴らの目的は、フィービーだ。彼女を見つ出すために、あの資料を利用するはずだ」
レスティア「ウィルは、今、マスコミの注目の的よ。警察に刺激されたら、何を言い出すか…」
ブローリー「今頃SWATが作戦を実行しているはすだ。心配ない。あんたは、予定通り、プロジェクトを
 進めておけばいい」
  不安げな表情のレスティア。余裕顔のブローリー。
―ACT3 END―

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