『LAST DAMAGE』 作 ガース「ガースのお部屋」
−ACT1−
○ FBI・ロサンゼルス支局・地下駐車場
巨大なコンテナつきのトレーラーが駐車スペースに止まるパトカーの間をゆっくりと走っている。
立ち止まるトレーラー。
コンテナの扉が開き、数人の警察官によって中から青いコルベット(ギャロス)が押し出されている。
駐車スペースまで押し込まれるギャロス。
ギャロスの運転席に乗り込んでいた警官Aが降りる。警官BがAに近づく。
警官B「車体の調査は、明日の午後から始めるそうだ」
警官A「じゃあ、それまで、ここに保管しておくのか?」
警官B「担当の捜査官が別件で急に来れなくなったらしい」
警官A「自分で動く車なんだろ。大丈夫か?」
警官B「メインシステムは、止まっているって話しを聞いたが」
警官A「それじゃあ、警備係を一人つけておくか」
二人、ギャロスのそばを離れて行く。
○ ギャロス車内
電子音が鳴り響き、ダッシュボードのパネルが一斉に光り始める。
○ ギャロスの前バンパーについている二本の緑色のスキャナーが光り、なびく
エンジンがかかると、ゆっくりと動き始めるギャロス。
○ ギャロス車内
センタコンソールに設置されているモニターに入口のブースの前に立っている警官の姿が映る。
パネルの『LASER』のボタンが光る。
○ ギャロスの車体の先端から緑色のレーザーが発射される
レーザーは、入口のブースに当たる。炎が上がりブースが燃えている。
そばに立っていた警官、そばにあった消火器を持ち、噴射させている。
ギャロス、その隙にブースを横切り、スロープを駆け上がって行く。
○ サンタバーバラ郊外・ラナの自宅・リビング
部屋の中央に佇むラナ・シュミット。
壁にいくつも開いている弾丸の風穴。床にガラス片やコンクリート片が散らばっている。
ラナ、面倒臭そうに深くため息をつくと、ほうきを持ち、部屋の片づけを始める。
インターホンのチャイムが鳴る。
ラナ「はい・・・」
ラナ、玄関に向かい、ドアを開ける。
○ 同・玄関前
開いた扉の隙間から顔を出し、辺りを見回すラナ。
外で遊ぶ女の子達の声はするが、辺りには、人影は見当たらない。
ラナ、小さく溜め息をつくと、ドアを閉めようとするが、家の前に止まっている青い車の気配に気づき、
そっと、また、顔を出す。
ラナ、車を見つめ、驚愕する。
家の前の脇道に止まるギャロス。無気味にスキャナーの光りをなびかせている。
ラナ「ギャロス・・・」
ギャロスの声「・・・」
ラナ「あなた・・・FBIに連れて行かれたんじゃなかったの?」
ギャロスの声「FBI?何のことだ?」
ラナ、慌てて、部屋の中に入って行く。
○ 同・リビングルーム
電話の受話器をかけ、ボタンを押し始めるラナ。受話器を耳に当てるが、何も聞こえない。
ラナ、受話器を置き、また、入口に向かう。
○ 同・玄関前
ドアを開け、ギャロスの前に行くラナ。
ラナ「うちの電話を使えなくしたわね」
ギャロス、運転席のドアを開ける。
ギャロスの声「頼みがある。一緒に来てくれ」
ラナ「一緒にって・・・どこに行くの?」
ギャロスの声「おまえの望みを叶えてやる」
ラナ、困惑した表情を浮かべる。
ギャロスの正面数十メートル先で縄跳びをしている女の子達を見つめるラナ。
ギャロスの声「何を躊躇っているのだ」
ラナ、意を決したようにギャロスを見つめ、
ラナ「わかったわ・・・」
○ ハイウェイを走行するナイト財団移動本部トレーラー
緩いカーブを通っている。
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
コンピュータの前に座り、キーボードを打っているボニー・バースト。
ボニーの背後に立ち、コーヒーを飲みながらディスプレイを見つめているマイケル・ナイト。
その後ろでバイクを磨いているRC3。
奥のテーブルに座り、携帯電話で話しをしているデボン・シャイアー。
デボン、携帯を切り、テーブルに置くと立ち上がり、マイケル達の前に近づいて行く。
デボン「例の現金輸送車襲撃事件で捕まったメイズのメンバーのジョーイ・ベイカーのことだがな。
FBIから連絡が来た」
デボンのほうに振り向く三人。
デボン「ジョーイは、二年前までヨーロッパを拠点に活動していた。スペインで起きたテロ事件にも
関与していたらしい。その時は、ELAと呼ばれるテロ組織の下で働いていた」
マイケル「ELAのメンバーだったジョーイがどうして「メイズ」のメンバーになったんだ?」
デボン「ジョーイの言い分によれば、ELA内で内部分裂が起きたそうだ。一年前、ドイツとオランダの優秀な二人の
カーエンジニアをメイズが拉致・監禁し、その二人が持つ遠隔操作技術を利用して、爆弾を積んだ
無人トラックによるテロ事件をヨーロッパ各地で起こした」
マイケル「カーエンジニア?」
デボン「オランダの技術者のほうは、半年前、イタリアの郊外で遺体で発見された。もう一人のほうは、
現在も失踪中だ」
RC3「その事件、聞いたことがある。確か、名前は、ニージェなんとかって言ってたな」
デボン「ニージェ・リッセンバーグだ。BNDが情報を集めているが、今も居所を掴めないでいる」
RC3「そんな技術があるなら、わざわざギャロスを復活させなくても良かったんじゃないの?」
ボニー「そうかしら?ギャロスのシステムと攻撃能力を知れば、どこのテロ組織だって、飛びついて
欲しがると思うわ」
デボン「ボニー、FBIの調査が済んだら、ギャロスの解体に立ち会ってくれ」
ボニー「わかりました」
デボン、踵を返し、奥の部屋に歩いて行く。
RC3「やれやれだな」
マイケル「まったくだ」
マイケル、安堵の表情を浮かべ、コーヒーを啜る。
○ 国道を失踪するギャロス
スピードを上げ、軽快に走っている。
ラナの声「ちょっとは、スピードを下げたらどう?」
○ ギャロス車内
ダッシュボードのスピードメーターのデジタル数字が160を上回り、更に上昇している。
運転席に座るラナ。不安げな表情で前を見ている。
ラナ「そんなに急いでどこに行くのよ?」
ギャロス「・・・」
ラナ「ねぇ、ギャロス・・・返事して」
ハンドルの上に設置されているLEDモジュラー。緑色の『M』状に発光する。
ギャロス「・・・私は、ギャロスではない。この車は、今、遠隔操作システムで作動している」
ラナ「じゃあ、あなたは、一体誰?」
ギャロス「それは、目的地に着いてからのお楽しみとしよう」
ラナ、動揺した面持ち。
○ ログハウス前
山間を通る道を走るギャロス。緩いカーブを突っ走り、古びたログハウスの前で立ち止まる。
○ ギャロス車内
ギャロスの声「終点だ」
ラナ「なんでこんなところに止まるの?」
ギャロスの声「車を降りて、小屋の中に入って来い」
○ ドアを開け、車から降りるラナ。
階段を上り、ログハウスの入口の扉を開ける。奥に進んで行くラナ。
