SUBTITLE 『KNIGHT TEACHER』 作 ガース「ガースのお部屋」
−ACT1−
○ シューバック・ハイスクール・体育館(午前)
バスケットボールをドリブルする少年の手。館内に激しく響いている。
長身の少年ライリー・フォッグス(17)が、ゴールに向かって突き進んでいる。
ライリー、フリースローライン内でディフェンダーの少年にボールをカットされる。
ボールは、飛ばされ、エディ・フレイリー(17)がボールを受け取る。
エディは、背は、小柄だが体格は良く、丸い眼鏡をかけている。
エディ、ディフェンダーに囲まれている。
ライリーがエディの前に立ち塞がり、必死になって、ボールを取ろうとする。
ライリー「タートル・エディは、ひっこんでな!」
ライリー、エディからかっさらうようにボールを取り、一瞬の隙をついて、
エディの右足のシューズを踏む。エディ、前のめりに倒れる。
ライリー、リングに向かってレイアップシュート。
ボールは、鮮やかにリングの網を潜り抜ける。
笛を吹く水色のジャージを着た男は、マイケル・ナイト。マイケル、眼鏡をつけている。
マイケル、ボールを拾い、ライリーにパスする。
ライリー、ボールを受ける。
マイケル、倒れているエディの元にかけつける。
マイケル「(エディの体を起こし)大丈夫か?」
エディのズボンの右膝に血が滲んでいる。
エディ「平気です」
マイケル「でも、血が出てるぞ」
エディ、立ち上がり、ボールを追いかけ始める。
エディの背中をおもむろに見つめているマイケル。
○ 原野の蛇行する一本道を軽快に疾走するナイト2000(一週間前)
○ 道路の脇道に止まっているナイト財団移動本部トレーラー
ナイト2000がトレーラーの前でUターンし、コンテナの中へ入っていく。
○ ナイト財団移動本部トレーラー内
コンソール前で対峙するマイケルとデボン。
デボン「ローバー・オルウェイズって名前を聞いたことがあるか?」
マイケル「中国、コロンビアに巨大なコカイン・コネクションを持つマフィアの大物だろ?」
デボン「よく知っとるな。どこで勉強した?」
マイケル「キットに毎日、無理矢理新聞を読まされているんでね」
マイケル、テーブルに置かれているモノクロ写真を見つめる。スキンヘッドの強面の男が
映っている。
マイケル「この男は?」
デボン「オルウェイズの手下のビリー・レイジーだ。そいつがまた大がかりなコカインの
取引を始めると言う情報を受けたFBIの麻薬捜査局は、ビリーをマークし、ついに
取引現場の駐車場で奴らを押さえたんだが、肝心のブツは、コカインじゃなかった」
マイケル「一体なんだったの?」
デボン、コーヒー用の砂糖をマイケルに見せ、
デボン「シュガーだよ」
マイケル「情報は、嘘だった・・・」
デボン「灯台下暗しだよ。後で調べた結果、実際の取引は、そこから500m離れた海南倉庫で
行なわれていたんだ。ところがだ。そいつを横取りした奴がいる・・・」
デボン、スーツの内ポケットから手紙を出す。
マイケル「なんなの?それ」
デボン「まぁ、読んでみろ」
デボン、マイケルに手紙を渡す。マイケル、手紙を開き読み始める。
マイケル「『シューバックハイスクールの特別プログラムの生徒の中に、麻薬組織と
つながる人物が存在する』・・・奇麗な字だな」
デボン「おそらく女性が書いたものだろう」
マイケル「手紙を持ってきた女性が書いたんじゃないの?」
デボン「いや、違う。どうやら、その女性の家のポストに誰かが入れたものらしい。
宛先がうちになっていたので、今朝、わざわざ届けに来てくれたんだ」
マイケル「『月曜の朝、ダスコ海岸の灯台の近くでた少年が、大きなスポーツバックを持っていた
のを見た・・・』月曜の朝と言えば、奴らが取引していた日時と一致するな」
デボン「その灯台のある場所は、その海南倉庫の間近にある」
マイケル「つまり、誰かがその灯台付近で横取りしたコカインを少年に手渡したってわけか?」
デボン「ああ。当局から事件捜査の協力を求められてる。潜入調査だ」
マイケル「もしかして、俺にハイスクールの先生でもやらせようって気じゃないだろうな?」
デボン、にんまりと笑顔を浮かべ、
デボン「さすがは、話が早いな。FBIが直接張り込むには、周りの生徒の影響が大き過ぎる。
だから、うちが引き受けることにしたんだ」
マイケル「明日、シンディとデートの約束をしてるんだ。そんなの引き受けたら、今度は、
いつ会えるか・・・」
デボン「らしくないぞ、マイケル。おまえなら真っ先に飛びつく事件だと思っていたがな。
凶悪な組織に少年が利用されているかもしれないんだぞ?」
デボン、追いつめるようにじっとマイケルを見つめている。
マイケル「(投げやりに)・・・やるよ。やりますよ・・・」
○ 『数学30』・教室(現在)
40人程の生徒が席に着く。教師の声が微かに聞こえてくる。
後側のドアの窓越しにマイケルの姿が見える。マイケル、まじまじと生徒達を見つめている。
何者かがマイケルの肩を叩く。マイケル、ハッとし、慌てて後ろを振り向く。
英語教師のレイ・ウェイン が立っている。レイ、薄いオレンジ色のスーツを身に付けている。
レイ「どうかされたんですか?」
マイケル「いや、ちょっと生徒達のことが気になって・・・」
マイケル、レイのそばを離れていく。レイ、マイケルの後を追い、歩き始める。
レイ「まだ来たばっかりなんですし、そんなに力を入れなくてもいいんじゃ・・・」
マイケル「でも、どこの学校に行っても生徒の事は、気になりますよ」
レイ「教師冥利につきますわね。私なんか、未だに生徒達の名前が覚えられなくて・・・」
マイケル、笑みを浮かべ、
マイケル「僕も得意なほうじゃないですよ」
レイ「ところで、前は、どこの学校に?」
マイケル「えっ・・・ああ、ニュージャージのオルクスハイスクールのほうで一年ほど・・・」
○ シューバック・ハイスクール正門前
生徒達が下校している。グループで固まっているもの、カップルで歩いているもの、
自転車に乗っているものがそれぞれの方向に進んでいる。
学校前の道の向かい側に止まっているナイト2000。
スキャナーがなびいている。
○ ナイト2000車内
モニターに正門前の様子が映し出されている。
マイケルの声が聞こえてくる。
マイケルの声「仕事は、順調に進んでるか?キット」
キット「ええ、この一週間ずっとここで生徒達を監視していますが、怪しげな生徒は、
