『KNIGHT ANNIHILATION』 作 ガース「ガースのお部屋」

ACT4→ACT5<クライマックス/ラスト編>


―ACT4―
○ ナイト財団本部・デボンオフィス
  ボニーを連れ出し、部屋を出ようとするアスロー。
デボン「ボニーをどうする気だ?」
アスロー「俺たちが逃げ切るまでの間、人質になってもらう」
  銃を撃つアスロー。
  デボンの左肩に銃弾が当たる。よろけるデボン。
アスロー「警察に通報したら、この女を殺す」
  部屋を出て行く二人。

○ 同・ガーデン
  ブラックホークがゆっくりと着陸する。
  屋敷の出入口からあらわれるアスローとボニー。
ロンダ「パパ!」
  振り返るアスロー。
  出入口の扉の前に立っているロンダ。
アスロー「ママのところに帰るんだ。わかったな」
ロンダ「イヤだ!」
ボニー「ロンダ、来ちゃ駄目!」
  アスロー、ボニーと共にブラックホークのキャビン後部に乗り込む。
  トビーに声をかけるアスロー。
アスロー「早く行け!」
  操縦桿を握るトビー。
  離陸するブラックホーク。
  ホバリングしながら、高度を上げている。
  悲しい目でヘリを見つめているロンダ。
  
○ ブラックホーク・キャビン
  ボニーをベルトで縛り付けると、ガトリング砲を操作するアスロー。
  銃身が激しく回転し、射撃音が高鳴る。
  財団の建物の各階層のガラスが次々と割れて行く。シャワーのようにガラス片が辺りに降り注ぐ。
  財団本部の敷地から飛び去って行くブラックホーク。

○ 崖下
  斜面の上で立ち止まっているナイト2000。
  砂や炭や埃が入り混じって汚れているボディ。大きな歪みはない。
  ハンドルに蹲っているマイケル。
  暫くして、顔を上げる。
マイケルの声「大丈夫かキット?」
  キット、音声回路がおかしくなり、電子音交じりの乱れた声を出す。
キットの声「ええ、おそらく…」

○ ナイト2000車内
  マイケル、辺りを見回し、
マイケル「損傷箇所をチェックできるか?」
  モニターに自己診断機能の画面が映る。
キット「何とか動きました。現在チェック中です」
マイケル「通信機能は?」
キット「SPM並びにEBSに故障が見られます。走行システム系のサーキットにも一部異常が見受けられます。
 ボディに大きな損傷は、ありません。通信システムを復旧させます」
マイケル「早くしてくれ…」
  マイケル、ふと窓を覗く。
  遠くの空を飛行するブラックホークを見つける。
マイケル「あれは、ブラックホークだ…キット、そうだよな?」
キット「スキャナーにも異常が見つかりました。確認は、不可能です」
  モニターにデボン・オフィスの様子が映る。デスクに誰もいない。後ろのカーテンが外の風によって
  ゆらゆらと動いている。
マイケル「回線が復活したのか?」
キット「ええ。でも、デボンさんが…」
マイケル「デボン!俺だ。聞こえるか?」
デボンの声「マイケルか…」
  画面にフレームインしてくるデボン。
  左肩を押さえている。
マイケル「一体何があった?」
デボンの声「ボニーがアスローに捕まった。トビーが操縦するブラックホークに乗って、
 どこかへ向かった…今どこにいる?」
マイケル「俺たちも奴らの罠にはまったようだ…待ち伏せにあって、崖から転落した」
デボンの声「キットは?」
キット「私は、平気です。しかし、自力で崖をよじ登る事は、不可能です」
デボンの声「なんてこった…トレーラーは、使えないし、ボニーもいない。私の1人の力では、どうにもならん…」
  遠くからRC3の声が聞こえる。
RC3の声「俺をお忘れ?」
  画面にフレームインしてくるRC3。
マイケル「RC3!」
RC3の声「脇腹を少し痛めたけど、この通り全然平気だ。場所を教えろ。今から迎いに行く」
マイケル「おまえだけが頼りだ」

