SUBTITLE 『MAD BOWLER』 作 ガース「ガースのお部屋」

−ACT1−
○ デンバー・山上(朝)
  岩盤の斜面の上を歩いている若いカップル。
  淡いブルーのフリースのジャケットとジーンズ姿の若い男。男の後ろを歩く若い女。
  赤いスエット、ジーンズを身に付けている。
男「昔、この辺一体は、金鉱脈だったらしい。十九世紀の後半に、探検家のドワイト・
 シュナイダーと言う男が金の洞穴を発見し、大金持ちになった」
女「ふーん」
男「ドワイトは、洞穴を隠して、近くの岩盤にピッケルの絵を書き残した。
 それを見つけたら、僕達は、大金持ちになれるかも・・・」
女「夢物語を見るのが好きね。そんなのとっくに誰かが掘り出してるに決まってるわ」
  二人が歩く坂道の正面にある藪からカサカサと無気味な音が聞こえる。
  藪のそばを通る二人。
  女、音に気づき、足を止め、藪のほうを見つめる。
  藪の中から、黒いドーベルマン犬と、二人にライフルを向けた男が姿を表わす。
  男は、ルバー・クレモン。髭面の華奢な中年。
  オレンジのハンチング帽を被り、赤いチェック柄のシャツ、ジーンズ、ブーツを身に付けている。
  女、慌てて男の肩を掴む。足を止める男。
  女、ルバーのいるほうを指差す。
  激しく吠えるドーベルマン。
  男、ルバーに気づき、
  ルバー、二人にライフルを向けたまま、
ルバー「どこに行く?ここは、私有地だ」
男「私有地?そんな話聞いた事がない・・・」
  ルバー、引き金を引く。
  激しい銃声と共に、男の後ろの岩盤に弾丸が当たり、白い煙が上がる。
  女、思わず、男の背中にしがみつく。
  男、怯えた表情でルバーを見つめ、
男「わかった。引き返せばいいんだろ?」
  ルバー、撃鉄を引き、再び、二人に銃口を向ける。
ルバー「いいや。その必要はない・・・」
  ルバー、狙いを定め、引き金を引く。
  高鳴る銃声・・・

○ ハイウェイを走るナイト2000
  スキャナーが唸る。
  
○ 国道
  二車線の道。右側の道を軽快に疾走するナイト2000。
  暫くして、前方にナイト財団移動本部トレーラーのコンテナが見えてくる。
  コンテナの扉がゆっくりと降りている。
  ナイト2000、扉の上を駆け上がり、コンテナの中に入り込む。
  
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  立ち止まるナイト2000。運転席のドアが開き、マイケル・ナイトが降りてくる。
  マイケル、憮然とした面持ちで、ティーテーブルの前に座るデボンの前に歩いて行く。
  デボン、マイケルを見つめながら、ティーカップのコーヒーを飲み干す。
マイケル「デボン、今日と言う今日は、言わせてもらうぜ!」
デボン「まぁ、落ち着けよ」
マイケル「ロッキーのキャンプ場を予約してたんだ。ローリーとバーベキューをするはず
 だったのに、キャンセルしたんだぜ」
デボン「この埋め合わせは、必ずするよ。そうカッカするな」
  奥の部屋の扉が開き、ボニー・バーストが姿を表わす。
  ボニー、マイケルの元に向かって歩きながら、
ボニー「デボンをイジメちゃ駄目よ、マイケル」
マイケル「いじめられてるのは、こっちのほうだよ」
  ボニー、コンピュータのディスプレイの前に座る。
デボン「ハーゲンプロント社のことは、知っとるな?」
マイケル「国内最大の武器製造会社の事だろ?」
デボン「三日前、その会社が開発した最新型戦闘ヘリが飛行訓練中に中南米の武装グループに
 襲撃を受け、パイロットごとヘリを強奪された」
マイケル「最新型戦闘ヘリ?」
デボン「MX−D1、通称サラマンダーと呼ばれている」
  デボン、ボニーに指示する。ボニー、コンピュータのディスプレイにサラマンダーの
  画像を出力する。
  迷彩色の大鷲のような姿をした武装ヘリの姿が映し出される。
  マイケル、まじまじと画面を見つめる。
デボン「20mmと30mm機関砲、両サイドのロケットポッドには、空対空ミサイル20発、
 対戦車ミサイル30発、毒ガス弾5発が収納されている。一番やっかいなのが機首に
 搭載されているマシンガンレーザーだ。一秒間に十発のレーザーを同時に発射することができる」
マイケル「破壊力は?」
ボニー「キットのレーザーの三十倍の威力よ」
マイケル「たまげたね。また、なんで、そんな恐ろしいものを・・・」
デボン「対ソビエト戦と、第三次大戦に備えて、試験的に作られたんだ」
ボニー「ハーゲンプロント社の内部で武装グループに協力した人物がいるの」
  ボニー、キーボードを撃ち、ディスプレイに黒人の男の顔を出力させる。
ボニー「サラマンダーを操縦していたパイロットのワイリー・オルグマン」
マイケル「なぜ、ワイリーが共犯だってわかったんだ?」
デボン「事件の前日、ワイリーは、自分の妹に事件を起こす事を電話で伝えていた。
 それと、彼には、数千万に及ぶ多額の借金があった。その返済資金を稼ぐため、
 武装グループに協力したと警察は見ている」
マイケル「妹さんは、どこにいるんだ?」
デボン「今、フランスに留学中だ」
マイケル「キット、ハーゲンプロント社までの最短ルートを割り出しとけ」
キット「わかりました」
  マイケル、そそくさとナイト2000に向かって歩いて行く。
  ボニー、呆気に取られた様子でマイケルを見つめ、
ボニー「さっきまでのご機嫌斜めが嘘みたい・ ・・」
  デボン、笑みを浮かべ、
デボン「実に仕事に熱心だろ。そこが彼のいいところだ」
  ボニー、今度はデボンを見つめ、呆気に取られている。
  マイケル、ナイト2000のドアを開けようとするが、踏み止まり、デボン達のほうを
  見つめ、
マイケル「そう言えば、RC3は?」
ボニー「デンバーの友達に会いに行くって言ってたわ」
マイケル「・・・て事は、今日は、休みか・・・」
  マイケル、納得が行かない様子で、険しい目つきでデボンを見つめる。
  デボン、気まずそうに俯き、マイケルから顔を背ける。

○ デンバー市内・ボウリング場
  レーンの右側を黒いボールが勢い良く転がっている。
  ボールは、ピンデッキの前でカーブがかかり、中央のピンを薙ぎ倒す。
  十本のピンが一瞬で見事に倒れる。
  モニターにスコア「256」の数字が表示される。
  レーン前に立っている若い黒人の男アンディ・ローズ。右手の拳を握り締め、ガッツポーズ。
  短髪、赤いシャツにグレーのジーンズを身に付けている。
  アンディの後ろの座席に座っている黒人の女グレンダ・バークレイ。
  グレンダ、万遍の笑みを浮かべ、拍手。
  戻ってきたアンディーと両手を打ち合わせる。
グレンダ「PBAのアスリートになったら?」
アンディ「馬鹿言うなよ。こんな腕でプロなんかになれるかよ」
  遠くから男の声が聞こえてくる。
男の声「そうそう、調子に乗り過ぎるとろくな目に遭わないからな・・・」
  アンディ、憮然とした様子で辺りを見回す。
  二人の背後にRC3が立っている。
  アンディ、唖然とし、
アンディ「RC3!」
  RC3、サングラスを外し、万遍の笑みを浮かべ、アンディの元に近づいて行く。
RC3「久しぶりだな、アンディ」
  抱き合うRC3とアンディ。
アンディ「二年ぶりか。おまえがシカゴを離れてから、仲間がずいぶん寂しがってたんだぜ」
  顔を合わせる二人。
RC3「あいつらとは、時々連絡を取り合ってる。おまえがコロラドの山小屋に引き籠もったって
 言うから、わざわざ来てやったんだ」
アンディ「どうしてここが?」
RC3「おまえの勤め先の自動車工場に行ったら、週末は、ここのボウリング場に入り浸りだって
 工場長から聞いてな」
  きょとんとしているグレンダ。
  アンディ、グレンダの方を向き、
アンディ「紹介するよ。シカゴのヒーロー、ストリート・アベンジャー。俺の友人だ」
RC3「よせよ。その名は、封印したんだ。RC3だ」
  RC3、グレンダに手を出し、
グレンダ「グレンダ・バークレイです」
  グレンダ、RC3と握手する。
RC3「よろしく。突然、押しかけてすまない。こいつとは、幼馴染みでね」
  グレンダ、アンディに顔を向け、
グレンダ「ああ、いいのよ。アンディ、私そろそろ病院に行くわ・・・」
アンディ「わかった。明日の朝向かいに行くよ」
  グレンダ、バックを持ち、RC3に一礼すると、アンディに手を振りながら立ち去って行く。
  RC3、彼女が立ち去るのを見計らって、急に喋り出す。
RC3「彼女か?」
アンディ「ああ。近くの病院で看護婦をやってる。結婚するんだ」
RC3「ワォ、おまえに嫁さんとはね。シカゴの仲間達が聞いたら、どんな顔しておまえを
 おちょくるか・・・」
  アンディ、笑みを浮かべ、
アンディ「うちに案内するよ」
  
