『SURFING DRAGON』 作 ガース「ガースのお部屋」
−ACT1−
○ サンディエゴ・フリーウェイ・5号線
さんさんと照る太陽。広大な青い海。
その上空には、白いカモメが二、三羽羽ばたいている。
海外線に面した広い道を南下して進んでいるナイト2000。
○ ナイト2000車内
ダッシュボード・パネルにある『SURVEILLANCE MODE』の
レベルケージが電子音を鳴らしながら光の伸縮をさせている。
運転席に座っているマイケル・ナイト。
いつもの黒いジャンパー。サングラスをつけ、ハンドルを握っている。
キット「今日のサンディエゴ市内の最高気温は、二十四度、最低気温は、十六度。
降水量は、2mm・・・」
マイケル「最高のドライブ日和・・・」
マイケル、海の方を見つめる。
高波に乗ってすいすいとサーフボードを進める若者達の姿が見える。
マイケル「そして、最高のサーフィン日和でもある」
キット「目的地のOBXケーブルTV局まで、後1キロほどです」
マイケル「今度は、プライベートで来たいもんだね」
キット「依頼者が美人のニュースキャスターだと聞いて、あっさりと仕事を引き受けたのは、
どなたでしたっけ?」
マイケル「まぁ、いいさ。どうせこの仕事が終われば、4日間の特別休暇だ。
またここに来て、ビキニを着た女の子とサーフィンでも楽しむか」
○ OBXケーブルTV本社前・駐車場
コンベンションセンターの真向かいに立つ6階立ての黒いビル。
駐車場のスペースに立ち止まるナイト2000。
運転席のドアが開き、マイケルが降りる。
マイケル、黒いビルの玄関口に向かって歩いて行く。
○ 同・2階・ニューススタジオ内
セット内に作られたデスクに座り、ニュースを読んでいる若い女性キャスター。
ポーラ・バクスター。白いスーツ、肩まで伸びる金髪の長い髪。美形の顔つき。
ポーラ、カメラ目線で淡々と原稿を読み上げている。カメラ前にあるハーフミラーに
原稿が映っている。
ポーラ「・・・伝説のサーファー達もこよなく愛したパシフィック・ビーチには、今日も
たくさんの若者達が溢れ返っています。それでは、ヘリから撮影した海の様子をご覧戴き
ながら、お別れ致しましょう・・・」
ポーラの目の前にあるモニター。カメラ目線のポーラの映るスタジオ内の映像から
VTRの映像に切り換わる。
ポーラ、シートに深く腰掛け、溜め息を吐く。セットの周りにいたディレクターのデレル・
ウォルカーがポーラの前に近づいてくる。
原稿を片づけているポーラ。
ポーラ「お疲れ様、デレル」
デレル「ポーラ、お客が来てるぞ」
デレル、正面を向く。
スタジオの入り口前の壁際に、マイケルが立っている。
ポーラ、マイケルに近づき、握手をする。
ポーラ「お待ちしていたわ。ナイト財団の方ね」
マイケル「マイケル・ナイトです」
ポーラ「ポーラ・バクスターよ。今から昼食を食べに行くの。あなたもついてきて」
マイケル「じゃあ、僕の車で行こう」
○ ダウンタウン街を疾走するナイト2000
○ ナイト2000車内
助手席にポーラが座っている。
運転席に座るマイケル。
ポーラ「先週の、ロスのファッションショーの取材の時から、妙な男につきまとわれてるの。
二度目は、このTV局の前に現われたわ。そして、三度目は、昨日。パシフィック・ビーチで
若者達にインタビューしていた時に見かけたの。初めは、ただのサーファーだと思ってたんだ
けど、よく見たら、その男だって事がわかって・・・」
マイケル「熱狂的な君のファンの仕業かも」
ポーラ「それならまだいいんだけど、昨日、私の番組を放送中に、男から変な電話が
かかってきたのよ。明日、私を殺すって・・・」
マイケル「・・・犯人は、テレビ局内部の中にいるかもしれないな」
ポーラ「どうして、そう思うの?」
マイケル「男は、君の仕事のスケジュールを熟知してる可能性がある」
ポーラ「誰かが私のスケジュールを漏らしてるって事?」
マイケル「男の特徴は、覚えてる?」
ポーラ「ベレー帽を被った東洋系の人っぽかったわ。この街では、あまり見かけないタイプね。
ああ、局に戻ったら、昨日の海岸の様子を映したビデオが残ってるわ」
マイケル「ビデオ?」
ポーラ「波の状況を知るために海岸に設置してあるライブカメラの映像がうちの局で見られる
ようになっているんだけど、そこに男が映っているわ」
マイケル「ああ、君をボディガードする前にもう一人紹介しておきたい奴がいるんだ」
キット「はじめまして」
ポーラ、ぽっかりと口を開け、辺りを見回し、
ポーラ「誰?」
マイケル「俺の相棒」
キット「KNIGHT INDUSTRY 2000。KITTと呼ばれています。よろしく」
ポーラ、呆然とし、
ポーラ「車が喋るの?」
マイケル「ああ、嫌と言うほどね」
ポーラ「ああ、私は、ポーラ・バクスター。よろしくね・・・ああ、マイケル、そこよ」
マイケル、右側に見える建物の看板を見つめる。
看板には、『UNO・SUSI』と書いている。
マイケル「スシ?」
ポーラ「取材がてらなんだけど。食べたことある?」
○ OBXケーブルTV局・駐車場
駐車スペースに止まるナイト2000。
ポーラの声「じゃあ、先に行ってるわ」
助手席のドアが開き、中からポーラが出てくる。ポーラ、駆け足でTV局の方へ向かって行く。
○ ナイト2000車内
顔を歪め、舌を出しているマイケル。
キット「かなり劇的な食べ物だったようですね。寿司というものは・・・」
マイケル「『ワサビ』ってのは、強烈だな。今でも鼻につーんと来るぜ」
キット「普段からハンバーガーやジャンクフードを食べ慣れているあなたには、向かないのでは?」
マイケル「確かにその通りだ。でも、デボンほど下手物食いじゃないぜ、俺は」
キット「それにしても、彼女、脅迫を受けている割りには、食欲旺盛ですね。一人で二十皿も
平らげてしまうなんて・・・」
マイケル「飯も食えずにびくびくしてちゃあ、まともに原稿も読めなくなっちまうからな。
寿司のことは、置いといて、キット、OBXケーブルTV局の関係者の事、何かわかったか?」
キット「局内のスタッフ、出入り業者など全ての関係者のリストを探ってみましたが、とくに
トラブルに巻き込まれた人物は、いません。ただ、事件に関係するかどうかは、
わかりませんが・・・」
モニターに、七三分けの白髪、眼鏡をかけた紳士風の男の写真が映し出される。
キット「OBXTVの社長をしているアルベルト・ニューマン。三日程前に、彼が副業で
経営しているサーフショップに強盗が入っています」
マイケル「強盗?この街は、治安がいいので有名なんだぜ。被害の状況は、どうだったんだ?」
キット「現金400ドルを奪われたそうです。犯人は、まだ捕まっていません・・・」
マイケル「400ドルね・・・」
○ 同・ビデオ編集室
モニターの前に座るポーラ。マイケルがポーラの後ろに立っている。
ポーラ、編集機のダイヤルを回している。モニターには、海岸の様子が映った早送り映像が映る。
ポーラ「ああ、これだわ」
ポーラ、ダイヤルから手を離す。映像が再生される。
ポーラが水着を着た若者にインタビューをしている映像が映し出されている。
