SUBTITLE 『HIDE OUT』 作 ガース「ガースのお部屋」

−ACT1−
○ オペラハウス
  ステージに白いドレスを着た白人の女性が立ち、美声を唸らせている。
  観客席は、人で埋まっている。
  響き渡る美声に酔いどれる観客達。
  二階席の右側の通路沿いに座るマイケル・ナイト。ステージをジッと見つめている。
  マイケルの左隣の席に、FBI捜査官リック・ハルビンが座っている。
  金髪のオールバック、精悍な顔つき。白いスーツを身に付けている。
  リック、白いドレスの女を神妙な面持ちで見つめている。

○ レストラン
  窓辺に海が見える高級店。
  窓側のテーブルにマイケルとリックが座っている。
  マイケル、ナイフでステーキを切り込む。
リック「オペラは、初めてだって?」
マイケル「ああ。こんなに魂を揺さぶられたのは、ビートルズのコンサートを見た以来だ」
  リック、笑みを浮かべ、
リック「気に入ってくれて何よりだ」
  マイケル、フォークで肉を突き刺し、口の中に放り込むと、フォークとナイフを皿の上に置く。
  リックは、すでに食べ終えている。
リック「今、マイアミである武器密売組織を追っている。先月、マークしていた運び屋の
 ジョージ・フランと言う男がマイアミ市内のマンションで死体で発見された。ジョージは、
 俺達が数ヶ月前からマークしていた男だ。その殺人現場で、こんなものを見つけたんだ」
  リック、スーツのポケットから指輪を取り出し、マイケルに見せる。
  マイケル、神妙な目つきで指輪を見つめる。
リック「この指輪は、舞台劇で使用される模造品だった事がわかった」
マイケル「なぜそんなものを?」
リック「ジョージには、恋人がいた。指輪に付着していた指紋の検証の結果、持ち主は・・・」
  マイケル、リックの話に割って入り、
マイケル「もしかして、さっきのステージに出てたオペラ歌手?」
リック「そうだ。シャリア・ベイン。『ワルキューレ』でジークリンデの役を演じていた女さ。
 彼女を一週間、追跡調査していたら、ある大物との関係が見えてきた」
マイケル「誰だ?」
リック「マーク・ルーゼン。元アメリカ海軍の大佐。三年前、奴は、演習中に潜水艦の
 魚雷を謝って発射して、仲間の潜水艦を沈没させかけた。奴は、その責任を取って、海軍から
 身を引いたが、その裏で、今でも軍の内部関係者と精通し、武器の横流しをしている。
 裏では、『悪魔の武器商人』と呼ばれている。ジョージとシャリアは、マークの部下で、
 武器密売の仲介役をしている」
マイケル「男はともかく、なぜシャリアがマークなんかとつながっているんだ?」
リック「シャリアは、小さい頃に両親を共に病気で亡くしていて、マークが義理の父親として、
 彼女の面倒を見る事になった。奴は、嫉妬深い男で、シャリアを自分の妻のように
 慕っているらしい」
マイケル「それで、俺は、何をすればいい?」
リック「財団に協力を持ちかけた時、デボンから聞いたんだが・・・。君達のところには、
 物凄い車があるとか・・・」
マイケル「キットのことか?」
リック「キットを貸してもらえないか?・・・ 」
  マイケル、険しい表情を浮かべる。
リック「済まない。デボンに話せば、断られると思ったから、君に直接会って、判断を
 仰ぎたかったんだ」
マイケル「キットを使って、何をするつもりだ?」
リック「マークは、マイアミ市内のどこかに武器を隠している。キットには、僕のサポートを
 お願いしたい」
マイケル「俺は、役立たずって事か」
リック「そんな事は、言っていない。こう言う捜査は、一人の方が何かと動きやすいんだ」
マイケル「ことわる」
リック「・・・」
マイケル「キットは、財団のものだ。それに、俺の指示にだけに従うようプログラミングされている」
リック「だから、君に頼んでるんだ」
  リック、スーツの内ポケットから百ドル札を数枚を取り出し、マイケルの前に置く。
リック「この二日間、君は、マイアミで私の調査活動に協力していることになっている。
 その間、ビーチで思い存分羽根を伸ばすがいい」
マイケル「悪いがその話には、乗れないな」
  マイケル、立ち上がり、リックの前から立ち去って行く。
リック「待ってくれ、マイケル」
  マイケル、立ち止まる。リック、マイケルの背後に近づき、
リック「マークは、世界中のあらゆる武器とミサイルをコレクションしている。
 最新型の武器には、目がなくて、必ず手に入れ、安値で海外に売り出しているんだ。
 奴を野放しにしとけば、ありとあらゆる国に武器が流出して、いらぬ紛争を招くんだ・・・」
  マイケル、振り返り、憮然とした表情でリックの顔を見つめる。
  
○ マイアミ・ダウンタウン(深夜)
  ヘッドライトとスキャナーを光らせながら、街のストリートを疾走するナイト2000。
  
○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
  思いつめた様子でハンドルを握っている。
キット「どうかしましたか?」
マイケル「・・・なんだ?」
キット「さっきから冴えない顔をしているので・・・」
マイケル「いや、何でもない」
キット「オペラの話をさせてください」
マイケル「俺が見たのは、確か・・・『ニーベルングの指輪』。ワーグナーの傑作だろ?」
キット「あなたの見た『ワルキューレ』は、ヴォータンが人間の女性に生ましたジークムントと
 ジークリンデの兄妹とブリュンヒルデら8人のワルキューレの勇士の物語。まだ続きが
 あります」
マイケル「クラシックは、おまえの専売特許だ。俺は、ロックで十分・・・と言いたいところだが、
 生のオペラは、迫力があったな」
キット「私も一度ステージを鑑賞してみたいのですが・・・」
マイケル「今度、野外オペラにでも行ってみるか?」
キット「それは、良いアイデアです」
  暫くの静寂。
キット「どうしたんですか、マイケル?」
マイケル「・・・実は、おまえに話さなきゃいけないことがあるんだ」
キット「何です?」
マイケル「FBIのリック刑事が潜入捜査で、おまえを使いたいと言ってきてる」
キット「マイケル、あなたは?」
マイケル「俺は、用無しだってさ」
キット「・・・」
マイケル「リックと組む気は、あるか?」
キット「あなたの指示に従います」
  マイケル、神妙な面持ち。

○ ホテル・駐車場(翌日・朝)
  近くにヨットハーバーが見渡せる。
  シルバーのアルフォ・ロメオがゆっくりと入って来る。
  駐車スペースに止まっているナイト2000の隣のスペースに立ち止まる。
  車の運転席の扉が開き、中からリックが降りてくる。左手にスーツケースを持っている。
  ナイト2000のボンネットに座っていたマイケル。立ち上がり、リックの元に近づいて行く。
  対峙するマイケルとリック。
リック「どうして、貸してくれる気になったんだ?」
マイケル「一晩眠ったら、たまには、マイアミの海を見ながら、素敵な女性とのんびり
 くつろぐのも悪くはないなと思ってね・・・」
リック「ずいぶん、きまぐれなんだな」
マイケル「キット、リック刑事だ。後は、彼の指示に従って行動するんだ。わかったな」
キット「わかりました。初めまして、リック」
リック「よろしくな、キット」
マイケル「キット、コムリンクの通信範囲を最大にしとけ。(リックのほうを向き)悪いが逐一、
 連絡をさせてもらう」
リック「ああ・・・」
  リック、マイケルに自分の車のキーを手渡す。
リック「俺の車のキーだ。自由に使ってくれ」
  リック、ナイト2000の運転席のドアを開け、中に乗り込む。
  
