〜AIRWOLF ORIGINAL SEASON4 EPISORD〜
SUBTITLE 『HARF TRUE DREAM』 作 ガース「ガースのお部屋」

―ACT1―
○ ドミニクの夢
  病院。個室。ベッドの上に眠るドミニク。
  ハッと目を覚ますドミニク。
  扉が開き、中に入ってくる男。
  ドミニク、男の顔を見つめ、愕然とする。
  ドミニクの前に立つ男。
  男は、ジョンである。
  呆然としているドミニク。
ドミニク「夢なら覚めないでくれよ…」
ジョン「しばらくだった、ドミニク。具合はどうだ?」
ドミニク「具合って…この通り、ピンピンしてる」
  ジョン、ドミニクを見ている。
ドミニク「ホークとは、もう会ったのか?」
  首を横に振るジョン。
ジョン「あいつと会うことはできない」
ドミニク「なぜだ?」
ジョン「会えば、あいつに重荷を背負わせる事になる」
ドミニク「何を言ってる。あいつは、ずっとお前の事を探し続けてきたんだぞ」
ジョン「だから、無理なんだ」
ドミニク「じゃあ、なぜわしのところに来た?」
ジョン「お前に頼みたい事がある」
ドミニク「駄目だ。今からホークを呼び出す」
ジョン「リーの事だ」
ドミニク「リーがどうした?あいつは、お前の息子だろ?」
  首を横に振るジョン。
ジョン「俺の子じゃない」
  唖然とするドミニク。
ジョン「あの子は、お前達を不孝にするぞ。さっさと手放した方がいい」
ドミニク「何を言ってる?じゃあ、あの子は…」
  ジョン、ドミニクに背を向け、立ち去って行く。
ドミニク「待て、ジョン、どこに行く?」
  ジョン、足を止め、振り返る。
  笑みを浮かべ、ドアを開け、立ち去る。
ドミニク「おい、ジョン!」
  ドミニク、起き上がろうとするが、足の方に激しい痛みを感じ、動くのを止める。
ドミニク「わしは、一体どうなっちまったんだ?」
  ドミニク、被さっている布団を捲り上げる。
  ドミニク、左足の膝から下がなく、包帯が巻かれている。
  驚愕し、悲鳴を上げるドミニク。

○ サンティーニ航空・事務所
  暗がりの部屋。
  ソファに横になっているドミニク。ハッと起き上がる。酷い寝汗。
ドミニク「なんて、夢だ…」
  手で額の汗を拭うドミニク。

○ ホークの山荘
  机に座るリー。画用紙に絵を書いている。
  ミンの絵である。
  リーの後ろにやってくるホーク。
  リー、ホークの気配に気づき、サッと画用紙を鞄にしまう。
  振り返り、ホークを見つめるリー。
ホーク「何を書いてたんだ?」
リー「学校の宿題だよ」
ホーク「具合は、どうだ?」
  リー、立ち上がり、ベッドに行き、横になる。
  ホーク、リーの額に手を当てる。
ホーク「熱は、下がったみたいだな」
リー「やっぱり学校に行けば良かった」
  ヘリのローター音が聞こえてくる。
  ホーク、音を聞き、窓に近づく。

○ 湖に架かる桟橋のヘリポート
 アメリカ国旗模様のベル206B・ジェットレインジャーが降りて来る。
 ドアが開き、ドミニクが降りて来る。
 ドミニク、桟橋を歩き出す。

○ ホークの山荘
  入口の扉のそばで横になっている犬のテット。扉が開き、入口の方を見つめる。ドミニクが入ってくる。
  階段を下りているホーク。
ドミニク「リーは?」
ホーク「あいつに何か用か?」
ドミニク「とくに用があるってわけじゃないんだが…無性に顔が見たくなってな」
ホーク「この三日間、ずっと部屋にこもったままなんだ」
ドミニク「怪我でもしたのか?」
ホーク「風邪だ」
ドミニク「いいか?」
  頷く、ホーク。
  ドミニク、ホークを横切り、階段を上り始める。

○ 同・2F部屋
  扉が開き、ドミニクが入ってくる。
  ベッドで眠るリー。ドミニクに気づき、起き上がる。
リー「ドミニク叔父さん」
ドミニク「元気そうじゃないか」
リー「うん。もう平気だよ」
ドミニク「今晩、わしの工場で特性のバーベキューでもご馳走してやろうと思ってたんだが、
 また別の日したほうが良さそうだな」
リー「食欲もあるよ」
ドミニク「本当か?」
  頷くリー。
ドミニク「じゃあ、ホークに許可を取って、今から買い出しに出かけるか」
リー「待って。僕も行っていい?」
  唖然とするドミニク。

○ レストハウス前
  白いドレスを身にまとうケイトリン・オシャネシィ。
  腕時計をまじまじと見つめている。
  駐車場に物凄い勢いでブルーのフォード・サファイアの車が入ってくる。
  ケイトリン、車を見つめている。
  駐車スペースに立ち止まる車。
  サングラスをつけた茶髪のセミロングの女が車から降りて来る。女は、パメラ・トンプソン。
  パメラの前にやってくるケイトリン。
ケイトリン「相変わらず派手ね」
パメラ「ケイトリン」
  抱き締め合う二人。
ケイトリン「突然、電話して来るんだから、驚いたわ。髭所長の調子は、どう?」
パメラ「あなたがいた時以上に…薄くなっちゃったわ」
ケイトリン「ホントに?」
  二人、談笑しながら店の中に入って行く。

○ 同・店内
  窓際のテーブルに座るケイトリンとパメラ。
ケイトリン「ハッチは、元気?」
パメラ「実は、この間密猟グループを追跡中に銃撃されて、今入院中なの」
  唖然とするケイトリン。
ケイトリン「どこを撃たれたの?」
パメラ「右の脇腹だけど…命に別状はなかったわ」
ケイトリン「あのハッチが撃たれるなんて…私が現役だった頃は、そんな事一度もなかったのに…」
パメラ「あの人もああ見えても結構歳だから。きっと、油断したのよ」
ケイトリン「それで、次の仕事は、決まってるの?」
パメラ「いや、まだ…」
ケイトリン「給料安いけど、うちの会社で良かったら相談に乗るけど…」
パメラ「映画の仕事もあるのよね…ちょっと憧れる」
ケイトリン「画面には、見えないけど、女優の代役で何本かの映画に出演した事もあるのよ」
パメラ「ぜひ見てみたいわ」
ケイトリン「でも…どうして?」
パメラ「えっ?」
ケイトリン「今でも好きなんでしょ?ハイウェイパトロールの仕事」
パメラ「先々の事を考えると、この仕事ばかりってのもね…それに父が心臓を悪くしてバイパスの手術を
 受けなきゃならないから、しばらくは、ずっとそばについていてあげたいの」
ケイトリン「そうだったの…てっきり結婚相手でも見つかったのかと思ってた」
パメラ「あなたは?」
ケイトリン「脈なしよ…」
  パメラ、ケイトリンをジッと見つめ、
パメラ「片思いの相手ぐらいは、いるんでしょ?」
  ケイトリン、耳を貸さずワイングラスを掴み、
ケイトリン「新しい人生の門出を祝して」
  苦笑するパメラ。
パメラ「気が早いわよ。まだ何も決まってないのに」
  パメラ、ワイングラスを掴む。
  グラスを合わせる二人。

