『EVIL TAXI』 作 ガース「ガースのお部屋」
―ACT1―
○ ハイウェイ
四車線の道路。車が激しく行き交う。
高架下を通過し、緩いカーブを走行しているデボンの赤いオープンカー。
○ オープンカー車内
ハンドルを握るマイケル・ナイト。サングラスをつけている。
助手席に座る少女・ベッキー・フィリップス。退屈そうな表情を浮かべている。
マイケル「デボンの車じゃご不満かい?お嬢様」
ベッキー「最高よ。でも、キットだったらもっと良かったかも」
マイケル「故障さえなけりゃあな。今、おばさんが一生懸命直してくれているところだ」
ベッキー「じゃあ、直ったらドライブできる?」
マイケル「もう暫くの辛抱だ」
マイケルのそばを黄色いタクシーが猛スピードで横切る。
前の車を縫って、走り去って行くタクシー。
前を見つめ、唖然とするマイケル。
マイケル「乱暴な運転をするタクシーだ」
ベッキー「急ぎの客を乗せてるのよ」
顔を合わせ、微笑む二人。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
マイケルとベッキーが中に入ってくる。
ベッキー、ナイト2000の運転席に駆け寄る。
ベッキー「はぁい、キット」
キット「お帰りなさい。ドライブは、どうでした?」
ベッキー「今度は、あなたと一緒に行きたい」
キット「それは、マイケルに失礼ですよ」
マイケル「いいんだよ。本当は、おまえで行く予定にしていたんだからな」
ナイト2000のボディの下に潜り込んでいた白い整備服を着た女が顔を出す。
女は、エイプリル・カーチス。
エイプリル「仕方ないでしょベッキー。無理は、言わないの」
ベッキー「悪いところは、もう直ったの?」
エイプリル「まだよ」
立ち上がるエイプリル。
エイプリル「ごめんなさい、マイケル」
マイケル「いいって。この一年でまた見違えるように元気になった…ローラも喜んでるだろ」
エイプリル「そりゃあもう。ボニーが大学から戻ってくるまでの三日間、
代わりにメカニックを頼まれたけど…なんだか、余計な仕事を増やしちゃったみたいね」
コーヒーカップにお湯を注いでいるマイケル。
マイケル「そりゃあ、言いっこなし。こっちもキットのシステムに重要な問題が見つかった直後に
君を呼んでしまったからね」
マイケル、エイプリルにコーヒーカップを手渡す。
バイクのエンジン音が鳴り響く。
RC3の乗ったバイクがマイケル達の前に立ち止まる。
ヘルメットを脱ぐRC3。
RC3「おやおや、マイケルとデートの約束でもしてたのかい?」
エイプリル「デートなら、こんなところには、いないわよ」
バイクから降り、二人の前に立つRC3。
RC3、キットの運転席に座っているベッキーを見つめ、
RC3「この子は?」
マイケル「エイプリルの姪のベッキーだ」
RC3、ベッキーに手を振り、
RC3「よっ!」
ベッキー、つんとした様子。
RC3「あれ、俺なんかまずいことした?」
コンピュータのアラームが鳴り響く。
エイプリル「マイケル、デボンさんからよ」
ディスプレイの前に近寄るマイケル。
デボン・オフィス。デスクに座るデボン・シャイアーの映像が映っている。
デボンの顔を見つめ、唖然とするマイケル。
デボン右目に黒い眼帯をつけている。
マイケル「なんだい?そのお茶目なアイパッチは?」
デボン「見た通りものもらいだよ。今朝起きたら、この有り様だ」
マイケル「海賊船の船長ばりにイカしてるぜ」
デボン「海賊だ?つまらん冗談は、よしてくれ。それより、至急調べて欲しい事がある。
最近、ビバリーヒルズ周辺でタクシーを使った強盗事件が相次いでいる。乗せた客から
金目の物を奪った後、車から被害者を放り出して逃走すると言った手口だ」
マイケル「その事件なら確か一週間前、新聞で読んだ」
デボン「昨夜、匿名の投書が被害者の写真つきで送られてきた。そのタクシーに乗った若い女性が
三日前から行方不明になっているそうだ。名前は、サリバン・フォスター」
マイケル、エイプリルと顔を合わし、
マイケル「キットは、使えるかい?」
エイプリル「軽い捜査活動ならば、大丈夫。SPM系の走行関連は、まだ、
十分にパワーを出せる状態じゃないから、余り無茶は、させないでね」
マイケル「わかった」
マイケル、ナイト2000の運転席のドアを開ける。
運転席のベッキーに話しかける。
ベッキー「私も行っていい?」
エイプリル「ベッキー!」
ベッキー「冗談」
キット「この仕事が終わったら、サンディエゴの海辺をドライブしましょう」
ベッキー「約束よ」
○ ラインツールキャブ
駐車場に入って行くナイト2000。
○ 同・車庫
タクシーの前に立つ金髪の中年の男・レイブン。右手にシャワーを持ち、
モップでフロントガラスを拭いている。
レイブンのそばにマイケルが立っている。
レイブン「ああ、そうだ。ビバリーヒルズのタクシー強盗が使ってる車は、俺のだ」
マイケル「いつ頃盗まれたの?」
レイブン「あんた探偵か?それとも刑事?」
マイケル「ナイト財団ってところで調査活動をしてる。そのタクシーに乗った若い女の子が
行方不明になっていてね」
レイブン「…盗まれたのは、丁度一ヶ月前だ」
マイケル「盗んだ奴の顔は、見た?」
レイブン「いや…。車から降りて用を足してる間の出来事だったからな…」
○ ビバリーヒルズ
パームツリーの車道を走るナイト2000。
○ パームツリー
脇道に止まるナイト2000。
歩道を歩くタンクトップの若い女に声をかけているマイケル。
サリバンの写真を見せ、話を聞いている。
× × ×
白髭の老人に写真を見せているマイケル。老人、首を傾げている。
× × ×
立ち並ぶ大邸宅の前を歩いているマイケル。前から着た夫婦に話し掛けている。
× × ×
ある家の入口の前。門越しに中年の男と話しているマイケル。男に似顔絵を見せている。
男「その子なら、三日前だったかな…丁度昼過ぎだ。近くのショッピングセンターで見たよ。男と一緒だった」
マイケル「男?」
男「靴の店で一緒に買い物してた。帽子とサングラスをかけて顔はわからなかったけど…中々の
美青年って感じだった…ほら、最近流行りのエクスト何とかってグループのボーカルと雰囲気が似てた」
○ ナイト2000車内
走行中。
モニターにステージで歌う金髪の美青年のビデオが映っている。
キット「エクストリード。パワフルボイスと過激なパフォーマンスで若者に人気のロックグループです。
ボーカルの名前は、ライザー・ミンダース」
マイケル、モニターを見ながら、リズムに乗って体を揺らしている。
キット、呆れた声で、
キット「マイケル?」
マイケル「中々イカしてるな。音も声もビジュアルも」
キット「そう言うだろうと思っていました」
マイケル「ライザーの住んでる場所は?」
キット「去年、ビバリーヒルズの高級住宅街に家を建てています」
マイケル「サリバンがタクシーに乗ったのもビバリーヒルズだ…」
○ 住宅街・市道
加速するナイト2000。
○ コロラド州・デンバー・アパート前