○ ナイト2000車内
  ハンドル周りの計器類、色とりどりのボタン類を見回し、驚愕しているリック。
リック「・・・スターターは、どこだ?」
キット「私がやります」
  ハンドル上の電源出力ランプが点滅し、エンジンがかかる。
  シフトが自動的に『R』に入る。
  アクセルが自動的に動く。
  リック、周辺を見回し、唖然としている。
  
○ 駐車スペースからバックして出るナイト2000
  左に回り込むと、そのまま、出口に向かって走り出して行く。
  マイケル、立ち去って行くナイト2000の後ろ姿を空ろげな表情で見つめている。
  
○ ダウンタウン通り
  高くそびえるオフィスビルのそばを走り抜けるナイト2000。
  
○ ナイト2000車内
  リック、不安げな表情でダッシュボードの周辺を見回している。
リック「キット、そろそろ自分で運転させてくれないか?」
キット「わかりました」
  キットのインジケータ部分の『AUTO CRUISE』の発光が
  『NORMAL CRUISE』に切り換わる。
  リック、ハンドルを両手で持ち、緊張した面持ち。
キット「どこへ向かうんです?リック捜査官」
リック「モーテルだ」
キット「モーテル?」
リック「シャリアと言う女が泊まってる」
キット「あなたの指示に従うようマイケルに言われています。ご遠慮なくなんなりと
 お申しつけください」
リック「それじゃあ、君の能力について教えてくれないか?」
キット「わかりました。それでは、まず基本的な装置の説明から始めましょう・・・」

○ モーテル前
  道路脇に立ち止まるナイト2000。
  窓から、モーテルの様子を覗いているリック。
キットの声「中の様子をお調べになりたいのなら、力をお貸ししますが?」

○ ナイト2000車内
リック「いや、ちょっと待っててくれ」
  リック、ドアを開け、外に出て行く。
  
○ モーテル203号室
  ドアのノック音が聞こえる。
  青いジーンズ、ジャケットとサングラスを身に付けたシャリア・ベインが立っている。
シャリア「はい」
  ドアを開け、中に入るリック。
リック「例のものを持ってきた。今日、あの別荘に忍び込むつもりだ」
  シャリア、動揺した面持ち。
シャリア「やっぱり、リスクが大き過ぎるわ・ ・・」
リック「大丈夫。必ずうまくやる」
シャリア「今から買い手に会いに行くわ。ついてきて」
 
○ ベイサイドマーケットプレイス・正面口
  脇道に止まるタクシー。後ろのドアが開き、シャリアが降りてくる。
  歩き始めるシャリア。
  暫くして、ナイト2000がやってくる。脇道に止まるナイト2000。
  運転席のドアが開き、サングラスをかけたリックが降りてくる。
キットの声「ここは、駐車禁止ですので、移動します」
リック「ああ。正面口の前の道で待っててくれ」
キットの声「わかりました」
  ナイト2000、走り出すとUターンし、走り去って行く。

○ マーケット街
  観光客で溢れ返っている。
  雑踏の中を進んでいるシャリア。
  その5m後ろにリックが歩いている。
   ×  ×  ×
  メロンジュースを買い、ストローを口に銜えながら歩き出すシャリア。
  店前で様子を窺っているリック。
  シャリアの後を追い始める。
   ×  ×  ×
  バック、小物類の棚をまじまじと見ているシャリア。
  店の出入り口に立っているリック。まじまじとシャリアを見ている。
  暫くして、シャリアの元にアロハのシャツを着た長髪、髭面の男が近づいてくる。
  リック、険しい表情を浮かべる。
  シャリアと男が一緒に出入り口に向かって歩き始める。
  リックの前に近づく二人。
  シャリア、リックをジッと見つめながらリックの目の前を通り過ぎる。

○ ベイサイド公園
  歩道を歩くマイケル。サングラスをかけている。
  犬を連れて歩くグラマーな女性がマイケルの前を横切って行く。
  マイケル、「ホゥ」と小さく雄叫びを上げる。
  余所見しているマイケル、少女と肩をぶつける。
  マイケル、振り返り、
マイケル「ごめん」
  足下を見つめるマイケル。封筒が落ちている。
  マイケル、封筒を拾い上げる。
  振り返り、マイケルを見つめる少女アン・リード。ロングの赤毛、オレンジ色の
 タンクトップにショートパンツを身に付けている。
マイケル「君のだろ?」
  アン、マイケルから封筒を受け取る。
アン「・・・あの、マーケット・プレイスって、どこにあるの?」
マイケル「この先をまっすぐだ・・・。この街は、初めて?」
アン「ええ。あなたは、この街の人なの?」
マイケル「いいや。旅行中でね」
  アン、マイケルを見つめ、笑みを浮かべ、
アン「・・・私も」
  マイケル達のそばをグリーンのマセラティが横切って行く。
  暫くして、その後からナイト2000がやってくる。
  マイケル、ナイト2000をまじまじと
  見つめている。
  マイケルの前を通り過ぎるナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るリック。フロントガラス越しに見えるマセラッティを睨み付けるように
  見つめている。
キット「あんなところで早くもデートとは・・・」
リック「どうかしたのか、キット?」
キット「いいえ、何でもありません」

○ ベイサイド公園
  ナイト2000の後ろ姿を見つめているマイケル。
  公園の脇道に止まるBMW。ナイト2000の後を追って走り始める。
−ACT1 END−

−ACT2−
○ 別荘地
  アール・デコ調のカラフルな建物が並ぶ道沿いを走るマセラティ。
  その後ろを走るナイト2000。

○ とある別荘
  パステルカラーの風格のある建物。
  高い壁に囲まれている。
  巨大な門の前に立ち止まるマセラティ。
  暫くして、自動的に門が開く。
  マセラティ、敷地の中にゆっくりと入って行く。と、同時に門がまた閉まり始める。
   ×  ×  ×
  別荘から数百メートル離れた路上の脇道に止まるナイト2000。

○ ナイト2000車内
  別荘を見つめているリック。
キット「もしかして、あれがマーク大佐の隠れ家?」
リック「いや、あれは、マークの友人の家だ。しかし、実質は、武器取り引きの交渉場所に
 なっている。中に忍び込みたいんだが、どうするかな・・・」
キット「良い方法があります」
  