見つかりませんね・・・」
○ シューバック・ハイスクール1階トイレ 片隅の壁の前で喋っているマイケル。
マイケル「当然だ。なんてたって、ここは、名門校だからな。お前もここの生徒になって、
青春を謳歌してみたらどうだ?」
キットの声「学校になど通わなくとも、すでに私には、彼ら以上の知識と経験があります」
マイケル「友人を作って、遊んだりするのも勉強のうちだぜ」
キットの声「私にそんな暇は、ありません」
マイケル「真面目だね」
キットの声「それより、マイケル。あなたのほうこそ何か事件の手がかりを掴めたんですか?」
マイケル「いいや。あの特別プログラムの生徒の中に組織と関わっている子がいるなんて、
とても思えない。できれば、何かの間違いであって欲しいよ・・・」
マイケル、漫然と窓の外に見えるグラウンドを見つめる。
ジャージ姿の生徒が一人周囲を走り続けている。
○ グラウンド
フットボールのチームのメンバーが慌ただしく走り回り、ボールを投げ合っている。
その外側の芝生で寝転がるエディ。暫くして、エディの背後にマイケルが立つ。
マイケル「スポーツはやらないのか?」
エディ、起き上がり、マイケルを見つめる。
エディ「ええ」
マイケル、エディのそばに座り込み、
マイケル「どうして?」
エディ「こうしてるのが好きだから・・・」
マイケル「・・・」
エディ「先生は、どこの高校に?」
マイケル「バンクーバーの山奥にある田舎校さ。夏は、キャンプに行って、それ以外は、
毎日バスケや水泳にあけくれてた」
エディ、マイケルを見つめ、
エディ「それでそんなにノッポになったの?」
マイケル「・・・まぁね」
エディ「・・・」
マイケル「君もバスケットボール部に参加してみたらどうだ?」
エディ、何も言わず、ペースを上げ、マイケルを追い越していく。
マイケル、息を切らし、その場に立ち止まる。
マイケルの前をチアガール部の女子生徒達の集団が通り過ぎている。
そこに紛れ込んでいた一人の女子生徒シェリル・ベインズ(17)。背は小柄。
ポニーテール、眼鏡をかけ、頬には、そばかす。
シェリル、ジッとエディのほうを見つめている。
マイケル、漫然とシェリルを見ている。
○ 郊外の住宅地(夜)
疾走するナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル「入ってから、1週間。何の手がかりもナシじゃあ、デボンがご機嫌斜めになる
のも無理ないよな」
キット「念のために、私のメモリー・バンクに入っている生徒達のデータをもう一度
確認してみますか?」
マイケル「あそこの生徒が何人いるのか知ってるのか?キット」
キット「1600人です」
マイケル「そんなの見てたら夜が明けちまうよ。一人気になる生徒がいるんだ。
エディ・フレイリーのデータを出してくれないか?」
モニターにエディのモノクロ写真が映し出される。
キット「1969年生まれ。父親のマーク・フレイリーは、プラントのつなぎめを作る
製造工場に20年勤めています。母親は、5年前に亡くなっています。兄弟は、いません。
今までに特に目立った問題行動もなく、成績は、常にトップクラスです」
マイケル「住所は?」
キット「アルウェイ通りの21番地です」
○ エディの家
家前の向かい側の脇道にナイト2000が立ち止まる。
○ ナイト2000車内
マイケル「家の中に誰かいるか?」
キットのスキャナーがうなる。
キット「二人ほど。どうやら外に出てくるようです」
マイケル、家のほうを見つめる。
○ エディの家
家の扉が開き、エディが外に出てくる。
家の中から男の声が響いてくる。
マークの声「(大声で)またか。こんな夜中にどこに行くんだ、エディ!」
エディ、そばに止めてあるスポーツ用の自転車にまたがり、
マーク・フレイリー(41)が外に出てくる。中肉中背、髪は薄い。
マーク「一体どこに行くんだと聞いてるだ」
エディ「どこに行こうと、おまえには、関係ないね」
エディ、憮然としながら、ナイト2000と逆方向に走り去っていく。
マーク、溜め息を吐き、項垂れながら家に入って行く。
マイケル「後を追うぞ」
○ ナイト2000ゆっくりとUターン
エディの自転車をつけ始める。
○ バーガーショップ
自転車を止め、店に入って行くエディ。
暫くして、ナイト2000が奥の交差点から現れ、店の向かい側の脇道に停車する。
○ ナイト2000車内
マイケル「一家団欒の楽しい夕食とは、行かないようだな」
マイケル、モニターに映し出されているハンバーガーショップの店内の様子を見つめている。
エディ、店員に注文している。
エディのそばにグレイのスーツを着た男が近づいてくる。
男に気づくエディ。親しげに男と会話を始める。
窓際のテーブルに座るエディと男。
マイケル「何を話しているんだろうな・・・キット、この間ボニーがつけてくれた超高感度
集音システムは、使えるか?」
キット「厚さ200ミリ程度の壁の向こうの声も透き通るように聞き取ることができます」
マイケル「じゃあ、やってくれ」
パルス音と共に、『AHMS』のボタンが光り、二人の声が聞こえてくる。
男の声「またライリー達にやられたのか?」
エディの声「いつものことだよ。あいつ、僕がスポーツできないもんだから、粋がってる
だけなんだ。ミドルスクールの頃から何も変わってない」
男の声「あいつのライバル心にも困ったもんだな。根は、良い奴なんだが。でも、仕返しなんて、
絶対考えちゃ駄目だぞ・・・」
エディの声「やるなら別のことでやり返せ・・・って言いたいんでしょ?先生」
エディ、ハンバーガーを頬張っている音。
男の声「もうすぐまとまった金が手に入る。そしたら、前にお前が言ってたヨーロッパに
でも旅行しないか?」
エディの声「あれは、冗談だよ。別にどこにも行きたくない」
男の声「気を使わなくて言いんだぞ」
エディの声「・・・」
マイケル「・・・もういいぞ、キット」
エディ達の音声が切れる。
キット「彼は、学校でいじめられてるのですか?」
マイケル「どうやらそうらしいな」
キット「あの男は?」
マイケル「エディは、先生って言ってたよな」
キット「先生と言うよりも、まるで父親のようにも見えますが・・・」
マイケル、怪訝な表情を浮かべ、エンジンをかける。
○ シューバック・ハイスクール・体育館(翌朝)
