〜AIRWOLF ORIGINAL SEASON4 EPISORD〜
SUBTITLE 『EXAHAWK』 作 ガース「ガースのお部屋」

−ACT1−
○ 国道
  白いコルベットのスポーツカーが走行している。
  コルベット、前方に見えるサンティーニ航空の工場に向かって突き進んでいる。

○ サンティーニ航空・工場前
  滑走路を横切って建物の前に立ち止まるコルベット。
  運転席のドアが開く。黒いスーツに身を包んだグラマーな女が車から降りる。

○ 工場内
  セミロングヘアーのケイトリン・オシャネシィ。作業服と帽子を反対向けに被り、
  アメリカ国旗模様のベル206B・ジェットレインジャーの下に潜り込んでいる。
  高いヒールを履いた女の足先がケイトリンに近づいている。立ち止まる女。
女の声「あの…」
  ヘリの下から這い出てくるケイトリン。右手にスパナを持っている。
  顔を上げ、まじまじと女を見つめる。
ケイトリン「どなた?」
  ブロンドの髪をした背の高い女ティーナ・マーガレット。艶やかな白いスーツを着こなしている。
ティーナ「ホークさんは?」
  立ち上がるケイトリン。
ケイトリン「ホークならドミニクと…ああ、ここの社長さんと今食事中ですけど…」

○ サンティーニ航空・事務室
  旅行雑誌を読んでいるドミニク・サンティーニ。マイアミビーチの浜に集まる
  水着の美女の写真をまじまじと見ている。
男の声「何を読んでるんだ?」
  ドミニク、慌てて本を閉じる。
  ドミニクの目の前に立っているストリング・フェロー・ホーク。
ドミニク「お前か」
ホーク「他に誰がいるんだ?」
ドミニク「いや、なに。今度の仕事が終わったら泳ぎにでも行こうかと思ってな」
ホーク「泳げるのか?」
ドミニク「失礼な事抜かすな。こう見えても若い頃は、街一番の泳ぎの名手だった。
 女の子達をキャキャ、キャキャと言わせたものさ」
ホーク「そんな話初めて聞いたぞ」
ドミニク「前に話さなかったか?」
ケイトリンの声「私も聞いたことがないわ」
  振り返るドミニク。目の前にケイトリンが立っている。
ドミニク「何で皆唐突に現れるんだ?(ケイトリンの顔を見つめ)修理は、終わったのか?」
ケイトリン「いいえ。お客様よ」
ドミニク「おっと、新しい仕事の依頼か?」
ケイトリン「ホークに逢いたいって女性が来てるの…」
  険しい顔つきをするホーク。表に向かって歩いて行く。
  怪訝な表情でホークを見守るドミニク。
  ケイトリン、旅行雑誌を読んでいる。
ケイトリン「ドミニクにこんな趣味があるなんて意外」
  ドミニク、仰天し、咄嗟にケイトリンから雑誌を奪い取る。
ケイトリン「私で良かったら付き合うけど」
ドミニク「マイアミで泳いだことあるのか?」
ケイトリン「学生時代に友達と何度か。私の水着姿を見たい?」
  赤い顔をして、項垂れるドミニク。

○ 同・倉庫前
  ティーナに近づいて行くホーク。険しい顔つき。
ティーナ「ストリング・フェロー?」
ホーク「ああ」
ティーナ「はじめまして。私、大学でデザイン学の専任講師をしているティーナ・マーガレットと言います。
 実は、どうしてもあなたに見せたいものがあって…」
  ティーナ、白い鞄から写真を取り出し、ホークに手渡す。
  写真を見つめ、さらに険しい顔つきになるホーク。
ティーナ「私の兄のバリーがフリーのカメラマンをやっていて、今アマゾン奥地のエルベガって
 言う反勢力集団が占領する所に取材に行ってるの」
ホーク「どうして俺が兄貴を探していることを知ってる?」
ティーナ「ジョンが弟のホークに自分の居場所を伝えるように言ってくれって、バリーに頼んだのよ」
ホーク「君の兄さんは、ジョンと会ったのか?」
ティーナ「兄から送られてきた手紙にその写真が同封されていたの。あなたのことを調べさせてもらったわ。
 変わった名前だからすぐにわかった」
  ホーク、ティーナを見つめる。
ティーナ「エルベガが占領している地域には、地元の武装グループが群がっていて、一人で近づくのは、危険よ」
ホーク「君の兄さんは、どうやってジョンと接触したんだ?」
ティーナ「エルベガと取り引きしたの」
ホーク「どんな取り引きだ?」
ティーナ「契約先の新聞社に頼んでかなりの大金を注ぎ込んだみたい…」
ホーク「じゃあ、俺も大金を持っていかないとな」
ティーナ「大金持ちには、見えないけど…」
  笑みを浮かべるホーク。
ホーク「なんでわかった?」
ティーナ「お金があるなら、こんな会社に…失礼。もし、お兄さんと接触するなら、一つ方法があるわ」
ホーク「特別なルートでもあるのか?」
ティーナ「但し条件があるの」
  憮然とした表情を浮かべるホーク。

○ CIA本部・全景

○ CIA本部・部長室
  ソファに腰掛けるアークエンジェル。右手に写真を持っている。その対面に座るホーク。
ホーク「人形に見えるか?」
アークエンジェル「いいや。君がその女を信じているなら、何も言わんがね」
ホーク「ティーナの話では、ジョンは、半年前までボリビアのサンタクルスにいて、
 地元の農場で三ヶ月間働いていたそうだ」
アークエンジェル「なぜ、エルベガに捕まった?」
ホーク「農場で知り合った友人が占領地区で拘束されてしまって、ジョンは、そいつを助けるため
 に仲間と…」
  手元に置いていたファイルを持ち、開くアークエンジェル。
アークエンジェル「エルベガは、アマゾンの下流地域で3年前から武装グループを率いて活動し始めた。
 今も周辺の住民を襲い、勢力を拡大させている。エルベガは、ベトナムの残党兵の可能性もある」
  目を細めるホーク。
アークエンジェル「実は、一つ君達に仕事を頼もうと思っていたんだが…」
ホーク「この件が片付いたらな。それで、金の都合をつけて欲しい」
  アークエンジェル、ホークの顔を見つめ、
アークエンジェル「私のポケットマネーで賄える金額ではなさそうだな」
  溜息をつくアークエンジェル。
  隣の別室のドアが開き、グレイのスーツを着た男がアークエンジェルの後ろにやってくる。
アークエンジェル「すまないホーク。どうしても君と会いたいと言うんでな。長官補佐のマニエル・ポーリーだ」
  男の名は、マニエル・ポーリー。
  マニエルを睨み付けるホーク。
マニエル「君がエアーウルフのパイロットか?」
  アークエンジェルを睨み付けるホーク。
ホーク「こいつは、どこまで知ってるんだ?」
アークエンジェル「何も知っちゃいないさ」
ホーク「アークエンジェル!」
アークエンジェル「何だ?」
ホーク「最低だな」
  立ち上がり、入口に向かって歩き出すホーク。
マニエル「待て、ホーク!」
  部屋を出て行くホーク。
  ホークの後を追うマニエル。
アークエンジェル「待ちたまえ」
  立ち止まるマニエル。
アークエンジェル「君に彼を説得する事は、できんよ」
マニエル「君もだろ?できていたらとっくの昔にあのヘリは、我々の元に戻っている」
  憮然とした表情を浮かべるアークエンジェル。