○ ロッキー山脈の雄大な山並み
  草原を走り回るミュール鹿。
  木の枝に止まるリス。

○ アンディの家
  山の麓に立つ小さな丸太小屋。
  小屋の前に赤いジープとRC3の黒いバイクが止まっている。
アンディの声「驚いたね、未だにあのボロバイクを転がしてたなんて・・・」
  
○ 同・中
  暖炉の前に立つRC3。暖炉の上にある人形を掴み、まじまじと見つめながら、
RC3「シカゴにいた時から大事に乗り続けてきたバイクだからな。そう簡単に潰して
 たまるもんか。って言っても、仕事中に一度、ビルの爆発に巻き込まれて、スクラップ同然に
 なっちまったんだけどさ・・・」
  RC3、窓際に置いてあるボウリングのボールを掴み、持ち上げる。
  ティーテーブルの上のカップにジュースを注いでいるアンディ。
アンディ「おまえの腕なら三日で直せる」
RC3「残念ながら、その時は、四日かかった。瓦礫に埋まったバイクを掘り出すのに
 丸一日かけちまったからな」
  RC3、ボールを置き、テーブルの前に近づいて行く。
RC3「相変わらず、趣味が豊富だな」
アンディ「あれは、親父のマイボールさ。家に飾っとくだけじゃあ、もったいないから、
 俺が使ってる」
RC3「親父さん亡くなったのか?」
アンディ「ああ。半年前に友人から連絡があって、この小屋を取り壊すって話を聞いたから、
 慌てて戻ってきた。親父との思い出が詰まったこの家を潰すわけにはいかないと思って・・・」
RC3「なるほど。そう言うことだったのか・・・」
アンディ「それより、仕事のほうは、どうなんだ?」
RC3「毎日トレーラーの運転やら、車のメンテやら、時には、事件の調査にも引き摺り
 出されたりで、結構ハードだぜ。でも、中々やりがいのある仕事だ」
アンディ「シカゴにいた時よりもか?」
RC3「いいや。あの時程の若さとがむしゃらさは、なくなったけどな・・・」
  大笑いする二人。
  
○ ハーゲンプロント社
  ゲートを潜るナイト2000。
  
○ 同・社長室
  デスクにつく社長のフォレスト・ハーゲン。七三の白髪、眼鏡をかけ、紺のスーツを
  身に付けている。
ハーゲン「あのヘリの開発に何年かけたと思う?インスピレーションの段階を含めれば、
 さしずめ二十五年だ。その間、私は、空軍に勤め、兵器の充備に携わり、十年かけて自分の会社を
 持ち、ようやく念願のオリジナルの戦闘ヘリを完成させたんだよ・・・」
  デスクの前に立ち、ハーゲンと対峙しているマイケル。
ハーゲン「(興奮気味に)なのに・・・なのにだ。どこの馬か犬かわからん連中にあのヘリを
 利用されるなんて、絶対許せない・・・」
マイケル「とりあえず、訓練場を見せてもらえませんか?」
  
○ 砂漠
  広大に広がる砂漠を歩いているマイケルとハーゲン。
  二人のその後ろでゆっくりと走るナイト2000。
  マイケル、足下を見つめる。小さく深い穴が一直線上にいくつも空いている。
ハーゲン「ここがレーザーの照射実験をした場所だ。ワイリーがレーザーの発射装置に異常が
 あると連絡してきて、ヘリを降ろした。ワイリーが外に出て、照射砲の確認をしていたら、
 まもなく、そこに二人組の男達の乗った黒いジープがやってきて、ワイリーを襲ったんだ」
  キットに話しかけるマイケル。
マイケル「キット、何か手がかりになるようなものは、見つからないか?」
  ハーゲン、不思議そうな表情で、後ろを振り返り、ナイト2000を見て、仰天する。
  ナイト2000のスキャナーが唸る。
  
○ ナイト2000車内
  モニターに砂漠が映り、サーチの電子音が鳴り響く。
キット「4m前方を調べてみてください」
  
○ 走り出すマイケル
  ハーゲンのそばを横切り、マイケルの後を追うナイト2000。ハーゲン、その様子を
  見つめ、口を開けたまま、呆然としている。
  しゃがみこみ、地面についている犬の足跡を見つめる。
  コムリンクに話し掛けるマイケル。
マイケル「犬の種類は、わかるか?」
  
○ ナイト2000車内
  モニターに犬の足跡のサンプルが表示され、照合している。ある犬のサンプルが映し出され、
キット「ドーベルマンです。マイケル」
  
○ 砂漠
  険しい表情で足跡を見つめているマイケル。
  マイケルの背後に立つハーゲン。
ハーゲン「確かに一人、犬を連れていた。私のヘリの中に糞でも垂らしていやがったら、
 只じゃすまさんぞ」
  
○ アンディの家
  テーブルに座っていたRC3が立ち上がり、足下に置いていたヘルメットを持ち上げる。
RC3「さぁて、そろそろ御暇するかな・・・」
  キッチンにいたアンディがRCの元にやってくる。
アンディ「泊まっていけよ」
RC3「市内の安ホテルを予約してある。夫婦生活の邪魔は、できないからな」
アンディ「まだ、夫婦じゃないよ。それに、グレンダは、今日は、夜勤で明日の朝まで戻って
 来ないんだ」
RC3「・・・じゃあ、お言葉に甘えて。ホテルの予約をキャンセルしてこなきゃな・・・
 ちょっと出かけてくる。すぐに戻ってくるよ」
アンディ「ああ・・・」
  RC3、玄関の扉を開け、外に出て行く。
  アンディ、キッチンに戻り、まな板の上にある肉をナイフで切り込んでいる。
  暫くして、玄関の扉の開く音がする。
  アンディ、音に気づき、
アンディ「何か忘れ物か?RC・・・」
  アンディ、玄関のほうを見つめ、驚愕する。
  玄関の入口で倒れている男。金髪、白いパイロット・ジャケットを身に付けている。
  男、右肩から血を流している。
  男を顔を上げ、アンディを見つめ、
男「頼む、匿ってくれ・・・」
  呆然と男を見ているアンディ。
  男は、ワイリー・オルグマンである。
−ACT1・END−
  