倉庫の扉を開ける少年。顔は見えない。
黄色いバックを右手に持ち、中に入って行く。
× × ×
倉庫から出てくるエディ。何も持たず、その場を後にする。
入口の扉が開き、ライリーとボブ(17)、ニール(16)の三人が中に入ってくる。
ライリー、エディを睨み付け、
ライリー「ここで何してんだよ?」
エディ「関係ないだろ」
エディ、入り口に向かって歩いて行くが、ライリーがエディの前に立ちはだかり、道を阻む。
ライリー「・・・隠れてバスケの練習なんて無駄なことしてるんじゃないだろうな?」
エディ「そんなことしないよ」
ライリー「(失笑し)お前みたいな薄ノロは、ずっと芝生の上に寝転がってりゃいいんだ」
ニール「おまえよりカメの方がずっと足が早いぜ」
ライリー達、一斉に笑い出す。
入口の扉が少し開くと、その隙間から中を覗く人影が見える。
エディ「いい加減、大人になれよ、ライリー。もう僕達17だぜ?」
ライリー、エディの胸倉を掴み、
ライリー「それがどうした?」
ライリー、エディの頬を殴りつける。
地面にのけ反るように倒れるエディ。
エディ「そうやって、僕の事をいじめるために、僕と同じ学校を選んだんだろ?」
ライリー、左足でエディの足をおもいきり蹴り、
ライリー「くだらねぇこと抜かしてると、首をへし折るぞ!」
○ 同・校舎1階・廊下
歩いているマイケルの背後から甲高い声が聞こえてくる。
女子生徒「先生!」
振り返るマイケル。マイケルの元に駆けてきたのは、シェリルである。
マイケル「どうした?」
シェリル「体育館で喧嘩が・・・」
○ 同・体育館
入り口の扉が開き、マイケルが入ってくる。
マイケル「やめろ、ライリー」
倒れているエディの腹の上に座るライリー。マイケルを見つめ、素早く立ち上がる。
マイケル、エディを抱き起こし、
マイケル「(ライリーに)喧嘩の原因は、なんだ?」
ライリー達、その場を立ち去ろうとする。
マイケル、ライリーの腕を掴み、
マイケル「待てよ」
ライリー、マイケルを睨み付ける。
ライリー「そいつに聞けよ」
マイケル、ライリーの肩から手を離す。
ライリー達、立ち去っていく。
マイケル、しゃがみこみ、エディと対峙し、
マイケル「いつもこうなのか?」
エディ、立ち上がり、黙ったまま入り口に向かって走り去って行く。
険しい目つきで立ち去るエディを見つめるマイケル。
○ 校舎前
通路を駆けていくエディの姿を遠くで見つめるている女のか細い足元が映る。
女、体育館から出てきたマイケルの様子を見ると、その場を立ち去っていく。
−ACT1 END−
−ACT2−
○ 林道(夜)
ナイト財団移動本部トレーラーが走行している。
デボン「ジャージ姿も板についてきたじゃないか、マイケル」
○ ナイト財団移動本部トレーラー内
コンピュータ・コンソールの前で対峙しているマイケルとデボン。
マイケル「なんでだろう。物凄く嫌みに聞こえるんだけど・・・」
デボン「もう8日目だぞ」
マイケル「子供達は、大人以上に中々尻尾を掴ませてくれないのです」
デボン「いつまでも先生ごっこをやっている暇はないんだ。潜入期間は、2週間。
それで何も掴めない場合、この事件は、再び当局の元に戻される事になっている」
マイケル「財団の名誉もかかってるしな。それで、例の男の事なんだけど・・・」
デボン「ああ、そうだった・・・」
デボン、コンピュータの前に座り、キーを打ち始める。
ディスプレイにエディがハンバーガーショップで会っていた男の写真が映る。
デボン「リチャード・ホイズン。3年前までカンザス州のローウェイ・ミドルスクールで
社会科の教師をやっていた」
マイケル「確か、エディが通っていたミドルハイスクールもローウェイだったはずだ。
だよな、キット」
キット「ええ、間違いありません」
マイケル「リチャードは、どうして教師を辞めたんだ?」
デボン「地元では、真面目で熱心な教師として有名で、学校内で組織する青少年犯罪撲滅
委員会の中心的人物でもあった。だが、窃盗事件に関わった隣町の男子生徒の首を締め上げて、
殺人未遂で捕まり、市の教育議会から、教員資格の剥奪を受けてる」
マイケル、歩き出し、ナイト2000の運転席のドアを開け、
マイケル「キット、リチャードの家の住所は、わかるな」
キット「とっくに記録済みです」
マイケル、ナイト2000の運転席に乗り込むと、エンジンをかけ、バックする。
○ 走行するトレーラーの扉が開き、中からナイト2000が降りてくる。
ナイト2000、路面に降りると、そのままバックターンし、猛スピードで走り去っていく。
○ マンション街
スキャナーをなびかせながら20階建て高層マンションの前に立ち止まるナイト2000。
○ ナイト2000車内
キット「ここがリチャードの住むマンションです」
マイケル「何階だ」
キット「13階の6号室」
マイケル、ドアを開け、車から降りる。
キット「マイケル、その姿でリチャードと会うんですか?」
マイケル「体育教師マイケル・ナイトとして、特別に家庭訪問するのさ」
キット「でも、彼はエディの父親では、ないんですよ」
マイケル「お前も昨日のエディの様子を見ただろ?彼の事を一番理解しているのは、
リチャードだと思うがな・・・」
キット「ええ。それは確かに・・・」
マイケル、ドアを閉め、マンションの玄関に向かっていく。
○ 高層マンション13階
エレベータが止まり、扉が開くと中からマイケルが現れ、降りてくる。
マイケル、通路をゆっくりと歩き、6号室の前に立ち止まる。インターホンを押す。
暫くして、ドアが開く。狭い隙間から顔を出すリチャード・ホイズン(43) 。
リチャード、マイケルを怪訝に見つめ、
リチャード「誰だ、あんた?」
マイケル「夜遅くすいません。シューバックハイスクールで臨時教師をしている
マイケル・ナイトと言うものです。実は、エディ・フレイリーのことについてお話が・・・」
リチャード「ここは、エディが教えたのか?」
マイケル「すいません、エディのことが気になって、個人的に調べさせてもらいました」
リチャード「・・・あの子がどうかしたのか?」
マイケル「あなたは、エディの中学時代の担任だったそうですね」
リチャード「ああ。あの子とは、今でも時々会っているがね。色々と相談されることもある」
マイケル「彼がいじめにあってる事もご存じで?」
リチャード「ああ、中学時代からの天敵がいるんだ。いじめと言うより、子供染みた
