『DEMONIC GAROS』 作 ガース「ガースのお部屋」
−ACT1−
○ スクラップ工場(夜)
木に止まる梟が不気味に泣き声を上げている。
高く積まれた廃車の狭間を歩いている一人の少年A。眼鏡をかけ、小柄である。
もう一人の少年B、潰れた車の中に潜り込み、部品を物色している。
そこに赤い野球帽を被った少年Cがやってくる。
少年C「まだ、潜ってるのかよ。こんなところに金になりそうな部品なんて、あるわけないだろ。
そろそろ帰ろうぜ」
車から出てくる少年B。
少年B「近所にいた廃材売りのジジィがさ、目新しい物を見つけてきたら、高く買ってやるって
確かに言ったんだぞ!」
そこへ少年Aが慌てて、やってくる。
少年A「いいもの見つけたぜ」
ジージャンのポケットから薄型の金属ケースを取り出す少年A。
少年B、C、興味深げに金属ケースを見ている。
少年B「なんだこれ?」
少年A「さっきから中でカチカチ音がするんだ」
少年C「分解してみようぜ」
少年A「馬鹿、俺が見つけたんだ。勝手な事言うな」
突然、男の声がする。
男「こんなところで何をしてる?」
一斉に男を見つめる三人。
男は、ジョーイ・ベイカー。痩せ身で長身。サングラスと青いスーツで身を包んでいる。
ジョーイ「それは、俺が探してたものだ。返してもらおうか」
ジョーイ、右手にリボルバーの拳銃を構えている。
少年A、金属ケースを放り投げる。逃げ去って行く少年達。
金属ケースを拾うジョーイ。スーツのポケットにしまうと、その場を立ち去る。
○ とある倉庫・実験ルーム・二ヵ月後
汎用マシーンに囲まれたオペレートブース。オペレートテーブルに座る白衣を着たポニーテールの
女性ランヌ。
ランヌ、目の前のガラスの向こうに止まっている青いコルベットを見つめる。
卓上にある『POWER』のスイッチを押す。
青いコルベットのエンジン音が無気味に響き始める。
前のバンパーにある両側の緑のスキャナーが静かになびき始める。
○ 青いコルベット車内
ダッシュボードのメーター、パネルのスイッチ類が一斉に光り、電子音を鳴らしながら、始動する。
スピーカーからランヌの声が聞こえる。
ランヌの声「はじめまして。やっと会えたわね」
M型のハンドルの上に設置されたLEDモジュラー。緑色の『M』状に発光し始める。低音の声が響き出す。
ギャロス「・・・おまえは、誰だ?」
○ 実験ルーム・オペレートブース
卓上に設置されているマイクに喋りかけているランヌ。
ランヌ「あなたを蘇らせたのは、私よ」
スピーカーからギャロスの声が聞こえてくる。
ギャロスの声「何のために私を蘇らせた?」
ランヌ「あなたに会いたかったからよ」
○ ギャロス車内
ギャロス「からかうのは、よせ」
ランヌの声「からかってないわ。あなたの能力に魅力を感じてるの」
ギャロス「用件を早く言え。私に何をして欲しいと言うのだ?」
○ 実験ルーム・オペレートブース
ランヌ「色々あるわ。でも、その前に教えて欲しいことがあるの・・・」
ギャロスのスキャナーが唸る。
○ 森林に囲まれた長いカーブを走行するナイト2000(朝)
○ ナイト2000車内
シートを倒し、眠っているマイケル。
キット「マイケル、マイケル・・・」
目を覚ますマイケル。
マイケル「もう着いたのか?」
キット「いいえ。午前9時です」
マイケル、眠たい目を擦りながら、起き上がり、
マイケル「もうそんな時間か。今どの辺りだ?」
キット「あと十キロ程目的地に到着です。ようやく、あの無気味なケースともおさらばすることができます」
マイケル「おまえのスキャナーで、箱の中身を調べてみるか?」
キット「研究所の要請でその行為は、止められている事をあなたも知っているはずです。デボンさんの
信用を落とすことにもなりますし・・・」
マイケル、笑みを浮かべ、
マイケル「冗談だよ」
通信のアラームが鳴り響く。
モニターに財団本部のデスクに座るデボンの姿が映る。
マイケル「おはよう、デボン」
デボンの声「おはよう。すまんが、そっちの仕事が片づいたら、サンタバーバラに向かってくれないか」
マイケル「今度は、何をさせる気なんだ?」
デボン「昨夜、依頼の連絡を受けてな。失踪人の捜索だ」
マイケル「人探しか・・・」
デボン「本部でアデル・シュミットと言う女性から直接話を聞くつもりだったんだが、
私は、今からニューヨークで開催される国連の会議に出席しなければならないんでな」
マイケル「わかった」
デボン「頼んだぞ」
モニターからデボンが消える。
○ サンタ・バーバラ
市内の市道を走行するナイト2000
とあるカフェテラスの駐車場に入り、立ち止まる。
○ カフェテラス
縁側のテーブルに赤いマタニティドレスを着たショートヘアの女性が座り、マイケルを見ている。
女性のテーブルに近づき、対峙するマイケル。
マイケル「アデル・シュミットさん?」
女性は、アデル・シュミット。
アデル「そうです」
マイケル、アデルと握手し、
マイケル「マイケル・ナイトです」
二人、席に座り、
アデル「すぐにわかったわ。黒の皮ジャンを着た背の高いヤサ男だとデボンさんから聞かされていたから」
マイケル「デボンらしい実に冷徹な言い回しだな・・・」
アデル「えっ?」
マイケル「いや、こっちの話。で、お姉さんが消えたのは、いつから?」
アデル「二カ月前。姉のラナは、VEW研究所で開発部門の部長をしています」
マイケル「何か失踪するような原因は、なかったかい?」
アデル「いなくなる前日に姉と大喧嘩をしてしまって・・・」
マイケル「どんなことで?」
アデル「あまりに仕事に専念し過ぎるから、私が結婚の事を切り出したんです。そしたら、突然
怒り出してしまって・・・」
マイケル「・・・お姉さんの自宅を見せてくれるかな」
○ とある倉庫
シャッターが開き、中からギャロスが勢い良く走り出てくる。
タイヤを軋ませながら、手前の行動を猛スピードで走り出すギャロス。
○ ギャロス車内
運転席に座るランヌ。
左手でハンドル握りながら、ダッシュボードのパネルのボタンを次々と押している。
ギャロス「何をしているんだ?」
ランヌ「走行性能を上げるための調整をしているのよ。あなたの能力を最大源に活かすための必要な作業よ」
ギャロス「おまえ達に力を貸す前に、条件がある」
ランヌ、手を止め、
ランヌ「条件?」
ギャロス「ナイト財団の壊滅だ」
ランヌ「ナイト財団?」
ギャロス「やつらを消すために、まずは、武装システムの強化を図らなければならない」
ランヌ「待って、どうやって武器を揃えるの?」
ギャロス「良い場所を知っている」
○ サンタバーバラ郊外
住宅地に挟まれた道路を緩やかなスピードで走るナイト2000。
マイケルの声「会社の同僚や友人の中で、ラナの居所を知っていそうな人は、いないの?」
アデルの声「知り合いには、全て当たってみたんだけど、誰も・・・」
○ ナイト2000車内
運転席に座り、ハンドルを握るマイケル。助手席にアデルが座っている。
アデル「警察にも届けを提出したけど、この二週間何の手がかりも掴めないらしくて・・・
だから、財団にお願いしたの」
マイケル、アデルのお腹を見つめ、
マイケル「いつ生まれるの?」
アデル、笑みを浮かべ、お腹を擦り、
アデル「今、八カ月目なんです。夫は、男の子が生まれたら医者にしたいって言ってるけど、私は、反対してるの」
マイケル「どうして?」
アデル「夫は、開業医をやっています。私も結婚する前、看護婦をやっていました。生まれる前から親の仕事を
押しつけて、子供の可能性を奪う事は、したくないんです。(前を指差し)あっ、あそこが姉の家よ」
○ ラナの自宅
白壁の小さな一軒家。窓辺に木製のプランターがあり、ハイビスカスの花が咲いている。