奥の部屋。木椅子に座り、葉巻を燻らせている長い髪の巨漢の男を見つける。
男の両脇には、黒いスーツとサングラスをつけた金髪の男が立っている。
男の前で立ち止まるラナ。
男「我が要塞へようこそ」
ラナ「これが要塞?ふざけないで」
男「この下にギャロスを復活させた秘密の施設がある。今からそこに君を案内する」
ラナ「あなた達、ジョーイの仲間でしょ?」
男「そのジョーイが捕まったおかげで、こっちの計画に大幅な狂いが出てしまった。君には、
その責任を取ってもらう・・・」
両脇に立っていた男が一斉に短銃をラナの方に向ける。
男「紹介が遅れたな。私の名は、アルジェだ」
ラナ、観念したような面持ち。
○ 砂漠の道沿いに止まるナイト財団移動本部トレーラー(夕方)
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
RC3、バイクを磨いている。
コンピュータの周りを拭き、掃除しているボニー。
ボニー「バイクばっかり磨いてないで、掃除を手伝って」
RC3「はいよ」
RC3、口笛を拭きながらモップを持ち、床にかけ始める。
テーブルの前までモップをかけるRC3。
テーブルの下に小さな紙が落ちているのに気づき、動きを止める。
紙を拾い上げるRC3。紙は、ロトの宝くじである。
RC3「デボンのへそくりかなぁ?」
ボニー「RC、そっちが終わったら、奥の部屋もお願いね」
RC3「はいはい。お掃除大好きのRC3様がお部屋の隅々まで綺麗にしてみせますよ」
ボニー「掃除が得意なら、今度私のうちにも来てもらおうかしら・・・」
RC3「はは・・・今のは冗談。掃除は、二の次に苦手なもんで・・・」
ボニー「そのバイク、いい加減乗り換えたら。大分傷んでるんじゃないの?」
RC3「こいつは、俺の相棒なんだぜ。簡単に言わないでくれよ」
ボニー、呆れた様子でRC3を見ている。
RC3、ズボンのポケットにロトをしまい、奥の部屋へ歩いて行く。
○ 空港・滑走路
ナイト2000が走行している。
デボンの声「ありがとう、キット。助かったよ」
キットの声「どういたしまして。デトロイト市内の天候は、今晩から崩れ、降水確率60パーセントです。
傘を忘れずに」
エンジンを唸らせ立ち止まっている小型ジェット機の前に立ち止まるナイト2000。
両方のドアが開き、運転席側からマイケル、助手席側からデボンが降りてくる。
デボン「悪かったな、マイケル」
マイケル「どうせ今日は、暇なんだ。気にすることないさ」
ジェット機に向かって歩き出す二人。
デボン「エバンズとは、昨日電話で話したばかりだった。こんなに早く病状が悪化するとは・・・」
マイケル「ここ5年ぐらい会ってなかったんだって?」
デボン「ああ。若い頃から大の酒好きでな。もう十年も前から肝臓を煩っていた」
マイケル「三日ぐらい滞在してゆっくりすればいいのに」
デボン「そうはいかん。いくらでも仕事は残ってるんだ。ああ、この前君に研究所まで運んでもらった
箱のことだがな・・・」
マイケル「あの正体不明の箱のこと?」
デボン「実は、あの中身は、エバンズが開発した超小型人工衛生の部品の一部が入っていた。
昨日その実験用多目的衛生第一号が打ち上げられ、無事、軌道に乗ったが、それをコントロールする
操作盤の電源を入れるには、彼が持っているカードキーとIDが必要なんだ。エバンズが手術の前に、
私にそれを手渡したいと言ってきてな」
マイケル「部品を運ぶなんてなぜ、そんな面倒臭い事をしたんだ?」
デボン「一週間ほど前からエバンズの研究所に脅迫電話が続いていた。何者かが衛生を狙っている
可能性が出てきたんでな。だから、エバンズは、打ち上げ直前まで衛生を未完成のままにして
おきたかったんだ」
マイケル「・・・ただの見舞いじゃなかったわけね」
ジェット機に乗り込むデボン。
軽く手を降るマイケル。
ジェットの扉が締まり、滑走路を走り始める。離陸し、空の彼方に消えて行く小型ジェット機。
○ ログハウス下・地下施設ブース
全面白張りクリーンな部屋。その真中に止まっているギャロス。
運転席に座り、パネルを操作しているラナ。ハンドル下に設置されているユニット部の扉を開き、
その中に差し込まれている基盤を抜き取る。
モニターに『SYSTEM READ JUSTMENT』の文字が点滅する。
暫くして『COMPLETE』の文字が表示される。
ラナ「ギャロス、聞こえる?」
ギャロス「ここは・・・どこだ?」
ラナ「秘密の要塞の中よ」
ギャロス「・・・私は、おまえと一緒にマイケル達と戦っていたはずだ」
ラナ「そうよ。だけど、もう終わったの」
ギャロス「私達は、勝ったのか?」
ラナ「いいえ・・・また私が蘇らせたのよ」
ギャロス「・・・もう一度マイケルとキットを破壊するチャンスをくれたのか?」
ラナ、首を横に振り、
ラナ「・・・そうじゃないの。ある人にあなたを復活させるよう指示されたのよ」
ギャロス「誰にだ?」
ラナ「私も知らない・・・」
ギャロスの前に黒いスーツを着た二人の男が現れる。
ラナ、ドアを開け、車から降りる。
男達と対峙するラナ。
ラナ「メインシステムの調整は終わったわ」
部屋の入口から、グレイのスーツを着たアルジェが颯爽とやってくる。
アルジェ「ご苦労だったな、ラナ」
ラナの前に立つアルジェ。
アルジェ「部屋に来てくれ。君にやってもらう仕事を教える・・・」
○ 住宅街(夜)
並木道の続く道路をヘッドライトを照らしながら走行しているナイト2000。
連絡用のアラームが鳴り響く。
キットの声「マイケル、ボニーからです」
○ ナイト2000車内
運転席に座るマイケル。ハンドルを握りながらモニターを見つめる。
マイケル「どうした、ボニー」
モニターに移動トレーラーのコンテナの中で立っているボニーの姿が映っている。
ボニーの声「マイケル、大変よ。ギャロスがFBIの駐車場から消えたわ」
愕然とし、険しい表情を浮かべるマイケル。
マイケル「誰かが運転してギャロスを持ち出したのか?」
ボニーの声「それが、自分で動いたそうよ。駐車場の入口の警備員の目を逸らした隙に・・・」
マイケル「自己抑制回路の基盤をセットした後に、勝手に動き出す事なんてありえるのか?」
ボニーの声「あの回路は、ドライバーの命令を忠実に実行するだけのプログラムなの。
自分の意志で動き出すなんて、まず考えられないわ」
マイケル「わかった。今からFBIに行って事情を聞いてくる」
ボニーの声「デボンにも一応この事を伝えておくわね」
マイケル「いや、まだいい。友人との再会を邪魔するわけには、行かないからな。また後で連絡する」
モニターの映像が消える電子音が響く。
○ ログハウス下・地下施設ブース
黒いスーツの男がギャロスのガトリングガンに弾丸を装填している。もう一人は、ミサイルを両手に持っている。
○ ログハウス・リビング