○ 山間を飛行するドミニクのヘリ
ドミニクの声「昨夜、ジョンの夢を見たんだ」

○ ヘリ・コクピット
  レバーを握るドミニク。
  ドミニクの隣に座るリー。
リー「どんな夢?」
  ドミニク、複雑気に顔を顰めながら、
ドミニク「ジョンは…お前と会いたいと言ってた」
リー「…僕も前にジョンの夢を見たよ」
ドミニク「どんな夢だ?」
リー「それが顔がはっきり見えないんだ。ずっと遠くから声だけしてさ。僕が変な男に襲われそうになった時、
 突然現れて、その男を追っ払ってくれたんだ」
ドミニク「小さい頃のジョンは、おまえみたいに喧嘩っ早くて、曲がった事をする奴は、
  片っ端からぶちのめしてたからな」
リー「そんなに喧嘩っ早く見える?」
ドミニク「そうじゃないのか?」
リー「ホークは、どうだったの?」
ドミニク「あいつも人一倍負けず嫌いで、兄貴を真似して近所の不良どもによく喧嘩を吹っかけてた」
リー「似た者同士って事?」
ドミニク「良きライバルで、良き戦友だ」

○ 繁華街
  脇道のパーキングに止まるドミニクのジープ。助手席にリーが乗っている。
  車から降りるドミニクとリー。
  手前にある店に入って行く。

○ ガーネットの店・中
  中に駆け込んでくるリー。
  棚の商品を見回している。
  後からドミニクも入ってくる。
  カウンターの前にいる老人。ガーネット。青い帽子を被っている。
  ガーネットの前で立ち止まるドミニク。
ガーネット「よぉ、ひさしぶりだ。景気は、どうだい」
ドミニク「まぁまぁてとこだ。アンは、元気にしてるか?」
ガーネット「今ちょっと、虫の居所を悪くしてる」
ドミニク「また喧嘩したのか」
ガーネット「あいつが付き合ってる男がその…浮気癖のある奴でな。別れるように言ったら、
  口を聞いてくれなくなった」
ドミニク「浮気癖って…アンは、まだ十五の娘だろ?一体どんな男とつきあってるんだ?」
ガーネット「二十歳そこそこの奴だ。近くの大学に通ってるらしいんだが、どうも最近の若い奴は、
  口も態度もでかくていかん」
  リー、野菜や肉類を入れた籠をカウンターの上に置く。
  リー、まじまじと見つめるガーネット。
ガーネット「見かけない子だな。どこの子だ?」
ドミニク「知り合いの子だ」
リー「こんなもんでいい?」
  籠の中身を確認するドミニク。
ドミニク「ああ…結構、結構」
  ガーネット、レジを打ち始める。

○ 同・店前
  表に出てくるドミニクとリー。ドミニク、左手に袋を持っている
  向かいの銀行の警報ベルが鳴り響く。
  入口の扉が開き、黒い目差し帽を被った三人組の男達が駆け足で出てくる。真ん中の男と
  その右側の男が鞄を持ち、左側の男が散弾銃を持っている。
リー「強盗だ」
ドミニク「早く、こっちに来い。隠れるんだ」
  右側の男が目の前を通る犬を連れた白髪の老婆を突き飛ばす。仰け反るように倒れる老婆。
  男、犬も蹴飛ばす。
  泣き声を上げる犬。
  男達、歩道のそばに止めてあるワゴンに乗り込む。
  様子を見つめているドミニクとリー。
  大声で叫ぶリー。
リー「やい!お年寄りなんて事するんだ!」
  助手席から顔を出す男。リーをジッと見つめている。
  リー、ワゴンに向かって突っ走って行く。
ドミニク「おい、リー!」
  リーの後を追うドミニク。
  銀行の入口から警備員が出てきて、ワゴンの前に立ち止まる。両手で銃を構え、フロントガラスに向ける。
警備員「止まれ、止まらんと撃つぞ」
  車のルーフから男が身を乗り出し。ライフルを警備員に向け、撃つ。
  警備員、腹を撃たれ、その場に勢い良く倒れ込む。
  立ち止まるリー。走ってリーの背後にやってくるドミニク。
  ドミニク、リーの右腕を掴む。
ドミニク「馬鹿野郎、殺されるぞ」
  ワゴン、タイヤを軋ませながら、急発進し、その場を走り去って行く。
  ドミニク、走り去って行く車を睨み付けている。
  店から出てくるガーネット。
ガーネット「何があったんだ?」
  振り返るドミニク。
ドミニク「警備員が撃たれた。警察に連絡してくれ」
ガーネット「ああ、わかった」
  慌てて、店の中に駆け込むガーネット。
  ジープに乗り込むドミニクとリー。
  エンジンをかけ、Uターンすると、男達のワゴンを追って走り始める。

○ ドミニクの車・車内
  リー、フロントガラス越しにワゴンを見ている。
ドミニク「ナンバーを見たか?」
リー「うん」
ドミニク「よし、警察に行こう」
リー「駄目だよ」
ドミニク「お前を危険な目に晒すわけには、いかん」
リー「僕なら平気だよ。ああ言う奴ら、許せない。叔父さんもそう思わない?」
  困惑するドミニク。
リー「僕に任せといて。あいつらのアジトを見つけてから警察に知らせようよ」
  憮然とするドミニク。

○ CIA本部・部長室
  部長席に座っているアークエンジェル。入口の扉が開き、ホークが入ってくる。
  立ち上がるアークエンジェル。
ホーク「何事だ?」
アークエンジェル「四の五の言わず、まぁ、座ってくれ」
  ソファに腰掛けるホーク。
アークエンジェル「君にプレゼントだ」
ホーク「誕生日は、まだ当分先だぞ」
  アークエンジェル、アルミケースをテーブルに置き、ケースを開ける。電子回路が組み込まれた
  黒いボックスを取り出す。
アークエンジェル「軍が開発した三次元グラフィックプロジェクターだ。今のサーモグラフィック機能をさらに
 改良したものだ。半径10キロ以内の建物の中にいる物体をより正確にモニターに映し出す事ができる」
  ホーク、憮然とした表情で、ボックスを掴み、見回している。
アークエンジェル「君が使っているエアーウルフのヘルメットのバイザーにも投影できるようになっている」
ホーク「余計な小細工は、してないだろうな?」
アークエンジェル「心配しなくとも、エアーウルフの居場所を探るようなものは、何も仕掛けていない」
  ホーク、寡黙にケースの中にボックスをしまい、蓋を閉める。
アークエンジェル「できれば、運用実験の結果を報告してもらいたい。取り付けが終わったら、連絡をくれないか?」
ホーク「まだ空撮の仕事が残っているんだ」
  ホーク、アルミケースを持ち、立ち上がる。
アークエンジェル「じゃあ、いつやってくれるんだ?」
  ホーク、踵を返し、入口のドアに向かって歩き出す。
ホーク「明日連絡する」
アークエンジェル「ドミニクは?」
ホーク「今外に出てる」
アークエンジェル「手が足りんようだったら、うちの誰かを派遣してやってもいいぞ」
  扉を開け、アークエンジェルを見つめるホーク。
ホーク「じゃあ、うちの山小屋の掃除でも手伝ってもらおうか」
  苦笑いするアークエンジェル。
アークエンジェル「エアーウルフならピカピカにしてくれるぞ」
  ホーク、何も言わず、外に出て行く。

