「GARTHE&GAROS」 作 ガース「ガースのお部屋」

―ACT1―
○ 州立刑務所・3号棟独房(夜)
  ベッドで眠っているガース・ナイト。
  マイケル・ナイトと瓜二つの顔を持つ。顎鬚が伸びている。
  暫くして、扉の開く音がする。
  ガースの顔に光が差し込む。
  右手で目を覆うガース。
  肉付きの良い二人の看守が突然、ガースを無理矢理起き上がらせる。
ガース「何だおまえ達!」
  二人の看守、寡黙にガースの腕を掴む。
  外へ連れ出されるガース。

○ 同・監視室
  監視モニターの前で倒れている二人の看守。二人のそばにこぼれたコーヒーカップが落ちている。
  モニターに映し出される地下の処刑室。
  暫くして、画面にガースと看守がフレーム・インする。
  ガース、中央に設置されたシートに座らされている。

○ 同・処刑室
  両腕、両足に金属のワッカをはめられるガース。
ガース「公判は、まだ終わってないぞ!」
  ガースの前に立ちはだかる二人の看守。
看守A「遅かれ早かれ結果は、見えてる」
  二人を睨みつけるガース。
ガース「俺に個人的な恨みでも?」
看守、ガースの前から立ち去っていく。
  扉が閉まる。
  部屋の周りに設置されている排出口から勢い良く白い煙が湧き出てくる。
  瞬く間に白い煙が広がる。煙に包まれ、激しく咽るガース。
  隣の監視室の窓越しに立つ二人の看守。
  ガースの様子を見守っている。
  ガース、白目を剥き、意識を失う。
  
○ 同・死体安置所(翌日)
  扉が開く。看守とFBIの捜査官ニックと共に中に入ってくるデボン・シャイアー。
  部屋の中央に置かれた担架の前に立つ三人。
  遺体の頭に被せられた白いシートを捲る看守。ガースの死顔が露になる。
  デボン、ガースの顔をまじまじと見つめる。
看守「よろしいですかな?」
デボン「ああ、もう結構」
  看守、ガースの顔にシートを被せる。
ニック「世界を揺るがそうとした凶悪犯も呆気ない最期だったな」
デボン「遺体は、故郷の土地へ運ぶ。犯罪者とは言え、ウィルトン氏とは、血のつながった親子だ」
  看守、担架を運び出す。デボン達の前を横切る。
ニック「あの世で息子と会ったらどんな顔をするかね?」
デボン「顔を合わす事はないだろう。奴は、地獄に行くだろうからな」
  歩き出す二人。

○ 住宅街(数日後・深夜)
  ヘッドライトと赤いスキャナーを光らせ走行するナイト2000。。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル・ナイト。
マイケル「こんなに帰りが遅くなっちまうなんて」
  ハンドルの付け根上部に設置されているインジケータ。三本のラインが赤く光る。
キット「今日一日だけで3000キロも走った計算になります」
マイケル「それもこれもボニーが無理矢理仕事を押し込んだせいだ。帰ったらたっぷりご褒美をもらわないとな」
  『SURVEILLANCE MODE』のレベルゲージの光が伸びる。
キット「マイケル、あれは…」
  正面を見つめるマイケル。
  前方の道路右脇に止まっている車が燃えている。老夫婦がバケツを持ち、車に水をかけている。
マイケル「大変だ。キット、二酸化炭素の準備だ」

○ 燃える車の後ろに止まるナイト2000
  車から降りるマイケル。年老いた夫婦・クリフ夫妻に声をかける。
マイケル「そこから離れて!」
  クリフ夫婦、車のそばから離れる。

○ ナイト2000車内
  『CO2』のボタンが光る。

○ ナイト2000の先端部から二酸化炭素が勢い良く噴出する
  二酸化炭素の白い煙は、みるみるうちに車を覆う。一瞬にして炎が消える。
  車の中を覗き込むマイケル。
  クリフ夫婦に話しかけるマイケル。
マイケル「中に人はいないみたいだ。車の持ち主は?」
  頷く夫。
クリフ・夫「私だ。誰かが火をつけた」
マイケル「犯人を見たんですか?」
クリフ・妻「ジーンズとこげ茶色のシャツを着た男達が走って逃げっていったの」
  マイケル、ナイト2000を見つめ、
マイケル「出火元は、わかるか?」

○ ナイト2000車内
  モニターに車の3Dワイヤーフレームイメージが映し出される。
  イメージが回転し、助手席の下の部分に赤い丸の点滅が表示される。
キット「助手席の下がかなり焦げています。ガソリンの成分を検出しました」

○ 住宅街・クリフ夫妻宅前
マイケル「車の中にガソリンをばら撒いたんだ。キット、至急警察に連絡してくれ」
キットの声「わかりました」
  困惑している老夫婦。

○ オフィスビル・全景(翌日)
  新築された丸型のビル。

○ 同・3F
  エレベータの扉が開く。
  中からスーツを着た男女が数人降り、その後に続いて、アッシュ・ギャリソンが姿を現し、
  通路を歩き出す。

○ 同・ギャリソン法律事務所前
  扉の前で立ち止まるアッシュ。躊躇している。
  暫くして、扉が開き、中から茶色の長い髪をし、オレンジのワンピースを着た
  女性・ナターシャ・ダリスが出てくる。
  アッシュと顔を合わすナターシャ。
ナターシャ「あら…こんにちは。どうしたの?こんな時間に?」
  アッシュ、ナターシャを無視して中に入って行く。
  口を尖らせるナターシャ。通路を歩き出す。

○ 同・オフィス
  デスクに座っているデノバー・ギャリソン。受話器を握っている。
デノバー「ああ、一時からまた法廷へ行かなければならないので…」
  デスクの前に近づいてくるアッシュ。
  デノバー、アッシュに気づき、
デノバー「後でまた…」
  受話器を置くデノバー。
デノバー「おまえ、学校は?」
アッシュ「風邪気味なんだ」
  書類を書き始めるデノバー。
デノバー「また小遣いの催促か?」
  デノバー、筆を止め、アッシュを凝視する。
アッシュ「今夜の夕飯何が良い?」
  デノバー、しかめっ面をし、また、書類を書き始める。
デノバー「そんな事、電話で済む話だろ。今晩も戻れそうにない」
  扉のノック音がする。
デノバー「はい」
  ドアが開き、事務員の女性が顔を出す。
女性「ギャリソンさん、依頼者の方がお見えになっています」
デノバー「すぐ行く」
  立ち上がるデノバー。
  アッシュの前を通り過ぎるが、立ち止まり、振り返る。
デノバー「…家で大人しくしてるんだぞ。いいな」
  力なく頷くアッシュ。
  デノバー、また歩き出し、部屋を出て行く。
  憮然とするアッシュ。ふと、デスクの上に置いてあるファイルを見つめる。
  ファイルを持ち、中を覗き始める。