アパートの前に立ち止まるナイト2000。
○ アパート1F・サリバンの自宅
ドアの前に立っているマイケル。
マイケル「頼むぞ、キット」
コムリンクをノブに向けている。
○ ナイト2000のスキャナーが唸る。
○ アパート1F・サリバンの自宅
ドアの鍵が開く。
ノブを回し、ゆっくりとドアを開け中に入り込む。
○ 同・リビング
辺りを見回すマイケル。
右隅の掛け軸のそばに鳥篭がぶら下がっている。
鳥篭の中にいる淡灰色、黒いくちばしの鳥と目を合わすマイケル。
鳥「ドロボー、ドロボー!」
マイケル、鳥篭に近づき、
マイケル「何もしないからおとなしくしてろ」
鳥「ドロボー!」
マイケル、鳥篭から離れ、奥のドアを開ける。
○ 同・ベッドルーム
ゆっくりと中に忍び込むマイケル。
クローゼットの扉が開き、衣類が散らばっている。
デスクの引出しも全て開いている。
床にアルバムや小物などが雑然と置かれている。
引出しの中を見つめるマイケル。
中にたくさんの鞄や財布が入っている。
赤い財布を持ち、中身を確かめるマイケル。ドル札やクレジットカードは、全て抜き取られている。
ビジネスマン風の男の写真がついた免許証がある。
マイケル、唖然とした表情を浮かべる。
○ 同・リビング
奥の部屋のドアから出てくるマイケル。鳥篭の前を横切る。
オウム「ドロボー、セス、ドロボー!」
立ち止まるマイケル。鳥のそばに近寄る。
マイケル「今なんて言った?」
オウム「ドロボー、セス…」
○ 住宅街
市道を走るナイト2000。
マイケル「キット、タクシー強盗の被害者の名前をリストアップしてくれ」
○ ナイト2000車内
険しい表情でハンドルを握るマイケル。
助手席に鳥篭が置かれている。
モニターにタクシー強盗の被害者の名前と住所のデータが映し出される。
キット「マイケル、その鳥篭、何とかなりませんか?臭いが染み付きそうです…」
鳥「できそこない、できそこない!」
キット「誰ができそこないだって?」
マイケル「俺以外に彼女の部屋に忍び込んだ奴がいる。この鳥は、その証人なんだ。暫く我慢しろよ」
モニターに映るリストの名前をまじまじと見つめるマイケル。
マイケル「間違いない。机の引き出しに入ってたのは、タクシー強盗の被害者のものだ」
キット「サリバンがタクシー強盗に加担しているのですか?」
マイケル「まだわからん」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
退屈そうにテーブルの前に座っているベッキー。その向かいにRC3が座っている。
チェス盤のナイトを持ち、進めて行く。
RC3「あら、またやられちゃったよ…」
ベッキー「弱すぎ」
RC3「さすが、デボンを負かす事だけはある」
ベッキー「エイプリル、キットは、いつ良くなるの?」
エイプリル「直すのに必要な部品がまだ来てないの。そろそろ、届いてもいい頃なんだけど…」
テーブルに置いてある電話が鳴る。
電話に出るエイプリル。
エイプリル「はい…」
電話から男の声が聞こえてくる。
男の声「ナイト財団ですか?」
エイプリル「ええ…」
男の声「1時にロデオドライブの前に来てもらえますか。サリバン・フォスターに関する情報がある」
エイプリル「お名前は?」
男の声「それは、言えません…」
エイプリル「わかった。何か目印になるものを教えて」
男の声「白のニット帽を被ってます」
電話が切れる。唖然とするエイプリル。
RC3「なんだって?」
エイプリル「若い男からよ。サリバンの情報を握ってるって。一時にロデオドライブの前に来るようにって」
腕時計を見つめるRC3。
RC3「マイケルは、どこにいるんだ?」
エイプリル「30分前に連絡があった時は、デンバーのサリバンの自宅に向かうって言ってたけど…」
RC3「15分じゃあ、間に合いそうもないな。俺が代わりに行って来る」
RC3、バイクの前に行き、ヘルメットを被る。
鳴り出すエンジン。
○ コンテナを降り、道路を走り出すRC3のバイク
○ 市道走行するシルバーのバイク
その後をRC3が追っている。
○ ロデオドライブ
モダンな建物が立ち並ぶ。
階段の前を練り歩く人々。
バイクを止め、降りているRC3。
ヘルメットを外し、辺りを見回している。
道路の向かいの脇道に止まっている黄色いタクシー。
運転席に座る白髪の若い男ペゼル・シーガー。少し小柄で無精ひげを生やしている。
双眼鏡でRC3の姿を覗いている。
RC3の前に白のTシャツにブルーのジーンズ、ニット帽を被った男が近づいてくる。セス・オルモンドである。
セスを見つめ、歩き出すRC3。
セス、歩み寄ってくるRC3に気づき、足を止める。
セス「あんた、ナイト財団の関係者?」
RC3「ああ…君は?」
セス、道路の向こう側の脇道に止まっている黄色いタクシーに気づく。運転席に座るペゼル。
ペゼル、右手にサイレンサーつきの短銃を持ち、RC3達に向ける。
セス、咄嗟にRC3に飛び掛りる。
その直後、二人の後ろにある建物の壁に弾丸が弾く。
路面に転がるRC3とセス。
ペゼル、別の銃を握り、RC3達の方に銃口を向ける。
RC3のバイクのシートに弾が当たる。
セス、即座に立ち上がると、歩道を走って逃げ出す。
起き上がるRC3。
RC3「おい、ちょっと待てよ!」
RC3、振り返り、道路の方を見つめる。
黄色いタクシーが猛スピードで走り去って行く。
―ACT1 END―
―ACT2―
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
ナイト2000が入り込んでくる。
車から降りるマイケル。
コンピュータの前に立っていたエイプリルがマイケルに近づいて行く。
エイプリル「サリバンの事で30分前に男から連絡があって、RC3がロデオドライブに向かったわ」
マイケル「わかった…」
マイケル、踵を返し、運転席のドアを開ける。
マイケル「そうだ、ベッキー、ちょっとお願いがある」
マイケル、車から鳥篭を取り出し、ベッキーの前に持っていくマイケル。
マイケル「ちょっとの間、こいつの面倒を見てやってくれ」
ベッキー、珍しげに鳥を見つめる。
鳥「ドロボー、ドロボー!」
笑い出すベッキー。
ベッキー「いいわよ」
ナイト2000に向かって歩いて行くマイケル。
○ バックしてコンテナから路上に下りているナイト2000
バックターンすると、トレーラーと逆方向に走り去って行く。
○ 繁華街
雑踏の中を必死に走っているセス。
その200m後ろを走っているRC3。
セスを懸命に追っている。
RC3の左手首についているコムリンクのアラームが鳴っている。
マイケルの声「聞こえるか?RC3」
○ ナイト2000車内
スピーカーからRC3の声が聞こえる。
RC3の声「ちょうど良かった、マイケル。今男を追ってるところだ」
マイケル「何があった?」
RC3の声「待ち合わせ場所に行ったら、誰かが俺達に銃を撃ってきやがった」
マイケル「撃った奴の顔は、見たのか?」
RC3の声「黄色いタクシーに乗ってた。南の方角に逃げていった」