○ サンティーニ航空・全景
ドミニクの声「焦る気持ちは、わかるがな」

○ 同・工場内
  コーヒーカップを持ったドミニク。その隣にホークが立っている。
ドミニク「本当にその女、信用できるのか?」
ホーク「お前も疑り深いな。その写真のジョンは、亡霊だとでも言いたいのか」
  ドミニク、テーブルの上に置いている写真を掴み、まじまじと見渡している。
  アマゾン奥地、両側にいる二人の兵士に腕を掴まれ、連行されているジョンが写っている。
ドミニク「よくできた合成って事もありうる。白ムクに言って、調べてもらったほうがいいんじゃないか?」
ホーク「もう見せてきた。何の疑いもしなかったよ」
ドミニク「それで、その情報の見返りは?」
ホーク「彼女の兄貴を探し出す」
  溜息をつくドミニク。
ドミニク「兄貴って…ジョンと接触したカメラマンも行方不明なのか?」
ホーク「エルベガの占領地区を抜ける時、武装民に襲われて、怪我をしてしまったらしい。その事を書いた
 手紙を送ってきてから二ヶ月間音信が途絶えたそうだ」
ドミニク「…んな事だろうと思ったぜ」
ホーク「嫌なら俺一人で探す」
ドミニク「嫌なんて言ったか?」
  ホーク、ムスッとして、ドミニクに背を向ける。
ドミニク「なぁ、ホーク。気持ちは、わからんでもないがな…」
  振り返り、怖い顔でドミニクを睨み付けるホーク。
  ホークの表情を見つめ、口を曲げるドミニク。
ドミニク「わかった。もう何も言わん」
  
○ ホークの山荘
  庭先でテッドと戯れるリー少年。
  湖の上のヘリポートに白いヘリが下りてくる。
  ヘリを見つめるリー。
  キャビンからサングラスをつけたマニエルが降りてくる。
  桟橋を歩いているマニエル。
  リーの前で立ち止まる。
  サングラスをはずすマニエル。
マニエル「ストリングフェローはいるか?」
リー「ホーク叔父さんは、まだ帰ってないよ」
マニエル「いつ戻ってくるんだ?」
リー「夕方には、戻ってくるはずだけど」
  腕時計を見つめるマニエル。
マニエル「君は?」
リー「その前にそっちが名乗れよ」
マニエル「私は、CIAのものだ。アークエンジェルのお友達と言ったらわかりやすいか?」
  怪訝な表情でマニエルを見つめるリー。

○ サンティーニ航空・工場内
  電話をかけているホーク。
ホーク「アークエンジェルの友人?」

○ ホークの山荘内
  受話器を握っているリー。
リー「そう言ってた」

○ サンティーニ航空・工場内
  険しい表情を浮かべるホーク。
ホーク「リー、俺は、今からちょっと遠出する」
リーの声「どこに行くの?」
ホーク「君のお父さんを…助けに行くんだ」

○ ホークの山荘内
  驚愕するリー。
リー「ジョンが見つかったの?」
ホークの声「まだはっきりした事は、言えないがかなり信頼できる情報を手に入れたんだ」
リー「僕も行くよ」

○ サンティーニ航空・工場内
ホーク「駄目だ。そこでテッドの面倒を見てやってくれ」
リーの声「でも…」
ホーク「信じてくれ。必ず連れて帰る…」
  
○ ホークの山荘内
  リー、諦めた様子で
リー「わかった…」

○ CIA本部・部長室
  扉が開き、勢い良く歩いてくるマニエル。
マニエル「私をはめたな、アークエンジェル」
  部長席の椅子に深くもたれているアークエンジェル。
アークエンジェル「何のことかね?」
マニエル「ホークの事だ。今日は、休日で山荘にこもっていると言ったな」
アークエンジェル「もしかしたら私の勘違いだったかも知れない…」
マニエル「これ以上私を欺くと、二度とその椅子に座れなくなるぞ」
  憮然とするアークエンジェル。

○ 南カルフォルニア・ハイウェイ
  4車線の道路。
  左から2つめのレーンを走る赤い乗用車。

○ 西海岸・海沿いの国道
  緩いカーブを勢い良く走っている乗用車。

○ 運送会社・倉庫・入口
  乗用車がゆっくりと倉庫の構内に進入する。

○ 同・3番倉庫前
  立ち止まる乗用車。
  運転席のドアが開く。中からサングラスをかけたホークが降りてくる。助手席からティーナが降りる。
  向かい側の脇道に止まっている黒いトレーラーの前で立ち話をする二人の男。
  ティーナ、右側の男を指差し、
ティーナ「あの男よ…」
  右側の男、テンガロンハットに髭面の逞しい体つきフィリップ・ライト。
  男に近づいて行くホークとティーナ。
ホーク「あの…」
  二人の男、ホークを凝視する。
  フィリップ、ティーナに気づき、
フィリップ「ティーナ?」
  笑顔を浮かべるティーナ。
ティーナ「久しぶり」
フィリップ「お久しぶりなんてもんじゃないよ…確かバリーと一緒にテキサスのカフェで
 コーヒーを飲んだ時以来じゃないか?」
  顔つきが硬くなるティーナ。
ティーナ「バリーの事でちょっとお話が…」
  フィリップ、隣にいた男に声をかけ、
フィリップ「ちょっとだけ…悪いな」
  立ち去って行く男。
  ティーナ、フィリップにホークを紹介する。
ティーナ「ストリング・フェロー・ホークよ」
  ホークを見つめるフィリップ。
  ティーナの耳元で囁くフィリップ。
フィリップ「新しい恋人?」
  苦笑いするティーナ。
ティーナ「勘違いしないで」
ホーク「最近バリーから何か荷物が届かなかったか?」
フィリップ「荷物?さぁ…最近遠方のルートが多くて、まともに自宅に戻った事がないから」
ティーナ「自宅には、誰かいるの?」
フィリップ「ああ、妻のレイサがいるはずだ」
ホーク「今すぐ連絡してくれないか?」
フィリップ「一体何があったんだ?」

○ サンティーニ航空・外
  ベル206Bの操縦席に荷物を積み、乗り込もうとするドミニク。
  ドミニクの背後からケイトリンの声が聞こえてくる。
ケイトリンの声「どこ行くの?」
  ドミニク、動きを止め、振り返りケイトリンを見ている。
  ドミニクの前にやってくるケイトリン。
ドミニク「昨日もらった空撮の仕事の打ち合わせだ。ちょっと社長と会ってくる」
ケイトリン「ダイロン撮影所の件でしょ?さっき、社長さんから連絡あったけど、そんな事言ってなかったわ」
  気まずそうに苦笑するドミニク。
ケイトリン「もしかして、一人で行くつもり?」
ドミニク「何のことだ?」
ケイトリン「マイアミビーチよ。美人を拝みに行くんでしょ?」
  困惑しているドミニク。

○ CIA情報収集室
  オペレーター員が数人、監視モニターのテーブル前に座っている。
  CIA情報 担当副長官デビッド・ルーベンス。薄い白髪。メガネをかけている。
  入口のドアが開き、中に入ってくるマニエル。デビッドと対峙する。
デビッド「状況は?」
マニエル「アークエンジェルに一杯食わされました」
デビッド「どう言う事だ?」
マニエル「ホークがエアーウルフを使って、また何かをやるつもりです」
デビッド「…行方不明のヘリの件は、どうするつもりなんだ?」
マニエル「ホークの件が片付いてからとりかかると聞きました」
デビッド「それじゃあ、間に合わん。アークエンジェルを呼び出せ。私が直接話す」
マニエル「わかりました」
  立ち去るマニエル。
―ACT1 END―

―ACT2―
○ 空港・出発ロビー
  アタッシュケースを持って歩いているティーナ。サングラスをかけている。
  手荷物検査場の前に立っているホーク。右手にスーツケースを持っている。
  ホークの前にやってくるティーナ。
ティーナ「例のもの、ちゃんと持ってる?」
  ホーク、金色のメダルをティーナに見せる。
ホーク「これの事か?」
  笑みを浮かべるティーナ。
ティーナ「行きましょう」
  搭乗口に向かって歩き出す二人。