○ ナイト財団本部・全景
マイケルの声「至急俺達に話したい事があるって聞いたけど、一体なんだい?」

○ 同・デボン・オフィス
  デスクの座席にいるデボン。デスクの前に立っているマイケルとボニー。受話器を置く。
デボン「ガースが刑務所で自殺を図った」
  愕然とするマイケルとボニー。
マイケル「死んだのか?」
  立ち上がるデボン。
デボン「三日前、収容先の刑務所から連絡が入って、遺体を確認してきた。
 首を吊ってすぐに医務室で手当てを受けたが、駄目だったそうだ」
マイケル「そうか…でも、これでもう余計な心配はしなくて済む」
ボニー「悪夢を見るのは、もうごめんだわ」
  デスクの電話が鳴り響く。
デボン「週末に遺体を墓地へ運んで埋葬する」
  受話器を持ち、話し出すデボン。
  マイケル、憂いに満ちた面持ち。
  ボニー、マイケルの表情を見つめ、
ボニー「どうかしたの?」
マイケル「いや、なんだか妙な胸騒ぎがして…」
ボニー「昔の事を思い出したの?」
マイケル「かもね。気分直しにキットに洗車でもしてやるか」
ボニー「やめて。明日、大学で人工知能に関する講義に出席するの。雨に降られたら困るわ」
マイケル「じゃあ、洗車は、RCに頼んで、俺は、お昼寝でもしますか」

○ アリゾナ州・滑走路
  着陸する6人乗りの白い小型ジェット機。
   ×  ×  ×
  立ち止まるジェット機。
  扉が開き、姿をあらわすガース。
  杖を突きながら、ゆっくりと階段を降りる。
  コンバーチブルの赤いアルファ・ロメオの前に立つ恰幅の良い、髭を蓄えた男。ミル・マクレニアン。
  握手をするマクレニアンとガース。
マクレニアン「やっと会えたな」
  ガース、顔面蒼白。憮然とした面持ち。
マクレニアン「どうした?飛行機酔いでもしたか?」
ガース「全くひどいもてなしだな、マクレニアン」
マクレニアン「CAガスを浴び過ぎたのかもしれんな」
ガース「人の命を弄びやがって。わざわざデボンに俺の死に顔を見せてやる必要はなかった…」
マクレニアン「仕事をやりやすくするためだ」
ガース「アルジェはどこにいる?」
マクレニアン「刑務所の中にこもっている」
ガース「ギャロスを復活させたのになんてザマだ」
マクレニアン「ナイト財団の力を甘く見ていた」
  険しい顔つきになるガース。
ガース「マイケル・ナイト…何よりも先にあいつを始末しなければならない」
マクレニアン「私達の利害は、一致している」
  険しい表情のガース。左足を引きずりながら歩き出す。
  マクレニアンも後に続く。
マクレニアン「設計図を元に一部を再生させた。後は、車の中心部に当たるCPUユニットを完成させるだけだ」
ガース「ギャロスの主要なプログラムは、(自分の頭を指差し)ここにしまってある」
マクレニアン「お願いしようか」
ガース「いいとも。但し条件付きだ」
マクレニアン「どんな見返りが欲しい?」
  ほくそ笑み、顎髭をいじるガース。

○ 公園
  ベンチに座り、コーラを飲んでいるアッシュ。
  アッシュの前にやってくるベイン・リチャード。青い帽子を被っている。
ベイン「よっ!」
  アッシュの隣に座るベイン。
  アッシュ、コーラの缶を握り潰し、後ろに投げ捨てる。ジャンバーの中から四つ折りの
  白い紙を取り出し、開く。
ベイン「なんだ、それ?」
  アッシュ、紙の記された名前をまじまじと見ている。
ベイン「何に使うんだよ?」
アッシュ「すぐわかる」
  立ち上がり、歩き出すアッシュ。
  アッシュの後を追うベイン。

○ アリゾナ州・廃工場跡・全景
  古びた3F建ての白い建物。

○ 同・地下施設・作業室
  四方に並べられた最新の様々なシステム。白衣を着た数人の技術員が
  各システムの前に立ち、操作盤を動かしている。
  中央に止まっている青いコルベット。
  運転席に乗り込み、各装置の調整をしているもの、エンジンルームを覗き、
  部品をチェックしている技術員の男達。
  1Fの監視ルームの窓から様子を窺っているガースとマクレニアン。
マクレニアンの声「ガスタービンエンジンの改良を施して、スピードをさらに15%引き上げた…」

○ 同・1F監視ルーム
  窓の前に立つガースとマクレニアン。
マクレニアン「レーザーの精度と出力アップにも成功した。すでにセット済みだ。
 以前の2.5倍以上のパワーを引き出せる」
ガース「早く見たいものだな。テストは、いつから始める?」
マクレニアン「明朝にでも」
ガース「基本プログラムの再確認をしたい」
マクレニアン「コンピュータルームは、隣にある」
  二人、同時に立ち去る。
  
○ 同・地下施設・作業室
  測量システムの前に立つ技術員。
  突然、システムがダウンする。
  技術員システムの扉を開き、基盤のチェックをしている。
  
○ 青いコルベット車内
  アクセルを踏み込み、エンジン音をチェックしている技術員。
  突然、奥で男の悲鳴が上がる。
  技術員、車から降りる。
  測量システムから煙が上がり、他の男達が群がっている。
  技術員、慌てて走り出す。
  突然、コンソール上部から中央部にかけて、火花が上がり、奇妙な電子音が何重にも重なって
  激しく鳴り始める。
  駆け足して、運転席に乗り込んでくる白衣を着た男・ワストン・マシューズ。

○ タイヤを軋ませ、急発進するコルベット
  付近に置かれていた道具箱や検査器具を跳ね除け走り去る。
  警告アラームが鳴り響く。
  スピードを上げ、進む。地上へ続くスロープのトンネルを登り始める。

○ 廃工場・表
  トンネルから勢い良く出てくるギャロス。
  
○ 同・地下施設1Fコンピュータルーム
  壁に設置された赤ランプが点滅し、激しく警告音が鳴っている。
  ディスプレイの前に座っているガースとプログラマー。
  その後ろに立っているマクレニアン。
マクレニアン「何事だ?」
  プログラマー、立ち上がり、監視用のモニターの前に行く。ボタンを押し、映像を切り替える。
四分割された画面にスロープを走るコルベットの様子が映し出されている。
  険しい表情で画面を見つめるガース。
  ディスプレイの隣の電話が鳴り響く。受話器を取るマクレニアン。
マクレニアン「…誰が盗んだ?…わかった」
  受話器を置くマクレニアン。
マクレニアン「技術員の一人がギャロスを奪って逃亡した」  
ガース「すぐに追いかけろ」
マクレニアン「大丈夫だ。(プログラマーに)地図を出せ」
  プログラマー、操作盤のボタンを押す。
  モニターに地図のイメージが映り、ギャロスの現在位置を示す白い点滅が移動している。
ガース「発信装置か」
マクレニアン「こんな事もあろうかと思って、人間のほうにも仕込んでおいた」
ガース「ギャロスのほうは?」
マクレニアン「もちろん。予備のほうは、正常に機能している」
ガース「プログラムは、まだ途中だ。ユニットの電源を入れたら誤作動を起こすぞ」
マクレニアン「心配するな。すでに追跡を始めている」
ガース「私も行こう。どうもこの部屋の空気は、鼻につく」
  ガース、部屋を出て行く。
―ACT1 END―

―ACT2―
○ 砂漠地帯(夕方)
  道路脇に止まるナイト財団移動本部トレーラー。
  右前輪の周りを確認しているRC3。
コンテナの入口からマイケルが降りてくる。
マイケル「何かトラブルか?」
RC3「タイヤハウスから妙な金属音がするんだ。何かを踏みつけて挟まったのかも」
  マイケル、タイヤを見回し、
マイケル「キットに調べてもらうか?」
RC3「これぐらい自分でやるよ。あんまりキットに頼り過ぎると、早くボケちまいそうだ」
マイケル「…そう言えば俺も最近何かとキットに頼り過ぎてるかもな」
  コンテナの入口からボニーの声がする。
ボニー「マイケル、デボンさんから電話…」