−ACT2−
○ ハーゲンプロント社前
  国道を疾走しているナイト2000。
  ハーゲンプロント社のゲートを潜る。
  
○ 同・駐車場
  駐車スペースに前から入り込むナイト2000。
  運転席に座るマイケル、助手席に座るハーゲン。

○ ナイト2000車内
  ハーゲン、ダッシュボードをジロジロと見つめる。
ハーゲン「ナイト財団も中々素晴らしい技術を持っているようだな・・・」
  マイケル、ハーゲンの目線に気づき、
マイケル「少々お喋りが過ぎますがね」
ハーゲン「いいや、ここまで高水準の人工知能システムを見たのは、初めてだ」
キット「お誉め頂き、光栄です。ハーゲンさん」
ハーゲン「キット、もし私のヘリが見つかったら、君を搭載して実験をしてみたいんだが、
 どうだね?」
キット「お誘いは、大変嬉しいのですが、遠慮致します。地上を走るのが好きなもので・・・」
ハーゲン「実に人間味溢れる返答だ。ますます、君が好きになったよ。今度また、ゆっくり話を
 しようじゃないか」
  ハーゲン、ドアを開け、車を降りようとするが、立ち止まり、
ハーゲン「(マイケルを見つめ)君達に大事なことを言うのを忘れていた。実は、あのヘリにも、
 自動操縦システムが組み込まれているんだ。キットのように喋ったりは、しないがね。
 コンピュータに攻撃目標を設定すると、敵を完全に破壊するまで、徹底的に追い続ける。
 しかし、そのシステムを動かすには、私のDNAと特殊な細菌を混合したスタート・エレメントが
 必要だ」
マイケル「そのスタート・エレメントは、今どこに?」
ハーゲン「全部で3つある。そのうちの2つは、社内の隠し部屋に保管してるが、飛行訓練の時、
 自動操縦のテストをするために、ワイリーに一つ渡してしまった・・・」
マイケル「早くヘリを見つけないと・・・」
ハーゲン「マイケル、キット、よろしく頼むよ」
  ハーゲン、車から降り、会社の入口に向かって、歩き始める。
マイケル「あの社長、本気でおまえをヘリに載せる気かも知れないぞ」
キット「冗談は、よしてください。ヘリは、信号待ちや周りのものを気にせず、自由自在に
 飛び回る事ができますが、トラブルでも起きて落ちたら一環の終わりです」
  マイケル、笑みを浮かべ、
マイケル「よくよく考えてみたら、飛行機嫌いのおまえにヘリの操縦なんて無茶な話だよな」

○ ハーゲンプロント社・駐車場
  一番右端のスペースに止まっていた赤いTVRが急発進し、ビルの玄関に向かって歩いている
  ハーゲンに近づいている。
  ナイト2000のスキャナーが唸る。  

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ハーゲン社長が銃を持った男に狙われています」
  マイケル、ハンドルを持ち、車をバックさせ、急発進する。

○ TVRの助手席から身を乗り出す黒い覆面の男
  ハーゲンに銃口を向ける男。
  ナイト2000、ハーゲンの前に周り込み、車体を滑らせバリケードを張る。
マイケルの声「社長、伏せて」
  銃声。弾丸がナイト2000のボディに当たる。
  ハーゲン、慌てて、ナイト2000のボディに身を伏せる。
  TVR、ナイト2000のボディにぶつかりそうになるが、間一髪避け、そのまま走り去る。
  ナイト2000、白い煙を上げながらスピンターンし、猛スピードで走り出す。
  
○ 国道
  二車線の道路。ゆっくりと走る一般車両をジグザグに擦り抜けながら暴走するTVR。
  その数十メートル後方を猛スピードで走っているナイト2000。同じく、ジグザグで
  車両を擦り抜いている。
  
○ ナイト2000車内
マイケル「よぉし、周りに車は、いなくなった。マイクロロックだ」
  マイケル、『MICRO ROCK』のボタンを押す。
  モニターにTVRのイメージが映り、
  ブレーキシステムの配線が赤く光る。
  
○ TVRの後輪がロックされる
  白い煙を上げながら、路面を滑り、立ち止まるTVR。
  TVRの両側の扉が開き、覆面の男達が降りてくる。
  男達、45口径のシルバーのコルトを構え、迫ってくるナイト2000に撃ち始める。
  ナイト2000のボンネットやフロントガラスに弾丸が激しく当たり、跳ね返っている。
  片方の男に向かって突き進むナイト2000。
  男、ナイト2000のボディに弾き飛ばされ、路面に倒れる。
  ドアを開け、車から降りるマイケル。
  もう一人の男、TVRの影に隠れ、マイケルに向け、銃を撃っている。
  マイケル、身を伏せる。ナイト2000の左側のボディに激しく当たる弾丸。
  火花を散らしながら跳ね返っている。
  引き金を引き続ける男。やがて、弾切れ。
  銃を地面に投げつけ、歩道に向かって走り出す男。
  マイケル、立ち上がり、男を追って走り始める。
  男の背中にタックルするマイケル。地面に勢い良く転がる二人。
  二人、立ち上がると、男がマイケルにジャブを打ってくる。
  マイケル、男の右手首を掴み、右腕を捻り、背負い投げをする。透かさず立ち上がる男。
  マイケル、男に回し蹴りを食らわす。
  崩れ落ちる男。マイケル、男の覆面を剥ぎ取る。金髪の白人の顔が露になる。
  まじまじと男の顔を見つめるマイケル。

○ アンディの家・地下倉庫
  階段を降りているアンディ。右手にマグカップを持っている。
  ハンモックの上で眠っているワイリー。
  アンディ、男の元に近づき、マグカップを差し出す。
  ワイリー、何も言わず、マグカップを掴み、スープを飲み干す。
ワイリー「もうしばらくここに居させてくれ」
アンディ「何日いようが構わないけど・・・(男の左肩の包帯を見つめ)
 事情を説明してくれないか?」
  外で呼び出しのベルが鳴る。
  ワイリー、強面になる。アンディ、駆け出し、階段を登って行く。
  
○ 同・玄関
  入り口の扉が開く。ハンチング帽を被った中年の男が立っている。ルバーである。
  肩にライフルを背負っている。ルバーの足下には、ドーベルマン犬が激しい息遣いで
  立っている。
  ルバーと対峙するアンディ。
アンディ「・・・鹿なら、ここから数十キロ離れた場所にいるけど・・・」
ルバー「鹿の肉は、食い慣れとる。獲物は、鹿だけではないんでな。
 わしのことを覚えていないか?」
  アンディ、ルバーの顔をまじまじと見つめ、
アンディ「・・・デンバーのボウリング場で 一度・・・」
ルバー「そうだ。9フレームまで同点で進み、最終フレームであんたがビック・フォーのピンを
 一つ外して、わしが勝った」
アンディ「どうして、僕の家を・・・まさか、あの時、後をつけてきたのか?」
ルバー「いや。ここを訪ねたのは、偶然だ。白いフライトジャケットを着た男を探してる。
 どこかで見かけなかったか?」
アンディ「いや・・・近くで戦闘機でも墜落したのか?そう言えば、昨日もこの辺りの山で
 登山サークルの大学生のカップルが行方不明になっている話を聞いたけど・・・」
  突然、ドーベルマンが激しく吠え始める。
  アンディ、動揺するが顔には、出さない。
ルバー「そうか、知らないならいい。どうだ、わしともう一勝負せんか?」
アンディ「いつだ?」
ルバー「明日の昼は?」
アンディ「ああ、いいよ。ちょうど対戦相手が欲しくて、うずうずしてたところなんだ」
ルバー「じゃあ、一時にカウンターの前で待っとる」
アンディ「わかった」
  ルバー、踵を返し、立ち去って行く。
  アンディ、怪訝にルバーの背中を見つめている。
  そこへ、RC3のバイクがやってくる。
  RC3、バイクから降り、ヘルメットを外すと、立ち去って行くルバーの姿をしきりに
  見つめながら、アンディの前に近づいて行く。
RC3「(アンディと対峙し)あのおっさん、知り合いか?」
アンディ「前に一度ボウリングで対戦したことがあるんだ」
  RC3、へらへらと笑い、
RC3「ボウリング好きの狩猟の親父か。珍しいね・・・」
アンディ「・・・」

○ ハイウェイを走行するナイト2000
  スピーカーからデボンの声が聞こえる。
デボンの声「ハーゲン社長を襲った男達の身元がわかったぞ」
  
○ ナイト2000車内
  モニターに二人の男が映っている。
デボンの声「一人は、ライバック・モントロメオ、もう一人は、フレッド・ガーナー。 
 共にメキシコを拠点に活動している反政府グループのメンバーだ。一週間前、メキシコ国境で、
 青いワゴンに乗った四人の男達が国境警備隊を襲って国境突破し、アメリカに潜り込んだ。
 彼らは、そのうちの二人と見られている」
  運転席に座るマイケル。ハンドルを握りながら、モニターを見つめている。
マイケル「ハーゲンを襲った理由は?」
  モニターにデボンが映っている。
デボンの声「それについては、今のところ、二人とも黙秘を続けている。弾道検査の結果、
 彼らが所持していた銃が、サラマンダー強奪に使用されたものとほぼ一致した」
マイケル「じゃあ、早く奴らから、サラマンダーの居所を聞き出してくれよ」
デボンの声「もうすぐFBIから連絡が来るはずだ。後でまた、報告する」
マイケル「わかった」
  モニターのデボンの映像が消える。
キット「今回の事件、意外と早く解決しそうですね」
マイケル「そうだといいがな」

