『MAZE OF BETRAYAL』 作 ガース「ガースのお部屋」

―ACT1―
○ ビジネス街・通り(深夜)
  ヘッドライトを光らせて走っているRC3のバイク。
  RC3、茶色の皮ジャン、黒いヘルメットを被っている。

○ 倉庫前
  立ち止まるRC3のバイク。
  ヘルメットを脱ぎ、バイクから降りるRC3。
  ゆっくりと扉の前に向かって歩いて行く。

○ 同・中
  暗闇の中を歩き出すRC3。
RC3「ザック…俺だ、どこにいる?」
  積まれた荷物の影にしゃがみこんでいるザック・ハラス。リュックサックを抱えている。
  リンゴを齧っている。
  入口の方を見つめるザック。
ザック「よぉ!」
  RC、ザックに気づき、近づいて行く。
RC3「急に呼び出しやがって。何の用だい?」
  ザック、リュックサックを下ろし、中を開け始める。
ザック「実はな、お前に見せたいものがあるんだ」
  ザック、バックからミレッサの仮面を出す。
RC3「どこで手に入れた?まさか、拾ったって言うんじゃねぇだろうな」
ザック「いいや、うちの家宝だ」
  ザック、仮面をRC3に手渡す。
  仮面をまじまじと見つめるRC3。
RC3「お前のコレクションだって?ありえねぇ…」
ザック「これから、テキサスまで出稼ぎに行かなきゃならなくて…そいつを暫く預かってもらいたいんだ」
RC3「お安い御用だが、なんでこんなもんを持ち出してきた?」
ザック「最近、借金の取り立てが激しくて。死んだ親父の約束だ。こいつを売り払うことは、できない」
  ザック、ミレッサの仮面をリュックサックにしまい、RC3に渡す。
ザック「向こうについたら、また連絡する」
  立ち上がるザック。RC3に背を向け、歩き去る。
  
○ 国道(翌日・朝)
  走行するナイト2000。
キットの声「数百メートル前方から奇妙な音色が聞こえてきます」
マイケルの声「奇妙な音色?」

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
  モニターに映るテレビを見ている。
  ビキニ姿のグラマーな美女が映っている。
キット「賑やかな人の歓声も聞こえます」
  マイケル、前を見つめる。進路方向の右側に巨大な観覧車とジェットコースターが見える。
マイケル「なんでわざわざ、遠まわしな言い方をするんだ?」
キット「テレビからあなたの注意を反らすためです」
マイケル「遊園地か…俺が小さい頃は、まだあんなにでっかい観覧車はなかった。ジェットコースターもな」
キット「あんな観覧車に乗るくらいなら、山の頂上に登ってみたり、スカイダイビングを
 する方が爽快な気分になるのでは?」
マイケル「あそこからしか見えない景色もあるのさ。子供達やカップルの夢を乗せる箱でもある。
 お前も一度乗ってみたらどうだ?」
キット「ええ。乗れるものなら…」
  マイケル、またモニターを見ている。
マイケル「それよりも俺は、こっちのほうがいい」
  通信のアラームが鳴り響く。
  モニターにトレーラーのコンテナにいるボニーが映し出される。
マイケル「おはよう、ボニー」
ボニー「デトロイトの件は、片付いたの?」
マイケル「ああ、デボンが重要な事件だって言うから急いで行ったのに、とっ捕まえたのは、
 ただの下着泥棒だった」
ボニー「なんだか期待はずれだったみたいね」
マイケル「そんなことはないさ。おかげで早くそっちに戻れそうだ」
ボニー「RC3がまだ来てないの」
マイケル「寝坊なんて珍しいな」
ボニー「さっき、自宅に連絡したけど、電話に出ないの。心配だから、帰りついでにちょっと様子を
 見てきて欲しいんだけど」
マイケル「俺が?」
ボニー「そう」
  溜息をつくマイケル。
マイケル「わかったよ。行けばいいんだろ」
ボニー「お願いね」
  モニターの映像が消える。
マイケル「一仕事片付いたところなのに、RCのやつ、余計な仕事を増やしやがって」

○ ビジネス街
  高層ビルが建ち並ぶ通り。
  売店の前に立ち寄るRC3。リュックサックを下げている。
RC3「レモネード」
店員の男「あいよ」
  店員、RC3にレモネードを手渡す。
  手前に山積みにされている新聞雑誌の見出しを見つめるRC3。
  唖然とし、新聞を掴む。
  ジッと新聞を読み続けているRC3。
  店員の男、しかめっ面をし、
店員の男「ここで読まれちゃあ、営業妨害だぜ、旦那…」
RC3「あ、悪いねぇ」
  RC3、ポケットから1ドル札を出し、店員に手渡すと、そのまま立ち去って行く。
  怪訝な表情でRC3を見ている男。
  歩道脇に立ち、新聞を読んでいるRC3。
  新聞の見出し『消えたミレッサの仮面。どこへ…』。
  写真を見つめ、驚愕するRC3。手前に止めてあるバイクにまたがり、ヘルメットを被る。
  
○ アパート前
  3階建て、赤レンガの古びた建物。
  立ち止まるRC3のバイク。

○ アパート・3階
  通路を歩くRC3。
  303号室の前に立ち止まる。
  辺りを見回すと、ドアをノックする。
RC3「おい、ザック、俺だ、開けろ!」
  ドアノブを握る。ドアが開く。
  RC3、怪訝な表情を浮かべると、ゆっくりドアを開け、中に入って行く。

○ 同・303号室内・リビング
  辺りを見回すRC3。誰もいない。
  部屋の右側にあるドアの前に行く。
  
○ 同・隣の部屋・ベッドルーム
  ドアを開けるRC3。
  辺りを見回している。
  ベッドを見つめるRC3。
  ベッドの横のテーブルに置いてあるコインを掴む。
  扉の向こうで物音がする。
  警察官がRC3に銃を向けながら中に入ってくる。
警察官「両手を上げてジッとしてろ」
  RC3、ゆっくりと警察官の方に顔を向ける。
RC3「勘違いするな。俺は、ここに住む男の友人だ」
警察官「さっき、通報があった。ミレッサの仮面を盗んだ強盗犯がここにいるとな。
 そのリュックサックの中を見せてもらおうか」
  警察官、銃をしまい、手錠を出そうとする。
  RC3、その隙を狙い、警察官の腹を殴りつけ、さらに背中を殴りつける。
  警察官、その場に崩れる。
RC3「ちょっとやりすぎたか」
  RC3、部屋から飛び出して行く。

○ アパート前
  階段を駆け下りて来るRC3。
  バイクにまたがり、エンジンをかける。
  勢い良く走り出す。
  
○ 交差点に飛び出すRC3のバイク
  その時、横から白いテスタロッサがやってきて、バイクの前に立ち塞がる。
  RC3、急ブレーキをかけ、テスタロッサを避けるが、体勢を崩し、バイクと共に転倒する。
  路上に転がるRC3。仰向けに倒れる。
  意識もうろうとするRC3。