些細な喧嘩と言うべきかな。ライリーにとっては、一種のコミュニケーションぐらいに
しか思っていないだろうが・・・」
マイケル「ほっといて、平気なんですか?」
リチャード「エディは、見た目以上に気の強い男だ。心配する必要は、ない」
マイケル「・・・よくわかりました。唐突に押しかけて、どうもすいません。またどこかで
お茶でも飲みながら、先生の教育方針をお聞きしたいですね」
リチャード「残念ながら、今は、教師では、ないんでね・・・」
マイケル「・・・それは、どうも、失礼しました」
○ 高層マンション入口
玄関の扉が開き、マイケルが外に出てくる。マイケル、ナイト2000に近づき、
車に乗り込む。
○ ナイト2000車内
マイケル、エンジンをかけ、車を走らせ始める。
マイケル「キット、リチャードが3年前に起こした事件のことについて教えてくれないか?」
キット「地元の警察の資料によりますと、当時、隣町のミドルスクールに通っていたウィル・
イエィツは、電気店でラジカセを持ち逃げしたそうです。たまたま犯行現場を目撃した
リチャードが彼を取り押さえようとした際、彼の首を締め上げたとなっています。ウィルは、
事件の後、カンザスを離れ、ロサンゼルスの学校に移ったそうです」
マイケル「それだけのことで、首を締め上げたんなら、異常な性格の持ち主としか
言いようがないな」
マイケル、険しい表情を浮かべる。
○ シューバックハイスクール・体育館(翌朝)
辺りに散らばって、ストレッチ体操をしている特別プログラムの生徒達。
暫くして、生徒達の前にマイケルが現れる。生徒達、一斉に立ち上がり、
マイケルの前に集まる。
マイケル「今からスキルテストを始める。ライリー、倉庫からボールを取ってきてくれ」
ライリー、マイケルを睨み付け、
ライリー「俺が?」
マイケル「そうだ」
ライリー、憮然とした表情で倉庫に向かって歩いていく。
マイケル「(声を上げ)駆け足でだ」
ライリー、少し足を早める。
マイケル、生徒達を見回し、エディがいないことに気づき、険しい表情を浮かべる。
○ 同・正門前
学校前の道路の脇道に止まるナイト2000。
コムリンクの呼び出し音が鳴り響く。
マイケルの声「キット、頼みがある」
キット「どうかしたのですか?」
○ 同・体育館
バスケットコートの中で走り回る生徒達をバックにコムリンクに喋りかけているマイケル。
マイケル「エディの自宅に行って、様子を見て来て欲しいんだ」
キットの声「学校に来ていないんですか?」
マイケル「そうだ。俺は、今から生徒達のテストを見なきゃならなくてな」
キットの声「授業熱心なのは、わかりますが、少し入り込み過ぎでは?」
マイケル「下手に動いて、彼らに怪しまれたら元も子もないだろ?」
○ ナイト2000車内
キットのダッシュボードの計器類が一斉に光り始め、エンジンがかかる。
キット「わかりました。後でまた連絡します」
○ ナイト2000の全てのガラスにじんわりと黒いスモークがかかる
正門前をUターンし、走り去っていくナイト2000
○ エディの自宅前の道路
ジージャンにジーパン姿のエディが自転車に乗り走っている。
篭に大きなスポーツバックが入っている。
エディが進む方向からナイト2000が姿を現す。ナイト2000ゆっくりとエディに
近づいている。
エディの自転車とナイト2000が互いに交差する。
キットの声「おっと、いけない」
ナイト2000、ブレーキをかけ立ち止まると、Uターンしてエディの自転車を追い始める。
ナイト2000の背後から2台の黒いバイクが現れる。2台のバイク、エディの
自宅に立ち止まると、黒いヘルメットをつけた男達が黒の皮ジャンのポケットから
拳銃を出し、構えながら玄関のドアを蹴り開けている。
キットのスキャナーがうなる。
○ ナイト2000車内
キットのセンサーがキャッチした男達の様子がモニターに映し出されている。
○ 交差点を曲がり、住宅街の狭い路地を走っているエディの自転車
暫くして、交差点を曲がってきたナイト2000がエディの自転車に追いつき、
横並びして走行している。
エディ、ナイト2000に気づき、怪訝な表情を浮かべて、突然、こぐスピードを早める。
キット「待って、エディ。怪しいものではありません」
エディ、キットの声を聞き、自転車を止める。
ナイト2000、エディの前で立ち止まる。
エディ「どうして、僕の名前を?」
キット、運転席のドアを開ける。
キット「早く乗りなさい。バイクに乗った男達があなたの命を狙っています」
ナイト2000の背後の交差点から、2台のバイクが現れ、こちらに突進してくる。
エディ、慌てて、自転車から降り、スポーツバックを持ち、キットの中に駆け込む。
○ ナイト2000車内
運転席に座り込むエディ。ダッシュボードを見つめ、驚愕している。
ドアが自動的に閉まる。真暗になる車内。
ダッシュボードの光りがエディを照らす。
エディ「どうなってんの?」
キット「初めましてエディ。私はKNIGHT INDUSTRY 2000。
KITTと呼ばれています。緊急事態ゆえ、以後の紹介は、割愛させて戴きます」
勝手に動くシフトレバーを見つめるエディ。アクセルも動き始める。
茫然自失のエディ。
○ 猛スピードで走行し始めるナイト2000
200m前方から一台の黒いバイクの男が現れる。
ナイト2000が渡りかけようとしていた交差点の左横から一台のワゴンが飛び出してくる。
ナイト2000、急ブレーキをかけ、ワゴンの車体すれすれで立ち止まる。
ナイト2000、突然猛スピードでバックし、後方から向かってくる2台の
バイクの方向へ突進していく。
2台のバイクの男達、拳銃を構え、ナイト2000に弾丸を撃ち込んでいる。
バックを続けているナイト2000のボディが火花を上げながら弾丸を弾き返している。
○ ナイト2000車内
エディ「窓を明るくしてよ、何も見えない!」
キット「見えない方があなたのためですよ、踏ん張って!」
エディ「ええ?」
『TURBO BOOST』ボタンが光る。
○ 豪快な噴射音と共にバックのままターボジャンプするナイト2000
走行しているバイクの男達の頭上を飛び越えている。
2台のバイク、飛んできたナイト2000に驚愕し、同時に態勢を崩して、路面に
滑るように倒れていく。
ナイト2000、路面に着地すると、バックターンし、そのまま猛スピードで走り去っていく。