ブルーの玄関ドアの前に立ち止まるナイト2000。
両扉が開き、マイケルとアデルが降りると、玄関に向かって歩き出す。
○ 同・リビングルーム
木製の奇麗な作りである。テーブルの前に立ち、辺りを見回しているマイケル。
テーブルの中央にハイビスカスの花が飾られている。
マイケルの前にアデルが近づいてくる。
マイケル「お姉さんは、花が好きなようだね」
アデル「それ、私が飾ったんです。表の花も全て。姉は、花になんて興味はないわ・・・」
マイケル「ここでは、何か変わった様子は、なかったかい?」
アデル「プライベートルームに閉じ込もって、しょっちゅう仕事の続きをやっていたけど・・・」
マイケル「その部屋、見せてくれない?」
○ 同・プライベートルーム
ドアの前に立つ二人。
アデル「ここだけは、私もまだ一度も入ったことがないの。自分で作った電子式のロック装置で
誰も入らせないようにしてるの」
ドアの横についている電子ロック装置を見つめるマイケル。
アデル「ICカードとパスワードを知らないと開けることはできないわ」
マイケル、左腕につけているコムリンクに話しかける。
マイケル「キット、この電子ロックの構造を調べてくれ」
○ ナイト2000車内
モニターに電子ロックの映像が映り、中を透視している。
○ 姉の家・プライベートルーム
キットの声「その電子ロックについているICカードの読み取り装置とパスワードの入力パネルは、見せかけです。
読み取り装置の右横に小さなリモコンの受光部があるはずです」
唖然とするアデル。
マイケル、受光部を見つける。
マイケル「赤外線を出して信号を特定できないか?」
キットの声「やってみます」
マイケル、受光部の前にコムリンクを向ける。
暫くして、甲高い電子音が鳴り、ドアが開く。
マイケル「今日も冴えてるな」
キットの声「『いつも』です」
アデル「さっきから、誰と喋ってるの?」
マイケル、振り返り、
マイケル「ちょっとした友人でね。電子ロックマニアなんだ」
アデル「その時計で電話もできるの?」
マイケル「まぁね」
マイケル、扉を開け、中に入る。
○ 同・プライベートルーム
窓はなく、厚い壁に仕切られた暗がりの部屋。
マイケル、扉の横のスイッチを押し、明かりを点ける。
辺りには、さまざまな機械パーツが雑然と置かれている。
デスクの上にあるモニターとキーボード。
キーボードの上に何かの設計図の筒が置いてある。
マイケル、それを開き、設計図を見つめる。アデルも覗き見し、
アデル「これ、姉が今担当しているシステムのものです。前に一度見せてもらったことがあるわ」
マイケル「忘れてた。お姉さんの写真を見せてくれいかな?」
アデル「ちょっと待っててください」
部屋を出て行くアデル。
コムリンクの呼び出し音が鳴る。
マイケル、コムリンクに話しかけ、
マイケル「なんだ、キット?」
キット「ボニーから緊急の連絡が入っています」
○ ナイト2000車内
モニターに財団本部のデボンのオフィスにいるボニー・バーストが映る。
マイケル「どうした?ボニー」
ボニーの声「二時間前に武器倉庫から小型ミサイル一式が奪われたの」
マイケル「こっちは、別件を抱えてるんだ。後にしてくれないか」
ボニーの声「その武器倉庫って言うのは、フェニックスにあるTDOなのよ」
マイケル、神妙な面持ちを浮かべる。
キット「マイケル、TDOと言えば、三カ月前ガースとギャロスが襲ったあの・・・」
マイケル「乗り込んできたのは、ギャロスなのか?」
ボニーの声「数人の警備員が青いコルベットを目撃しているの・・・」
愕然とするマイケル。
ボニーの声「警察が追っていたけど、パームスプリングス辺りで見失ってしまったらしいわ」
マイケル「わかった。すぐ行く」
玄関のドアが開き、アデルがマイケルを見ている。マイケル、車から降り、
マイケル「すまない。ちょっと緊急の用事ができてしまって。二時間程時間をくれないか?」
アデル「ええ・・・」
マイケル、車に乗り込むと、急バックして、道路に出て、猛スピードで走り去って行く。
○ ナイト2000車内
マイケル「キット、スーパーモードで行くぞ」
マイケル、「SUPER PURSUIT MODE」のボタンを押す。
○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
エンジンの爆発音を鳴らし、風に吸い込まれるように猛烈なスピードで走行し始める。
○ パームスプリングス
田舎町の市道のS字を猛スピードで駆け抜けているギャロス。
○ ギャロス車内
ハンドルを握りながら、後ろを見ているランヌ。汗だくになっている。暫くして、前を向き、
ランヌ「もう追ってこないわ」
ハンカチで汗を拭くランヌ。唇を震わせている。
ギャロス「当然だ。私のスピードに追いつけるやつなどいない。だが、エネルギーシステムが
まだベストの状態ではないようだ」
ランヌ、吐き気を催している。
ギャロス「どうした?何か悪いものでも食ったのか?」
ランヌ「・・・こういう事するの、初めてだから・・・極度に緊張すると、気分が悪くなるの私・・・
それで、これからどうするの?」
ギャロス「敵を誘き出す。まぁ、見ておけ」
モニターの左横のパネルにある『URGENT SIGNAL』のボタンが青く光る。
○ 山道
緩いカーブを一瞬で駆け抜けていくナイト2000
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、特殊なパルス信号をキャッチしました」
マイケル「どこから出てるんだ?」
モニターに地図のイメージが映り、スクロールして、信号の発進点の地図が映し出される。
マイケル、地図を見つめ、
マイケル「パームスプリングス・・・ギャロスだ」
キット「我々を誘い出すつもりなのでしょうか?」
マイケル「奴の狙いが俺達ならな」
キット「ギャロスは、列車にぶつかって、粉々になったはずなのに・・・」
マイケル「ガースは、刑務所の中だ。別の誰かが奴を蘇らせた・・・」
○ パームスプリングス・国道
猛烈な勢いで突き進むギャロス。
ランヌの声「敵って、さっき言ってたナイト財団のこと?」
○ ギャロス車内
ギャロス「マイケル・ナイトとキットだ。奴らを仕留めた後、ボニーとデボンも始末する」
ランヌ「えらく、過激なことを言うわね。人殺しは、良くないわ」
ギャロス「私は、奴らに何度も殺されかけた。私に刃向かうのなら、消えてもらうまでだ」
ハンドル下のパネルの『ROOF L』のボタンが点滅する。運転席側のルーフがゆっくりと開く。
ランヌ「(慌てた様子で)待って、わかったわ。あなたの言う通りにするから」
突然、急激にスピードダウンするギャロス。メーターの数字が見る見る下がって行く。
ギャロス「これは、どう言うことだ?」
ランヌ「ガス欠よ」
ギャロス「ガス欠?何のことだ?」
ランヌ「あなたの今の動力源は、ガソリンなの。部品が間に合わず、
水素燃料のタンクが取り付けられなかったのよ」
ギャロス「なんだと?私にあんな化石燃料を注ぎ込んでいるのか?」
ランヌ「早くスタンドを探しましょう」
○ ナイト2000車内
モニターの地図。ナイト2000が少しずつ発進点に近づいている。
キット「マイケル、ギャロスの動きが止まりました」
マイケル「そこで俺達を出迎えるつもりだ」
○ とあるスタンド
給油タンクの横に止まっているギャロス。
ランヌが右後ろについている給油口に給油ノズルを差し込み、ガソリンを入れている。
ギャロスの声「ミサイルシステムの最終チェックが終わった。何をしている、早くしろ!」
ランヌ「わかってるわよ。もうすぐ終わるわ」
ブースの前で若い店員が不思議そうな顔でランヌを見ている。