○ 別荘・裏手の路上
  壁際に寄り添うように立ち止まるナイト2000。
  運転席側のサンルーフが開く。
リック「マイケルは、いつもこんなことをやっているのか?」
キット「ええ。これぐらいのことは、朝飯前です」
リック「高さは、どれぐらい?」
キット「約6mです。ただ、壁が非常に薄いので、うまく着地できるかどうか・・・」
  リック、バッジと手帳と手錠を助手席のシートに置く。運転席のシートの上に立ち、
リック「ロープを使うよりは、ずっと楽だ。構わないやってくれ」
キット「わかりました。くれぐれもお気をつけて」
  『EJECT L』のレベルメーターが赤く発光し、伸びる。
  運転席のシートが上がり、リックが壁の上に向かって、高く飛び上がる。
   ×  ×  ×
  リック、壁の上に着地するが、バランスを崩し、そのまま、別荘の敷地内の地面に崩れ落ちる。
  椰子の木の前に落ち、草むらの上でおもいきり尻を打つ。
   ×  ×  ×
キット「やはり、無理があったか・・・」

○ 別荘・敷地内
  リック、苦痛の表情を浮かべながら立ち上がる。
  尻を右手で摩りながら、平屋建ての建物の方に向かって進んで行く。
  
○ 別荘・リビングルーム
  天井の高い木調の部屋。
  中央の円卓に四人の男達が座っている。
  四人、ポーカーに夢中。
  白髪の白人の男がテーブルの上のトランプを捲り、憮然とした表情を浮かべている。
  その隣に座る黒人の男。大きな目で手持ちのトランプを見ている。
  黒人の対面に座る髭面、サングラスの中年の白人マーク・ルーゼン。
  持っていたトランプをテーブルに置く。
  手は、『ストレート・フラッシュ』
  他の三人、落胆し、トランプをテーブルに置く。
  暫くして、男とシャリアが入ってくる。
  男、右手にスーツケースを持っている。
シャリア「連れて来たわよ」
  マーク、立ち上がり、二人と対峙する。
マーク「お待ちしていましたよ。私のプライベートルームに案内しよう」
  マーク、奥にあるドアのほうに向かって歩き出す。
  男、マークの後を追って歩き出す。
  シャリア、強面の表情で佇んでいる。

○ 建物の壁際にしゃがみ込んでいるリック。
  頭上に見える窓を覗き込む。
  テーブルの前に座りポーカーを続けている三人の男達と、その奥のソファに腰かけている
  シャリアの姿を目にする。

○ 別荘・プライベートルーム
  窓際にあるデスクの椅子に座るマーク。
  マークの前に佇んでいる男レイジー・モンド。
レイジー「グレネード弾五十発に、MP5A5マシンガンと、M16とカバメントをそれぞれ
 二十丁、それとFIM−92Aスティンガー・ミサイルを用意してくれ」
  マーク、冷笑し、
マーク「どこで戦争をおっ始める気だ?」
レイジー「明日、連邦保安局の空輸機に俺達の仲間が乗ることになってる」
マーク「君達は、確か去年、カリフォルニアの銀行を立て続けに襲撃したそうだな。
 捕まったジョーイは、襲撃計画の中心だった・・・」
レイジー「さすが、情報が早いな。奴を取り戻して、もう一稼ぎするんだ」
  男、右手に持っていたスーツケースをデスクの上に置き、ケースを開ける。
  中には、百ドル札の束がぎっしり詰まっている。
レイジー「五十万入ってる」
マーク「では、こうしよう。これは、前金として戴く。今度の襲撃の儲けの十パーセントを
 後からうちの口座に振り込んでもらおう」
レイジー「十パーだと?」
マーク「不服か?」
男「いや、悪くない。他で買えばその倍は、かかる」 
  男、マークと握手を交わす。
マーク「弾は、はずんでやる」

○ 窓から別荘の中を覗くリック
  奥にあるドアを見つめている。
  暫くして、マークと男が部屋から出てくる。
  リック、マークを睨み付けている。
  リックの背後で、物音がする。
  リックの後頭部にライフルの銃口が突きつけられる。
  ライフルを持った白人の男・ビルがリックの後ろに立っている。
ビル「両手を頭につけろ」
  リック、ゆっくりと両腕を上げ、両手を後頭部に置く。
  ビル、リックの背中を突きながら壁伝いにリックを歩かせる。

○ 別荘・リビングルーム
  ビルにライフルを向けられながらリックが部屋の中に入ってくる。
  円卓に座る男達、ソファに座るシャリア、奥のドアの前に立つマークとレイジーが
  一斉にリックのほうを見る。
  リック、辺りを見回し、
リック「そんなに注目されると、照れちまうよ」
マーク「今日は、客人が多いな」
  リックを睨み付けているシャリア。
マーク「ビル、銃を下ろせ」
  ビル、ライフルを下に降ろす。
リック「街であんたの噂を聞きつけてやってきた」
マーク「何の噂だ?」
リック「裏家業・・・」
マーク「困るな。商談なら事前にアポイントを取ってもらわないと・・・誰から聞いた?」
リック「ジョージって男だ」
  シャリア、不安気にリックの背中を見つめる。
  マーク、怪訝な表情でリックを見つめ、
マーク「奴は、死んだ」
リック「・・・あんたに買ってもらいたいものがある」
  マーク、眉をひそめる。
リック「あんたが泣いて飛びつく代物だ」

○ ピザ屋
  テーブルに対峙して座るマイケルとアン。
  マイケル、ピザを頬張っている。
  アン、元気なさげにテーブルに肘を置いている。
  マイケル、食べるのをやめ、
マイケル「食べないの?」
  アン、ストローを銜え、ジュースを啜っている。
アン「全部食べて。私、モデルをしてるの。デビューしたばかりだけどね」
マイケル「どうりで・・・ここには、何しに? 」
アン「写真集の撮影で来たの。あなたはここへは、何しに?」
マイケル「キュートな美人の観察・・・」
  アン、笑みを浮かべ、
アン「何の仕事してるの?」
マイケル「人助けだ」
アン「もしかして、探偵?」
マイケル「まぁ、似たようなもんだ」
  アン、真剣な眼差しになり、
アン「ねぇ、お願いがあるの」
  アン、店の入口に立つグレイのスーツの男。店内をジロジロと見回している。
  唖然とするアン。
アン「やばい・・・」
  アン、突然立ち上がり、
マイケル「どうしたの?」
アン「マネジャーに見つかっちゃった。実は、勝手に外に出てきちゃったの。夕方また
 撮影があるから、5時にマイアミビーチの海岸に来てくれない?」
マイケル「わかった」
  アン、マイケルに手を振り、入口に向かって歩いて行く。
  マイケル、後ろを向き、アンに手を振る。
  アン、男に説教をされながら店を出て行く。
  アラームが鳴り響く。
  マイケル、左の手首につけているコムリンクに話し始める。
マイケル「元気でやってるか?」

○ 別荘前
  道路の脇道に止まっているナイト2000。
キットの声「人が汗水垂らして仕事をしていると言うのに、あなたって人は・・・」
   ×  ×  ×
マイケル「何をそんなに怒ってるんだ?」
   
○ ナイト2000車内
キット「路上であなたを見かけました。女の子と一緒にいるところを・・・」
   ×  ×  ×
マイケル「仕方ないだろ?俺は、休暇中なんだ。で、状況は?」
   ×  ×  ×
キット「アール・デコ地区の中の別荘の前にいます。リックが今潜伏中です」
   ×  ×  ×
マイケル「住所は?」