○ 上空を飛ぶブラックホーク

○ ブラックホーク・キャビン
  操縦桿を握るトビーに大きな声で話しかけているアスロー。
アスロー「金は、アリゾナの砂漠の洞窟に隠してある。このまま、南南西の方向へ進め」
トビー「面倒な事しやがって。この落とし前は、しっかりつけさせてもらうぞ」
アスロー「あの世で余生を送りたいのか?暫く口を閉じてろ」
  仏頂面のトビー。
  後部で座っているボニー。
ボニー「ロンダがかわいそうよ、アスロー。こんな事はやめて、自首しなさい」
アスロー「あの子には、こんな姿を見せたくなかった…」
  アスロー、ボニーに銃を向ける。
アスロー「着陸するまで、何も言うな」

○ ナイト財団本部・ガレージ(夜)
  ナイト2000が止まっている。
  運転席に乗り込み、システムのチェックをしているRC3。
RC3「あんな高いところから落ちたのに、この程度で済むなんて、やっぱ、おまえは、
 現代のミラクルだぜ」
キット「あなたも、あれだけの事故に遭いながら、傷ひとつないなんて。体の作りが
 どうなっているのか大変興味があります」
RC3「俺のボディは、スーパーマン並みなのさ。マイケルは、バットマンってところかな」
キット「では、私は、バットモービルですか?」
  部屋に入ってくるマイケル。
マイケル「そろそろいけそうか?」
RC3「OK、普通に走れるぐらいまでには、回復させておいた。部品が間に合わなかったから、
 SPMは、使えないぜ」
  ナイト2000のスキャナーが赤く光り、
  静かに横になびき始める。

○ ナイト2000車内
  『SURVEILLANCE MODE』のレベルゲージが発光する。
  運転席に乗り込むマイケル。
マイケル「準備は、整ったか?」
キット「主なシステムは、正常に機能しています。さっそくサベイランスモードに反応がありました」
  モニターにガレージの周囲の映像が映る。
  サーモグラフィックの映像。ガレージ横の壁の前に立っている男の姿が映る。
マイケル「侵入者か?」
キット「どうやらそのようです」
マイケル「よし、復活記念に一暴れしようぜ」
  エンジンをかけるマイケル。

○ 同・ガレージ外
  シャッターが開き、勢い良く外に出て、走り出すナイト2000。
  素早く180度ターンして立ち止まり、ガレージの横に立つ男にヘッドライトの光を浴びせる。
  思わず、手で光を遮る男。慌てて、ガレージ裏の方へ逃げ去る。
  裏で待ち構えていたRC3。男に飛び掛り、地面に押し倒す。二人、立ち上がり、暗闇の中で
  激しい取っ組み合い。男、ナイフを持ち、RC3に切りかかる。
  RC3、素早くナイフを避け、男の腕を掴んで捻り上げ、決めに顔に一発。男、その場に倒れ込む。
  マイケルがかけつける。
マイケル「大丈夫か、RC?」
RC3「朝飯前よ…晩飯まだだったな」
  マイケル、男の顔を確認する。男は、ガイである。
マイケル「ちょうど良かった。おまえと話がしたかったんだ」
  マイケル、ガイの襟首を締め上げ、
マイケル「アスロー達は、どこに行った?」
ガイ「しらねぇな」
マイケル「そうかい。とぼける気なら、こっちにも考えがある」
  ニヤッとするマイケル。