○ スクラップ場
  スクラップにされ高く積まれた車体の狭間を土煙を上げながら走行するワゴン。
  古びた事務所の建物の前に急ブレーキで立ち止まる。
  一斉に車から降りる三人。
  建物の中に入り込んで行く。

○ 同・入口
  高く積まれた車の陰に立ち止まるドミニクのジープ。
  助手席のドアが開き、リーが降りる。
  リー、廃車の陰に身を隠し、建物の様子を覗き込む。
  車から降りるドミニク。リーの後ろに近づいて行く。
ドミニク「もういいだろう。これ以上近づくと危険だ」
リー「見てよ、ドミニク」
  ドミニク、リーの目線の方向を見つめる。
  事務所の建物の前に集まる三人組の男。目差し棒を外し、素顔を見せる。
  スキンヘッドのライコーネル、黒髪、背の低いモーガン、銀の髪をし、長身のキーン。
ライコーネル「(ワゴンのドアを叩き)こいつをすぐに処分しろ」
  モーガン、ワゴンの運転席に乗り込む。
  急発進し、その場を走り去って行く。
  暫くして、シルバーのボルボの車がやってくる。
  車から降りる紳士風の中年の男。金髪、髭をたくわえ、サングラスをつけている。葉巻を吸いながら、
  三人組の男達と輪になり、話している。
  ドミニク、金髪の男の顔を見つめ、愕然とする。
  リー、ドミニクの顔を見つめ、
リー「知ってるの?」
ドミニク「知ってるも何も…あいつは…」
  リー、スクラップの車のそばを通り、さらに前へ進んで行く。
  ドミニク、声を出そうとするが、躊躇し、身を低くして、リーの後を追う。
  小声でリーに声をかけるドミニク。
ドミニク「リー、戻って来い!」
  振り返り、ドミニクを見つめるリー。
  リー、首を横に振り、さらに前へと突き進んで行く。
  ドミニク、血相を変え、前へ進もうとするが踏み止まる。夢で見たジョンの声がリフレインする。
ジョンの声「あの子は、お前達を不孝にするぞ…」
  ドミニク、後退りし、その場を立ち去ろうとする。
  その時、リーの声が聞こえる。
リー「離せ、離せよ!」
  ドミニク、立ち止まり、身を低くして建物のほうを覗き込む。
  ライフルを持ったモーガンとキーンにリーが捕まり、建物のほうに連れて行かれている。
  ドミニク、右手を顔につけ、溜息をつきながら、困惑した表情。
ドミニク「言わんこっちゃない…」
  二人に両腕を掴まれているリー。モーガンの膝を蹴る。モーガン、腹を立て、リーの額に銃口を突きつける。
モーガン「この野郎!」
  金髪の男がライコーネルに喋りかける。
金髪の男「なんだ、こいつは?」
ライコーネル「近所のガキだ。すぐに始末する」
  キーン、リーをまじまじと見つめ、
キーン「こいつ、銀行の前にいた奴だ」
ライコーネル「本当か?」
キーン「ああ、確か帽子を被った太っちょの爺さんも一緒にいたはずだ」
ライコーネル「辺りを探れ。そいつも近くにいるはずだ」
  リーから手を離すモーガンとリー。
  二手に別れ、辺りを探り始める。
  ライコーネル、リーの両腕を後ろにやり、ロープで縛っている。
金髪の男「面倒は、ごめんだぞ」
ライコーネル「金は、ちゃんと用意した。あんたのおかげで、こっちは、取り越し苦労だ」
  溜息をつく男。
金髪の男「その爺さんが警察に駆け込んでいたら、どうする気だ?」
  男の正面から声がする。
ドミニクの声「わしならここにいるぞ」
  二人の前に現れるドミニク。
  ドミニクを見つめるライコーネルと金髪の男。
  立ち止まるドミニク。
  リー、呆然とドミニクを見つめる。
リー「ドミニク…」
  リーに向かって苦笑しながらウインクするドミニク。
―ACT1 END―

―ACT2―
○ サンティーニ航空・工場内
  入口から歩いて入ってくるホーク。
  事務所のドアを開け、中の様子を見つめる。しかし、誰もいない。
ホーク「ドミニク!」
  辺りを見回しながら、目の前に止まっている修理中のヘリの中を覗き込むホーク。
  その隣に止まっている修理中のヘリの方に進む。
ホーク「いるなら返事しろ!」
  ヘリのドアを覗き込むホーク。
  ホークの背後に忍び寄る影…。
  ホーク、気配に気づき、シートの下に置いてある工具箱からスパナーを掴む。
  サッと振り返り、腕を上げるホーク。しかし、躊躇し、動きを止める。
ホーク「ケイトリン…」
  ホークの前に立っているケイトリン。
ケイトリン「びっくりさせないでよ」
  ホーク、腕を下ろし、
ホーク「今日は、休みじゃなかったのか?」
ケイトリン「本当は、夕方まで用事があったんだけど、早く済んじゃって。暇だから寄ってみたの。ドミニクは?」
ホーク「リーを連れて、夕飯の買い出しに出かけたっきり、まだ戻って来ない」
  スパナーを置くホーク。ケイトリンのそばを横切り、入口の方に歩いて行く。
ケイトリン「エリンの空撮の仕事は、もう終わったの?」
ホーク「これからだ」
  ケイトリン、腕時計を見つめる。時計は、2時34分を指している。
ケイトリン「出たのは、いつ?」
ホーク「俺の山荘を出たのは、11時だ」
  険しい顔つきのホーク。
  不安げな表情を浮かべるケイトリン。

○ スクラップ場・全景
  事務所の建物の入口を出入りする男達。
  建物の前に止まっている金髪の男の車の助手席にライコーネルが座り、携帯電話の受話器を握っている。

○ ボルボ車内
  電話で話すライコーネル。
ライコーネル「はい、もうすぐお手元に届けます。いや、取り引きは、これからです…もちろん、
 処理は、します」
  電話を切るライコーネル。ドアを開ける。
  車の前に立っている金髪の男。
ライコーネル「金に困っているわりには、いい車乗ってんじゃねぇか」
金髪の男「ローンがまだ残っているんだ。電話代も後で請求するぞ」
  ライコーネルの前から立ち去る男。
  ライコーネル、苦笑し、
ライコーネル「見かけによらず、ケチな野郎だ」