○ 別荘前
  門が自動的に開き、外に出てくるリック。
  ナイト2000の前に駆けて行き、ドアを開ける。

○ ナイト2000車内
  運転席に乗り込むリック。
  エンジンをかけるリック。
リック「今からマーク大佐と取り引きをする。一緒に来てくれ」
キット「中にマークがいるんですか?」
リック「ああ・・・」
  
○ 走り出すナイト2000
  別荘の門を潜り抜ける。
 
○ 別荘・庭園
  停車しているナイト2000の前に佇むマーク。
  その背後にリック、その隣にシャリアとライフルを持ったビルが立っている。
  マーク、運転席のドアを開け、中を覗き込む。
  ダッシュボードの様々な装置類に圧倒されているマーク。
マーク「こいつは、いったいどんなことができるんだ?」
リック「ボディは、完全防弾、自動走行も可能だ。その気になれば、ミサイルを積んで
 攻撃することもできる。まさに007の気分を味わえる」
  マーク、車から降りる。
マーク「じゃあ、自爆装置もついているのか? 」
リック「(苦笑いし)ああ。試しに一つ。(小声で)キット」

○ ナイト2000車内
  『SUPER PURSUIT MODE』のボタンが光る。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  ナイト2000の姿を見て、驚愕するマーク。
リック「これで、時速300マイル以上で走る事ができる」  
  マーク、興味深げに頷き、
マーク「なぜ、君がこんなものを持っているんだ?」
リック「知り合いの科学者が作ったんだ。そんなことより、こいつをあんたのコレクションに
 加えたくはないか?」
  マーク、まじまじとナイト2000を見つめ、
マーク「私にこれをいくらで売るつもりだ?」
リック「5000万」
  マーク、失笑し、車から降りると、リックの前に近づき、立ち止まる。
マーク「いいだろう。但し条件がある」
  リック、憮然とした面持ちになる。
マーク「今日の夜、陸軍が最新型の小型ミサイルを輸送する。そこで、この車の能力を
 試させてもらう」
  リック、焦りの表情を押し殺す。
マーク「もちろん、ドライバーは、君だ」
  シャリア、ビル、険しい表情でリックを見ている。
  リック、張りつめた表情を浮かべる。
−ACT2 END−
 
−ACT3− 
○ マイアミビーチ・海岸(夕方)
  白い砂浜の上に立ち、ポーズを決めているアン。コバルト・ブルーの海に入り、
  沈みかけのオレンジ色の夕陽を浴びながら、無邪気に走り回っている。
  アンを取り囲む数人のスタッフ達。
  その中にグレイのスーツを着た男がいる。
  アン達から数十m離れた場所にある桟橋の上に立っているマイケル。
  撮影風景を見つめ、笑顔をこぼしている。 
  シャッターを切り続けるカメラマンの男。
  暫くして動きを止め、
カメラマン「はい、OK!」
  アンの周りを取り囲んでいたスタッフ達が撤収作業を始める。
  アン、周りを見渡す。桟橋にいるマイケルに気づき、砂浜を走り始める。
  スーツの男、走り去って行くアンを見ている。
  砂浜を歩くマイケル。アンが駆け寄ってくる。
アン「本当に来てくれたのね」
マイケル「美人の頼みだからな。それで、話しって何?」
アン「探してもらいたい人がいるの」
マイケル「誰だ?」
アン「ケイン・リード。私の兄の名前。一週間前にここにガールフレンドと来て、
 行方不明になったの」
マイケル「警察には言ったのか?」
アン「(首を振り)それは、できないの。三日前、うちに手紙が届いて・・・」
マイケル「どんな手紙?」
アン「兄貴は、マイアミ市内のどこかに監禁されてる。警察には喋るなって書かれてた・・・」
マイケル「他に何か手がかりは?」
アン「兄貴が行方不明になる前に、うちに連絡があったの。街で有名なオペラ歌手の女性を
 見かけた。今からサインをもらって来るって・・・」
マイケル「そのオペラ歌手の名前は、わかるかい?」
アン「わからない・・・兄貴は、普段、オペラなんて興味もないし。多分ガールフレンドに
 頼まれたのかもしれない」
マイケル「その手紙とお兄さんの写真があれば、見せてくれないか?」 
アン「ホテルにあるの。ついてきて・・・」
  木の陰に立つグレイのスーツの男。
  マイケルとアンの様子を見つめている。

○ 別荘
  自動的に門が開く。
  中からナイト2000が出てくる。
  そのまま、路上を走り出す。
  後から二台のシルバーのBMWが門から出てくる。ナイト2000の後をついて行く。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るリック。
リック「すまないキット。こんなマネをして・ ・・」
キット「私を安売りされては、困ります」
リック「こうするしか、奴から信用を得る方法がなかったんだ」
キット「それでは、本当に軍のトラックを襲撃するつもりですか?」
リック「・・・そうだ」
キット「マイケルに報告します」
リック「待ってくれ。これには、事情があるんだ?」
キット「何です?」
リック「妹がマークに拉致されてるんだ」
キット「どう言うことです?」
リック「観光中に、殺人現場を偶然、目撃してしまったんだ」
キット「どこにいるんです?」
リック「きっと、マークの隠れ家に監禁されているに違いない」
キット「では、初めから私を売り込むつもりで・・・」
リック「妹の居所を掴むまで、マイケルには、何も言わないでくれ」
キット「・・・」
   
○ ダウンタウンの国道を走るナイト2000
  夕陽に向かって突き進んでいるナイト2000の後ろを二台のBMWがつき、
  列をなして走っている。
  高層ビル群の前を横切って行く。
 
○ ホテル・ロビー
  電話機の前に佇むマイケル。受話器を持ち、話をしている。
マイケル「デボンの言った通り、事は、順調に進んでる」 

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  デスクの座席に着くデボン・シャイアー。右手に受話器を握っている。
デボン「さっき、FBIから連絡があった。彼の行動をもう少し詳しく聞きたいそうだ。
 キットから連絡は?」
    ×  ×  ×
マイケル「今のところは何もない」
    ×  ×  ×
デボン「リックが特捜班からはぐれて、なぜ、我々の元に協力をもちかけてきたのか?
 その理由がはっきりするまでは、キットに頑張ってもらわんとな・・・」
×  ×  ×
マイケル「リックがキットに興味津々だったことから察すると、今頃、キットは
 マークの手に渡っているかもな・・・」
    ×  ×  ×
デボン「そこが狙い目だ。キットがマーク達の武器密売のアジトを見つけたところで、
 FBIが踏み込む手はずだ」
    ×  ×  ×
マイケル「何か嫌な予感がする。やっぱり、キットにも俺達がリックを調べている事を
 はっきり言うべきだったんじゃないか?」
×  ×  ×
デボン「キットには、リックの命令に忠実に動いてもらわなければならなかった。
 余計な事を言えば、彼の判断も揺らぎかねないからな。心配しなくともキットなら大丈夫だ。
 それじゃあ、また後で連絡する」
×  ×  ×
マイケル「待ってくれ、デボン。ひょんなきっかけで、誘拐事件に巻き込まれた少女と
 出会ってね・・・」
×  ×  ×
デボン「自分の仕事の優先順位のつけ方ぐらいわかっとるだろ?」