○ グランド・キャニオン・『神の谷』全景(夕方)
  巨大な岩山が立ち並ぶ広大な土地。
  遠くに浮かぶ夕陽。オレンジ色の空。

○ 同・岩山・洞窟内(エアーウルフ秘密基地)
  夕陽の光に薄く照らされているエアーウルフのボディ。

○ エアーウルフ・コクピット
  パワーシステムの『START 1』ボタンを押す指。
  システムが起動し、電子音が鳴り響く。

○ 同・岩山・洞窟内
  メインローター、テイルローターがゆっくりと回転し始める
  
○ エアーウルフ・コクピット
  メインエンジンのオイルメーターのレベルゲージが上昇し始める。

○ 同・岩山・洞窟内
  エアーウルフの機体がゆっくりと上昇する。高い岩山の頂上の穴に向かって高度を上げて行く。

○ 岩山の頂上
  ぽっこりと開いた穴から姿を現すエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るドミニク。ヘルメットを被っている。後ろのフライトシステムの席に
  ケイトリンが座っている。
ドミニク「ホークになんて説明すりゃあいいか…」
ケイトリン「なんか言った?」
ドミニク「いいや、なんでもない」
ケイトリン「ターボの準備OKよ」
ドミニク「よし、行くぞ。ターボ」
  レバーの赤いスイッチを押すドミニク。

○ エアーウルフのツインタービンが猛烈な爆音と共に真っ赤な炎を上げる
  高速で推進し始めるエアーウルフ。
  夕陽に向かって、連なる高い岩山の上空を突き抜けて行く。

○ エアーウルフ・コクピット
ケイトリン「ねぇ、ドミニク。こんな時にこんな話するのもなんだけど…」
ドミニク「どうした?悩み事でもあるのか?」
ケイトリン「…」
ドミニク「給料の事なら前に話したと思うが、まだ不服か?」
ケイトリン「ホークのことよ」
ドミニク「あいつに何か言われたか?」
ケイトリン「私のこと…あまり好きじゃないのかしらあの人」
ドミニク「何を今更。ホークの性格は、お前さんがよくわかっているじゃないか?」
ケイトリン「じゃあ、どうして、私を置いてジョンを探しに行こうとしたのよ?」
ドミニク「それはだな…ジョンの他にも救出しなきゃならない奴がいてな。おまえがいると、
 定員オーバーになっちまうんだよ」
ケイトリン「そうなの?じゃあ、初めから言ってくれれば良かったのに…」
ドミニク「わしにだっていつになくツンケンしてんだ。ジョンのことになると
 たちまち頭に血が上って、周りが見えなくなる。いつものことさ、気にするな」

○ CIA情報収集室
  デビッドと対峙するアークエンジェル
デビッド「ホークはどこに行ったんだ?」
アークエンジェル「アマゾンのエルベガの部隊が占領する地域です」
デビッド「我々の任務を差し置いて、場所も聞かずに彼を行かせたのか?」
アークエンジェル「期限は、決めてあります。明日の正午までに戻らなければ、
 しかるべき処置を取るつもりです」
デビッド「然るべき処置とは、なんだ?」
アークエンジェル「その前に一つお話しておきたい事があるんです」
  神妙な面持ちのアークエンジェル。

○ アマゾンの密林地帯の上空を低空飛行するエアーウルフ(夜)

○ エルベガ占領地区5K手前・密林地帯
  ホバーリングしながら、ゆっくりと地上に降りるエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るドミニク。ヘルメットを外す。
  フライトシステムのシートに座るケイトリン。同じくヘルメットを外している。
ケイトリン「これからどうするの?」
ドミニク「明日の昼までここで待機だ」
ケイトリン「どこで会うの?」
ドミニク「サンタクルスで待ち合わせだ」
  ドミニク、赤い帽子を被り、ドアを開け、外に出る。

○ 密林地帯
  両腕を上げ、空気を吸うドミニク。
  ケイトリンも降りてくる。ドミニクのそばに近づくケイトリン。
  辺りを見回している。
ケイトリン「なんだか、不気味ね」
ドミニク「人気のないところを探して着陸させたから、襲われる心配はないだろう」
  ドミニク、辺りに飛び回る虫を払っている。
ドミニク「やっかいなのは、この虫どもだ、クソ。気をつけろ。下手してマラリアにでも感染したら大変だ」
ケイトリン「ジョンってどんな人だったの?」
ドミニク「弟思いで面倒見が良くてな。まぁ、喧嘩もよくしたが、その度にわしがいつも仲裁してやった」
ケイトリン「早く合わせてあげないとね」
ドミニク「わしもそれを願っとるよ。ちょいと様子を見てくる。おまえは、暫く中にいてくれ」
ケイトリン「こんな暗いのに一人で大丈夫?」
ドミニク「心配するな。こう見えてもわしはな…」
ケイトリン「ホークのお父さんと大戦を乗り切った仲だったって言いたいんでしょ?」
  ムスッとするドミニク。
ドミニク「…わかってるならそこで大人しくしてろ」
  ドミニク、ケイトリンのそばを離れて行く。

○ ボリビア・サンタクルス・モーテル前
  古びた薄青いタクシーが立ち止まる。
  後部席のドアが開く。ティーナとホークが車から降りる。
  入口の階段を上り、中に入って行く二人。

○ 同・部屋
  ドアを開け、中に入ってくる二人。
  ティーナ、ベッドの上に鞄を置く。
ティーナ「案内人が明日の朝9時にここにやってくるの」
ホーク「エルベガの遣いか?」
ティーナ「兄もその人の紹介であそこに入る事ができたの」
  ホーク、無言のまま、窓の前に立ち、景色を見つめる。
  窓に写るティーナの姿を見つめ、振り返るホーク。
  ティーナ、右手にウイスキーのボトルを持ち、立っている。
ティーナ「お酒は、お好き?」
  笑みを浮かべるホーク。
ホーク「ああ」
  ティーナ、ホークにボトルを手渡す。
  蓋を開け、飲み始めるホーク。
ティーナ「兄も好きだったのよ」
ホーク「どうしてエルベガなんかに興味を持ったんだ?」
ティーナ「うちは三人兄弟で、一番上の兄は、陸軍に入って、ベトナムに従軍した。しかし、
 ある作戦で戦死したの」
  ホーク、神妙な面持ち。
ティーナ「バリーは、兄の死でベトナムに興味を持ち、小さな新聞社の記者になった。それからカメラマンを
 目差すようになって、ベトナム兵達の生き残りに片っ端から取材し、写真を撮り続けているの」
ホーク「…エルベガについてまだ他に知っている事はないか?」
ティーナ「兄が残した手帳をいくつも見たけど…そう言えば、エルベガは、強大な戦力を手に入れるために
 国外の銀行を襲って、金を集めているような事を書いてあったわ…」
  憂い顔を浮かべるホーク。
ティーナ「心配しないで。ジョンは、必ずあそこにいるわ」
  ホーク、険しい表情。

○ 密林地帯(深夜)
  エアーウルフのそばにテントが張られている。

○ テントの中
  横になり、眠っているドミニク。

○ エアーウルフ・コクピット
  フライトシステムのシートに座るケイトリン。うとうととしている。
  メインモニターの下のボタンが点滅している。ハッと目を覚ますケイトリン。
  ボタンを押すケイトリン。
  スピーカーからアークエンジェルの声が聞こえてくる。
アークエンジェルの声「やっとつながったか。ずっと応答を待っていた。ホークは、戻ってきたか?」
ケイトリン「いいえ、何かあったの?」
アークエンジェルの声「ノイズで少し声が聞き取りにくい。君は誰だ?」
ケイトリン「ケイトリンよ」
アークエンジェルの声「実は、さっき、エルベガの占領地区の案内人を名乗る男から連絡があった。
 ホークの命が狙われている」
  驚愕するケイトリン。
ケイトリン「なんですって?」
アークエンジェルの声「そこには、他に誰かいるのか?」
ケイトリン「外にドミニクがいるけど…」
アークエンジェルの声「ドミニクを彼に近づけては、駄目だ」
ケイトリン「どうして?」
アークエンジェルの声「ドミニクの素性も向こうに知れ渡っているんだ。
  ドミニクがホークに近寄れば、彼も殺されてしまう」
ケイトリン「じゃあ、どうすればいいの?」
アークエンジェルの声「ホークに近づけるのは、君しかいない」
ケイトリン「…」