○ 同・コンテナ内
  デスクの前に立ち、携帯電話を持つマイケル。
マイケル「俺だ」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  デスクの座席に座っているデボン。
デボン「さっきヒュー・クリフとか言う男から連絡を受けた。放火の件で話をしたいことが
 あるそうだ。知り合いか?」

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
マイケル「ヒュー…ああ、一昨日の夜に会った…でも、どうして警察じゃなく俺に?」
デボンの声「何かのっぴきならない事情があるようだな」

○ クリフ邸・リビング(夜)
  ソファに座っているマイケルとヒュー。
  妻・リントがコーヒーをテーブルに置いている。
ヒュー「実は、その…車を燃やした犯人に心当たりが…」
マイケル「なぜ今まで黙っていたんです?」
ヒュー「二ヶ月前、私は、不当な扱いを受けて、勤めていた清掃会社を強制的に解雇された。
 それで、デノバー・ギャリソンと言う腕利きの弁護士に裁判の弁護を依頼したんです。その弁護士の
 事務所に立ち寄った時に見かけた子供とそっくりだった」
リント「間違いないの?あなた」
ヒュー「歳は食っても、目と記憶力には、自信がある」
マイケル「…その子供ってのは?」
ヒュー「さぁ…詳しいことは…」
リント「世話になった身だし、警察には、中々言い出せなくてそれであなたに…」
マイケル「わかりました。調べてみましょう」

○ とある住宅前(深夜)
  植え込みの影にしゃがみこんでいるアッシュとベイン。ベイン右肩にショルダーバックをぶら下げている。
ベイン「本当にここで間違いないのか?」
  紙を見つめるアッシュ。
アッシュ「間違いない」
  家の中から赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
  アッシュ、格納庫に止まっている車を見つめ、
アッシュ「あの車に投げろ」
ベイン「よっしぃ!」
  ベイン、右手に持っていた瓶の口先につけている布にライターで火をつける。
  ベイン、立ち上がり、腕を大きく振り上げ、瓶を車に向かって投げる。
  瓶は、車のフロントガラスを割り、車内に転がり込む。
  暫くして、車内に炎が吹き上がる。
  ハイタッチする二人。
ベイン「やったぜ」
  突然、パトカーのサイレンが鳴り響く。
  振り返る二人。
  数百メートル先の交差点を曲がってこちらに向かってくるパトカー。
アッシュ「まずい」
  二人、住宅の合間の細い路地に向かって走り出す。
  立ち止まるパトカー。運転席から警官の男が降り、二人の後を追いかける。

○ 住宅裏
  細い路地を駆け抜けているアッシュとベイン。歩道に出て、さらに走り出す。
警官の声「おい、止まれ!そこの二人!」
  必死に走る二人。数百メートル先の歩道脇に止まっている青いコルベット。
  アッシュ、息を凝らしながら、コルベットを見つめている。
  コルベットの運転席のドアが開いたままになっている。
  コルベットの前で立ち止まるアッシュ。
  ベインも釣られて足を止める。
ベイン「何してんだよ?」
アッシュ「この車に乗るぞ」
ベイン「おまえ、運転できるのか?」
  後ろを見るアッシュ。
  警官が迫っている。
アッシュ「いいから早く!」
  ベイン、周り込み、助手席のドアを開ける。

○ 青いコルベット車内
  運転席に乗り込むアッシュ。助手席のシートに座るベイン。扉を閉める。
  アッシュ、メーターパネルや操作盤を見回し、唖然としている。
アッシュ「どうやってエンジンをかけるんだ?」
  ドアの内張りに設置されているレベルゲージが緑色の光の線を放つ。
  ベイン、扉を見回し、
ベイン「ロックは?ロックは、どこだよ?」
  振り返るアッシュ。警官、足を緩め、ゆっくりと近づいてくる。
  アッシュ、パネルのボタンをテキトーに次々と押し続ける。
  メインスイッチのボタンが赤く光る。
  運転席のドア窓から中を覗き見る警官。
警官「火遊びして車まで盗むつもりか?これ以上罪を増やす前におとなしく出てくるんだ。さぁ…」
  観念した面持ちの二人。
  ドアのノブを持つ警官。突然、警官の全身に電気ショックが走る。
  呻き声を上げながら、体を痙攣させ、そのまま路面に倒れる警官。
  呆然としているアッシュ達。
ベイン「何したんだ?」
アッシュ「知るか!」
  突然、電子音と共にパネルが一斉に光り、エンジン音が轟く。

○ 急発進する青いコルベット
  勢い良く交差点を左に曲がる。

○ 青いコルベット=ギャロス車内
  メーターの数字がみるみるうちに80MILSまで上がって行く。
ベイン「スピード出しすぎだぞ!」
アッシュ「俺じゃない。(両手を上げ)見ればわかるだろ?」
ベイン「じゃあ誰が?」
  ハンドルの上側に設置されている「M」型のLEDモジュラー。グリーンの光が伸びて発光する。
ギャロス「私だ」
  唖然とする二人。
ベイン「無線か?誰かにコントロールされてるんだ」
ギャロス「初心者は、皆決まった台詞を言う」
  アッシュ、ハンドルの上のインジゲータを見つめ、
アッシュ「違う…この車だ…車が自分で動いて、喋ってる…」
ギャロス「その通りだ。飲み込みの早い奴は、好きだ」
ベイン「何者なんだよ、おまえ…」
ギャロス「私は…私だ」
ベイン「よくわからねぇな」
アッシュ「どうして俺たちを助けてくれたんだ?」
ギャロス「わからない。今、プログラムを解析中だ」
  ベイン、へらへらと笑い、
ベイン「こいつイカれてるぜ」
アッシュ「なぁ、どこに向かってるんだ?」
ギャロス「特に決められた場所はない。必要なら、指示をしろ。好きなところに連れて行ってやる」
ベイン「聞いたか?ディズニーランドにでも連れてってくれるのか?」
ギャロス「そんな安っぽいところでいいのか、この田舎者めが。お安い御用だ」
ベイン「こいつ、一言多いな」
  ほくそ笑むアッシュ。

○ 街の風景
  朝陽が昇り始めている。

○ ギャリソン宅前
  3F建て、新築のペンション風の建物。
  家の前の歩道脇に立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  門を潜り、玄関のドアの前に立つ。
  インターホンのボタンを押す。
  反応がない。
  コムリンクに話しかけるマイケル。
マイケル「誰かいるか?」

○ ナイト2000車内
  モニターにギャリソンの家の断面図が映し出されている。
キット「生命反応は、ありません」

○ ギャリソン宅前
  溜息をつくマイケル。

○ 国道
  走行するナイト2000。
キットの声「ヒューの言うとおり、デノバー・ギャリソンの評判は、上々です。労働者を手厚く扱って、
 本来泣き寝入りして表に出ない案件も細かく分析して、企業を相手に数々の訴訟を起こしています。
 勝率は、八十・七パーセント。まさに百戦錬磨と言ったところですね」

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
マイケル「家族構成はどうなってる?」
  モニターに映っているデノバーの写真。切り替わって息子の写真が出てくる。
キット「一人息子がいます。アッシュ・ギャリソン。現在十四歳。近くのミドル
 ハイスクールに通っています」
マイケル「母親は?」
キット「三年前に二人は、離婚して、母親の所在は、不明となっています」
マイケル「ギャリソンの法律事務所までの最短ルートだ」
キット「わかりました」
  マイケル、パネルのにボタンを操作する。