○ アンディの家(夜)
  ログテーブルに並べられたベトナム料理。
  座席の前に座るRC3。料理を見渡し、唖然としている。
  キッチンから豚モツの煮込みと海老の乗った皿を持ったアンディがテーブルの前にやってくる。
RC3「おまえが料理を作るとは、知らなかった」
  アンディ、皿をテーブルの上に置き、
アンディ「グレンダに教わったんだ。今日みたいに宿直で朝帰りする時は、俺がこうやって
 食事を作ってやるんだよ」
RC3「飯の支度は、後輩に任せっ切りで、一日中ポンコツ車とにらめっこしてた頃のおまえが
 懐かしいぜ」
  丸太の椅子に座るアンディ。
アンディ「あの頃は、おまえが将来、金持ちの財団の元で仕事をするなんて、夢にも思って
 なかったよ」
RC3「いずれは、シカゴの連中を財団に呼んで、RC3メカニック軍団を作ろうと思ってるんだ。
 その時は、おまえも誘ってやるよ」
アンディ「俺は、いい。ここの暮らしに慣れちまった」
RC3「ポンコツ車よりも、女房か?」
  アンディ、憮然とし、
RC3「冗談だよ。グレンダとは、どこで知り合った?」
アンディ「工場でワーゲンの下に潜り込んでた時に、ちょうどそのそばを通りがかった
 新人の整備士が持ってたタイヤを落として、俺のジャッキに当てやがった。それに気づいて
 慌てて外に飛び出したものの、車体に右足を挟まれて、あえなく病院送りだ・・・」
RC3「で、彼女と知り合ったってわけか。おまえに怪我させたその整備士に感謝しないとな」
アンディ「退院してからそいつに飯を奢ってやったよ。飯食ってた時の奴の引き釣った顔を
 思い出すと、今でも笑っちまう」
RC3「おまえは、何にでも燃えやすいタイプだからな。昔みたいにつまらんギャンブルに
 手を出して、彼女を困らせたりするなよ」
  アンディ、憮然とし、
アンディ「そんな大昔の話・・・。あの時の俺と今とは違う。確かにあの時、おまえ達に
 迷惑かけたのは、悪かったが、でも、借金は、全部返済したし・・・」
RC3「わりぃ・・・そんなつもりじゃなかったんだ。嫌なことを思い出させてしまって
 悪かった・・・」
  RC3、フォークとナイフを持ち、豚モツの煮込みを一口頬張る。
RC3「うんめぇ・・・」
アンディ「当たり前だ」
  アンディも一口頬張る。
×  ×  ×
  深夜。
  ベッドで熟睡するRC3。
  キッチンからベッドルームにやってくるアンディ。
  アンディ、ふと足を止め、踵を返すと、
  また、キッチンのほうへ歩き出す。

○ 同・地下倉庫
  暗がりの中、階段を降りてくるアンディ。
  右手に持つ懐中点灯で奥のほうを照らす。
  ハンモックが照らし出されるが、ワイリーの姿がない。
  ハンモックのほうに近づいて行くアンディ。ハンモックの上に砂時計のような形をした
  ガラスケースが乗っている。
  アンディ、ガラスケースを掴み、不思議そうに見つめている。ガラスの中の溶液が七色に
  光っている。
アンディ「何だ、これ?・・・」
  
○ 林の中
  暗闇の中、木々の間を潜り、緩い傾斜の山肌を駆け降りているワイリー。
  暫くして、激しい犬の泣き声が聞こえてくる。その声は、だんだんワイリーに近づいてくる。
  立ち止まるワイリー。息を飲み、辺りを見回している。
  やがて、物凄い勢いでドーベルマン犬がワイリーの前にやってくる。
  ドーベルマン、ワイリーの右腕に噛みつく。
  ワイリー、そのままドーベルマンに押し倒され、揉みくちゃにされている。
  口笛が鳴る。ドーベルマン、噛むのを止め、大人しくワイリーから離れる。
  懐中電灯の光がワイリーの顔を照らす。
  ワイリー、左手で光を遮る。
中年の男の声「夜中なら、街まで逃げられると思ったか?」
  中年の男がワイリーの前で立ち止まる。中年の男は、ルバーである。
ルバー「最初からあそこが臭いと思ってた。ゴキブリみたいにせかせかと逃げ出しおって、
 この裏切りものめ・・・」
  ルバー、ワイリーにライフルの銃口を向け、引き金に指を当てる。
ワイリー「撃ってみろよ。俺がいなければ、あのヘリは、動かせない」
ルバー「俺が機械音痴だと思って、侮ってるようだが、それは、おまえの思い違いだ。
 報酬代わりにこいつをくれてやる」
ワイリー「待ってくれ!」
  ルバー、引き金を引く。
  高鳴る銃声。
−ACT2 END−
  
−ACT3−
○ 病院前(翌日・朝)
  入口からグレンダが歩いてくる。
  グレンダ、脇道に止まっている赤いジープの助手席に乗り込む。
  運転席にアンディが座っている。二人、キスする。
  アンディ、アクセルを踏み、車を発進させる。
  
○ 国道
  片側二車線の道路。
  数台走る乗用車に紛れて、アンディ達の赤いジープが走行している。
  その対向車線にも数台の車が走っている。その中にナイト2000の姿がある。
  ナイト2000と赤いジープがすれ違う。互いに離れて行く。
  
○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。欠伸をしている。
キット「駄目です、マイケル。ホテルに連絡してみましたが、昨夜は、戻ってこなかったそうです」
マイケル「RCの奴、一体どこをほっつき歩いてるんだ?」
  通信のシグナルが鳴る。
キット「デボンさんからです」
  モニターにデボンの姿が映る。
デボンの声「今どこにいる?」
マイケル「デンバー市内に入ったところだ」
デボンの声「ルーナンド達の取り引き現場まで後もう少しだな」
マイケル「ライバックとフレッドの言う通りなら、取り引きまで後1時間か・・・」
デボンの声「奴らを雇った国内の大物麻薬密売組織のボス・ルーナンド・オルデスは、
 メキシコの反政府組織のリーダー、アファメス・ロメオと深い協力関係にある。アファメスの
 組織がルーナンドの元に麻薬を持ち運ぶ代わりに、ルーナンドは、アファメスの組織に現金と
 大量の武器を渡している。FBIも情報は、掴んではいるが、その実体を明らかにする
 証拠を握るまでには、至っていない」
マイケル「しかし、キャンプ場で取り引きとはね。なんて嫌味な奴だ」
  デボン、分が悪そうに咳払いをする。
キット「湖岸のキャンプ場周辺は、すでにチェック済みです」
デボンの声「ルーナンドは、希に見る凶暴性の持ち主で非常にやっかいな人物だ。どんな手段を
 使って攻撃してくるかわからん。くれぐれも慎重にな」
マイケル「心配ご無用。こっちには、FBIと地元の警察のバックアップもあるんだ」
キット「何か大事なものをお忘れでは?」
マイケル「ああ・・・それとおまえだ。またあとで連絡する」
  デボン、手を上げる。モニターからデボンの映像が消える。
キット「お手伝いとは言え、こう言うのは、とても緊張しますね」
マイケル「な〜に。普段通りにやれば言いだけさ。FBIは、おまえの力を利用して、
 ルーナンドの組織とその相手を一気に押さえたいんだ」
キット「警察にも、私のような車を導入すれば、犯罪率は、確実に減少するはずです」
マイケル「ターボジャンプを流行らせるつもりか?」