ランヌ、店員と目が合い、思わず愛想笑いする。
○ ギャロス車内
モニターに田舎町の道路を疾走しているナイト2000が映っている。
元の姿に戻っているナイト2000。
ギャロス「まずい・・・」
運転席に乗り込むランヌ。と、同時に、エンジン音が唸り出す。
メーターパネルの『AUTO DRIVE』のランプが緑色に光る。
ハンドルとアクセルが自動的に動き出し、急発進するギャロス。
思わず、悲鳴をあげるランヌ。
ランヌ「どうしたの?」
○ スタンドを飛び出して行くギャロス
土煙を上げながら砂利道を走り出す。
店員がギャロスの後を追いかけている。
店員「(声を上げ)おい、待て、このガソリン泥棒!」
砂利道を走るナイト2000。スタンドの前に近づいている。
キットの声「マイケル、ギャロスがいました」
○ ナイト2000車内
マイケル「よし、キット、レーザーの準備だ!」
キット「待ってください。ギャロスの運転席に誰かが乗っています」
マイケル「何だって?」
○ ギャロス、急ブレーキをかけ、180度ターン
迫ってくるナイト2000と向き合う。
○ ギャロス車内
ギャロス「今の状態では、勝算は、五分五分だ。勝負は、次の機会にする」
ハンドル下の『LASER』のボタンが緑色に光る。
○ ギャロスの先端部から緑色の光線が発射される
光線は、走行するナイト2000を横切り、スタンドの給油ノズルのホースに当たる。ホースに穴が空き、
そこから漏れ出たガソリンから火が燃え広がる。
店員が燃え広がった火に包まれ、逃げ路を失っている。
ギャロス、またスピンターンし、猛スピードで走り始める。
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、スタンドで人が取り残されています」
マイケル、ハンドルを左に切る。
○ ナイト2000、180度ターンし、スピードを上げる
スタンドに入り、燃える炎を切り裂いて店員の前に立ち止まるナイト2000。
立ち止まり、助手席のドアを開く。
マイケル「早く乗って!」
店員の男、助手席に乗り込む。
猛スピードでスタンドから走り出て行くナイト2000。その直後、スタンドが巨大な炎を上げ爆発する。
燃え滾る炎を背に走り去って行くナイト2000。
−ACT1 END−
−ACT2−
○ ナイト財団本部・全景
マイケル「後、もう少しってところだったのに・・・」
○ 同・デボン・オフィス
中央にマイケル、ボニー、RC3が立ち、話をしている。
RC3「本当にギャロスだったのか?」
マイケル「ああ、間違いない。レーザーをつけてるスポーツカーは、そうざらには、いない」
RC3「だとすると、誰が何のために・・・」
ボニー「ドライバーの顔は、見たの?」
マイケル「いや・・・でも、スタンドの店員の話だと、乗ってたのは、女性だったそうだ」
RC3「その女一人でギャロスを復活させる事は、無理だろ。バックに大がかりな
メカの専門チームがいるのかもな」
マイケル「気になったのは、俺達を誘き寄せたギャロスがなぜ直前になって逃げ出したかだ・・・」
ボニー「ギャロスの動力源は、最新式の水素燃料でしょ?どうしてスタンドなんかにいたの?」
RC3「きっと、システムがまだ完全な状態じゃあないんだろ」
マイケル「とにかく、俺とキットは、ギャロスを探す。RC3、悪いが、人探しのほうを頼んだぜ」
RC3「ほい、きた」
マイケル、入口のドアに向かって歩き出す。
ボニー「マイケル、待って・・・」
足を止め、ボニーを見つめるマイケル。
ボニー、テーブルの上の青色のケースを持ち、開ける。
中には、CPU基盤が一枚入っている。
ボニー「以前手に入れたギャロスの設計図を見て、今作ってる最中なの。自己抑制回路を組み込んでいるわ」
マイケル「修正プログラムか。こいつでギャロスをお利口さんにしようってわけ?」
ボニー「CPUユニットの位置は、ハンドルの右下にあるの。ギャロスを止めるのに
利用できたらと思って・・・」
マイケル「やってみる価値は、ありそうだけど、奴に乗り込むのは、至難の技だ」
ボニー、ケースをマイケルに差し出し、
ボニー「だから、あくまで一つの手段よ。もちろん、キットの武装も強化するけど・・・」
マイケル「早く完成させてくれ」
ボニー「わかったわ」
○ とある倉庫・全景
シャッターが降りている。
ランヌの声「どう?」
○ 同・実験ルーム
エンジンをふかすギャロス。
ギャロスの下に潜り込んでいるランヌ。
ギャロス後部の水素燃料タンクのチェックをしている。
○ ギャロス車内
計器盤の『HYDROGEN』ゲージのレベルが青色に長く伸びて発光している。
ギャロス「はぁ・・・少し楽になった」
○ 倉庫・実験ルーム
地下ブースから階段を上り、ギャロスのそばに近づくランヌ。
ランヌ「貯蔵合金の能力を高めて、さらにエネルギー力をアップさせたわ。私が開発したソーラーパネルで、
太陽光からの電力補充もできるのよ」
ギャロスの声「おまえは、天才だ、ランヌ。私を蘇らせた上、新しいシステムまで組み込むとは・・・」
オペレートブースに黒いスーツを着た男が立ち、こちらを覗いている。
ランヌ、男に気づき、
ランヌ「ちょっと、待ってて」
ランヌ、オペレートブースの入口のドアに向かって歩いて行く。
○ 同・オペレートブース
中に入ってくるランヌ。
男と対峙する。男は、ジョーイである。
ランヌ「・・・言葉を喋る高性能マシーンのテストドライバーには、興味があったけど、犯罪に利用すること
までは、聞いてなかったわ」
ジョーイ「あの車の望みどおりにさせてやれ」
ランヌ「いったい、何をしようとしてるの?ジョーイ・・・」
ジョーイ「おまえには、高い報酬を支払っているんだ。今更文句は、言わせないぞ」
ランヌ「せめてメインコンピュータのプログラムをいじって、もう少しマシな性格に変えられないの?」
ジョーイ「ボスは、今の奴の人格に惚れ込んで、わざわざ大金を注ぎ込み、ギャロスを復活させたんだ」
ランヌ「じゃあ、あいつの言う通り、ナイト財団とか言うグループを襲わせる気?」
ジョーイ「そうだ」
ランヌ「だったら、私は、降りる・・・」
ランヌ、外に出て行こうとする。
ジョーイ「待てよ。研究所を立ち上げる資金が必要なんだろ?」
足を止めるランヌ。
ジョーイ「あと一日つきあってくれたら、前金の三倍の報酬を出す」
振り返るランヌ。ほくそ笑む。
ジョーイ「奴に財団を襲わせる前に、一つやってもらいたい事がある」
ランヌ「何?」
○ 砂漠の道
土煙を上げながら走ってくるナイト2000。
脇道に立ち止まると、運転席からマイケルが降りてくる。
キットの声「ギャロスが大破した場所は、ここです」
道の横には、鉄道のレールが見える。マイケル、まじまじとそこを見ている。
ナイト2000のスキャナーが唸る。
マイケル「どうだ、何か見つかったか?」
キットの声「いいえ。データバンクの記録によれば、ギャロスのボディは、回収後、
近くのスクラップ工場で処分されています」
○ スクラップ工場
山のように積まれた車の間を通っているナイト2000。
事務所の小さなブースの前に立ち止まる。
車から降りるマイケル。ブースの中に入って行く。
○ 同・事務所
現場主任のネッドと話をしているマイケル。
ネッド「青いコルベットだと?三カ月も前に鉄屑になった車の事を聞かれたって、
「鉄屑」になったとしか言いようがないわな」
マイケル「機械にかけた時に、何かおかしなことは、なかったかい?」
ネッド「・・・ああ、思い出した。かけてる途中に何度も止まりやがった。思いのほか、ボディが頑丈に
できてたんだな、締め上げるのにいつもの倍の時間がかかった」