暫くして、画面に青いウェットスーツと、サングラスをかけた男がロングボードを持ち、
フレームインしてくる。ポーラの方をまじまじと見続けている。
マイケル、険しい表情でモニターを見つめ、
マイケル「このビデオ、通信回線でうちの車のビデオにも記録したいんだけど・・・」
ポーラ「そんなこと、できるの?」
マイケル、コムリンクに喋りかけ、
マイケル「キット、2番の編集室にあるビデオ映像をコピーしてくれ」
コムリンクから、キットの声が聞こえる。
キットの声「わかりました」
映像が勝手に巻戻り始める。
唖然とするポーラ。
マイケル「社長のアルベルトさんと話がしたいんだ」
ポーラ、振り向き、マイケルを見つめ、
ポーラ「社長は、今、ロスの方にいるの。次世代デジタルTVの技術開発促進シンポジウムに
出席しているわ。後、二時間ぐらいしたら、ヘリで戻って来ると思うけど・・・」
入口から女性スタッフのロキシーが現れる。
ロキシー「ポーラ、そろそろ時間よ」
ポーラ、振り向き、
ポーラ「わかったわ」
ポーラ、立ち上がり、マイケルと対峙し、
ポーラ「今からレストランの取材で、またダウンタウンに出るの」
マイケル「お供しましょう」
ポーラ、笑みを浮かべ、部屋を出て行く。マイケルもその後を追う。
○ ダウンタウン
コンベンションセンターや、西洋、中華、タイ料理などのレストランが立ち並ぶ通り。
中華のレストラン店の前でマイクを持ち、カメラの前で喋っているポーラ。
ポーラ「サンディエゴにひしめく中華店の中でも、この店は、『チャーハン』が人気商品。
それでは、今からオーナーに話を窺ってみましょう・・・」
コックコートを身に付けた中年の中国人がポーラの隣に立っている。
ポーラ、中国人にマイクを向ける。
○ ポーラ達のいる店の向こう側の歩道脇に止まっているナイト2000
スキャナーがなびき、唸り音を上げる。
○ ナイト2000車内
運転席に座るマイケル。ドア窓から、ポーラの様子を窺っている。
○ 中華レストラン前の通りをスケボーで走っているミュージシャン風の黒人
短髪。ブルーのサングラスをしている。
インタビューしているポーラに向かって、突き進んでいる。
○ ナイト2000車内
モニターにX線サーチ画面が映し出され、黒人の腰辺りに刃のような白く光るものが映る。
キット「マイケル、スケボーに乗った男、ナイフを所持しています」
マイケル、モニターを見つめると、黒人を睨み付けるように見つめ、
マイケル「彼女につきまとってる東洋人には、見えないけどな・・・」
マイケル、ドアを開け、車から降りる。
○ 道路を横切り、中華レストランの前にゆっくりと近づいて行くマイケル
ナイト2000の前方、1ブロック先に止まるワインレッドのワゴンの運転席側の窓が開く。
長い銃身が外に現れる。
○ ポーラ達のいる方向に照準が合わされている。
マイケルが、ポーラを遮るように前に立ち、近づいてきた黒人に話しかけている。
○ 中華レストラン前
黒人の男の前を遮るようにして立つマイケル。
黒人、マイケルを見つめ、唖然とした様子で、
マイケル「ちょっと待った!」
黒人「何よ?」
マイケル「そのズボンの中に入っているものを見せてもらおうか?」
黒人「護身用のナイフが入ってるだけよ。一体何なのよ、あんた?」
突然、銃声が高鳴り、マイケルのそばにあるレストランの店の窓が破裂する。
マイケル、黒人、同時に地面にしゃがみ込む。
ポーラ、唖然とした様子でマイケルを見つめている。
マイケル「ポーラ、伏せろ!」
また、銃声がする。
店の壁に弾が弾く。白い煙が上がる。
マイケル、咄嗟に立ち上がり、急いでポーラの前に駆けて行く。
マイケル、コムリンクに喋りかけ、
マイケル「キット!」
○ ナイト2000車内
ダッシュボードのパネルが電子音と共に一斉に光り、エンジンがかかる。
○ 走り出すナイト2000
華麗にターンし、急スピードでマイケルとポーラ達の前に立ち止まる。
ナイト2000のボディが弾丸を跳ね返している。
× × ×
ワゴンのエンジンがかかる。
タイヤを軋ませながら、急発進して行く。
× × ×
ポーラを抱え込むようにしゃがみこんでいるマイケル。逃げ去っていくワゴンを見つめている。
ナイト2000の扉が自動で開く。
マイケル、立ち上がり、ナイト2000に乗り込む。
タイヤを軋ませながら、急発進するナイト2000。
マイケルの声「ワゴンのナンバーを確認しとけよ」
キットの声「ええ、わかっています」
白い煙を上げながら、スピンターンし、ワゴンの後を追って走り始める。
○ ダウンタウン通り
スピードを上げ、暴走するワゴン。
前に走る馬車を追い抜き、車体を滑らせながら、交差点を右に曲がる。
疾走するナイト2000。ドリフト気味に勢い良く交差点を右に曲がる。
× × ×
赤い観光バスがゆっくりと走っている。
その後方から、スピードを上げたワゴンがクラクションを鳴らしながら突っ走ってくる。
ワゴン、観光バスの左側に割り込み、車体を激しく振りながら、バスの前に抜きん出る。
観光バス、目の前に飛び出してきたワゴンに押し流されるように、大きく右にハンドルを切り、
道を塞ぐように立ち止まる。
バスのそばをローラースケートを履いた若者達が通り過ぎている。
○ ナイト2000車内
フロントガラス越しに道を阻んだ観光バスが見える。どんどん迫っている。
マイケル「キット、飛び越えるぞ」
マイケル、ダッシュボードのパネルの『TURBO BOOST』ボタンを押す。
キット「マイケル、ダメです。バスの向こうに人が・・・」
マイケル「もう遅いぜ!」
タービンの吸気音が高鳴る。
マイケル、目を大きく見開く。
○ 爆音を上げながらナイト2000の車体が浮き上がる
轟音を上げながら、観光バスの屋根の上すれすれを勢い良くジャンプするナイト2000。
バスの向こう側を走っているローラースケーターの若者達の頭上をも、飛び越えて行く。
車体をバウンドさせながら、勢い良く着地するナイト2000。
○ ナイト2000車内
目を丸くしながら後ろを向くマイケル。
思わず、声を上げる。
マイケル「ふー、やばかったぁ」
キット「私も死にそうな思いをしました。無茶は、もうこれっきりにしてください」
マイケル「悪かった」
○ 公園沿いの歩道に乗り上げ止まっているワゴン
ワゴンの後ろに立ち止まるナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル「人の気配は?」
キット「誰も乗っていません」
マイケル「逃げられた後か・・・」
車から降りるマイケル。
○ ワゴンのそばに近づき、運転席のドアを開けるマイケル。
シートの上にレミントン製M700ライフルが置かれている。
マイケル、辺りを見回している。
○ 公園
木の幹の前に立つ男。フードで顔を隠している。
男、数十メートル先の歩道にいるマイケルの姿をジッと見つめている。
男の右手の甲に、尻尾を巻いた龍の紋章がついている。
男、その場を立ち去って行く。
−ACT1 END−
−ACT2−
○ OBXケーブルテレビ局ビル・屋上ヘリポート