○ ボリビア・サンタクルス・モーテル(翌日・朝)
  ベッドの上に座るホーク。
  スーツケースの鍵を開ける。
  中にたくさんの現金が詰まっている。
  目を細めて札束を見つめるホーク。
  ドアが開く音がする。
  ホーク、咄嗟にスーツケースを閉める。
  部屋に入ってくるティーナ。ホークの前にやってくる。
ティーナ「来たわ」
  立ち上がり、窓の前に行くホーク。外を見つめる。
  薄汚れた茶色のワゴンが止まっている。
  背の高い中年風の男がモーテルの玄関に向かって歩いている。
  その様子をまじまじと見つめるホーク。
ティーナ「急いで」
ホーク「君は?」
ティーナ「あそこには、あのコインを持っている人しか入れないの」
ホーク「そうか」
ティーナ「お願い…」
ホーク、険しい表情を浮かべる。
  ドアをノックする音がする。
  ホーク、ティーナを見つめながら、スーツケースを持つ。
  
○ 海岸線を低空で飛行するエアーウルフ
  狼のような鳴き声を上げている。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座り、レバーを握るドミニク。
  フライトシステムのシートに座るケイトリン。
ドミニク「着陸態勢に入るぞ」
ケイトリン「ねぇ、ドミニク、降りたら、ちょっと出かけてもいいかしら?」
ドミニク「出かけるって、どこに行くんだ?」
ケイトリン「サンタクルスの町にハイスクール時代の親友が住んでいるの。少しだけ会って、話をしたいと思って」
ドミニク「別に構わんが…」
ケイトリン「そう。待ち合わせの時間までに、一度戻ってくるから」
  困惑した表情を浮かべるドミニク。

○ アマゾン川を航行する貨物船
  茶色く濁った川の上をゆっくりと進んでいる。
  水面から顔を出しているワニ。船を見つめている。
  中央右側のデッキの柵の前に立つホーク。目を細めて、辺りを見回している。

○ 川岸
  停泊する貨物船。男とホークが船から降りる。

○ ジャングル
  雑然と生え渡る密林の狭間を潜り抜け、歩いている男とホーク。
ホーク「後どれくらいで着くんだ?」
男「後、1キロほどです」
  ホーク、額の汗を拭っている。

○ エルベガ占領地区・南側検問所
  検問所の前に立つ番人の兵士の前に向かう。
  兵士の前で立ち止まるホーク。
  両腕を高く上げ、両手を頭につける。ホークの体を調べる兵士。
  もう一人の兵士がホークに声をかける。
兵士「入管証明は?」
ホーク「入管証明?」
  腕を下ろし、ズボンのポケットからメダルを取り出し、
ホーク「これの事か?」
  ホーク、メダルを兵士に投げ渡す。
  メダルを見つめる兵士。
兵士「時間は、30分だ。行け」
  ホーク、前進する。

○ 同・茂みの中
  両脇を兵士に囲まれながら歩いているホーク。
  進路方向に立ち並ぶ2つの収容所を見回す。
  収容所の柵越しから男の顔が見える。
  まじまじと見つめるホーク。ジョンでない事を知り、息を吐く。
―ACT2 END―

―ACT3―
○ エルベガ占領地区・エルベガの小屋
  長髪、長い髭を生やし、一際大きい少し肥満の腹を出したエルベガ。首や腕や腰に
  派手な装飾品を身につけている。
  両脇を兵士に囲まれながら歩いているホーク。右手にスーツケースを持っている。
  エルベガの前にやってくる。
  エルベガ、右腕を挙げ、兵士に指示を送る。
  二人の兵士、銃を下ろし、後ろに下がる。
エルベガ「まず貢物を献上して頂こうか」
ホーク「貢物?」
  ホークのスーツケースを見つめるエルベガ。
エルベガ「そのスーツケースの中身は、なんだ?」
ホーク「ここにセント・ジョン・ホークと言う男がいるはずだ。会わせて欲しい」
エルベガ「知り合いか?」
ホーク「俺の兄貴だ」
  ほくそ笑むエルベガ。
エルベガ「そうか、おまえが奴の弟か…」
ホーク「俺について何か知ってる口ぶりだな」
エルベガ「ジョンは、俺がここに連れてきたんだ。サイゴンの秘密作戦で奴と知り合った」
ホーク「友人だって言うのか?」
エルベガ「だが、あいつは、俺を裏切り、ここの住民達の側についた。俺についていれば、
 やりたい放題できたのに」
ホーク「兄貴は、お前みたいに強欲じゃない」
  ホーク、写真をエルベガに手渡す。
  まじまじと写真を見つめるエルベガ。
ホーク「ここに取材しに来たバリーと言うカメラマンの男も一緒に解放しろ」
エルベガ「先に金を渡せ」
ホーク「先に二人に合わせろ」
エルベガ「駄目だ」
  ホーク、辺りを見回し、
ホーク「ここいらに転がってる兵器は、皆ちゃちなものばかりだな」
エルベガ「何?」
ホーク「十年は、遅れてる。まぁ、無理もないか。科学の進歩を体感することなく、ジャングルに引きこもって
 来たんだろう。世界中が強力な破壊兵器をどんどん量産してるんだ。ベトナムの時とは、わけが違う。
 ここにのさばっていられるのも時間の問題だぞ」
エルベガ「おまえも兄貴に似て、命知らずだな」
ホーク「CIAが開発した飛び切りの戦闘ヘリを持っている」
エルベガ「何でお前がそんなものを?」
ホーク「その戦闘ヘリを使えば、この占領地区を一瞬で火の海にできる」
  失笑するエルベガ。
エルベガ「…宣戦布告ってわけか?」
ホーク「やっても相手にならん。二人を連れてきたら、この現金とそのヘリもくれてやってもいい」
エルベガ「やけに気前がいいじゃないか。よし、明日の朝、サンタクルスの海岸に来い」
ホーク「二人を連れてこなかったら、わかってるな」
エルベガ「心配するな。必ず連れて行く」
  ホーク、ポケットの中から、札束を出し、エルベガの前に放り出す。
ホーク「前金だ」
  ホーク、険しい顔つきでサングラスをはめ、踵を返し、立ち去って行く。

○ サンタクルス市内
  露店が並ぶ通りを歩くケイトリン。私服に着替えている。
  白いの建物の前に佇むケイトリン。右手に持っているメモ用紙を見つめる。

○ モーテル
  一列に並ぶドアの前の通路を歩いているケイトリン。
  ティーナの部屋の前を横切る。
  中からティーナの話し声が聞こえてくる。
  ケイトリン、足を止め、ドアの前に行く。