○ スクラップ場・事務所内
  椅子に縛られているドミニクとリー。
ドミニク「困った事になっちまったな…」
リー「僕のせいだ…」
ドミニク「気にするな。さぁて、どうやってここから抜け出すかだ」
  リー、辺りを見回している。
  ライコーネルと金髪の男が中に入ってくる。
  ドミニク、ライコーネルを睨みつける。
ドミニク「人質は、わしだけで十分だろ。この子を離してくれ。体調を悪くしてるんだ」
ライコーネル「健康だろうが、病気だろうが、死んだら同じさ」
ドミニク「言うのを忘れていたが、さっき警察に連絡した。見つかるのは、時間の問題だぞ」
  失笑するライコーネル。
ライコーネル「ここいらに公衆電話はねぇ。見え透いた嘘つく奴は、大ッ嫌いだ」
  ドミニク、金髪の男の顔を見つめる。
ドミニク「信じられんな。おたくがこの事件に一枚噛んでるなんて…」
  金髪の男、サングラスを外す。
金髪の男「私を知っているとは、光栄だ」
リー「誰なの?」
ドミニク「ベルナンド・カーン。何年か前まで、テレビ映画に出演していた俳優だ」
  金髪の男の名は、ベルナンド・カーン。
ベルナンド「引退して4年も経つのに、まだ俺のことを覚えている奴がいたとは…」
ドミニク「忘れやしないさ。癖はあったが、俺は、あんたのファンだった。『忘却の彼方』
 だったか…あの時のお前さんの演技は、最高だった。あの子役の娘もな」
ベルナンド「…」
ドミニク「記憶を失った少女と医者の話だ。あんたは、娘の記憶を取り戻そうと懸命になる医者の役だった」
ベルナンド「今頃褒められたもな。もう俺は、一文無しの俳優崩れさ」
  ベルナンド、サングラスをつけ、立ち去って行く。
  ライコーネル、拳銃の撃鉄を立て、ドミニク達に向ける。
ライコーネル「そろそろトークタイムは、終わりだ」
  部屋の中にキーンが駆け込んでくる。
キーン「パトカーだ。ここを嗅ぎつけやがった…」
ライコーネル「ベルナンドは?」
キーン「モーガンと一緒に車を移動させてる」
  ライコーネル、ドミニクを睨みつける。
ドミニク「だから、言っただろ…」
  キーンとライコーネル、部屋を出て行く。
  ドミニク、ふっと息を吐く。
リー「いつ警察に連絡したの?」
  ドミニク、首を横に振り、
ドミニク「いや、わしは、連絡しとらん。きっと、神様がわしらに救いを差し伸べてくれたんだ」
リー「逃げ出すなら、今しかないよ」
ドミニク「リー、わしのジャンバーのポケットにドライバーが入ってる。取れるか?」
リー「やってみる」
  リー、椅子ごと飛び跳ね、ドミニクの前に背中を向ける。ドミニクの皮のジャンバーのポケットの前に、
  括れた両手を伸ばす。

○ スクラップ場・事務所前
  凸凹道を通り、建物の前にやってくるパトカー。

○ 同・事務所内
  入口のそばに身を隠すライコーネル。
  キーンがパトカーの前に向かって歩き出す。

○ 同・事務所前
  パトカーの運転席と助手席から若い警官が降りる。
  二人の警官の前にやってくるキーン。
キーン「なんか御用ですか?」
警官A「強盗事件の犯人を追ってるんだ。古いタイプのシルバーのワゴンを見かけなかったか?」
キーン「いや。やばいのを相手に商売は、しませんよ」
警官B「一応、プレス機を調べさせてもらってもいいかな?」
キーン「どうぞ、ご自由に…」
  警官B、スクラップの機械のほうに向かって歩いて行く。
警官A「入口の方にジープが止まっていたんだが、客のか?」
  少し動揺した面持ちのキーン。
キーン「ええ…スクラップの依頼を受けてて」
警官A「まだ新しいのに。うちの女房がこの間車の免許を取ってな。ジープに乗りたがってるんだ」
キーン「エンジンがもうイカれちまってて。とっ替えるより中古を買うほうが安くつきますよ」
警官A「それもそうだな…」
  苦笑いしているキーン。

○ 事務所内・奥の部屋
  リー、ドライバーで自分の手首に撒きついているロープを切り刻んでいる。
  その様子を見つめているドミニク。
ドミニク「その調子だ…いいぞ…」

○ ガーネットの店の前
  ホークの黒いバイクが立ち止まる。
  ヘルメットを外すホーク。
  銀行の方を見つめる。
  銀行の前に数台のパトカーが止まっている。その向こうで、警官が行員から事情を聞いている姿が見える。

○ 同・店内
  カウンターの前に立つホーク。
ガーネット「ドミニクなら二時間ぐらい前にここに来た。子供を連れてな」
ホーク「まだ、工場に戻ってきてないんだ」
  深刻そうに顔を歪めるガーネット。
ガーネット「あいつ、年甲斐もなく…」
ホーク「なんか心当たりがあるのか?」
ガーネット「ドミニクが店を出た後、丁度向かいの銀行で強盗事件があってな」
ホーク「強盗事件?」
ガーネット「もしかしたら、奴らの後を追ったのかもしれん…」
  険しい顔つきのホーク。

○ スクラップ場・事務所前
  警官Bが警官Aとキーンの前に戻ってくる。
警官B「異常ありません」
  警官A、キーンを見つめ、
警官A「悪かったな」
キーン「いいえ…」
  二人の警官、パトカーに乗り込む。
  キーンの前から走り去って行くパトカー。

○ 同・事務所内
  リーの両手首の紐が切れる。
ドミニク「裏の部屋から脱け出せ」
リー「でも…叔父さんが…」
ドミニク「わしのことなら心配するな…ここを出たら、真っ先に警察に連絡するんだ。いいな」
  リー、静かに頷くと、裏口の窓のほうに向かって走り出す。
  ドミニク、険しい表情。
  部屋に入ってくるライコーネル。
  リーの椅子を見つめ、唖然とする。
  ライコーネルの後ろに立つキーン。
ライコーネル「ガキが逃げ出した!裏だ。まだ、近くにいるはずだ」
  キーン、ドミニクの前を通り、裏口の方へ走り出す。
  裏口の窓の前に立つキーン。窓が割れている。
  ライコーネル、ドミニクの頬を殴り、拳銃を構える。
ライコーネル「パトカーは、偶然だったようだな。お前らのことは、何も言わなかった」
ドミニク「タカを括っていられるのも今のうちだ。お前らには、そのうち天罰が下る」
ライコーネル「こんな風にか?」
  ライコーネル、ドミニクの左脛を撃つ。
  悲鳴を上げるドミニク。
  ライコーネル、ドミニクの額の方に銃口を向ける。その時、ライコーネルの後ろに人影が忍び寄る。
ベルナンドの声「年寄りいじめは、良くないな」
  振り返るライコーネル。
  ベルナンドが立っている。
ベルナンド「思い出した。そいつは、サンティーニ航空のドミニクだ。
 昔、映画の撮影で世話になった事がある…」
  ドミニク、苦痛に耐えながら、ベルナンドを見つめている。
―ACT2 END―

―ACT3―
○ スクラップ場・事務所内
  ドミニクに銃口を向けているライコーネル。その後ろに立つベルナンド。
ライコーネル「だからなんだ?」
ベルナンド「そいつは、ヘリの操縦ができる。ここから逃げ出すなら、打ってつけだぞ」
ライコーネル「ヘリならもう準備してある」
ベルナンド「じゃあ、早く取り引きを済ませてしまおう」
ライコーネル「こいつを片付けてからだ」
ベルナンド「今やらないなら、俺は、帰る」
  ライコーネル、銃をベルナンドに向ける。
ライコーネル「ふざけるな!」
  神妙な面持ちのベルナンド。

○ 砂漠の道
  疾走するホークのバイク。
  ホークの進む方角の空から狼のような鳴き声を上げたヘリが飛んでくる。
  エアーウルフである。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るケイトリン。フライトジャケットを身につけている。
  レバーを持ち、操作している。