木椅子に座るアルジェ。葉巻を銜えている。右手に持っていたコンパクトディスクを手前に
立っているラナに渡す。
ラナ、悲壮な表情を浮かべている。
アルジェ「君には、明日中に2つの仕事をやってもらう。このディスクに今回の計画のデータが入っている」
ラナ「なぜ、こんなことするのよ・・・」
アルジェ「我々の第一の目標は、この国の防衛力を麻痺させる事だ。我々の脅威を国民に植えつけるための
見せしめに過ぎん。その次は、ギャロスを使って、無差別テロを開始する」
ラナ「無理よ・・・私には無理・・・」
アルジェ「なら、ここで死んでもらうまでだ」
ラナ、泣きそうな顔をしている。
アルジェ「余計なことをしなければ、こんなことにはならなかったのにな」
ラナ、憤然とし、
ラナ「どっちみち殺すつもりなんでしょ?」
アルジェ「当初はそのつもりだったが、気が変わった。成功すれば、命だけは、助けてやる」
ラナ「信用できないわ。捕まれば、私は、刑務所行きになるのよ」
アルジェ「ギャロスが君を守ってくれるだろう。腕の良い暗殺者よりも頼りがいがある。
国外から脱出する手配は済ましてある。余生は、そこで送ればいい」
ラナ、半泣き状態。
アルジェ「君達が外に出てからの行動は、この監視追尾システムでチェックしている。
君が車から離れたり、ちょっとでもおかしなマネをすれば、手元にある自爆ボタンで
君もろともギャロスを吹っ飛ばす」
ラナ、目を瞑り、大きく息を吐く。
−ACT1 END−
−ACT2−
○ FBI・ロサンゼルス支局前
駐車場の出口から出てくるナイト2000。左に曲がり、道路を走り出す。
マイケルの声「どうだ?キット」
ナイト2000のスキャナーが唸る。
○ ナイト2000車内
キット「タイヤ跡は、200m先で跡絶えています」
ハンドルを握るマイケル。
マイケル「ギャロスが自分で動けないとなると・・・誰かが別の方法でギャロスを動かしたのかもな」
キット「ギャロスに何か他のシステムが装備されていたとでも言うのですか?」
マイケル「もしかしたら、ラナが何か知ってるかも。ラナの家に向かうぞ」
キット「了解」
アクセルを踏み込むマイケル。
○ ログハウス下・地下施設ブース
ギャロスの運転席に乗り込むラナ。
○ ギャロス車内
シートに座り、コンソールのディスク装置にディスクを差し込む。
モニターにデータが映し出され、画面が下にスクロールしている。
ギャロス「このスケジュールは、一体何だ?」
ラナ、険しい表情を浮かべ、
ラナ「もうすぐわかるわ」
ラナ、エンジンをスタートさせる。
シフトをドライブに入れ、アクセルを踏み込む。
○ 洞窟内の通路に向かって走り出すギャロス。
○ ラナの自宅前
道路脇に止まるナイト2000。
扉が開き、マイケルが降りてくる。
マイケル、玄関のドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。しかし、何の応答もない。
怪訝な表情を浮かべるマイケル。
マイケル、振り返り、ナイト2000を見つめ、
マイケル「キット、中に人がいるか確かめてくれ」
○ ナイト2000のスキャナーが唸る
○ ナイト2000車内
モニターにラナの自宅の間取り図が映し出される。
キット「人体反応はありません」
○ ラナの自宅前
マイケル、諦めた表情でドアから離れ、早歩きでナイト2000の元に戻る。
○ ナイト2000車内
運転席に乗り込むマイケル。
マイケル「仕方ない。ラナのことは、RCに調べてもらうとして、俺達は、FBIに行くぞ」
キット「ジョーイから情報を聞き出すつもりですか?」
マイケル「その通りだ」
マイケル、エンジンをスタートさせる。
○ ラナの自宅前
走り去って行くナイト2000。
○ 暗闇の山道を失踪するギャロス(深夜)
ヘッドライトと緑色のスキャナーが無気味に光っている。
○ ギャロス車内
スピードメーターが450マイルを超えている。
寡黙に運転しているラナ。
ギャロス「なぜ一言も喋らないのだランヌ」
ラナ、重い口を開く。
ラナ「・・・私の本当の名前は、ラナって言うの」
ギャロス「久しぶりに声を聞いた」
ラナ「ねぇ、ギャロス。私のこと、恨んでる?」
ギャロス「おまえは、再び私に自由を与えてくれた。窮屈なユニットボックスに閉じ込めらたままでは、
マイケル達と対決する事もできないしな」
ラナ「まだ、諦めてないのね」
ギャロス「奴らを誘い出す。おまえも協力してくれ」
ラナ「気持ちはわかるけど、今は、無理よ。私達には、別の目的があるの」
ギャロス「別の目的とは、なんだ?」
ラナ「もう少ししたら話すわ。それまで黙っててちょうだい」
ギャロス「・・・」
○ FBI・ロサンゼルス支局・接見室(深夜)
ガラスで仕切られた机の前に座っているマイケル。ガラスの向こうの部屋のドアが開く。
捜査官の男と共に、ジョーイ・ベイカーが入ってくる。
ジョーイ、椅子に座り、マイケルと対峙する。
マイケル、捜査官に軽く会釈する。捜査官、頷くと、部屋を出て行く。
マイケル「俺は、マイケル・ナイト。ナイト財団で働いているものだ」
ジョーイ、マイケルの顔をまじまじと見つめ、無気味な笑い声を上げる。
ジョーイ「おまえがマイケルか。あいつの言ってた通りだ。気味が悪いくらいよく似てやがる・・・」
マイケル「ガースのことを知ってるのか?」
ジョーイ「ギャロスのことで、あいつと一度交渉したことがある。檻から抜け出してきたかと思ったぜ」
マイケル「そのギャロスの事で2、3聞きたい事がある」
ジョーイ「あの車は、解体されたって聞いたぜ」
マイケル「いいや。警察の駐車場から自分で逃げ出したんだ。今、行方を探しているところだ」
ジョーイ、失笑し、
ジョーイ「FBIの間抜け、自分達の失態を隠してやがったのか」
マイケル「あの車のメインコンピュータは、俺が止めた。だから、ギャロスが
自分の意志で動けるはずはないんだ。ギャロスのシステムに何か別の細工をしたのか?」
ジョーイ、惚けた表情を浮かべ、寡黙になる。
マイケル「実は、行方不明になっているのは、ギャロスだけじゃない。
君の友人のラナもまた姿を消してしまった」
ジョーイ、一瞬顔を強ばらせるが、すぐに顔を俯け、
ジョーイ「あんな女、友人でもなんでもない」
マイケル「昨日の夕方、ラナが自宅を出て、青いスポーツカーに乗って走って行くのを近隣の人が目撃してる」
ジョーイ、少し動揺した面持ち。
マイケル「『メイズ』がまた彼女を利用しようとしてるんじゃないのか?」
ジョーイ「・・・」
マイケル「彼女は、おまえを助けようとしてギャロスの再生に手を貸したんだぞ。
逆恨みするのもいい加減にしろ」
ジョーイ、重々しく口を開く。
ジョーイ「・・・あの車には、遠隔装置が組み込まれてる」
マイケル「おまえ達が拉致したカーエンジニアが作ったものか?」
ジョーイ「ああ。おそらく、誰かがそれを使ってギャロスを動かしたんだろう」