羽音を高鳴らせながら、一基の白いヘリがビルの上に着陸する。
後部席の扉が開き、青いスーツを身に付けた男・アルベルト・ニューマンが降り、
入口に向かって歩いている。
○ 同・5階社長室
社長デスクに座るアルベルト。
マイケルとポーラがデスクの前に立っている。
アルベルト「命を狙われたそうだな、ポーラ」
ポーラ「危うく殺されかけるところでしたが、マイケルに助けてもらったんです」
マイケル「単なるストーカー事件が殺人未遂にまで発展してしまった以上、なんらかの
対応が必要です」
アルベルト、顔をしかめて、
アルベルト「困ったな。彼女は、うちの看板キャスターなんだ。今、彼女を番組から降ろす
ことなんて考えられんよ」
アルベルト、立ち上がり、マイケルと握手をする。
アルベルト「我々もできる限りの協力をする。マイケル君。彼女の事、よろしく頼む」
マイケル「ああ、その事で実は・・・」
アルベルト「なんだね?」
マイケル「あ、いいえ、なんでもありません」
ポーラ、怪訝にマイケルを見つめる。
アルベルト、笑みを浮かべ、
アルベルト「今年からうちも本格的にインターネット事業に参入して、将来的には、
データ配信や双方向システムのサービスを始める予定だ。のちは、サンディエゴ海岸を
舞台にしたテレビ映画の製作にも乗り出そうと思っている。もし、正式に決まったら、君、
出てみないか?」
ポーラ、驚いた表情を浮かべる。
マイケル、苦笑し、
マイケル「お言葉は、大変嬉しいんですが、何分、台詞覚えが悪いもので・・・」
アルベルト「その心配は、無用だ。私も学生時代に演劇を嗜んでいてね。二週間も演技の練習を
すれば、自然に台詞も頭に入るようになる。まぁ、考えといてくれ」
○ 同・駐車場
駐車スペースに止まっているナイト2000の前にスケボーに乗ったミュージシャン風の
黒人が近づいてくる。
黒人、キットの前方で立ち止まり、ジロジロとナイト2000を見つめている。
黒人、そのまま、運転席のドアを開けようとするが、開かない。
黒人、ポケットからナイフを取り出す。
キットの声「そのナイフで、私のボディに傷をつけるおつもりなら、無駄な努力ですよ」
黒人、ハッとし、辺りを見回す。
黒人、怪訝に車を見つめ、
黒人「うそ!車の分際で人間と対等に喋る気なの?信じらんない」
キットの声「ストレスを発散するなら、海に出て、サーフィンでも楽しんでみては、いかがです?」
黒人「私は、サーファーじゃないの。こう見えても地元では、有名なDJのジミーちゃんなのよ」
キットの声「DJ?」
ジミー「うわぁお、今、馬鹿にしたわね?人が浮き浮き気分でスケボーを楽しんでるのを
邪魔しといて、ムカつく車!」
キットの声「・・・」
ジミー「いい、あいつにちゃんと言っといてよ。謝ってくれないなら、訴えてやるから」
キットの声「申し訳ございません」
ジミー「あんたが謝っても駄目なの」
ジミー、憤然とした様子で、スケボーに乗り、その場を立ち去って行く。
テレビ局のビルからマイケルが出てくる。
マイケル、ゆっくりとナイト2000に向かって歩いてくる。
運転席のドアを開き、車に乗り込む。
キットの声「ポーラのボディガードは、しなくていいんですか?マイケル」
○ ナイト2000車内
マイケル「今から2時間のドキュメント番組のナレーションをするそうだ。中には、警備員も
張り込んでるし、襲われる心配は、ないだろう」
キット「例のワゴンの所有者がわかりました。車は、ラスベガスで盗まれた盗難車です」
マイケル「ライフルのほうは?」
キット「クレー射撃や狩猟用に使われているものです。指紋は、出ませんでした。やはり、
愉快犯の犯行でしょうか?」
マイケル、怪訝な表情を浮かべ、
マイケル「さぁ、どうかな・・・」
マイケル、エンジンをかける。
○ バックするナイト2000
駐車場の出口に向かって走り始める。
キットの声「それから、マイケル。あなたが中華レストランの前で捕まえようとした男から
クレームが来ました」
マイケルの声「スケボーの男の事か?」
キットの声「ええ。かなりご立腹です」
マイケルの声「そういや、まだ謝ってなかったな。後で詫びをしに行くよ」
○ 5号線・フリーウェイ
スピードを上げ、疾走するナイト2000。
キットの声「これからどこに行くんです?」
○ ナイト2000車内
ハンドルを握るマイケル。
マイケル「パシフィックビーチにあるアルベルトのサーフショップだ。キット、地図を出してくれ」
キット「しかし、今回の事件とは、関連が薄いのでは?」
マイケル「まぁ、何事も念には、念を入れてさ」
通信を知らせるパルス音が鳴り響く。
キット「マイケル、デボンさんからです」
モニターにオフィスにいるデボンの姿が映し出される。
デボンの声「調査のほうは、進んどるか、マイケル」
マイケル、モニターを見つめ、
マイケル「いいや、早くも煮詰まってるよ」
デボンの声「やけにてこずっているようだな」
マイケル「少なくとも、犯人は、この街のどこかに隠れているに違いないんだ。
RC3に、あの海辺のライブカメラの映像の分析と、過去に彼女が出演した番組のビデオの
チェックを頼んでくれないか?」
デボンの声「わかった。私もTV関係者の情報を探ってみよう。また後でな」
デボン、手を上げると、パルス音と共に画面から消えていく。
○ パシフッイク・ビーチ
海辺の通りに立つ白い建物。
『EMERALD SURFING』の看板が掲げられている。
店前に立ち止まるナイト2000。
マイケル、車から降り、店の中に入って行く。
○ 『エメラルド・サーフィン』店内
ロングボード、ショートボード、フィッシュボードにTシャツなど、数々の商品が
陳列されている。
マイケル、ゼブラ模様のボードの表面を触り、まじまじと見つめている。
奥の部屋から巨漢の初老の男・リック・ボーマンが出てくる。
リック、マイケルの背後に近づき、
リック「いらっしゃい」
マイケル「いいカラーリングだ」
リック「波に乗るのかい?お客さん」
マイケル「若い頃は、よくここの沖に出てた。この店は、長いのかい?」
リック「5年だ。前は、オーシャンビーチの店で働いてたんだが、オーナーがやばい女に
手を出しちまって、借金を作った挙げ句とんずらこいてな。あの時は、大変だった」
マイケル「じゃあ、ボード作りのほうも長いの?」
マイケル、リックを見つめる。
リック「かれこれ20年以上だな。なんなら、お客さん向けにとびっきりのボードを作って
差し上げるけど、どうだい?」
マイケル「今日は、サーフィンをしに来たわけじゃないんでね。三日前の強盗事件について、
話を聞きに来たんだ」
リック「あんたサツか?」
マイケル「いや、民間の調査会社のものだ。犯人は、まだ捕まっていないらしいけど、
どんな奴だったか覚えてる?」
リック「一体何を調べてるんだ?」
マイケル「ここのオーナーは、OBXケーブルテレビ局の社長のアルベルトだろ?」
リック「ああ。それがどうした?」
マイケル「そのテレビ局の人間が誰かに命を狙われてるんだ。一応関係者も含めて今調べてる
ところでね」