○ ホバリングしながらゆっくりと地上に降りて行くエアーウルフ
  砂漠に着陸する。
  エアーウルフの前にホークのバイクが立ち止まる。
  ホーク、ヘルメットを外し、バイクから降りる。
  ローターから吹き出る風を浴びながら、エアーウルフの操縦席のドアを開き、中に乗り込む。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。ヘルメットを被る。
ホーク「頼んだもの、ちゃんとセットできたか?」
  後部席のフライトシステムのシートに座るケイトリン。
ケイトリン「ええ。でも何に使うの?」
ホーク「今からテストだ」
  レバーを持つホーク。

○ ホバリングしながら高度を上げるエアーウルフ
  着陸用の車輪を引き込む。

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーの赤いボタンを押すホーク。

○ エアーウルフのツインタービンが猛烈な爆音と共に真っ赤な炎を上げる
  ローターシステムが止まり、高速で推進し始めるエアーウルフ。
  砂漠の青い空を突き抜けて行く。

○ 高速・高架下を走るリー
  辺りを見回しているリー。

○ 工場街
  寂れた古い建物が連なる通り。
  立ち止まるリー。数百メートル先にある歩道に設置された公衆電話を見つける。
  暫くして、クリーム色の車がリーの背後から近づいてくる。
  モーガンがハンドルを握っている。助手席に座るキーン。拳銃を握っている。
  リー、赤レンガの建物と隣の建物の隙間に身を隠す。
  リーの前を通り過ぎて行く車。
  リー、表に出て、公衆電話に向かって走り出す。
  電話前で立ち止まるリー。受話器を上げる。が、その時、手前の交差点からキーン達の乗った
  車が現れ、リーの前に立ち止まる。
  リー、受話器から手を離し、急いで歩道を走り出す。
  リーの横について走る車。リーの前に回り込み、立ち止まる。
  車からモーガンとキーンが飛び出し、リーを囲む。
  リー、建物の壁際に追い込まれる。
  キーン、拳銃をリーに向け、
キーン「往生際の悪いガキだ」

○ 住宅街・上空
  飛行するエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  レバーを握るホーク。
ホーク「どうだ?新しい玩具の調子は?」
  モニターを見つめているケイトリン。
  モニターに工場街の様子が映っている。
  ズームアップ。歩道に立っている標識がアップで映る。
ケイトリン「凄いわ。街の標識までばっちり見える」
ホーク「こっちのバイザーに映像を転送してくれ」
  ホーク、ヘルメットのバイザーを下ろす。
  ケイトリン、キーボードを打つ。
  バイザーに小さな画面が投影され、街の様子が見えるようになる。
ホーク「少しピンが甘いな。調整できるか?」
  ケイトリン、キーボードを打ち込む。
ケイトリン「これでどう?」
ホーク「ばっちりだ」
ケイトリン「アークエンジェルがこんな便利なものを用意してくれるなんて…ちょっと気前が良過ぎるんじゃない?」
ホーク「俺も警戒してる」
  失笑するケイトリン。
ホーク「強盗事件が起きてから3時間近く経過した。警察の包囲網に引っかからなかったとすると、
 奴らは、この付近に潜んでいるに違いない」
  モニターに銀行とその向かい側に建つガーネットの店が映る。
ケイトリン「あれが襲われた銀行ね。犯人は、三人組で、逃走車は、シルバーのワゴンだったわね?」
ホーク「ああ。でも途中で乗り換えたかもしれないぞ」

○ スクラップ場・事務所内
  机の上のアルミケースを開くライコーネル。
  ドル紙幣の札束がぎっしり詰まっている。
  ベルナルドの前にケースを差し出す。
ライコーネル「全部で一億だ」
  ベルナルド、札束を持ち、確認している。
  その様子を見つめているドミニク。顔色が悪い。
ライコーネル「ファイルは、どこだ?」
ベルナルド「ここには、ない」
  ライコーネル、険しい目つきでベルナルドを見つめ、
ライコーネル「そりゃあ、どう言う事だ?」
ベルナルド「ここから1キロ先にあるマクレーン銀行の貸し金庫に保管してある」
  外からヘリのローター音が聞こえてくる。
ライコーネル「一緒に来い」
  ベルナンド、ドミニクを見つめ、
ベルナルド「こいつは、どうする?見張りがいるだろ」
ライコーネル「金を持ち逃げする気じゃないだろうな?」
ベルナルド「だったら、そのアルミケースも一緒に持って行け」
  ライコーネル、アルミケースの蓋を閉め、右手に持つ。
ライコーネル「迎いのヘリが到着したようだ。パイロットにお前達を見張らせる」
  ライコーネル、部屋を出て行く。
  ドミニク、ベルナルドに喋り出す。
ドミニク「あいつらに何の取り引きを持ち掛けたんだ?」
ベルナルド「あんたには、関係のない事だ」
ドミニク「どうせわしは、もうすぐあの世行きだ。話を聞くぐらい構わんだろう?」
ベルナルド「…」

○ スクラップ場前
  白いヘリがホバリングしながらゆっくりと降りて来る。
  着陸する白いヘリ。
  帽子とサングラスを被った女が操縦席から降りて来る。
  ライコーネルの前にやってくる女。対峙し、サングラスを外す。
  女は、パメラである。
ライコーネル「ちょっと、面倒な事が起きた。俺は、今から銀行に行く。中にいる奴らを見張っててくれ」
パメラ「誰がいるの?」
ライコーネル「ベルナルドと俺達を追ってきた爺さんだ」
パメラ「警察につけられたの?」
ライコーネル「サツじゃない。爺さんと一緒にいたガキがさっき逃げ出して、モーガンとキーンが探してる」
  手前に止まっているセダンに乗り込むライコーネル。
  運転席のドアの前に立つパメラ。窓越しでライコーネルに話し掛ける。
パメラ「大丈夫なの?」
ライコーネル「いいからお前は、中の奴らを見張ってろ」
  勢い良く走り去って行くセダン。
  憂いの表情のパメラ。

○ スクラップ場・事務所内
  呆然と佇むベルナンド。
  暫くして、ドミニクのそばに行く。ドミニクの両手を縛っているロープを外し始める。
  唖然としているドミニク。
ベルナンド「人生どん底でも、人を見殺しにできる性分ではないんでな」
  ロープを外し、その場に放り投げるベルナンド。
ベルナンド「さぁ、早く行け」
ドミニク「行けって言われても…この足じゃ動きたくても動けん…」
  ドミニクの左足を見つめるベルナンド。
  ベルナンド、ドミニクの肩に腕を回し、立ち上がらせる。
ドミニク「わしを逃がしたら、金をもらえなくなるぞ」
ベルナンド「あんたが俺を殴って逃げ出したと言う事にすればいい。後は、自分で何とかする」
ドミニク「それで向こうが納得すると思うか?」
  ベルナンド、苦笑し、
ベルナンド「…微妙だな。昔、友人にもよく言われた。おまえは、つめが甘いってな」
ドミニク「家族は、知ってるのか?」
ベルナンド「妻とは、俳優を辞めてからすぐに別れた。二人の子供もあいつについて行った」
ドミニク「辞める事はなかっただろうに…」
ベルナンド「…歳を食って、三行以上のセリフが覚えられなくなっちまった」
ドミニク「あんたの力になりたい。あいつらに何を渡そうとしてるんだ?」
ベルナンド「…三日前、サンフランシスコの路上を歩いていたら、道端で倒れている恰幅のいい男と遭遇した。
 俺は、病院に連れて行ってやろうとしたが、そいつは、それを拒み、俺にファイルを渡して、どこかに
 消えて行った。その時、妙な言葉を残して行った」
ドミニク「言葉?」
ベルナンド「東と通じているアメリカ人のスパイが潜水艦の乗組員の中に潜り込んでいる…ファイルには、
 その乗員リストと、数人の男達の資料が入っていた」
ドミニク「…そのファイルを出汁に、あいつらを脅して、一億ドルを強奪させたって事か。
 そいつらの名前は、覚えているか?」
ベルナンド「…一人は、アルフレッド…何とかって言う奴だが…メモが車のダッシュボードの中に…」
  二人の前に現れるパメラ。拳銃を構えている。
  呆然と佇む二人。