マイケル「メイズは、一体何を企んでるんだ?」
ジョーイ「さぁな・・・知る前に捕まっちまったからな」
マイケル「奴らのアジトはどこだ?」
ジョーイ「生憎、この国に来てからボスとは、別行動なんだ。捕まった時のために
お互いの居場所を秘密にした」
マイケル「とぼけるな。ナンバー2のおまえが知らないはずがない」
ジョーイ「じゃあ、嘘発見機でもなんでもかけてみな」
マイケル、深くため息をつく。
○ ログハウス・地下・監視室
監視用のコンピュータマシーンが置かれている。マシーンの前にオペレータの男が座っている。
巨大なスクリーンにデトロイト市内の地図が映っている。
スクリーンの前に立っているアルジェ。
青く発光するランプをまじまじと見つめている。
アルジェ「到着したようだな」
○ デトロイト市内・総合病院3F・ICU
ベッドに眠る白髪の薄い髪をした初老の男・アルメイド・エバンズ。
ビニールマスクをつけ、酸素吸入を受けている。
そのそばにいるデボン。丸椅子に座り、エバンズの様子を窺っている。
うっすらと目を開けるエバンズ。デボンに気づく。
デボン「気がついたか」
エバンズ「いつからそこにいた?」
デボン「昨夜からだよ」
エバンズ「待たして済まなかった。もう再起不能だと諦めていたところだ」
デボン「何を言ってるんだ。二時間後に手術だ」
エバンズ「カードキーは、私の靴の中に仕込んである。耳を貸してくれ」
デボン、エバンズの口元に耳を近づける。
○ ハイウェイを走行するナイト財団移動本部トレーラー(朝)
朝陽を受けながら、走っている。
RC3の声「まずいぜ、マイケル。一体どうするつもりなんだ?」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
止まっているナイト2000の前で対峙しているマイケルとRC3。
マイケル「キット、ギャロスを誘き出す時に使った信号をもう一度送信してくれ」
キット「やってみますが、ギャロスのメインシステムが機能していなければ、意味がありません」
マイケル「メイズは、わざわざ、スクラップ場を探し回ってまでしてギャロスを復活させたんだぜ。
メインシステムを切り離すなんて事は考えないはずだ」
キット「わかりました」
RC3「向こうからの反応を気長に待ってるつもりなのか?」
マイケル「何もやらないよりは、マシだろ?」
奥のテーブルからボニーが携帯電話を持ってマイケル達の前にやってくる。
ボニー「マイケル、デボンからよ」
携帯を手渡されるマイケル。神妙な面持ちで電話に出る。
マイケル「俺だ」
○ デトロイト市内・総合病院3F・待合室
電話機の前に立っているデボン。受話器を持ち、話している。
デボン「エバンズからカードキーを受け取った。私は、今からエバンズの研究所に行く」
× × ×
マイケル「デボン、実は、悪い知らせがある。ギャロスがFBIのビルから逃げ出した。ラナを連れて・・・」
× × ×
デボン、眉間に皺を寄せ深刻そうな表情
デボン「そうか・・・わかった。できるだけ早くそっちに戻る」
受話器を置くデボン。電話機の前を離れて行く。
3つあるエレベータ。真中のエレベータの前に立つデボン。扉が開き、中に乗り込む。
ドアが閉まると同時に右隣のエレベータのドアが開く。中から数人の医師が出て行った後、
ラナが姿を現す。
ラナ、ナースステーションの前に行き、看護婦と話をしている。
○ 同・玄関前
デボンが表に出てくる。駐車場の前の通りの脇道に止まっている黄色いタクシーの
後部席に乗り込むデボン。ドアが閉まると、走り出すタクシー。
駐車場の最前列のスペースに止まっているギャロス。二本のスキャナーを光らせ、
無気味な音を立てている。ギャロスの前を横切っていくタクシー。
暫くして、ラナが表に出てくる。
ラナ、駆け足でギャロスに近づいて行く。
○ ギャロス車内
運転席に乗り込むラナ。
ラナ「アルジェ、聞こえる」
ギャロスのモジュラーインジケータにアルジェの声が割り込んでくる。
アルジェ「私だ」
ラナ「博士は、昨日倒れて病院に運ばれたの。今手術中よ。とても、情報を聞き出せる状態じゃないわ・・・」
アルジェ「・・・仕方がない。そっちは後回しだ。次の計画に移れ」
ラナ「・・・」
○ 病院の駐車場から出て行くギャロス
○ ギャロス車内
ハンドルを握るラナ。
ギャロス「また何者かが私に割り込んできた」
ラナ「バークレーに向かうわよ」
ギャロス「その前にやっておきたいことがある」
ラナ「何?」
ギャロス、『AUTO DRIVE』の表示を点灯させる。
ラナ「ギャロス、こんな時に何してるのよ、やめて!」
○ ビル街・国道
二車線の道路。左側のレーンを疾走するタクシー。
後部席に座るデボン。
タクシーの後方からギャロスがゆっくりと迫ってくる。
○ ギャロス車内
ラナ「何をする気なの?」
ギャロス「さっき面白い奴と出会った。挨拶代りに良いものをプレゼントしてやる」
ダッシュボードのパネルの『LASER』のボタンが光る。
○ ギャロスのボディの先端部から緑色のレーザーが発射される
レーザーは、タクシーのトランクに命中する。トランクのドアが吹っ飛び、火柱が上がる。
ギャロス、スピードを上げ、タクシーの横を走る。
○ タクシー車内
リアガラスを覗き込むデボン。炎が上がっているのに気づき、
デボン「後ろが燃えてる!止めてくれ!」
デボン、ドア窓を見つめ、隣のレーンにギャロスが走っているのに気づき、驚愕する。
デボン、ギャロスの運転席のほうをまじまじと見ている。
ギャロス、スピードを上げ、その場を立ち去って行く。
○ 国道
脇道に止まるタクシー。
運転手とデボンが慌てて、車から降りている。と同時に、タクシーが炎上する。
歩道に佇み呆然とするデボン。
走り去って行くギャロスを見つめている。
−ACT2 END−
−ACT3−
○ 国道を走行するナイト財団移動本部トレーラー
コンテナの入口からバックで出てくるナイト2000。
道路に下りると、180度ターンし、トレーラーと逆方向に走り出す。
○ ナイト2000車内
通信のアラームが鳴り響く。
キット「マイケル、専用回線から連絡が入っています」
マイケル「つなげてくれ」
スピーカーからデボンの声が聞こえる。
デボンの声「私だ」
マイケル「どうした、デボン」
デボンの声「今さっきギャロスを見かけた」
マイケル、唖然とする。
マイケル「なんだって?」
デボンの声「私の乗ってたタクシーを襲ってきた。生憎、炎上する前に何とか脱出できたがな」
マイケル「怪我はなかったのか?」
デボンの声「ああ、大丈夫だ」
キット「メイズの狙いは、私達なのでしょうか?・・・」
マイケル「でも、なぜデボンだけが狙われたんだ?それにギャロスは、どうやって、
デボンの居所を掴んだ?」
デボンの声「私にも見当がつかんよ」