マイケル「わかった。俺は、タクシーを探す。気をつけろよ」
RC3の声「わかってますって」
マイケル「キット、ロデオドライブ周辺でスピードを出している車を探せ」
モニターに地図のイメージが映る。
路上に丸い点滅が浮かび上がる。
キット「南東の方角1.5キロ先に70マイル以上で走っている車があります」
アクセルを踏み込むマイケル。
○ 国道
スピードを上げ走るナイト2000。
○ 地下鉄・ムービングウォーク
まばらに人が乗っている。
その合間を縫って走り抜けているセス。
ムービングウォークの前にやってくるRC3。
セスを見つけ、追いかけ始める。
手摺りを飛び越え、反対方向のムービングウォークに乗り移るセス。また、走り始める。
走っているRC3、反対側のムービングウォークを走っているペゼルに気づき、手摺を飛び越える。
○ 国道
一般車両をジグザグに擦り抜け、暴走しているタクシー。交差点を通り過ぎる。
その交差した道からナイト2000がやってくる。
ドリフトしながら交差点を右に曲がる。
○ ナイト2000車内
マイケル「見つけたぞ、キット、マイクロロックの準備だ」
奇妙な電子音が鳴り初め、デジタルスピードメーターが暴走し始める。
マイケル「どうした?キット」
キット「また走行システムにトラブルが発生しました…」
○ ゆっくりとスピードを落として行くナイト2000
道の脇道に立ち止まる。
○ ナイト2000車内
フロントガラス越しに走り去って行くタクシーの姿が見える。
ハンドルを軽く叩くマイケル。
キット「すいません、マイケル」
マイケル「気にするな。タクシーの映像は、録画したな」
キット「ええ、ばっちりです」
マイケル「トレーラーまで戻れるか?」
キット「なんとか…」
○ 地下鉄・ホーム
立ち止まる電車の扉が開き、大勢の乗客が降りてくる。
階段を下りているセス。人ごみに紛れ込む。
階段を降りるRC3。
警告音が鳴る。電車の扉が閉まる。
動き出す電車。
○ 電車内
扉の前に立つセス。
窓越しに見えていたホームが消え、暗闇になる。
セス、溜息をつき、そばのシートに座り込む。
俯いているセス。顔を上げ、正面を見つめ、唖然とする。
対面のシートにRC3が腕を組み座っている。
RC3「やっと見つけたぜ」
ニンマリするRC3。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
テーブルの前に座り、鳥篭を見つめているベッキー。
ベッキー「ねぇ、エイプリル、オウムって何を食べるの?」
ベッキーの後ろに立つエイプリル。
エイプリル「この鳥は、オウムの一種でヨウムって言うの。ピーナツやヒマワリの種が好物なのよ」
ベッキー「何でそんなに詳しいの?」
エイプリル「昔飼ってた事があるから」
中に入ってくるナイト2000。
立ち止まると、車から降りてくるマイケル。
マイケル「またキットの調子が悪いみたいだ。見てくれないか?」
ナイト2000の前にやってくるエイプリルとベッキー。
キット「走行システムのユニットに異常が見つかりました」
エイプリル「臨時で組み立てたものだから、やっぱり、新しいのと交換しないと駄目みたいね。
もう一度調整してみるわ」
バイクのエンジン音が鳴り響く。
マイケル達の前に立ち止まるRC3のバイク。RC3の後ろにヘルメットを被ったセスが乗っている。
バイクから降りるセス。ヘルメットを外す。カラフルなモヒカン頭が露になる。
唖然とするマイケル。
マイケル「立派なトンガリだな。名前は?」
セス「セス、セス・オルモンド」
唖然とするマイケル。
マイケル「君がセスか。あの鳥が君の名前を何度も呼んでたぞ」
鳥篭を見つめるセス。
セス「オーリン…」
RC3「誰だって?」
セス「あの鳥の名前です。黙ってサリバンの自宅に侵入したもんだから、泥棒と勘違いされて…
何度も顔を合わしてるのに中々僕の事覚えてくれないんです」
RC3「おまえとサリバンは、どう言う関係なんだ?」
セス「幼馴染みです…」
マイケル「もしかして…財団に投書を送ったのは、君か?」
頷くセス。
RC3「じゃあ、何で逃げたりしたんだ?」
セス「財団に任せるつもりだったけど…ジッとしてられなくて」
マイケル「なぜサリバンの自宅に忍び込んだ?」
セス「三日前、サリバンに頼まれて、ある物を探しに彼女の自宅に行ったんです」
RC3「ある物って?」
セス「フィルムケースです。でも、居所を聞き出す前に電話が切れてしまって…
それから連絡が取れなくなったんです」
マイケル「なんで、彼女の家にタクシー強盗が盗んだ物が置いてあるんだ?」
セス「えっ?」
RC3「そういや、俺達を撃った奴もタクシーに乗ってたな」
セス「たぶん、サリバンの自宅に行った時に、強盗犯に顔を見られたのかも知れない。
妙なタクシーにつきまとわれ始めたのもその時からだし…」
マイケル「エクストリードのボーカルのライザー・ミンダースって男の事を知ってるか?」
セス「ええ。彼女は、ライザーの大ファンです。何度か一緒にライブを見に行った事があります。
ビバリーヒルズのライザーの住宅に何度も張りついていましたから…」
マイケル「RC、キットが録ったビデオに映ってる人物を調べてくれ。
わかったらデボンに知らせてくれ」
RC3「お安い御用だ」
○ ビバリーヒルズ・高級住宅街・歩道
ファンに囲まれているエクストリードのボーカル・ライザー・ミンダース。
サングラスをかけている。
ライザー「皆さん、落ち着いて、ゆっくりね」
ファンのサイン色紙を掴み、サインしているライザー。
脇道に止まるナイト2000。
マイケル、窓越しからライザーの様子を窺う。
○ ナイト2000車内
マイケル「物凄い熱狂ぶりだな」
キット「一ヶ月前に売り出した新曲が四週連続でヒットチャート三位圏内に入っています」
マイケル、外の様子を見つめる。
マイケル「ライザーについてデータは、何か入っているか?」
キット「今夜の6時からロス市内のスタジアムでライブが行われるようです」
BMWの後部席に乗り込むライザー。
ファンに囲まれたBMW、そのまま路上を走り去って行く。
キット「ライザーを追わないんですか?」
マイケル「その前に、やることがある…」
○ ライザーの自宅前
巨大な門構えのある3F建ての優雅な白い建物が見える。
脇道に止まるナイト2000。
運転席の窓からライザーの家を見ているマイケル。
○ ナイト2000車内
マイケル「さぁてと、どうやって中に入ろうか…」
巨大な門が開く。ナイト2000の後方からやってきた黒い高級車が門を潜り、中に入って行く。
マイケル「キット、今の車のナンバーを記録しとけ」
キット「わかりました」
マイケル「よぉし、例の高圧電流を頼む」
キット「監視システムを破壊するのですか?」
マイケル「そう言うこと」
車から降りるマイケル。
コンソールのパネルの『ELECTORICAL GENERATING MODE』のボタンが光る。
○ ナイト2000のスキャナーが唸る
○ ライザーの自宅前
監視カメラの下に立っているマイケル。