○ ホテル・ロビー
デボンの声「その件は、後だ。くれぐれも勝手な行動は、慎んでくれ」
  マイケル、憮然とした表情で受話器を置く。
  マイケル、コムリンクに話しかける。
マイケル「キット、聞こえるか?」
  
○ ナイト2000車内
  アラームが鳴り響く。
キット「マイケルからです」
  リック、険しい表情で唇を噛み締め、首を振る。
キット「・・・」
 
○ ホテル・ロビー
  コムリンクを口元に近づけるマイケル。
マイケル「キット・・・」
キットの声「マイケル」
マイケル「今、どこにいる」
キットの声「私は、あなたを見損ないました」
マイケル「なんだって?」
 
○ ナイト2000車内
  リック、唖然とした表情でマイケルとキットのやりとりを聞いている。
キット「今まであなたには、散々痛い目に遭わされてきました。私の神経回路は、もう
 ズタズタです」
マイケルの声「おい、いきなり何の冗談だ?」

○ ホテル・ロビー
キットの声「今日からリックとパートナーを組むことにします」
マイケル「おい、待てキット。本気で言ってるのか?」
キットの声「さよなら、マイケル」
マイケル「昼間の事を怒ってるなら、お門違いだぞ」
キットの声「・・・」
マイケル「よし、わかった。勝手にしろ。二度と俺に泣きついてくるんじゃないぞ」
キットの声「それは、こっちの台詞です」
  コムリンクの回線が切れる。
  マイケル、慌てた様子で、
マイケル「キット、返事しろ、キット!」
  マイケル、ため息をつき、
マイケル「クソ!」
 
○ ナイト2000車内
  リック、驚いた表情を見せている。
キット「これでしばらくは、時間を稼げます・・・」
リック「申し訳ない、キット」

○ 国道(深夜)
  見通しの良い直線道路。
  二台のジープの後ろを走る白いトラック。トラックの後ろには、高機動車ハンビーが
  くっついて走っている。

○ 国道沿いの砂漠
  ナイト2000と2台のBMWが列をなして止まっている。
  リックとビル、スーツを着た三人の男達がナイト2000の前に立っている。
  暫くして、リック達にヘッドライトの光が差し当たる。
  国道からグリーンのトラックがやってくる。
  キットの前に向き合うようにして止まるトラック。
  ビル、腕時計を見つめ、
ビル「もうすぐ、軍のトラックがこのそばを通る」
リック「君らは、どうするんだ?」
ビル「心配するな。おまえが失敗しても俺達がちゃんとやる」
リック「これだけ大勢いるのに俺一人でやらせるのか?」
  ナイト2000のスキャナーが赤く光り、なびき始める。
キットの声「冷たい人達です」
  ビル、不思議そうな表情を浮かべ、リックに喋りかける。
ビル「おまえ、何か喋ったか?」
  リック、冷静な顔つきで、
リック「いいや」
  ナイト2000に乗り込むリック。
  ヘッドライトを光らせ、発進するナイト2000。国道を走り始める。
 
○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るリック。不安げな表情を浮かべる。
リック「さて、どうするかな・・・」
キット「私に任せてください」
 
○ 国道
  対向車線を走っている軍のトラックの列に猛スピードで近づいて行くナイト2000。
  
○ ジープ車内
  前の座席にいる二人の兵士。勢いをつけてこちらに迫ってくるナイト2000を
  怪訝に見つめている。
 
○ ナイト2000車内
  『MICRO ROCK』のボタンが光る。
  モニターにジープのイメージが表示され、全て車輪にロックがかけられる。
  
○ 一番前のジープが突然、立ち止まる
  前の席に座っていた二人の兵士が車内から投げ出され、ボンネットに体を打ちつけながら
  路面に落ちる。
  その後ろを走っていたジープが前のジープと衝突、そして、その後ろにいたトラックも
  急ブレーキをかけながら、ジープに衝突し、立ち止まる。
  立ち往生しているトラックの列のそばを颯爽と横切って行くナイト2000。
  そして、最高尾にいるハンビーのそばを通り過ぎる。
  ハンビーの後部席に乗っていた二人の兵士が車から降り、マシンガンをぶらさげて
  前に向かって歩き出す。
兵士A「おい、一体どうした?」
  猛スピードで走るナイト2000。
  急ブレーキをかけ、勢い良く華麗にターンし、また、スピードを上げ、トラックの列に
  向かって走り出す。
  トラックの前を歩いている二人の兵士達。
  兵士達の背中に車のヘッドライトが当たる。振り返る二人。
  兵士達の前に近づいてくるナイト2000。
  兵士達、持っていたマシンガンを構え、ナイト2000に向かって撃ち捲る。
  ナイト2000のフロントガラスやボンネットに激しく弾丸が当たるが、
  火花を散らしながら、跳ね返っている。
  
○ ナイト2000車内
  ダッシュボートのパネルにある『SMOKE RELEASE』のボタンが光る。

○ ナイト2000の後ろのバンパーの下から白煙が噴出し始める。
  ナイト2000、白煙をまき散らしながら、兵士達の前を駆け抜け、先頭のジープの前で
  ターンして周り込み、トラックの周りを白い煙で覆う。
  煙に巻かれている四人の兵士達。咳き込みながら、立ち往生している。
  暫くして、ビル達の乗ったトラックが軍のトラックの列に近づいてくる。
  立ち止まると、ビル達が一斉に車から降り、マシンガンを兵士達につきつける。
  ビル、軍のトラックの運転席に乗っていた兵士を連れ出す。兵士の背中にマシンガンの銃口を
  突きつけながら、コンテナの扉の前まで一緒に歩く。
ビル「扉を開けろ!」
  兵士、扉の錠を外し、レバーをスライドさせ、観音開きの扉を開ける。
  ビル、兵士の背中を蹴る。兵士、コンテナの扉に頭をぶつけ、そのまま路面に崩れ落ちる。
  コンテナの中に乗り込むビル。何段にも重ねて置かれている鉄製の箱。
  一番上にある箱の蓋を開けるビル。
  中には、ベージュ色の小さく尖った弾頭が入っている。
  ビル、防護マスクを外し、ミサイルを見つめ、ニヤける。

○ 砂漠に止まっているBMW
  ダッシュボードの上に設置されている小型監視カメラが立ち往生するトラックの列の
  方向に向いている。

○ マークの隠れ家
  暗闇。部屋の中央に巨大なコンソールが設置されている。
  マーク、座席につき、目前にあるモニターをまじまじと見つめている。
  モニターには、白い煙に包まれている軍のトラックの様子が映し出されている。
  コンテナから鉄製の箱を持った二人の男が出てくる。
  二人の男、箱をグリーンのトラックのコンテナに積んでいる。
  ナイト2000が煙の中から姿を表わし、襲撃現場を後にする。
  マークの顔にモニターの光りが当たっている。薄笑いを浮かべている表情が無気味に映る。
−ACT3 END−