マイケル「俺達も今からそっちに行く。キット、デトロイトまでの最短ルートだ」
キット「わかりました」
○ 交差点を勢い良く曲がるナイト2000
スピードを上げている。
○ バークレー・カリフォルニア大学付近道路
ギャロスが疾走している。
手前の交差点の信号が赤に変わる。
交差点の前で立ち止まるギャロス。
○ ギャロス車内
ギャロスのモジュラーにノイズが走る。
ギャロス「アルジェだ。実行時間は、わかっているな」
ラナ「12時になるまで、おとなしく待機してればいいんでしょ?トイレにも行っちゃ駄目なの?」
ギャロス「構わない。そこには、我々のメンバーも到着済みだ。君の行動は、彼らが常に監視している」
ラナ、ドアミラーを見つめる。
後ろに止まる車を挟んでさらにその後ろに止まるシルバーのBMWが映っている。
運転席にいる黒いスーツにサングラスの男がこちらの様子をまじまじと見つめている。
ラナ、苦しそう表情。胸に手を当て、激しく呼吸している。
信号が青に変わる。
ラナ、ハンドルにもたれる。
クラクションが鳴り響く。
ギャロス「どうした、ラナ?」
ラナ「・・・悪いけど、運転 お願い。気分が悪くなったの」
メーターパネルの『AUTO DRIVE』のゲージが青く光る。
○ 交差点を走り出すギャロス
ギャロスの後ろに止まっていた車も一斉に走り出す。
脇道の駐車の列の中に入り立ち止まるギャロス。
○ ギャロス車内
ハンドルにうずくまり、目を瞑っているラナ。暫くして、顔を上げ、
ラナ「ギャロス、時間を教えて・・・」
ギャロス「午前11時25分・・・」
ラナ、溜め息を吐き、
ラナ「ありがとう・・・」
ギャロス「4時間程前から私に信号送りつけている奴らがいる。どうやら、私を探しているようだ」
ラナ「マイケル達からなの?」
ギャロス「近くにいるようだ。丁度良い。誘い出して、粉々にしてやる」
ラナ「無視して。あなたに計画の事を話すわ・・・」
ギャロス「・・・」
○ カリフォルニア大学付近道路
交差点を曲がり、ギャロスの前に近づいてくるパトカー。
パトカーの助手席に座っている警官、ギャロスに気づき、運転席の警官に声をかけている。
パトカー、スピードを落とし、ゆっくりとギャロスのそばを横切る。
助手席の警官が怪訝な表情でギャロスの車内を覗き込んでいる。
ラナ、警官と顔を合わせず、ずっと正面を向いたまま。
パトカー、脇道に立ち止まる。
助手席の警官が車から降り、ギャロスに向かって歩いてくる。
○ ギャロス車内
ラナ「・・・まずいわ」
ギャロス「ガトリングガンで攻撃するか?」
ラナ「駄目。騒ぎになるわ。何か気を逸らす方法を考えないと・・・」
ギャロス「では、こう言うのは、どうだ?」
○ ギャロスのスキャナーが無気味に唸る
ギャロスの前を通り過ぎたセダンの車の前輪が突然パンクし、脇道に止まっていた
トラックに前から激突する。
警官、踵を返し、事故現場に向かって駆け足する。
ギャロス、その間にゆっくりと動き出し、交差点を曲がり姿を消す。
○ 砂漠の道を猛スピードで走行しているナイト2000
マイケルの声「信号のほうは、何か反応あったか?」
○ ナイト2000車内
キット「いいえ。やはり、ギャロスのメインシステムは、止まったままで、ラナが運転しているの
ではないでしょうか・・・」
ハンドルを握っているマイケル。
マイケル「じゃあ、デボンを襲ったのは、ラナだって言いたいのか?」
キット「メイズに指示され、やむを得ずやった可能性も考えられます」
マイケル、苛立っている。
キット「落ち着いてください、マイケル。今、FBIの通信回線の情報を傍受しました。それによると、
サクラメント市内でギャロスの目撃情報が入ったようです」
マイケル「奴は、今朝までデトロイトにいたんだぜ?」
キット「ギャロスの走行能力なら、1時間でカリフォルニアまで戻れます」
マイケル、ため息をつき、
マイケル「逆戻りだ、キット」
○ 急ブレーキをかけ、180度ターンするナイト2000
そのまま、逆方向へ走り出す。
○ ナイト2000車内
通信のアラームが鳴り響く。
キット「マイケル、デボンさんからです」
○ ミシガン州近郊・エバンズ宇宙開発研究所・一階休憩室
電話機の前に立つデボン。受話器を右手に持っている。
デボン「今、エバンズの研究所にいる。彼から受け取ったカードキーとIDでコントロールシステムを
作動させたところだ」
○ ナイト2000車内
デボンの声「これから衛生の運用テストを開始する。それで、こっちにはいつ着くんだ?」
マイケル「それが、奴は、カリフォルニアに戻ってきているらしい」
デボンの声「何だと?」
マイケル、咄嗟に何かに閃き、
マイケル「デボン。エバンズの超小型衛生には、地上を撮影できる能力はないのか?」
デボンの声「分解能10cmの高解像度カメラが搭載されているが、それがどうかしたのか?」
マイケル「それを使って、カリフォルニア全域の撮影をするのに、どれくらい時間がかかる?」
デボンの声「まさか、それでギャロスを見つけ出すつもりか?」
マイケル「カメラの精度を試すには、絶好の条件だろ?」
デボンの声「カリフォルニア州限定なら、おそらく一時間程度で撮影可能のはずだが、
軌道に乗って間もない衛生だ。確実にギャロスを捉えることができるかは、まだ保障できんぞ」
マイケル「構わない。撮影した写真のデータをリアルタイムでキットに送信して欲しいんだ」
デボンの声「研究チームと相談してくる。十分ほど時間をくれ」
マイケル「なるべく早く頼む・・・」
○ カリフォルニア大学・ホール前
たくさんの学生達が集まっている。その合間を国防長官とその取り巻き達が潜り抜けている。
乱れ飛ぶ歓声。国防長官、機嫌良く笑顔で腕を高く上げ、手を降りながら、止まっている
黒いリムジンに向かってゆっくりと歩いている。
リムジンの後部席に乗り込む国防長官。
護衛のパトカーを先頭に走り出すリムジン。
キャンパスに立っているセイザータワーの時計台。12時3分を指している。
○ 市街を走るナイト2000
○ ナイト2000車内
モニターに映る衛生写真をまじまじと見つめているマイケル
キット「ネバダ、ロサンゼルス全域の写真データを取得しました」
マイケル「サンフランシスコ付近のサーチは、終わったか?」
キット「はい。結果をモニターのほうに出力します。青いコルベットらしき車が映っていたのは、合計62台です」
モニターに映る写真。次々と切り替わって行く。
マイケル、ある写真を見つめ、
マイケル「さっきの写真を見せてくれ」
大学の講堂付近の道に止まる青いコルベットの屋根がくっきりと映っている。
マイケル「撮影時間は?」
キット「11時39分48秒頃に撮られたものです」
マイケル「バークレーか。中心に映ってるのは、大学か。ホールの前にやけに人が集まってるな。