○ ガレージ・中
  ナイト2000の運転席に乗っているガイ。
  車の外に立ち、ガイの様子を見ているマイケルとRC3。
ガイ「一体何をする気だ?」
マイケル「十秒後に車内にガスが充満する」
ガイ「ガスってなんだ?」
RC3「決まってんだろ。神経ガスだ」
マイケル「あと7秒だ」
ガイ「そんな嘘っぱちにひっかかると思ってんのか?」
  ガイの足元からじわじわと白い煙が漂い始める。
  唖然とするガイ。煙を振り払い、ドアを開けようとするがロックがかかっている。
  フロントガラスやドアのガラスを激しく殴るガイ。しかし、ガラスは、微動だにしない。
  やがて、煙は、ガイの顔を覆い始める。
マイケル「あと3秒、2、1」
ガイ「アリゾナの砂漠だ。アスロー達は、そこにいる!」
マイケル「何のためにそこに行ったんだ?」
ガイ「金だ。金を取りに行ったんだ」
マイケル「何の金だ?」
ガイ「闇ブローカーに、ブラックホークを高く売りつけるために、アスローにその交渉役を頼んだ。
 しかし、奴は、ブローカーから受け取った前金の160万ドルをネコババしやがったんだ」
マイケル「金を取り戻すために、アスローのヘリを攻撃し、彼の娘を誘拐したってわけか?」
ガイ「早く開けてくれ!」
マイケル「よし、キット。もういいぞ」
  『DOOR ROCK』のボタンのランプが消える。
  ガイ、ドアを開け、素早く、外に飛び出す。
  ナイト2000の車内の煙が瞬間的に輩出される。
  車に乗り込むマイケル。
マイケル「RC、後は、頼んだぞ」
RC3「OK!」
  勢い良く走り出すナイト2000。瞬く間に走り去って行く。
  ガイ、地面に倒れたまま、蒼ざめた表情。
ガイ「ガスを浴びちまった…救急車を呼んでくれ」
RC3「大袈裟な。心配すんな。ありゃあ、ただの煙だ」
  ガイ、呆然と口を開けたまま。

○ アリゾナ・砂漠(朝)
  延々と広がる赤い大地。連なる丘の上に群生するサボテン。
  険しい山の麓にある洞窟の前に着陸しているブラックホーク。
  洞窟の中から出てくるアスロー。右手に黒いケースを持っている。
  ブラックホークの前に立っているトビーとボニー。ボニー、体と両腕を縛られたまま。
  ボニーに銃を向けているトビー。
  二人の前にやってくるアスロー。アスロー、黒いケースをトビーの前に差し出す。
  トビー、銃をしまい、ケースを確認する。
  中にドル紙幣がぎっしりと詰まっている。
  にやけるトビー。
トビー「よし、残りの金を受け取りに行くぞ」
アスロー「その必要はない」
  アスロー、短銃を出し、トビーを撃つ。轟く銃声。
  腹を撃たれ、前のめりに倒れるトビー。息絶える。
  愕然とするボニー。アスローを見つめ、
ボニー「どういうつもり?」
  アスロー、ボニーに銃を向ける。
アスロー「ヘリは、まだ売らない」
ボニー「このヘリを盗むためにトビー達を利用したのね?」
アスロー「そうだ。君には、最後までつきあってもらう」
  アスロー、ボニーの腕を掴む。
ボニー「何をするの?」
  ブラックホークを見つめるアスロー。
アスロー「こいつを使って、私の上司だったレイゼル大佐の部隊に攻撃をしかける。さぁ、乗れ」
  ボニー、アスローに無理矢理、キャビンに押し込まれる。
  操縦席に乗り込むアスロー。ヘルメットを被り、操縦桿を握る。
  エンジン機動。回転し始めるメインローター。
  遠くから轟く車のエンジン音。
  土煙を上げながら猛スピードでやってくるナイト2000。
  ナイト2000に気づくアスロー。
  キャビン後部にいるボニー、思わず声をあげる。
ボニー「マイケル、キット!」
  離陸するブラックホーク。少しずつ高度を上げていく。
  急ブレーキで立ち止まるナイト2000。

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ヘリの後部にボニーが乗っています」
マイケル「キット、マイクロジャマーでヘリを引き摺り下ろすぞ」
  モニターに自己診断システムのプログラムが映し出される。異常を示す表示とシグナルが鳴る。
キット「駄目です。マイクロジャマーは、使用不可能です」
マイケル「RC3は、何も言ってなかったぞ」
キット「おそらく、ここに着くまでの間に何らかのトラブルが起きたようです。修復できるかチェックしてみます」
  
○ 高度を上げ、南の方角へ推進し始めるブラックホーク
  ブラックホークの後を追い、砂漠の上を走行するナイト2000。
  ブラックホークとナイト2000の距離が離れて行く。
  ブラックホーク、右旋回し、ナイト2000のほうへ向かって行く。
  ブラックホークのミサイルポッドからヘルファイアミサイルが発射される。