○ RC3の目線
  RC3を見つめる金髪の男。顔は、はっきりと見えないが、左の頬のホクロが見える。
  やがて、RC3の意識がなくなる…

○ ディックサーバー研究所・全景
  3F建ての色褪せた建物。

○ 同・1F・隔離室
  無菌室のような白い空間。円を描きながらうろうろと歩き回っているRC3。
  扉が開く。
  ベージュのコートを着た金髪、面長の若い男・マーカス・フォードと体格の
  良い黒人の男・ネイルが入ってくる。
  RC3と対峙するマーカス。
マーカス「お前に聞きたい事がある」
RC3「人に物を尋ねる態度じゃねぇな」
マーカス「ザックは、どこにいる?」
RC3「誰だいそりゃあ?聞いた事ねぇな」
  マーカス、スーツのポケットから注射器を取り出す。ピンク色の液体が入っている。
マーカス「惚けてる余裕があったら早く吐いた方が身のためだ」
  注射器を見つめるRC3。
  ネイル、RC3を鷲掴みにし、左腕の服の裾を捲り上げる。
RC3「中身は、なんだ?」
マーカス「LSDだ」
RC3「何の罪もない一般市民に何てことしやがる」
  マーカス、RC3の左腕に注射器を突き刺す。
  顔を歪ませるRC3。
  液体がなくなると、注射器を抜き取るマーカス。
  ネイル、RC3のそばから離れる。
  RC3、まじまじとマーカスの顔を見つめる。
マーカス「なんかついてるか?」
RC3「お前の顔は、ちゃんと覚えとくぜ」
  マーカス、ほくそ笑みながらネイルと部屋から出て行く。
  扉が閉まると同時にその場に座り込むRC3。左腕を押さえながら、俯く。

○ 住宅街
  古びた2F建て、長屋のアパートの前に立ち止まるナイト2000。
  運転席の扉が開き、マイケルが出てくる。

○ アパート・2F・RCの家前
  扉をノックするマイケル。
マイケル「RC、俺だ、マイケルだ」
  ドアをノブを回すマイケル。鍵がかかっている。
  コムリンクに話し出すマイケル。
マイケル「キット、RCを目覚めさせてやれ」

○ ナイト2000のスキャナーが唸る

○ ナイト2000車内
キット「誰もいません」

○ アパート・2F・RCの家前
マイケル「先におまえで調べとけば良かったな」
キットの声「良い運動になったでしょ?」
マイケル「疲れが倍になったぜ」
  マイケル、その場から立ち去る。

○ ディックサーバー研究所・1F・隔離室
  部屋の真ん中で大の字になり、眠っているRC3。
  暫くして、目を覚ます。
RC3「もう天国に着いたのか?」
  天井のスピーカーからマーカスの声が聞こえる。
マーカスの声「どうやら薬を間違えたようだ」
  天井に顔を向けるRC3。
RC3「ただの睡眠剤か。びっくりさせやがって」
  立ち上がるRC3。
RC3「朝から何も食ってねぇんだ。なんか食べるもんをくれ」
マーカスの声「いいだろう。後で持っていってやる」

○ 同・隔離室
  唖然としているRC3。
RC3「薄気味悪いな。さっきと態度が大違いだ…」
  RC3、部屋の周りを見渡す。扉の上の壁に監視カメラが設置されているのに気づく。
  外から足音が聞こえる。扉の前に行くRC3。
RC3「誰かいるのか?」

○ 同・隔離室前
  険しい表情で立っている黒人の男・ネイル。
  部屋の中からRC3の声が聞こえてくる。
RC3の声「小便がしてぇ」
  ネイル、無視している。
RC3の声「せっかくの綺麗な部屋にアンモニアの匂いを充満させちまってもいいのか?」
  ネイル、何も言わずズボンのポケットから鍵を出し、ドアを開ける。
  その瞬間、ドアを蹴飛ばすRC3。
  蹴られたドアにぶつかり、仰け反り倒れるネイル。
  部屋から出てくるRC3。
  倒れたネイル、咄嗟に起き上がる。RC3、すかさず、ネイルの顔を殴りつける。
  さらにもう一発。
  ネイル、ダウンし、床に勢い良く倒れる。
  RC3、通路を歩き出す。

○ 同・監視室
  十数台のモニターが横一列に並んでいる。
  操作卓の前に座っている男。
  その後ろに立っているマーカス。
  真ん中のモニターに通路を歩くRC3の様子が映っている。
ネイル「奴が脱走しました。本当にこれで良かったんですか?」
マーカス「ああ。後をつけろ」
―ACT1― END

―ACT2―
○ 草原に囲まれた市道を疾走するナイト2000
  前方にナイト財団移動本部の黒いトレーラーが走っている。
  トレーラーのコンテナの中に勢い良く入るナイト2000。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  立ち止まるナイト2000。マイケルが降りてくる。
  コンピュータの前に座っているボニー。
  ボニーの前に近づいて行くマイケル。
マイケル「その後、連絡は?」
  首を横に振るボニー。
ボニー「ないわ」
キットの声「交通事故にでもあったのでは?」
マイケル「まさか。RC3に限ってそんなこと…」
  携帯電話が鳴り響く。
  ボニー、素早く立ち上がり、電話に出る。
ボニー「RC!」
  マイケル、ボニーの前に近づいて行く。

○ 公園内
  噴水の近くにある公衆電話の前に立つRC3。
  受話器を持ち話している。
RC3「マイケルを出してくれ」

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  ボニーから携帯電話を受け取るマイケル。
マイケル「俺だ」
RC3の声「至急、ザック・スパイリーって男の行方を探して欲しい」
マイケル「何があった?」

○ 公園内
RC3「昨夜、呼び出されて、倉庫に行ったら、あいつから、ミレッサの仮面を渡された」
マイケルの声「ミレッサの仮面?」
RC3「今朝の新聞の社会面を見てみろ。三日前に資産家の自宅から盗み出された
 時価数億ドルする代物だ」

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
マイケル「仮面は、手元にあるのか?」
RC3の声「いいや、今朝ザックの家に行ったら、警官が現れて、慌てて逃げたら、
 変な男に捕まって監禁された…仮面は、そいつらが持ってるはずだ。あの野郎、俺をはめやがって…」
マイケル「落ち着け。場所を教えてくれ」
  マイケル、ボニーからメモとペンを手渡される。メモを書き始めている。
マイケル「わかった。そこで大人しくしてろよ」
  携帯電話を切るマイケル。
  マイケル、ナイト2000に乗り込み、エンジンをかける。

○ 走行するナイト財団移動本部トレーラー
  コンテナの中からバックして出てくるナイト2000。
  路面に下りるとスピンターンし、トレーラーと逆方向へ走り出す。

○ ナイト2000車内
マイケル「キット、今朝の新聞を見せてくれ」
  モニターに新聞の記事が映し出させる。
  記事を見つめるマイケル。
キット「RC3は、仮面強盗の濡れ衣を着せられているのですか?」
マイケル「詳しい事情は、わからないが、そうらしい。フェイル・ケンドールについての資料を見せてくれ」
  モニターに白髪、白い顎鬚を生やし、眼鏡をかけた紳士風の老人の写真が映る。
キット「フェイル・ケンドール。ネバダでいくつものホテルを経営している資産家です。様々な企業に投資し、
 資産額は、300億ドルを上回ると言われています」
マイケル「盗まれた仮面について教えてくれ」
  モニターにミレッサの仮面の写真が映る。
キット「1920年代にローマの有名な工芸家ミレッサ・マスカーニが制作したものです。10年前にフェイルが
 イタリアのオークションで競り落とし、コレクションとして、自宅に保管していました。時価1億5000万ドルの
 値のつく大変高価なマスクです」
マイケル「1億5000万ドルか。フェイルにとっては、安い買い物かもな」