エディの声「今何が起きたの?」
キットの声「後で教えます」
−ACT2 END−
−ACT3−
○ ナイト財団本部・全景
○ 同・デボン・オフィス
入口の扉が開き、マイケルが姿を現わす。
デスクにつくデボン。デスクの前のソファに座っているエディ。扉の音に気づき、
入口の方を向く。
エディ「(唖然とし)マイケル先生・・・」
デボン、立ち上がり、マイケルに近づいて行く。マイケルもデボンに近寄り、
デボン「(マイケルに)実にタイミング良かった。キットがエディを見つけていなければ、
彼は、今頃あの世に行ってた」
エディ、立ち上がり、
マイケル「エディの命を狙ったのは、何者なんだ?」
デボン「今調べているところだが、キットの話を聞く限り、オルウェイズが送り込んだ
殺し屋の可能性が高いな・・・」
デボン、机の引き出しから新聞を取り出し、マイケルの前で開けると、ある記事に指を差す。
マイケル、まじまじと記事を見つめる。
デボン「これは、先月起きた殺人事件の記事だ。殺された男は、オルウェイズの元で働いていた
ディーラーだった。町で、バイクに乗った2人組の男に拳銃で蜂の巣にされたんだ。
どうやらコカインの取引の情報を 当局に流した事がばれて、消されたようだ」
エディ、マイケルを怪訝に見つめ、
エディ「・・・先生は、一体何者なの?」
マイケル「実は、俺は、ここの調査機関のものなんだ。君のクラスの中に、組織と
関わっている生徒がいるって手紙が届いてね・・・」
エディ「じゃあ、ずっと僕と先生の事を・・・ 」
マイケル「学校を休んで、どこに行こうとしてたんだ?」
エディ「・・・」
マイケル「もしかして、リチャードに呼び出されたんじゃないのか?」
エディ「・・・」
マイケル、ソファに置かれているエディのスポーツバックを見つめる。
エディ、寡黙に俯いたまま。
マイケル、ソファの前に行き、スポーツバックを開ける。
バックの中には、たくさんの雑誌本が入っている。
愕然とするマイケルとデボン。
デボン「仕方ない。後は、FBIに任せよう」
マイケル「待ってくれ、デボン。まだ彼がコカインを持ってるって言う証拠は、何もないんだ」
デボン「・・・だが、彼は、命を狙われ取るんだぞ」
マイケル「・・・」
○ 女の部屋
白壁の明るい部屋。ソファに座り、煙草を吹かしているリチャード。
リチャードの前に薄いオレンジ色のスカートをはいたか細い女の足元が映る。
女、テーブルに置かれていたアルミケースの中を覗き込み、
女「どう見ても30kgほど足りないけど・・・」
リチャード「残りは、別の場所にある」
女「どう言うこと?」
リチャード「なぁに。ちょっとした保険だよ」
女「私の事、信用できないってわけ?」
リチャード「そう言うわけじゃない。どうせ取引するなら、確実に行きたいんでな」
女、右手に持っていたバックの中から短銃を出し、リチャードに向ける。
リチャード「何のマネだ?」
女「そんなことしても無駄よ。全てわかってるんだから・・・」
リチャード、険しい目つきになり、
女「心配しないで。後で教え子もあの世に送ってあげるから・・・」
リチャード「人に情報を売っといて、よくもお前!・・・」
女、立ち上がろうとしたリチャードに銃口を向け、引き金を引く。
轟く銃声。
リチャード、胸を撃たれ、ソファに倒れうずくまると息絶える。
○ 高層マンション13階・リチャードの部屋
チャイムが鳴り響いているが、部屋には誰もいない。
暫くして、扉の鍵の音がし、扉が開く。
空いた扉の隙間からマイケルが姿を現し、ゆっくりと中へ進んでいる。
部屋の中は、荒らされ、雑然とした雰囲気。
マイケル、コムリンクに話し掛け、
マイケル「やっぱり遅かったようだな。リチャードは、消えた後だ」
KITTの声「オルウェイズ達に捕まってしまったのでしょうか?」
マイケル「この様子だと、それもありえるな・・・」
マイケル、窓側にあるデスクの上に置かれているリチャードと生徒達の
集合写真を険しい表情で見つめている。
○ ナイト財団本部・デボン・オフィス(夜)
マークがデボンのデスクの前に立つ。
マーク「うちの息子が犯罪組織に関わってるだと?」
デボン「ええ・・・」
マーク「自宅に戻ったら、部屋が荒らされていたから、いったい何事かと思っていたが・・・
それで、息子は、どこにいる?」
デボン「うちで保護しています。あなた自身も事件に巻き込まれる可能性がある。
だから、ここにお呼びしたんです」
マーク「・・・息子と会わせてくれ。事情を聞きたい」
デボン「息子さんは、あなたに会いたくないと言っている。それより、エディがいじめに
あっている事、ご存じでしたかな?」
マーク「エディがいじめ?まさか・・・」
デボン、困惑した表情を浮かべる。
○ ハイウェイ沿いの道路を走行するナイト財団移動本部トレーラー
○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
止まっているナイト2000の運転席にエディが座っている。
エディの声「こんな凄い車、初めて見たよ」
○ ナイト2000・車内
エディ、ダッシュボードを見回しながら、『C』ボタンに気づき、
エディ「質問していい?」
キット「なんなりと」
エディ「これ、何のボタン?」
キット「押してみればわかります」
エディ、ボタンを押す。キットのルーフが開き、オープンカーの姿になるナイト2000。
エディ、万遍の笑みを浮かべ、
エディ「ワァオ!すげぇ!」
キット「次は、私が質問しますよ」
エディ「ああ、いいよ」
キット「どうしてあなたがいじめの標的にされるんです?」
エディ「あいつは、昔から僕のことを目の敵にしてるから」
キット「・・・理解できません。彼とあなたは、幼馴染みのはず。なのに、どうして
そんなに仲違いをしなければならないのです?」
エディ「・・・お互いに、互いのことを知りすぎてるからかな。悪い部分が見えちゃうから
かも知れない・・・」
キット「それがわかっているなら、お互いに歩み寄れる術も見つけられるはずです」
エディ「そう簡単には、行かないんだよ。人間は、コンピュータみたいに単純じゃないんだ」
キット「なぜ父親に、この事を相談しないのですか?」
エディ「あいつの事、父親だなんて思ってないよ。いつも仕事のばかり考えていて、小さい時
から僕のことちっとも相手にしてくれなかったんだ。声をかけてくる時は、酒を買って