○ 同・ティーナの部屋
  受話器を握るティーナ。
ティーナ「…ええ、ホークは、もうすぐ戻ってくるはずよ…待って、誰が来るって?後は、そっちの仕事でしょ?」

○ 同・部屋前
  立ち聞きしているケイトリン。
ティーナの声「そんなの嫌よ。約束が違うでしょ?」
  ドアの前に耳をやり、ジッと話を聞いているケイトリン。

○ 同・ティーナの部屋
ティーナ「駄目よ…私には、殺せない…」
  ノック音。扉が開き、ティーナが姿を現す。
  ティーナの前にケイトリンが立っている。
ティーナ「どちら様?」
ケイトリン「私、ホークの友人よ。ちょっとお話ししたい事があって…ホークは?」
ティーナ「ちょっと待って。ホークがここに来てる事、誰から聞いたの?」
ケイトリン「その…黙ってついてきちゃったの。あの人には内緒で…急に旅行に行くなんて言うから、
 気になっちゃって」
  怪訝な表情でケイトリンを見つめるティーナ。
ティーナ「入って…」
  ティーナに案内され、部屋の中に入るケイトリン。

○ 同・部屋
  ベッドの前にやってくる二人。
  ティーナ、立ち止まりケイトリンと対峙する。
ケイトリン「ホークは?」
  怪訝な表情を浮かべるティーナ。
ティーナ「もういないわ」
ケイトリン「エルベガ地区に向かったの?」
ティーナ「何であなたがそんなこと知ってるの?」
ケイトリン「まずいわ。あの人、命を狙われてるの…早く何とかしないと…」
  ティーナ、ベッドの上に置いていた鞄を持ち、中から短銃を取り出し、ケイトリンに向ける。
  愕然とするケイトリン。
ケイトリン「どうして…」
ティーナ「何も言わないで。変な事したら撃つわよ」
ケイトリン「さっきの電話の相手、誰だったの?」
ティーナ「あなたには、関係ないことよ」
ケイトリン「あなた…本当にジョンの居場所知ってるの?」
ティーナ「…」
ケイトリン「もしかして、自分のお兄さんを救い出すためにホークを利用したんじゃないの?」
ティーナ「あなたの妄想なんか聞きたくないわ」
ケイトリン「ホークがどんな思いでお兄さんを探して来たと思うの?少ない情報を手がかりに
 世界中のあちこちを駆け回って来たのよ」
  動揺するティーナ。ティーナが目線を下に向けた瞬間、ケイトリン、咄嗟にティーナから短銃を奪い取る。
  ティーナ、鞄からナイフを取り出す。
  ケイトリン、両手で銃を構え、銃口をティーナに向ける。
ケイトリン「私は、元ハイウェイパトロールの警官よ。銃の扱いには、慣れてるわ」
  ケイトリンの背後で撃鉄を起こす音が鳴り響く。
  ティーナ、ケイトリンの背後に立つ男を見つめる。
  ブルーのフライトジャケットを着た男は、ダニー・ペイズ。
  ケイトリンの背中に銃口を突き立てるダニー。
  銃を下ろすケイトリン。
ダニー「エアーウルフは、どこだ?」
  振り返り、ダニーの顔を悔しげに睨みつける。

○ 海岸(夕方)
  ホバーリングしながら、ゆっくり高度を下げるエアーウルフ。
  砂浜に着陸する。
  エアーウルフの前に走って行くホーク。
  操縦席のドアを開け、中に乗り込む。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。隣にいるドミニクと顔を合わせる。
ホーク「予定より10分遅れてるぞ」
ドミニク「もっと早く着いたんだが、近くの住民に気づかれそうになってな。暫く、海の上を飛び回ってた」
ホーク「燃料の無駄遣いはするなって言っただろ」
ドミニク「実は…一つ言い忘れていた事があってな」
ホーク「夜食の準備か?」
ドミニク「…ケイトリンも来てるんだ」
  唖然とするホーク。
ホーク「何?」
ドミニク「倉庫を出る前に気づかれちまってな…」
  険しい顔つきのホーク。
ホーク「今どこにいるんだ?」
ドミニク「サンタクルスにいる友人の家に行かせた」
  気分を落ち着かせるホーク。
ホーク「…あいつには、リーの面倒を見ていてもらいたかった」
ドミニク「そう言や、ミンが死んでもうすぐ一年か。早くリーにジョンの顔を見せてやらないとな…」
  複雑な表情を浮かべながらヘルメットを被るホーク。

○ 海岸から飛び立って行くエアーウルフ
  空気音を鳴らしながら、入り組んだ沿岸に沿って低空で推進し始める。

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「それで、ジョンは、いたのか?」
ホーク「占領地区を入ったところに収容所があった。明日の正午にサンタクルスの海岸で取り引きする。
 もし、それがうまく行かなければ、エアーウルフでエルベガのところに乗り込む」
ドミニク「で、これからどうする?」
ホーク「下調べだ」
  ピッチレバーを握るホークの手。赤いボタンを押す。鳴り響く電子音。

○ エアーウルフのツインタービンが猛烈な爆音と共に真っ赤な炎を上げる
  空気を切るように高速で闇夜を推進するエアーウルフ。

○ 密林のジャングルを低空で飛行するエアーウルフ(夜)
ホークの声「もうすぐエルベガの占領地区に入る。高度を上げる」
  機体を上げ、急浮上するエアーウルフ。
  期待に装備されているFLIR (Forward―Looking InfraRed)
  視認援助カメラシテスムが作動している。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。後ろのシートに座り、フライトシテスムを操作するドミニク。
  モニターに映るサーモグラフィック画面。
  人体の熱反応があちらこちらに映し出されている。
ドミニク「思ってたより遥かの人数だな。ざっと300人ってところか」
ホーク「収容所をズームアップしてくれ」
  モニターに収容所の中の熱反応が映し出される。人体が5人映っている。
ドミニク「東と西の方向に全部で6つだ。30人はいるぞ」
  突然、アラームが鳴り響く。
ホーク「どうした?」
  モニターがミサイル判別サーチの映像に切り替わる。サーチしてミサイルを特定する。
ドミニク「北東の方角からミサイルが接近中だ。エルベガに気づかれたか?」
ホーク「相手は、何者だ?」
  レーダー画面を見つめるドミニク。
ドミニク「地上からじゃない。変だ。レーダーには、ミサイルしか映っていない」
  険しい顔つきのホーク。

○ スピードを上げ旋回するエアーウルフ
  エアーウルフのターボユニット上部の格納庫(サイドランチャー)が開き、サンバーストが発射される。
  赤い閃光を発するサンバーストに撃破されるミサイル。

○ エアーウルフ・コクピット
  モニターに映るレーダー画面。
  ミサイルの反応点が消える。
ドミニク「ミサイルに命中したが、敵機が確認できない」
ホーク「エルベガが俺達よりも高度な戦闘機を持ってるなんて信じられん」
ドミニク「これ以上は、危険だぞ、ホーク」
ホーク「ああ、引き上げよう」

○ 180度旋回し、南の方角に向かって飛び去って行くエアーウルフ
  その反対側の空から静かにローター音を響かせながら飛行するヘリの影がやってくる。

○ 謎のヘリ・コクピット
  操縦席に座るダニー。ヘルメット被り、両手元にあるレバーを握る。バイザーを下ろし、
  計器盤の2つのLCD画面を見つめる。
  スピーカーから男の声が流れている。
男の声「エアーウルフは、どうした?」
ダニー「我々に気づいて逃げました」
男の声「では、本来の目標地点に迎え」
ダニー「了解」
  右手のレバーを握る男。

○ 密林の上空を高速で飛行するヘリの影
  前方にエルベガ占領地区の建物が見えてくる。

○ エルベガ占領地区
  向かってきたヘリに気づき、攻撃を開始する兵士達。
  数十人の兵士達が機関銃でヘリを撃ち続けている。
  ヘリ、機体の下に装備している機銃を発射する。
  辺りに立っていた数十人の兵士達が一斉に撃たれ倒れる。