マイケル「誰かがギャロスの部品を持ち帰ったってことは?」
ネッド「・・・そう言や、機械が止まった時に何かがつまった音がしたから、いくつか部品を外に放り出したかな」
マイケル「どんな部品だ?」
ネッド「小さくて四角い金属の箱のようなものだった」
マイケル、怪訝な表情を浮かべる。
○ アデルの姉の自宅
インターホンが鳴る。
玄関に向かって廊下を歩いているアデル。
アデル「はい」
扉を開けるアデル。表にRC3が立っている。
RC3「どうも」
アデル「あの・・・どちら様?」
RC3、アデルと握手し、
RC3「はじめまして。マイケルの代わりにお姉さん探しの手伝いに来た。
レジナルド・コーネリウス三世、RC3と呼んでくれ」
アデル、苦笑いし、
アデル「マイケルは?・・・」
RC3「ちょっと別の仕事が忙しくなってね。上がってもいいかな?・・・」
アデル「どうぞ・・・」
○ とある倉庫
シャッターが開き、ギャロスが勢い良く走り始める。
タイヤを軋ませ、右に曲がり、道路を走り出す。
○ ギャロス車内
ハンドルを握るランヌ。
ギャロス「マイケル達を苦しめる良い方法を思いついた」
ランヌ「その前にお願いがあるの?」
ギャロス「なんだ?」
ランヌ「あるトラックを襲いたいの。特殊部隊の護衛つきのをね」
ギャロス「私の条件が先だ」
ランヌ「私は、あなたをパワーアップさせたわ。一つぐらい言うこと聞いてくれたっていいでしょ?」
ギャロス「では、こうしよう。そのトラックのいる場所にマイケルとキットを呼び出す。奴らなら、
必死で襲撃を食い止めようとするはずだ」
ランヌ、笑みを浮かべ、
ランヌ「一石二鳥ってわけね。さすがだわ」
○ 海岸線を走るナイト2000
緩やかなカーブを走行している。
通信用のアラームが鳴り響く。
キットの声「ボニーからです」
○ ナイト2000車内
モニターに移動本部トレーラーにいるボニーの姿が映る。
ボニーの声「FBIが連邦刑務所にいるガースからギャロスに関する情報を聞き出したわ」
マイケル「どんな情報?」
ボニーの声「ガースは、財団に対する復讐を終えた後に、ギャロスを別の組織に売り渡すつもりでいたらしいわ」
マイケル「その組織ってのは?」
ボニーの声「暗号名『メイズ』と呼ばれる犯罪組織よ。メイズに関しては、FBIも、まだ実体を掴めていないらしいの」
キット「では、メイズがギャロスを復活させたのですか?」
マイケル「おそらくな」
ボニーの声「マイケル、もう一つ。ギャロスが復活できた理由がわかったわ。設計図のデータによると、
ギャロスのCPUケースには、設計図の事を記したメモリーチップも組み込まれているのよ」
マイケル「メイズのメンバーがそのCPUケースを手に入れたって事か・・・」
キット「マイケル、また例の信号をキャッチしました」
マイケル「ギャロスか?」
モニターに地図のイメージが映し出される。国道を白い点滅が移動している。
キット「国道八十号線をサクラメント方面に北上中です」
マイケル「スーパーモードで行くぞ」
ボニーの声「気をつけて、マイケル、キット・・・」
マイケル「やれるだけ、やってみるよ」
マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。
○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
エンジンの爆音を唸らせ、海岸線を猛突進し始める。
○ サクラメント市内
車がしきりに通る市街の道路。
二台のパトカーに先導されたトラックが走っている。
トラックの両側に白バイ。後ろに特殊部隊が乗ったトラックが進んでいる。
交差点を横切るトラックと護衛の車両。
その向こう側の道路の脇道に止まるギャロス。
○ ギャロス車内
横切って行くトラックの様子を見守っているランヌ。
ランヌ「行くわよ」
ギャロス「まだだ。マイケル達が来ていない」
モニターに映し出されている地図。
画面中央の青い丸の光りに赤い丸の点滅が勢い良く近づいている。
ギャロス「後三十秒で到着だ」
ギャロスのエンジン音が始動する。
メーターパネルの『AUTO DRIVE』のゲージが青く光る。
ランヌ「あなたが運転するの?」
ギャロス「ここは、私に任せろ」
突然、急発進するギャロス。思わず悲鳴を上げるランヌ。
○ トラックと護衛車両の後ろを走り始めるギャロス
○ サクラメント
市街の道路を失踪するナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル、ボタンを押し、ナイト2000を元の姿に戻す。
キット「次の交差点を左に曲がったところです」
マイケル、険しい表情を浮かべ、ハンドルを左に切る。
○ 市街・道路
ゆっくりと進むナイト2000。
数百メートル前方の対向車線をトラックと護衛車両の列が走行してくる。
○ ナイト2000のスキャナーが唸る
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、あの白い警察のトラックの後ろにギャロスがいます」
マイケル、さらに険しい表情をする。
○ ギャロス車内
憂いの表情のランヌ。
ギャロス「来たな」
○ ギャロスの左側のリア・フェンダーの格納庫からガトリングガンとミサイル発射台が出てくる
ミサイルが発射される。ミサイルは、渦を巻くようにして飛び、一瞬でトラックのコンテナに命中する。
爆破の衝撃で横倒しになるトラック。
トラックがナイト2000の進路を塞ぐ。
○ ナイト2000車内
マイケル、咄嗟に『TURBO BOOST』のボタンを押す。
ジェット噴射の激しい音が鳴り響く。
○ 空高く舞い上がり、トラックを飛び越えるナイト2000
停車しているギャロスが透かさずレーザーを発射する。
空中に浮いた状態でレーザーをボンネットに受けるナイト2000。
−ACT2 END−
−ACT3−
○ ボンネットから火花を上げながら、路面に着地するナイト2000
○ ナイト2000車内
マイケル「大丈夫か、キット?」
キット「不意を突かれました。センサー回路の一部が故障しましたが、それ以外は・・・」
○ 警察用トラックの周りを二十人の狙撃隊が取り囲む
一斉にマシンガンを構え、ギャロスを撃ち始める。
ギャロスのボディにシャワーのように弾丸が撃ち込まれているが、微動だにしていない。
ギャロス、ガトリングガンを回転させ、30mm弾を撃ちながらゆっくりと前進し始める。
ガトリングガンの弾を体に浴び、次々と倒れていく隊員達。
ナイト2000、ターンし、ギャロスの後方に近づいて行く。
○ ナイト2000車内
マイケル「ギャロスの奴、何をやってるんだ?」
キット「SWAT隊員達を襲っています」
マイケル「よぉし、キット、奴に例の溶液の入ったミサイルをお見舞いしてやろう」
マイケル、『MISSILE』ボタンを押す。
○ ナイト2000の前バンパー下からミサイルが発射する
ミサイルは、ギャロスの右側のテールランプに当たる。ボディに大層皮膜を破る
溶液がかかる。
○ ナイト2000車内
マイケル、『LASER』ボタンを押す。
○ ギャロスのテールにレーザーが当たる
しかし、微動だにしない。
○ ナイト2000車内
キット「駄目です。びくともしません」
唖然としているマイケル。
マイケル「・・・仕方がない。前に周り込む!」
○ ギャロス車内
ランヌ「もうそれぐらいでいいわ、ギャロス。いくらなんでもやりすぎよ」
○ ギャロスのガトリングガンが止まる
ギャロスの前にナイト2000が周り込み、バリケードを張る。
マイケル、ギャロスの運転席の様子を見つめる。ランヌの顔をまじまじと見ている。
○ ギャロス車内