○ 公園内
  苛立った様子で辺りを見回しているRC3。ふと、通りを見つめる。
  一台のパトカーが入口の前に立ち止まる。
RC3「やべぇ…」
  RC3、後退りし、踵を返し走り去って行く。
  2人の警官が公園内に入ってくる。
  子供連れの女性と対峙し、話し出す警官。
警官A「迷子になったのは、この子ですか?」
女性「ええ、そうです…」
   ×  ×  ×
  入口の前に立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。目の前に止まっているパトカーを見つめる。
  警官達、パトカーに乗り込み、走り去って行く。
  公園の中に入って行くマイケル。噴水の前で立ち止まる。
  公衆電話に気づき、近づいて行くマイケル。RC3の姿はない。
  コムリンクに話し掛けるマイケル。
マイケル「キット、スキャナーでこの辺一体を調べてくれ。RC3が消えた」

○ ナイト2000のスキャナーが唸る

○ ナイト2000車内
  モニターに公園周囲1kmの地図のイメージが映し出される。
キット「RC3らしき人物は、見当たりません」

○ 公園内
  溜息をつくマイケル。
  その様子を近くの木陰から見つめているネイル。

○ ゲームセンター
  様々なゲーム機が並び、騒然としている。
  テーブルでゲームに夢中になる少年達。
  奥にある台の前に立つザック。ピンボールに夢中になっている。
RC3の声「やっぱり、ここだったか」
  振り返るザック。目の前にRC3が立っている。
  唖然とするザック。
ザック「なんでわかった?」
  RC3、コインを見せる。
RC3「お前の家で見つけた」
ザック「別に騙すつもりは、なかった」
  RC3、背負っていたリュックサックを下ろし、ザックに投げ渡す。キャッチするザック。
RC3「こいつのおかげで俺は、強盗犯の仲間入りさ」
ザック「2人組の男に商談を持ちかけられたんだ。この仮面を暫く預かってくれって」
RC3「いくらでだ?」
ザック「百万…」
RC3「どうして、俺に仮面を渡した?」
ザック「怖くなった」
RC3「それで、俺を犠牲にして、お前は金を持ってとんずらか」
ザック「無銭飲食を続けて半年ぐらいムショで世話になった。仕事をしようにも昔の仲間は、皆街を
 離れてしまって、どこにも当てがなかった」
  ザック、ジャンパーのポケットから札束を出す。
RC3「今から警察に行って、今のことを全部話せ」
  ザック、いきなり、リュックサックでRC3の頭を殴りつける。
  その場に倒れ込むRC3。
ザック「もうムショの生活は、飽きた」
  ザック、リュックサックを持ち、走り去って行く。
  
○ 住宅街
  市道をゆっくりと走行しているナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
キット「どうして電話のそばから離れたんでしょう…」
マイケル「俺達が公園に着いた時、丁度パトカーが止まってた。おそらくそれを見てどこかへ
 雲隠れしたんだろう。ザックの自宅に向かうぞ」
キット「待ってください。何者かにつけられています」
マイケル「モニターに出してくれ」
  モニターに後方を走る型の古いブルーのセダンが映る。
  モニターを見つめるマイケル。
マイケル「運転席の方をアップしてくれ」
  セダンの運転席にズームアップして行く。
  ネイルが運転している。
キット「RC3と関係のある人物でしょうか?…」
マイケル「今からそれを突き止めてやる」
  アクセルを踏み込むマイケル。

○ スピードを上げるナイト2000
  セダンもスピードを上げ、ナイト2000を追う。

○ 交差点
  タイヤを軋ませながら、勢い良く右に曲がるナイト2000。
  同じくセダンも曲がってくる。

○ 坂道
  猛スピードで登っているナイト2000
  暫くして、ブルーの車も登ってくる。
  ナイト2000、タイヤを滑らしながら、道を塞ぐように立ち止まる。
  やってくるセダン。急ブレーキをかけ、ナイト2000の50m手前で立ち止まる。
  車から降りるマイケル。セダンに近づいて行く。

○ セダン・車内
  ネイル、助手席に置いている電子銃を掴む。
  マイケルが運転席の前に近づいてくる。

○ ナイト2000のスキャナーが唸る
キットの声「マイケル、その車から離れて。男が銃を持っています!」
  立ち止まる、マイケル。
  ネイル、車のドアの扉から上半身を出し、電子銃をマイケルに向ける。走り出すナイト2000。
  マイケルの前に立ち止まる。車に乗り込むマイケル。
  引き金を引くネイル。
  赤い色の光線が発射し、キットのスキャナーの部分に当たる。
  スキャナーが破壊され、動いていた赤いランプが消える。

○ ナイト2000車内
キット「スキャナーが破壊されました」
マイケル「一先ず退散だ。煙幕を張れ」
  マイケル、『SMOKE RELEASE』のボタンを押す。

○ 180度ターンし、セダンに白い煙を撒き散らすナイト2000
  白い煙に包まれるセダン。
  ネイル、激しく咽ている。
  猛スピードで走り去って行くナイト2000。
  
○ 路地裏
  頭を押さえ、ふらつきながら歩いているRC3。アパートの壁にもたれかかる。
RC3「痛い一日だ、ったく…」
  突然、RC3の前に赤いポルシェが止まる。
  窓が開き、茶髪のセミロングの若い女が顔を出す。
  女、RC3に話し掛ける。
女「気分悪いの?」
RC3「えっ?」
女「病院まで運んであげる。早く乗って」
  呆然としているRC3。

○ ディック・サーバー研究所・1F監視室
  入口が見渡せる窓際にマーカス、その後ろにとネイルが立っている。
マーカス「男の正体は、わかったのか?」
ネイル「マイケル・ナイトという男だ。あの男の仲間らしい」
マーカス「なぜ、始末せずに戻って来た?」
ネイル「電子銃を使ったが、変な車に邪魔されてトドメをさせなかった」
  振り返るマーカス。
マーカス「言い訳は、みっともないぞ」
  マーカス、隣の部屋を見通せる窓の前に歩いて行く。
ネイル「あの銃は、パワー不足だ。車のボディにも歯が立たなかった」
  隣の部屋をまじまじと見ているマーカス。
ネイル「本当だ。信じてくれ」
  隣の部屋。椅子に体を縛りつけられたザックがいる。アイマスクで目隠しされ、猿轡をされている。
  ネイル、ザックを見つめ、
ネイル「どんどん七面倒な事になってきてる。あの野郎のせいで…」
  マーカス、ネイルと対峙し、
マーカス「俺達で何とかするしかない。もう一つ仕事をやる」
  ネイル、静かに頷く。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  ナイト2000のエンジンルームを覗き込んでいるボニー。
  コンピュータの前でコーヒーを飲んでいるマイケル。
  ボニー、ナイト2000のボンネットを閉める。
ボニー「いいわ。キット、スキャナーを動かしてみて」
  ナイト2000のスキャナーの赤いランプが光り、横になびき始める。
キットの声「ありがとう、ボニー。前より動きが良くなりました」
  ボニーのそばに立つマイケル。
マイケル「丁度いい。治ったスキャナーで今日のボニーのご機嫌を調べてくれ」
  溜息をつき、マイケルを見つめるボニー。
ボニー「いいわけないでしょ」
キットの声「気にしないでください、ボニー。いつもの事ですから」
  工具箱を持ち、マイケルのそばを離れて行くボニー。
マイケル「仮面を狙っている組織があんなハイテク武器を持っているなんて、
 誰も想像できないと思うけどな」