コムリンクをカメラに向けている。
やがて、監視カメラから火花が飛び散り、白い煙が上がる。
○ 同・自宅・庭先
庭にプールがある。
マイケル、低い壁を乗り越え、中に入って行く。
ベランダの窓を開けるマイケル。そのまま、家の中に忍び込む。
○ 同・中廊下
辺りを見回しながら歩いているマイケル。
正面から茶色いスーツを着た体格の良い、長身の髭面の男がやってくる。
壁隅に身を隠すマイケル。
男、手前で曲がり、姿を消す。
マイケル、立ち去って行く男を確認した後、階段を上り始める。
○ 同・2Fベッドルーム
静かに歩いているマイケル。
辺りを見回し、クローゼットを開ける。
奇抜な衣装がたくさんかかっている。
コムリンクのアラームが鳴る。
コムリンクに話し掛けるマイケル。
マイケル「何だ?」
キットの声「庭先に車が止まりました。どうやら、ライザーが戻ってきたようです…」
マイケル、慌てて、クローゼットを閉め、足早に外に出て行く。
マイケル、足を止め、足元を見つめる。
ベッドの下に置かれている黒いスーツケースを見つける。
ケースを開ける。中をジッと見つめるマイケル。中にヘロインの袋がぎっしり詰まっている。
○ 同・1F廊下
階段を下りているマイケル。
そのまま、廊下を歩き出す。
トイレの前を通り過ぎるマイケル。
その時、トイレの扉が突然、開く。
中からライザーが出てくる。
マイケル、ライザーと顔を合わす。
ライザー、怪訝にマイケルを見つめ、
ライザー「誰だ?」
マイケル、ライザーに握手をする。
マイケル「やぁ、こんにちは…すいません黙って上がりこんじゃって…ちょっと…トイレを借りに…」
ライザー「わざわざ、僕の家に?僕の事は、知ってるよな」
マイケル「…ライザー・ミンダース。エクストリードのボーカルだろ?」
ライザー「ここの警報システムは、そこら辺のちんけなものとは、わけが違う。どうやって中に入った?」
開き直るマイケル。
マイケル「…俺は、マイケル・ナイト。ナイト財団ってところで働いている」
ライザー「ナイト財団?」
マイケル「ある女の子が三日前から行方不明になっていてね。名前は、サリバン・フォスター。
彼女は、君のファンで、姿を消す前にここに来ていた可能性が高いんだ」
ライザー「ファンは、山ほどいる。その子だけ特別扱いしてうちに上げたりしない」
マイケル「ホントに?」
ライザー「おまえは、不法侵入した。警察を呼ぶ」
マイケル「いいよ…でも一緒に自分の部屋も調べられたりしたら不味いんじゃないのかい?」
顔を引きつらせるライザー。
ライザー「俺を脅迫する気か?」
マイケル「偶然見つけたんだ。使い過ぎてファンを悲しませないようにな…」
マイケル、その場を立ち去って行く。
マイケルの背中を睨みつけているライザー。
○ ライザーの自宅前
ナイト2000の前にやってくるマイケル。車に乗り込む。
○ ナイト2000車内
運転席に座るマイケル。
キット「うまく逃げ出せたようですね」
マイケル「いいや。ライザーに見つかった」
キット「じゃあ、どうやって?」
マイケル、笑みを浮かべ、
マイケル「体を気遣ってやったのさ」
マイケル、エンジンをかけ、車を発進させる。
○ ロス市内・スタジアム前
駐車場に入り込んでくるナイト2000。
機材を積んだ大型トレーラーが数台、縦列に止まっている。
慌しく、機材を運び込んでいるスタッフ達。
その中を歩いているマイケル。
照明機材の前に立つマイケル。
目の前にスタッフの男が通りがかる。
マイケル「ずいぶん大掛かりなんだな」
立ち止まる髭面の男。
男「あんたは?」
マイケル「イベント会社から頼まれて、機材のチェックに来た。今夜は、どれぐらいの人が集まるの?」
男「ザッと5万人は、行くだろう。なんたって、ファンお待ちかねの半年ぶりのライブだからな」
マイケル「この照明、やけに大きな…」
男「何でも宇宙ステーションをイメージしたステージらしい。最後にどでかいロケット花火が
打ち上がるんだとよ…」
○ 砂漠の道に止まるナイト財団移動本部トレーラー前
トレーラーの横に止まるデボンのオープンカーの後ろにRC3のバイクが止まっている。
コンテナから降りてくるRC3。バイクの前に歩み寄る。
RC3、バイクのシートの穴に気づき、
RC3「あーあ、あの野郎、俺のバイクに穴開けやがって…」
RC3、シートに刺さっている弾丸を抜き取る。
弾丸の先端が白く発光している。
RC3「なんだこりゃあ…」
RC3の背後でタイヤの軋む音が響く。
ハッと振り返るRC3。
黄色いタクシーがスピードを上げ、走り去って行く。
RC3「あいつ、俺をつけてやがったのか…」
RC3、慌ててヘルメットを被ると、バイクにまたがる。
けたたましいエンジンを鳴らしながらタクシーを追いかけていくRC3のバイク。
○ ナイト2000車内
運転席に乗り込むマイケル。
通信のアラームが鳴り響く。
キット「RCからです」
マイケル「どうした?」
スピーカーからRC3の声が聞こえる。
RC3の声「さっきのタクシーを見つけた。今、追跡中」
マイケル「どこで見つけたんだ?」
RC3の声「トレーラーの前だ。どうやらつけられてたみたいだ」
唖然とするマイケル。
マイケル「わかった。俺もすぐ行く」
○ 市道
急ブレーキをかけ、スピンターンするナイト2000。白い煙を上げながら、逆方向へ走り始める。
○ 国道
走行する黄色いタクシー。その後をRC3のバイクが追っている。
タクシー、突然、急ブレーキをかけ、スピンターンすると、そのまま、RC3のバイクに突進して行く。
RC3、正面から向かってくるタクシーを避け、対向車線に出るが、
そのまま勢い良く路面に滑り込み、勢いよく転倒する。
タクシー、そのまま、走り去って行く。
うつ伏せで倒れているRC3。頭を少し上げるが、暫くして力尽きる。
―ACT2 END―
―ACT3―
○ ライザーの自宅・書斎
デスクの電話の受話器を持ち話しているライザー。
ライザー「取り引きまで、まだ時間があるだろ?」
× × ×
ビジネス街。
電話ボックスの中に立っているペゼル。
受話器を握っている。
ペゼル「妙な奴らが嗅ぎ回ってる。おまえ、サツに垂れ込んだんじゃないだろうな?」
× × ×
ライザー「…知らん…そう言えば、うちにも変な奴が来た。ナイト財団とか言ってたな」
ペゼルの声「ナイト財団?」
ライザー「サリバンは?」
× × ×
ペゼル「心配するな。だが、危うく殺しかけた。俺に嘘をついてたんでな。まだ見つからないんだよ、
あれが…」
ライザーの声「彼女の自宅にあるんじゃないのか?」
ペゼル「ないから困ってるんだよ。今、女のダチを探してるところだ。また後でな」
受話器を置くペゼル。
× × ×
溜息をつくライザー。
○ 病院・治療室
椅子に座るRC3。看護婦、RC3の右腕に包帯を巻いている。
マイケルが部屋に入ってくる。
マイケル「怪我の具合は?」
RC3「この通り、大した事はない」
RC3の右足を見つめるマイケル。
マイケル「足も怪我したのか?」