ギャロス「何者かが私の邪魔を・・・」
ギャロスのモジュラーに割り込んで男の声が聞こえてくる。
男の声「聞こえるか?ランヌ・・・」
唖然とするランヌ。
ランヌ「その声は・・・ジョーイ?」
ジョーイの声「その車は、今我々のコントロール下にある。後は、俺達がやるから、早く逃げろ」
ランヌ「でも、腕が震えて、運転できない・・・」
ジョーイの声「わかった、こっちで操縦する」
○ ギャロス、急バック
スピンターンし、ナイト2000と逆方向に走り始める。
ナイト2000、ギャロスを追って走り始める。
二台が走り去って行くのを見計らったように、曲り角の路地の脇道に止まっていた二台のグレーとシルバーの
セダンからサングラスと黒いスーツを着た六人の男達が降り、トラックの元に駆け寄って行く。
○ 繁華街
車の行き交う路上を暴走するギャロス。
対向車線を割り込み、前の車を次々と追い抜いている。
激しく鳴り飛ぶクラクション。
歩道に乗り上げ、逃げ惑う観光客を擦り抜けるギャロス。
○ ギャロス車内
ランヌ、前を見ながら悲鳴をあげ続けている。
○ ギャロスを追うナイト2000
対向車線を飛び出すナイト2000。前からクラクションを鳴らしながらやってくるバス。
バスを避けるナイト2000。
キットの声「ここは、観光地です。これ以上、追跡すると、被害者が出ます」
マイケル、悔しげな表情で、ブレーキを踏み込み、脇道に車を寄せる。
フロントガラス越しに小さく見えるギャロス。交差点を右に曲がり、姿を消す。
マイケル「(歯を食いしばり)クソ!」
○ とある倉庫・全景(夕方)
シャッターが閉まっている。
ランヌの声「あなた達、あそこで何をしてたの?」
○ 同・オペレートブース
部屋の中央でランヌとジョーイが対峙している。
ジョーイ「それは、おまえには、関係ない話だ」
ランヌ「あなた達の計画のために二カ月もつきあったんだから、私にも知る権利があるわ」
ジョーイ、足下に置いていた黒いケースをそばのテーブルに置き、開ける。
中には、ドル紙幣の札束がぎっしりと詰まっている。
ジョーイ「300万入ってる。受け取れ」
ランヌ、ぎらぎらした目つきで金を見ている。
ランヌ「解放してくれるの?」
ジョーイ「好きにしろ」
ジョーイ、部屋を出て行く。
ランヌ、ジョーイが出て行くと同時に、札束を両手で掴み、はしゃぎ出す。
○ 同・事務室
入口から入ってくるジョーイ。サングラスと黒いスーツを着た男がジョーイの前にやってくる。
男「お電話です」
ジョーイ、電話が置いてあるデスクの上に座り、受話器を握る。
ジョーイ「はい・・・え?・・・しかし、ボス、それじゃあ、話が・・・」
ジョーイ、動揺している。
ジョーイ「・・・わかりました」
受話器を置くジョーイ。困惑した表情で、スーツのポケットから銃を出し、力強く握り締めている。
○ 同・実験ルーム
入口からランヌが入ってくる。右手にスーツケースを持っている。
止まっているギャロスの前で立ち止まり、
ランヌ「さよなら」
振り返り、ギャロスの元を離れて行くランヌ。
ギャロスの2つのスキャナーが緑色に発光し、なびき始める。
ギャロスの声「どこに行く?」
立ち止まり、振り返るランヌ。
ランヌ「家に帰るの」
× × ×
ギャロス車内。
ギャロス「約束が違うぞ」
× × ×
ランヌ「私は、あなたを蘇らすために呼ばれただけなの。仕事は、もう終わったわ」
ギャロスの声「私は、大勢の人間に裏切られ続けてきた。その度に人間に対する憎悪を膨らませてきたのだ。
だが、おまえだけは、私の味方だと信じている」
ランヌ、ギャロスのボンネットの上に座り、右手で撫で、
ランヌ「私も今まで大勢の人間に裏切られたわ。でもね、それで傷ついた分、研究に力を注ぐ事ができたの。
その成果は、あなたの中にも組み込まれているのよ」
ギャロスの声「では、尚更私を手放すのは、惜しいはずだ」
ランヌ「・・・確かにあなたには、とても興味がある。でも、これ以上は、犯罪には、手を貸せない」
ランヌ、呆然とスーツケースを見つめる。
ギャロスの声「お願いだ、ランヌ。もう一度だけ私に力を貸してくれ」
ランヌ、困惑した表情でギャロスを見つめている。
○ 田舎道の脇に止まるナイト財団移動本部トレーラー
ナイト2000が近づいてくる。
ゲートを上り、コンテナに乗り込む。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
止まっているナイト2000の前でマイケルとボニーが話をしている。
ボニー「ギャロスに襲われたトラックから現金を強奪した6人組の男って・・・」
マイケル「おそらく『メイズ』だろう。ギャロスは、奴らに利用されたんだ」
ボニー「ドライバーの事は、何かわかった?」
マイケル「・・・キット、モニターにビデオを映してくれ」
キットのスキャナーが唸る。
二人のそばにあるコンピュータのモニターにビデオが映る。
ガトリングガンを撃ち放つギャロスの正面のアングルが映っている。
マイケル「運転席をアップだ」
画面がズームアップし、運転席の女の顔が映し出される。
ボニー「FBIのデータバンクと照合するわ」
マイケル「頼む」
ボニー、コンピュータの前に座り、キーボードを打ち始める。
ナイト2000のそばを横切るバイク。
マイケルの前で立ち止まる。
ヘルメットを脱ぐRC3。
RC3「ギャロスの行方はわかったのか?」
マイケル「残念ながらまだだ・・・そっちのほうは?」
RC3「手がかりは、今のところ0。自宅にも変わった様子はないし、周囲の人間達とも目立ったトラブルは、
ない。今まで家を空けるようなことも一度もなかったようだし・・・若い頃、つきあってた男に四度振られて、
それから十年来男とは、付き合わなくなったらしいがな」
ボニー「マイケル、探してみたけど、引っかからなかったわ」
RC3、コンピュータのモニターに映っている女を見て、唖然とする。
RC3「その女・・・アデルの姉貴にそっくりだ・・・」
RC3、皮ジャンのポケットから写真を取り出し、マイケルに見せる。
マイケル「・・・キット、この写真の女性とモニターの女を照合してみてくれ」
× × ×
ナイト2000車内
モニターに映し出される2人の女の映像。画面が重なる。
キット「99%同一の人物と見て間違いありません」
× × ×
マイケル「RC3、アデルに連絡して、さっきの映像を確認させてくれ」
RC3「わかった」
RC3、ヘルメットを被り、バイクに股がると、表に出て行く。
マイケル「キットの準備の方は?」
ボニー「一応、新たにミサイルを2つ用意したわ。一つは、ネット放射用、もう一つは、
熱源を感知して、急激に温度を低下させる熱源吸収窒素ミサイル。ギャロスのエンジンを止めるの
に有効よ。大層皮膜を破るミサイルは、断念したわ」
マイケル「どうして?」
ボニー「設計図のデータによると、ギャロスの大層皮膜には、分子構造の組み合わせが何種類もあるの。
以前のは、開発者がその構造を記しておいてくれたから簡単に作れたけど、今回は、
どの組み合わせが正しいのか、わからないわ。短時間では、これが限界・・・」
マイケル「自己抑制回路は?」
ボニー「それは、完成済み」
奥の電話が鳴り響く。ボニー、受話器を取りに行く。
ボニー「マイケル、あなたに電話よ」
マイケル「誰からだ?」
ボニー「女性よ。ギャロスのことを知ってるって。あなた以外には、喋らないって言ってるわ」
マイケル、ボニーに近寄り、移動電話の受話器を受け取る。
マイケル「俺がマイケルだ」
女の声「明日の朝7時、デスバレーに来て。そこでギャロスが待ってるわ」
マイケル「君は、誰・・・?」
女、少し動揺した声色。
女の声「・・・いい?わかったわね」