○ ナイト2000車内
キット「スキャナーの特殊なコーティングに穴を空けてしまう程です。敵は、かなりの頭脳集団なのでは?」

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
マイケル「登録ナンバーの照合は、もう終わったか」
キットの声「ええ。所有者は、ハーベイ・モルトと言う男性のものです。一ヶ月前に
 警察に盗難届けが出ています」
  溜息をつくマイケル。
マイケル「やっぱり、手掛かりには、ならないか…」
  通信のアラームが鳴り響く。
  コンピュータのディスプレイにナイト財団本部のオフィスのデスクにいるデボン・シャイアーが映し出される。
デボンの声「さっき警察から電話があった。RC3が指名手配されている。殺人容疑でな」
  ディスプレイの前に立つマイケルとボニー。
マイケル「奴は、事件に巻き込まれただけだ。犯人じゃない」
デボンの声「あいつは、今どこにいる?」
マイケル「連絡があって、約束の場所に向かったけど、どこかに消えちまった」
デボンの声「おまえは、動かなくていい。RCの件は、警察に任せる」
マイケル「どうして?」
デボンの声「別件の仕事がある」
マイケル「…RC3の無実を証明する事よりも大事な事なのか?」
デボンの声「RC3が無実だったとしても、それを証明するのにどれだけの時間がかかる?」
マイケル「優先順位を間違ってないか?RC3は、俺達の仲間だ」
デボンの声「有力な証拠でもあれば別だがな。ここでぼやいていても埒があかない」
  マイケル、怒りを堪え、唇をかみ締める。
デボンの声「勝手な行動は、許さんぞ、マイケル。仕事の内容は、あとでキットに送っておく」
  デボンの映像が消える。
マイケル「デボンには、悪いがあいつをほっとけない」
ボニー「…そう言うと思って、キットの耐熱コーティングの強度を30%上げといたわ」
マイケル「さすがだね、ボニー」
ボニー「デボンさんには、何とか言い繕っておくから」
  マイケル、ナイト2000の運転席に乗り込む。
  バックし始めるマイケル。
―ACT2―

―ACT3―
○ ハイウェイ
  何台もの車が行き来している。
  その中を走る赤いポルシェ。

○ 赤いポルシェ・車内
  ハンドルを握る女。助手席にRC3が座っている。
RC3「何で俺をつけた?」
女「あなたと話がしたかったの」
RC3「話って?」
女「あなたがあの研究所から出ていくところを見たわ。あそこの社員なの?」
  首を横に振るRC3。
RC3「いいや。俺は、あそこで拉致されてたんだ」
女「…どう言うこと?」
RC3「金髪の細身の男にいきなり殴られて。危うくLSDづけにされるところだった」
女「その男…右の頬にホクロがあった?」
RC3「その前にあんた誰だ?」
女「私は、ミア・フォード。マーカス・フォードの妻よ」
  女は、ミア・フォード。
RC3「あんたの旦那か…」
ミア「夫は、トラックのドライバーをしているの。毎日、遠方を走るから家に戻ることも少なくて。
 前に夫の同僚の人と話した時、気になる話を聞いたの…」
RC3「…」
ミア「ギャンブルでこさえた借金がかなりあるらしいって…」
RC3「…へぇ」
ミア「それで、昨夜、彼の車の後をつけたの。ラスベガスのホテルを回った後、あの研究所に辿り付いた」
RC3「…大変ショックな事だが、落ち着いて聞いてくれ。マーカスは、仮面強盗の犯人だ。
 俺の友人に罪を被せて、命を狙ってる」
  茫然自失のミア。ハンドルから手を離し、両手を顔にやり、泣き崩れる。RC3、慌ててハンドルを握り、
RC3「運転変わろうか?」
  立ち直り、ハンドルを握るミア。
ミア「ごめんなさい…もう平気よ」

○ フェイルの屋敷・全景
  海沿いに建てられた豪華な屋敷。
  うねった道を走行するナイト2000。
  屋敷の方に近づいている。
マイケルの声「あれがフェイルの屋敷か?」
キット「そうです」

○ 同・2F書斎
  扉をノックする音。
男の声「どうぞ」
  扉が開く。マイケルが中に入ってくる。
  デスクの座席に座る白髪の老人・フェイル・マイヤーズの前に近づき、対峙するマイケル。
  フェイル、車椅子に座っている。
フェイル「ナイト財団とか言ったかね?」
マイケル「マイケル・ナイトです」
フェイル「ミレッサの仮面の事は、警察に任せているはずだが」
マイケル「実は、うちで働いている男がその事件に巻き込まれまして…」
フェイル「巻き込まれたとは、どう言う事だ?」
マイケル「その男が犯人の事をよく知っているんですが、生憎今連絡が取れなくて…警察の発表では、
 仮面が盗まれたのは、二日前の12時7分頃でしたね?」
フェイル「ああそうだ」
マイケル「失礼ですが、その時、何を?」
  失笑するフェイル。
フェイル「毎晩、11時には、就寝しているよ。最近は、寝つきが悪いんで薬を使っているから朝までぐっすりだ」
マイケル「屋敷には、他に誰かいましたか?」
フェイル「執事だけだ。妻には、先立たれて、息子達は、皆独立している。実は、これは、
 まだ警察にも話をしていないことなんだが…」
  神妙な面持ちのマイケル。
フェイル「今朝、その犯人から連絡があった。近いうちにまた狙われるかも知れん」
マイケル「と言うと?」
フェイル「どうも私に恨みを持っている連中のようだ。今度は、美術品強盗だけでは、済まないかもな…」
マイケル「犯行現場を見せてもらってもいいですか?」
  マイケルを怪訝に見つめるフェイル。
フェイル「よかろう…」
  デスクの電話の受話器を上げ、ボタンを押すフェイル。
フェイル「私だ。今すぐ来てくれ」

○ 同・家前
  止まっているナイト2000。
  ナイト2000の前方の道を歩いている巨漢の男・アレン。右手に大きな荷物を持っている。
  立ち止まり、ナイト2000をジッと睨んでいる。

○ ナイト2000車内
キット「嫌な予感…」

○ フェイルの屋敷前
  アレン、いきなり走り出し、ナイト2000前にやってくる。
  ガラスに黒いスモークをかけるナイト2000。
  ナイト2000の前に立ち、スキャナーの辺り見回している。
  溜息をつくアレン。
アレン「なぜだ?僕が追い求めていた究極の車がなぜこんなところに…」
キットの声「そんなに魅力的ですか?」
  唖然とする男。辺りを見回す。空を見る。
アレン「幻聴か?…働きすぎなんだきっと…」
キットの声「自分で幻聴を認識できているうちは、幻聴ではありませんのでご心配なく」
  アレン、ナイト2000を見つめ、
アレン「お前か…いや、車が喋るなんて…まだ21世紀まで十何年あるのに…」
キットの声「未来の車は、もう完成済みです」
  呆然としているアレン。
  ズボンのポケットからタオルを出し、顔の汗を拭いている。
アレン「部長に行って、休み貰おう…」