−ACT4−
○ マイアミ・郊外
  市道の脇道に止まるナイト財団移動本部の黒いトレーラー。
  しばらくして、車のヘッドライトがトレーラーに近づいてくる。
  シルバーのアルファロメロが市道を走っている。
  トレーラーのコンテナのゲートを駆け上がるアルファ・ロメロ。
  
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  アルファ・ロメロが立ち止まる。
  コンピュータ・ルームで作業をしているボニー・バーストが車のほうを見つめる。
  運転席からマイケルが降りてくる。
  ボニーに近寄って行くマイケル。
ボニー「キットもずいぶん様変わりしたわね」
マイケル「そのキット様からの連絡が跡絶えた・・・」
ボニー「どう言う事?」
マイケル「どうやら嫌われたみたい」
ボニー「キットに何かしたの?」
マイケル「何もしちゃいないさ」
ボニー「じゃあ、どうして?」
マイケル「俺にもわからない。こっちが聞きたいくらいさ」
ボニー「いつからそんな状態なの?」
マイケル「かれこれ5時間くらい」
  ボニー、コンピュータの前の椅子に座り、キーボードを打ち込む。
ボニー「キット、返事して」
  ディスプレイに『TRANSMISSION IMPOSSIBLE(送信不可)』の
  文字が表示される。
ボニー「回線が遮断されてるわ。デボンさんは、この事知ってるの?」
マイケル「さっき連絡した。向こうからの連絡を待つしかないってさ」
ボニー「リックか・・・他の技術者がキットのシステムをいじったのかも・・・」
  マイケル、不安げな表情を浮かべる。 
  ボニー、憮然とした顔でキーボードを打ち込む。ディスプレイを見つめ、表情が
  一変する。
ボニー「待って、マイケル。キットから出ている信号をキャッチしたわ」
  マイケル、ボニーの後ろに近寄り、ディスプレイを見つめる。
  ディスプレイにマイアミ市内の地図のイメージが映り、住宅街の市道の上を赤い点滅が
  移動している。
ボニー「この近くを走ってる」
マイケル「ボニー、携帯用の通信機を貸してくれ」
  ボニー、コンピュータのデスクの下にある黒いケースをマイケルに手渡す。
  マイケル、右手にケースを持ち、急いで車に乗り込む。
  エンジンを唸らせ、バックして行くアルファ・ロメロ。
  
○ マイアミ市内の市道を走るトラック(夜明け)
  その後ろを二台のBMW、最後尾にナイト2000が続いて走っている。
  
○ 工事中の高層ビル
  三十階ほどある真っ白いビル。
  まだ完成したばかりで、人の気配はない。
  ビルの構内に入って行くトラック。
  続いて、二台のBMW、ナイト2000が入って行く。
  地下へ続くスロープを降りて行くトラックの列。
  地下駐車場の入口のシャッターがゆっくりと閉まり始める。

○ 同・地下駐車場
  駐車スペースに立ち止まるトラック。その隣にBMW、ナイト2000が立ち止まる。
  一斉に車から降りるビル達。
  
○ 高層ビル・地下4階
  巨大なエレベータの扉が開く。ビルを先頭に、鉄製の箱を運ぶ二人の男達、
  リックがエレベータから降りる。
  
○ 同・集中管理室
  観音式の扉がスライドして開く。ビル達が中に入ってくる。
  後からリックも入ってくる。
  大型のコンピュータの箱に囲まれている部屋に唖然とするリック。
  中央のコンソールの座席に座るマーク。
  マーク、椅子に座ったまま振り返り、立ち上がると、ビル達を出迎える。
マーク「ご苦労だった」
  鉄製の箱をマークの前に置く男達。
  マーク、蓋を開け、中を確認する。満足気な表情を浮かべ、男達に蓋を閉めるよう指示する。
マーク「コレクションルームに運べ」
  二人の男達、箱を持ち、リックの前を横切り部屋を出て行く。
  マーク、リックと対峙し、
リック「あのミサイルは、一体なんだ?」
マーク「あれは、軍が開発したバイオ・ミサイル『ノスフェラトゥ』だ。先端部分に蚊の性質を
 融合した新しいウィルスがセットされている。ウィルスは、人の血液を一滴と残らず吸い出して
 しまう。まるで、ドラキュラのようにな。都市圏に打ち込めば、一瞬で大半の人間が日干しに
 なる」
リック「・・・えげつない兵器だ」
マーク「トラックの襲撃の様子を拝見させてもらったが、今一つあの車の能力がわからなかった。
 そこでだ。君には、もう一つ仕事をしてもらいたい」
リック「約束が違うぞ」
マーク「このビルは、この部屋で一元管理をしている。もうまもなくこのビルは、新しい
 商業用ビルとしてオープンし、いくつもの企業が入ってくる。だが、この部屋は、
 誰にも知られる事はない。おお、そう言えば、テナントが入る前に片付けなければ
 いけないものがあったな」
  マーク、コンソールの前に行き、キーボードを打ち込む。
  モニターにある部屋が映し出される。
  何も置かれていない個室の壁隅に座っている若い男女。
  二人とも両手、両足を縛られ、猿轡をされている。
  リック、モニターを見つめ、思わず呟く。
リック「エミー・・・」
マーク「私は、今まで世界中の武器を集めてきた。しかし、戦車や銃やミサイルだけでは、
 まだ物足りん」
  マーク、ボタンを押し、別のモニターに映像を出力させる。
  リック、その映像を見つめ、驚愕する。
  海に浮かぶ潜水艦「SSN21 シーウルフ」が映っている。
マーク「確か、あの車には、ミサイルがセットできると言っていたな」
リック「まさか、あれを盗みだせって言うのか?」
マーク「FBIには、重荷が過ぎるかね?」
  リック、唖然とし、
リック「誰から聞いた?」
   扉が開き、赤いドレスを着たシャリアが表れる。
   リック、振り返り、シャリアを見て、唖然とする。
リック「・・・君は、ここを知ってたのか?」
  シャリア、リックと目を合わさず、俯き、
シャリア「信じてくれないかも知れないけど、今日、初めて連れて来られたの・・・」
  リック、マークを睨み付け、
マーク「君がこの女とモーテルで会っているのを私の部下が見ていたんだ。シャリア、
 今回は、大目に見てやるが、次は、許さんぞ」
シャリア「・・・」
  マーク、リックにさらに近寄り、立ち止まる。
マーク「君には、まだ利用価値がある。だが、君自身に選択の余地はない」
  観念した様子のリック。
  
○ 工事中の高層ビル前(朝)
  路上の脇道に止まるアルファ・ロメロ。
  運転席のドアが開き、マイケルが降りてくる。
  マイケル、高層ビルを見上げると、建物に向かって歩き始める。
 