RC3「軽い捻挫さ。それよりあのタクシーは?」
険しい表情で首を横に振るマイケル。
RC3「たぶん、こいつのせいだ」
RC3、シャツのポケットから弾丸を取り出し、マイケルに手渡す。
マイケル、弾丸をジッと見つめている。
RC3「ロデオドライブの前で撃たれた時に俺のバイクにも刺さってた。先端に発信装置が組み込まれてる」
弾丸を握り締め、険しい表情を浮かべるマイケル。
RC3「やばいぜマイケル。早くトレーラーに戻らないと…」
コムリンクのアラームが鳴り響く。
コムリンクに話しかけるマイケル。
マイケル「何だ?」
キットの声「今、エイプリルから連絡がありました。男から連絡があったそうです。
十分後にセスをロスの駅前に連れて行く様にと。来なければ、サリバンを殺すと脅迫してきたそうです」
マイケル「…わかった。すぐに戻ると伝えてくれ」
立ち上がるRC3。
マイケル「RC、おまえは、休んでろ」
RC3「こんなところでジッとしてられるかよ」
マイケル「じゃあ、ミンダースの自宅を見張ってくれ」
RC3「お任せ」
マイケル、険しい表情を浮かべ、立ち去って行く。
○ ナイト2000車内
車に乗り込むマイケル。
エンジンをかけ、走り始める。
キット「先ほどのライザーの家から出てきた高級車の所有者がわかりました」
マイケル「誰だ?」
キット「ゼネキス病院の医院長モルト・リーンズのものです」
怪訝な表情を浮かべるマイケル。
通信のアラームが鳴り響く。
キット「デボンさんからです」
モニターに映るデボン。
デボンの声「ビデオに映った男の事がわかったぞ。名前は、ペゼル・シーガー。半年前までラインツール
キャブにいた。タクシードライバーをする前は、ミュージックビデオ会社の
特殊効果スタッフとして6年ほど働いてそうだ」
マイケル「ライザーとつながるような資料は何か見つかったか?」
デボンの声「直接関係するものは見つからなかったが、ビデオ会社を辞める一年程前にペゼルは、
独立して自分の映像関連会社を立ち上げようとしたらしいが、断念している」
マイケル「理由は?」
デボンの声「共同出資を募った友人がペゼルを裏切り、別の会社を作ったらしい」
マイケル「なるほどね…」
デボンの声「ところで私の車…いつになったら戻ってくるのかね?」
マイケル「ああ…忘れてた。今、トレーラーに横付けしてある。仕事が片付いたら、本部に届けるよ」
デボンの声「キットと勘違いして乱暴な運転は、しなかっただろうな?」
マイケル「傷一つつけてません」
デボンの声「ベッキーのためとは言え、あれがないとどうも落ち着かん」
マイケル「そう焦らない。そのおめめじゃ今は運転は無理だろ?…」
デボン、ムッとした表情で眼帯を触る。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
鳥篭の前に座っているベッキー。
奥の部屋からエイプリルの悲鳴が上がる。
セスがベッキーの前を横切り走り去って行く。
ベッキー「どうしたの?」
エイプリル「待ってセス!」
○ ロス郊外
脇道に止まるトレーラー。トレーラーの横に止まっているデボンのオープンカーに乗り込むセス。
エンジンをかけると土煙を上げながら走り去って行く。
外に出てくるエイプリルとベッキー。
エイプリル「セス!」
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、エイプリルから連絡が入っています」
モニターにトレーラーのコンテナにいるエイプリルが映し出される。
マイケル「どうした?エイプリル」
エイプリルの声「大変よ。セスがデボンさんの車に乗ってロスの駅に向かったわ」
険しい表情を浮かべるマイケル。
○ ロス市内・ダウンタウン
巨大なビル群が立ち並ぶオフィス街。
赤いオープンカーが脇道に立ち止まる。
運転席から降りるセス。
○ オープンカーの向かい側の脇道に止まっている黄色いタクシー
歩道に立っているセス。辺りを見回している。
しきりに鳴り響くクラクションの音のほうに顔を向ける。
タクシーに気づくセス。
運転席からペゼルが顔を出し、指で合図している。
車道を通りタクシーの前に歩み寄るセス。
ペゼル「早く乗れ」
タクシーの後部席のドアを開け、乗り込むセス。
○ タクシー車内
後部席に座るセス。隣にサリバン・フォスターが座っている。
サリバン、ポニーテールの髪型、眼鏡をかけている。
唖然とするセス。
セス「サリバン!」
サリバン、動揺した面持ち。
ペゼル、セスに銃を向ける。
ペゼル「鳥篭をどこにやった?」
サリバン「オーリンの鳥篭よ…どうしたの?」
セス「あれは、マイケル達が持ってる…」
ペゼル「クソ!」
ペゼル、車を発進させる。
○ ロス市内・ダウンタウン
国道を疾走しているナイト2000。
巨大な交差点を勢い良く右に曲がるナイト2000。
対向車線から黄色いタクシーが走ってくる。
○ ナイト2000車内
正面からやってくるタクシーを見つめるマイケル。
マイケル「きっと、ナンバーを映してくれ」
モニターにタクシーのナンバープレートがアップで映る。
キット「間違いありません。ペゼルのタクシーです」
○ ナイト2000の横を通り過ぎて行くタクシー
白い煙を上げから、スピンターンするナイト2000。逆方向に走り出し、タクシーを追い始める。
○ 競馬場前の通り
勢い良く走っているタクシー。
競馬場の手前の駐車場に入り込んで行く。
暫くして、スピードを上げ走っているナイト2000。
タイヤを軋ませながら、駐車場に入って行く。
○ 駐車場
スピードを上げ走り去るタクシー。
ふらつきながら歩いているセス。体から炎が上がっている。
悲鳴を上げ続けているセス。
○ ナイト2000車内
フロントガラス越しに燃えているセスの姿が見つめ、驚愕するマイケル。
マイケル「キット、二酸化炭素だ!」
コンソールの『CO2』のボタンが光る。
○ セスの前で立ち止まるナイト2000
前バンパーの下から白い気体がセスの体に向かって噴射する。
白い気体に包まれているセス。そのまま、路面に仰向けに倒れる。
車から降りるマイケル。セスの前に近づくマイケル。
マイケル「キット、セスの体を調べてくれ!」
○ ナイト2000車内
モニターにセスのイメージが映り、全身をスキャンしている。
キット「上半身の約33パーセントにやけどを負っています」
○ 険しい表情でセスを見ているマイケル
マイケル「救急車だ。早く!」
RC3のバイクがナイト2000の前にやってくる。
立ち止まると、バイクから降りるRC3。
マイケル「RC!なんでここに?」
RC3「ライザーの車を追ってやってきたんだ」
マイケル「で、ライザーは?」
RC3「そこの道でUターンして慌てて戻っていきやがった」
セスを見つめるRC3。顔を歪める。
RC3「ひどい事をしやがる…」
マイケル「セスの事、頼む。俺は、タクシーを追う」
頷くRC3。
ナイト2000に乗り込むマイケル。
急発進するナイト2000。
○ 地下トンネル
四車線の道。