キット、カリフォルニア大の今日のスケジュールを調べてくれ。ホールで一体何が行われているんだ?」
モニターにスケジュールデータが映し出される。
キット「午前十一時からマックスウェル国防長官の訪問記念特別講演会が開かれています」
マイケル「国防長官?」
キット「マックスウェルは、カリフォルニア大の出身です」
マイケル「講演会の終了時間は?」
キット「12時です」
マイケル「国防長官のこれからの予定は?」
キット「12時半に空港に到着し、そのまま国防総省に戻る予定になっています」
マイケル「メイズの狙いがわかったぞ。キット、国防長官の乗った車の位置とルートを割り出してくれ」
キット「わかりました」
マイケル「スーパーモードで行くぞ」
マイケル『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。
○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
激しく鳴り響くエンジン音。猛スピードで市道を走り始める。
○ 国道を進むリムジンの列
二台の白バイを先頭にパトカー、その後ろに二台のリムジン、パトカーと続いている。
進むリムジンの列の数キロメートル前方の交差点からギャロスが現れる。
ギャロス、スピードを上げ、リムジンの列に勢い良く突き進む。
○ ギャロス車内
ハンドルを握るラナ。
ラナ「ギャロス、ミサイルを用意して」
ギャロス「ターゲットは?」
ラナ「前方の黒いリムジン・・・」
○ ギャロスの左側のリア・フェンダーの格納庫からガトリングガンとミサイル発射台が出てくる
○ ギャロス車内
ラナ、『MISSILE』のボタンに指を置くが目を瞑り、躊躇っている。
ギャロス「見てみろ、ラナ。奴らがやってきた」
ラナ、目を開き、前方を見つめる。
リムジンの列を一瞬で横切り、列の前に周り込むナイト2000。
緊急ブレーキシステムを作動させ、立ち止まる。
一斉に立ち止まるリムジンの列の車両。
ラナ、唖然とし、
ラナ「マイケル・・・」
○ ナイト2000車内
助手席の窓側に白バイ警官がやってくる。
マイケル、窓を開け、警官と顔を合わす。
マイケル「緊急事態だ。別ルートを使って、空港に向かってくれ」
警官「緊急事態って何のことだ?」
マイケル、こちらに向かってくるギャロスを指差し、
マイケル「あの車は、武器を搭載している。国防長官の命を狙ってるんだ、早く!」
警官「わかった・・・」
○ ギャロス車内
ラナ、ブレーキを踏み込む。
○ 道の真中で急停止するギャロス
○ ギャロス車内
フロントガラス越しにリムジンの列がUターンして行くのが見える。
ギャロス「アルジェだ。何をしている。ターゲットが離れていくぞ」
ラナ「ナイト財団の車が現れたのよ」
ギャロス「・・・では、その車もついでに破壊してしまえ」
息を飲むラナ。
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ラナを確認しました」
マイケル、ボタンを押し、スーパー追跡モードを解除する。
音を立て、元の姿に戻るナイト2000。
マイケル、何も言わず、アクセルを踏み込む。
○ ギャロスの元へ近づいて行くナイト2000
100m手前で立ち止まり、向かい合うギャロスとナイト2000。
ナイト2000のスピーカーからマイケルの声が聞こえ始める。
マイケルの声「聞こえるか、ラナ。君を助けたい」
ギャロスのスピーカーからラナの声が聞こえる。
ラナの声「ギャロスに近づかないで」
○ ギャロス車内
ギャロス「余計なことをすれば、自爆スイッチを押すと言っただろ?さっさとミサイルを撃て!」
ラナ、目を瞑り、
ラナ「ごめんなさい、マイケル!」
ラナ、『MISSILE』のボタンを押す。
○ ギャロスのミサイル台からミサイルが発射される
白い煙を上げ、一瞬でナイト2000のボンネットに着弾。巨大な爆発音が響き、ナイト2000の
ボディがオレンジ色の炎に包まれる。
−ACT3 END−
−ACT4−
○ ナイト2000のボディが燃え滾っている
○ ギャロス車内
ラナ、ハンドルを力一杯握り締め、顔を俯けている。
ギャロス「キットが燃えている・・・ラナ、おまえがやったのか?」
ラナ「ギャロス・・・さっきのリムジンを追って(怒号を上げ)早く!」
○ ギャロス、ナイト2000のそばを横切り、走り去って行く
○ ナイト2000車内
シートにもたれ、意識朦朧としているマイケル。
キット「・・・マイケル、しっかりしてください」
マイケル、うっすらと目を開け、
マイケル「・・・おまえは大丈夫か?」
キット「スキャナー及び方位監視システム、自己診断回路も数カ所故障しました。
スーパー追跡モードも使用不可能です」
マイケル、起き上がり、首を振っている。
マイケル「あんな至近距離からミサイルをまともに受けたのは、今回が初めてだ。ギャロスは?」
キット「国防長官の車を追っています」
マイケル「俺達も追うぞ」
○ 180度ターンするナイト2000
炎が沈下し、白い煙に包まれながら走り出す。
○ 空港前・道路
交差点を曲がり、特別進入口を潜るリムジンの列。列の車両が潜り終わると、
警備員達によってゲートが閉められる。
暫くして、ギャロスが猛烈なエンジンを響かせながら、交差点をドリフト気味に曲がり、
走ってくる。
閉じられたゲートのフェンスに向かって勢い良く突っ走るギャロス。
ギャロス、フェンスを突き破り、滑走路に入って行く。
○ 空港・滑走路
スピードを上げているリムジンの列。
待機している専用機の前に近づいてくる。
リムジンの列を追って勢い良く走っているギャロス
○ ギャロス車内
ラナ、涙を浮かべ泣いている。
ギャロス「どうした、ラナ?」
ラナ、涙を手で拭い、
ラナ「だって、マイケルを・・・殺してしまったのよ・・・」
ギャロス「奴らなら、後ろにいる」
ラナ、唖然とし、後ろを振り向く。
ナイト2000がゲートを潜り、滑走路を走り始めている。
ラナ、笑みを浮かべ、
ラナ「生きてたのね・・・」
ギャロス、突然、ブレーキをかける。
ラナ、その反動でハンドルに頭を打つ。
○ ギャロス、180度ターンする
ナイト2000に向かって突進して行くギャロス。
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ギャロスがこちらにやってきます」
マイケル「ギャロスの動きを封じ込める絶好のチャンスだ。キット、レーザーの出力レベルを
最大にして、ギャロスのタイヤを狙うぞ」
キット「先程のダメージでパワーパックにも損傷を受けています。高出力のレーザーを使うなら、
一度しか打てません」
マイケル「一回切りか」
マイケル、モニターを見つめる。モニターにギャロスの右前輪のアップ映像が映し
出されている。ターゲット捕捉の表示が点滅する。
