『GOOD MATE、BAD MATE』 作 ガース「ガースのお部屋」

―ACT1―
○ ハイウェイ
  交通量が激しい。夕陽を浴びながらカーブを走行するナイト財団移動本部トレーラー。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  コンピュータの前に立つボニー・バーストとRC3(レジナルド・コーネリウス三世)。
  ディスプレイに映るデボン・シャイア。ナイト財団本部のオフィスにいる。
デボンの声「それで、キットのほうはどうだ?」
ボニー「回収した部品を調べたら、メモリーバンクの一部は、かろうじて残っていました」
RC3「他は、駄目です。全部作り直さないと…」
ボニー「マイケルは?」
デボンの声「意識は、はっきりしている。怪我を治すのに少々時間はかかるが、
 ただ、問題は、心のほうだ」
RC3「あのマイケルが?冗談でしょ?」
デボンの声「ガース達にキットを破壊されて、相当なショックを受けたようだ」
  ボニー、憮然とし、
ボニー「ショックを受けてるのは、私達だって同じです」
  立ち去るボニー。
  唖然とするデボン。
RC3「皆気が立っているんですよ。なぁに時間が立てば、そのうち…」
デボンの声「…制作メンバーとの連絡は?」
RC3「ええ。ただ、肝心の人工頭脳部門のほうが…ブーアマン博士が体調を崩して入院中だそうで…」
  困惑するデボン。
デボンの声「わかった。こっちで何とかする」

○ ギャリソン宅(夜)
  玄関に向かうアッシュ・ギャリソン。
  扉の前に立ち、ジャンパーのポケットをまさぐる。
  鍵が見つからず、ジーパンのポケットも探り始める。
  突然、扉が開く。中からナターシャ・ダリスが出てくる。
  唖然とするアッシュ。
ナターシャ「お帰りなさい…遅かったわね」
アッシュ「あんた、なんでここに?」
ナターシャ「お父さんに頼まれたの。仕事が忙しいから帰ってきたら、止めておくようにって」
アッシュ「勝手に人の家上がんなよ」
ナターシャ「…悪いとは、思ってたんだけど、あなたが何かの事件に巻き込まれてるって聞いたから仕方なく」
  踵を返し、走り出すアッシュ。
ナターシャ「ねぇ、ちょっと待って!」

○ 住宅街・歩道
  必死で走っているアッシュ。
  前を見つめ、突然立ち止まる。
  道路脇にギャロスが止まっている。
  前バンパーについている緑色の2つのスキャナーを不気味に光らせている。
アッシュ「ゴデス!」
ギャロスの声「私の本当の名は、『GARTH AUTOMATION ROBOT OPERATION SYSTEM』。
 GAROSと呼ばれている」
アッシュ「何しにここに来たんだ?」
ギャロスの声「言ったはずだ。私は、おまえを守るようプログラムされている」
アッシュ「本当の持ち主が見つかったんだ。僕は、もう関係ない」
ギャロスの声「どうせどこにも行く当ては、ないんだろ?」
アッシュ「ほっとけよ」
  アッシュ、踵を返し、ギャロスに背中を向け歩き出す。
  ゆっくりと動き出し、アッシュの後を追うギャロス。
ギャロスの声「どうして家から飛び出した?」
  アッシュ、構わず歩いている。
ギャロスの声「ベインは、今頃全てを警察に話している頃だ。おまえが捕まるのも時間の問題だ」
  立ち止まるアッシュ。
ギャロスの声「戻れる場所は、私しかいない」
  振り返り、ギャロスを見つめるアッシュ。
  困惑した面持ち。

○ 病院・部屋
  服を着替え、病室から出て行くマイケル。

○ 同・通路
  辺りを見回すマイケル。
  患者や見舞い客が数人歩いている。
  突き当たりのエレベータのほうに向かって歩いて行く。

○ バー
  人で賑い、騒然としている。
  カウンターの前に座り、グラスの酒を一気に飲み干すマイケル。
  その飲みっぷりに見惚れている美形の店員の女・ルジエッタ。
ルジエッタ「よっぽど良い事があったのね」
  グラスを叩きつけるように置くマイケル。赤い顔でルジエッタを見つめる。
マイケル「そう見えるかい?」
  マイケルをじっと見つめるルジエッタ。
女「仕事がうまく言ったか、新しい恋人でもできたか…」
  マイケル、ルジエッタを見つめ、
マイケル「新しい恋人なら、目の前にいる」
  ルジエッタ、マイケルを誘うような視線を向ける。
ルジエッタ「そう。ちょっと飲み過ぎね。表で頭を冷やしたほうがいいかも」
マイケル「一人で歩けそうにない。手伝ってくれ」
ルジエッタ「いいわよ」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  扉が開く。中に入ってくるRC3。
デボン「ガースの脱獄に手を貸した看守の話しによると、ガースは、刑務所近くの砂漠で
 小型ジェット機に乗り姿を消したそうだ」
RC3「行き先は?」
デボン「不明だ。その看守は、地元のマフィアに依頼され、10万ドルで買収されていた」
RC3「でも、死体を見たんでしょ?」
デボン「CAガスと呼ばれる特殊なガスで一時的に心拍を止めていた。死体にして、外に運び出すためだ」
  電話が鳴る。受話器を上げるデボン。
デボン「…私だ…わかった、通してくれ」
  受話器を置く。
  暫くして、ドアが開き、デノバー・ギャリソンが勢い良く中に駆け込んでくる。
  デスクの前に立ち止まり、
デノバー「夜分恐れ入りますが、あなたがここの責任者?」
デボン「…そうですが、何か?」
デノバー「うちの子をどこにやった?」
デボン「と申しますと?」
デノバー「さっき、一度帰宅したと思ったら、またすぐに家を飛び出した。その後あの青いスポーツカーに
 乗ってどこかに消えた」
デボン「青いスポーツカー?」
デノバー「私が見たわけじゃないのではっきりした事は言えないが、おそらく、おたくの部下が
 嗅ぎまわってた殺人マシーンの事だ」
デボン「我々も今全力で探しているところです」
  デノバー、財布を持ち、中から名刺を出してデボンに差し出す。
デノバー「いいですか、アッシュを見つけたらすぐに連絡して、あいつの身柄を私に引き渡してください。
 尋問は、一切禁止だ」
  名刺を見つめるデボン。
デボン「つまり、彼からギャロスの情報も聞き出してはいけないと言う事ですかな?」
デノバー「その通り。勝手な行動は、控えてください。それで、そのスポーツカーに関して知っている
 情報を全て話して頂きたい」
デボン「…」

○ トレーラーパーク(翌日・朝)
  道路脇に立ち止まるギャロス。

○ ギャロス車内
  運転席に座るアッシュ。
アッシュ「なんでこんなところに止まるんだ?」
  手前の白いトレーラーハウスの扉が開く。
  ガース・ナイトがあらわれ、杖を突きながらギャロスの前にやってくる。
  アッシュ、扉を開けようとするがロックされている。
アッシュ「開けろよ」
ギャロス「怖がる事はない。彼は、おまえの味方だ」
アッシュ「人を縛っといて、今更味方だって?…信用できないね」
  助手席に乗り込んでくるガース。アッシュと目を合わす。
ガース「昨日は、すまなかったな」
アッシュ「…」
ガース「私は、ガース・ナイト。この車、気に入ったか?」
  アッシュ、暫くして喋り出す。
アッシュ「…悪くはないよ。自分で運転できるし言葉も喋る」
ガース「おまえが見たこの車の能力は、ほんの一部に過ぎん」
アッシュ「自分で料理もするのか?」
ガース「ギャロスから聞いたが、火遊びが得意だそうだな」
アッシュ「別に得意ってわけじゃない」
ガース「じゃあ、なぜギャロスのレーザーであのマンションの部屋を燃やした?」
アッシュ「間違えて、ボタンを押しちゃっただけさ…」
ガース「嘘をついても無駄だぞ。記録は、ちゃんと残っている」
アッシュ「…」
ガース「もっと楽しい遊び方を教えてやろう」
  息を飲むアッシュ。