オレンジ色の照明下を走行するタクシー。
その後を追うナイト2000。
一般車両をジグザクに抜き、さらに加速するタクシー。
前を走っていたシルバーのセダンとぶつかるタクシー。
セダン、ぶつかった反動で、バランスを失い、道の中央に横向きになって立ち止まる。
立ち止まったセダンに走ってきた4WDが衝突する。
○ ナイト2000車内
フロントガラス越しに事故車が立ち往生しているのが見える。
キット「どうするんです?」
マイケル「一か八かだ」
キット「まさか、この中でジャンプを?」
マイケル「頭を擦るなよ!」
マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
○ タービンが激しく唸り、ジャンプするナイト2000
トンネルの天井すれすれの高さで事故車の上を飛び越えて行く。
着地するナイト2000。
○ トンネルを抜け出るナイト2000
ドリフトしながら交差点を右折する。
○ ナイト2000車内
辺りを見回すマイケル。
マイケル「タクシーは、どこに行った?」
キット「次の交差点を曲がったところにいます」
マイケル、ハンドルをおもいきり左に切る。
○ 交差点
勢い良く左折するナイト2000。
500メートル前方に黄色いタクシーが走っている。
タクシーにぐんぐん迫って行くナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル「キット、マイクロロックだ!」
キット「了解」
コンソールの『MICRO ROCK』のボタンを押すマイケル。
モニターにタクシーの3Dイメージが映る。後ろの両輪が赤く点滅する。
○ 急停止するタクシー
タクシーの前に回り込み、立ち止まるナイト2000。
車から降りるマイケル。
タクシーの運転席を覗く。
小太りの中年のドライバーの男が呆然としている。
唖然とするマイケル。後ろの席を覗く。
誰も乗っていない。
引きつった表情を浮かべるマイケル。
マイケル「キット!こいつは、別のタクシーだ」
キットの声「しかし、ナンバーは、ペゼルのタクシーのものです」
マイケル、運転席のドアを開け、ドライバーの胸倉を掴み、外に引きずり出す。
マイケル「(怒号を上げ)ペゼルの仲間か?」
男「若い奴に車を交換しろって銃で脅されたからよ、乗り換えてやったんだ」
男から手を離すマイケル。
マイケル「そいつは、どこに行った?」
男「女の子と一緒に俺の車に乗って、逆方向に走って行った…」
マイケル「女の子?」
男「ハイスクールに通ってるくらいの若い子だった…眼鏡をかけてた」
マイケル「サリバンだ…クソ!」
歯を食いしばるマイケル。
―ACT3 END―
―ACT4―
○ ロス市内・ゼネキス病院・全景
駐車場にナイト2000が止まっている。
○ 同・医院長室
デスクに座っている白衣を着た初老の男・モルト・リーンズ。
モルト「ミンダースのカルテを見せろだと?」
マイケル「彼は、タクシー強盗の事件に関与しています。患者の守秘義務があることは、
わかっていますが、ぜひ協力をお願いしたい」
モルト、引き出しから、ファイルを取り出す。
モルト「証拠は?」
マイケル「まだ…でも、彼の部屋で半端じゃない量のヘロインを見つけた。ライザーのかかりつけの
医者のあなたなら彼がヘロインを常用していた事を知っていたはずだ」
モルト、観念した様子で、
モルト「彼は、声帯腫瘍だ。悪性のな。手術をすれば、命を取り留めることはできるが、声は、失う。
つまり、どっちにしろ歌手生命は、奪われると言う事だ」
マイケル「…」
○ 国道
疾走するナイト財団移動本部トレーラー。
開いた扉の上を駆け上がり、コンテナの中に入り込むナイト2000。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
ナイト2000の前に立つマイケルとエイプリル。
エイプリル「RC3は?」
マイケル「病院だ。セスにつきそってる」
エイプリル「セスの様態は?」
マイケル「やけどの具合は、芳しくないが、命に別状はない」
エイプリル「さっき警察から連絡があって…デボンさんの車がロスの警察署に保管されてるらしいの。
ちょっと取りに行ってくるわ」
マイケル「何も君が行かなくたって…」
エイプリル「ベッキーのドライブのために無理言って貸してもらったのよ。ほっとくわけにはいかないわ」
テーブルの前に座っているベッキー。
エイプリル「ベッキー、暫く留守番頼むわね」
ベッキー「はい」
エイプリル、コンテナから出て行く。
鳥篭のそばにあったヒマワリの種の入った袋を持ち、食べ始めるマイケル。
マイケル、ふと、鳥篭の中を覗く。
餌箱の下に黒いフィルムケースが貼り付けられている。
マイケル、鳥篭の扉に手を入れ、ケースを取る。ナイト2000に向かって歩き出す。
マイケル「キット!こいつの解析を頼む」
ナイト2000の運転席に乗り込むマイケル。
○ ナイト2000車内
化学分析装置の箱が突出し、開く。
中にフィルムケースを入れるマイケル。
箱が閉まると電子音が鳴り始める。
キット「ネガは合計24枚あります」
マイケル「順番に映し出してくれ」
モニターに映る画像。ファンに囲まれるライザーのフルショット、アップ、サリバンとライザーのツーショット、
そのアップと次々に映し出されて行く。
モニターを見ているマイケル。
マイケル「キット止めろ!」
モニターに黄色いタクシーが映っている。
ペゼルが中年の男にナイフを向けている瞬間が映し出されている。
マイケル「サリバンの自宅に忍び込んだのは、セスだけじゃなかったんだ…」
テーブルの上の携帯電話が鳴り出す。
電話に出るマイケル。
マイケル「もしもし…」
男「サリバンをセスみたいにしたくなかったら、鳥篭を持って外に止まっているタクシーに乗れ」
マイケル「ペゼルか?…」
男「…一人で来い。早く」
電話が切れる。
マイケル、テーブルに携帯を置く。
マイケル、入口に向かって歩き出す。
ベッキー「マイケル、どこ行くの?」
マイケル「君は、そこでジッとしてて」
ナイト2000のそばを通るマイケル。
マイケル「キット、B作戦決行だ。ベッキーの事を頼んだぞ」
キットの声「了解」
○ トレーラー前
タクシーが横付けされている。
タクシーの前にやってくるマイケル。
運転席の窓から顔を出すペゼル。
マイケル「どうしてここがわかったんだ?」
ペゼル「あの若い男から聞きだしたんだ。鳥篭は?」
マイケル、フィルムケースをペゼルに見せる。
マイケル「お望みのものはこれだろ?」
手を出すペゼル。
ペゼル「貸せ」
マイケル「サリバンに会ってからな」
ペゼル、ほくそ笑む。
ペゼル「乗れ」
マイケル、険しい表情で、タクシーの後部席に乗り込む。
走り出すタクシー。
コンテナから降りてくるベッキー走り去るマイケルを見つめている。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
ナイト2000の前にやってくるベッキー。