リック「忍び込まれたのは、深夜で、わしもここにはいなかったし、顔なんて見とらんよ。
うちの事件と何か関係があるのかい?」
マイケル「他に何か取られたものは?」
リック「金だけだ。悪いが、そんなことなら、とっとと帰ってくれねぇか。他の客の邪魔に
なっちまう」
マイケル「・・・済まない。今度遊びに来た時に、また寄らしてもらうよ」
リック「ああ、そうしてくれ」
マイケル、立ち去ろうとするが、サッと振り返り、
マイケル「おっと、一つ忘れてた。そこに飾ってあるブルーのロングボード、テールに傷が
ついてるよ」
リック、慌てて、ブルーのロングボードのテールを見回す。
確かに傷がついている。
マイケル、そそくさとその場を立ち去って行く。
○ 同・店前
ナイト2000に乗り込むマイケル。
○ ナイト2000車内
キット「何か手がかりは掴めましたか?」
マイケル「いいや。やっぱ、俺の考え過ぎかもな」
マイケル、エンジンをかけ、アクセルを踏み込む。
○ 店前から走り去っていくナイト2000
外に出て、ナイト2000を睨み付けるように見ているリック。
○ 『エメラルド・サーフィン』工場。
白い壁に伝い未完成品の白いボードがいくつも並べて置かれている。
そこへ慌てて駆け込んでくるリック。
デスクにある電話の受話器を取り、ナンバーを押している。
リック、少し困惑し様子。
リック「ああ、リックです。例の男がここを嗅ぎつけました。早めに手を打ったほうが
良さそうです・・・」
○ ダウンタウン通り(夜)
鮮やかな街のイルミネーションの中を疾走するナイト2000。スキャナーの赤い光りが
色濃くなびいている。
ポーラ声「なんだか、どんどんエスカレートしているみたいで、恐いわ」
○ ナイト2000車内
ハンドルを握るマイケル。助手席にポーラが座っている。
マイケル「大丈夫。今夜は、俺もホテルに止まるし、何かあれば、キットが知らせてくれる」
ポーラ「ここに来てからもう6年になるけど、こんな目に合うなら、ニュースキャスターなんて
なるんじゃなかったわ」
マイケル「そう塞ぎ込まないで。ここの街の人は、君の番組を楽しみにしてる」
ポーラ「でも、そのせいで、命を狙われるはめになったのよ」
マイケル「そういや、どうしてニュースキャスターになろうと思ったの?」
ポーラ「ハイスクール時代まではね、実家にある牧草地で牛や馬の面倒を見るつもりだったん
だけど、ある番組に出ていた女性キャスターに憧れを持つようになってから、その道を突き進む
ようになったの。テキサスの田舎娘にそんな仕事は、勤まらないって、両親には、こっぴどく
反対されたけどね」
マイケル「ここでニュース番組をやるきっかけは、なんだったの?」
ポーラ「ロスのテレビ局にいた時に、当時そこでニュース番組のプロデューサーをしていた
アルベルトに誘われたのよ。独立して、新しいテレビ局を作るから、僕の番組に出てくれない
かって言われて」
マイケル「彼は、いつもああ言う感じで人を誘うのかい?」
ポーラ「自分の気に入った人には、とことんのめり込むタイプね。私もしつこく口説かれたから、
あなたにもそうしてくるかもね」
マイケル「ああ、テレビ映画の出演の事?ありゃあ、冗談だろ?」
ポーラ「彼は、冗談でものを言う人じゃないのよ。私も初めは、戸惑ったわ。海岸に出て、
サーファー達の取材をすることが多いんだけど、もし、自分もそんなことさせられたら、
どうしよう、なんてつまらない想像して悩んだ事もあった」
マイケル「泳ぐのが嫌いなの?」
ポーラ「小さい頃、友達と一緒にボートで沖に出た時、海に落ちて、溺れ死にそうになったの。
それ以来泳ぐのは、やめた。でも波の音を聞くのは、好きなの」
○ ビジネスホテル前
海岸付近に密集するビル群の一角。白い建物。
駐車場に止まるナイト2000。
○ 同・6階通路
マイケルとポーラが並んで歩いている。
605号室の前で立ち止まる二人。
○ 同・605号室・リビングルーム
マイケルが急ぎ足で入ってくる。辺りを見回し、しゃがみこむとベッドの下を覗き込んでいる。
後からポーラが神妙な面持ちで入ってくる。
マイケル、立ち上がると、コムリンクに喋りかける。
マイケル「キット、何か反応はあるか?」
○ ナイト2000車内
キット「いいえ。特に何かを仕掛けられている形跡は、見当たりません」
○ ビジネスホテル・605号室
マイケル、ポーラと対峙し、
マイケル「じゃあ、俺は、自分の部屋に行くよ」
ポーラ、マイケルにキスをし、
ポーラ「おやすみなさい」
マイケル「おやすみ・・・」
マイケル、笑みを浮かべ、部屋を出て行く。
○ 同・通路
605号室から出てくるマイケル。
対面にある612号室の扉を開け、中に入る。
通路奥の突き当たりに、接客係の男が立っている。
男は、東洋人。男、605号室に向かって、ゆっくりと歩き出す。
○ 同・駐車場
スキャナーをなびかせながら止まっているナイト2000。
暫くして、激しいエンジン音が鳴り響く。猛スピードで走ってきたシルバーのジャガーが
ナイト2000の前に急ブレーキで立ち止まる。
運転席の窓が開き、サングラスをかけた男が顔を出す。男、突然、異様な形をした銃を出し、
ナイト2000に向けて、撃ち始める。。
ナイト2000のボンネットに赤い光線が照射される。激しい火花が飛んでいる。
−ACT2 END−
−ACT3−
○ ナイト2000のボディに激しく光線が当たっている。ジリジリと音を立て、火花が散る。
ジャガーに乗る男、ライフルを撃つのをやめ、タイヤを軋ませながら、車を急発進させる。
○ ビジネスホテル・612号室
ベッドの前に立ち、上着を脱いでいるマイケル。コムリンクのアラームが鳴り響く。
コムリンクに喋りかけるマイケル。
マイケル「どうした?」
キット「何者かが私を攻撃してきました」
マイケル「犯人は?」
キット「車で逃げました」
マイケル「キット、その車を追うんだ」
○ ナイト2000のダッシュボードのパネルが一斉に光り出す
エンジンがかかる。
○ 勢い良く走り出すナイト2000
入口のほうに向かって猛スピードで走行する。
○ ビジネスホテル612号室
慌てて、部屋の入口の扉の前に向かうマイケル。
マイケルが扉を開けようとした瞬間、突然、扉が開き、マイケルの頭に激しくぶつかる。
ナイフを持った東洋人の男が雄叫びを上げながら、部屋の中に駆け込んでくる。
男と対峙するマイケル。男、雄叫びを上げながら、マイケルの喉元を狙って、何度も
ナイフを突き出している。
マイケル、男の右手の甲に龍の紋章がついている事に気づく。
男、ナイフを大きく振りかざすが、マイケル、透かさず、頭を下げ、それを躱す。
男、もう一度、ナイフを振りかざす。マイケル、透かさず男の右腕を掴み、背負い投げをする。
床に激しく背中を打ち付ける男。ナイフから手を離す。マイケル、ナイフを蹴り飛ばすと、
肩を掴み、男を起き上がらせようとする。男、咄嗟に右足でマイケルに延髄蹴りを浴びせる。
マイケル、声を上げ、床にひざまづく。
男、柔軟に腕をバネ代わりにして跳ね起きると、マイケルに腹を突き上げるような蹴りを入れる。