電話が切れる。
○ デスバレー(朝)
延々と広がる砂漠地帯。
細く伸びる道路を失踪するナイト2000。
広大に広がる砂の上にギャロスが立ち止まっている。
ギャロスの前方に向かって突き進むナイト2000。数十m離れた場所に立ち止まり、ギャロスと対峙する。
ナイト2000のスキャナーが唸る。
○ ナイト2000車内
運転席に座るマイケル。険しい目つきでギャロスを見ている。
キット「中には、誰も乗っていません」
マイケル「どうやら、そのようだな」
○ ギャロスの2本のスキャナーも唸る
ギャロスの声「何度も懲りずに暇な奴らだ」
マイケルの声がナイト2000に内蔵されたスピーカーから聞こえる。
マイケルの声「自分で呼び出しといて、よく言うぜ、ギャロス」
ギャロスの声「マイケル、私を捕まえたいのなら、一人で私の前に来い」
○ ナイト2000車内
キット「危険です。断ってください」
マイケル「いいや、奴の指示に従おう」
キット「確実に殺されます」
マイケル「俺に何かあっても、構わず、奴を破壊しろ。わかったな」
キット「マイケル・・・」
マイケル、車から降りる。
○ ゆっくりと歩き出すマイケル
ギャロスの前で立ち止まる。
ギャロス、運転席のドアを開ける。
ギャロス「乗れ」
躊躇うマイケル。
ギャロス「恐れることはない。キットよりも私の乗り心地のほうが快適だ。その違いを確かめてみればどうだ」
マイケル、意を決して運転席に乗り込む。
○ ギャロス車内
辺りを見回すマイケル。
○ 突然、レーザーを発射するギャロス
ナイト2000のボンネットに当たる
激しく火花を上げている。
○ ギャロス車内
マイケル「やめろ、ギャロス」
ギャロス「おまえが私の中にいる限り、キットは、何の手出しもできない」
マイケル、コムリンクに話しかける。
マイケル「キット、攻撃するんだ」
ギャロス「無駄だ。電波は、遮断している」
マイケル、ドアを開けようとするが、ロックされ、開かない。
○ ギャロスの左のリアフェンダーの格納庫からミサイルとガトリングガンが出てくる
ナイト2000、スピンターンして、急発進し始める。
ミサイル発射。砂漠を猛スピードで走行するナイト2000のそばにミサイルが落ちる。土が舞い、
巨大な炎が舞い上がる。砂煙に塗れながらも走り続けるナイト2000。
ギャロスも急発進し、ナイト2000を追いかける。
○ ナイト2000車内
『MISSILE』のボタンが赤く発光する。
○ ナイト2000の後ろのバンパー下からミサイルが発射される
ミサイルは、ギャロスに命中。白い煙が舞い上がり、巨大な網がギャロスのボディを包み込む。
ギャロス、前のバンパー下からロケットファイアーを点火し、網を焼き切る。
ギャロスを包み込んでいた網が脆くはがれて行く。
ナイト2000、さらにミサイルを発射する。だが、ギャロス、ミサイルをかわす。
遠くで爆発するミサイル。
○ ギャロス車内
マイケル、皮ジャンのポケットからCPU回路のついた基盤を取り出し、ハンドル下に右手を伸ばす。
ギャロス「おまえ、何をしている?」
マイケル、CPUユニットのボックスを見つけ、扉を開けようとするが、強力な電流が流れ出す。
マイケルの体にも電流が流れる。
マイケル、苦痛に顔を歪ませ、呻き声を上げている。
ギャロス「出番だランヌ。キットを挟み撃ちにする」
○ 砂漠を走るナイト2000
その後を追うギャロス。
ナイト2000の500m前方を塞ぐように赤いセダンが立ち止まる。
赤いセダンの運転席の窓が開く。ロケットランチャーを構えたランヌの姿が露になる。
○ ロケットランチャーの照準
ナイト2000に狙いが定まる。
−ACT3 END−
−ACT4−
○ ロケットランチャーを撃つランヌ
ロケットは、ナイト2000を擦り抜け、ギャロスに命中する。
強烈な炎がギャロスのボディを包み込む。ギャロスのボンネットがねじ曲がっている。
ロケットランチャーを降ろすランヌ。激しく動揺しながら、呆然とギャロスを見ている。
○ ギャロス車内
警告音と共に、マルチモニターに『SYSTEM DAMAGE』の赤い文字が点滅する。
スピードメーターの数字が急激に下がって行く。
計器類から奇妙な電子音があちこちで聞こえている。
マイケルに流れていた電流が止まる。
シートにもたれかかり、唇を震わせ、気を失いかけているマイケル。
ギャロス「武装システムに損傷を受けた。緊急事態だ」
マイケル、咄嗟にハンドル下の『LOOF L』ボタンを見つけ、押す。
運転席側のルーフが開き、シートから空高く飛ばされるマイケル。
○ 砂漠の砂の上に勢い良く転がり落ちるマイケル
ギャロス、スピンターンして、走り去って行く。
地面にうつ伏せに倒れているマイケルの前にナイト2000が立ち止まる。
キットの声「しっかりしてください、マイケル!」
○ ナイト2000車内
モニターにマイケルの全身のイメージが映り、体をスキャンしている。
○ ゆっくりと起き上がるマイケル
立ち上がり、辺りを見回すマイケル。
マイケル「ギャロスは、どこに行った?」
キットの声「逃げました。どうやらミサイルの直撃を食らって異常が起きたようです」
マイケル「ミサイルを撃った奴は?」
キットの声「南南東の方角へ逃走中です」
マイケル「追うぞ」
マイケル、ふらつきながら、運転席のドアの前へ歩いて行く。
○ ナイト2000車内
運転席に乗り込むマイケル。シートに深く持たれ、呆然としている。
キット「軽いチアノーゼと呼吸器の乱れを感知しました。その体で追跡するのは、
無理です。病院に向かいます・・・」
○ スピンターンし、砂漠の道を猛スピードで走り始めるナイト2000
土煙を上げながら走り去って行く。
○ とある倉庫・全景
ランヌの声「ごめんさい、ギャロス」
○ 同・実験ルーム
運転席に座り、パネルの中の配線をいじっているランヌ。
ランヌ「あんなの撃つの、初めてだったから・・・まさか、こんなことになるなんて・・・」
ギャロス「そう落ち込むな、ランヌ。おまえは、私に協力してくれた」
ランヌ「あなたに励まされるとは、思わなかったわ」
ギャロス「奴らの始末が終わったら、おまえの望みをなんでもかなえてやる」
ランヌ「心配しないで、私の望みは、もうすぐ実現するのよ」
ギャロス「何だ?」
ランヌ「自分の研究所を建てるの。そこでさらに地熱やバイオガスなどの未来エネルギーの
研究を進めるつもりよ。あなたにも実験モデルになってもらいたいの」
ギャロス「私にか?」
ランヌ「そうよ」
ランヌ、パネルを填め込み、システムを調整し始める。
窓越しに見えるオペレートブースにジョーイの姿が見える。
ランヌ、ジョーイに気づき、車から降りる。
○ 同・オペレートブース
中に入ってくるランヌ。
ジョーイ「おまえ、まだここにいたのか?」
ランヌ「少しぐらい長居したっていいでしょ?」
ジョーイ「車を潰したのか?俺達の商売道具なんだぞ」
ランヌ「もう直したわよ」
ランヌ、足元に置いていたスーツケースをジョーイの前に置く。
ジョーイ、怪訝な表情を浮かべる。
ランヌ「やっぱり返すわ。こんな形で自分の夢を実現させることはできない・・・」
ジョーイ「ランヌ、俺は、もう、おまえと一緒にロボットごっこして遊んでた頃の俺じゃないんだぜ」
ランヌ「・・・私には、あの頃のジョーイも今も同じよ。だから、今日まであなたにつきあった。
さっさとこんな仕事辞めて、真っ当な職場を見つけましょ。協力するわ」
ジョーイ、スーツのポケットから、リボルバーの拳銃を出し、ランヌに向ける。
ジョーイ「金に目が眩んだくせに、偉そうな事言うな。確かに、親父がやばい筋から借金さえしなければ、
俺の人生も180度変わってたがな」