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ミサイルです!」
マイケル、素早くハンドルを右に切り、
  『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ ハイジャンプし、ミサイルを避けるナイト2000
  地面に着弾したミサイルが大爆発する。巨大な炎が空に舞い上がる。
  勢い良く着地するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  マイケル、後ろを覗き込み、愕然としている。
マイケル「まいったな、何かヘリを止める方法はないか?」
キット「残念ながら、今のところ、有力な方法は、見当たりません」
マイケル「いや、あるぞ…キット、もう一度ヘリに近づくぞ」
  アクセルを踏み込むマイケル。
  デジタル表示のスピードメーターの数字が「100」から一気に「150」へ勢い良く上がっていく。

○ ブラックホークを追うナイト2000
  ブラックホークの真下を走るナイト2000。

○ ナイト2000車内
マイケル「キット、サンルーフを開けろ」
キット「まさか、飛び上がってヘリに乗り込むつもりですか?」
マイケル「ボニーを救うためだ。やるしかない」
キット「危険です。失敗すれば、あなたの命が…待ってください。マイクロジャマーの機能が回復しました」
マイケル「よし、うまくやってくれよ」
  マイケル、『MICRO JAMMMER』のボタンを押す。
  モニターにブラックホークのイメージが映し出されている。妨害電波が発信されている。

○ ブラックホーク・コクピット
  計器類が異常を起こしている。操縦桿が激しく振動している。アスロー、うまく操縦できず、慌てふためいている。

○ 低空でホバリングしているブラックホーク
  少しずつ、高度を下げている。
  ヘリの真下に立ち止まるナイト2000。
マイケル「よし、今がチャンスだ。うまく打ち上げてくれよ」
  『EJECT L』のボタンが発光する。

○ ナイト2000のサンルーフが開く
  シートが浮き上がり、マイケルが車内から飛び出す。
  垂直に空に飛び上がり、ブラックホークのスキッドに掴まるマイケル。スキッドをよじ登り、
  キャビン後部へ乗り込む。

○ ブラックホーク・キャビン後部
ボニー「マイケル!」
  ボニーの前に歩み寄るマイケル。
マイケル「もう大丈夫だ」
  アスロー、マイケルに短銃の銃口を向ける。
  ボニー、アスローを見つめ、
ボニー「マイケル、危ない!」
  マイケル、ボニーの声で咄嗟にアスローの左腕を両手で掴む。アスローの手から銃を奪い取り、
  顔面に一発、パンチを食らわす。
マイケル「ロンダをこれ以上傷つけるな、アスロー」
  アスロー、観念した様子で、項垂れる。
―ACT4 END―

―ACT5―
○ 新興住宅街
  ロータリーを抜けて、色とりどりの個性的な住宅が連なる通りをゆっくりと走るナイト2000。
  家の前の芝の上で遊んでいる子供達。
  二階建て、三角屋根のライトブルーの家の前に立ち止まるナイト2000。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。助手席にロンダが座っている。
マイケル「俺も一緒に行こうか?」
ロンダ「平気。1人で戻れる」
マイケル「ママとうまくやれそうか?」
ロンダ「なんとかやってみるよ。パパもそれを望んでたし。それじゃあね、キット」
キット「いつかまた会いましょう」
  ロンダ、手を振りながら車から降りる。
  ライトブルーの家の中に入って行くロンダ。
  その様子を見ているマイケル。
キット「父親があのような事になったのに…なんとも健気です」
マイケル「アスローがブラックホーク強奪計画の立案者だったとはな。トビー達は、レイゼル大佐の
 部隊を襲撃する計画までは、知らなかったようだけど…」
キット「人は見かけによらないものです。娘思いの良い父親だと思ったのに。アスローのような男に
 ロンダのような娘がいるなんて、あまりにも不整合な世の中です」
マイケル「あまり難しく考えるな。ノイローゼになるぞ。今日は良い天気だ。おまえもリフレッシュしたらどうだ?」
キット「そう言えば、ブラックホークにトレーラーを破壊されて、私の唯一の拠り所がなくなりました」
マイケル「心配するなよ。ボニーとRCがしっかり直してくれるさ」

○ 新興住宅街
  Uターンし、ゆっくりと走り去って行くナイト2000。

                                          ―THE END―

 

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