マイケル『LASER』のボタンを押す。
○ ナイト2000の先端部から青色のレーザーが発射される
光線は、ギャロスの右前輪をかすり、そのまま路面の方に外れる。
○ ナイト2000車内
キット「外れました」
マイケル「(歯を食いしばり)クソ!」
ギャロスがすぐ目の前に近づいている。
ギャロスの先端部からレーザーが発射される。
ボンネットにレーザーを受け、火花を上げるナイト2000。
マイケル、苦渋の表情で『TURBO BOOST』のボタンを押す。
○ ナイト2000の車体が浮き上がる
ジェットタービンの爆音を唸らしながら、ジャンプするナイト2000。
ギャロスの頭上を飛び越える。
鮮やかに着地するナイト2000。
ナイト2000、180度ターンし、ギャロスに向かって走り出す。
ギャロスも180度ターンし、ナイト2000の方へ突き進む。
ギャロスの声「キット、今日がおまえの命日だ。最後の言葉を記録してやるから、何か喋れ」
キットの声「ギャロス、おまえとは、もう戦いたくない。おとなしく私達の言う事に従うんだ」
ギャロスの声「降伏宣言か?では、今すぐあの世に送ってやる」
ギャロス、さらにレーザーを撃つ。
○ ナイト2000車内
フロントガラスにレーザーが当たり、火花が飛び散る。
マイケル、目を細め、歯を食いしばる。
キット「もうボディが持ち堪えられません。後一発撃たれたら、終わりです」
マイケル「何を弱気になってるんだ、キット!」
キット「しかし、このままでは、私達に勝ち目はありません・・・」
○ ギャロス車内
ラナ「マイケル達の相手してる場合じゃないわ。国防長官の飛行機が離陸してしまう」
ギャロス「関係ない」
ラナ「言ってなかったけど、失敗すれば、あなたは、爆破されてしまうのよ」
ギャロス「・・・心配するな、すぐに終わる」
○ ギャロスの発射台からミサイルが発射される
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ミサイルです」
マイケル、『SKI MODE』のボタンを押す。
○ 車体の左側を浮かせ、片輪走行を始めるナイト2000
飛んできたミサイルがナイト2000の浮いた車体の下側を擦り抜け、
そのまま、管制塔の建物のほうに向かって飛んで行く。
○ 空港・管制塔
一階のコンクリート部分にミサイルが落ち、巨大な爆炎を上げている。
○ 同・3F司令センター
管制ルームのコンピュータがあちこちでショートし、火花を上げている。
機械の前にいたオペレータ達がコンピュータから離れ、慌ただしく逃げ回っている。
○ ナイト2000車内
管制塔の様子を見つめ、呆然とするマイケル。
マイケル「やばいぞ、こりゃあ」
前方からギャロスが迫ってくる。
○ 前から激しくぶつかり合うナイト2000とギャロス
反動で、互いに車体を激しくスピンさせるナイト2000とギャロス。
○ ギャロス車内
回転する車体に揺さぶられ、悲鳴を上げているラナ。
○ ナイト2000車内
マイケル、大きく回転している車体の重圧に耐えながら、
マイケル「キット、オイルをばらまけ!」
ダッシュボードのパネルの『OIL』ボタンが緑色に光る。
○ ナイト2000の後部からオイルが噴射する。
路面に広がって行くオイル。
回転が収まり、走り出すギャロス。
ギャロス、リムジンの止まる方向へスピードを上げ、走り始める。
その前をナイト2000が横切る。
オイルの上を走ったギャロスが路面を滑り始める。
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、パワーパックの機能が回復しました。しかし、エネルギーが完全ではないので、
あと一回しか打つことができません」
マイケル「最後のチャンスにかけるしかない!」
○ ナイト2000、スピンターンして、ギャロスの方に向かってを立ち止まる
ナイト2000の先端部からレーザーが発射される。
レーザーは、スリップして立ち往生しているギャロスの左前輪を貫通する。
大きな破裂音がし、ホイールが吹き飛ばされ、タイヤがみるみる縮み始める。
○ ギャロス車内
ギャロス「アルジェだ。何を手間取っている!」
ラナ「タイヤを撃たれたみたい・・・」
ラナ、ふと、リムジンの止まっているほうを見つめる。
専用機が動き出す。スピードを上げ、離陸体制に入っている。
ギャロス「ミサイルだ、ラナ。早く撃て!」
ラナが『MISSILE』のボタンを押そうとした時、『LOOF L』のボタンが光る。
○ ギャロスのルーフが開く
運転席のシートから空高く飛び上がるラナ。路面に転がり落ちる。
ナイト2000がラナの前に近づき、ラナを囲うようにして立ち止まる。助手席のドアが開く。
マイケル「早く乗って!」
ラナ、立ち上がろうとするが、苦痛の表情を浮かべる。左膝を手で押さえ、動けずにいる。
マイケル、車から降り、助手側に回り込むと、ラナを抱き上げ、助手席に乗せる。
○ ナイト2000車内
運転席に乗り込むマイケル。
ラナ「早くギャロスから離れて!爆発するわ」
マイケル「どう言うことだ?」
ラナ「私が車から離れたら、アルジェが自爆装置を押すことになってるのよ」
マイケル、シフトレバーをバックに入れる。
○ スピードを上げ、バックするナイト2000
暫くして、ギャロスの車内から爆炎が上がる。
巨大な炎を上げるギャロス。
ナイト2000、ギャロスから300m離れたところで立ち止まる。
車内でギャロスの様子を見守るマイケルとラナ。
また、大きな爆炎と共に、ギャロスから巨大な炎が上がる。
炎に包まれたギャロスがゆっくりと動き始め、ナイト2000に迫っている。
二本のスキャナーのうち、右側のスキャナーだけが微かに光り、動いている。
○ ナイト2000車内
ラナ「ギャロス・・・」
マイケル「奴は、まだ生きてる・・・」
ラナ、呆然とギャロスを見つめている。
○ 炎を上げながらゆっくりとナイト2000に近づいているギャロス
ギャロスの声「私は、永遠に生き続ける・・・キット・・・」
ギャロスの車体の先端部から緑色のレーザーが発射される。
ナイト2000のボディにレーザーが当たる。ボンネットに火花が飛び散る。
○ ナイト2000車内
マイケル「大丈夫か?キット」
キット「レーザーのパワーは、落ちています。大したダメージはありません」
フロントガラス越しに見えるギャロスの動きが止まる。
○ メラメラと燃えるギャロスの車体
ギャロスの声「おまえを破壊するまで・・・(音声にノイズが走り、声が見る見る
変調していく)破壊するまで・・・」
右側のスキャナーの光りが静かに消える。
炎で黒く変色して行くギャロスのボディ。
○ ナイト2000車内
ラナ「ギャロスは、私を助けてくれたんだわ・・・」
マイケル「どう言う事だ?」
ラナ「国防長官の飛行機にミサイルを撃とうとした瞬間、突然シートが動き出したのよ」