○ 工場街・上空
  飛行するエアーウルフ。左方向に大きく旋回している。

○ エアーウルフ・コクピット
ケイトリン「3キロメートル先に見えるもの何かしら?」
  ホークのバイザーにスクラップ場の様子が映っている。
ホーク「スクラップ場だ」
ケイトリン「車が1台入って行くわ。なんだか急いでいるみたいだけど…」
ホーク「建物の前に白いヘリが止まっているな」
  ホーク、バイザーに映っている映像を見つめ、唖然とする。
ホーク「ケイトリン、出入り口をズームアップしてくれ」
  スクラップ場の入口の様子が映し出される。ドミニクのジープが止まっている。
  ケイトリンもモニターを見つめ、
ケイトリン「ドミニクのジープよ…」
  険しい表情をするホーク。

○ スクラップ場・事務所前
  勢い良く立ち止まるキーン達の車。
  運転席から降りるキーン。後部席からモーガン、モーガンに腕を掴まれ引きずり出されるリー。

○ 同・中
  キーンとリーを連れたモーガンが部屋に入ってくる。
  ドミニク達に銃を向けているパメラ。
  ドミニク、リーを見つめ、驚愕する。
ドミニク「リー…」
  キーン、その様子を見つめ、
キーン「どうした?」
パメラ「ベルナンドがこの男を逃がそうとした」
  モーガン、辺りを見回し、
モーガン「ライコーネルは?」
パメラ「ファイルを取りに銀行に行った」
キーン「何をやってる。さっさと片付けろ!」
  キーン、パメラの拳銃を奪い取り、ベルナンドに向ける。
  外から聞こえてくるヘリのローター音を耳にし、動きを止めるキーン。

○ スクラップ場・事務所前
  キーンとモーガンが表に出ると同時に、二人の頭上を通り過ぎるエアーウルフ。
  二人の前で土煙が舞っている。二人、手で口元を覆い、煙をはらっている。
  二人、エアーウルフを見つめ、
モーガン「サツのヘリか?」
キーン「いいや、あんなの見たことねぇ…」

○ エアーウルフ・コクピット
ホーク「中に何人いる?」
  ケイトリン、モニターを見ながらキーボードを打っている。
  モニターにスクラップ場の事務所内のサーモグラフィック映像が映る。4人の人の熱反応が見える。
ケイトリン「4人いるわ。1人は、子供みたい」
ホーク「リーだ」
ケイトリン「じゃあ、ドミニクも中に?」
  ホーク、レバーを左に倒す。

○ 大きく左に旋回するエアーウルフ
  スクラップ工場のほうに向かって進み始める。

○ スクラップ場・事務所前
  ゆっくりと二人の頭上を通り過ぎて行くエアーウルフ。エアーウルフを見つめるモーガンとキーン。
モーガン「どうする?」
キーン「ライコーネルが戻ってくるまで時間を稼ぐんだ」
  二人、事務所の中に入り、マシンガンを持って、表に出てくる。
  二人、マシンガンを構える。
  ホバリングしながら、ゆっくりと高度を下げているエアーウルフ。
  二人、エアーウルフに向けてマシンガンを撃ち始める。

○ エアーウルフのボディに弾丸が当たる
  火花を散らしながら、跳ね返している。
  機首をキーン達のいる方向に向けながら、積み上げられた車の真上ぎりぎりの高度で
  ホバリングを続けるエアーウルフ。
  マシンガンを撃ち続けるキーン達。
  暫くして弾切れになる。

○ エアーウルフ・コクピット
  ホーク、険しい顔でキーン達を見つめている。
  
○ エアーウルフの両翼先端の格納庫から30ミリ機銃と40ミリ機関砲が出てくる

○ エアーウルフ・コクピット
  ホーク、レバーのボタンに指をかけ、二人を見つめる。
ホーク「今からする質問に正直に答えろ…」

○ エアーウルフと対峙するキーン達
  エアーウルフに設置されているスピーカーからホークの声が聞こえる。
ホークの声「嘘をついたら、おまえらを網の目にするぞ」
  二人、マシンガンを放り投げ、両腕を高く上げる。
ホークの声「事務所の中に誰がいる?」
  叫ぶモーガン。
モーガン「俺達の仲間だ…」
ホークの声「お前達が捕まえた老人と子供もいるはずだ」
キーン「ああ、中にいる」

○ エアーウルフ・コクピット
  フロントガラス越しに二人を見ているホーク。
ホーク「全員表に出せ。右の男、お前が行け。余計な事を考えるな」
  モーガン、手を下ろし、咄嗟に事務所の中に駆け込んで行く。
  暫くして、表にモーガンと、ベルナンドの肩を借りて、左足を引きずりながら出てくるドミニク、
  リーが姿を表す。
  モニターを見つめているケイトリン。
ケイトリン「もう一人は?」

○ スクラップ場・事務所前
  ドミニク達の後ろに立つパメラ。サングラスを外す。

○ エアーウルフ・コクピット
  モニターを見つめ、思わず吐息を漏らすケイトリン。
ホーク「どうした?」
ケイトリン「今出てきた女性…友人なの?ハイウェイパトロール時代の…」
  パメラを見つめるホーク。
ホーク「よし、人質を解放しろ」

○ スクラップ場・事務所前
  声を上げるドミニク。
ドミニク「ホーク!隣にいる男は、顔見知りだ。一緒に連れてくぞ」
  エアーウルフからホークの声が聞こえる。
ホークの声「わかった。リー、その男達をロープでしっかり縛り付けろ」
  リー、事務所の中に置いてあるローブを持ち、キーンとモーガンの体を縛り付ける。
ホークの声「お前らは、建物の中に入れ。ドミニク、こっちに来い」
  キーン達、事務所の中に入る。
  歩き出すベルナンドとドミニク。その後をリーが追う。

○ 同・構内
  凸凹道を土煙を上げながら猛スピードで走っているライコーネルのセダン。
  山積みされた廃車の間を駆け抜けている。

○ セダン・車内
  ブレーキを踏むライコーネル。
  フロントガラス越しに見える事務所を見つめる。
  エアーウルフの前に近づいて行くドミニク達の様子が見える。
  憮然とするライコーネル。助手席のシートに置いていた拳銃を握る。
―ACT3 END―