○ ナイト2000のスキャナーが唸る

○ アンディの家
  赤いジープが小屋の前に辿り着く。
  ジープから降りるアンディとグレンダ。
  二人、階段を登り、入口のドアの前に向かう。その瞬間、ドアが開き、中からRC3が出てくる。
  RC3、二人と顔を合わし、笑みを浮かべ、
RC3「おっと、すっかり世話になっちまったな」
アンディ「まだ、時間はあるんだろ?昼にボウリング場に行くんだ。おまえも一緒に来ないか?」
グレンダ「アンディ、またやるの?」
アンディ「知り合いに誘われてね」
グレンダ「じゃあ、私も行くわ」
アンディ「君は、今からじっくり睡眠をとるんだ。夕方、水族館に行けなくなっちゃうだろ」
RC3「(グレンダを見つめ)俺があんたの分まで、アンディを応援しといてやるよ」
グレンダ「今度また、ゆっくりお話したいわ。この人の昔話も聞きたいし・・・」
RC3「また、近いうちに遊びに行かせてもらうよ」
  グレンダ、笑みを浮かべ、RC3に手を振り、家の中に入って行く。
  RC3、階段を降り、バイクに股がる。
アンディ「どこに行くんだ?」
RC3「ホテルだよ。昨日キャンセルしたはずなのに何かの手違いで3時までの料金を払えと
 ほざいてやがるんだ。今から文句を言いに行ってくる」
  RC3、ヘルメットを被る。スターターを押すと、スロットルを回し、勢い良くターンして、
  山道に向かって走り出す。

○ キャンプ場
  湖岸に色取り取りのテントが並んでいる。
  ある木の下に立つ青いテントが開き、中から三人の男達が表れる。
  一台のシルバーのベンツがテントの前にゆっくりと近づき、立ち止まる。
  後部座席の扉が開き、中から白いスーツを着た男が表れる。
  男は、ルーナンド・オルデス。金髪のオールバック。痩せ型の長身である。
  後部座席からグレイのスーツを着た男・リムが降りる。
  ルーナンド、湖を眺め、深く息を吸う。
  一人の男が赤いスーツケースを持ち、ルーナンドの前に立つ。
  ルーナンドの前にリムが割って入り、男からスーツケースを受け取る。
ルーナンド「(リムに)中で確認しろ」
  リム、ルーナンドに頭を下げ、車の中に乗り込む。
  暫くして、車のエンジン音が聞こえてくる。
  林の中の道をナイト2000が勢い良く駆け抜けている。
  その後ろを、FBIの覆面のグレイのセダン、パトカーが続いて走っている。
  ルーナンド達の元に向かって突き進むナイト2000。
  ルーナンド、ナイト2000を見つめる。
男A「サツだ!」
  男達、慌てて、テントの中に入り、ライフルを持ち出している。

○ ナイト2000車内
  フロントガラス越しにルーナンド達の姿が見えてくる。
  ルーナンドとリム、三人の男達が一斉に銃やライフルを構え、撃ってくる。
  フロントガラスが弾丸を跳ね返している。
キット「さっそくお出迎えですよ、マイケル」

○ キャンプ場
  激しく轟く銃声。
  ルーナンド、車のトランクの中からバズーカー砲を出し、右肩に構え、撃つ。
  スポンと抜けるような音がし、ミサイルがナイト2000目掛けて飛んで行く。
  ミサイルは、ナイト2000ボンネットの上に命中。巨大な爆炎が上がる。

○ ナイト2000車内
  マイケル、目を大きく開け、歯を食いしばっている。
マイケル「大丈夫か?キット」
キット「ええ、なんとか・・・」
マイケル「デボンが言ってた通りの奴だな。こっちも脅かしてやろぜ」
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ キャンプ場
  ナイト2000、ルーナンドの頭上をターボジャンプする。
  ルーナンド、度肝を抜き、のけ反り倒れる。その時、車のトランクで頭を打つ。
  そのまま、ルーナンドの車も飛び越え、鮮やかに着地するナイト2000。
  ターンし、ルーナンドの前で立ち止まる。
  車から降りるマイケル。
  マイケル、ルーナンドが担いでいるバズーカーを取り上げ、そのまま、バズーカーで、
  ルーナンドの腹を突くと、透かさず、右手の拳で頬を殴りつける。地面に倒れ込むルーナンド。
  逃げ惑うルーナンドの部下と、男達をFBIの捜査官と警官達が追っている。
  マイケル、ルーナンドの胸倉を掴み、
ルーナンド「タレこんだのは、フレッドのやつだな」
マイケル「麻薬の取り引きの事は、後回しだ。サラマンダーをどこに隠した?」
ルーナンド「何だ、そりゃあ?」
マイケル「惚けるな。おまえがライバック達を使って、ハーゲンプロント社の社長を襲わせた事も
 わかってるんだぞ」
  ルーナンド、無気味に笑みを浮かべる。
  マイケル、険しい表情で、ルーナンドの胸倉を締め上げ、
ルーナンド「ルバーって男だ。ヘリの管理は、奴に任してる」
マイケル「そいつは、どこにいる?」
  
○ ボウリング場
  ボールの転がる音とピンが倒れる音が激しく鳴り響いている。
  助走路に立つアンディ。右手に黒いボールを持ち、構える。アウトサイドから助走し、
  勢い良くボールを投げる。
  レーンの外寄りを激しく回転しながら転がるボール。
  ピンデッキの前でボールは、曲がり、全てのピンが一斉に滑らかに倒れる。
  天井のモニターに『STRIKE』の文字が映り、画面が点滅している。
  ベンチにいたRC3が立ち上がり、ガッツポーズを取る。
RC3「よぉし、アンディその調子だ。これでトリプルだぞ」
  オートスコアラーのディスプレイを見つめるRC3。アンディのスコアボードの7フレーム
  目にストライクマークが入る。
  4フレーム目93で、その後ストライクマークが3つ並んでいる。
  ルバーのスコアは、4フレーム目で101。その後ストライクマークが2つ並んでいる。
  RC3、悔しげな表情を浮かべ、ルバーを見つめる。
  隣のレーンのベンチで立っているルバー。
  リターン・ラックの前に行き、青色のボールを掴む。
  ベンチの下に座っているドーベルマン。
  ルバーの様子をまじまじと見ている。
  ルバー、険しい目つきでピンデッキを見つめ、助走すると、鮮やかなフォームで
  ボールを投げる。
  ボールは、レーンのアウト側を勢い良く転がり、やがて中央に向かって綺麗なカーブを描く。
  テンピン全てが大きな音を立て、崩れる。
  ディスプレイのルバーのスコアボード。
  7フレーム目にストライクマークが表示される。
RC3「やるじゃねぇか、おっさん」
  ルバー、振り返り、刺すような目つきでRC3を睨み付ける。
  ドーベルマンがRC3を見つめ、唸っている。
  RC3、気まずそうに顔をアンディのほうに向け、
RC3「ちょっと用足しに行ってくるわ」
  RC3、その場を歩き去って行く。
  ルバー、アンディを見つめ、
ルバー「ここからが本番だ。なぁ、賭けをしないか?もしおまえが勝ったら、
 十万ドルをくれてやる」
  アンディ、驚愕する。
アンディ「なんだって?」
ルバー「その代わり、私が勝ったら、君が住んでいるあの丸太小屋を頂く」
アンディ「あんた、正気か?」
ルバー「親父が死ぬ前に抱えていた借金は、確かそのぐらいだったと聞いてるが?」
アンディ「なぜそれを?」
  アンディ、複雑そうに顔を歪める。
ルバー「一度ああ言う家に住んでみたかったんだ。やるのか、やらないのか?」
  困惑するアンディ。
    ×  ×  ×
  同・トイレ前
  RC3が入口から出てくる。
  アンディ達のレーンを見つめるRC3。
  アンディがボールを投げている。
  笑みを浮かべ、歩き出すRC3。
  RC3、背後を歩いている人影に気づく。
  男の左手がRC3の肩に触れた瞬間、RC3、咄嗟に振り返り、殴りかかろうとする。
  男は、マイケルである。RC3、動きを止め、
RC3「マイケル・・・なんで、あんたがここに?」
マイケル「こんなところでのんびりボウリングか。羨ましいね」
RC3「ローリーとキャンプ場に行くんじゃなかったのか?」
マイケル「人使いの荒い英国紳士様のお声がかかるまでは、その予定だった」
RC3「じゃあ、ここには、何しに?」
マイケル「ルバー・クレモンって言う男を探してる」
RC3「誰だ?そいつ」
マイケル「新型ヘリを強奪した奴さ」
RC3「新型ヘリ?」
マイケル「三日前、訓練中に奪われた。武装グループと共にコロラドに逃げ込んだ。
 その中心人物がルバーだ。このボウリング場にドーベルマンを連れた中年の男が通ってるって
 話を聞いてやってきたんだ」
  RC3、唖然とし、ルバーのベンチの下に座っているドーベルマンを見つめる。
    ×  ×  ×
  アンディ、ボールを投げる。ボールは、アウトサイドを進み、ピンデッキ前で大きく曲がり
  ピンを押し倒す。10番ピンが残ってしまう。
  アンディ、愕然とする。
  9フレーム目アンディのスコアは、184。ルバーの8フレーム目のスコアは、175。
  ルバーの前にマイケルとRC3がやってくる。
マイケル「ルバー・クレモンか?」
  ドーベルマンが立ち上がり、マイケルを威嚇するため、唸り声を上げる。
  マイケル、ドーベルマンを見つめ、
マイケル「噛みつくなんて、オーソドックスな事はやめてくれよ」
ルバー「噛みつきゃしない。俺が命令しない限りはな」
マイケル「ちょっと話があるんだ。一緒に来てくれないか?」
ルバー「おまえは、誰だ?」
マイケル「マイケル・ナイト。三日前に消えたヘリを探してる」
ルバー「なんの事だかよくわからんが、後にしてくれんかな。こっちは、真剣に戦ってるんだ。
 邪魔立てするようなら・・・」
  ドーベルマンが吠える。
  マイケル、たじろぎ、
マイケル「わかったよ。対戦が終わるまでじっくり見物させてもらうよ」
  ルバー、ボールを投げる。ストライク。
  アンディ、額に汗を掻き、手で拭っている。気弱な表情。
  RC3、アンディの様子を見つめ、
RC3「次も軽くストライク取っちまえよ」
  アンディ、息を飲み、動揺した面持ちでピンデッキの方を向き、ボールを構える。
  RC3、アンディの異変に気づき、まじまじと様子を窺っている。
  アンディ、ボールを投げる。
  アウトサイドを勢い良く転がり始めるボール・・・。
−ACT3 END−