○ ナイト2000車内
  モニターに映るアレン。
  アレンの体のイメージがスキャンされ、体脂肪率の数値が計算される。
キット「あなたの場合、少し太り過ぎだと思います。糖分を控えめにして、
 毎朝ジョギングをする事をお勧めします」

○ フェイルの屋敷前
  突き出た腹を押さえ愕然とするアレン。
アレン「僕が食い過ぎだって言うのか?」
キットの声「このまま行くと、あなたが将来糖尿病にかかる確率は、87.3%。
 これ以上の間食は、控えるべきです」
  呆然と突っ立つアレン。

○ 同・1F・保管室
  様々な美術品がショーケースに納められ、飾られている。
  辺りを見回しているマイケル。
  扉の入口の前に黒いスーツを着た執事の男が立っている。
  マイケル、執事を見つめ、愛想笑いする。
  割れたガラスケースの前に行くマイケル。
  口元を手で触る振りをして、コムリンクのカメラで写真を撮る。

○ 同・家前
  ナイト2000のボディを両手で激しく揺さぶっているアレン。
キット「ちょっと、やめてくれませんか」
アレン「僕を怒らした罰だ」
キット「そんなに傷つくとは、思いませんでした」
アレン「今更謝ってももう遅いよ」
キット「どうすれば、許してくれるんです?」
アレン「じゃあ、僕の話を聞くか?」
キット「わかりました。少しだけですよ」
  ほくそ笑むアレン。足元に置いていた箱を開ける。中から緑色の掃除機が出てくる。
アレン「これ、なんだかわかるか?」
キット「掃除機でしょ?」
アレン「しかし、ただの掃除機じゃない。我が社が開発した未来の掃除機だ。
 超電動ターボジェットで吸い取り抜群、狭い隙間にも必ず届く万能ホースつきだ」
キット「ダッシュボードの隙間の誇りも綺麗に取れるのですか?」
アレン「楽勝!楽勝!今お掃除の無料サービス実施中」

○ ディックサーバー研究所・門前
  立ち止まる赤いポルシェ。

○ 同・入口
  中に入ってくる二人。
  暗がりの長い通路を歩き出す。
ミア「なんだか妙に静かだわ。人の気配を感じない」
  RC3、手前にある配電盤の前で立ち止まる。配電盤の扉を開ける。
RC3「ブレーカーが落ちてる」
  RC3、レバーを上げて行く。
  通路に明かりが灯る。

○ 同・監視室
  扉が開く。
  中に入ってくる二人。
  部屋の周囲には、監視モニターや操作盤が配置されている。
RC3「一体なんなんだ、ここは…」
  ミア、部屋の片隅に置いてある遊園地の模型の前に行く。
  模型を見つめるミア。
ミア「この遊園地…知ってるわ。子供を遊びに連れて行った事があるの」
  RC3、ミアのそばに近づき、模型を見つめる。
  観覧車の下に赤いマーキングがされている。
RC3「悪いが急いで外に出て、ナイト財団に連絡してきてくれ…」
  突然、部屋にネイルが入ってくる。
  ネイル、背後からRC3に襲い掛かる。床に転がり、激しい取っ組み合いをする二人。
  ネイルの腹の上に跨るRC3。
  ネイル、RC3を振り落とし、立ち上がる。RC3、素早く立ち上がり、ネイルの顔面にパンチを食らわす。
  呆然と様子を見ているミア。
  ネイル、RC3、首を掴み、そのまま、体を持ち上げる。
  RC3、ネイルの腹に蹴りを入れる。
  手を引き離し、もう一発顔面を殴りつける。その場に倒れるネイル。
  二人の前に立つミア。銃口をネイルに向けている。
  ネイルの胸倉を掴むRC3。
RC3「マーカスは、どこだ?」
ネイル「何で名前を知ってる?」
RC3「あの女性は、マーカスの奥さんだ」
ネイル「…10分くらいで、戻ってくる。誰かに会いに行った…」
RC3「誰だ?」
ネイル「知らん。相手については、何も聞かされてないんだ」
  RC3、ふと、壁隅の床を見つめる。
  リンゴの皮が落ちている。
RC3「ザックをここに連れてきたのか?」
ネイル「もう別の場所に運んだ」
  ネイルの首を締め上げるRC3。
RC3「どこだ?」
ネイル「ポイントアリーナの海岸だ」
RC3「聞いたか、ミア!早く行け」
  ミア、うんうんと頷きながら、慌てて部屋から走り去って行く。

○ 海岸沿い・道
  走行するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  モニターに映るガラスケースを見つめているマイケル。
キット「細長い鈍器のようなもので殴られた痕が見られます」
マイケル「あれだけ高級な美術品が揃っているのに、やけに警備が手薄だな。年老いた執事一人に管理を
 任せるなんて、どう考えたって不自然だ」
キット「私もそう思います。あれでは、盗んでくれと言っているようなものです」
マイケル「それに盗まれたのがあの仮面だけだったってのも引っかかる…キット、フェイルの
 屋敷の断面図を出せるか?」
  モニターにフェイル屋敷の断面図が映る。
キット「侵入口は、1F、2Fを合わせて16ヶ所あります。犯人は、予め、あの部屋が美術品の保管場所だった
 事を知っていた事になります」
  通信のアラームが鳴り響く。ナイト財団移動本部トレーラーのコンテナ内にいるボニーが映る。
ボニーの声「マイケル、さっき、ミア・フォードと言う女性から連絡があった。ミアは、仮面を盗んだ
 マーカス・フォードと言う男の奥さんらしいの。RC3と一緒にいるって」
マイケル「RC3は?」
ボニーの声「ヘンダーソン市内にあるディック・サーバー研究所にいるわ。
 研究所にマーカスが戻ってくるのを待つって」
マイケル「研究所?」
ボニーの声「調べてみたら、そこは、30年前に建てられた電子工学専門の古い施設で、
 一週間後に取り壊されるそうよ。RCは、そこに監禁されていたらしいの。それと、研究所に
 ウェンディ・アミューズメント・パークの模型が置かれていて、観覧車の下に
 赤いマーキングがどうとか言ってたわ」
マイケル「ザックの居所は、わかったのか?」
ボニーの声「ポイントアリーナの海岸よ。急いで」
マイケル「わかった」

○ 海岸
  砂浜を走るナイト2000。
  スキャナーが唸る。

○ ナイト2000車内
キット「残念ながら手遅れだったようです」
  マイケル、前を見つめる。

○ 海岸
  砂浜に仰向けで倒れているザック。
  ザックの前で立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  ザックの前でしゃがみ込むマイケル。ザックの左胸に撃たれた痕がある。
マイケル「キット、辺りに何か落ちてないか?」
  キットのスキャナーが唸る。
キットの声「マイケル、波打ち際に拳銃が落ちています」
  激しく押し寄せる波の下の砂を掘り始めるマイケル。
  砂の中の拳銃を取り出す。
マイケル「指紋の照合を頼む」
  マイケル、拳銃にコムリンクを近づける。