○ ナイト財団・本部デボン・オフィス
  デスクの前に立つFBI捜査官のニック。
  デスクの席につくデボン。深刻な面持ち。
ニック「昨日、アリゾナの廃工場で大きな爆発事故があった。そこは、3年前まで電気製品の
 生産施設だったが、それ以後は、借り手も現れずずっと野ざらしの状態だった」
デボン「そこがギャロスの開発拠点になっていたと言うのか?」
ニック「現場に残されたタイヤ痕と、この間の連続放火事件の現場で見つかったタイヤ痕が一致した」
デボン「さっき、その車に乗っていたアッシュと言う少年の父親が訪ねてきた」
ニック「何を聞かれた?」
デボン「アッシュを見つけたら、何も聞かず身柄を引き渡せと…ギャロスの事も根掘り葉掘り聞かれたよ」
ニック「その少年についてももう少し詳しく調べてみる必要がありそうだ」
デボン「それで、他にわかった事は?」
ニック「事故現場は、そりゃあもうひどい惨状だったそうだ。死者は、確認されただけで十三人。
 判別できた遺体の身元を探った。一人は、二ヶ月前に行方不明になったエレクトロニクスの
 専門家のコーウェル・ハリソン。もう一人は、カーエンジニアのミッチェル・ユージン」
デボン「生存者はいたのか?」
ニック「奇跡的に助かった男が一人だけいる。その男が回復するのを待っているところだ」
  扉が開き、事務員の女が入ってくる。
事務員の女「さっき、病院から連絡がありました。マイケルが病院を抜け出したそうです」
  驚愕するデボン。
デボン「なんだと?」

○ ネバダ州・砂漠地帯
  黒い高級車と二基のヘリが止まっている。
  車の周りには、黒いスーツとサングラスをつけた男達が群がっている。
  ヘリの周りにマシンガンを持った男達が佇んでいる。
  白いリンカーンが男達の前に近づいてくる。立ち止まるリンカーン。
  運転席からドライバーが降り、後部席のドアを開ける。
  車から降りるミル・マクレニアン。テンガロンハットを被り、葉巻をくわえている。
  黒い高級車の扉が開く。
  スキンヘッド、小太りの中年体型の男、ディック・サルトン。
  マクレニアン、サルトン、互いに歩み寄り、対峙する。
マクレニアン「こりゃまた随分と派手な出迎えだ」
サルトン「大きな取引がある時は、とくに力が入る。いつものことさ。念には、念をだ」
マクレニアン「うちは、この通り、丸腰だがね…」
サルトン「別にあんたを困らせるつもりはない。あまり気にせんでくれ」
  サルトンのそばに近づいてくる若い男。
  右手に持っていたアルミケースを下ろし、ケースを開ける。
  ケースには、袋詰めされた白い粉が敷き詰められている。
  ケースの中を見つめているマクレニアン。葉巻を吹かしている。
マクレニアン「約束の5000万だ」
  マクレニアンの横に三人の若い男。2つのケースを開ける。中に現金の束が敷き詰められている。
  現金を見つめるサルトン。
  ケースを交換する。
マクレニアン「この間のガースの脱出費用も一緒だ」
サルトン「武器の調達が必要なら、いくらでも用意するぞ」
マクレニアン「間に合ってる」
  マクレニアンの後方から不気味なエンジンが聞こえてくる。真っ直ぐ進んでくるギャロス。
  土煙を上げて、物凄い勢いで迫ってくる。
  ギャロスを見つめ、呆然としているサルトン。
  
○ ギャロスのフロントフェンダー左側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。
  緑色のレーザーが発射される。レーザーは、サルトンのそばを通り、後ろの車の運転席のドアを貫通する。
  サルトンの部下達、一斉にマシンガンをギャロスに向け、発射する。
  ギャロスのボディに雨のように激しく当たる弾丸。火花を上げて跳ね返している。

○ ギャロス車内
  運転席に座るアッシュ。右手で目を覆っている。
  ボディやフロントガラスに当たる弾丸を跳ね返す音が鳴り響いている。
ギャロス「大丈夫だ。おまえに当たる事はない」
  手を下ろすアッシュ。

○ 舞い上がる二基のヘリ
  機首を傾け、低空飛行。機銃を発射しながらギャロスに向かっている。

○ ギャロス車内
  フロントガラス越しに上空から迫ってくる二基のヘリが並んで飛んでくるのが見える。
  動揺するアッシュ。
アッシュ「どうすんだよ?」
ギャロス「任せておけ」

○ ギャロスの両側のフロントフェンダーの砲台がヘリの動きに合わせて的確に角度を変えている
  レーザーが同時に発射される。
  レーザーは、二基のヘリに同時にヒットする。

○ ヘリ1・コクピット
  操縦席のパイロットの足元からレーザーが差し込み、パイロットの腹を貫通する。
  
○ ヘリ2・コクピット
  計器盤が激しくショートし、火花を上げている。
  パイロット、必死の表情で両手でレバーを持っているが、操縦不能に陥っている。

○ 空中で爆破するヘリ2
  炎と共に破片が地上に舞い落ちる。
  ヘリ1、大きく右に逸れて、勢い良く落下していく。
  地上に衝突し、激しい炎を上げる。

○ サルトンの前に勢い良く走ってくるギャロス
  呆然と佇むサルトン。
  周りに立つ男達、銃を撃つのを止め、逃げ回っている。
  ギャロス、サルトンを轢き飛ばす。
  
○ ギャロス車内
  フロントガラスにサルトンの体がぶつかる。
  その一瞬を目の当たりにするアッシュ。驚愕し、顔を背ける。

○ ギャロスに弾き飛ばされ、地面に転がるサルトン
  うつ伏せで倒れている。
  ギャロス、止まっている黒い高級車に激突する。ボディが真っ二つに裂け、炎を上げる車。
  炎の中をすっと潜り抜け、スピンターンし、さらに逃げ惑う男達を追っかけるギャロス。
  その様子を見つめているマクレニアン。
  余裕顔で目の前に落ちている現金入りのケースの前に歩み寄り、拾い上げる。
  マクレニアンに近寄ってくる若い男。マクレニアン、男にケースを渡すと、踵を返し、
  自分の車のほうへ歩き出す。銜えていた葉巻を捨てる。
  サルトンの手下の男を跳ね飛ばすギャロス。男、激しく地面を転がる。
  立ち止まるギャロス。
  ギャロスに轢かれた男達が辺りに倒れている。

○ ギャロス車内
  ハンドルに顔を埋めているアッシュ。
ギャロス「もういいぞ、アッシュ」
  ゆっくりと正面を向くアッシュ。
  フロントガラス越しに辺りの惨状を見回し、呆然としている。
―ACT1 END―

―ACT2―
○ ビル・裏通り
  赤レンガの建物。ゴミ箱のそばの壁にもたれて座るマイケル。項垂れている。
  マイケルの前に立つ年老いた警官。
警官「こんなところで何しとる?」
  顔を上げるマイケル。唇が切れ、出血し、左頬に痣ができている。たどたどしい口ぶりで喋り出す。
マイケル「見りゃあ、わかるだろ。夢を見てるんだ。真っ白な夢を…」

○ ナイト財団研究所・駐車場
  入口付近に止まるナイト財団移動本部トレーラー

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  置いてあったナイト2000のボディと残骸が片付けられている。
  バイクにまたがりヘルメットを被ろうとするRC3。
  通信のアラームが鳴り響く。
  RC3、バイクから降り、コンピュータの前に行く。
  キーボードを打つ。
  ディスプレイにナイト財団本部のオフィスにいるデボンが映し出される。
RC3「マイケルが見つかったんですか?」
デボンの声「いや、その事じゃない。少しきな臭い情報が入ってきた。3時間前、ネバダの砂漠地帯で
 地元のマフィア組織の死体が見つかった。そのマフィアって言うのは、ガースの脱獄に関わったと
 されている一味だ。マフィア同士の縄張り争いによる抗争と見られているが、現場は、ひどい状況で、
 轢死体がほとんどだった。ボスのサルトンも轢き殺されていた」
RC3「もしかしてやつらを轢き殺した相手ってのは…?」
デボンの声「現場で墜落していたヘリの破片から、強力なレーザーによって空けられた穴が見つかった」
  RC3、ヘルメットを被る。
  デボン、その様子を見つめ、
デボンの声「RC3、どこへ行く」
RC3「決まってるじゃないですか。マイケルを探すんです」
デボンの声「待て、何の手がかりもまだ…」
  キーボードのボタンを押すRC3。ディスプレイの映像が消える。
  バイクにまたがり、エンジンをかけるRC3。スロットルを回し、走り出す。