○ ハイウェイ
  走行するギャロス。

○ ギャロス車内
  運転席に座るアッシュ、助手席に座るベイン。どちらも眠っている。
  ハンドルが左右に動いている。
  目を覚ますアッシュ。
アッシュ「…ずっと走ってたのか?」
ギャロス「そうだ」
  アッシュ、センターコンソールのパネルを見回している。
ギャロス「何をしている?」
アッシュ「ガスメーターを探してるんだよ」
ギャロス「ガスメーターだと?…そんな原始的なエネルギーは、使っていない」
アッシュ「じゃあ、燃料は、なんだよ?」
ギャロス「水素と電気エネルギーだ。両方を効率良く使い分けている」
アッシュ「あとどれぐらい持つんだ?」
ギャロス「5000キロは、余裕で走れる」
アッシュ「誰がお前を作ったんだよ?お前の本当の持ち主か?」
ギャロス「持ち主は、おまえだ」
アッシュ「えっ?」
ギャロス「最初に私のシートに座ったものが自動的にドライバーとして認識される」
アッシュ「…免許持ってないけど、運転してるのは、おまえだもんな。そうだ、何か名前をつけてやるよ」
ギャロス「名前?」
アッシュ「デロリアンってのは、どう?」
ギャロス「デロリアン?なんだそれは」
アッシュ「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくる車の名前だよ」
ギャロス「『未来に戻る』とは、どう言う事だ?」
アッシュ「確かにタイムマシーンってわけでもないしな…そうだ、チャッピーってのは…」
  目を開けているベイン。
ベイン「去年死んだ犬の名前なんかつけてどうすんだよ?」
アッシュ「…起きてたのかよ」
ベイン「こいつには、可愛過ぎる。「ゴデス」ってのはどうだ?」
アッシュ「ゴデス?」
ベイン「『死神』の略さ」
アッシュ「いいぞ。お前は、今からゴデスだ」
  アッシュ、ジャンパーのポケットからリストを取り出す。
アッシュ「ゴデス、ここに書かれている住所を順番に回ってくれ」
ギャロス「了解した」
  ほくそ笑むアッシュ。

○ 砂漠の道
  うねるカーブを走行するアルファ・ロメロ。

○ アルファ・ロメロ車内
  ハンドルを握る黒いスーツの男。
  助手席に座っているガース。
  ガース、左手に携帯電話の受話器を持っている。
ガース「ワストンを捕まえただと?中々手際が良いじゃないか」

○ 廃工場・地下施設1F・監視ルーム
  受話器を握っているマクレニアン。
マクレニアン「だが、移動中の車の中で暴れ出したので、始末した」
  センターコンソールの真ん中についているモニターを見るガース。
  モニターに映る地図。ギャロスと現在位置を示す白い点滅が移動している。
ガースの声「どうしてギャロスは、一人で動いている?」
マクレニアン「公園でFBIに連絡している間に誰かに盗まれたらしい」

○ アルファロメロ車内
ガース「余計な仕事を増やしてくれたな」
マクレニアンの声「すまない。後で最高級のワインを用意しておく」
ガース「極上の女もだ」
マクレニアンの声「わかっている」
  受話器を置くガース。
男「あと五十キロ程でギャロスに追いつきます」
ガース「居場所は、わかっているんだ。安全運転で行け」
  男、軽く頷く。

○ 郊外・住宅街
  閑静な街。住宅が立ち並ぶ通りを疾走するギャロス。

○ ギャロス車内
ギャロス「目的地に到着した」
  住宅を見回すアッシュ。
  フロントガラスの向こう、左側に赤い屋根をした二階建ての建物が見える。
  建物を見ているアッシュとベイン。
  建物の前で立ち止まるギャロス。
ベイン「どこを狙う?」
  アッシュ、庭に置いてあるブランコを見つめる。
アッシュ「(ブランコを指差し)あれにしよう」
  ベイン、ショルダーバックからガソリンの入った瓶を取り出している。
ギャロス「何をする気だ?」
アッシュ「あのブランコを燃やすのさ」
ギャロス「なぜそんなことをする?」
ベイン「気晴らしさ」
ギャロス「その古びた産物で燃やす気か?」
ベイン「何を言ってるんだ。こいつがなかったら世界は、干上がっちまうんだぜ。おまえだって走れなくなる」
ギャロス「アッシュ、こいつに私のエネルギーシステムについて教えてやれ」
  辺りを見回しているアッシュ。
アッシュ「行くぞ、ベイン」
  車から降りようとする二人。
ギャロス「待て」
  動きを止める二人。
ギャロス「無駄な労力を使うより、もっと単純かつ効率的な方法がある」
  パネルの『LASER L』のボタンが光る。

○ ギャロスのフロントフェンダー左側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。
  緑色のレーザーが発射する。植え込みを貫き、ブランコに当たる。爆発し、一瞬で粉々になるブランコ。

○ ギャロス車内
  口を開け、呆然としているアッシュとベイン。
ベイン「すげぇー!こいつ怪物だぜ」
アッシュ「…」
―ACT2 END―

―ACT3―
○ 市内通り
  橋を渡っているナイト2000。
  通信のアラーム音が鳴る。

○ ナイト2000車内
  モニターに財団本部のデスクにつくデボンの姿が映し出される。
デボンの声「さっき、FBIから連絡が入った。一週間前にレーザーシステムの科学技術チームの
 一人が脅迫を受けて、FBIのおとり捜査官が身代わりになって拉致グループに捕まり、潜入した。
 昨夜、その捜査官が監禁場所の地下施設から脱出したが、気になるのは、彼が昨夜、
 FBIの本部にかけてきた電話の内容だ」
マイケル「そのグループが強力なレーザー兵器を開発した?」
デボンの声「それもあるが、その捜査官は、施設から抜け出す時、青いコルベットに乗って逃げたそうだ」
  愕然とするマイケル。
キット「マイケル…」
マイケル「まさか…ギャロスのボディは、溶鉱炉で完全に燃やして、この世には、もう存在しない」
デボンの声「そのコルベットには、特殊な装置が組み込まれていて、開発したレーザーも
 その車にセットされているそうだ」
マイケル「その拉致したグループって、もしかして…」
デボンの声「もしその青い車がギャロスと関係があるなら、組織は、メイズとつながりがあるかもしれない。
 実は、その捜査官は、連絡の後、消息を絶っている。一刻も早く彼を見つけ出して、
 さらに詳しい情報を聞き出さなければならない」
マイケル「連絡してきた場所は、突き止めたのか?」
デボンの声「カントリーロード101A沿いにあるノーススターパークの公衆電話だ。
 地元の警察も彼の行方を追っている」
マイケル「わかった。俺たちも付近を当たってみる」
  モニターからデボンの映像が消える。
キット「ギャロスがまた復活したんでしょうか?」
マイケル「メイズがギャロスの設計図を持っていたなら、それもありえる…」
キット「今警察無線を傍受したのですが、三十分前にパームシティの住宅で爆発事故があったそうです。
 目撃者の証言から、犯人は、青いスポーツカーに乗って逃走…マイケル!」
  険しい表情でアクセルを踏み込むマイケル。