ランヌ、驚愕し、
ランヌ「何するの?」
ジョーイ「お互い、友達思いの臭い芝居はもうやめにしようや」
○ ギャロスのスキャナーが唸る
○ ギャロス車内
マルチモニターにオペレートブースにいる二人の様子が映し出されている。
ランヌの声「あなた、本当に変わってしまったの?」
ジョーイの声「変わったのは、おまえのほうだ」
ジョーイ、引き金を引こうとする。
ギャロス、『LASER』のボタンを起動させる。
○ とある倉庫・オペレートブース
ジョーイが引き金を引こうとした瞬間、緑色のレーザーがガラスを
突き破り、ジョーイの拳銃のフレームを貫く。
ジョーイ、驚愕し、拳銃を落とす。
さらにレーザーを発射するギャロス。
ジョーイの右肩にレーザーが貫通する。
その場に倒れるジョーイ。
ランヌ「ギャロス!」
ギャロスの声「早く私に乗れ、ランヌ」
ランヌ、困惑した表情を浮かべるが、意を決し、ギャロスの元へ駆け始める。
○ 同・実験ルーム
ギャロスの運転席のドアが開く。
運転席に乗り込むランヌ。
サングラスをはめ、黒いスーツを着た男達がギャロスの背後から表われ、
持っていたサブマシンガンを一斉に撃ち放つ。
ギャロスのボディに激しく当たる弾丸。
火花を散らしながら跳ね返している。
ギャロス、リアフェンダーの格納庫からミサイルとガトリングガンを出し、後ろ方向へ向ける。
ガトリングガンを回転させ、連射させる。
スーツを着た男達が弾丸を食らい、次々と弾き倒されて行く。
エンジンを始動させ、急発進するギャロス。
○ 倉庫のシャッターをブチ破るギャロス
勢い良く外に出ると、そのまま猛スピードで道路を走り去って行く。
○ ギャロス車内
呆然としながらハンドルを握っているランヌ。
ギャロス「強制遠隔通信コントロールを解除しろ」
ランヌ、我に返り、辺りを見回している。
ランヌ「ボタンは、どこ?」
ギャロス「コンソール中央のパネルの下から三番目だ」
ランヌ、ボタンを見つけ、慌てて、押す。
ギャロス「これで奴らに乗っ取られずに済む」
ランヌ「ジョーイの馬鹿・・・初めから私を殺すつもりで・・・」
ギャロス「人間は、愚かな生き物だ。欲望や野心を満たすために他人を犠牲にする」
ランヌ、笑みを浮かべ、
ランヌ「・・・あなたって、人間の男よりも男らしいわね」
ギャロス「今頃気づいたのか?」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
コンピュータのモニターにギャロスに乗った女の姿が映し出されている。
アデルの声「間違いありません。姉です」
コンピュータの前にボニー、その後ろにRC3とアデルが立っている。
RC3「ボニー、マイケルに至急連絡だ」
ボニー「戻ってきたわ」
暫くして、エンジン音が鳴り響き、ナイト2000がコンテナに入ってくる。
立ち止まると、マイケルが車から降り、ふらつきながら歩いている。
ボニーとRC3がマイケルに駆けより、肩を貸す。
RC3「どうした、マイケル!」
キットの声「ギャロスに乗り込んでCPUユニットを開けようとした時に、多量の電流を浴びたんです」
ボニー「本当にギャロスに乗り込むなんて・・・」
マイケル、テーブルの椅子に座り、
マイケル「絶好のチャンスができたから、試してみたけど、案の定、この有り様・・・」
アデル、マイケルに近づき、
アデル「姉のせいでこんな目に・・・」
マイケル「何のことだ?」
RC3「ギャロスに乗ってたのは、ラナだ」
マイケル「なんだって?」
アデル「姉は、どこにいるんですか?」
奥の電話が鳴り響いている。
マイケル「アデル、お姉さんは、必ず俺達が助け出す。だから心配しないで」
ボニー、受話器を取る。
ボニー「・・・はい、わかりました」
ボニー、電話を置き、
ボニー「警察から連絡よ。ラナの自宅が三人組の男に襲撃されたわ」
愕然とするアデル。
マイケル「きっと、『メイズ』の仕業だ」
アデル「姉は、その組織から命を狙われているんですか?」
マイケル「ラナは、ギャロスの再生に関わった」
アデル「じゃあ、姉も組織の一員だったの?・・・」
マイケル「その辺は、まだ、わからない」
マイケル、立ち上がり、ナイト2000の前に近づく。
マイケル「ギャロスの目的は、俺達の復讐に違いないんだ。それを逆手にとって、
今度は、俺達がギャロスを誘き出してやろうぜ」
キットの声「しかし、どうやって奴を・・・」
マイケル「ギャロスから発信された信号を分析して、おまえから送信できないか?」
キットの声「わかりました。少し時間がかかりますが、やってみます」
マイケル「頼んだぜ」
マイケルのそばに近づくアデル。
アデル「私にも協力させてください」
マイケル「・・・」
アデル「私をあなたの車に乗せて」
ボニー「駄目よ。そんな体で・・・万が一お腹の子に何かあったら・・・」
アデル「ラナがもし、そのギャロスと言う車に乗って、あなた達を襲って来たとしても、
私がいれば、手出しは、できないはずよ」
RC3「ギャロスがラナの言いなりならいいが、彼女の意思を無視して、勝手に攻撃を仕掛けてくる
可能性だってあるんだぜ」
アデル、お腹を撫で、
アデル「姉を助けたいんです。この子のためにも・・・」
マイケル達、険しい表情を浮かべ、困惑している。
○ 山道の谷間の道を失踪するギャロス
○ ギャロス車内
マルチモニターに地図のイメージが表われ、赤い丸が点滅し始める。
ギャロス「何者かが私に信号を発信している」
ランヌ「誰?」
ギャロス「キットだ。間違いない」
ランヌ、無気味にほくそ笑む。
ランヌ「行きましょう・・・」
ギャロス「ランヌ、おまえは、良い奴だ・・・」
○ ナイト財団本部・玄関口
庭の前に止まるナイト2000。
運転席にアデルが乗り込んでいる。
○ ナイト2000車内
息を飲むアデル。モニターに地図のイメージが映し出される。
青い丸の点滅が勢い良く中心に近づいている。
キット「マイケル、かかりました。ギャロスがこちらに接近しています」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
コムリンクに話しかけているマイケル。
マイケル「わかった。俺達も今から行く」
マイケル、RC3、フルフェイスのヘルメットを被り、前にRC3、後ろにマイケルが股がる。
勢い良く発進するバイク。
○ ナイト財団本部・玄関口
ゲートを潜り、表の道を走り始めるナイト2000。
○ 国道を走るギャロス
ドリフト気味に右に曲がり、さらにスピードを上げる。
○ 森林沿いの道
スピードを上げるナイト2000。その前方からギャロスが接近してくる。
○ ナイト2000車内
キット「来ました」
息を飲むアデル。
○ ギャロス車内
ランヌ「見えたわ」
ギャロス「今日こそ確実に仕留めてやる」
○ スピードを落とし、立ち止まるナイト2000
その100m前方でギャロスが立ち止まる。
ギャロス、リアフェンダーの格納庫からミサイルとガトリングガンを出す。
○ ギャロス車内
ギャロス「攻撃を始める」
ランヌ、ナイト2000の運転席を見つめ、唖然とする。
ランヌ「待って、ギャロス」
ギャロス「どうした?」
ランヌ「あの車に乗ってるのは、私の妹なの」
ギャロス「妹?」
ランヌ「引き返しましょう」
ギャロス「駄目だ、ランヌ。私は、私の目的を実行する」
発進するギャロス。
○ 向かい合うナイト2000とギャロス
ギャロス、ミサイルを発射する。
○ ナイト2000車内
アデル、驚愕する。
キット「しっかり捕まっていてください」
『TURBO BOOST』のボタンが発光する。
○ ジャンプするナイト2000
ミサイルがナイト2000の下を擦り抜ける。