○ 同・集中管理室
マーク「君の仕事は、実に簡単だ。今日の十時にマイアミ港に着岸する客船に私の部隊が
 乗り込む。君は、あの車でマイアミ市内をのんびりドライブしててくれればいい」
リック「客船を乗っ取る気か?」
マーク「それ以上のことは、詮索しなくていい。さっそく『ノスフェラトゥ』をセットしてもらおう」
  リック、唾を飲み込み、マークを睨んでいる。
   
○ 同・地下駐車場・入口前
  シャッターの前に近づいてくるマイケル。辺りを見回し、入口の壁に監視カメラがあるのに
  気づき、カメラの下に隠れる。
  マイケル、コムリンクに喋りかける。
マイケル「キット、聞こえるか?」
  
○ ナイト2000車内
キット「マイケル!」
マイケルの声「今、表にいる。シャッターを開けられるか?」
キット「わかりました。やってみます」
  
○ ナイト2000のスキャナーが唸る
  
○ シャッターがゆっくりと上がり始める
  マイケル、しゃがみこんで、シャッターを潜り、駐車場の中に入って行く。
  
○ 駐車場
  柱のそばに隠れるマイケル。
  エレベータ乗り場から三人の男達が表れ、キットの周りに集まっている。
  その様子を覗いているマイケル。
  暫くして、リックが姿を表わす。その後ろについている男がリックの背中にライフルを
  突きつけている。
  マイケル、コムリンクに小声で喋りかける。
マイケル「奴らは、一体何をしてるんだ?」
キットの声「私にミサイルをセットするようです」
マイケル「ミサイル?何のために?」
キットの声「わかりません・・・」
   ×  ×  ×
  ナイト2000の後ろのバンパーの下にある砲塔に『ノスフェラトゥ』ミサイルを詰め込む男。

○ ナイト2000車内
  激しく鳴り響くパルス音と共に、ダッシュボードのモニターが映り、『MISSAILE 
  SET COMPLETION』の文字が点滅する。

○ 駐車場
  男達、リックを連れ、エレベータに向かって歩き出す。
  その様子を見ているマイケル。静かにナイト2000に近づいて行く。
   ×  ×  ×
  (時間経過)
  エレベータからリックが降りてくる。

○ ナイト2000車内
  運転席に乗り込むリック。
  暫くして、通信回線のアラームが鳴り響く。
  スピーカーからマークの声が聞こえてくる。
マークの声「リック捜査官、聞こえるか?」
リック「ああ・・・」
マーク「ミサイルの起動ボタンは、私の手元にある。念のため言っておくが、
 万が一逃げ出したりしたら、エミーは、君より一足お先にあの世に行くことになるから、
 そのつもりで」
  回線が切れる。
キット「リック、これは、どういうことです?」
リック「奴らは、マイアミ港にいる客船を乗っ取るつもりだ」
キット「なぜ、そんなことを?」
リック「乗客を人質に取って、客船を潜水艦が止まっている基地へ向かわせる気で
 いるらしい」
キット「潜水艦?」
リック「SSN21、シーウルフ。マークが新たに自分のコレクションにしようとしているものだ」
キット「まだ、潜水艦に未練があったとは・・・ 」
リック「・・・キット、ビルの中を調べてくれ」
モニターに高層ビルのイメージが映し出される。四階の断面図に熱反応が現れる。
キット「四階の部屋で人体反応をキャッチしました。二人います」
  リック、モニターをまじまじと見つめている。
マイケルの声「一匹狼の暴走も後の祭りってわけか・・・」
  リック、後ろを見つめ、唖然とする。
リック「マイケル・・・」
  後部席からマイケルが姿を表わす。
マイケル「事情は、聞かせてもらった。キット、デボンに、このビルのことを知らせろ。それと、
 警察にマーク達の計画の全容を話して、マイアミ港に向かうように伝えるんだ」
キット「わかりました」
  マイケル、リックのほうを向き、
マイケル「俺が妹さんを探している間に、君は、マークの部隊が客船に乗り込むのを阻止するんだ」
リック「わかった・・・」
  マイケル、助手席のシートを倒し、ドアを開け、外に出て行く。
  マイケルがドアを閉めようとした時、リックが声を上げる。
リック「マイケル!」
  マイケル、動きを止め、
リック「エミーを頼む・・・」
マイケル「任せとけって」
  マイケル、ドアを閉め、エレベータに向かって駆けていく。

○ 高層ビル・四階
  階段の壁の前に背中を沿わせ、立ち止まるマイケル。
  奥の通路を覗くマイケル。
  あるオフィスの前にライフルを持った男が佇んでいる。
  マイケル、口笛を鳴らす。
  男、マイケルに気づき、階段のほうに向かって歩き出す。
  ライフルを構え、階段を覗き込む男。
  その瞬間、隠れていたマイケルが姿を表わす。マイケル、ライフルの銃身を左手で掴み、
  右手で男の頬を殴りつける。
  ライフルを奪い取り、グリップで男の鳩尾突き、さらに顔を殴りつける。
  その場に倒れ込む男。
  マイケル、ライフルを持ち、通路を走り始める。

○ 地下駐車場入口のシャッターが開く
  ナイト2000がスピードを上げ、スロープを駆け登る。
  その後を5台のBMWが続き、列を作り走っている。

○ 高層ビル前・市道
  路上を走り始めるナイト2000。その後をBMWが続く。
  高層ビル群のある街並を駆け抜けて行く。

○ 同・オフィス
  部屋の片隅で縛られている若いカップル。
  扉が開き、マイケルが入ってくる。
  マイケル、壁に設置されている監視カメラに向けて、ライフルを撃つ。

○ 同・集中管理室
  コンソールの前に座っているマーク。
  モニターに、マイアミ港の海岸が映り、クイーン・エリザベス二世が映る。
  マーク、ボタンを押し、カメラの映像を切り替える。
  四階の部屋の映像が真っ黒になっている。
  怪訝に映像を見ているマーク。

○ 同・オフィス
  マイケル、二人の前でしゃがみこみ、二人の猿轡を外す。女の子に喋りかけるマイケル。
マイケル「エミーか?」
エミー「はい」
  マイケル、男に喋りかけ、
マイケル「君は?」
男「ケインです。ケイン・リード・・・」
  マイケル、唖然とした表情を浮かべる。
  マイケルの背後で物音がする。
  立ち上がり、ゆっくりと振り返るマイケル。
  シャリアが両手で銃を構え、マイケルに向けている。
マイケル「あの美声の持ち主が、武器商人の手下だったとはな」
シャリア「・・・立って、こっちを向きなさい」
  マイケル、両腕を上げながら、静かに立ち上がり、シャリアのほうを向く。
シャリア「あなたもFBIなの?」
マイケル「オペラのファンになりかけてた男さ」
シャリア「私の事を知ってるの?」
マイケル「マークの事もな。なぜ奴の言いなりになる?」
シャリア「私は、マークの力で、オペラ歌手になれたの。彼の言うことには、逆らえないわ」
マイケル「マークは、フンディングそのものだな。君もまたジークリンデを地で演じている。
 違うか?」
  シャリア、激しく動揺している。