○ 加速するナイト2000

○ 国道を走行するギャロス
  住宅街へ続く通りへ入って行く。
アッシュの声「次は、あの家だ」
ギャロス「任せておけ」

○ とある住宅前
  元の姿に戻り、道路脇に止まっているナイト2000。
  住宅の庭に警察官が二人立ち、女性と話している。
  歩道にいる眼鏡をかけた老婆と話しているマイケル。マイケルの隣に警官が立っている。
老婆「そりゃあ、もうおったまげたよ。青色の光線がびしゃーってブランコに当たって
 パンって爆発したの…緑だったかしら…」
マイケル「その光は、車から発射された?」
老婆「そう」
マイケル「車の中に人は、何人乗ってた?」
老婆「二人…運転席と助手席にねぇ。どっちも子供だったわ」
  唖然とするマイケル。警官、失笑し、
警官「子供が運転?そんな器用な子はいないよ」
  マイケル、そばを離れ、慌ててナイト2000に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
キット「どうでした?」
マイケル「間違いない。ギャロスは、近くにいる。子供が運転しているそうだ」
キット「マイケル、5キロ先の住宅でまた爆発事故が起きたようです。
 玄関先に止めてあったワゴンが炎上しているとか…」
  マイケル、エンジンをかけ、車を急発進させる。

○ 国道
  のどかな田園の間の道を駆け抜けているギャロス。
  激しいロックの曲が流れる。
ベインの声「イヤァフォー」

○ ギャロス車内
  ベイン、コーラを一気飲みしている。
ベイン「この車最高。こいつがいれば、強盗だってちょろいだろ」
アッシュ「…」
  アッシュの様子を窺うベイン。
ベイン「冗談。でもさ、火つけるだけに使うのって勿体無い気がしねぇか?」
アッシュ「この車の事は、俺達だけの秘密だ。絶対誰にも喋るなよ」
ベイン「当たり前だ。どこか良い隠し場所を見つけないと…」
アッシュ「その前にあともう一つ」

○ 国道
  走行するナイト2000。
マイケルの声「3件目の犯人も青いコルベットに乗ってた…」

○ ナイト2000車内
キット「なぜ次々と見知らぬ人の住宅を襲っているんでしょう?」
マイケル「事件を起こしているのは、ギャロスを操っている奴らだ」
キット「犯人が少年達だとすると、愉快犯の可能性もありますね」
マイケル「いや、どうも一連の行動を見ていると、何か計画的なものがあるような気がする」
キット「ギャロスが利用されていると言うのですか?」
マイケル「待てよ…放火事件の犯人も少年だった。キット、行方不明のFBI捜査官が
 使った公衆電話のある公園の地図を出せ」
  モニターに公園付近の地図が映し出される。
マイケル「その付近で放火された住宅がないか調べてくれ」
  公園の近くの住宅のイメージに×点が表示される。
キット「ありました。被害届けが出ています。昨夜の深夜12時5分頃、ハーベイ・モリソンの車庫に
 あった車が燃やされています。記録では、犯人を追いかけた警官がモリソン邸裏の歩道で倒れていた
 ところを発見され、病院に収容されています」
  マイケル、アクセルを踏み込む。

○ 市内
  周辺に高層マンションがいくつも建っている。
  慌しく車が行き交う道を走行するギャロス。脇道に寄り、立ち止まる。
  フロントガラス越しに辺りを見回しているアッシュとベイン。
  人通りの多い歩道をまじまじと見ているベイン。
ベインの声「おい、本当にこんなところでやる気かよ?真昼間にさ」

○ ギャロス車内
アッシュ「だから面白いんだろ?前は、こんな事できなかった」
ベイン「それで、次の場所は、どこだよ?」
  アッシュ、左側に見えるマンションの3Fのある部屋を指差す。
  ベイン、アッシュの指差した方向を見つめ、
ベイン「無茶だよ。あんなところに正確に当てるなんてできっこない」
アッシュ「ゴデム、どうだ?」
  モニターにマンションの3Dワイヤーフレームとギャロスの現在位置が表示される。
  ギャロスとマンションの距離を示す赤いラインが表示される。
ギャロス「ここからだと約537メートルの距離があるが、十分射程範囲だ」
アッシュ「だってさ」
  アッシュ、『LASER L』のボタンを押す。

○ ギャロスのフロントフェンダー左側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。
  砲身が自動的に目的の方向に移動し、即座にレーザーが発射される。
  
○ マンション3Fベランダ
  レーザー、部屋の硝子を貫く。

○ 同・リビング
  レーザーがテレビに当たる。爆発音と共に激しく燃え上がる。

○ ギャロス車内
  マンションの部屋の様子を見つめるアッシュとベイン。
  ギャロスの左のドアミラーに反対車線の脇に止まっているアルファロメオが映っている。

○ アルファロメオ車内
  ギャロスの様子を見ている男。
  ガース、葉巻を銜えている。
  男、ガースと顔を合わし、
男「中にいるのは、どうやらガキのようです」
  煙を吐くガース。
男「片付けましょうか?」
ガース「わざわざギャロスのテストをしてくれているんだ。そう慌てるな。
 レーザーの精度は、抜群だな」
  葉巻を吸い、大きく煙を吐き出すガース。

○ 病院・全景
  5F建て白い建物。
警官の男「車のドアノブを触った途端、物凄い強い電流を浴びせられて…」

○ 病院・3F個室
  ベッドの上に座っている警官の男。右手に持っている写真を見つめている。
  男のそばに立っているマイケル。険しい顔つき。
警官の男「この車だ」
マイケル「犯人の特徴は?」
  頷く警官の男。
警官の男「中学生ぐらいの子供達だった」
  マイケル、ポケットから写真を取り出し、
  男に手渡す。
マイケル「もしかして、その一人は、その写真に写っている子じゃないか?」
  男、アッシュの写真を見つめ、頷く。
警官の男「運転席に座ってた…」

○ 市内
  とある高層マンション3F。部屋の中が炎に包まれてる。割れた窓の穴から白い煙が外に流れでいる。

○ ギャロス車内
  マンションの様子を見つめるアッシュとベイン。
ベイン「おい、いつまで見てんだよ!」
  アッシュ、ジッとマンションを睨みつけている。
  遠くから聞こえる消防車のサイレン。
ベイン「ほら、見ろ。誰かが通報したんだ。やばいって」
アッシュ「わめくなよ。こいつなら逃げ切れるさ」

○ 急発進するギャロス
  後ろから走ってきたセダンの前に割り込む。唸るクラクション。
  二車線の道路。前を走る車をジグザグに抜きながらさらに加速するギャロス。
  赤信号。ギャロス、構わず交差点を走り抜ける。横から来たトラックと乗車が
  急ブレーキをかけて立ち止まっている。
  その間をアルファロメオが潜り、ギャロスを追っている。

○ 市内・国道
  走行するナイト2000。
  赤信号。交差点の前で立ち止まる。

○ ナイト2000車内
キット「アッシュがギャロスを運転していたとは…」
マイケル「彼が放火の首謀者と見て間違いない」
キット「一刻も早くギャロスを止めないと」
マイケル「わかってる。何かないか?ギャロスを見つけ出す良い方法は…」
  フロントガラス越しに見える交差点をギャロスが横切って行く。暫くして、アルファロメオも通り過ぎる。
  呆然としているマイケル。
マイケル「キット、今のは…?」
キット「ギャロスです」
  マイケル、アクセルを踏み込む。