−ACT4− 
○ ボウリング場・フロント前
  入口の扉に向かってそそくさと歩いているアンディ。
  俯き加減で、元気のない様子。アンディの後をRC3が追っている。
RC3「残念だったな、アンディ。後もう少しだったのに・・・」
  アンディ、無言で足早に外へ出て行く。
  立ち止まるRC3。アンディの様子を心配気に見つめている。
  RC3のそばにマイケルがやってくる。
  RC3、マイケルに気づき、
RC3「ルバーは?」
マイケル「向こうで犬に餌をやってる」
RC3「大丈夫か?目を離している隙に逃げられたりでもしたら・・・」
マイケル「それが狙いさ。泳がして、ヘリの在処を見つける。キットに監視させてるから
 心配ない。別れの挨拶は、もう済んだのか?」
RC3「いや、まだだ。ゲームが終わってから、何だか様子がおかしい・・・」
マイケル「負けたのがよっぽど堪えたようだな・・・」
  RC3、ハッと何かに気づく・・・。
  マイケルのコムリンクのアラームが鳴る。
  マイケル、応答し、
マイケル「なんだ?キット」
  コムリンクからキットの声が聞こえる。
キットの声「ルバーが裏口から外に出ました。白いワゴンに乗り込んでいます」
マイケル「動き出したな。すぐ行く」
  マイケル、ジャンパーのポケットからコムリンクを出し、RC3に手渡す。
マイケル「おまえのコムリンクだ」
  RC3、マイケルからコムリンクを受け取る。
RC3「俺も後から追っかける」
  マイケル、入口に向かって走り出す。

○ 同・駐車場
  ナイト2000に乗り込むマイケル。
  エンジンが唸る。勢い良くバックし、駐車スペースから出て、急発進する。
    ×  ×  ×
  赤いジープに運転席に乗り込んでいるアンディ。
  一瞬、悔しげな表情を浮かべる。
  ジープの元に慌てて駆け寄ってくるRC3。
RC3「おい、待てよ。俺をほっといて帰る気か?」
アンディ「・・・すまないRC3。急用を思い出して、ちょっと焦ってたんだ」
RC3「まさか、おまえ、さっきのゲームであのおっさんと何か・・・」
  アンディ、RC3の言葉を裂くように喋り出し、
アンディ「また、遊びに来てくれ。今度は、もっと豪華なご馳走を用意しておくから」
  アンディ、RC3の前に手を差し出す。
  RC3、アンディの手を握り、握手を交わす。
  アンディ、手を振り、ジープを発進させる。
  RC3、走り去って行くジープを怪訝な表情で見つめている。
  
○ 山間の湖岸沿いの道
  緩やかなS字の道を進んでいる白いワゴン。
  その数百メートル後方の地点をナイト2000が窓を暗くして走行している。
マイケル「その調子だ、キット。奴を見失うなよ」
  
○ ナイト2000車内
  暗闇。ダッシュボードの光によって、マイケルの顔が照らし出されている。
  モニターに付近の地図のイメージが映っている。道路上を白い点滅が動いている。

○ 白いワゴン車内
  後部席に座るルバー。
  隣に黒髪に髭を生やした若い男が座っている。
  ルバー、自動車用携帯電話を左手に持ち、話している。
ルバー「アンディ・ローズと言う男の家だ。スタート・エレメントは、そこにある」

○ アンディの家
  入口の扉が開き、ふてくされた様子のアンディが中に入ってくる。
  キッチンにグレンダが立っている。
  アンディ、右手に持ってたボウリングのボールを叩きつけるように床に置く。
  グレンダに気づき、そばに近寄る。
アンディ「もう起きたのか?」
グレンダ「4時間も寝れば十分だわ。それより、ゲームは、どうだったの?」
アンディ「(憮然とし)君があの男に僕の借金の事を話したのか?」
グレンダ「借金って何のこと?」
アンディ「惚けるなよ」
グレンダ「あの人、あなたの知り合いでしょ?」
アンディ「一度、ボウリングで対戦しただけさ」
グレンダ「親しげに何度もあなたとこの家のことを尋ねてきたから、てっきり・・・。
 ごめんなさい。あなたが外に出てる時、一度だけ、督促の電話に出たことがあるの。
 私、心配になって、つい・・・」
  アンディ、険しい表情。
 
○ 同・前
  道路の向こう側の茂みに隠れているRC3。
  猛スピードで山道を走ってきた青いライトバンがアンディの家の前に急停止する。
  ライトバンから二人の男が降りる。
  大柄の男・メインズと長身の男キュール、家の入口に向かって歩き出す。
  RC3、立ち上がり、小屋に向かって走り出す。
  
○ アンディの家
  メインズとキュールが扉を叩き開け、アンディ達と対峙し、二人に銃を向ける。
メインズ「スタート・エレメントを出せ」
アンディ「なんだ、それ・・・」
キュール「お前がパイロットを匿ってた事は、わかってるんだ」
グレンダ「アンディ、何のこと?」
  メインズ、グレンダの右腕を掴み、自分の元に引き寄せる。グレンダの蟀谷に銃口を
  当てる。
  アンディ、ズボンのポケットから七色の砂時計の形をした容器を出し、
アンディ「これのことか?」
  キュール、アンディの手からスタート・エレメントをひったくるように奪い取る。
  そのまま、部屋を出て行く。
アンディ「彼女を離せ」
メインズ「悪いがお前らには、死んでもらう」
  メインズ、銃の撃鉄を起こす。
アンディ「やめろ!」
  その瞬間、メインズの背後からボウリングのボールが転がってくる。
  ボールは、メインズの両足に当たり、ピンのように男を薙ぎ倒す。
  RC3が男の前に駆け寄り、銃を蹴り落とす。透かさず、銃を拾い、構えると、
  メインズの額に銃口を向ける。
  グレンダ、アンディの元に駆け寄り、抱きつく。
RC3「すまない。親父さんの形見のボールをこんなことに使って・・・」
アンディ「何言ってるんだ。また、おまえに借りを作ってしまったな・・・」
  RC3、男のほうを向き、
RC3「気にすんな。(メインズと顔を合わせ)さぁてと、詳しい事情を説明してもらおうか?」
  メインズ、観念した様子で、溜め息を漏らす。

○ 山道
  切り立った岩盤がそそり立つ山間の道を走行するナイト2000。
  道路脇に立ち止まる。
  
○ ナイト2000車内
  窓を普通の状態に戻す。前方を見つめるマイケル。
  フロントガラス越し、100メートル前方に白いワゴンが止まっているのが見える。
マイケル「ルバー達は、どこに行った?」
  モニターに付近の山の地図のイメージが映る。熱感知画面に切り替わり、
  三つの人体の熱反応が映し出される。
キット「山を登っています」
  マイケル、ドアを開け、車から降りる。