○ トレーラーコンテナから勢い良く降りるRC3のバイク
  駐車場を抜け、道路に出ると加速して走り去って行く。

○ トレーラーパーク
  道路脇に止まるギャロス。
  トレーラーハウスの扉が開く。表に出てくるガース。杖をつきながらゆっくりとギャロスに近づいて行く。

○ ギャロス車内
  運転席に座るアッシュ。顔面蒼白である。
  助手席に乗り込んでくるガース。アッシュの顔色をうかがう。
ガース「何か悪いものでも食ったのか?」
アッシュ「ちょっと眠いだけだよ」
ガース「大人のゲームを味わった気分は、どうだ?」
アッシュ「面白くもなんともない」
  ほくそ笑むガース。
ガース「飽きっぽいんだな。じゃあ、これを見ろ」
  センターコンソールのモニターに映るギャロスの車内の映像。運転席に座るアッシュが映っている。
  放火を続けていた時のベインとの会話のやりとりが克明に映し出されている。
  自分の映っている姿をまじまじと見つめるアッシュ。
ガース「何の時の映像かわかるな?」
アッシュ「…」
ガース「これを警察に届ければ、おまえは、即少年院送りだ。いや、マフィア殺しの件もあるから、
 それだけじゃ済まなくなるかもな」
アッシュ「…あれは」
ガース「どれだけ釈明しようが車がやったなんて事、誰も信じはしない。今すぐテレビの回線を乗っ取って、
 この映像を流してやってもいいぞ。おまえの異常者ぶりを国民にアピールできる」
アッシュ「…僕にどうしろって言うんだ」
ガース「暫くギャロスの中で大人しくしてるんだ。もちろん食う物は、ちゃんと用意してやる」
  項垂れるアッシュ。
  ほくそ笑むガース。

○ 公園
  ローラースケートをする若者のグループ。
  カラフルな衣装を着た女性達が歩いている。
  ベンチに座り、戯れるカップル。
  バイクを止め、大学生の青年と話しているRC3。マイケルの写真を見せている。

○ 繁華街
  様々なショップが立ち並んでいる。
  人で込み合っている。
  ブティックの前で若い女性と話しているRC3。写真を見せているが女性は、首を横に振る。

○ 裏通り
  赤レンガの建物の狭い路地。ヒッピー風の長い髪をした黒人の男と話しているRC3。
  男、指を差し、慌しく説明している。

○ バー・店内
  営業前で客はいない。
  暗がり。カウンターに立つオーナーの男と話をしているRC3。
  男、写真を見つめ、
男「昨日の晩に来てた客だな。丁度そこのカウンターの席に座ってた。随分、酔い潰れてる感じだった」
RC3「何時頃店を出たかわかる?」
男「12時過ぎてたかな…とても一人じゃ歩けそうになかったから、うちの子がタクシーを拾ってやると
 言って一緒に出て行った」
RC3「その子の名前は?」
男「ルジエッタだ…」

○ マンション前
  立ち止まるRC3のバイク。
  ヘルメットを外し、バイクから降りるRC3。

○ 2F・205号室・ルジエッタの家
  扉が開く。タンクトップに短パン姿のルジエッタが姿を現す。
ルジエッタ「どなた?」
RC3「レジナルド・コーネリウス三世。ナイト財団ってところで働いてる。
 昨夜あんたが話をした男を捜してるんだ」
  写真をルジエッタに手渡すRC3。
ルジエッタ「ああ、この人ね…せっかく親切に送ってあげようとしてたのに、
 喋る車の話になったら急に怒鳴り出して…」
RC3「それで、マイケルは、どこに行った?」

○ 警察署・留置室
  入口の扉が開く。監視係の警官の後に続いてRC3が入ってくる。
  ある檻の前に立ち止まるRC3。中を覗く。
  檻の中にいるマイケル。真ん中で壁のほうに向いて横になっている。
  警官、鍵を開ける。中に入るRC3。
RC3「裏通りでたむろってたチンピラと殴り合ったんだって?」
  マイケル、RC3の顔を見つめる。
RC3「怪我した体でよくやるぜ」
  RC3、手を差し出すが、マイケル、それを振り払う。
マイケル「ほっといてくれ」
RC3「こう見えても必死に探したんだぜ。ガースのこと忘れたのか?こんなところで拗ねてる場合かよ」
マイケル「キットは…もう直ったのか?」
RC3「まだだ。今、デボンがウイルトン・ナイト氏の友人を当たって、ナイト2000の再生に協力してくれる
 技術者を探しているところだ」
マイケル「じゃあ、駄目だ…」
  目つきが鋭くなるRC3。
RC3「何が駄目なんだよ?」
マイケル「キットがいなきゃ…俺達に勝ち目はない…」
RC3「あんたらしくないぜ、一体どうしちまったんだ。どんな時でも、たった数パーセントの
 可能性しかなくても、悪党と面等向かって戦ってきたじゃねぇか」
マイケル「だから言ってるだろ…キットがいなきゃ勝てないって…」
  マイケルの胸倉を力強く掴むRC3。
RC3「キット、キットって。財団に来る前は、刑事だったんだろ?
 キットと会う前は、自分の足使って犯人ひっ捕まえてたんだろうが」
マイケル「俺は、ガースに負けたんだ。ガースが俺を憎んでいるのは、俺があいつの偽者だからさ」
RC3「それがどうした。あいつと顔が一緒でも、中身は、正反対だった。でも今のあんたは、
 ガース以上のクズ野郎だ」
マイケル「…」
  マイケルから手を離すRC3。溜息をつき、
RC3「…勝手にしろ」
  RC3、檻から出て行く。警官を横切り、サッサと立ち去って行く。
  
○ トレーラーパーク
  立ち止まるワインレッドのスポーツカー。
  助手席から降りるマクレニアン。
  トレーラーハウスの前のテーブルの座席に座るガース。マクレニアンがガースに近づいて行く。
マクレニアン「えらく安っぽい場所を選んだな」
ガース「高級ホテルの一室でも借りれば良かったか?」
マクレニアン「いいや。ここなら犯罪者が居座ってても目立たないし、違和感がない」
  しかめっ面をするガース。
ガース「それは、どう言う意味だ?」
マクレニアン「深く考えるな」
  ガースの反対側にある椅子に座るマクレニアン。サングラスを外す。
マクレニアン「ギャロスは、どこだ?」
ガース「予定通り、指定の場所に向かわせた」
マクレニアン「あの車だけでやらせるのか?」
ガース「ちゃんとドライバーもつけてある」
マクレニアン「ドライバー?誰だ」
ガース「ギャロスで遊びたがってるガキだ」
マクレニアン「何の話だ?何も聞いてないぞ」
  ほくそ笑むガース。

○ メガクィーク研究所
  門をぶち破り敷地内に入って行くギャロス。

○ 同・研究所内1F・実験ルーム
  コンクリートの壁を突き破り、実験ルームに入り込んでくるギャロス。
  辺りの研究器具やテーブル、様々なシステムの箱を跳ね飛ばす。逃げ惑う研究員。
  勢い良く、何度もボディを回転させて、辺りのものを蹴散らかしている。

○ ギャロス車内
  運転席に座っているアッシュ。
  激しく回転する車の中で目を回し、今にも吐きそうな表情。

○ メガクィーク社・研究所1F・実験ルーム
  動きを止めるギャロス。
  隅のほうで直立不動になっている日系人の研究員の前に進んで行く。
  体を震わせる研究員。ギャロスのバンパーと壁の間に足を挟まれる。
ギャロスの声「ニコール・ダニアンは、どこだ?」
  手を振り、知らない事をアピールする研究員。エンジンを高鳴らせ、研究員の足を締め付けるギャロス。
研究員「し、しらない。本当だ」
ギャロスの声「それでは、もう一つ質問だ。ここで一体何の研究をしている?」
研究員「教えるわけには、いかない。政府に口止めされてる…」
  ギャロス、さらに締め付ける。悲鳴を上げる研究員。
研究員「レーダーの吸収構造の実験だ…」
ギャロスの声「もう少し、詳しい話を聞かせろ…」
  アッシュ、助手席に置いてあった袋を持ち、顔に近づけ、吐いている。

○ 警察署前
  玄関から出てくるマイケル。
  眩しい日差しが顔に照りつける。思わず右手で光を遮る。

○ 住宅街
  とぼとぼと歩いているマイケル。
  前から走ってくる黒いスポーツカーを見つめ、突然立ち止る。

○ フラッシュバック
  真っ二つにボディが裂け、燃え盛るナイト2000。
  道路脇の草むらに倒れているマイケル。顔を上げ、そばに落ちているキットの
  イコライザーの破片を見つめる。
キットの声「マイケル…マイケル…」