こいとか、食事の用意をしろとか、そんなことばかり・・・」
キット「・・・」
エディ「スポーツも勉強も人間としての生き方も皆先生が教えてくれたんだ。でも・・・」
エディ、深く思いつめた面持ちになる。
キット「どうかしましたか?」
エディ「いいや、別に」
キット「一つだけ言わせてください」
エディ「なんだい?」
キット「コンピュータも以外と複雑なんです」
エディ、ふと微笑む。
奥にあるコーヒールームからマイケルとボニー・バーストが出てくる。
マイケル「それじゃあ、ボニー、後は任したよ」
ボニー「わかりましたわ。マイケル先生」
マイケル「君まで嫌み言わなくても・・・」
マイケル、苦笑いを浮かべる。二人、ナイト2000の運転席の前に近づいて行く。
マイケル「キットと思い存分喋れたかい、エディ」
エディ「なんだか、取り調べを受けた気分だったけど、人間よりは、まだマシ」
マイケル「今晩は、あのおばさんと・・・」
ボニー、マイケルを睨み付け、
ボニー「お姉さんよ・・・」
マイケル、慌てて訂正し、
マイケル「・・・ああ、お姉さんと一緒にここに泊まってもらうからな」
エディ「父さんは?」
マイケル「気になるかい?」
エディ「いや。あいつなんか殺し屋に撃たれて死んじゃえばいいんだ」
マイケル・ボニー「・・・」
○ シューバック・ハイスクール・グラウンド(翌朝)
40人程の生徒達と共にランニングしているマイケル。
○ 同・正門前
道路の脇道に止まるキット。
暫くして、バイクの轟音が鳴り響く。
3台の黒いバイクが現れ、正門の中に次々と入り込んで行く。
○ シューバック・ハイスクール・グラウンド
コムリンクのアラームが鳴る。
マイケル、走りながら喋り出し、
マイケル「(小声で)どうした、キット?」
○ ナイト2000車内
キット「マイケル、昨日、エディを襲ったバイクがそちらに向かっています」
マイケルの声「急いで来てくれ」
キット「了解」
ダッシュボードが一斉に点滅し、エンジンがかかる。
○ 動き出すナイト2000
タイヤを軋ませながら、正門の中に入り込んで行く。
−ACT3 END−
−ACT4−
○ シューバック・ハイスクール・グラウンド
黒いバイクがウィリー走行しながら、グラウンドを駆け回っている。
生徒達がバイクに追い回されている。
マイケル、必死に声を上げ、生徒達に指示し、校舎に誘導している。
暫くして、ナイト2000が姿を現わす。
コムリンクに話しかけるマイケル。
マイケル「キット、奴らを引きつけろ」
ナイト2000、立ち止まりクラクションを鳴らす。スピーカーからキットの音声が流れる。
キットの声「私の事をお忘れですか?」
3台のバイク、立ち止まり、ナイト2000を見つめる。
ナイト2000、グルッと360度回転すると、正門に向かって、猛スピードで走り始める。
2台のバイクがキットの後を追って走り始める。
もう1台のバイクに乗っていた男がそばにいたライリーの腕に注射を刺す。
瞬間、ライリー、意識を失い、崩れるように倒れる。男、ライリーを荷台に乗せる。
バイク、そのまま正門に向かって突き進む。
マイケル、必死の形相で走り、バイクを追っている。
マイケル「ライリー!」
○ 同・正門前
門を抜け、外の道路に飛び出して行くナイト2000。
その後を2台のバイクが追っている。
暫くして、もう一台のバイクが出てくるが、別の方向へ走っていく。
○ 住宅街・大通り
疾走するナイト2000。
ドリフト気味に左に曲がる。
後から来た2台のバイクも左に曲がっている。
○ ナイト2000車内
マイケルの声「キット、生徒が一人さらわれた。ライリーだ」
キット「なんですって。しかし、ついてきてるのは、2台のバイクだけです」
○ シューバック・ハイスクール・グラウン ド
険しい面持ちのマイケル。コムリンクに話しかけている。
マイケル「さっさとそいつらを片づけて、もう一台のほうを追うんだ」
○ ナイト2000車内
キット「わかりました」
○ ナイト2000急ブレーキをかけながら、ターンし、
走行してくるバイクと対峙し、突き進む。
男A「今度こそ、見てろよ!」
2台のバイクに乗る男。背中に背負っていたライフルをナイト2000に向け、
ブッぱなす。
ナイト2000のボディが激しく撃ち込まれる弾丸を跳ね返している。
男B「クソ、やっぱり、びくともしねぇ!」
○ ナイト2000車内
『SKI MODE』のボタンが光る。
○ 噴射音と共にナイト2000の左側の車輪が浮き上がる
肩輪走行しながら、2台のバイクに向かって突き進むナイト2000。
○ ナイト2000車内
キット「私に見とれている場合じゃありませんよ」
『MICRO ROCK』のボタンが光る。
○ 走行している2台のバイクの間を潜り抜けるナイト2000
2台のバイクの前輪が、突然ロックされたように止まる。同時につんのめるよう
に勢い良く倒れる2台のバイク。
左側の車輪を地面に着地させ、元の状態で走行するナイト2000。
倒れた2台のバイクの前輪のタイヤが破裂する
男達、同時に起き上がる。ヘルメットを脱ぎ、投げ捨てる男A。
ナイト2000を睨み付け、
男A「何度もこかしやがって、クソ!」
男B「どうなってんだ、あの車!」
悔しがる男達。
走り去って行くナイト2000。
○ シューバック・ハイスクール正門前
待ち構えているマイケル。
走行してきたナイト2000が運転席のドアを開けながらマイケルの前に立ち止まる。
マイケル、ナイト2000の運転席に乗り込む。猛ダッシュで走り出すナイト2000。
○ ナイト2000車内
マイケル「もう一台のバイクの行方は、わかるか?」
モニターに周辺の地図が映し出されている。
キット「残念ながらこの周辺を走るバイクは、感知されません」
マイケル、ハンドルを叩き、悔しげな表情。
マイケル「クソ!」
○ ナイト2000、180度ターンし、
来た道を戻り始める。
○ ナイト財団移動本部トレーラー内
コンソールの前で立ち話をするマイケルとデボン。
マイケル「リチャートが学校にやってくると思ったら、殺し屋のお出ましだ」
デボン「やつら、ずいぶん大胆な出方をしてきたな」
マイケル「こうなると、リチャードの身も心配だな・・・」
デボン「そのリチャードの事だが、当局の調べでわかったんだが、彼は、かなりの借金を