ベッキー「マイケルがタクシーに乗って、どこかに行っちゃったけど…」
ナイト2000運転席に乗り込むベッキー。
キットの声「そのようですね」
ベッキー「なんでそんなに落ち着いてるの?」
キットの声「ある作戦を実行中なんです。この事は、まだ誰も言わないで下さい」
ベッキー「そうなんだ…わかった。約束するわ」
ベッキーのそばで女の声がする。
女の声「お待たせ、キット。やっと部品が届いたわよ」
運転席の窓を覗くベッキー。
目の前にボニー・バーストが立っている。
キット「ボニー…」
ボニー、怪訝な表情を浮かべ、
ボニー「…何かあったの?」
○ スタジアム前・入口
客達がぞろぞろと中に入っている。
○ 同・中コンサート会場
宇宙ステーションを模した巨大なステージが中央に立てられている。
グラウンドを埋め尽くすファン。
観客席にも若者達で溢れ返っている。
○ 同・スタッフルーム
慌しく動き回っているスタッフ。
ベーシストのニックが歩いている。ピンク色のモヒカン頭。
ニック、あるスタッフの男を呼び止める。
ニック「おい、ライザーはまだ来てないのか?」
男「もうすぐ到着するはずです…」
ニック「あの野郎、またリハサボりやがって。本番まであと2時間しかねぇのによ」
○ 市道
走行するタクシー。
○ 海岸縁・倉庫
古びた建物。
○ 倉庫内
中央に止まるタクシー。
タクシーの前に立たされるマイケル。
マイケルと対峙するペゼル。
倉庫の扉が開き、黒いBMWがゆっくりと入ってくる。
入口を見つめるペゼル。
二台のBMW、立ち止まる。前に止まったBMWの後部席からサリバンが降りてくる。
運転席の男が降り、後ろからサリバンに銃を向ける。
もう一台のBMWから降りてくるライザー。
サリバン、ライザーを気づき、
サリバン「ライザー!」
ライザー「来るな」
サリバン「…」
呆然と立っているサリバン。
唖然とするマイケル。
ライザーの前に近づいて行くペゼル。
ライザー、青いスーツケースをペゼルに手渡す。
ライザー「約束の10万ドルだ」
ペゼル、ケースを受け取る。
ケースを開け、中身を確認するペゼル。
ペゼル、ほくそ笑み、
ペゼル「ファンは、大事にしないとな」
ライザー「彼女を解放しろ」
ペゼル「よし、(マイケルを見つめ)あの男の隣に行け」
歩き出すサリバン。マイケルの前に立つ。
マイケル「君を探してたんだぞ、サリバン」
サリバン「ライザーは、私のために身代金を用意してくれたのよ」
マイケル「どう言うことか説明してくれないか?」
サリバン「一週間前、ライザーと二人で海辺を歩いていた時にあの男の犯行現場を目撃してしまったの…」
マイケル「…?」
サリバン「あの時思わず、カメラで犯行現場を写してしまったの…ライザーは、
私に逃げるように言って自分だけあの男のタクシーに乗って消えてしまった。私は、家に帰って、
犯行現場を映したフィルムを警察に送ろうとしたけど、ライザーの事が気になって…」
マイケル「それで、オーリンの鳥篭に隠した」
サリバン「直接交渉しようと思って、ビバリーヒルズの辺りを歩いてたら、
偶然、あの男のタクシーを見つけたけど…」
マイケル「逆に捕まったってわけか…」
頷くサリバン。
マイケル「ライザーとは、いつ知り合った?」
サリバン「10日ほど前。ライブに来てた私の事を覚えててくれて…その時初めて会話したの。
彼、もうすぐ声が出なくなるの…」
マイケル「君も知ってたのか」
サリバン「今日が最後のライブなのに…」
ペゼルと話すライザー。
ライザー「彼女を離してやれ」
ペゼル「ライブが終わってから解放してやる。心配するな」
ライザーを腕時計を見つめる。
ペゼル「俺を信じられないのか?」
動揺するライザー。声を上げるサリバン。
サリバン「ライザー、早くスタジアムに行って!」
マイケル「フィルムケースは俺が持ってる。後の事は、俺に任せろ」
ライザー「…悪いサリバン」
頷くサリバン。
ライザー「(ペゼルに)また後で来る」
ライザー、車に乗り込む。
走り去って行くBMW。
サリバン、動揺した面持ちでマイケルに話す。
サリバン「セスは?どうなったの」
マイケル「大やけどを負ったが、心配ない」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
ナイト2000の前に立っているボニー。
ボンネットを開け、エンジン部をいじっている。
ボニーのそばに立っているベッキー。様子を窺っている。
ボニー、勢い良くボンネットを閉める。
ボニー「いいわ。これでOKよ。システムの電源を入れてみて」
○ ナイト2000車内
電子音が鳴り、ダッシュボードのパネルが一斉に光り出す。
『SUPER PERSUIT MODE』のコントロールパネルの扉が開く。ボタンが光る。
○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
ベッキー、ナイト2000を見つめ、驚く。
キット「ボニー、完璧です」
ボニー「当然よ」
ベッキー「凄い…いつの間にこんな事までできるようになったの?」
キット「本当は、あなたに会った時にすぐお見せしようと思っていたのですが…」
ボニー「キット、もういいわよ」
元の形に戻るナイト2000。
ボニー「ねぇ、キット。マイケルは、どこに行ったの?」
キット「…それは」
テーブルの携帯が鳴る。
ベッキー「ボニー、電話が鳴ってる」
ボニー、慌てて、電話に出る。
ボニー「はい、わかりました…」
テーブルに電話を置くボニー。
ボニー「ベッキー、ローラからよ。家に戻ってきなさいって」
キットの声「私が自宅まで送ります」
笑顔になるベッキー。
ベッキー「やった」
ナイト2000の運転席の扉が開く。
ベッキー、運転席に乗り込む。
バックするナイト2000。
ボニー、怪訝な表情を浮かべる。
○ トレーラーのコンテナから降りるナイト2000
180度ターンし、逆方向へ走り始める。
○ ナイト2000車内
通信用のアラームが鳴り出す。
ベッキー「どうしたの?」
キット「マイケルのコムリンクからの信号をキャッチしました」
モニターに海岸付近の地図が映し出される。
キット「ここから4キロ先の海運倉庫です」
ベッキー「行きましょう」
キット「しかし、あなたを危険に晒すわけには…」
ベッキー「この中にいれば平気でしょ?」
キット「わかりました。では、スーパー追跡モードのボタンを押して」
ベッキー、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。
○ 変形するナイト2000
ジェットエンジンの爆音を轟かせながら
猛スピードを走り出すナイト2000。
悲鳴を上げているベッキー。
○ 海岸縁・倉庫内
タクシーの前に立つマイケルとサリバンに銃を向けているペゼル。
マイケル、ジャケットからフィルムケースを取り出す。
ペゼル、マイケルからフィルムケースを奪い取る。
ペゼル、ケースからフィルムを出し、ネガを確認する。見終わると、地面に落とし足で踏みつける。