○ 住宅街
  キットの叫び声のリフレイン。
  呆然と佇むマイケル。
  黒いスポーツカーがマイケルのそばを横切る。
  マイケル、そばに止まっている車のドアのガラスに映る自分の顔をまじまじと見つめる。
  ガラスに映るマイケルの顔が、やがてガースの顔に変わる。マイケルをあざ笑うガース。
  マイケル、声を張り上げ、拳でガラスを割る。
  車の盗難防止用のアラームが激しく鳴り響く。
  辺りにいる老人や女性、子供達が一斉に立ち止まり、マイケルのほうを見つめる。
  マイケル、我に返ると、慌てて走り去って行く。

○ ナイト財団研究所・全景

○ 同・整備ルーム
  リフトに乗せられ、高い位置に上げられているナイト2000。ボディに白いコーティングをされている。
  まだ、ボンネットやドア、タイヤは、取り付けられていない。
  数人の作業員がナイト2000の周りに立ち、タイヤ周り、下周りなどをチェックしている。
  チェーンホイストに釣るされたエンジンがナイト2000エンジンルームに入れられる。
  入口前に設置された電話の受話器を持ち、話をしているボニー。
ボニー「えっ?なんですって。もう一度言ってください」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  デスクの椅子に座っているデボン。
  受話器を持ち、話している。
デボン「ロナルド・ダーネン博士だ。ウイルトン・ナイト氏が生前ナイト2000のオリジナル制作メンバーを
 結成する前に声をかけていた人物だ。彼は、マサチューセッツ工科大学のサイバネティクスの権威で、
 五年前から自らも人工頭脳の開発に取り組んでいる。
 彼の知恵を借りれば、早急にキットの再生が可能になるかもしれん」

○ ナイト財団研究所・整備ルーム
ボニー「それで、いつ来られるんです?」
  扉が開き、グレイのスーツを着た白髪の老人が入ってくる。
  ボニーの目の前を歩いて行く老人。ボニー、受話器を耳元から離し、
ボニー「あの…」
  振り返る老人。
ボニー「もしかして、ロナルド・ダーネン博士?」
老人「いかにも。事務員に説明を受けて来たんだが(車を見つめ)…ここで良かったかな?」
  老人は、ロナルド・ダーネン。
  受話器を耳元に当て、
ボニー「今、到着されました」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  笑みを浮かべるデボン。
デボン「頼んだぞ」
  受話器を置くデボン。

○ ナイト財団研究所・整備ルーム
  握手をするボニーとダーネン。
ボニー「お待ちしていました。ダーネン博士」
ダーネン博士「本当は、あまりノル気じゃなかったんだ。ウィルトンとは、あまりそりが合わなかったしな。
 だが、デボンから緊急事態だと聞いて飛んできた。交通費は、後で請求させてもらうよ」
  ボニー、少し困惑した様子。
ボニー「ええ、それはもちろん」
ダーネン博士「それでどのような状況なんだね」
ボニー「ボディの再生は、3分の1近くまで進んでいます。メインシステムのほうがまだ
 何も取り掛かれない状態なんです」
ダーネン博士「あと2時間もすれば、うちの研究チームがここにやってくる。全員でとりかかれば、
 う〜ん、6時間もあれば、プログラムを再構築することができるだろう」
ボニー「よろしくお願いします」
  ナイト2000のボディの周りに集まる作業員。急ピッチで作業を進めている。
―ACT2 END―

―ACT3―
○ マーケット通り
  まばらに歩く人々。俯きながら歩いているマイケル。
  古びた電気店の前で立ち止まる。
  60年代の木製の古いテレビに映し出されているニュース。若い女キャスターが
  原稿を読み上げている。
女キャスター「航空産業メーカー・メガクィーク社の研究所を襲ったブルーのコルベットを
 運転していたのは、少年だった事が判明しています。なぜ、少年が研究所を襲ったのか?
 警察は、社長のポール・ミリガン氏の警護を強化すると共に、事件の背後関係を捜査中です」
  マイケル、悔しげな表情で画面を見つめている。

○ ナイト財団本部・デボンオフィス
  デスクの座席に座るデボン。電話で話している。
デボン「…それは、本当か?それで、ガースを脱出させた人物ってのは、誰だ?」

○ FBI・ロサンゼルス支局オフィス
  慌しく人が動き回っている。
  デスクの前に立ち、電話をかけているニック。
ニック「ミル・マクレニアンと言う男だ。フランスでアルジェと共にテロ活動をしていた。アリゾナの爆破事故で
 奇跡的に助かった男の話によると、奴は、一ヶ月前に密入国して、国内で何かの計画を
 実行しようとしているらしい」

○ ナイト財団本部・デボンオフィス
デボン「わかった。また何かわかったら報告してくれ」
  受話器を置くデボン。
  入口の扉が開く。マイケルが姿を現す。
  唖然とするデボン。
デボン「マイケル!」
  デボンの前に歩み寄るマイケル。苦い表情でデボンを見つめる。
デボン「どこに行ってたんだ?」
マイケル「…一人になって色々考えたい事があってね…」
デボン「で、考えは、まとまったか?」
マイケル「ああ…財団をやめる」
  唖然とするデボン。
マイケル「…やり残した事をきちんと片付けてからな」

○ ギャロス車内
  運転席のシートを倒し、眠っているアッシュ。

○ トレーラーパーク前
  道路脇に止まっているギャロス。
  杖を突きながらギャロスの前にやってくるガース。
ギャロスの声「次は、何をすればいいんだ?」
  立ち止まるガース。腕時計を見つめ、
ガース「そろそろ時間だな。内容は、アッシュに教える」
ギャロスの声「なぜ、アッシュを利用するのだ?」
ガース「俺の仕事は、あくまでマイケル達に対する復讐だ。余計な手間は、省きたい」
ギャロスの声「仕事が終わったら、どうするつもりだ?」
ガース「余計な心配はするな。おまえは、私の言った通り動いていればいいんだ」
   立ち去るガース。
  ギャロスの二本のスキャナーの光が空しくなびいている。

○ ナイト財団研究所・全景

○ 同・整備ルーム
  リフトで持ち上げられたナイト2000のボディ。
  作業員が車体の下に潜り込み、溶接をしている。
  キットの前に立つ白衣を着たボニー。険しい眼差しでボディを見回している。
  各システムの前に立つ白衣を来たシステムエンジニア達。様々に作業を進めている。
  扉が開く。RC3が駆け足で入ってくる。
RC3「お待たせ。さてと、どこから始める?」
  ボニー、RC3を見つめ、
ボニー「じゃあ、P1ユニットの取り付けから始めて」
RC3「あいよ」
  RC3、テーブルの上の工具箱を探り、ドライバーを持つ。別のテーブルにおいてある
  黒い小型の部品を持ち、ネジを外す。
ボニー「マイケルの様子は、どうだった?」
  RC3、重い口を開き、
RC3「キットが完成したら、俺がガースの野郎を叩きのめしてやるよ」
  落胆するボニー。何も言わず、また作業を始める。
マイケルの声「ガースの相手が務まるのは、俺しかいない…」
  ハッと声のほうに振り向くボニーとRC3。
ボニー・RC3「マイケル!」
  二人の前に歩いてくるマイケル。勇然とした面持ち。
  二人と対峙するマイケル。
ボニー「戻ってくると思ってた。体のほうは、大丈夫なの?」
マイケル「ああ、平気さ」
  マイケル、RC3のほうを見つめ、
マイケル「さっきは、悪かったな、RC3」
RC3「元に戻って良かった」
  マイケル、ナイト2000をまじまじと見つめる。
マイケル「…キットも元に戻してやらないと…俺にも何か手伝わせてくれ」
RC3「仕事は、いくらでもあるぜ」
    ×  ×  ×
  ナイト2000の下に潜り込み、溶接の作業をするRC3。
  マイケル、タイヤを転がしながら、部屋に入ってくる。
    ×  ×  ×
  タイヤをつけられ、リフトから下ろされているナイト2000。
  ボニーが運転席のシートに座り、ダッシュボードの装置の配線をしている。
  二人の若い研究員がナイト2000の前に立ち、スキャナー部分を指差しながら、会話をしている。
    ×  ×  ×
  黒色に塗装されたナイト2000。
  RC3が運転席に乗り、計器類のチェックをしている。
  マイケル、エンジンルームを覗き込み、スキャナーの部品を調整している。
マイケル「OKだ」
  RC3、ボタンを押す。
  スキャナーが赤く光り、横になびき始める。
  マイケル、親指を立て、OKの合図。
  RC3も同じしぐさをする。