抱えていたようだな。毎月クレジットローン会社から送られている請求書の額は、
5万ドル。もう2年もの間、定期的に同じ金額を使い込んでいる」
マイケル「無理もないさ。学校を辞めてから仕事をしていなかったんだ。でも生活費に
充てるには、高額すぎるな」
デボン「どうやら三年前に離婚した妻に慰謝料を振り込んでいたらしい」
マイケル「二人が別れた理由は、なんなの?」
デボン「リチャードの浮気だよ。しかも、相手は、同僚の先生だった」
マイケル「真面目そうに見えて、プライベートは、かなり荒れていたんだな」
デボン「不思議なのは、彼が離婚したのは、あの事件が起きた直後だってことだ。学校を
辞めてからの一年間、彼は、ピッツバーグの方で暮らしていた。浮気相手の女の家でだ」
マイケル「その女の名前は?」
デボン「レイ・ウェインだ」
マイケル、唖然とし、険しい表情を浮かべる。
デボン「何か思い当たる事でもあるのか?」
マイケル「レイは、今シューバックにいるんだ」
デボン「なんだと?」
デボンの目の前にあるテーブルに置かれている電話が鳴る。
デボン、受話器を取り、喋り出す。
キットの声「マイケル、今警察無線の情報をキャッチしたんですが、リチャードが遺体で
発見されたようです」
マイケル「死因は?」
キットの声「左胸を銃で撃たれて・・・」
デボン、電話を切り、
デボン「今、当局から連絡があった。犯人は、ライリーの取り引きの条件に、エディの身柄と
残りのコカインを要求している。リチャードが死んだ以上、いつまでもエディをかくまう
わけには、いかないぞ」
マイケル「わかってる」
マイケル、奥のコーヒールームへと足を進める。
○ 同・コーヒールーム
エディがボニーとポーカーに夢中になっている。
マイケル「エディ、話がある」
エディ、マイケルのほうに振り向き、近寄って行く。対峙するマイケルとエディ。
マイケル「リチャードが死んだ」
エディ「嘘?」
マイケル「本当だ。教えてくれ、エディ。先週の月曜の朝、君は、なぜあの灯台に行ったんだ?」
エディ、激しく動揺しているが、暫くして話し始め、
エディ「・・・先生に頼まれたんだ。バックを預かっといてくれって」
マイケル「その時、周りに誰かいたか?」
エディ「・・・そういや、バックを取りに行った後の帰り道、誰かにつけられているような
感じがした・・・」
マイケル「顔は、見たのか?」
エディ「気配だけで、ハッきり見たわけじゃないから・・・」
マイケル「昨日の朝、君を呼び出したのもリチャードなんだな?」
エディ、寡黙に頷く。
マイケル「実は、ライリーがマフィアの殺し屋に拉致されてしまったんだ」
エディ「・・・」
マイケル「彼を救うには、残りのコカインが必要だ。どこに隠してる?」
エディ「・・・体育館の倉庫の中」
マイケル「行こう」
エディ、項垂れ、動こうとしない。
マイケル「・・・いくら天敵でも、見殺しには、できないだろう?」
エディ、意を決したように悠然とした表情を浮かべ、立ち上がる。
マイケル、エディの肩を掴む。ナイト2000のほうに向かって歩き出す二人。
○ トレーラーのゲートを降りていくナイト2000
路面に着地するとトレーラーを追い越して前進して行く。
○ ナイト2000車内
運転席にマイケル。助手席にエディが座っている。
エディ、悲しげに俯き、
エディ「なんで先生が・・・」
マイケル「リチャードは、マフィアから金を巻き上げようとしていたんだ」
エディ「先生は、そんな悪い事する人じゃないよ」
マイケル「なぁ、エディ。君は、先生が3年前に学校を辞めた理由を知ってるのか?」
エディ、頷く。
エディ「ウィルは、先生の息子をいじめで自殺に追い込んだ奴なのさ」
マイケル、唖然とする。
エディ「先生は、町で悪さを働いたウィルをたまたま見かけて、捕まえようとしたけど、
激しく抵抗されて、衝動的に首に手をかけてしまったのさ・・・」
マイケル「なるほどね・・・どうして残りのコカインを体育館の倉庫の中なんかに隠したんだ?」
エディ「バックの中身がコカインだってわかって、恐くなって・・・。あそこなら滅多に
誰も近づかないし・・・先生には、なくしたって言うつもりだった」
マイケル「・・・」
○ シューバック・ハイスクール正門前
ナイト2000が停車する。
○ 同・体育館
マイケルとエディ、倉庫に向かって歩いて行く。
扉の前に立つと、勢い良く扉を開ける。
奥のほうに入り込んでいくエディ。
古びた飛び箱を移動させると、中から、黄色いバックが現れる。
マイケル、かがみ込み、バックを開け、中身を確認する。
コムリンクのアラームが鳴り響く。
マイケル、コムリンクに話しかけ、
マイケル「なんだ?」
キットの声「怪しげな4WDが今、正門を潜り抜けました」
マイケル「その車の監視を続けろ」
キットの声「わかりました」
マイケル、振り返った途端、驚愕し、目を大きく見開き、両腕を上げる。
エディも後ろを振り向き、愕然とする。
エディ「レイ先生・・・」
右手で銃を構えたレイがマイケル達の前に立っている。
レイ、マイケルをまじまじと見つめ、
レイ「・・・やっぱり、あんた、サツの犬だったのね」
マイケル「なぜ、ここにコカインがあることがわかったんだ?」
レイ「ライリーから聞いたのよ。昨日の朝、エディが体育館の倉庫にいたことをね」
マイケル「リチャードを殺したのは、君なのか?」
レイ「カンザスのミドルスクールにいた頃の彼は、確かに聡明で、パワフルな教師だった。
私も彼みたいな教師になろうと思ってた。でも、教師を辞めてからの彼は、ふ抜け同然だったわ。
私が彼を計画に誘ったら、喜んで応じてくれたわ」
マイケル「君は、いったい何者なんた?」
レイ「オルウェイズの娘よ。と言っても、彼は、私の事は、知らない。私の母は、オルウェイズの
愛人だったの」
マイケル「君みたいなのが教師だなんて、世の中どうにかなっちまってるぜ・・・」
レイ「残念ね、マイケル先生。せっかく仲良くなれると思ってたのに・・・」
レイ、短銃の撃鉄を起こす。
エディ、大きな叫び声を上げながら、レイに突進して行く。
エディ、レイに飛びつき、押し倒す。レイ、弾みで銃の引き金を引く。
マイケル、慌てて、二人の前に行き、レイから銃を奪い取る。
入口のほうから男の声がする。
男「それまでだ」
スキンヘッドの男とその周りに2人の黒いスーツを来た男達が立ちはだかる。
マイケル、スキンヘッドの男を見つめる。