○ ナイト2000車内
  モニターに銃のイメージが映し出される。グリップにズームアップし、やがて、指紋がくっきりと浮かび上がる。
キット「指紋は、RC3のものです…」

○ 海岸
  険しい表情を浮かべるマイケル。
マイケル「マーカス達が偽装したんだ」
―ACT3―

―ACT4―
○ ディック・サーバー研究所・監禁室
  椅子に縛り付けられているネイル。
  その前にいるRC3。右手に拳銃を持っている。
  ネイルの額から汗が激しく流れ出ている。
  暫くして、ミアが中に入ってくる。
ミア「財団に連絡してきたわ」
  RC3、ミアに拳銃を渡す。
  ネイル、ミアを見つめ、
ネイル「奥さん、あんた、マーカスが捕まってもいいのか?」
  ミア、動揺した面持ち。
RC3「それ以上余計なこと喋ったらそのでっかい唇を引っこ抜くぞ」
ネイル「ムショに入ったら、一生出てこれないぞ」
RC3「さっき言ったこと、聞こえなかったのか?…」
  撃鉄の音が聞こえる。
  RC3、音に気づき、振り返りミアを見つめる。
  ミア、RC3に拳銃を向けている。
RC3「何のマネだい?」
ミア「ごめんなさい、私…」
  RC3、ゆっくりミアに近づいて行く。
RC3「マーカスと仲良くムショに入りたいなら、撃ちゃあいいさ…」
  泣き崩れるミア。RC3、ミアからソッと拳銃を奪い取る。
  振り返るRC3。ネイルを怪訝に見つめ、
RC3「この中、そんなに暑いか?」
  顔が汗まみれになっているネイル。
ネイル「汗っかきなんだ」
  怪訝な表情を浮かべるRC3。

○ 海岸沿い・市道
  走行するナイト2000

○ ナイト2000車内
マイケル「ウェンディ・アミューズメント・パークのデータは?」
  モニターに遊園地の写真が映し出される。
キット「ウェンディ・アミューズメント・パーク。1972年に開業。去年の年間観客動員数は、
 550万人。その前の年より減少しています」
マイケル「観覧車の下に赤いマーキングがされていたとか言ってたな」
キット「調べてみる必要がありそうですね」

○ ウェンディ・アミューズメント・パーク管理事務所・全景
  3F建てのタイル張りの白いビル。
  ナイト2000が駐車場に止まっている。

○ 同・1F・事務所
  女性社員と話しているマイケル。
女性社員「社長は、ニューヨークにできた新しいテーマパークの視察に行かれています」
マイケル「最近、遊園地で何か大きなトラブルは、なかった?」
女性社員「いいえ、何も報告を受けていません…」
マイケル「観覧車のほうは?」
女性社員「何も…」
マイケル「点検作業は、もう済みましたか?」
女性社員「各施設の点検は、先週終わりました」
  マイケル、女性社員にフェイルの写真を見せる。
マイケル「じゃあ、この男をご存知ですか?」
  写真をまじまじと見つめる女性社員。
女性社員「フェイルさんでしょ?この遊園地にも出資されている大金持ちの…」
マイケル「フェイルさんは、いつからこの遊園地に出資してるの?」
女性社員「開業時からです…株式の30%は、フェイルさんの投資によるものですけど…」

○ 同・駐車場
  ナイト2000に乗り込むマイケル。

○ ナイト2000車内
  運転席に座っているマイケル。
マイケル「キット、デボンを呼び出してくれ」
キット「良いんですか?」
マイケル「至急の要件だ」
  モニターにナイト財団移動本部にいるデボンが映る。ムスッとしているデボン。
デボンの声「ボニーから聞いたぞ。あれほど勝手な行動をするなと言っておいたのに…」
マイケル「お叱りは、後でいくらでも聞くよ。あんたの力が必要なんだ。フェイル・ケンドールが
 ウェンディ・アミューズメント・パークで何かを起こそうとしている」
デボンの声「どう言う事だ?」
マイケル「フェイルは、RCを監禁したマーカスという男とつながってる」
デボンの声「じゃあ、仮面強盗は…」
マイケル「おそらく警察の目を反らすためのパフォーマンスさ。二人でもっとでかい事を企んでいる気がする」
デボンの声「それで、私は、何をすればいいんだ?」
マイケル「ニューヨークにいる遊園地の社長に今すぐフェイルの事と遊園地の運営状況を聞き出してくれないか。
 俺は、今からフェイルの屋敷に向かう」
デボンの声「またいつもの事後承諾か。止むを得ん…」
マイケル「頼んだよ」

○ ウェンディ・アミューズメント・パーク・管理事務所
  バックするナイト2000。
  スピードを上げて、駐車場を出て行く。

○ ディック・サーバー研究所・監禁室
RC3「そろそろマーカスが戻ってきてもいいはずだ…」
  ネイル、RC3から目線を反らし、俯く。
  RC3、ネイルの頬を流れる汗を見つめる。
RC3「ミア、ここを離れよう」
ミア「どうして?」
  RC3、ミアの腕を掴み、
RC3「いいから早く…」
  慌てふためくネイル。
ネイル「待て!」
  立ち止まる2人。振り返りネイルを見つめる。
ネイル「ロープを解いてくれ…」
RC3「何をそんなに慌ててる」
ネイル「午後2時ジャストにここは、爆発する…」
RC3「ミア、今何時だ?」
  ミア、腕時計を見つめる。
ミア「1時57分…」
RC3「お前が仕掛けたのか?」
ネイル「マーカスに頼まれた」
ミア「解除できないの?」
ネイル「無理だ。解除コードを知らない」
  ネイルの前に立つRC3。
RC3「よぉし、俺の質問に正直に答えたら、ロープを外してやる。マーカスは、誰と会ってる?」
ネイル「…相手は、本当に知らん。ホテルのカジノで作った借金を肩代わりしてもらった人物ってのは、確かだ」
RC3「ザックをどこにやった?」
ネイル「…海岸で始末した。明日の新聞紙面の見出しには、お前の名前が載る。
 強盗と仲間割れの果ての殺人容疑でな」
  苦笑いするネイル。
  RC3、ズボンのポケットからコインを取り出し、ネイルの膝元に投げる。
RC3「それでロープを切り刻んでろ。じゃあな」
  RC3、ミアを連れ、部屋を出て行く。

○ ディック・サーバー研究所前
  中から飛び出してくるRC3とミア。
  門前まで全速力で走っている。門を潜り、ポルシェの陰で身を伏せる二人。
  暫くして、大きな爆発音と共に研究所が大きな炎に包まれる。
  燃え盛る炎を見つめ、呆然としているRC3とミア。

○ 海沿いの道
  うねった道をスピードを上げて走行するナイト2000。
  屋敷の方に近づいて行く。
  反対車線からやってくる白いテスタロッサ。
  エンジン音を鳴り響かせながら、ナイト2000を横切って行く。