○ 同・エルベガの小屋前
  外に出てくるエルベガ。
  一人の兵士がエルベガの前にやってくる。
エルベガ「何事だ?」
兵士「ヘリが侵入してきました」
エルベガ「セント・ジョンの弟か?」
  エルベガ、前方を見つめる。
  暗闇の上空で不気味に蠢くヘリ。辺りの小屋を次々と破壊しながら、エルベガに向かって突き進んでくる。
  驚愕するエルベガ。大きく目を見開き、ヘリを見つめている。
エルベガ「違う…奴らだ、クソ!はめられた!」
  ヘリの右の翼からミサイルが発射する。
  ミサイルは、エルベガの小屋に当たり、大爆発を起こす。炎に飲み込まれるエルベガ。
  空高く舞い上がる炎を潜り抜けるヘリ。
―ACT3 END―

―ACT4―
○ ジャングルの地平線から顔を出すオレンジ色の太陽

○ 密林地帯(翌日・朝)
  エアーウルフの前に立っているホーク。前部のパネルを開け、中の配線を弄っている。
  ホークの後ろに近づくドミニク。
ドミニク「そろそろ時間だぞ」
  ホーク、パネルを閉める。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に乗り込むホーク。後ろのシートに座るドミニク。フライトシステムの装置が作動し、
  パネルのボタンが一斉に光り出す。
  ドミニク、メインモニターの通信アラームのボタンを見つめる。
ドミニク「アークエンジェルが緊急信号で呼び出しをかけてるぞ。どうする?」
ホーク「構ってる暇はない」
ドミニク「ちょっと、待て。今、通信履歴を調べて見たんだが、昨夜の記録が残ってる。
 相手は、CIAだ」
ホーク「なんだって?」
ドミニク「ケイトリンの奴、白ムクと何か話したみたいだな」
ホーク「つないでくれ」
  スピーカーからアークエンジェルの声が聞こえる。
アークエンジェルの声「ホークか?」
ホーク「時間がない。単刀直入に話してくれ」

○ CIA本部・部長室
  通信システムの前に立つアークエンジェル。レシーバーを握っている。
アークエンジェル「昨夜誰かが私の部屋に忍び込んで、エアーウルフに交信をかけたみたいだ。
 ボイスチェンジャーで私の声をそっくりに真似てな」

○ エアーウルフ・コクピット
アークエンジェルの声「応答したのは、ドミニクか?」
ドミニク「わしは、外で眠ってた。話をしたのは、ケイトリンだ」
アークエンジェルの声「ケイトリンもそっちにいるのか?」
ホーク「じゃあ、誰かにそそのかされて、サンタクルスの町に?」
ドミニク「このドジ野郎。ケイトリンに何かあったら、ただじゃ済まさんぞ」

○ CIA本部・部長室
アークエンジェル「実は、LHX計画の元、陸軍が開発した最新型の無人攻撃型ヘリのプロトタイプが
 テスト中に行方不明になっているんだ。それで今、うちの内部の関係者の調査を進めているところだ」
ドミニクの声「それとケイトリンとどう言うつながりがあるんだ?」
アークエンジェル「ケイトリンじゃない。犯人が狙っているのは、エアーウルフだ」

○ エアーウルフ・コクピット
  怪訝な表情を浮かべるホーク。
アークエンジェルの声「そいつのデスクを調べてみたら、君達の情報が入ったディスクが見つかった」
ホーク「証拠は、揃ってるのか?」
アークエンジェルの声「ああ。犯人は、盗まれたヘリの開発にも携わっている」

○ 上昇するエアーウルフ
  着陸装置を引き込むと、どんどん高度を上げて行く。

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーの赤いスイッチを押すホーク。

○ ツインターボロータシステム作動
  電子音共に狼のような鳴き声を上げながら高速で推進飛行を始めるエアーウルフ。

○ とある洞窟内
  檻の中に入れられているケイトリン。
  柵の前に立っている。
  ケイトリンの向こう側に見える通路からゆっくりと歩いてくるティーナ。
  ケイトリンの前で立ち止まる。
  ティーナ、右手に銃を持っている。
ケイトリン「ねぇ、教えて、あの男は、一体誰なの?どうして、エアーウルフの事を知ってるの?」
ティーナ「バリーを救うためよ…ほっとけば、後2、3日で彼は、殺されていたのよ」
ケイトリン「それで、バリーは、無事なの?」
ティーナ「昨夜、エルベガ地区から救出されたわ」
ケイトリン「ホークが助けたの?」
ティーナ「彼じゃない。別ルートよ」
  唖然とするケイトリン。
ケイトリン「やっぱり、ジョンは、初めからエルベガのところにはいなかったのね?」
ティーナ「ホークが死んだら、あなたも殺す。そこまでが私の役目。そうすれば、兄を取り戻せる」
ケイトリン「お願い、ホークを見捨てないで。あの人は、あなたと同じ気持ちでここまでやってきたのよ」
  俯くティーナ。
ケイトリン「死んだらジョンと会えなくなる。そんなのってあんまりよ」
ティーナ「…」
  ティーナ、ケイトリンに銃を差し出す。
  ケイトリン、そっと銃を受け取り、
ケイトリン「周りに人は?」
ティーナ「いないわ」
  ケイトリン、銃を構え、檻のドアの鍵を狙って撃つ。轟く銃声。
  ケイトリン、檻から出て、ティーナと一緒に通路を駆ける。

○ サンタクルス・海岸
  小高い丘の上空をカーブしながら飛んでくるエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーを握るホーク。
  リアシートに座り、メインモニターを見ながら、キーボードを打つドミニク。
ホーク「どうだ?」
  モニターにサーモグラフィック画面が映り、砂浜の熱レベルを映し出している。
ドミニク「3キロ前方にジープと人がいる」
  フロントガラス越しに砂浜を確認するホーク。
  険しい表情を浮かべる。
  白い砂浜の向こうに一台のジープとスーツを着た男が立っている。

○ サンタクルス・海岸
  男の上空をエアーウルフが通り過ぎて行く。
  ホバリングしながら高度を下げるエアーウルフ。
  砂を巻き上げながら、ゆっくりと砂浜に着陸する。
  操縦席のドアが開き、ホークが降りる。
  グレイのエアジャケットを着た男に近づいて行くホーク。
  男と対峙する。
ホーク「お前一人か?エルベガは?」
  男は、ダニーである。
ダニー「エルベガは、死んだ」
ホーク「…何寝言を言ってるんだ?」
  ダニー、エアーウルフを見つめ、
ダニー「あれがエアーウルフか?」
ホーク「なぜその名前を知ってる?」
ダニー「何もかもお見通しだよ、ホーク」
  唖然とするホーク。
ホーク「エルベガの遣いじゃないな。何者だ?」
ダニー「エルベガの占領地区から君が探していた人質を連れてきてやった。感謝しろ」
ホーク「お前に頼んだ覚えはないがな。まぁいい。早く人質を連れて来い。じゃないと、
 あのヘリがおまえの体を穴だらけにするぞ」
  ダニーの後方の上空から不気味な金きり音を出しながら高速で近づいてい来る一機のブルーのヘリ。
  RAH―66をベースにした『エクサホーク』が現れる。
  ダニーの1キロ後方の上空で止まり、ホバリングしている。
  エクサホークを呆然と見つめるホーク。不敵な笑みを浮かべるダニー。
ダニー「人質は、あのヘリの中にいる」
  ダニー、通信機をホークの前に差し出す。
  怪訝な表情で通信機を握るホーク。
ホーク「ジョンか?」
  レシーバーから男の声が聞こえてくる。
男の声「…僕は、バリー・マーガレットと言うものです」
  ヘリに乗る男は、バリー・マーガレット。
ホーク「そこにセント・ジョン・ホークはいるか?」
バリーの声「いいえ。乗っているのは、僕一人です。このヘリは、遠隔操作されてる」
  唖然とするホーク。ダニーを睨み付ける。
ダニー「『エクサホーク』であのヘリの性能をテストさせてもらう」
  エクサホークの機体の下の20mm機関砲から銃弾が発射される。
  銃弾は、一直線に砂浜からエアーウルフの機体に当たる。