男は、ビリー・レイジー 。ビリー、レイとキスをする。
マイケル「おやおや、真打ちの登場かい?」
ビリー「あいつは、ついてない男だぜ。レイの勤めてる学校のガキにブツを運ばせて
やがるんだから・・・」
マイケル「オルウェイズの手下と元愛人の娘の共謀か。はなっからリチャードを
利用する計画だったんだな。彼に本物のコカインを取引させて、用が済んだら彼を殺して
コカインを奪い取る・・・オルウェイズから金を巻き上げてどうするつもりだ?」
ビリー「マフィアから足を洗うのに、重要な資金源だ。全ては、リチャードが仕出かしたと
言うことで片がつく。後は、お前達を消すだけだ」
ビリー達、サブマシンガンをマイケル達に向けている。
マイケル、コムリンクに話しかけ、
マイケル「キット!」
○ ナイト2000車内
ダッシュボードが一斉に光り初め、エンジンがうなる。
○ 正門を潜るナイト2000
そのまま、体育館のほうに向かってスピードを上げる。
○ シューバック・ハイスクール・体育館
猛烈に響き渡るエンジン音と共に壁が破壊され、ナイト2000が館内に突っ込んでくる。。
男達、一斉に後ろを振り向き、ナイト2000に向かって、マシンガンを撃ち込む。
ナイト2000、激しく弾丸を浴びながら男達に突進し、体当たりする。
二人の男がナイト2000のボディに弾き飛ばされる。床に顔面を打ちつけ気絶する男達。
エディ、逃げようとしていたレイの背中をおもいきり押す。
レイ、前のめりに勢い良く倒れ、床に顔を打ち付け、気絶する。
ビリー、ナイト2000に追いかけ回されて、館内をぐるぐると走り続けている。
しかし、暫くして、ナイト2000の前バンパーと接触し、ナイト2000のボディに
乗り上がり、ルーフから後部へ転がると、そのまま床に落ちる。
マイケル、倒れていたビリーを起こし、
マイケル「ライリーは、どこだ?」
ビリー「車の中だ・・・」
マイケル「エディ、来い!」
マイケル、エディと一緒に入口に向かって、走っていく。
ナイト2000も開いた壁の穴を潜り、外へ出ていく。
○ 4WD車内
運転席に座る男。
前からマイケル達が近づいてくるのに気づき、エンジンをかける。
後部座席のシートにうずくまり、口、両手、両足を縛られているライリー。
○ 4WDに近づいていくマイケルとエディ
4WDがバックを始めている。
マイケルの背後にナイト2000が近づいてくる。
マイケル、コムリンクに話しかける。
マイケル「キット!」
○ ナイト2000車内
『MICRO JAMMER』のボタンが光る。
○ 4WDの4輪のタイヤが一斉に破裂する。
4WD、それでもまだバックを続けている。
○ スキャナーを唸らせるナイト2000
○ ナイト2000車内
『MICRO ROCK』のボタンが光る。
○ 4WDの動きが完全に止まる
マイケル、エディ、4WDの運転席に近づく。
運転席のドアを開け、男を引き摺り下ろすマイケル。
エディ、後部座席の扉を開け、中に入り込む。
○ 4WD車内
ライリーのさるぐつわをはずすエディ。
さらに両手、両足のロープを寡黙に解いている。
エディ「もうタートル・エディなんて言うなよ」
ライリー、神妙な面持ちでまじまじとエディを見つめ、
ライリー「・・・わかった」
○ マイケル、男の顔面に飛び蹴りを入れている
そして、すかさず、右手の拳で頬を殴りつける。
のけ反るように倒れる男。
車の中からエディとライリーが出てくる。
肩を並べて立っている二人を見つめ、にっこりと微笑むマイケル。
マイケル「良い光景だ」
−ACT4 END−
−ACT5−
○ エディの家(夕方)
家の前の道沿いに止まるナイト2000。
マイケルが車から降り、暫くして助手席からエディが降りてくる。
家の扉が開き、マークが外に出てくる。
マーク、心配気な表情でエディを見ている。
エディ、マイケルの前に立ち、
マイケル「確かにリチャードは、君にとって父親のような存在だったかも知れない。
でも、本当の父親は、あそこにいる人だ」
エディ「・・・」
マイケル「口下手なお父さんだけど、君を大学に入れてやろうと必死になって働いてるんだ。
少しは、理解してやれよ」
エディ「・・・できるだけの努力は、してみるよ」
エディの後ろに近づいてくるシェリル。
エディ、シェリルに気づき、
シェリル「ごめんなさい、エディ。ナイト財団にあなたのことを書いた手紙を出したの、
私なの・・・」
エディ、唖然としている。
マイケル「シェリルは、君のことが気になって、ずっと尾行していたそうだ」
エディ「でも、君がどうして?」
マイケル「エディ、そんな野暮な質問は、しちゃ駄目だ」
エディ、シェリルを見つめ・・・
エディ「良かったら、うちでお茶でも飲まない?とびっきりうまいのを作ってあげるよ」
シェリル、笑みを浮かべると、エディと肩を並べて、家の扉のほうに向かって歩いて行く。
エディ、足を止め、振り向き、
エディ「ありがとう、マイケル先生」
マイケル、手を振る。
エディ、手を振り、
エディ「キット先生も」
ナイト2000のスキャナーが唸る・・・。
キットの声「先生?」
エディ、シェリルを連れマークの元に向かう。マーク、エディの肩を抱き、一緒に
家の中に入って行く。
マイケル、運転席のドアを開け、中に乗り込む。
○ ナイト2000車内
キット「どうして私が先生なんです?」
マイケル「そりゃあ、彼がお前から何かを学んだからじゃないか?」
キット「彼に何かを教えた覚えはありませんが・・・」
マイケル「彼がそう思ってるんだから、それでいいじゃないか、ええ、先生」
キット「・・・この頃また人間の感情が理解できなくなってきました・・・」
マイケル「人間のほうもお前のことを理解しがたいようだぜ。お前、学校の体育館に穴を
空けただろ?それで、学校側から財団にクレームが来たそうだ」
キット「あなた達を助けるため、やむを得えずやった事です。私のせいでは、ありません」
マイケル「修理費用は、オルウェイズに出してもらうとするか」
マイケル、笑みを浮かべながら、エンジンをスタートさせる。
○ エディの自宅からゆっくりと離れていくナイト2000
夕陽に向かって走り去っていく。
キットの声「明日の授業は、何をするんです、マイケル先生」
マイケルの声「お前まで、嫌みを言うのか?もう教師なんて、2度とごめんだよ・・・」
− THE END −