○ 同・ラボ
  テーブルの前に並んで立つダーネン博士とボニー。
  テーブルの上のナイト2000の設計図を見ながら話している。
  設計図の隣に置いてある電子顕微鏡を覗き、目を離すボニー。ダーネンと話し出す。
ボニー「これがこれまでナイト2000にコーティングされていた分子結合殻です。しかし、
 ギャロスのレーザーの分子は、このパターンを簡単に破壊してしまいます」
  顕微鏡を覗くダーネン。暫くして、目を離し、
ダーネン「となると新しいパターンを作り出さなければならんな」
ボニー「短時間で作る事は、可能でしょうか?」
ダーネン「開発にかかる費用の事だが…」
ボニー「それは、デボンと交渉してみないとはっきりした数字は…」
ダーネン「いやいや、ここでする話じゃなかったな。全力を尽くそう」
  顕微鏡を覗き込むダーネン。

○ フリーウェイ(夜)
  交通量の多い路線。真ん中の車線の列の中を走るギャロス。ヘッドライトと
  二本の緑色のスキャナーが光る。

○ ギャロス車内
  ダッシュボードの光に照らされているアッシュ。
アッシュ「ギャロス、少し僕に運転させてくれないか?」
ギャロス「ここは、直線の安全な道だ。少しぐらいなら構わない」
  『MANUAL DRIVE』のランプが光る。
  ハンドルを握るアッシュ。アクセルを踏み込む。
アッシュ「ありがとう」
ギャロス「どうだ?始めて運転する気持ちは」
アッシュ「ヒュー!体がしびれてくる…でも、どうして?」
ギャロス「何の事だ?」
アッシュ「もしかしたら僕がハンドルを切って、変なことするかもしれないとか、考えなかったのか?」
ギャロス「私に抵抗する事はできない。おまえもよくわかっているはずだ」
  アッシュ、失笑する。
ギャロス「何かおかしなことを言ったか?」
アッシュ「別に。どっちみち僕は、少年院送りになる。次のステージをクリアして、あいつから
 たんまりご褒美をもらう」
ギャロス「良い度胸だ、アッシュ」
アッシュ「その前に寄りたいところがあるんだ」

○ ギャリソン家
  玄関の扉が開く。入ってくるデノバー。
  デノバーの前にやってくるナターシャ。
デノバー「アッシュから連絡は?」
  首を横に振るナターシャ。
ナターシャ「何も…」
  ネクタイを緩めながら重い表情でナターシャのそばを横切って行くデノバー。
  デノバーの後を追うナターシャ。

○ 同・リビング
  テーブルに鞄を置き、上着を脱ぐデノバー。
  デノバーの背後に立つナターシャ。
ナターシャ「やっぱり、私のせいなのかしら…」
デノバー「え?」
ナターシャ「いつも口を聞いてくれないし…」
  テレビのリモコンを持ち、電源を入れるデノバー。
デノバー「君じゃなくて私のほうかもしれない。本当に嫌われてるならとっくの昔に前妻のうちに
 でも行っているはずなんだが、そう言った形跡もない」
ナターシャ「年頃の子は、敏感よ。私もそうだった。母の浮気が嫌でしばらく友達の家に
 泊りに行った事もあったわ」
デノバー「私達は、浮気をしてるわけじゃない。もし、あいつが君に対して不満を持っているなら、
 一度きちんと話すしかない」
  外でクラクションが鳴り響く。

○ 同・玄関前
  扉が開き、表に出てくるデノバーとナターシャ。
  門前にギャロスが止まっている。運転席に座っているアッシュ。
  唖然とする二人。ギャロスの元に駆け寄る。
ナターシャ「アッシュ!」
デノバー「どこに行ってた、早く降りてきなさい」
  ドアノブに触れようとするデノバー。

○ ギャロス車内
  二人を見ているアッシュ。
アッシュ「触るな!」
  動きを止めるデノバー。
デノバー「この車の噂は、どうやら本当らしいな」
アッシュ「そうだよ。放火もマフィアの壊滅も何だってやっちまう不死身の車さ」
デノバー「放火の事は、心配するなと前にも言ったはずだ。私が全力で守ってやる」
アッシュ「パパが本当に守りたいのは、その女のほうじゃないのか?」
  唖然とする二人。
デノバー「違う。私達は、真面目につきあってる。忙しくておまえに説明するタイミングが…」
アッシュ「結婚するの?」
デノバー「そうだ。嫌か?」
アッシュ「…ギャロス、行ってくれ」

○ 勢い良く走り出すギャロス
  走り出し、車を追うデノバーとナターシャ。声を張り上げるデノバー。
デノバー「アッシュ!」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  デボン、老眼鏡をかけ、書類を書き込んでいる。
  電話が鳴る。受話器を取り、話し出す。
  唖然とするデボン。
デボン「ガース!」

○ トレーラーハウス内
  ガース、ベッドに座り、携帯電話で話している。
ガース「久しぶりだな、デボン。マイケルは、元気にしてるか?」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
デボン「ああ。おまえを捕まえるために怪我した体で頑張っている」
  失笑するガース。
ガースの声「無理して虚勢を張らなくてもいいぞ。どうせ、奴一人じゃ何もできん」
デボン「今度は一体、何を企んでる?」
ガースの声「安心しろ。もうすぐおまえ達の番だ。財団の関連施設を一気に襲う。覚悟しておくんだな」
デボン「アッシュをどこにやった?」
ガースの声「おまえに一つやってもらいたい事がある」
デボン「何だ?」

○ トレーラーハウス内
ガース「ムショにいるアルジェと母のエリザベスの釈放だ」
デボンの声「…それが狙いなのか?」
ガース「ナイト2000のいない財団などカスも同然。アッシュを救いたいなら、
 それぐらいの事は、やってもらわないとな」
デボンの声「…いいだろう」
ガース「明日の朝8時、今から言う場所に連れて来い」

○ ナイト財団研究所・整備ルーム
  ナイト2000の前に立つダーネン。
  エンジンルームをジッと覗き、険しい表情を浮かべている。
  入り口のドアのガラス越しから中の様子を覗いているマイケル。

○ 同・前・通路
  ドアの前に立っているマイケル。
  マイケルの後ろに立ち、肩を叩く男の手。
  ハッと振り返るマイケル。
  RC3が目の前に立っている。
マイケル「驚かすなよ…」
RC3「何やってるんだ?」
マイケル「初めて見る顔だな」
RC3「ダーネン博士の事か。サイバネティックスの権威だそうだ。キットの再生には、
 あの人の手腕がかかってる」
  マイケル、思いつめた表情で、また部屋の様子を見つめる。

○ トレーラーハウス内
  ベッドの上に座るガース。携帯電話を持ち、話している。
マクレニアンの声「ギャロスは、もう戻ったのか?」
ガース「いや、すでに次の場所に向かわせた」

○ 国道
  オレンジ色のネオンの下を走る赤いオープンカー。その後ろにコンテナつきの
  白いトレーラーが走っている。

○ 赤いオープンカー車内
  助手席に座るマクレニアン。
マクレニアン「なぜ、おまえが行かない?」
ガースの声「この仕事は、ギャロスとあのガキだけで十分こなせる」
マクレニアン「ギャロスは、ガキの玩具じゃないんだぞ」

○ トレーラーハウス内
ガース「こっちもそろそろ下準備をしなければいけないんでな」
マクレニアンの声「何をそんなに焦っている。天敵だった車は、始末したんじゃなかったのか?」
ガース「ああ。だが、妙な胸騒ぎがする。早い目にとりかかりたい」
マクレニアンの声「ギャロスを復活させたのは、この私だ。おまえをムショから出したのもな…」
  憮然とするガース。
マクレニアンの声「わかったら、早く呼び戻せ」
―ACT3 END―

 

―ACT4―
○ ハイウェイ
  ネオンの下を高速で走るギャロス

○ ギャロス車内
うとうとし、頭を激しく揺らしているアッシュ。
  通信のアラームが鳴り響く。
  ガースの声が聞こえる。
ガースの声「聞こえるか?」
  目を覚ますアッシュ。
ギャロス「どうした?」
ガースの声「すぐに戻れ」
アッシュ「何かあったの?」
ガースの声「予定が変わった。わかったな」
  通信が切れる。
  呆然としているアッシュ。