マイケル「・・・ギャロスは、自爆させられるのをわかっていて君を脱出させたってわけか」
ラナ、悲しげにギャロスを見つめている。
○ ログハウス・地下監視室
監視用マシーンのモニターを見つめているアルジェ。
オペレーターの男「爆破完了しました。それにしてももったいない。
まだ利用価値があったんじゃあ?」
アルジェ「足がついては困るんでな。だが技術は習得した」
アルジェ、足元に置いていたアルミケースを持ち、男に見せつける。
アルジェ「ここも危険だ。準備を始めろ」
オペレーターの男「しかし・・・」
アルジェ「計画は、必ず成功させる」
アルジェ、入り口のドアに向かって、歩き出す。
その後ろを黒いスーツを着た二人の男が追っている。
○ 山道を猛スピードで走るナイト2000
マイケルの声「デトロイトには、何しに行ったんだ?」
○ ナイト2000車内
ラナ「ギャロスを使ってアルメイド・エバンズ博士が開発した多目的衛星を
奪う計画だったの。でも、操作盤を動かすのにカードキーが必要だと
わかって、直接エバンズから情報を得ようとしたけど、駄目だった」
キット「すると、初めからデボンさんを狙ったわけじゃなかったんですね」
ラナ「ギャロスが挨拶代わりにって、彼の乗ったタクシーを攻撃したの」
マイケル「メイズの親玉の事だけど・・・」
ラナ「アルジェって男よ。でも変ね。あの顔、どこかで見たことがあるのよ・・・」
マイケル「思い出せないか?」
ラナ「今は、無理みたい・・・」
マイケル「まぁ、いい。キット、目的地まで後どれくらいだ?」
キット「10分です。スーパー追跡モードが使えれば、もうとっくに到着していたと思う
のですが・・・」
マイケル「FBIと特殊部隊の到着も後15分は、かかる。なんとか俺達で食い止めないと・・・」
ラナ、憂いの表情を浮かべている。
○ 山道
トンネルを潜るナイト2000。
○ トンネル内
ブレーキをかけ立ち止まるナイト2000。
○ ナイト2000車内
ラナ「おかしいわ・・・確かにこの中に、地下施設の出入り口があったのよ」
マイケル「キット!」
ナイト2000のスキャナーが唸る。
キット「スキャナーの機能が完全では、ないので自信はありませんが、100m前方右側の
壁に3m四方の亀裂があります」
マイケル、シフトレバーを入れ、
マイケル「おまえを信じるよ」
○ スピードを上げ、壁に激突するナイト2000。
コンクリートを突き破る。ヘッドライトを光らせ、洞窟内の暗がりの通路を走り始める。
エンジン音が通路内に反響している。
○ ログハウス下・地下施設
シャッターを突き破り、入ってくるナイト2000。急ブレーキをかけ、立ち止まる。
車から降りるマイケルとラナ。
通路に向かって走っている。
階段の前に立つ二人。
ラナ「この上がログハウスになってるの」
マイケル「よし、行こう」
マイケル、階段を上り始めようとするが、ラナが引き止め、
ラナ「奴らは、マシンガンで武装してるのよ。危険よ」
コムリンクのアラームが鳴り響く。
キットの声「マイケル、特殊な周波数をキャッチしました。今までの経験上、おそらくこれは、
時限爆弾のものです」
マイケル「出遅れたな。奴らは、逃げた後だ」
マイケル、ラナと手を繋ぎ、元の方向へ走り始める。
ナイト2000に乗り込むマイケルとラナ。
○ ナイト2000、急スピードで180度ターンし、洞窟内の通路を走り始める
○ 古びたログハウスから猛烈な炎が上がる
けたたましい地響きと爆音が鳴り、炎が空高く上がっている。
○ 洞窟内に炎が走る
スピードを上げ走っているナイト2000。火の勢いに飲まれそうになっている。
○ トンネル内
洞窟を抜け出し、猛スピードでトンネルを抜けるナイト2000
○ ナイト2000車内
炎に包まれているトンネルをリアガラス越しに覗き見ているマイケルとラナ。
マイケル、「フォー」と雄叫びを上げている。
二人、前を向き、
マイケル「クソ、後もう一歩のところだったのに・・・」
ラナ「きっとまた現れるわ・・・」
マイケル「・・・」
−ACT4 END−
−ACT5−
○ 山道を疾走するナイト財団本部移動トレーラー(数日後)
デボンの声「ロス市内でメイズの主犯格が捕まったぞ」
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
コンピュータルームの前に集まるマイケル、デボン、ボニー。
デボン「ラナの証言通り、アルジェと呼ばれる人物は、カーエンジニアのニージェ・
リッセンバーグだった」
マイケル「ニージェがメイズの親玉だったとはな・・・」
デボン「研究していた遠隔操作技術を使いたいがために、自らELAに参加した。
その貢献が認められて、メイズの重要ポジションを得た。エバンズの衛生も
軍事利用するため、奴が狙っていたんだ」
マイケル「つまり、エバンズの溶体が急変したのは、不幸中の幸いだったってことか」
デボン「その通りだ。もし彼が研究所にいたままだったら、ギャロスの襲撃に
あっているところだ。手術も無事成功したし、命拾いした」
ボニー「ギャロスの解体処分も終わったわよ。CPUユニットも高炉で、完全に
溶かしてしまったからもう二度と復活することはないわ」
マイケル「今度こそ、一件落着・・・だな」
RC3が新車のバイクを押して、ナイト2000のそばを通っている。
マイケル達の前でバイクを止めるRC3。
マイケル「このピカピカのバイク、一体どうしたんだ?」
RC3「前から欲しかった奴なんだ。思わず奮発しちまった」
ボニー「宝くじでも当たったの?」
RC3、焦った表情で、
RC3「まぁ、気にするなって」
RC3、バイクに又借り、口でバイクの音をマネながらスロットルを回している。
デボン「そう言えば、ボニー、この辺にロトが落ちてなかったか?一週間ほど前に買ったんだが、
どうもどこかで落としてしまったようでな・・・」
ボニー「さぁ・・・マイケル、あなた知らない」
マイケル「知らないよ。RC、おまえは?」
RC3「いや・・・」
デボン、新聞を見つめ、興奮気味に、
デボン「当たってる!」
マイケル「当たってるって?」
デボン「もしもの時のために番号を控えて置いたんだ。一万ドルだぞ」
ボニー、ジッとRC3を見つめている。
マイケルも、RC3を見てめ、
マイケル「RC、まさかおまえ・・・」
RC3、罰が悪そうに、
RC3「ちょっと走りに行ってくるわ」
RC3、逃げるように立ち去ろうとする。
デボン「(怒号を上げ)RC!」
騒然とするマイケル達。
ナイト2000のスキャナーがなびいている。
○ 空港・滑走路前・道路
着陸し、滑走路を走っている飛行機。黒く焼けた路面のそばを横切る。
フェンス越しに佇むラナ。右手に持っていたハイビスカスの花を足元にそっと置くと、
そのまま立ち去って行く。
−THE END−