○ 岩道
  緩やかな岩の斜面を駆け上がって行くマイケル。
  
○ 巨大な岩盤の前
  小さな洞穴を潜っているルバーと二人の男。
  大きな岩の影に身を隠すマイケル。洞穴の様子を窺っている。
  洞穴の前に駆け寄るマイケル。
  立ち止まり、目の前の岩を見つめる。岩にピッケルのマークが刻まれている。

○ 洞窟
  縦長の狭くて細い穴を潜り、中に入ってくるマイケル。
  小さな岩の壁に身を隠し、奥を覗き込む。
  奥のほうに、大きな空洞がある。天から注ぎ込んでいる太陽の光が、迷彩色の鷲のような
  巨大な戦闘ヘリのボディを照らし出している。
  マイケル、ヘリを険しい表情で見つめている。

○ 岩道
  斜面を駆け降りているマイケル。
  そのまま山道に出て、ナイト2000に乗り込む。
  
○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。勢い良くドアを閉める。
マイケル「サラマンダーを見つけた。この奥にある岩の空洞の中だ」
キット「それで、どうするんです?」
マイケル「中に武装した男が四人いる。俺一人じゃ無理だ。RC3を呼び出してくれ」
キット「マイケル、青いライトバンがこちらにやってきます」
マイケル「ルバーの手下か?一先ず、隠れよう」
  マイケル、エンジンをスタートさせる。
  
○ 山道
  急発進するナイト2000。
  暫くして、岩道の前に青いライトバンが立ち止まる。
  運転席のドアが開き、キュールが降りてくる。
  キュール、岩の斜面を登り始める。
    ×  ×  ×
  そこから数百メートル離れた山道の脇道に止まるナイト2000。
  スピーカーからRC3の声が聞こえる。
RC3の声「アンディ達が男達に襲われた」  

○ ナイト2000車内
  スピーカーからRC3の声が聞こえる。
マイケル「なんだって?」
RC3の声「俺が助けたから心配要らない。それより、大変だぜ、マイケル。あんたが探してた
 スタート・エレメントをルバーの部下に持って行かれちまった」
マイケル「なぜ、アンディがそれを・・・?」

○ アンディの家の前
  バイクに股がっているRC3。
  左腕のコムリンクに喋りかけている。
RC3の声「昨日の晩、パイロットがやってきて、暫く匿ってたらしいんだ。朝になって、
 そのパイロットは、砂時計を置いてどこかに消えちまったってわけ」

○ ナイト2000車内
キット「マイケル・・・先程の青いライトバンは、もしかして・・・」
マイケル「ルバー達の手にスタート・エレメントが渡ったかもな。RC3、至急こっちに来てくれ!」
RC3の声「今、どこにいるんだ?」
キット「スイング峠の南500mの地点です」
RC3の声「わかった。すぐ行く」
  通信が切れる。
キット「マイケル、前を・・・」
  マイケル、フロントガラスの向こうを見る。
  数十メートル先にライフルを構えたルバーが立っている。ルバーの足下で犬が吠えている。
マイケル「洞窟まで行く手間が省けたな」
キット「どうするんです?」
マイケル「仲良くお話できる雰囲気じゃないよな」
  
○ ゆっくりと前進するナイト2000
  ルバー、近づいてくるナイト2000に向けて、銃を撃つ。
  フロントガラスに銃弾が当たるが、火花を散らし、跳ね返している。
  唖然とするルバー。もう一度引き金を引く。ボンネットに弾が当たるが跳ね返している。
  立ち止まるナイト2000。
  ルバー、怪訝な表情でナイト2000に近づいて行く。

○ ナイト2000車内
  ルバー、運転席のドアの前に立ち、マイケルにライフルを向ける。
  マイケル、観念した様子でルバーを見つめ、
マイケル「俺は、鹿じゃないぜ」
ルバー「車から降りろ」
   ×  ×  ×
  マイケル、車から降り、両腕を上げる。
  ルバー、マイケルをまじまじと見つめ、
ルバー「洞窟に入り込んできたのは、やはり、お前だったのか」
マイケル「サラマンダーをどうする気だ?」
ルバー「デンバー市を攻撃するために使う。あの辺一帯は、都市化が進んで、ゴミのように
 人間が増えちまった。多くの自然を破壊した間抜けどもに鉄槌を下し、古き良き時代を
 取り戻すんだ」
マイケル「自然を愛する気持ちは、わかるが、時代は、進んでるんだ。おまえに止められる
 はずがない。それに、町を破壊したら、おたくの大好きなボウリングもできなくなるんだぜ」
ルバー「そんなもん、後から作り直せばいい」
  ルバー、右手に黒い小型の送信機を持ち、
ルバー「スタート・エレメントは、セット済みだ。後は、ここにターゲットを入力するだけで
 ヘリのエンジンが起動し、攻撃を開始する」
  ルバー、赤いボタンを押す。
マイケル「キット」
   ×  ×  ×
  『POLYPHONIC SYNTHESIZER』のボタンが光る。
   ×  ×  ×
  突然、パトカーのサイレンが鳴り響く。
キットの声「警察だ。大人しく銃を降ろせ!」
  ルバー、後ろを振り替える。その隙にマイケル、ルバーのライフルを素早く掴み取り、
  ルバーに銃口を向ける。
  ドーベルマン、マイケルに飛びかかり、マイケルの足に噛みつく。
  マイケル、必死の表情でドーベルマンを降り払おうとする。
マイケル「キット、こいつをなんとかしてくれ」
  キットのスキャナーから特殊な高周波が鳴り始める。
  ドーベルマン、噛むのを止め、その場に大人しく座り込む。
  ルバー、ほくそ笑み、
ルバー「もうボタンは、押した。今頃ヘリは、無人で飛び出しているはずだ」
  
○ 洞窟内
  サラマンダーのエンジンが高鳴る。
  ローターとテールローターが重く無気味な音を立てながら回り始める。

○ サラマンダー・コクピット内
  誰もいない操縦席。
  機体がゆっくりと浮き上がる。
  
○ 山の頂上から姿を表わすサラマンダー
  前進し、デンバー市内に向かって飛行し始める。

○ 山道
  ナイト2000の後方から、RCの乗ったバイクが近づいてくる。
  バイク、ナイト2000の前で立ち止まる。
  RC3、ヘルメットを脱ぎ、バイクから降りると、マイケルの前に近づく。
  マイケル、RC3にライフルを渡し、
マイケル「警察が来るまでこいつを見張っててくれ」
RC3「(ライフルを掴み)ヘリは、どうした?」
マイケル「無人で飛行を始めたようだ。早く止めないとデンバーが火の海だ」
  マイケル、ナイト2000に乗り込む。
  ナイト2000、急発進し、華麗にターンして、逆方向へ走り始める。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
マイケル「キット、デボンを呼び出してくれ」
  モニターに財団本部の部屋にいるデボンとボニーが映し出される。
デボンの声「どうした、マイケル。ヘリは、見つかったのか?」
マイケル「ああ。だが、デンバーをターゲットに攻撃体制に入った。至急、ハーゲン社長と
 話がしたい」
  デボンの隣にハーゲンが立ち、画面に映る。
マイケル「社長、ヘリの攻撃目標を変えるには、どうしたらいい?」
ハーゲンの声「うちのメインコンピュータを使って、オートパイロットのシステムに侵入できる
 はずだ。今、ボニーにやってもらっている」

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  コンピュータのディスプレイの前に座り、キーボードを打ち込んでいるボニーの姿が映っている。
ボニー「あれ・・・おかしいわね。コードを受け付けないわ」
ハーゲン「アクセス拒否のホールドをかけられているんだ」