○ ナイト財団研究所・整備ルーム(翌日・朝)
  ナイト2000の前に佇むマイケル。
  赤いスキャナーが発光し、なびき始める。

○ ナイト2000車内
  運転席に乗り込むマイケル。
マイケル「聞こえるか、相棒…」
  ダッシュボードのパネルが一斉に点灯する。
キット「はい、マイケル。懐かしい声です」
マイケル「俺の声を覚えていてくれたのか」
キット「ええ」
マイケル「俺もおまえの声が聞けて…」
  突然、黙り込むマイケル。
キット「どうしたんですか、マイケル」
マイケル「おまえには、酷なようだが、休んでいる暇はない」
キット「どうぞ。目的を与えてください。私は、あなたの命令を聞くようにプログラミングされています」
マイケル「ギャロスを覚えているか?」
キット「はい」
マイケル「俺達は、これからギャロスとガースを捕まえに行かなきゃならない」
キット「ガースとは、何者です?」
マイケル「まだメモリーが完全じゃなかったな。直に思い出すさ」
  ダーネンとボニーが中に入ってくる。
  二人に気づき、車から降りるマイケル。
  対峙するマイケルとダーネン、ボニー。
ダーネン「どうだね、蘇ったキットの感想は?」
マイケル「最高です。もう少し休ませてやりたいけどそうも行かない」
ボニー「さっき、デボンから連絡があったの。ガースから連絡があったそうよ」
マイケル「なんだって?」
ボニー「取り引きをするみたい。ガースは、アッシュと引き換えにアルジェと
 エリザベスの釈放を要求してきたわ」
マイケル「それで、デボンは?」
ボニー「FBIのニックと一緒に指定されたトレーラーパークに向かった」
 マイケル、ナイト2000に乗り込もうとする。
ボニー「待って。まだ最終チェックが終わっていないの。ギャロスに勝つための対策も」
  険しい表情を浮かべるマイケル。
マイケル「急いでくれ」

○ トレーラパーク
  白いトレーラーハウスの前のテーブルに座るガース。コーヒーを飲んでいる。
  黄色いタクシーが近づいてくる。
  立ち止まるタクシー。
  後部席のドアが開く。車から降りるデボン。
  ガース、立ち上がり、デボンに近づいて行く。対峙する二人。
ガース「歳を取ったな、デボン」
デボン「約束通り、アルジェとエリザベスを刑務所から出した。アッシュは、どこだ?」
ガース「…のわりには、手荷物一つも見当たらないが…」
デボン「もうすぐ二人を乗せた車がやってくる」
ガース「SWAT部隊を乗せた車の間違いじゃないのか?」
  辺りを見回すデボン。動揺した面持ち。
  不気味なエンジン音が鳴り響く。
  振り返るデボン。
  デボンの後ろに止まっているギャロス。
  唖然とするデボン。
  右側のレーザーの砲台がデボンに向く。
ガース「勝ち目のない戦にあえて挑む。実におまえらしいが、誰も助けには、来てくれないぞ」
  デボン、スーツのポケットから銃を出し、ガースに向ける。
ガース「やめろ。寿命が縮まるだけだ」
  ギャロスの助手席のドアが開く。
  デボン、ガースに銃を向けたまま、ドアのほうを見る。
  ガース、その隙に、杖でデボンの銃を払い落とし、杖の先についている銃口をデボンに向ける。
ガース「ギャロスに乗れ、デボン」
  デボン、観念した様子で、歩き出し、助手席に乗り込む。
  ガース、運転席に乗り込む。

○ ギャロス車内
ガース「ギャロス、見せてやれ」
  モニターに映し出される映像。
    ×  ×  ×
  付近の住宅の屋根に隠れていた武装したSWATの隊員がレーザーで撃たれ、転落している。
  トレーラーハウスに忍び寄ってきた隊員。同じくレーザーで撃たれ、その場に倒れる。
  ある住宅の前に止まっているブラウンの車。助手席にニック、運転席に若い刑事が乗っている。
  助手席のドアにレーザーが当たり、貫通する。
  車内で悲鳴を上げ、即死するニックと若い刑事。
    ×  ×  ×
  驚愕しているデボン。ショックを受けている。
デボン「なんと言うことだ…」
ガース「嘘をついた罰だ。アルジェもエリザベスも連れずに俺を生け捕りにできるとでも思っていたのか?」
デボン「早く私も殺したらどうだ?」
ガース「もちろん。そうするつもりだ」

○ ナイト財団・整備ルーム
  ナイト2000の運転席に座っているボニー。アクセルを何度も空ぶかしして、エンジン音をチェックしている。
  チェックシートの項目に具合を書き込んでいる。
  ナイト2000の左側に立ち、ボディを拭いているRC3。
RC3「新車同然、ピカピカに輝いてるぜ、キット」
キットの声「ありがとう、RC3。やはりあなたの腕は、さすがです。ボディが鏡のように光り輝いています」
ボニー「いつもこうだといいんだけど…」
RC3「おっと、ようやくいつものボニー節が聞けたぜ」
ボニー「何よ、それ?」
RC3「憎まれ口叩ける余裕が出てきたって事…」
ボニー「RC!後でコツくわよ」
RC3「ああ、こわ…」
  万遍の笑みを浮かべるボニー。
  エンジンを切り、車から降りると、ボンネットの開いたエンジンルームを覗き込み、
  部品を一つずつチェックしている。
  扉が開く。中に入ってくるマイケル。
マイケル「準備は?」
  RC3、動きを止め二人の前に行く。
RC3「もう終わる…」
  ボニー、ボンネットを閉める。
ボニー「いいわ」
  マイケル、ボニーと対峙する。
ボニー「キットのボディにカーボンナノチューブと呼ばれる新素材を使ったナノコーティングを
 かけたわ。以前使った耐熱コーティングの30倍の力を発揮できる」
マイケル「じゃあ、これでギャロスのレーザーを受けても平気ってわけだな」
ボニー「いいえ。この構造式は、まだ未知数で実験データもまだないの。我々の出した計算では、
 レーザーに耐えられる時間は、二十秒」
マイケル「二十秒もあれば余裕だ」
ボニー「ナノコーティングは、強度を上げるだけじゃなくて、受けたレーザーのエネルギーを吸収する
 事ができるの。それをパワーパックに貯えて、ナイト2000のレーザーの
 エネルギーに変換する事ができる」
マイケル「ワォー、そりゃあ素晴らしい」
ボニー「感謝するなら、ダーネン博士にして。構造式の発案者は、博士なの。私は、
 博士のアイデアを少しだけ膨らませただけ」
マイケル「博士には、嫌って程礼をするさ。ガース達との戦いにケリがついたらな」
  マイケル、運転席に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  運転席のドアの前に歩み寄るボニー。
ボニー「気をつけてよ、マイケル」
マイケル「ああ。絶対キットと一緒に戻ってくる」
キット「必ず無傷で戻ってきます」
RC3「無傷は、無理だろう、いくらなんでも…」
ボニー「キット…」
キット「何も言わないで。わかっています、ママ」
マイケル「ママだって」
  思わず笑い出す三人。
マイケル「じゃあな」
  RC3、拳を上げ、ガッツポーズ。
  マイケルもガッツポーズ。
  発進するナイト2000。ボニー達の前から走り去る。
  悠然と見守るボニー達。

○ ナイト財団研究所
  ガレージを出て、駐車場の緩やかな坂道を下りるナイト2000。
  公道に出て、さらに加速する。

○ ナイト2000車内
マイケル「ガース達に俺達の存在を感づかれないようにしないと」
キット「有害電波を出して、カモフラージュします」
マイケル「頼んだぞ」
  マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  一気に加速して、空を切るように走り出す。

○ アルバカーキ・メガクィーク倉庫敷地内
  二十人ほどの政府と軍関係者の集団を従え歩いているニコール・ダニアンと秘書の男。
  倉庫前で立ち止まる。ニコール、集団と対峙して、喋り出す。
二コール「皆さん、お待たせしました。我が社が5年の年月と1億ドルの開発費をかけて完成させた
 無敵の最新鋭兵器を今からご覧頂きましょう」
  二コールの背後の倉庫の巨大な扉が開く。

○ 同・倉庫内
  滑らかな曲線の形状、シルバー色のステルス戦闘機「VOLX(ボルクス)」の姿が露になる。
  天井のライトが戦闘機のボディを煌びやかに照らす。
  歓声が上がる。
ニコールの声「どうですか、ATF計画のさらに先を行くこの美しいボディライン。性能も十年先を見越した
 最新のシステムが備わっています。高いステルス性と敏捷性を発揮させるため、
 我が社が独自で作り出したデザインを採用しています。もちろん無人飛行も可能です」
  