マイケル、苦悶する。男、もう一度、蹴りを入れようと右足を突き出す。マイケル、
咄嗟に右足を両手で受けとめ、そのまま、勢い良く、ベランダのほうに押し込んで行く。
○ 同・ベランダ
扉のガラスを突き破って、男が床に倒れる。
マイケルもベランダに出てくる。男、俊敏に起き上がると、マイケルに両手で正拳突きの応酬。
マイケル、それを手で受けとめているが、あまりの威力に苦悶の表情を浮かべる。
マイケル、男を睨み付け、両腕を掴む。男、そのままマイケルを誘い込むように体を引きつけ、
自らベランダの柵から、身を投げ出す。
マイケルの腕に捕まる男。マイケル、男に引き釣られ、ベランダから落ちそうになる。
マイケル、必死の力で男の手を振り解く。甲高い声を上げながら、地上に落ちて行く男。
マイケル、激しく呼吸しながら、苦渋の表情を浮かべ、地上を覗く。
× × ×
草叢に男が仰向けに倒れている。目を剥き、口から血を吐き、息絶えている。
○ 海岸通りの道を疾走するジャガー
その後を追うナイト2000。
猛スピードで交差点に進入し、ドリフト気味で大きく回り込みながら左折するジャガー。
○ 交差点に向かって疾走してくるナイト2000
突然、急ブレーキをかけ、横断歩道の手前で立ち止まる。
横断歩道を一匹のゴールデンリトリバーがのろのろと渡っている。
○ ナイト2000車内
キット「やれやれ・・・」
アラームが鳴り響く。
マイケルの声「キット、車は、どうした?」
キット「逃げられてしまいました。すいません」
マイケルの声「もういい。早く戻ってこい」
○ 郊外の道
脇道にトレーラーがコンテナのドアを待機している。
ジャガーがトレーラーの前に立ち止まる。
車から男達が降り、後ろを見つめている。
男「なんで追って来ないんだ?」
男達、呆然と突っ立っている。
○ サンディエゴ警察(夜明け)
表玄関の入口からマイケルとポーラが出てくる。
マイケル、右手で腹を押さえながら歩いている。ポーラ、マイケルの体を気遣うような
眼差しを浮かべ、
ポーラ「大丈夫?」
マイケル「ああ、なんとかね」
ポーラ「ごめんなさい。わたしのせいで、こんな・・・」
マイケル「いつものことさ・・・」
二人、階段を降り、駐車場に止まっているナイト2000の前で立ち止まる。
ポーラ「あの男が私につきまとっていた男だって事もわかったし、これで事件は、解決ね」
マイケル「いや、まだだ。他にも君を狙っている奴がいる」
マイケル、ポーラ、車に乗り込む。
運転席のシートに座り込むマイケル。
助手席にポーラが座る。
マイケル「キット、逃げた車の持ち主は、わかったか?」
キット「イリノイ州のナンバーをつけた車であることは、わかっているのですが、それ以外の
情報は、何も・・・」
マイケル「お前が食らった光線の正体は?」
キット「超音波レーザーです。クリスタル鉱石の成分を含んだ特殊で強力な物質で、普通の車なら、
3秒を照射されただけで、木端微塵です。私も後5秒浴び続けていたら、危ないところでした」
ポーラ「私、大がかりな組織に命を狙われてるの?」
マイケル「とりあえず、君は、ホテルでおとなしくしてるんだ」
ポーラ「駄目よ。今日は、レギュラーのグルメ番組の司会があるの。それに、ホテルに一人で
いるより、仕事をしているほうが気も紛れるわ・・・」
マイケル「わかった。警備員を増員するように管理部のほうに連絡しておくよ」
ポーラ「マイケル、あなたは?」
マイケル「一旦、財団に戻って、事件の情報を集めてくる」
マイケル、車をバックさせ、駐車場を出て行く。
○ 草原地帯
小高い丘の上に作られた道路を走行しているナイト財団移動本部トレーラー。
その数百メートル後ろを走るナイト2000。スピードを上げ、トレーラーの背後に近づき、
コンテナの中に入り込んで行く。
○ ナイト財団移動本部トレーラー
中央のテーブルの前に立ち、話をしているマイケルとデボン。
デボン「君を襲った男の名は、ロン・オハラ。二年前まで、日本の暴力団の一員だったが、ある
抗争事件で、空手のテクニックの能力を買われ、腕利きの殺し屋として、シカゴのマフィアに
雇われた人物だ」
マイケル「シカゴのマフィアがなぜ、ポーラを?」
デボン「RC3が昨夜から徹夜がかりで、彼女が出演していた番組のビデオをチェックしてくれた
が、そのマフィアに触れたような言動は、何一つ見当たらなかった」
マイケル、奥の部屋のほうを見つめ、
マイケル「どうりで。昼間からぐっすりおねんねってわけね」
デボン、腕時計を見つめ、
デボン「アメフトのTV中継が始まる前に起こしてくれと言われてるんだ」
マイケル「そういや、キットを襲った車もイリノイ州のナンバーだった」
デボン「マフィアの手にレーザー兵器が渡っているとなれば、深刻だぞ。全世界規模に流通し、
殺しの道具として使われでもしたら、とんでもない脅威だ」
マイケル、首を傾げ、思いつめた表情をする。
デボン「ああ、君が言っていたアルベルトのサーフィンショップの強盗犯だが、昨夜サンタ
バーバラの海岸で死体が見つかった。頭に何かでおもいきり殴られた跡があったらしい。
それと、男の靴に妙なものが付着していたそうだ」
マイケル「何?」
デボン「マスキングテープだ。おそらく、サーフショップを襲った時に着いたものだろう」
マイケル「・・・どうも、今度の事件は、わからないことだらけだ。それに、中華レストランの
襲撃事件といい、今回といい、奴らの狙いは、別にあるような気がする・・・」
デボン「そりゃあ、どういう意味だ?」
マイケル「つまり、本当の標的は、ポーラじゃなく、この俺だって事さ・・・」
デボン、薄笑いを浮かべ、
デボン「まさか、そんな・・・」
マイケル「いいや。大いにありえるね。奴らは、二度の襲撃とも、先に俺を狙ってる」
デボン「じゃあ、ポーラが君を罠にはめたとでも言うのか?」
マイケル「わからない。そうは思いたくはないけど・・・」
眉間に皺を寄せ、考え込むデボン。
○ 連邦刑務所・面会室
薄暗い室内にガラスを挟んで、二人の男が語り合っている。
暗がりの囚人の部屋に座る男。顔は、影に隠れて見えない。
男「例の計画は、うまくいっているのか、アルベルト」
面会人側の部屋。スーツを着たアルベルトが男と対峙して座り喋り出す。
アルベルト「ああ、順調だ」
男「・・・あの男・・・マイケル・ロングの始末さえしくじらなければ、今頃全てがうまく
いってた・・・」
アルベルト「奴を破滅に追い込む準備は、着実に進んでいる。兄貴は、心配しなくていい」
男「ロングとナイト財団を必ずブッ潰すんだ。そして、あの車を手に入れろ」
男、仕切りのガラスに顔を近づける。
面会室側の光りが男の顔に当たる。男は、キャメロン・ザカリーである。
−ACT3 END−
−ACT4−
○ OBXケーブルテレビ局・駐車場
ナイト2000が駐車スペースに止まる。
運転席のドアが開き、マイケルが降りる。
マイケル、ビルの入口に向かって歩いて行く。
暫くして、ナイト2000の前にスケボーに乗ったジミーがやってくる。
ジミー、スケボーから降り、万遍の笑みを浮かべながら、ナイト2000の前に立ちはだかる。