○ ナイト2000車内
ハーゲンの声「補助システムのほうならアクセスできるはずだ。但し、それでは、ターゲットの
 変更をする事しかできない」
マイケル「じゃあ、すぐにアクセスして、ターゲットを変えてくれ」
ボニーの声「駄目よ、マイケル。いくら、キットでも、サラマンダーの攻撃能力には、勝てないわ」
マイケル「レーザーパックの補充は、してあるんだ。それで、サラマンダーを撃ち落とす。
 社長、サラマンダーの一番の弱点は、どこだ?」
  ハーゲン、困惑した様子。
マイケル「迷っている暇は、ないんだ。多くの人命がかかってる・・・」
ハーゲンの声「・・・唯一の弱点と言えば・・・メインローターの接合部分だ。そこに強力な衝撃を
 与えれば、ローターとボディを分断することができる」
マイケル「わかった」
キット「マイケル、ヘリの姿を確認しました」
  フロントガラス越しの前方の上空を飛行しているサラマンダーの後ろ姿が見える。
マイケル「ボニー、早くコードを送るんだ」
ボニーの声「送信したわ」
マイケル「よぉし、キット、スーパーモードだ!」
  マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  爆音を轟かせ、高速で走行し始めるナイト2000。
  サラマンダー、旋回し、ナイト2000に向かって飛行し始める。

○ サラマンダー・コクピット
  『MISSILE』のボタンが発光する。

○ サラマンダーのミサイルポッドから対地ミサイルが発射される
  山道を猛烈な勢いで走るナイト2000。
  ミサイルがナイト2000の後方に落ち、炸裂する。大きな爆炎を上げている。

○ サラマンダー・コクピット
  『TRIPLE LASER』のボタンが青く発光する。

○ サラマンダーの機体の先端から三本のオレンジ色の光線が地上に向けて発射される
  走行するナイト2000の行く手に次々とレーザーが当たる。アスファルトの路面を砕き、
  林にある木を分断する。あちこちで上がる巨大な炎を潜り抜けるナイト2000。
キットの声「マイケル、このままだと、コロラドの美しい景色がズタズタにされてしまいます」
  ナイト2000、サラマンダーの頭上を通り過ぎる。
  サラマンダー、低空で大きく旋回し、ナイト2000の後を追いかけ始める。
  ナイト2000、サラマンダーとの距離をどんどん離して行く。

○ 山上
  湖岸の前でEBSモードを起動し、急停止するナイト2000。
  
○ ナイト2000車内
  マイケル、おもむろに周りを見渡し、大きな山のほうを見つめ、
マイケル「奴を追いつめる良いアイデアが浮かんだぞ。キット、橋のかかってる峠を探すんだ。
 出来るだけ高い所をな」
  モニター画面に地形図が映し出される。
  地形図が縦や横にスクロールし、赤い点滅が浮かび上がる。
キット「ありました。標高5331m。巨大なダムの前にかけられている橋です。ここから、
 約13km地点・・・」
  マイケル、後ろを向く。
  リアガラス越しにサラマンダーが近づいてくるのが見える。
  
○ サラマンダーの機首の先端からオレンジ色のレーザーが発射される
  発射された三発のレーザーのうちの一発がナイト2000のテールに当たる。
  激しく火花が飛ぶ。
  けたたましいエンジン音を唸らせながら、猛スピードで走り出すナイト2000。
  サラマンダーとの距離をどんどん離して行く。
  
○ 山道
  緩いS字の道を一瞬で通り過ぎて行くナイト2000。
  暫くして、山肌の向こう側から、サラマンダーが姿を表わす。
  ナイト2000を追って、スピードを上げているサラマンダー。
   ×  ×  ×
  山沿いの急な傾斜の道を上り続けているナイト2000。
  ナイト2000の左前方に赤い吊橋が見えてくる。
  
○ 吊橋前
  EBSモードを起動させ、橋の前で急停止するナイト2000。
  橋は、車二台分通れるぐらいの道幅で作られている。
  マイケル、ボタンを押し、ナイト2000を元の姿に戻す。

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、まさか、私をここから・・・」
  マイケル、ダッシュボードのボタンを操作しながら・・・
マイケル「ヘリが橋の前に近づいてくるまでにレーザーの出力レベルの調整だ」

○ ナイト2000の後方にそびえ立つ山の向こう側から、無気味な羽音を
  轟かせたサラマンダーがやってくる
  サラマンダー、橋の前にいるナイト2000のほうに向かって突き進んでくる。
  サラマンダーのミサイルポッドからミサイルが発射される。
  ミサイルは、ナイト2000に目掛けて、勢い良く飛んでくる。
  ナイト2000、急発進し、橋の上を走り始める。その直後、ナイト2000の
  後ろにミサイルが落ち、巨大な爆音とオレンジ色の炎が舞い上がる。
キットの声「マイケル、橋を破壊されたら、私達もおしまいです!」

○ ナイト2000車内
  マイケル、険しい目つきで左ドアの窓からサラマンダーを睨みつける。
  サラマンダーが橋の中央に向かって、飛んでくる。
  マイケル、ハンドルを思い切り左に切る。

○ 橋の真中で横滑りし、サラマンダーと向かい合うナイト2000
  ナイト2000の前にどんどん近づいてくるサラマンダー。
  
○ ナイト2000車内
  マイケル、『LASER』のボタンを押す。
  
○ ナイト2000のボディの先端から緑色のレーザーが発射される
  レーザーは、サラマンダーの機体の下側に当たるが、びくともしていない。

○ ナイト2000車内
キット「駄目です。高度が足りません」
  マイケル、ダッシュボードのボタンを操作する。電子音が鳴り響く。
マイケル「全エネルギーをターボブーストに注ぎ込む」
  モニターにターボブーストの高度角度を示すグラフが映し出される。
マイケル「よし、行くぞ!」
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
  
○ 橋の上から勢い良くジャンプし、向かってくるサラマンダーの前に飛び出すナイト2000
  ナイト2000のボディの先端からレーザーが発射される。
  レーザーは、サラマンダーのメインローターの接合部に見事にヒットする。
  ナイト2000、サラマンダーの頭上を飛び越えて行く。
  サラマンダーのメインローターと機体が分離し、機体が勢い良く峠の奥底に落ちて行く。
  ナイト2000、パラシュートを開き、空に浮かんでいる。
  山の麓に墜落し、高い火柱を上げ、炎上するサラマンダー。
  
○ ナイト2000車内
マイケル「やったぜ、キット!」
キット「早く地上に降ろしてください。生きた心地がしません・・・」
−ACT4 END−

−ACT5−
○ アンディの家前
  入口の扉が開き、RC3とアンディとグレンダが外に出てくる。
  三人、立ち止まる。RC3とアンディが対峙し、
RC3「もう二度とあんな下手な誘いに乗るんじゃないぞ」
アンディ「このうちを守りたい一心で、また昔の癖が出てしまった。借金は、ちゃんと働いて
 返すことにするよ」
  アンディの左隣りに立っているグレンダが話し出す。
グレンダ「私も協力するわ」
アンディ「君は、心配する必要はない」
グレンダ「私達、夫婦になるんでしょ?」
  RC3、二人の様子を見つめ、笑みを浮かべ、
RC3「結婚式には、俺も呼んでくれよ。必ず駆けつけるから」
  RC3、アンディに右手を差し出す。
  アンディ、右手を出し、握手する。
RC3「じゃあな」
  RC3、手を振り、その場を離れて行く。
  アンディ、グレンダ、腕を組み、手を降っている。
   
○ 山の中腹
  山道を走るRC3のバイク。
  脇道に止まる。
  RC3、バイクから降り、森の中に入り込んで行く。
  泥沼の中に落ちているナイト2000の前に近づく。
RC3「あらま、こんなところで水遊びかキット」
キットの声「冗談を聞いている余裕は、ありません。暫く喋りかけないでください」
  マイケル、泥だらけになりながら、太い木の幹にフックをかけている。
  マイケル、RC3に気づき、
マイケル「ちょうどいいところに来てくれた。手伝ってくれ」
RC3「そのつもりでやってきたの。キット、本気で怒ってるみたいだぜ」
  マイケル、RC3、ナイト2000の前に回り込み、車を押し始める。
キット「当たり前です。だから、空を飛ぶのは、嫌なんです」
マイケル「そう言うなよ、キット。おまえのターボがなかったら、デンバーの町は、
 救えなかったんだぜ」
RC3「その通り。おまえは、デンバーの市民を救ったまさに救世主さ」
 通信のアラームが鳴り、モニターにデボンが映るが、電波の受信状態が悪い。
デボン「無事、地上に降りたかね、マイケル・・・」
  デボン、怪訝に眉を顰め、
デボン「キット、マイケルは、どうした?」
キット「デボンさん、お願いがあります。私にも休暇をください」
  デボン、難しそうに顔を歪める。
                      
                                     −THE END−

戻る