○ エアーウルフ・コクピット
  エアーウルフのボディが弾を跳ね返している音を聞きながら、身をすくめるドミニク。
ドミニク「派手にやってくれるじゃないか、野郎!」

○ サンタクルス・海岸
  ダニーを睨み付けるホーク。
ホーク「あのヘリでエアーウルフを撃ち落とすつもりか?」
ダニー「5分間のシミュレーションを始める」
ホーク「5分過ぎたら、バリーは、どうなる?」
ダニー「ヘリを下ろして始末する。そして、おまえ達も殺して、エアーウルフを頂く」
ホーク「…いいだろう。お前らのヘリの性能を試してやる」
  踵を返し、男の前から走りって行くホーク。
  にんまりするダニー。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に乗り込むホーク。ヘルメットを被る。
ドミニク「もしかして、あれがアークエンジェルの言ってた新型ヘリか?」
ホーク「『エクサホーク』だ。間違いない」
ドミニク「おまえと同じ名前でも仲良くなれそうにないな」
ホーク「あの中にバリーが乗ってる」
ドミニク「何?」
ホーク「あのヘリは、遠隔操作されてる。アークエンジェルからもらったデータを調べてくれ。あのヘリを盗んだ
 パイロットの写真があったはずだ」
  ドミニク、メインモニターを見ながらキーボードを見つめる。
  モニターに映し出されるダニーの写真。
  写真の右側にデータが書かれている。
ドミニク「ダニー・ペイズ。元空軍のパイロットだ」
  モニターにヘリの断面図とデータが映し出される。
ドミニク「最新型のステルス武装ヘリだ。RAH―66コマンチ。ターボシャフトエンジンを2基搭載、
 超低空飛行がお得意だ。両方の翼に6基のミサイルが装着済み。奴らの狙いは、エアーウルフなんだろ?
 なぜ攻撃してくる?」
ホーク「エアーウルフの性能を見たいそうだ」
ドミニク「わし達もあのヘリに手出しできんのか…」
ホーク「きっと、近くにコントロールタワーがあるはずだ。フリクエンシースキャナーで、
 電波の発信地点を突き止めろ」
  
○ 機銃を発射するエクサホーク
  エアーウルフの前面ボディに流れるように弾丸が当たり、火花を上げている。

○ エアーウルフ・コクピット
  フロントガラスに当たる弾丸を目を細め見ているホーク。
ドミニク「敵さん、待ちくたびれてるみたいだぜ。やってみるが、もしそれが駄目だったら、
 どうやってバリーを助け出す?」
ホーク「駄目でもやるしかない。5分以内でだ」
ドミニク「5分だと?馬鹿言うな」
ホーク「やらなきゃ、バリーも俺達もこの世とさよならだ」
ドミニク「…」

○ 浮かび上がるエアーウルフ
  着陸装置を引き込み、どんどん上昇して行く。
  ホバーターンし、海のほうに機体を向ける。

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーの赤いボタンを押し、『TURBO』を点火するホーク。

○ ジェット噴出口が点火する
  ツインターボロータシステムが作動し、電子音と共に高速で推進飛行を始めるエアーウルフ。
  狼のような鳴き声をあげながら、上昇する。
  エクサホークも高速でエアーウルフを追い始める。
  その様子を見つめながらジープに乗り込むダニー。Uターンし、砂浜を走り出す。

○ エクサホーク・コクピット
  操縦席に座っているバリー。両手首に手錠がかけられている。恐怖に怯えた表情で計器類を見つめている。
  計器類、レバーが自動で動いている。
  『MISSILE』のボタンが赤く光る。

○ エクサホーク、左の翼のミサイルポッドからミサイルが発射する
  高速で飛行するエアーウルフの後方からミサイルが迫ってくる。
ドミニクの声「やってきたぞ。南南西の方角からサイドワインダーが接近中!」

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーを握るホーク。
ホーク「外すなよ」
ドミニク「任せとけ」
  ドミニク、『SUNBURST』のボタンを押す。

○ ジェット噴出口上のサイドランチャーの格納庫が開く
  太陽弾(SUNBURST)が発射される。
  勢い良く飛んで行く太陽弾。赤い閃光を上げている。
  太陽弾に引き寄せられるように飛んでくるミサイル。太陽弾に当たり、爆発する。

○ エアーウルフ・コクピット
  フライトステムのレーダー画面。ミサイルのマークが画面から消える。
ドミニク「何がシミュレーションだ?本気で撃ってきやがったじゃねぇか」
ホーク「奴らは、エアーウルフの性能を知り尽くした上で攻撃を仕掛けてるのさ」
  ホーク、レバーを左に倒す。

○ 勢い良く左旋回するエアーウルフ
  大きく円を描きながら、素早くエクサホークの後ろに回り込む。

○ エアーウルフ・コクピット
ホーク「まだ電波を捕らえられないのか?」
  メインモニターを見ながらキーボードを打つドミニク。
ドミニク「慌てるな。もうちょい待て」
ホーク「攻撃態勢に入る」
  唖然とするドミニク。
ドミニク「おい、正気か?」
ホーク「テールローターを狙う」
ドミニク「失敗すれば、バリーもろとも木端微塵だぞ」
  ホーク、何も言わずヘルメットのボタンを押し、バイザーを下ろす。
  ドミニク、困惑したまま『ADF POD』のボタンを押す。

○ エアーウルフ機体下の格納庫が開く
  ランチャーが出てくる。

○ 急激にスピードを下げているエクサホーク

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「やばい、ぶつかる!」
  バイザーを上げるホーク。
  レバーを右に引く。

○ 大きく右に逸れてエクサホークから離れて行くエアーウルフ
  エクサホーク、ホバーターンしながら、両翼のポッドからミサイルを連続発射する。

○ エアーウルフ・コクピット
  レーダー画面。三基のミサイルのマークが中心に向かって近づいてくる。
ドミニク「お次は、3つだ。誘導方式がレーダー型に変わった」
ホーク「チャフの準備をしろ」
ドミニク「了解」
  ドミニク、『DEPENSE SYSTEM』のパネルの『CHAFF』ボタンを押す。
  ホーク、レバーをおもいきり引く。

○ 急上昇するエアーウルフ
  機体を40度上げて、スピードを上げる。
  サイドランチャーからチャフが三つ連続で発射される。
  エアーウルフに迫ってくる三発のサイドワインダーが枝分かれしたチャフに次々と当たる。
  小さな炎が連続して空中に浮かぶ。

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「わかったぞ。誘導電波は、北西の方向30キロ地点。海岸付近の岩山だ」
  レバーを左に向けるホーク。

○ 大きく左に旋回するエアーウルフ
  その後ろをエクサホークが追い続けている。
  エクサホークの機銃が発射される。
  エアーウルフの機体に激しく撃ち込まれている銃弾。

○ エアーウルフ・コクピット
  窓の外を覗き込むホーク。小さく聳え立つ岩山が見えてくる。
ホーク「あれだな?」
ドミニク「そうだ」
  ホーク、バイザーを下ろす。バイザーに目標点が映し出される。
  レバーのボタンを押すホーク。

○ ポッドランチャーからヘルファイヤーミサイルが発射される
  ミサイルは、岩山に命中。爆発音を上げ、岩が砕け、大きく崩れ始める。

○ 岩山・洞窟内
  オペレーションシステムの前に座っていた二人の男。前方から崩れた岩が二人の上に勢い良く降り注ぐ。
  中に入ってくるダニー。慌てて、また外に出る。