○ 同・前
ニコール「垂直離着陸、アフターバーナーを使わず、わずか10秒で超音速に到達する事ができます…」
  
○ 同・敷地内
  倉庫から500m離れた場所のフェンスを突き破って侵入してくるギャロス。
  倉庫に向かって突き進んでいる。

○ ギャロス車内
  ハンドルを握るガース。
  モニターに倉庫内の様子が映し出されている。
  画面は、二コールの顔にズームインする。
ギャロス「ニコール・ダニアンを確認した」
ガース「マクレニアン、ニコールは、倉庫の中だ」
  スピーカーからマクレニアンの声が聞こえる。
マクレニアンの声「よし、今からそっちに向かう。おまえは、少し時間稼ぎをしてくれ」
  通信が切れる。不機嫌な様子のガース。
ギャロス「虫の居所でも悪いのか?」
ガース「アッシュの事だが、本当にあいつを始末したんだな?」
ギャロス「そうだ。車内で暴れ出したので、睡眠ガスを浴びせて、外に放り出した後、轢き殺した」
ガース「ならいい。ギャロス、あの倉庫に一発食らわしてやれ」
  
○ ギャロスのフロントフェンダー左側の格納庫が開く
  中からレーザーの砲台が現れる。
  緑色のレーザーが発射される。
  レーザーは、倉庫の扉を貫通する。激しい爆発が起こる。
  逃げ惑う政府と軍関係者。数人の警備員があらわれる。
  警備員、横一列になり、ギャロスに銃を発砲する。
  ギャロス、レーザーを発射する。レーザーは、真ん中の警備員の腹を貫く。
  仰け反り倒れる警備員。それを見たほかの警備員が一目散に逃げて行く。
  ニコールの前で急停止するギャロス。
  レーザーの砲身がニコールを捉える。

○ 同・正門
  門を突き破る白いトレーラー。その後をマクレニアンが乗る赤いスポーツカーが続く。
  倉庫の前に立ち止まるトレーラーとスポーツカー。
  コンテナの後ろの扉が開き、迷彩柄の軍服を着て、マシンガンを持った二十数人の兵士が一斉に
  外に飛び出す。一人の兵士が空に向かって威嚇射撃する。
  マシンガンを向けながら政府、軍関係者を取り囲む兵士。
  車から降りるマクレニアン。葉巻を吸いながら、数人の兵士に囲まれたニコールの元へ歩み寄る。
ニコール「何なんだ君達は?」
マクレニアン「(葉巻の煙をニコールの吐きかける)こんなところに隠れたとはな、ボブ」
ニコール「私は、二コールだ」
マクレニアン「7年前、フランスで共に活動をしていたが仲間を殺し、国外へ逃亡した裏切り者の名前だ。
 そいつは、名前を変え、顔を変え、どう言うわけか今ここで政府の役人相手に商売をしている」
  身震いするニコール。
ニコール「何かの間違いだ」
マクレニアン「アルジェから情報を得て、半年かけてようやく探し出した」
ニコール「命だけは、助けてくれ。あの戦闘機と交換ならどうだ?」
マクレニアン「…」
ニコール「東側の情報を売って与えられた身分だ。惜しくはない」

○ 田舎道
  高速で走るナイト2000。
  勢い良く左に曲がり、住宅地へ進んで行く。

○ ナイト2000車内
マイケル「トレーラーパークに近づいた。周囲を調べろ」   
  モニターに映し出されるレーダー画面。
キット「マイケル、辺りに複数の死体を確認しました」
マイケル「…デボンか?」
キット「いいえ、死体は、トレーラーパークの周囲に散乱し、そばに機銃が落ちています。
 おそらく特殊部隊のものではないかと。それと、パークの手前に生命反応が途絶えた
 人間が乗る車が止まっています」
マイケル「一歩出遅れたな」
  マイケル、『EBS』のボタンを押す。

○ トレーラーパーク前
  EBS(緊急ブレーキシステム)を作動させ、急停止するナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  ブラウンの車の前に駆け寄るマイケル。
  車内を覗き込む。
  ニックと若い男の刑事の死体を確認するマイケル。
マイケル「キット、辺りの地面を調べろ。ギャロスのタイヤ跡はないか?」

○ スキャナーを唸らせるナイト2000

○ ナイト2000車内
  モニターに映し出される映像。縦に二分割され、画面右側にギャロスのタイヤと左側に地面から
  抽出したタイヤ痕が映し出される。
キット「ありました。まだできてからそれ程時間は経っていません」

○ トレーラーパーク前
  マイケル、トレーラーハウスに向かって走り出す。
  ハウスの扉の前に立つマイケル。扉のノブを掴む。
  コムリンクのアラームが鳴り響く。
キットの声「開けては、駄目です」
  コムリンクに話すマイケル。
マイケル「どうしてだ?」
キットの声「起爆装置をキャッチしました。ドアを開けた途端、装置が作動し、爆発します」
マイケル「中に人はいるか?」
キットの声「一人確認しました」
  マイケル、辺りを見回し、小窓を見つめる。
マイケル「窓は、破っても平気か?」
キットの声「問題ありません」
  マイケル、後ろにあるテーブルを持ち上げ、トレーラーハウスの小窓の下に置く。
  それを土台にして、テーブルの上に上り、肘で小窓を割る。

○ トレーラーハウス内
  中を覗くマイケル。
  通路に口にテープ、腕と足を縛られたデボンが横たわっている。
  マイケル、中に入り込み、デボンのそばでしゃがみこみ、口のテープを剥がす。
デボン「どうやら、間に合ったようだな」
  体のロープをほどき始めるマイケル。
マイケル「間に合っちゃいないさ。ガースは、どこに行った?アッシュは?」
デボン「わからん…」
  コムリンクのアラームが鳴り響く。
 コムリンクに話しかけるマイケル。
マイケル「何だ?」
キットの声「アッシュと言う名の少年が私の前に来ています」
  唖然とする二人。
デボン「後は、任せろ」
マイケル「わかった。足のは、自分でほどいてくれ」
  立ち上がり、小窓から外に出るマイケル。

○ トレーラーパーク前
  ナイト2000の前に立っているアッシュの元へ駆け寄るマイケル。
  アッシュ、マイケルを見つめ、
アッシュ「ガース?」
マイケル「違う。俺は、マイケルだ。ガースは、どこに行ったかわかるか?」
アッシュ「たぶん、アルバカーキのメガクィーク社の倉庫だと思う。マクレニアンの裏切り者は、
 そこにいるとか言ってた…」
マイケル「どうやって逃げ出したんだ?」
アッシュ「ギャロスがここに戻る前に僕を逃がしてくれたんだ…」
マイケル「トレーラーハウスの中に人が閉じ込められてるんだ。外に出るのを手伝ってやってくれ。
 ああ、扉は、絶対開けるなよ。爆弾が仕掛けてある」
アッシュ「わかった…」
  車に乗り込むマイケル。
  エンジンを唸らせ、急発進するナイト2000。

○ アルバカーキ・メガクィーク社・倉庫敷地内
  倉庫から表に出されているVOLX。ゆっくりと前に進んでいる。
  その様子を見つめているマクレニアン。
  マクレニアンの後ろに捕えられたニコールと政府、軍関係者が横一列に並んで立たされ、
  兵士がマシンガンの銃口を向けている。
ガース「戦闘機をどこへ運ぶつもりだ?」
マクレニアン「テキサスに仲間がいる。そこへ一旦隠す」
ガース「じゃあ、俺の仕事は、これで終わりだ」
  マクレニアン、右手に持っていた短銃をガースに向ける。
  唖然とするガース。
ガース「何のジョークだ?」
マクレニアン「どうもおまえとは、相性が合わないようだ」
ガース「苦労してムショから出したのに、もう使い捨てか?」
マクレニアン「ストレスは、苦手でね。胃に大きな穴が開く前に処置しておかないとな」
  マクレニアンが引き金を引こうとした瞬間、エンジン音が轟く。
  倉庫に向かって勢い良く走ってくるナイト2000。
  振り返り、ナイト2000を見つめるマクレニアン。
  ガース、その隙にギャロスに乗り込む。
  マクレニアン、慌てて、ギャロスに銃を撃つ。
  跳ね返される弾丸。
  発進するギャロス。
  マクレニアンを轢き飛ばすギャロス。
  地面を激しく転がり、息絶えるマクレニアン。
  兵士達が一斉にギャロスとナイト2000に向かってマシンガンを撃ち始める
  ギャロス、スピンターンし、兵士達の列にスピードを上げ、突進する。
  数人の兵士達がギャロスに轢き飛ばされる。
  『EBS』で緊急停止し、立ち止まるナイト2000。スーパー追跡モードが解除され、元の形に戻る。