ペゼル「これで何もかもすっきりする…おまえ達の始末が終わったらな」
マイケル「やっぱりな。サリバンの自宅に盗品を置いたのも彼女を犯人に仕立てるためだったんだな?」
ペゼル「全て読み通りに行くはずだった。おまえさえいなけりゃあな」
サリバン「ライザーから身代金を巻き上げといて、約束まで破るなんて…最低!」
ペゼル「約束なんて言葉は、とっくの昔に忘れちまった。なぁ、サリバン。俺は、嘘を吐く奴が大嫌いなんだ。
初めから正直にフィルムケースの場所を教えてくれていたら、こんなことにはならなかったんだぞ…」
サリバン「ライザーが助かるならいいわ。殺しなさいよ」
ペゼル「馬鹿な奴だ。当然あいつにも消えてもらう」
サリバン、ペゼルに飛び掛ろうとする。
ペゼル、咄嗟にサリバンに銃を向ける。引き金を引こうとするペゼル。
その瞬間、シャッターを突き破り、元の姿のナイト2000が突進してくる。
ペゼル、咄嗟にサリバンの腕を掴む。ナイト2000に拳銃を撃ちながら、
サリバンをタクシーの助手席に乗せる。運転席に乗り込むペゼル。
走り出すタクシー。
ナイト2000のボディに当たる弾丸。火花を散らし跳ね返っている。
マイケルの前に立ち止まるナイト2000。
マイケル「キット、マイクロロックをかけろ」
ナイト2000のスキャナーが唸る。
タクシーの後輪がロックする。
急停止するタクシー。
走り出すマイケル。
入口からRC3が乗ったバイクが入ってくる。
タクシーから降りるペゼル。右手に銃を持っている。
ペゼル、マイケルに銃を向ける。ペゼルの後ろから突進してくるRC3のバイク。
RC3、右足でペゼルの背中を蹴る。
ペゼル、タクシーのボディに頭をぶつけながら前のめりに倒れる。
タクシーの助手席のドアを開けるマイケル。サリバンの腕を掴み、外に出す。
ナイト2000の前に歩いて行くマイケルとサリバン。
マイケル「絶妙のタイミングだったな、相棒」
キットの声「走行システムの機能が回復しました」
マイケル「無事部品が届いたようだな。そりゃあ良かった…」
マイケル、ナイト2000の運転席にいるベッキーを見つめ、唖然とする。
マイケル「ベッキー!」
ベッキー、無邪気に手を振っている。
マイケル「こりゃあどう言う事だ?キット」
キット「すいません。彼女との約束を果たそうと思って…」
呆れた顔をするマイケル。
バイクから降り、マイケルの前に近づくRC3。
RC3「何とか間に合ったな」
車から降りるベッキー。
マイケル「ベッキーを頼む」
RC3「マイケル、どこに行く?」
マイケル「スタジアムさ」
ベッキー「楽しかったわ、キット。またね」
キットの声「ローラによろしくと伝えてください」
ナイト2000に乗り込むマイケルとサリバン。
エンジンを唸らせ、土煙を上げながら、
穴の開いたシャッターを潜り外に出て行く。
○ スタジアム前(夜)
中から熱狂的な歓声が響いている。
○ 同・スタッフルーム
扉が開く。
派手な衣装を着たライザーが出てくる。
ライザーを阻むように目の前に立つマイケルとサリバン。
マイケル達に気づくライザー。
サリバン、ライザーに抱きつく。
マイケル「…昼間は、あんな事言って悪かった」
笑みを浮かべるライザー。
ライザー「ステージが終わったら警察に事情を説明しに行く」
マイケル、ライザーと握手をし、
マイケル「期待してるよ」
ライザー「…ああ。皆の記憶に残る最高のステージにしてやる」
ライザー、サリバンの頭を撫でる。寡黙にライザーを見つめるサリバン。
うっすらと目に涙を浮かべている。
悠然と歩き出すライザー。マイケル達を横切る。
マイケル、サリバン、歩き去って行くライザーの背中をまじまじと見ている。
―ACT4 END―
―ACT5―
○ カフェテラス(数日後)
店前に立ち止まるナイト2000。
外側のテーブルに座っているマイケルとエイプリルとRC3とボニー。
テーブルの鳥篭が置かれている。
コーヒーを啜っているマイケル。
ボニー「今日の新聞に出てたわよ。エクストリードの解散の事」
マイケル「メンバーは、さぞかしショックだろうな。ライザーの病気の事を知ってたのは、
モルトとサリバンだけだったらしいし…」
RC3「でも、新聞には、ライザーの病気の事は、何も書かれてなかったぜ?」
エイプリル「表向きには、メンバー内の仲間割れってことになってるらしいわね。でもライザーは、
どうしてサリバンに病気の事を打ち明けたのかしら?」
マイケル「ライザーは、幼い頃妹を病気で亡くしてるんだ。サリバンがその妹にそっくりだったらしい。
自宅の監視カメラの前に立っていた彼女を見て、話がしたくなったそうだ」
RC3、エイプリルとボニーを見つめ、
RC3「そう言えば、お二人さん、顔を合わしたのは、今日が始めて?」
ボニー「いいえ、エイプリルとは、ナイト2000の開発プロジェクトを進めていた頃に研究所で一緒だったの」
エイプリル「キットの事、頼むわね、ボニー」
ボニー「任せといて」
握手する二人。
ナイト2000のスキャナーが唸る。
マイケル「全員が揃った事だし、乾杯とでも行きますか?」
ボニー「どなたか肝心な人を忘れてるんじゃない?」
RC3「(外を指差し)おっと、噂のあの人がご到着だ」
全員、RC3が指差した方向に目を向ける。
デボンのオープンカーがナイト2000の後ろに止まる。車から降りるデボン。
テーブルの前にやってくる。
デボン「皆が揃ってるのに、顔を出さんわけには、いかないと思ってね」
エイプリル「もう目は、大丈夫なんですか?」
デボン「ああ。すっかり直った」
マイケル「あのアイパッチ、結構様になってたのにな」
デボンのそばにウエイターがやってくる。
デボン「私もコーヒーを頼む」
マイケル、ティーカップを持ち、前に差し上げ、
マイケル「では…」
デボン「おい、まだ、頼んだばかりだぞ」
ウエイターがゆっくりとデボンの前に近づいてくる。
デボンの前にティーカップを置く。
マイケル「財団の未来に…」
一斉にカップを差し出すデボン達。
デボン達「未来に…」
マイケル達、一斉にコーヒーを飲み始める。
コムリンクのアラームが鳴る。
コムリンクに話し掛けるマイケル。
マイケル「どうした、キット!」
オーリンの声「キット、素敵、天才…キット、素敵、天才…」
キットの声「さっきからずっとこの調子です」
マイケル「おっと忘れてた…オーリンをサリバンのところに届けに行かなきゃな」
マイケル、コーヒーを飲み干すと、手を振り、テーブルから離れて行く。
○ ナイト2000車内
運転席に乗り込んでくるマイケル。
助手席に鳥篭が乗っている。
オーリン「キット、素敵、キット、天才…」
マイケル「誰がオーリンにこんな言葉を覚えさせたんだ?」
キット「おそらくベッキーです」
マイケル「ドロボー扱いされるよりは、マシだろ?」
キット「誉められているのか、貶されているのか…よくわかりません」
マイケル「素直に受け止めろよ。オーリンは、嘘はつかないさ」
微笑むマイケル。エンジンをかける。
○ 発進するナイト2000
道の彼方に走り去って行く。
―THE END―