ナイト2000、そのまま、ギャロスの頭上を飛び越え、鮮やかに着地する。
森林に向かって飛んで行くミサイル。大きな火柱をあげ爆発する。
○ ギャロス車内
ランヌ、ダッシュボードのパネルを操作し始める。
ギャロス「何をしている?」
ランヌ「エネルギーシステムを停止させるの」
ギャロス「やめろ!私達は、仲間のはずだ」
マルチモニターに『POWER OFF YES/NO』の文字が浮かぶ。
「ENTER」のボタンを押すランヌ。
制御開始のカウント「30」が点灯する。
○ RC3とマイケルが乗ったバイクがギャロスの正面に迫っている
マイケル、ロケットランチャーを構え、ギャロスに向けて発射する。
ロケットは、ギャロスのボンネットに命中する。
○ ギャロスのエンジンルーム
エンジンが急激に冷やされ、凍りつき始める。
○ ギャロス車内
おもいきりブレーキを踏み込むランヌ。
立ち止まると、すかさず、ドアを開け、外に出る。
○ ギャロスの前で立ち止まるバイク
バイクの元に駆け寄るランヌ。
ランヌ「(マイケルに)あと三十秒で電力が停止するわ」
マイケル「わかった。このバイクに乗って、早くここから逃げるんだ」
ランヌ、マイケルからヘルメットを受け取り、RC3の後ろに股がる。
ターンし、走り去って行くバイク。
マイケル、透かさず、ギャロスの運転席に乗り込む。と、同時にドアが閉まる。
タイヤをスピンさせ、白い煙を上げながら、急発進するギャロス。
○ ナイト2000スピンターンして、立ち止まる
運転席からアデルが降りる。
ドアを閉め、ギャロスの後を追って走り始めるナイト2000。
○ ナイト2000車内
『SUPER PURSUIT MODE』のボタンが光る。
○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
○ ギャロス車内
マイケル、唖然とし、
マイケル「エンジンが凍りついたはずなのに・・・なんて奴だ・・・」
ギャロス「あの程度のミサイルで、私を止められるとでも思ったか」
マイケル、モニターを見つめ、
マイケル「残念だが、後二十秒でおねむの時間だぜ」
ギャロス「ランヌの奴め、エネルギーシステムを自動制御させないように細工したな」
マイケル「大人しく、諦めるんだ、ギャロス」
マイケル、ハンドル下のCPUユニットの扉を開けようとする。電流が音を立て、マイケルの全身に流れる。
悲鳴を上げるマイケル。
ギャロス「こうなれば、おまえを道連れに財団本部を木端微塵にしてやる」
ギャロス、『SUICIDAL EXPLOSION SYSTEM(自爆装置)』のボタンを発光させる。
マルチモニターに映るカウント「14」。
○ スピードを上げ、疾走するギャロス
ギャロスの後方から猛スピードで接近してくるナイト2000。
ギャロスを追い抜き、『EBS(緊急ブレーキシステム)』を作動させ、財団本部の前に滑り込むようにして
立ち止まり、バリケードを張る。
ナイト2000に向かって突進するギャロス。
○ ギャロス車内
マイケル、苦痛の表情で、ユニットの扉を開けようとしている。
電流を浴びるマイケル、ユニットの扉がスライドして開く。
マルチモニターのカウント「5」。
マイケル、CPU基盤をユニットの中に差し込む。
マルチモニターに『UNDER RECOGNITION(認識中)』の文字が点滅する。
カウント「3」。
モニターに『RECOGNITION SUCCESS(認識成功)』の文字が出る。
マイケル、フロントガラス越しに見えるナイト2000を見つめ、
マイケル「ギャロス、ジャンプだ!」
ギゃロス「了解」
『DOUBLE ACTION』のボタンが光る。
○ ジェットエンジンを噴射させ、ジャンプするギャロス
ナイト2000の頭上を飛び越える。
○ ギャロス車内
マルチモニターのカウント「0」
ダッシュボードの電力が一斉に落ちる。
○ 路面に着地するギャロス
○ ギャロス車内
マイケル、歯を食いしばり、ブレーキを踏み込む。
○ 急停止するギャロス
ハンドルにもたれ、目を見開き、辺りを見回すマイケル。
マイケル「止まった・・・」
コムリンクのシグナルが鳴る。
キットの声「大丈夫ですか?マイケル」
マイケル、コムリンクに話しかける。
マイケル「・・・ああ、何とか生きてるぜ」
笑みを浮かべるマイケル。
−ACT4 END−
−ACT5−
○ ナイト財団本部・全景(数日後)
激しい雨。雷鳴が轟く。
デボンの声「私のいない間にずいぶん厄介な仕事を抱えていたようだな」
○ 同・デボン・オフィス
デボンのデスクの前に佇むマイケル、RC3。
マイケル「危うくギャロスに丸焦げにされるところだった」
RC3「ラナの証言でメイズの一部のメンバーも捕まったし、ギャロスも捕獲できた。とりあえずは、一件落着・・・」
デボン「だが、メイズの事は、まだその組織の実態がわかっとらんのだ。あのギャロスを蘇らす事の出来る程の
技術者が仲間にいる。正体を早くつきとめなければな・・・」
入口の扉が開き、ボニーが中に入ってくる。
ボニー「マイケル、お客様よ」
ラナが姿を表わす。一礼するラナ。
マイケルの前で立ち止まる。
マイケル「警察の事情聴取は、もう済んだの?」
ラナ「ええ。今日は、あなたとキットに謝ろうと思ってここに来たの・・・一時的とは言え、ギャロスに手を貸したのは、
事実よ。本当にごめんなさい」
マイケル「君は、奴に利用されてただけなんだ。気にすることないさ。(コムリンクに話しかける)だよな、キット」
コムリンクから、キットの声が聞こえる。
キットの声「ええ。ギャロスは、人の心を悪魔に変える力を持っていますから」
ラナ「・・・ギャロスは、どうなったの?」
ボニー「今朝まで財団の倉庫に保管していたけど、FBIが今回の事件のことで、調べたい事があると言って
持って行ったわ」
ラナ、寂しげに表情を曇らせ、
ラナ「そう・・・アデルが入院したの。予定より早く子供が生まれそうなの」
RC3「キットのターボジャンプがお腹の子をびっくりさせたのかも・・・」
デボン「(マイケルを見つめ)おまえが彼女にあんな無茶な真似させるからだ」
マイケル、気まずそうに顔を歪める。
ラナ「あなたのせいじゃないわ。原因は、私よ。彼女、私の顔を見て一安心したら、
一気に疲れが来たみたいなの。母体は、安定してるから、心配しないで」
マイケル「生まれたら、顔を見に行くよ」
ラナ「また、連絡するわ。それじゃあ・・・」
マイケル「ああ、待って。君は、なぜ『ランヌ』って呼ばれていたんだ?」
ラナ「小学校の時、クラスの発表会でナポレオンの演劇をしたの。私は、その手下の勇将を演じて、
ジョーイがその名前を私のあだ名に・・・」
デボン「なるほど・・・」
ラナ「子供の頃は、彼と喧嘩して、よく泣かせていたわ」
ラナ、一礼すると、ボニーと共に部屋を出て行く。
マイケル「なんだか、寂しそうだったな。ギャロスが名残惜しそうに見えた」
RC3「ギャロスもようやく生まれ変わったのにな・・・もう悪さはしないだろうし、この際、
彼女に譲ってあげたらどうです?」
デボン「馬鹿を言え。調べが済んだら、今回のように悪用されることのないよう、完全に解体するんだ」
マイケル、神妙な面持ちを浮かべる。
○ 市街地
激しく降り注ぐ雨。
パトカーに先導され、走行している白いコンテナつきのトレーラー。
○ トレーラー・コンテナ内
暗闇の中に止まっているギャロス。
今にも動き出しそうな無気味な空気が漂う。
○ 雷光がトレーラーのコンテナを直撃する
○ トレーラー・コンテナ内
雷光がギャロスのボディを包み込む。
ギャロスの2本のスキャナーが一瞬、無気味に発光し、音を立ててなびく・・・。
−THE END−