○ 交差点をタイヤを軋ませながら勢い良く左に曲がるナイト2000

○ 国道
  二車線の道路。前の車を抜いて、どんどん前へ進むギャロス。
  後ろを走るアルファロメオ。ギャロスを追っているがみるみる距離が離れて行く。

○ アルファロメオ車内
  ハンドルを握る男。
男「駄目です。どんどん離されて行きます」
ガース「当然だ。あいつの走りにおいつける車は…」
  ガース、右のドアミラーを見つめる。
  後ろから物凄い勢いで迫ってくるナイト2000の姿が映っている。
  ほくそ笑むガース。
ガース「ネズミが一匹嗅ぎつけたようだ」
  右車線を走行するナイト2000。アルファロメオのそばを横切り、追い抜いて行く。
  ナイト2000を凝視するガース。
ガース「ギャロスの相手は、あの車に任せよう」
男「どう言うことです?」
  ニヤつくガース。

○ 国道
  走行するる消防車。激しく唸るサイレン。
  数百メートル先の反対車線を走るギャロスに接近している。

○ ギャロス車内
ギャロス「何者かが私の後をつけている」
  アッシュ、ベイン後ろ振り向く。リアガラス越しにナイト2000が見える。
ベイン「どうするんだよ!」
ギャロス「打開する術は、ある」

○ ナイト2000車内
キット「攻撃してこないところを見ると、ミサイルは、まだ搭載されていないようですね」
マイケル「ミサイルはな」

○ ギャロスのフロントフェンダー左側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。
  砲身が反対車線を走る消防車の動きを捉える。緑色のレーザーが発射される。
  レーザーは、消防車の前輪を貫く。
  激しく回転するタイヤのゴムが剥がれる。
  消防車、中央分離帯に乗り上げ、激しく横転。車体を横にして、反対車線の道を塞ぐ。

○ ナイト2000車内
  消防車が横倒しになっているのを見つめるマイケル。
  吹き出た水の勢いで、ホースがゆらゆらと宙を舞っている
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ 噴射音が鳴り響き、勢い良くジャンプするナイト2000。
  消防車の上を勢い良く飛び越える。
  宙を舞うホースを跳ね飛ばし、水を大量に浴びながら路上に鮮やかに着地する。

○ ギャロス車内
  怯えた表情をしているアッシュとベイン。
ギャロス「二人とも何をそんなに怯えている?」
ベイン「降ろしてくれ」
ギャロス「なぜだ?私の中が一番安全なのに」
ベイン「アッシュ、何とか言えよ、俺達このままだと殺人犯になっちまうぞ」
アッシュ「…」
ギャロス「今更何を言ってるんだ。私を信じろ」
  モニターに後方の様子が映し出される。ナイト2000が迫っている。
ギャロス「まだ追ってくるとは…しぶとい奴め」
  操作パネルの『LOOF R』のボタンが光る。
  ルーフが開き、ベインが射出し、外へ放り出される。
アッシュ「ベイン!」

○ 空高く舞い上がるベイン
  悲鳴を上げている。

○ ナイト2000車内
  マイケル、空を見つめ、
マイケル「助手席のルーフを開けろ!」
  『EJECT R』のボタンが光る。
  ブレーキを踏むマイケル。

○ 急停止するナイト2000
  ナイト2000の頭上にベインが落ちてくる。

○ ナイト2000車内
  競りあがった助手席のシートに尻から落ちてきて、受け止められるベイン。
マイケル「ナイス・キャッチ!」
  ベイン、わけがわからずマイケルを見つめ、
ベイン「どうも…」
キット「しかし、ギャロスに逃げられました」
マイケル「いいさ。(ベインを見つめ)スペシャルゲストが来てくれたからな」
  走り去るギャロス。
―ACT3 END―

―ACT4―
○ 市内・国道
  一車線の道路を疾走するギャロス。
アッシュの声「友達になんてことをするんだ?」

○ ギャロス車内
ギャロス「あいつの望みを叶えてやったまでだ」
アッシュ「僕も下りる」
ギャロス「それはできない」
アッシュ「どうして?」
ギャロス「私は、お前を守るようプログラムされている」
アッシュ「そんなの削除しろ。どうやってやるんだ、教えろよ!」
ギャロス「私のプログラムを操る事ができるのは、ガース・ナイトただ一人…」
アッシュ「誰だよ、それ?」
ギャロス「知らない…しかし、メモリーバンクには、そう記録されている」
  怪訝な表情を浮かべるアッシュ。

○ 市道
  田園に囲まれた道を走るナイト財団トレーラー

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  ナイト2000の前で対峙するベインとマイケル、ボニー。
マイケル「アッシュを助けたかったら、正直に言うんだ。あの青いコルベットをどこで見つけた?」
ベイン「ノーススターパークの近くさ。家の車に火をつけてたら、警官に追いかけられて、二人で逃げてたら、
 たまたまドアを開けっ放しにした車が止まってて…」
ボニー「誰が車を運転したの?」
ベイン「あの車さ…」
マイケル「放火をやり始めたきっかけは?」
ベイン「お互い学校が面白くなくて、たまに抜け出して、最初は、紙くず燃やしたり、爆竹で遊んだりする
 ぐらいだったけど、そしたらアッシュがもっと大きな事しようって…昨日は、変なリストを持ってきやがって、
 それに載ってる奴らの家に順番に火をつけてやろうって言い出し始めて…」
マイケル「何のリストだ?」
ベイン「親父さんの仕事のやつだ。依頼者の名前が書かれてた」
  マイケル、ボニー、困惑した表情で顔を合わす。
マイケル「一体誰がギャロスを復活させた…」
ボニー「一番可能性があるのは、アルジェだけど、彼は、今も刑務所に収監中よ」
マイケル「やっぱりメイズの残党か」
ボニー「ギャロスは、前に処分した時にCPUとメモリーバンクも全て綺麗に焼き尽くしたけど、
 でも、メモリーバンクのコピーがあれば、同レベルのCPUユニットを使ってギャロスを
 元通り復元する事は、可能だわ」
  溜息をつくマイケル。

○ エリン山の麓・森林
  森の奥に続く狭い道。
  斜面にできている小さな洞穴の前に止まっているギャロス。
ギャロスの声「いつもあんな事をしているのか?」

○ ギャロス車内
  運転席に座っているアッシュ。
アッシュ「ああ」
ギャロス「楽しいのか?」
アッシュ「めらめら燃えてるのを見るとさ、なんかテンションが上がってくる。でも、もう飽きた」
ギャロス「どうしてだ?」
  アッシュ、気まずそうに顔を顰め、
アッシュ「今日は、最高の一日だったよ。そろそろ帰るわ」
  アッシュ、ドアを開けようとするが、開かない。
  ムキになって力づくで開けようとする。
ギャロス「何をそんなに焦っている?」
アッシュ「開けろよ…僕の言う事が聞けないのか?」
ギャロス「降ろす前に一つだけ言っておきたい事がある」
アッシュ「なんだよ!」
ギャロス「私を見捨てる事はできない。私は、いつもおまえを監視している」
  アッシュ、きょどった表情。
  突然、運転席のドアが開く。ガースが車内を覗く。ガースと顔を合わせるアッシュ。
ガース「もう十分に楽しんだだろ。そろそろ、返してもらおうか」
  息を飲むアッシュ。
アッシュ「あんた誰?」
ガース「この車のオーナーだ」
アッシュ「どうしてここが?」
ガース「盗難防止用の信号を辿ってきた」
アッシュ「…良かった。ちょうど今降りようと思っていた所さ」
  アッシュ、静かに車を降りようと見せかけて、突然、ドアでガースを払い除け、走り出す。
  倒れるガース。
  走るアッシュ。アッシュの足元で弾丸が跳ね、煙が吹き上がる。
  立ち止まるアッシュ。
  アッシュの背中に杖型の銃を向けているガース。
ガース「タダ乗りは、させんぞ。遊んだ分だけの料金は、払ってもらわないとな」
  怯えているアッシュ。