○ ナイト2000車内
キット「ギャロスの様子が変です」
マイケル「仲間割れか?」
  
○ ギャロスに体当たりされ辺りに次々と倒れて行く兵士達
  マシンガンを撃ち続ける最後の兵士を轢き飛ばすギャロス。
  スピンターンして止まり、ナイト2000と対峙するギャロス。
  500m離れた場所で向かい合うナイト2000とギャロス。
  ギャロスのスピーカーからガースの声が流れ出す。
ガースの声「奇跡の復活か?スペアでも作ってあったのか?」
  ナイト2000のスピーカーからマイケルの声が流れる。
マイケルの声「キットは、この世に一つしかない。この間の借りを返させて貰うぞ」
キットの声「ギャロス、もうこれ以上無用な破壊は、やめるんだ」

○ ギャロス車内
  ナイト2000を睨みつけるガース。
ギャロス「黙れキット!ガースと私は、ダイヤのように固い絆で結ばれているのだ。
 模造品のお前達とは訳が違う」
ガース「まだ懲りてないようだな。ならば、もう一度まとめて屑鉄にしてやるまでだ」
ギャロス「キットは、私が殺る」
  ガース、ほくそ笑み、
ガース「好きにしろ」
  『AUTO DRIVE』のボタンが点滅する。

○ ナイト2000車内
マイケル「準備はいいか?」
キット「ええ。でも、実験データがないので、正直不安です」
マイケル「俺も一緒さ。ダーネン博士とボニー達の腕を信じるしかない」
  マイケル、アクセルを踏み込む。

○ ギャロスに向かって猛突進するナイト2000
  ギャロスのフロントフェンダー両側のレーザーの砲台からレーザーが発射される。
  2本のレーザーは、走行するナイト2000のボンネットに当たっている。

○ ナイト2000車内
  ギャロスのレーザーが当たり続けている。
  車内の熱温度の数字がどんどん上がっている。
キット「マイケル、パワーパックのエネルギーが増幅されました」
マイケル「よし、ギャロスに倍返ししてやれ」
  マイケル、パネルの『LASER』のボタンを押す。

○ ナイト2000のボディの先端から青色のレーザーが発射される
  レーザーは、ギャロスのボンネットにヒットする。

○ ギャロス車内
  電子パネルがショートし、異様な電子音が鳴り始める。
  焦るガース。
ガース「どうした、ギャロス!」
  モニターにエラーコードが表示され、エラーしたプログラムの文字がスクロールし始める。
ギャロス「相当のダメージだ。早く退散したほうがいい」
ガース「何弱音を吐いてる!」
  ガース、アクセルを踏み込む。

○ 走り出すギャロス
  ナイト2000に向かって、突進する。

○ ナイト2000車内
  マイケル、ハンドルをおもいきり左に切る。

○ 直進してくるギャロスをかわし、左の方向へ進むナイト2000
  スピンターンして、立ち止まるナイト2000。

○ ナイト2000車内
キット「敷地内から抜け出す気です」
マイケル「逃がしてたまるか」
  アクセルを踏み込むマイケル。

○ ギャロス車内
  唸るエンジン。
  ガース、ハンドルを回そうとするが、自由が利かない。
ガース「何をしてる!私に運転させろ!」
ギャロス「自己診断システム制御不能…」
  ガース、ハンドル下のユニット・ボックスを開け、基板を取り外す。
  ガース、何かの異変に気づくが、構わずハンドルを左に切る。

○ スピンターンして立ち止まるギャロス
  急ブレーキで立ち止まるナイト2000。
  向かい合う二台の車。
  ギャロスのスピーカーからガースの声が流れる。
ガースの声「俺は、二人も必要ない。地獄に落ちろ、マイケル・ナイト!」
  両側の砲台からレーザーが発射する。
  レーザーは、ナイト2000のボディに当たっているが、吸収される。
  ボディの先端からレーザーを発射するナイト2000。
  レーザーは、ギャロスのボンネットに当たり、爆発。フロントガラスの一部が割れる。
  ハンドルに頭を埋めるガース。顔を上げる。
  左頬にガラスの破片で切った傷ができ、血が流れている。
  マイケルを睨みつけるガース。
  激しい憎悪を剥き出しにし、絶叫するガース。ナイト2000に向かって突進するギャロス。

○ ナイト2000車内
マイケル「キット、ターボの用意だ!」
キット「OKです、マイケル」
  迫ってくるギャロスを見つめるマイケル。
マイケル「行くぞ!」
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ 激しいジェットタービンの音と共にジャンプするナイト2000
  ギャロスの右側の砲台がナイト2000の動きに合わせて角度を変える。
  向かってきたギャロスの真上を飛び越えるナイト2000。
  ギャロスの砲台から緑色のレーザーが発射される。
  レーザーは、ナイト2000の下部にヒットするが、エネルギーは、吸収される。
  鮮やかに着地するナイト2000。
  ギャロス、勢いをつけたまま走り続け、正面に止まっているVOLXに激突。
  巨大な炎と爆音を上げ、爆発するVOLXとギャロス。
  立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  轟く爆音。空高く舞い上がる炎を見つめている。
  マイケル、神妙な面持ち。
キットの声「終わりましたね、マイケル」
マイケル「ああ…今度こそな」
―ACT4 END―

―ACT5―
○ ナイト財団本部・中庭プール前
  プールサイドを歩くマイケルとデボン。
デボン「この間言った事…あれは、本気なのか?」
マイケル「正直言うと、まだ悩んでる…」
デボン「ガースもギャロスももうこの世にいない。何をそんなに躊躇っているんだ」
  立ち止まるマイケル。デボンも合わせて止まる。
マイケル「躊躇ってるわけじゃない…失う事の辛さに敏感になっちまったのかも」
デボン「キットは、元に戻った。もう迷う事は何もないはずだ」
マイケル「キットの事だけじゃない。キットが破壊された時、今まで失ってきたものが頭の中を駆け巡った」
デボン「だったら怪我の治療がてら一週間ほど休暇を与えよう」
マイケル「本当に?」
デボン「ああ。アカプルコにでも行って少し羽を伸ばして来い」
  後ろで響く足音に気づき、振り返る二人。
  ボニーとRC3、そして、アッシュがマイケル達の前にやってくる。
  マイケルに話し出すボニー。
ボニー「アッシュがあなたに渡したいものがあるって…」
  アッシュ、ジャンパーのポケットから基板を出し、マイケルに手渡す。
  マイケル、基板を見つめ、
マイケル「なんだい、これ?」
アッシュ「ギャロスが僕を逃がす時に、ガースのプログラムが邪魔だからって、それを外すように言ったんだ」
デボン「あいつにも良いところがあったんだな…」
マイケル「お父さんとは、仲直りしたのかい?」
  頷くアッシュ。
アッシュ「二人の結婚は、受け入れるつもり…」
RC3「そうか。そりゃあ良かった」
アッシュ「…もう一度ギャロスに会えなかったのは、心残りだけど…」
マイケル「ギャロスの代わりと言っちゃなんだけど、話してみるかい?」
アッシュ「えっ?」
  マイケルのコムリンクのアラームが鳴る。
キットの声「代わりとは、私の事ですか?マイケル」
  コムリンクに話し出すマイケル。
マイケル「代わりは、まずかったか?」
キットの声「いいえ。ギャロスとは、兄弟みたいなものですから」
アッシュ「やっぱりいいよ。それじゃあ」
  アッシュ、マイケルの前から立ち去って行く。ボニーもアッシュの後を追う。
キットの声「何か悪い事を言いましたでしょうか、私…」
マイケル「気にするな」
デボン「あの子にとっては、ギャロスが最高のパートナーだったんだろう…」
RC3「あの…ダーネン博士が来てるんですけど…キットの再生にかかった費用の件で話がしたいとか…」
  デボン、気まずそうな表情を浮かべ、
デボン「昔から金にうるさい奴でな…」
  立ち去るデボン。
  デボンの背中を見つめるマイケルとRC3。
RC3「相当絞られそうだな」
マイケル「俺達も顔を出しとくか…」
  二人、デボンを追って駆け出す。

                                      ―THE END―

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