○ 同・階段
  激しい振動の中を階段を下りているケイトリンとティーナ。
  ケイトリンの頭上から岩の破片が落ちてくる。
  ティーナ、破片に気づき、ケイトリンを前に押し出す。
  岩の破片に辺り、その場に倒れるティーナ。
ケイトリン「ティーナ!」
  うつ伏せで倒れているティーナ。
  ケイトリン、ティーナを抱き起こす。
  右膝から血が滴り落ちている。
ティーナ「ここは危険よ。早く行って」
ケイトリン「バリーに会えなくなってもいいの?」
  ティーナを抱きかかえ、立ち上がらせるケイトリン。
  二人の前に現れるダニー。両手で銃を構えようとする。
  ケイトリン、咄嗟にダニーに銃口を向け、撃つ。
  右肩を撃ち抜かれ、仰け反って倒れるダニー。階段を転がり落ちて行く。

○ エアーウルフ・コクピット
  レーダー画面を見つめるドミニク。
  画面から発信点が消える。
ドミニク「電波が途絶えたぞ」
ホーク「エクサホークと交信したい」
  ドミニク、キーボードを打っている。
ドミニク「アークエンジェルに教えてもらったナンバーを打った」

○ エアーウルフの後ろを飛んでいたエクサホークが大きく右に逸れて高度を下げ始める。
ホークの声「バリー、聞こえるか?」

○ エアーウルフ・コクピット
バリーの声「まずい、どんどん高度が下がってる」
ホーク「右側の操縦レバーを握れるか?」
バリーの声「手錠をかけられてるが持つ事はできる。でもロックされていて動かない」
ドミニク「LCD画面の右側のパネルにある『ANLOCK』のボタンを解除しろ」

○ エクサホーク・コクピット
  レバーを握っているバリー。
  計器盤を見回し、LCD画面の右側にある『ANLOCK』のボタンを押す。
バリー「押した」
ホークの声「大きく右に旋回して海の方角に機体を向けた後に今度は、左のレバーを握って減速するんだ」

○ 大きく円を描きながら右に旋回するエクサホーク
  地平線に向かって進み始める。その後を追っているエアーウルフ。

○ 海面すれすれに飛行するエクサホーク
ホークの声「そうだ、その調子だ」
  エクサホークの後ろを飛行するエアーウルフ。
  海面に突っ込むエクサホーク。衝撃で機体が横になり、メインローターの動きが止まる。
  海面に浮かぶエクサホークの上空を通り過ぎるエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「浸水する前に早く助け出さないと…」
ホーク「ロープを用意してくれ。一泳ぎしてくる」

○ 海岸(時間経過)
  着陸するエアーウルフ。
ドミニクの声「一人で平気か?」
ホークの声「ああ。バリーを病院まで運んでやってくれ」
  ドアが開き、ヘリから降りるホーク。
  そばに聳え立つ岩山に向かって走って行く。

○ 洞窟
  岩の壁を沿いながら突き進んで行くホーク。
  奥の洞穴にいる背広姿の男の後姿を確認すると、両手で銃を構える。
ホーク「両手をあげろ」
  振り返る男。銃を握っている。男は、マニエルである。
  平然とマニエルを見つめるホーク。
ホーク「なんでこんなところにお前がいるんだ?」
マニエル「おまえのせいでエクサホークも遠隔装置ももう使い物にならない」
ホーク「じゃあ、何のためにあのヘリを盗んだ?」
マニエル「君達のマネをしたのさ」
ホーク「ジョンの情報もお前が流したんだな。ティーナを利用して」
マニエル「君からエアーウルフを取り戻すには、それが最善の方法だった」
  怒りの表情を浮かべるホーク。
マニエル「私は、以前、モフェットの助手をしていた。エアーウルフ計画には、途中から
 関わっていたが、あのヘリには、私の考案したシステムがいくつか積まれている。モフェットは、
 黙って私の技術を使った」
ホーク「どうして直接本人に言わなかった?」
マニエル「言う前に殺された。君にな」
ホーク「…ケイトリンは、どこだ?」
マニエル「彼女の居所を知りたいなら、銃を捨てろ」
  ホーク、銃を前に放り投げる。
  左手で銃を拾うマニエル。
マニエル「できれば、君を殺したくない。大人しくエアーウルフを渡してもらおうか」
  ホークに銃を向けるマニエル。
ホーク「俺を殺したくないのなら、なぜ銃を向けるんだ?」
マニエル「今のは、ジョークだ」
  突然、マニエルの右肩が撃ち抜かれる。銃を落とすマニエル。
  ホークの横の通路から足音が聞こえてくる。
  女の黒い影が迫ってくる。外の光が女の顔を映し出す。女は、ケイトリンである。
ホーク「ケイトリン!」
ケイトリン「無事だったのね、ホーク」
  ホーク、すかさず、地面に落ちていた銃を拾い、マニエルに向ける。
  ホークのそばに近寄るケイトリン。
ホーク「ティーナは?」
ケイトリン「向こうにいる。足を怪我して、動けないの」
ホーク「彼女のところに行ってやれ。俺は、こいつを見張ってる」
ケイトリン「…勝手についてきてごめんなさい」
ホーク「…気にするな」
  ホークのそばを離れていくケイトリン。
  ホーク、やりきれない表情を浮かべている。

○ ホークの山荘(数日後)
  入口の扉が開く。アークエンジェルと白いスーツを着た秘書の女が中に入ってくる。
  キッチンのカウンターの前に立っているドミニクとケイトリン。
  ドミニク、右手にフランスパンを持っている。
  ケイトリン、スープを煮込んでいる。
  二人、アークエンジェルを見つめる。
  呆然と二人を見つめるアークエンジェル。
アークエンジェル「ホークは?」
ドミニク「湖だ。リーと釣りをしてる」
アークエンジェル「君らはそこで何をしてるんだ?」
ケイトリン「見ればわかるでしょ?食事の用意よ。ホークを励まそうと思って」
  カウンターの前にやってくるアークエンジェル。
アークエンジェル「どうだ?彼の様子は?」
ドミニク「いつも通りさ。それより、あの兄妹は、どうなった?」
アークエンジェル「バリーも治療を終えて、また二人で元の暮らしを始めた。ティーナが落ち着いたら、
 ホークに謝罪したいと言っていたよ」
ケイトリン「元気になって良かったわ」
アークエンジェル「…あの写真に写っていたジョンの事だが、あれは、本物だった」
  驚愕するドミニクとケイトリン。
ドミニク「じゃあ、ジョンは、アマゾンでエルベガ達と一緒にエクサホークのミサイルで吹き飛ばされち
 まったって言うのか?」
アークエンジェル「いいや。あれは、エルベガの手下が半年前に撮影したものだ。エルベガから
 その写真を入手したマニエルは、奴と手を組んで今度の計画を立てたんだ」
ドミニク「エクサホークでエルベガを釣ったのか?」
アークエンジェル「そうだ。エルベガは、あのヘリを欲しがっていた。だが、マニエルは、エアーウルフが
 アマゾンに来ていることを確認した後、エクサホークで奴の占領地区を襲撃した」
ケイトリン「あの兄妹も用済みになったら殺すつもりだったのね」
ドミニク「そしてわし達もだ。ったく、ひでぇ野郎だぜ。だが、エルベガがホークに話した事は、
 嘘じゃなかったって事か…」
  複雑そうに顔を歪めるケイトリン。

○ 湖
  ボートに乗るホーク。釣竿を持っている。その隣に座るリー。リー、魚を釣り上げる。
リー「やったぁ、これで五匹目だ」
  リーを見つめるホーク。
  魚をバケツに入れるリー。
ホーク「リー」
リー「何?」
ホーク「約束を守れなくて済まなかった」
リー「いいんだよ。ジョンは、絶対どこかで生きてる」
ホーク「…」
リー「そうでしょ?」
  湖面の上を飛んでいる鷹。鳴き声を上げている。
  鋭い目つきで鷹を見つめているホーク。
ホーク「ああ…」
  
                                                        ―THE END―

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