○ ギャリソン法律事務所・オフィス
  ドアをノックする音。
デノバー「はい」
  ドアを開け、中を覗き込むマイケル。
マイケル「デノバー・ギャリソンさん?」
  デスクに座っているデノバー。
  筆を止め、眼鏡を外す。
デノバー「ええと、どの件でご依頼を?」
  中に入り、デスクの前に近づくマイケル。
マイケル「俺は、マイケル・ナイト。ナイト財団で働いてる者です。あなたの息子さんのアッシュに
 ついて二、三おうかがいしたい事が…」
デノバー「うちの子が何か?」
マイケル「落ち着いて聞いてください。彼は、今ギャロスと呼ばれる殺人マシーンを運転して、
 町を次々襲っているんです」
  失笑するデノバー。
デノバー「あの子は、まだ14だ。車を運転できる年齢じゃない。何かの見間違いじゃないのか?」
マイケル「友達のベインから話しを聞いた。アッシュは、彼と一緒に放火を繰り返していた」
デノバー「…何?」
マイケル「ギャロスには、人工知能装置が組み込まれていて、自分で運転する事も可能なんです」
デノバー「つまり、アッシュは、その車に利用されていると言う事か」
マイケル「いいえ。利用しているのは、アッシュです」
マイケル、リストをデノバーに手渡す。リストに目を通すデノバー。
マイケル「そこに書かれているのは、放火事件の被害にあった人達の名前です。見覚えは?」
  溜息をつくデノバー。
デノバー「おそらく、うちの事務所に置いてあったファイルをメモったか、あるいは、コピーをしたか…」
マイケル「最近アッシュの様子におかしなところは、なかったですか?」
デノバー「ここ一ヶ月ほどは、仕事が溜まっていて、自宅に戻っていない」
マイケル「彼の生活態度については、何も知らないと?」
デノバー「あの子は、自炊もするし、学校の成績も常にトップクラスで、最高に親孝行な息子だ」
マイケル「アッシュは、ここ数週間度々学校を休んでいるそうですよ」
デノバー、気まずそうに俯く。
デノバー「あの子は、将来のある身だ。どんな事があろうと私が守り通す」
マイケル「法を遵守する仕事に携わっている人間とは思えない発言だな」
デノバー「アッシュは、私が探す。君は、出て行きたまえ」
マイケル「今アッシュの罪を問うつもりはない。彼が次に狙う相手を一刻も早く見つけ出さないと、
 大変な事になる」
  困惑しているデノバー。
デノバー「法の番人気取って、私を脅迫する気か?…」
  扉が開き、ナターシャが顔を出す。
  ナターシャに気づくデノバー。
ナターシャ「あら、まずかったかしら…」
  マイケル、振り返り、ナターシャを見ている。
デノバー「いや。用件は、片付いた。(マイケルを睨みつけ)そうだな?」
  落胆するマイケル。

○ テナントビル・駐車場
  入口から出てくるマイケル。
  ナイト2000に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
キット「何か収穫は?」
マイケル「アッシュがコピーしたと思われるリストのコピーは、もらってきた。
 ギャリソンは、離婚したって言ってたな」
キット「ええ。それが何か?」
  通信のアラームが鳴り響く。
マイケル「ちょっと気になる女性を見かけたんだ…」
キット「デボンさんです」
  モニターにナイト財団本部・オフィスのデスクに座るデボンが映る。
デボンの声「さっき、アッシュから警察に連絡があった。ギャロスを返したいから今すぐ
 エリン山の麓まで来て欲しいと…」
マイケル「アッシュが?自分から連絡を?」
デボンの声「ギャロスが何か入れ知恵をしたのかもしれん」
マイケル「わかった。とりあえず行ってみる」

○ ギャロス車内
  運転席のシートに座っているガース。口に基盤を咥えている。
  ハンドル下に取り付けられているユニットの扉を開ける。
  ガース、基盤をユニットの中に差し込み、扉を閉める。
  電子音が鳴り出し、調整を始めている。
  モニターを見つめるガース。モニターに『Program correction completion<プログラム修正完了>』
  の文字が浮かぶ。
ガース「私が誰かわかるか?ギャロス」
ギャロス「ガース・ナイト。私を蘇らせた素晴らしき同志…」
  ほくそ笑むガース。

○ エリン山・山道
  長く続くカーブを走行するナイト2000。

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ここから五百メートル先にある墓地の近くの森林で人の生命反応をキャッチしました」


○ 墓地
  道路脇に止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  墓地の前を通り、斜面を駆け下りて行く。

○ 森林
  斜面に立ち並ぶ大木。木の幹に縛られているアッシュ。
  斜面をゆっくりと駆け下りてくるマイケル。
  アッシュ、マイケルの顔をまじまじと見つめ、怯えた表情をする。。
  アッシュの猿轡を外すマイケル。
マイケル「良かった。もう大丈夫だ」
  マイケル、アッシュのロープを解き始める。
アッシュ、困惑した面持ち。
マイケル「アッシュだな。一体何があったんだ?」
アッシュ「あんた、頭おかしいの?」
マイケル「…」
アッシュ「自分で僕を縛りつけといて、今更正義の味方気取りかよ」
マイケル「何を言ってるんだ?ギャロスはどこだ?」
  アッシュ、マイケルを押し退け、斜面を駆け下りて行く。
マイケル「待て、アッシュ!」
  アッシュを追って走り出すマイケル。
  マイケルの足元で弾丸が弾く。
  振り返るマイケル。木のそばに杖型の銃を構えたガースが立っている。
  驚愕するマイケル。
マイケル「ガース!刑務所で死んだじゃなかったのか?」
ガース「そうとも。私は、二度死んだ。だが、神は、また俺を見放さなかった」
マイケル「亡霊じゃなくて残念だ」
ガース「何のために俺がお前の前に現れたのか、わかるな」
  息を飲むマイケル。
ガース「運命には逆らえないぞ、マイケル。これから逆転劇をとくと拝ませてやる」
  ガース、杖をマイケルに向け、撃つ。
  銃声。マイケル、サッと地面に転がり、弾を避ける。
  そのまま、斜面を駆け下りて行く。

○ 山道
  斜面から滑り落ちてくるマイケル。
  路面に立ち、コムリンクに話しかける。
マイケル「キット、今すぐ来た道を戻ってきてくれ」
キットの声「何があったんです?」
マイケル「事情は、後で話す」
  マイケルの背後から不気味なエンジン音とスキャナーの音が鳴り響いてくる。
  後ろを向くマイケル。
  ギャロスがマイケルに迫ってくる。