―ACT4―
○ 格納庫からタイヤを引き出し、着陸するエアーウルフ
  機体の前にやってくるドミニク達。
  後ろのドアが開き、ケイトリンが表に出てくる。
  ケイトリン、事務所のほうを見つめ、パメラと目を合わす。
  パメラ、ケイトリンを見つめ、愕然とする。
  ドミニク達と対峙するケイトリン。
  ケイトリン、ドミニクの左足を見つめ、
ケイトリン「大丈夫?」
ドミニク「早く海軍司令部へ連絡するんだ」
ケイトリン「えっ?」
  スピードを上げて、ライコーネルの乗るセダンが近づいてくる。
  ライコーネル、エアーウルフのほうに向けて、拳銃を撃ち続ける。
  ベルナンド、右肩を撃ち抜かれる。
  一斉にその場にしゃがみ込むドミニク達。
  エアーウルフとキーン達の間に割って入り、立ち止まるセダン。
  ライコーネル、アルミケースを持って車から降り、パメラの首に腕を回し、こめかみに銃口を当てる。
  エアーウルフを睨みつけるライコーネル。
ライコーネル「余計な手出しをしたら、この女を殺す!」
  ライコーネル、パメラを引き連れて、白いヘリの方に向かって走って行く。
  ケイトリン、その様子を見つめ、
ケイトリン「撃たないで、ホーク!」

○ エアーウルフ・コクピット
  ガラス越しにライコーネル達の様子を見つめるホーク。
  ヘリに乗り込んでいるライコーネル達。

○ 白いヘリのメインローターがゆっくりと回転し始める
  機体が浮かぶ。ゆっくりと高度を上げながら、飛び去って行くヘリ。
  
○ エアーウルフから降りるホーク
  ドミニク達の前に近づいて行く。
  リー、ホークに近づいて行く。
リー「ホーク!」
  リーを抱き締めるホーク。
  ホーク、ドミニクを見つめ、
ドミニク「奴らは、ただの強盗犯じゃない。東側のスパイと通じてる」
ホーク「スパイ?」
ベルナンド「潜水艦に搭載されたミサイルを東のどこかに撃ち込むつもりだ。証拠を記したファイルは、奴らが持っている」
ドミニク「もし、実行したら、アメリカが先制攻撃をしたと見なして、向こうも攻撃を始めるぞ」
ホーク「…」

○ 離陸するエアーウルフ
  着陸装置のタイヤを収納する。ホバリングしながら、機首の方向を変え、ゆっくりと高度を上げている。
  その様子を離れた場所で見つめているドミニク、リー、ベルナンド。
  ローターの風圧で積まれていたスクラップの車体が崩れ落ちる。転がった車体が事務所の建物の出入り口を塞ぐ。
  
○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。後ろのフライトシステムの席にケイトリンが座っている。
ホーク「準備は?」
ケイトリン「OKよ」
ホーク「ターボ」
  レバーの『TURBO』のボタンを押すホーク。電子音が鳴り響く。

○ エアーウルフのツインタービンが真っ赤な炎を上げる
  爆音を上げながら高速で推進し始めるエアーウルフ。
  住宅街の上空を勢い良く突き進む。

○ 飛行する白いヘリコプター
  その背後から物凄い勢いで接近してくるエアーウルフ。
  白いヘリの横に並ぶエアーウルフ。

○ 白いヘリコプター・コクピット
  レバーを握るパメラ。その隣にライコーネルが座っている。
  エアーウルフを見つめ、呆然としている。
  ライコーネル。ヘリの機体から身を乗り出し、散弾銃を撃ち始める。
  エアーウルフのボディに弾が当たるが火花を散らして跳ね返している。

○ エアーウルフ・コクピット
ケイトリン「ホーク、私に話しをさせて」
ホーク「無駄な労力を使うなと教えてやれ」

○ 白いヘリコプター・コクピット
  ケイトリンの声が聞こえる。
ケイトリンの声「聞こえる、パメラ」
  パメラ、無線機のレシーバーを握る。
パメラ「ケイトリン…」
ケイトリンの声「パメラ。すぐにヘリを着陸させて」
パメラ「できない」
ケイトリンの声「一緒にいる男は、東側のスパイと関係しているのよ」
  ケイトリンとパメラのやりとりを聞いているライコーネル。
パメラ「承知の上よ」
ケイトリンの声「こんな事してもお父さんは、喜ばないわ。お願いだから考え直して…」
パメラ「父のためじゃない。私には、大きな夢があるの。この仕事が終わったらオーストラリアに移住するの」
ケイトリンの声「じゃあ、誰がお父さんの面倒を見るのよ?」
パメラ「父も連れて行くわ。そのためにこの仕事を引き受けたのよ」

○ エアーウルフ・コクピット
ホーク「時間がない。後は、ハイウェイパトロールに追跡させよう」
ケイトリン「…」

○ 白いヘリ・コクピット
  ライコーネル、後部席にあったバズーカーを持つ。
ライコーネル「うっとしい奴らだ。今に見てろ」
  身を乗り出し、エアーウルフに向けてバズーカーを構えるライコーネル。
  パメラ、横目でライコーネルを一瞥し、突然、レバーを左に引く。

○ 機体を左斜めに傾ける白いヘリ
  ライコーネル、その反動でヘリの外に投げ出される。
  悲鳴を上げながら勢い良く地上に落ちて行くライコーネル。

○ エアーウルフ・コクピット
  モニターを見つめているケイトリン。
ケイトリン「ホーク!」
ホーク「これで邪魔者は、消えた」

○ 白いヘリコプター・コクピット
ケイトリンの声「パメラ、ケースの中のファイルを確認できる?」
  パメラ、後部席に置いてあるブリーフケースを取り、中を確認する。

○ エアーウルフ・コクピット
パメラの声「ファイルを取り出した」
ケイトリン「写真つきの男の資料があるはずよ」
パメラの声「見つけたわ」
ケイトリン「名前を教えて」
  耳を澄ますホーク。
パメラの声「アルフレッド・シナプス副長…その他に3人いるわ…通信要員…魚雷発射要員…」

○ 海底
  推進するロサンゼルス型潜水艦。潜行深度300メートル付近を進んでいる。

○ 潜水艦・艦内
  通路を歩く乗組員。

○ 同・艦長室
  木目調の穏やかな空間。
  テーブルの前に座っている艦長のロバート。手前の壁に設置されている深度計を見つめている。
  入口の扉が開き、金髪、長身の男・アルフレッド・シナプス副長が中に入ってくる。
ロバート「どうかしたのかね?シナプス君」
  シナプス、いきなり、ロバートの首を右手で締め上げ、
シナプス「申し訳ございません、艦長。大人しく私にミサイル発射装置を起動するキーをお渡しください」
  シナプスを睨みつけるロバート。
  シナプス、ポケットから瓶を取り出す。中に白い錠剤の睡眠薬が入っている。

○ 同・コントロールルーム
  周囲に設置されている各制御装置の前に立っている乗組員。いくつものモニターに海の様子が映し出されている。
  真ん中にある2つの潜望鏡。右側の潜望鏡を覗いている乗組員。
  シナプスが現れる。
  シナプス、通信システムの前に立ち、レシーバーを握る。
シナプス「基地から緊急の報告を受けた。只今からミサイルの迎撃実験を開始する」
  シナプスの周りに下士官達が集まってくる。
乗組員「艦長は?」
シナプス「艦長は、急病のため、これからは、私が指揮を取る」
  怪訝な表情を浮かべる士官達。
士官「確認させてもらいます」
シナプス「艦長は、自分の部屋で熟睡している」
  ミサイルの操作卓の前に行くシナプス。
シナプス「方位84度に照準を合わせろ」 
○ 海中を潜行する潜水艦
  スクリュー音を静かに唸らせながら進んでいる。
  潜水艦上部にあるVLS発射管からミサイルが垂直に飛び出す。