キットの声「ご機嫌がよろしいようですが、何か良い事でもあったのですか?」
ジミー「いつもは、こうなの。昨日は、例外。それより、ドライバーは、どこ?」
キットの声「テレビ局の中です」
ジミー「もしかして、ここで働いてるの?」
キットの声「ええ、臨時的にですが・・・」
ジミー「何の番組に出てるの?」
キットの声「そう言えば、何かのテレビ映画に出演するとか言っていました」
ジミー「ワォー、凄い。新進のスターね」
キットの声「あなたこそ、よくこの辺りを通られますが、ここの局の関係者ですか?」
ジミー「昼間の5分間のミュージックビデオの番組に出てるの。『ジミーの
ヒットナンバー・サンディエゴ』って番組見たことなぁい?」
キットの声「その時間は、いつも暇な時は、『トムとジェリー』を見ていますもので」
ジミー「あらぁ、私も好きよ、それ。後よく見るのが、夜中にやってるゲイ・チャンネル。
刺激的な世界が満載よ。あなたも一度見てみたら」
キットの声「夜は、充電時間のため、テレビを見ることができないのですが、今度RC3に
頼んでみます」
ジミー「(不適な笑みを浮かべ)結構、話のわかる車ね。気に入ったわ」
○ 同・2階・ニューススタジオ
キャスター席に座るポーラ。
スタッフにピンマイクをつけてもらっている。
スタジオの入口の前に立ち、ポーラを見守っているマイケル。
慌ただしく動いているスタッフ。複数のカメラが移動し、ポーラを映し出している。
マイケル、目の前にある大型モニターを見つめる。
モニターには、波に乗り、スピーディーに滑っているサーファーの姿が映し出されている。
画面が変わり、岩場に激突したサーファーの姿が映る。
マイケル、画面に映るボードを見つめ、何かを悟る。
マイケル、慌てて、スタジオから飛び出して行く。
○ 同・通路
慌てて走っているマイケル。そばを通りがかった警備員に声をかける。
マイケル「ちょっと出かけてくる」
警備員「何かあったのかい?」
マイケル「犯人の手がかりが見つかりそうなんだ。じゃあ、よろしくな」
マイケル、そのまま警備員を横切り、階段を降りていく。
○ 同・駐車場
慌ててナイト2000の前にやってくるマイケル。
車に乗り込むと、エンジンをかけ、バックさせる。
マイケルの声「キット、エメラルド・サーフィンの定休日は、いつだ?」
○ ナイト2000車内
キット「月曜ですが?」
マイケル「店員の男の名前は、わかるよな?」
キット「なぜ、またあそこに?」
マイケル「後で説明する。デボンを出してくれ」
出口に向かって、猛スピードで走り去って行く。
○ 海岸通り
疾走するナイト2000。
○ パシフィック・ビーチ
『エメラルド・サーフィン』の店の前に 立ち止まるナイト2000。
マイケル、車から降り、店に向かうが、シャッターが降りている。
マイケル「キット、このシャッターを開けてくれ」
キットの声「しかし、そんなことしたら、不法侵入罪であなたが捕まります」
マイケル「ポーラの事件に関わる重要な証拠があるかもしれないんだ。早くやってくれ」
キットの声「わかりました」
ナイト2000のスキャナーが唸る。
シャッターがゆっくりと上に上がっていく。
マイケル、店の中に忍び込む。
○ エメラルド・サーフィン店内
商品の中を潜り抜けていくマイケル。
ロングボードの棚をまじまじと見つめる。
置かれていたブルーのボードがないのに気づくマイケル。
さらに奥に進み、リペア工場の入口へ向かう。
ドアノブを回すが鍵がかかっている。
マイケル、コムリンクに喋りかけ、
マイケル「キット、このドアの鍵も頼む」
キットの声「少々お待ちを」
○ ナイト2000車内
モニターにエメラルド・サーフィンの3Dが表示されている。パルス音が鳴り響き、
リペア工場のドアの錠に電磁波を送っている。
○ エメラルドサーフィン・リペア工場入口
ドアノブを回すマイケル。
ドアが開く。マイケル、ソッと中に忍び込む。
○ 同・リペア工場内
辺りを見回すマイケル。壁際に作りかけの白いボードがいくつも置かれている。
コムリンクに向かって喋りかけるマイケル。
マイケル「キット、このボードについている指紋を調べてくれないか」
○ ナイト2000車内
モニターにボードに付着する指紋がピックアップされる。
キット「そのボードには、二人の人間の指紋が付着しています」
○ エメラルド・サーフィン・リペア工場内
マイケル「デボンに連絡して、死んだ強盗犯の指紋と照合させるんだ」
キットの声「わかりました」
マイケル、ボードの下側についているシールをまじまじと見つめる。
シールには、龍の形をした黒いドットのようなものがつけられている。
マイケル、コムリンクに喋りかけ、
マイケル「このシールは、何かわかるか?」
シールにコムリンクを近づける。
○ ナイト2000車内
モニターにシールが映し出される。
キット「マイケル、それは、二次元コードです。物流管理などでよく使われるものです。
大量の情報を知らせる時に利用されています」
○ エメラルド・サーフィン・リペア工場内
マイケルの声「急いで分析してくれ」
キット「了解」
○ OBXケーブルテレビ局・2階・副調整室
たくさんのモニターが縦横にいくつも並んでいる。
オペレートシステムの前に座る数人のスタッフ。
暫くして、そこにアルベルトがやってくる。
アルベルト、モニターに映るスタジオの様子を見つめている。
アルベルト「ポーラは?」
スタッフの男「今、トイレに行ってます」
アルベルト、後ろに立っている警備員に話しかける。
アルベルト「マイケル君は、どこにいるんだ?」
警備員「出て行きました。犯人の手がかりが見つかったとかなんとか言って・・・」
アルベルト、一番右端にあるモニターを見つめる。
パシフィックビーチに設置されているカメラ映像。海岸が映し出されている。
アルベルト、遠隔装置の摘まみを右に捻る。モニターの映像が右へパンしている。
画面に『エメラルド・サーフィン』の店の全景が映り、店の前にナイト2000が
止まっているのが見える。
アルベルト、慌てた様子で、部屋を出て行く。
○ 同・通路
女性用トイレから出てくるポーラ。
スタジオに向かって歩いている。
暫くして、ポーラの後ろからアルベルトがやってくる。
アルベルト「ポーラ」
ポーラ、振り返りアルベルトを見つめる。
ポーラ「あら、アルベルトさん」
アルベルト、ポーラと並んで歩く。
アルベルト「ちょっと、つきあってくれないか?」
ポーラ「でも、本番まで後十分しかないんですけど・・・」
アルベルト、ポーラの腰に短銃の銃口を突きつける。
ポーラ、唖然とアルベルトを見つめる。
アルベルト、険相を浮かべ、
アルベルト「せっかくここまで順調に来たのに、運が悪かったな」
ポーラ「一体、どういうことなんですか、アルベルトさん・・・」
アルベルト「黙ってついてくるんだ」
アルベルト、ポーラの腕を掴み、目の前にあるエレベータに乗り込む。
○ エメラルド・サーフィン・リペア工場内
コムリンクのアラームが鳴る。
マイケル、コムリンクに喋りかけ、
マイケル「わかったか?」