○ フェイルの屋敷前
  立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  屋敷の入口に向かって歩いて行く。
  ボタンを押す。鐘が鳴る。
  扉が開く。執事の男が出てくる。
執事の男「何の御用でしょう」
マイケル「もう一度フェイルさんとお話をしたくて伺いました」
執事の男「ご主人様は、出かけられました」
マイケル「どこへ?」
執事の男「関係者以外には、お教えする事は、できません」
  扉を閉める執事。
  マイケル、コムリンクに話し掛ける。
マイケル「キット、家の中を調べてくれ」

○ ナイト2000のスキャナーが唸る
キットの声「執事の言ってることは、どうやら本当のようです」

○ フェイルの屋敷前
マイケル「クソ!」

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、先程まで、ここに車が止まっていた形跡があります。急発進して出て行った
 際にできたと思われるタイヤ痕が残っています」
  車に乗り込んでくるマイケル。
マイケル「タイヤ痕から車種を特定できるか?」
  モニターにタイヤのイメージが映し出される。画面が切り替わり、スポーツカーの写真が映し出される。
マイケル「テスタロッサか…ここに来る前に見かけたやつだ」
  エンジンをかけるマイケル。

○ フェイルの屋敷前
  スピードを上げ、バックし、スピンターンするナイト2000。
  そのまま、道を勢い良く走り出す。

○ ナイト2000車内
  通信のアラームが鳴り響く。
キット「デボンさんです」
  モニターに財団本部のオフィスにいるデボンが映し出される。
マイケル「どうだった?」
デボンの声「私が連絡した時、丁度休憩中でな。何とか話をする事ができた。ウェンディ・アミューズメント
 ・パークは、ここ数ヶ月赤字を出している。出資者達を集って経営改善に乗り出しているみたいだが、
 1人だけそれに反対している人物がいるんだ」
マイケル「フェイルだな」
デボンの声「ああ。奴は、遊園地の土地を買い取って、新しいレジャー施設の建設を考えているようだ」
マイケル「助かったよ、デボン」
デボンの声「RC3を頼むぞ」
  モニターの映像が消える。

○ ウェンディ・アミューズメント・パーク遊園地・敷地内
  フリー・フォール。絶叫する観客の声が木霊する。
  メリー・ゴーランドの前を歩いているマーカスとフェイル。フェイル、杖をついている。
  フェイル、メリー・ゴーランドを見つめている。
フェイル「懐かしいなぁ。昔私もあれに乗っておおはしゃぎしていた」
マーカス「あんたにそんな時代があったとはな…」
フェイル「私の時代は、あんなちゃちな装飾じゃなく、もっと綺麗な白い馬の乗り物だった」
  高さ60m、直径50mの赤い観覧車の前に向かっている二人。

○ 観覧車・中央右側のゴンドラ内
  座席の下に置かれている時限装置つきのダイナマイト。

○ ウェンディ・アミューズメント・パーク遊園地・観覧車下
  様子を見ていた客達が騒然としている。
  客達の様子を見つめるマーカスとフェイル。
フェイル「どうだ?久しぶりに観覧車に乗った気分は」
マーカス「ガキの時以来だが、最悪の乗り心地だったよ」
フェイル「お前は、もう借金生活もできないんだぞ。あるのは、地獄行きの切符のみだ」
マーカス「…」
フェイル「ゴンドラで爆発が起これば、また客は、寄り付かなくなる」
  マーカス、ゴンドラを見つめる。
  ゴンドラの中で楽しそうに景色を覗いている子供達。
  複雑気に顔を歪めるマーカス。
  マーカスの前にやってくRC3とミア。
ミア「マーカス!」
  振り返るマーカス。ミアを見つめる。
マーカス「お前、どうして…」
RC3「観覧車に何をするつもりなんだ?」
マーカス「ミア、話がある」
  RC3、ミアを引き止める。
RC3「近づくな」
マーカス「何もしない…信じてくれ」
  歩き出すミア。
RC3「ミア!」
ミア「話を聞くだけよ。大丈夫」
  マーカスの前に歩み寄るミア。
  マーカスと対峙する。
ミア「早くうちに戻って。カイルが待ってるわ…」
  マーカス、ジャケットのポケットから拳銃を取り出し、ミアを引き寄せる。
  ミアのこめかみに銃口を当てる。
  険しい表情のRC3。
マーカス「あと、10分でゴンドラのダイナマイトが爆発する」
  周囲にいる観客達が騒然とし始める。
  憤慨するフェイル。
フェイル「マーカス!」
マーカス「逃げるなら今のうちだ…」
  呆然と佇むRC3。

○ 同・入口前
  道路を走るナイト2000。
  入口の門の前で立ち止まる。
  警備員がナイト2000を睨みつけ、
警備員「ちょっと、そこに車を止めないで」
マイケルの声「迷惑にならないようにその辺を散歩しててくれ」
キットの声「では、少しジョギングをして来ます」
  ナイト2000から降りるマイケル。
  警備員を横切り、入口に向かって走る。
警備員「おい、あんた、ちょっと!」
  ドアを閉め、走り去って行くナイト2000。
  それを見つめ、口を開けている警備員。

○ 同・観覧車下
  フェイル、マーカスのそばから離れようとする。
マーカス「あんたももう終わりだ」
  立ち止まり、マーカスを見つめるフェイル。
RC3「爆弾は、どこに仕掛けたんだ」
マーカス「このじいさんに聞けよ。俺は、頼まれてやっただけだ」
  フェイル、慌てふためき、
フェイル「私は、関係ない。全部こいつがやった事だ」
マーカス「今更被害者面してももう遅い…」
  マーカス達の背後に忍び寄るマイケル。
  RC3、マイケルに気づく。
RC3「マーカス、お前は、本当に最低な野郎だ。ミア、あんたも男を見る目がなかったな」
  マーカス、RC3を睨みつける。
マーカス「その減らず口を塞いでやろうか」
RC3「おぅ、やってみなよ」
  マーカス、RC3に銃を向ける。
  と、その時、背後からソッと近づいてきたマイケルがマーカスの銃を持つ腕を掴む。
  空に向けて銃を撃つマーカス。マイケル、銃を奪い取り、マーカスの顔面を殴りつける。
  倒れるマーカス。
  透かさず、起き上がるマーカス。ミアのそばを横切り、走り去って行く。
  逃げ出そうとするフェイル。
  フェイルの前に佇むRC3。
RC3「おっと。本当は、ザックの分まで殴ってやりたい気分だが、あの世に行かれちゃあ困るんでな」
  RC3の前にやってくるマイケル。
マイケル「やっと会えたな」
RC3「観覧車のゴンドラに爆弾が仕掛けられてる」
  マイケル、コムリンクに話し掛ける。
マイケル「キット、こっちに来てくれ」

○ 遊園地の前の道路
  走行するナイト2000。
キットの声「どうやって中に入ればいいんです?」

○ 同・観覧車前
マイケル「観覧車に爆弾が仕掛けられた。入り方は、お前に任せる」

○ 遊園地の前の道路
  轟音を響かせ、スピードを上げるナイト2000。
キットの声「少し強引ですが、緊急事態ですので…」
  横道にそれ、観覧車付近の敷地のフェンスを突き破るナイト2000。