○ ダウンタウン
  車道をゆっくりと走っているナイト2000。

○ ナイト2000車内
  アラームが鳴り響き、スピーカーからマイケルの声が聞こえてくる。
マイケルの声「リック、俺だ」
リック「マイケル!」
マイケルの声「エミーは、無事だ。ボーイフレンドも一緒だ」
リック「キット、マイアミ港に向かうぞ」
キット「スーパー追跡モードを使ってください」
  リック、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  激しい爆音を唸らせながら、猛スピードを上げ走り始める。
  
○ ナイト2000車内
  リックあまりのスピードの速さに驚き、顔を引きつらせる。
  両腕を力ませながら、ハンドルを握っている。

○ マイアミ港
  クイーン・エリザベス二世号が岸壁に接岸している。
  
○ 海岸沿いの車道を走る000と5台のBMW
  BMWの列の真っ向からナイト2000がやってくる。

○ 『EBSモード』を使い、緊急ブレーキをかけるナイト2000
  そのまま、元の姿に戻り、スピードを緩めながら、BMWに向かって
  走り続ける。 

○ ナイト2000車内
リック「キット、今度は、俺にやらせてくれないか」
キット「お好きにどうぞ」
  
○ 道の真中で滑り込みながらバリケードを張るように立ち止まるナイト2000
  走ってきたBMWがナイト2000のボディに乗り上がり、ハイジャンプ。
  そのまま車体を傾けながら路面を転がり、横転する。
  2台目のBMWも同様にジャンプし、横転し、車体をひっくり返す。
  他の3台のBMWがナイト2000の前で立ち止まり、中から一斉に男達が降りてくると、
  マシンガンを撃ち放つ。
  ナイト2000のボディに激しく当たる銃弾。
  
○ BMW車内
  運転席で車内電話の受話器を持っているビル。
ビル「ボス、FBIの奴が裏切って、俺達の邪魔を・・・」

○ 高層ビル・集中管理室
  マーク、無気味に笑みを浮かべ、
マーク「どうやら、妹は、諦めたらしいな」
  入口の扉が開き、シャリアとマイケルが入ってくる。
  マーク、振り返り、唖然とする。
マイケル「シージャック作戦は、終了だ、マーク」
  マーク、シャリアを睨み付け、
マーク「シャリア、どう言うことだ?」
シャリア「あなたがジョージを殺してから気が変わったの。もう、こんな仕事は、嫌よ・・・」
マーク「舞台に立てなくなってもいいのか?」
  動揺するシャリア。
  マーク、コンソールにあるボタンを押そうとする。 
  マイケル、透かさず拳銃を構え、マークに銃口を向ける。
マイケル「そのボタンから指を離せ、マーク」
マーク「これで、マイアミは・・・死の街に変わる」
  マークがボタンを押そうとした瞬間、マイケルが銃を撃つ。
  マークの右腕に弾丸が貫通。その場に崩れるように倒れるマーク。

○ ナイト2000車内
  『MICRO JAMMER』のボタンが光る。

○ ナイト2000のスキャナーが唸る

○ 3台のBMWの前輪タイヤが次々と破裂する

○ ナイト2000車内
  リック、『SMOKE RELEASE』のボタンを押す。

○ その場で勢い良くスピン走行を始めるナイト2000
  後ろのバンパーの下から噴出する白い煙をまき散らしながら車体をぐるぐると回転させている。
  白い煙が男達のほうにも広がって行く。
  煙を払いながら、右往左往している男達。
  ナイト2000、スピン走行から態勢を整え、ひっくり返った状態で道を塞いでいる二台の
  BMWに向かって突き進む。
  
○ ナイト2000車内
キット「ターボブーストのスイッチを押してください」
  リック、パネルのボタンを見回し、
リック「これか?」
  リック、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
  激しい衝撃がリックの体に伝わる。
  
○ タービンが激しくうなり、高く飛び上がるナイト2000
  二台のBMWの上を飛び越え、鮮やかに着地する。
  路面を滑りながら立ち止まるナイト2000
  
○ ナイト2000車内
  パトカーのサイレンが鳴り響いてくる。
キット「これで、彼らは、船には、近づけません。早くあの気持ち悪い
 ミサイルを外してください」
  リック、肩を落とし、シートにもたれると安堵の表情を浮かべる。
リック「ああ、今すぐ外してやるよ」
−ACT4 END−
  
−ACT5−
○ ホテル・ロビー(夕方)
  入口からマイケルとケイン・リードが歩いてくる。
  柱にもたれて立っているアン。ケインに気づくと、突然、走り出し、ケインの胸に飛び込んで
  行く。
ケイン「心配かけて、ごめん」
アン「気にしないで・・・」
  マイケル、微笑むと、ゆっくりとその場を立ち去って行く。
  
○ 同・駐車場
  ナイト2000の前に佇んでいるリックとエミー。
  ホテルの入口から表れるマイケル。リックのそばに近づき、立ち止まる。
マイケル「アンに手紙を送ったのは、君だろ?」
リック「シャリアが僕のところに手紙を寄越してくれたんだ」
マイケル「それで、妹さんがマークに拉致されている事を知ったのか」
リック「彼女の協力を得ながら、妹を見つけ出そうと思っていたが、マークに
 気づかれてたとは・・・」
  ナイト2000のスキャナーがうなる。
  リック、ナイト2000のほうを向き、
リック「君達のほうが一枚上手だったようだな。君とキットがいなければ、
 今頃どうなってたか・・・」
マイケル「君も相棒を持ったらどうだ?そうすれば、少しは、気楽になれる」
リック「君達のことをもっと信用するべきだった。キット、君は、命の恩人だ」
キット「どうでした?私に乗った感想は・・・ 」
リック「君は、最高の車だ。でも、残念ながら、俺には、君を使いこなせないよ」
  リック、苦笑いし、
リック「実は、コンピュータは、苦手なんだ」
  微笑むマイケル。リック、マイケルと握手を交わす。
  続けてエミーもマイケルと握手をする。
エミー「ありがとう」
マイケル「どういたしまして」
  リック、サングラスをかけると、ナイト2000の隣に止まっていたアルファ・ロメロに
  乗り込む。助手席に乗り込むエミー。
  バックし、その場を立ち去って行くアルファ・ロメロ。
  マイケル、運転席のドアを開け、ナイト2000に乗り込む。
  
○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
マイケル「新しいパートナーと別れて、寂しいか?」
キット「いいえ。あの時私が言ったことは、忘れてください」
マイケル「忘れられるもんか。あの時、かなり傷ついたんだぜ」
キット「仕方がなかったんです。あなた以上のパートナーは、いません。絶対に・・・」
マイケル「まぁ、いいさ。今回は、良く頑張った。ご褒美にプレゼントがある」
  マイケル、ジャケットのポケットからチケットを取り出し、
マイケル「オペラのチケットだ」
キット「私も生で見られるのですか?」
マイケル「おまえ用の特別席も用意してある。財団本部にな」
キット「何ですって?」
マイケル「デボンの計らいで、財団が持っている劇場で特別公演を開くことになったんだ。
 ジークムントは、俺が演じることになった」
キット「あなたが?・・・勘弁してください」
マイケル「冗談だよ」
  マイケル、笑みを浮かべ、エンジンをかける。

                                         −THE END−

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