キットの声「わかりました。香港PM2:00、300kg、10000000の数字・・・
他にもイギリス、フランス、日本の名前が書かれた同じデータが全部で20あります」
マイケル「キット、このロングボードをスキャンしろ」
○ ナイト2000のスキャナーが唸る
○ ナイト2000車内
『X−RAY』のボタンが光る。
モニターに映るサーフボードがX線透視され、中身の映像が映し出される。
○ エメラルド・サーフィン・リペア工場内
コムリンクに喋りかけるマイケル。
マイケル「わかったか?」
キットの声「マイケル、そのボードの中には・・・」
その時、大声を上げた男がロングボードをマイケルに差し向け、襲いかかってくる。
マイケル、ボードのノーズに突かれそうになるが、透かさず、避ける。
ボードを持っているのは、リックである。
リック、狂気じみた表情で、ロングボードを振り回す。
マイケル「口封じに強盗犯を殺したな、リック!」
リック「黙れ!」
マイケル「強盗犯は、店だけじゃなく、この工場にも侵入したんだ。ここの秘密を知られた
からって、自分で作ったボードを殺人の道具に利用するなんてな。自慢の腕が泣いてるぜ」
リック「お前もあの世に送ってやる」
マイケル、リックの振りかざしたボードを両手で受けとめ、逆にボードを奪い取ると、
それでリックの腹を殴りつける。
リック、のけ反るように作業台に叩き付けられる。
マイケル、起き上がろうとしたリックの頬に大きく振りかざした右手でパンチを食らわす。
床に倒れ、気絶するリック。
マイケル、両手でボードを高くかかげ、作業台の角にボードを叩き付ける。
ボードが真中から真っ二つに割れると、中から、白い粉末と緑色の鉱石の入った
ビニール袋が大量に出てくる。
マイケル、唖然とし、袋を見つめている。
マイケル、何かを悟ったように険しい表情を浮かべ、
マイケル、ボードを一つ持ち、部屋を出て行く。
○ 海岸通りを疾走するナイト2000
○ ナイト2000車内
ハンドルを握るマイケル。
キット「マイケル、あなたが見つけた石の分析が終わりました。このクリスタルの原料は、
私が受けたレーザー兵器に使用されたものと同じです」
マイケル「やっぱりな。事件の黒幕は、アルベルトだ。デボンを呼び出してくれ」
モニターにデボンの姿が映る。
デボンの声「マイケル、やはり、君が睨んだ通りだ。アルベルトの経歴を調べ直してみたら、
とんでもない事実が判明した。奴は、25年ほど前まで義理の兄とサンフランシスコで暮らし
ていた。その兄って言うのは、3年前、君を殺そうとした国際的テロリストのキャメロン・
ザカリーだ」
マイケルの脳裏に、3年前のザカリーとの刀剣での格闘の場面が浮かび・・・
マイケル「なるほどね。奴が弟を使って、俺に復讐を企てたって事か」
デボンの声「アルベルトが経営するサーフショップは、ここ2年で1億ドルの売り上げを
出している。それだけじゃない。OBXも、ここ数年で事業を拡大し、急成長を続けている。
その資金の出所は、彼の個人口座によるものだ。架空企業から製作援助資金として、
毎月3億ドルもの金が振り込まれている」
マイケル「その金は、ボードを売って稼いだものだろ?」
デボンの声「ああ。大量のヘロインとレーザーガンの原料となるクリスタルを詰め込んだ
サーフボードを、堂々と正規のルートで全世界に輸出していた」
マイケル「アルベルトがあのリペア工場で作らせていたんだ。ザカリーの夢だった携帯用
レーザーガンまで完成させていたとはな・・・」
デボンの声「となると、ポーラも共犯ってことになるな・・・」
マイケル「いいや。彼女は、アルベルトに利用されただけだ。一連のストーカー事件は、
奴が俺を呼び出すために仕掛けた偽装工作さ」
デボンの声「インターポールに連絡して、サーフボードの輸送ルートを探らせる」
マイケル「頼んだよ」
モニターからデボンが消える。
キット「マイケル、500m前方から例のジャガー近づいてきます」
マイケル「奴らの相手をしている暇はない。ポーラの命が危ないんだ」
マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。
○ ナイト2000のボディが変形しスーパー追跡モードの状態に・・・
爆音と共に、猛スピードで、路上を駆け抜けて行く。
ナイト2000前に近づいてくるジャガー。
後部席の窓からからレーザーガンを構えた男の姿が見える。男、ナイト2000の姿を見つめ、
驚愕する。
ナイト2000、風を切るように一瞬でジャガーのそばを走り抜けて行く。
その直後、ジャガーのタイヤが前輪が破裂する。
車体をふらつかせながら、駐車中の車に乗り上げ、激しく横転するジャガー。
○ OBXケーブルテレビ局・駐車場
ものすごい勢いで中に入ってくるナイト2000。EBS装置を作動させ、立ち止まる。
放送局のビルの屋上から一台のヘリが北西の方角に向かって飛び去って行く。
○ ナイト2000車内
マイケル、ヘリの姿を見つめ、
マイケル「アルベルトのヘリだ。キット、ポーラの番組は、もう始まってるか?」
モニターにOBXチャンネルが映し出される。キャスター席に座っているのは、
別の男性キャスター。かなり慌てた様子。
キット「彼女が出演していません」
マイケル、険しい表情でヘリを見つめ、
マイケル「ヘリを追うぞ」
マイケル、車をバックさせ、切り返すと、再び爆音を上げ、路上を走り去って行く。
○ ヘリ・キャビン
後部席のシートに並んで座るアルベルトとポーラ。アルベルト、ポーラに短銃を
突きつけている。
ポーラ、激しく動揺した面持ちで、
ポーラ「なぜ、こんなことをするんですか、アルベルトさん」
アルベルト「白々しいぞ。マイケルが私の裏のビジネスに気づかなければ、
君は死なずに済んだんだ」
ポーラ「裏ビジネス?何のこと?」
アルベルト「とぼけるな。もう何もかも知り尽くしているんだろ?君は、泳げないと言ってたな。
西海岸の海の真中で、溺れ死んでもらう」
ポーラ、アルベルトの短銃の持った手を両手で掴み、激しく抵抗する。
アルベルト、銃口をポーラに向けようと必死に力を入れ、引き金を引こうとする。
ポーラ、咄嗟にアルベルトの腕を押さえつける。
銃声が鳴る。弾は、パイロットの肩を貫通する。
○ 海岸通りを猛烈なスピードで疾走するナイト2000
○ ナイト2000車内
モニターにパシフィックビーチ上空を飛ぶヘリの様子が映っている。
ヘリ、突然、機首を下げ、ふらつきながら海に向かって下降している。
キット「マイケル、ヘリの様子がおかしいですよ」
マイケル、モニターを見つめる。
マイケル「元に戻すぞ」
マイケル、ボタンを押す。
スーパー追跡モードが解除され、元の形に戻るナイト2000。
○ パシフィック・ビーチ海岸沖3km
墜落するヘリ。ポーラがヘリから投げ出され、海に落ちる。
○ 砂浜を走るナイト2000
急ブレーキで立ち止まる。
○ ナイト2000車内
モニターに海岸の様子が映っている。
ヘリが海に突っ込む。ローターが大破し、機体がひっくり返る。
マイケル「沖のほうをもっとアップだ」