○ ウェンディ・アミューズメント・パーク遊園地・観覧車
  観覧車が突然止まる。

○ 同・観覧車下
  観覧車の前にやってくるナイト2000。
  マイケルの前に立ち止まる。
  ナイト2000に乗り込むマイケル。

○ ナイト2000車内
マイケル「観覧車の全てのゴンドラを調べろ」
  
○ ナイト2000のスキャナーが唸る

○ ナイト2000車内
  運転席に乗り込むマイケル。
キット「36台あるゴンドラのうち、人が乗っていないゴンドラは、10台あります」
  モニターに観覧車の3Dイメージが映る。
  右下のほうで止まっているゴンドラにズームアップする。
キット「マイケル、右下に止まっているゴンドラから火薬反応を検出しました」
マイケル「人は、乗ってるのか?」
キット「いいえ、誰も」
マイケル「レーザーでゴンドラを切り落とせないか?」
キット「駄目です。あの角度に正確に当てるのは、不可能です」
マイケル「じゃあ、残る手段は、あれだ」
  マイケル、コンソールのボタンを操作する。
  モニターにナイト2000のイメージが映る。
  ジャンプ角度のイメージ図が映し出される。
キット「それは、最善の方法とは、思えません…」
マイケル「時間がない。エネルギー出力を最大にした。ばっちり決めてくれよ」
  
○ 猛スピードでバックするナイト2000
  観覧車から数百メートル離れた場所で立ち止まる。
  そこから勢い良く走り出すナイト2000。

○ ナイト2000車内
  険しい表情のマイケル。
  『TURBO BOOST』のボタンを押す。

○ 激しい噴射音を立てながら、ジャンプするナイト2000
  10メートルの高さで止まっているゴンドラに向かっている。
  ゴンドラに体当たりするナイト2000。
  ゴンドラの根元が切断され、地上に落下する。
  路面に着地するナイト2000。
  スピンターンし、フェンスを突き破って観覧車の敷地内に入って行く。
  落下したゴンドラの前で立ち止まる。
  車から降りるマイケル。
  横になったゴンドラの上に登り、中からダイナマイトを取り出す。
マイケル「トランクを開けろ」
  ナイト2000のトランクが開く。
  マイケル、ダイナマイトをトランクに入れ、扉を閉める。
  暫くして猛烈な音を立てて、ナイト2000の車内でダイナマイトが爆発する。
  車内に白い煙が充満する。
  その様子を見つめ、不安げな表情を浮かべるマイケル。

○ ナイト2000車内
  『AIR VAC』のボタンが光る。
  車内の煙がみるみるうちに吸い込まれ、除去される。
  車に乗り込んでくるマイケル。
マイケル「どうやら異常はないようだな」
キット「大アリです。精神的に…」
マイケル「マーカスを追うぞ」

○ バックするナイト2000
  観覧車の敷地内から出る。

○ ナイト2000車内
  マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000

○ ナイト2000車内
  マイケル、シフトレバーを『D』に入れ、アクセルを踏み込む。

○ 強烈な噴射音と共に勢い良く走り出すナイト2000
  遊園地の穴の空いたフェンスを潜り抜け、市道を走り出す。

○ S字カーブ
  鬱蒼と茂る林に囲まれた道。スピードを上げ走行するテスタロッサ。
  その後をナイト2000が追いかけてくる。一瞬でテスタロッサの後ろにつく。

○ テスタロッサ車内
  ハンドルを握るマーカス。
  バックミラーに映るナイト2000を見つめる。
  驚愕し、目をひん剥く。

○ ナイト2000車内
マイケル「車輪をロックしろ」
  『MICRO ROCK』のボタンが光る。
  モニターにテスタロッサの3Dイメージ図が映る。
  4本の車輪が赤く点滅する。

○ テスタロッサの車輪がロックされる
  白い煙を上げながら、立ち止まるテスタロッサ。EBS(緊急ブレーキシステム)を作動させる
  ナイト2000。テスタロッサの後ろに立ち止まる。
  車から降りるマイケル
  テスタロッサの運転席のドアに近づいて行く。
  ドアを開け、外に出てくるマーカス。
  マイケルに電子銃を向ける。
マイケル「それ以上奥さんを悲しませるなマーカス」
  マーカス、電子銃の銃口を自分のこめかみに当てる。
マイケル「キット!」
  
○ ナイト2000車内
  『MICRO JAM』のボタンが光る。
  モニターに映るテスタロッサのイメージ。エンジン部分が赤く光る。

○ テスタロッサのエンジンが高く鳴り響く
  マーカス、唖然とし、車を見つめる。
  マイケル、すかさず、マーカスから電子銃を奪い取る。
  マイケルを見つめるマーカス。
マーカス「どうやった?」
マイケル「さぁな。それより、罪は、ちゃんと償ってもらうぜ。ミアと息子のためにもな」
マーカス「…」
―ACT4―

―ACT5―
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内(数日後)
  コンピュータの前に佇むマイケルとRC3とボニー。
マイケル「一時はどうなるかと思ったけど、無実が晴れて良かったな」
RC3「あまり祝杯上げる気分じゃねぇんだ」
ボニー「ザックの事を気にしているのね…」
RC3「…こんな形で別れさせられるなんて…神様を恨むぜ」
マイケル「…遊園地の客を救えて良かったな。おまえがいなけりゃ、今頃あそこは、閉園されていたかも
 しれないぜ。ところで、キットは?」
ボニー「表よ」
マイケル「何してるんだ?」

○ 同・表
  トレーラーに隣に止まっているナイト2000。
  運転席の扉が開き、男がシートの前に潜り込んでいる。
  コンテナから降りて来るマイケル達。
  ナイト2000の前に集まる。
  マイケル、車の外に出ている男の穴をまじまじと見つめる。
  車から顔を出す男。アレンである。
  怪訝な表情でアレンを見つめるマイケル。
マイケル「どちら様?」
  立ち上がるアレン。片手に最新式の小型の赤い掃除機を持っている
アレン「ライニック・クリーナーのアレン・ライズです」
  マイケルに名刺を渡すアレン。
キットの声「以前約束をしたんです。アレンが無料で私の中を綺麗にしてくれると」
アレン「無料なんて言ったか?」
キットの声「ええ。無料サービス期間だと聞きましたが…」
アレン「ああ…但し、こいつをお買い上げして頂く事が条件だ…」
  唖然とするマイケル達。
マイケル「おい、キット、誰が金を払うんだ?」

○ ナイト2000車内
キット「ちょっと待ってください。約束が違います」

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内・表
アレン「俺の話を聞く時、「少しだけ」って言っただろ?最後まで話を聞かなかったお前が悪い」
ボニー「キット、私の掃除じゃあ不服なの?」
キットの声「いいえ。ただ、最先端の掃除機がどれくらいの性能なのかを一度試してみたかったんです」
RC3「で、いくらなんだ?」
アレン「定価85ドルのところを今回は、特別ご奉仕として、80ドルで提供させて頂きますよ」
キットの声「もう一声…」
アレン「それは、無理…」
マイケル「どうやって払う気だ?」
キットの声「私の給料から差し引いてください」
マイケル・RC3・ボニー「(一斉に)給料?」
          
                                                ―THE END―

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