○ ギャロス車内
  運転席からの主観。フロントガラス越しに見えるマイケル。逃げ場を失いまごついている。
  スピードを緩めずマイケルに迫っている。
  
○ 山道
ガースの声「止まれ、ギャロス!」
  急ブレーキをかけ、マイケルの寸前で立ち止まるギャロス。
  不気味に唸る二本のスキャナー。エンジンを高鳴らせている。
ギャロスの後ろからゆっくりとやってくるガース。
  険しい顔つきのマイケル。ガースを睨みつけている。
ギャロスの声「どうしてとどめを刺さない?」
ガース「まだキャストが揃っていないぞ」
ギャロスの声「おお、そうだった」
  坂道を勢い良く下りてくるナイト2000。
  前方を見つめるガース。マイケルの後ろに立ち止まるナイト2000。
  マイケルを間に挟んで対峙しているナイト2000とギャロス。
  ナイト2000のスキャナーが唸る。
キットの声「ガース…どうしておまえが?」
ガース「ギャロス、私の元へ来い」
  ギャロス、エンジンを唸らせ、バックし始める。ガースの前で立ち止まる。
  ガース、不気味な笑みを浮かべながら、車に乗り込む。
  マイケル、ナイト2000に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  マイケル、正面を見つめる。
  フロントガラス越しにガースが乗り込んだギャロスの姿が見える。
キット「レーザーパックは、積んでいません。ギャロスを倒すには、完全に形勢不利な状況です」
マイケル「ひとまず退散するしかなさそうだな」

○ ギャロスのフロントフェンダー両側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。

○ ギャロス車内
ギャロス「この至近距離で撃てば確実に奴らを木っ端微塵にできる」
ガース「慌てるな。一気にやるのは、私のポリシーに反する」
ギャロス「では、どうするのだ」
ガース「まずは、分断作戦と行こう。マイケルの泣きっ面を見たい」

○ 対峙するナイト2000とギャロス
  ギャロスのスピーカーからガースの声が聞こえてくる。
ガースの声「このレーザーは、前より強力になっている。一度浴びたらナイト2000のボディは、
 ズタズタになる」

○ ナイト2000車内
キット「どうします?」
マイケル「よし、煙幕の準備だ」
ガースの声「よく聞け、マイケル」
  マイケル、動揺した面持ち。

○ ギャロス車内
ガース「あのガキは、私の部下が見張っている。私の指示一つで消す事もできる」

○ ナイト2000車内
マイケル「卑怯だぞ、ガース」
ガースの声「どうせお前達に勝ち目はない。なら、ギャロスの上を飛び越えて逃げ切ってみろ」
キット「アッシュの命を守るためです。止むを得ません」
マイケル「いや他に方法はあるはずだ」
キット「耐える自信はありませんが、可能性にかけてみます」
マイケル「いつもなら、それは俺が言うセリフだ」
キット「ええ、『一か八か』ってやつです」
ガースの声「無駄な時間を費やしたくない。早くしろ!」
マイケル「…俺も覚悟を決めたぜ」
キット「やりましょう」
  マイケル、やけくそ気味にアクセルを踏み込む。

○ 加速しギャロスに迫るナイト2000

○ ナイト2000車内
マイケル「行くぞ!キット!」
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ ジェットタービンを唸らせ、ジャンプするナイト2000
  ギャロスの両側の砲台がナイト2000の動きに合わせて角度を変える。
  ギャロスの真上を飛び越えるナイト2000。
  ギャロスの2つ砲台から緑色のレーザーが発射される。
  2つのレーザーは、ナイト2000の下部にヒットする。
  ギャロスを飛び越え着地するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  奇妙な電子音を発しながら電子パネルが狂い、暴走している。
  エンジンの出力が下がり、みるみるスピードが落ち、立ち止まる。
マイケル「キット!どうした!」
  キットの声の音程が不安定になっている。
キット「…マイケ…ル…はや…くひな…んを…」
マイケル「しっかりしろ、キット!」
  『EJECT L』のボタンが光る。運転席のルーフが開く。射出し、外に飛び出すマイケル。
  まもなくナイト2000の車体が真ん中から真っ二つに折れて、大爆発する。
  爆風に飲まれ、吹き飛ばされるマイケル。道路脇に転がり落ちる。
  うつ伏せ状態で少し黒こげた顔を上げるマイケル。
  炎上するナイト2000。ボンネットが吹き飛び、右前輪ももげている。
  マイケルの前に部品の残骸が落ちている。
  マイケル、目の前に落ちているキットのインジケータの破片を見つめる。
マイケル「キット…」
  そのまま気絶するマイケル。
  Uターンし、ナイト2000の前に対峙するギャロス。

○ ギャロス車内
  高笑いしているガース。
ガース「見たか、ギャロス。メモリーバンクにこの光景をしっかり焼き付けておけ」
ギャロス「マイケルは、どうする?」
ガース「もうあいつは、犬の糞同然だ。俺がケリをつける」
ギャロス「待て、何者かが近づいてくる」
  パトカーのサイレンが聞こえる。
  
○ 山道
  パトカーとその後を走るナイト財団移動本部トレーラー。坂を上っている。
  発進するギャロス。
  左側の砲台からレーザーを撃つ。
  パトカーのボンネットにレーザーが当たる。爆発するパトカー。
  パトカーとトレーラーを横切り、走り去って行くギャロス。
  急停止するトレーラー。
  トレーラーの運転席から降りるRC3。燃えるナイト2000を見つめ、呆然としている。
  倒れているマイケルに気づき、走り出す。
  マイケルを抱き起こすRC3。
RC3「マイケル…大丈夫か、おい!」
  コンテナから降りてくるボニー。立ち止まり、ナイト2000を見つめ、愕然としている。
  RC3、マイケルに必死に呼びかけているが反応がない…
―ACT4 END―

―ACT5―
○ 病院・個室
  額に包帯を巻かれ、眠っているマイケル。
  目を覚まし、辺りを見回す。
  マイケルの前に立つデボン。
デボン「マイケル…気づいたか?」
  目を細めるマイケル。
マイケル「…ここは」
デボン「病院だ」
マイケル「どこをやられた?」
デボン「軽い脳震盪と打撲傷。左のわき腹の骨が折れていた」
マイケル「…キットは?キットは、どうした?」
  デボン、深刻そうに表情を強張らせる。
デボン「完全に…破壊されてしまったよ…」
  マイケル、口を開けたまま、沈黙。
デボン「ガースは、ギャロスと一緒にどこかへ消えた。奴が生きていたとは…」
マイケル「俺達にできる事はあるのか?」
デボン「あるとも。一刻も早くガースとギャロスを見つけ出して、奴の狙いを突き止めるんだ」
マイケル「さっきまでならそれも可能だった。キットがいた時までは…」
デボン「我々の力で最善の努力をするしかない」
マイケル「そんな悠長な事を言ってていいのか?デボン。ギャロスを倒すには、
 キットの力が必要だった」
デボン「…ボニーとRC3がキットの残骸を回収して、今、再生のための準備を進めている。
 時間は、かかるだろうが、必ず…」
マイケル「その前にこの国は、ガースとギャロスの餌食にされちまう…」
  デボン、やりきれない表情を浮かべ、
デボン「そろそろ私は、本部に戻る。色々やらなければいけないことがあるんでな」
  デボン、溜息をつき、立ち去る。
  マイケル、天井を見つめ、唇を噛み締めている。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  灰になり、骨組みだけになったナイト2000の車体が置かれている。
  RC3、テーブルの上に置かれた寄せ集めの残骸を一つ持ち、確認している。
  コンピュータの前に座り、片手で頭を抱え、項垂れているボニー。
  ボニーの様子を見つめるRC3。
RC3「…大丈夫。また一から組み立て直せばいいのさ」
ボニー「キットの部品がほとんど使い物にならない状況で、よくそんな事言えるわね…」
  言葉をなくすRC3。漫然とナイト2000を見つめる。

                                     ―THE END―

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