モニターの画面がズームアップする。ポーラが腕を激しくバタつかせながら、溺れている。
マイケル「キット、久しぶりに泳ぐ準備をしとけ」
キット「待ってください。この荒波の上を走らせる気ですか?」
マイケル、シフトレバーをDに入れ、アクセルをおもいきり踏み込む。
○ 後輪をスピンさせるナイト2000
砂を掘りながら、急加速して走り出す。
桟橋のほうに向かって、猛スピードで突き進むナイト2000。
キットの声「マイケル、もう無茶はしないと約束したはずです」
マイケルの声「お前が海を走れるのは、3年前に実証済みだ。もっと自信を持てよ」
○ 桟橋の上を突っ走るナイト2000
キットの声「万が一、失敗すれば、あなたの命に危険が及びます」
○ ナイト2000車内
マイケル「ポーラをあの荒波に飲み込ませる気か?彼女は、泳げないんだ」
キット「・・・そうでした」
マイケル「用意は、いいな。行くぜ」
マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
○ 激しい爆音と共に桟橋の先端を飛び上がり、海面に勢い良く着地するナイト2000
海面を水を切りながら走行し始める。
キットの声「強い波で左に流されています。もっとアクセルを踏み込んでください」
○ ナイト2000車内
マイケル、険しい表情を浮かべハンドルを握っている。
車体が激しく揺れている。
マイケル「わかってる」
キット「マイケル、現在のパシフィックビーチの波の情報をキャッチしました。後3分ほどで、
高さ5m程の波が来るそうです」
マイケル「望むところだ。こうなったついでにおまえもサーフィンデビューを果たそうぜ」
キット「冗談でしょ?」
マイケル「近づいてきたぞ、サンルーフを開けろ!」
○ パシフィックビーチ・3km沖地点
顔を何度も水につけ、溺れているポーラ。
ナイト2000がポーラの前に近づいてくる。
マイケル助手席の窓から身を乗り出し、ポーラに手を差し伸べる。
マイケル「さぁ、捕まって!」
ポーラ、マイケルの腕に捕まる。マイケル、両腕でポーラの体を引き上げる。
○ ナイト2000車内
ずぶ濡れのまま助手席に座るポーラ。激しく震えている。
サンルーフが閉まる。ポーラ、我に返ると、目を剥き、驚愕する。
ポーラ「なんで車が浮いてるの?」
マイケル「船に助けてもらったと思えば良いのさ。余計なことは、考えないで」
ポーラ、あたふたと辺りを見回している。
キット「アルベルトは、どうするんです?」
フロントガラス越しに、機体の破片に捕まり、こちらに向かって手を振りながら、
命乞いをしているアルベルトの姿が見える。
マイケル「どうせ、奴は、泳げるんだ。沿岸警備隊のヘリが向かいに来るまで、あそこで
待たせとこう」
キット「マイケル、あれを・・・」
○ 巨大な高波がナイト2000の前に近づいてくる
ナイト2000、左側に180度ターンし、海岸に向かって走り始める。
キットの声「このままでは、波に飲み込まれてしまいます」
マイケルの声「波の流れに沿って、バランスよく進め」
ナイト2000、テイクオフし、波の斜面を滑るように走っている。
波の下を潜り抜けるように進んでいるナイト2000。
マイケルの声「ヤッホォー、その調子だ。初めてにしては、上出来だぞ、キット!」
キットの声「まさか、こんな目に合おうとは・・・」
グーフィーの波をスピーディーに駆け抜けているナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
○ 水しぶきを上げ、海面の上を浮き上がるナイト2000
爆音を上げながら、海岸に向かってジャンプし、砂浜の上に見事に着地する。
○ ナイト2000車内
ポーラ、事態を把握できないまま、突拍子にマイケルに抱きつく。
ポーラ「なんだかよくわからないけど、助かったのね。ありがとう、マイケル、キット・・・」
マイケル、ポーラの頭を撫で、
キット「これで、私もサーファーの仲間入りですか?マイケル」
マイケル「ああ。波乗りキットは、最高だったぜ」
ナイト2000のスキャナーが唸る。
−ACT4 END−
−ACT5−
○ OBXケーブルテレビ局・駐車場
駐車スペースにナイト2000が止まっている。
○ ナイト2000車内
モニターに映る『ニュースショー』。
ポーラがキャスター席に座り、カメラ目線で話をしている。
ポーラの声「・・・ロングビーチにお寄りの際は、ぜひハーベイルホテルをご利用ください。
最後に、OBXケーブルテレビ局から視聴者の皆様へ謝罪をしなければなりません。
それは、我が社の社長アルベルト・ニューマンが起こした不祥事についてです」
マイケル、運転席に座り、モニターを見ている。
キット「マイケル、一つ気がかりなことがあるのですが?」
マイケル「なんだい、キット」
キット「やつらは、どうして、私をレーザーで破壊しなかったのでしょう?」
マイケル「俺を殺し屋に襲わせている間に、奴らは、お前を奪い取ろうと郊外の道に
トレーラーを止めて待ち構えていたらしい」
キット「つまり、私は、あの犬のおかげで、捕まらずに済んだと言うことですか?」
マイケル「そういうことだ。ちょっとはお犬様を見直したか?」
キット「苦手なものは、苦手です。しかし、あの犬には、感謝しています。それにしても、
いつ自分が狙われている事に気づいたんです?」
マイケル「最初に銃で狙われた時さ。アルベルトのやり口は、ザカリーとそっくりだった。
女を使って、俺に罠を仕掛けて来たんだからな」
キット「ポーラもとんだ迷惑を被ったものですね」
フロントガラス越しにスケボーに乗ったジミーがやってくる。
マイケル、車から降り、ジミーに近づいて行く。
マイケル「やぁ、この間はすまなかった」
ジミー、スケボーから降り、突然、マイケルと握手し、マジックを手渡す。
ジミー「あのことは、もういいの。このジャンパーの胸のところにサインしてくれる?」
マイケル、唖然としている。
マイケル「ああ、いいよ・・・」
ジミーの背中にサインをするマイケル。
マイケル、書き終わると、ジミーにマジックを手渡す。
ジミー、ジャンパーに書かれたサインを見つめ、
ジミー「マイケル・ナイト、いい名前ね。覚えとくわ。人気者になったらあなたの一番目の
ファンは、ジミーちゃんだってマスコミに言い触らしてよ」
マイケル「ああ・・・わかったよ」
ジミー「それじゃあ!」
ジミー、手を振り、スケボーに乗りながらテレビ局のビルに向かって行く。
マイケル「こりゃあ、一体どういうことなんだ?キット」
キット「彼は、あなたのことをテレビスターだと思い込んでいるようです」
マイケル、車に乗り込み、
マイケル「お前が言ったのか?」
キット「はい。あなたの身分をカモフラージュするため、やむを得ず・・・」
マイケル「キット!」
キット「なんです?」
マイケル「俺があいつにつきまとわれたら、お前のせいだぞ」
キット、唖然とし、
キット「まさか、本気で?・・・」
マイケル「アルベルトが捕まっていなけりゃあな」
キット「マイケル、無茶を言わないで下さい」
マイケル、笑みを浮かべる。
−THE END−