○ 海面から飛び出し、空高く舞い上がるトマホークミサイル

○ カリフォルニア・サンディエゴ上空
  高速で飛行するエアーウルフ。
  海岸線に向かって突き進んでいる。

○ エアーウルフ・コクピット内
  モニターに映るアークエンジェル。
アークエンジェルの声「長距離巡航型ミサイル「トマホーク」を搭載したロサンゼルス型潜水艦は、
 今朝、ミラマー海軍基地から太平洋海域へ出発した。ミサイルには、200トンの核弾頭が搭載されている」
ホーク「潜水艦は、どこにいるんだ?」
アークエンジェルの声「基地から北北西の方角1000キロ地点にいるのを確認している、一時間前にな」
ホーク「どう言う事だ?」
アークエンジェルの声「潜水艦との通信が途絶えている。しかし、変だ。トマホークの射程距離は、
 たかだか2500キロ程度だ。演習場海域からソビエトのミサイル基地などには、到底届くはずがない」
ホーク「…」
  

○ CIA本部・部長室
  通信装置の前に立ち、レシーバーを握っているアークエンジェル。
  白いスーツを着た秘書の女が部屋の中に入ってくる。アークエンジェルの前にやってくる。
秘書の女「さっきミラマー海軍基地司令部から報告を受けました。演習中の潜水艦から
 巡航型ミサイルが発射されたそうです…」
アークエンジェル「どこに向かっているんだ?」
秘書の女「本来の軌道から外れて、南東の方角です」
アークエンジェル「着弾地点は?」
  秘書の女からデータの紙を手渡されるアークエンジェル。それを見つめ、唖然とする。
  レシーバーに話し出すアークエンジェル。
アークエンジェル「ホーク、今さっき潜水艦から巡航型ミサイルが発射された。
 ミサイルは…カリフォルニアに向かってる…」

○ エアーウルフ・コクピット
ホーク「そう言う事か…」
  レバーの『TURBO』の赤いボタンを押すホーク。

○ ツインターボローターシステム作動
  電子音共に狼のような鳴き声を上げながら高速で推進飛行を始めるエアーウルフ。
  みるみるスピードが上がって行く。

○ 太平洋海域上空
  マッハ1のスピードで突き進むエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  モニターにレーダー画面が映っている。
ホーク「レーダーに反応は?」
  モニターを見つめるケイトリン。キーボードを操作している。
  レーダー画面には、何も反応は、見られない。
ケイトリン「駄目、まだ何も確認できない」

○ 海面から10キロメートル上空を低空飛行しているトマホーク

○ 太平洋上空を猛スピードで進むエアーウルフ

○ エアーウルフ・コクピット
  キーボードを打ち込んでいるケイトリン。
  レーダー画面に白い反応が現れる。
  モニターにミサイルのイメージが映る。
ケイトリン「BGM―109、全長6.25メートル…マッハ0.75の速さでこっちに接近してくるわ」

○ ジェット噴出口の赤い火が消える
  ツインターボシステムを停止、ローターブレードが回転し始める。急速にスピードを落としながら
  機首を下げ、急降下するエアーウルフ。
  海面から10キロメートルの高度でまた、機首を上げ、推進飛行を始める

○ 勢い良く進んでいるトマホーク
  トマホークの前方からエアーウルフがやってくる。

○ 旋回するエアーウルフ。
  エアーウルフのそばをトマホークが一瞬で横切って行く。
  
○ エアーウルフ・コクピット
  レバーの赤いボタンを押すホーク。

○ ツインターボロータシステム作動
  電子音共に狼のような鳴き声を上げながら高速で飛行し始めるエアーウルフ。
  スピードを上げ、トマホークの後を追いかけている。
  トマホークとの距離をどんどん狭めて行く。

○ エアーウルフ・コクピット
  ホーク、ヘルメットのバイザーを下げる。
ホーク「射程距離に入った。ランチャーを下ろせ」
  ケイトリン、『ADF POD』のボタンを押す。

○ エアーウルフ機体下の格納庫が開く
  3つの砲身が装備されているADFランチャーが下りる。

○ エアーウルフ・コクピット
  狙いを定めるホーク。
  バイザーに照準のライトが点滅する。
  レバー先端のボタンを押すホーク。

○ ADFポッドの真ん中の砲身から、レッドアイミサイルが発射
  ミサイルは、トマホークの後尾のターボファン・エンジンに命中。後方から先端にかけて雪崩るように木っ端微塵になる。

○ エアーウルフ・コクピット
  バイザーを上げるホーク。
  吐息を漏らすケイトリン。
ケイトリン「核の被害は、大丈夫かしら…」
ホーク「アークエンジェルに調べてもらおう」

○ ホークの山荘・庭(数日後)
  松葉杖をつきながら歩いているドミニク。左足にギプスをつけている。
  ドミニクの両隣でホークとケイトリンが歩いている。
  立ち止まる三人。リー、ドミニクの前にやってくる。ドミニクの足を見つめ、
リー「勝手なことしてごめんね…」
ドミニク「何を言ってる?おまえのおかげでカリフォルニアは、核ミサイルの餌食にならずに済んだんだぞ」
ケイトリン「トマホークの核弾頭が取り外されていて本当に良かったわ。もし、撃ち込まれていたらと思うとゾッとする」
ホーク「演習当日の夕方、国家安全保障局に潜水艦の乗組員の中にスパイがいる情報を垂れ込んだ奴がいたそうだ。
 それで軍は、念のため、ミサイルを偽装していた。潜水艦の乗組員達には、その事は、知らされていなかった」
ドミニク「知っていたのは、艦長だけか。その垂れ込んだ相手ってのは、ベルナンドが
 サンフランシスコであった男じゃないか?」
ホーク「その男は、CIAが7年前に東に送り込んだ二重スパイの可能性がある。
 ただ、数年前から連絡が取れなくて、なぜアメリカに戻ってきたのかも含めて詳しい事情は、現在調査中だそうだ」
リー「今度正しい事する時は、一人でやれそうな事だけにするよ」
ホーク「一人で解決できない時は、理解してくれる仲間を集めればいい」
  頷くリー。そばにテットが近づいてくる。
  テットの頭を撫でるリー。
リー「テット、おいで」
  走り出すリー。リーを追うテット。ケイトリン、それを見ながら山荘の中に入って行く。
  ドミニク、ホークと顔を合わし、
ドミニク「わしは、一度あの子を見放そうとした…」
ホーク「…」
ドミニク「昨夜、夢の中にジョンがあらわれてな。リーがわし達を不孝にするって、妙な事を囁きやがった。
 わしは、なぜか病院に入院していて、左足の膝から下がなくなってた」
ホーク「半分は、正夢か」
ドミニク「でも今思うと、今回の件は、ジョンが警告してくれたのかもんしれん。リーには、黙っててくれよ」
  ホーク、笑みを浮かべ、
ホーク「残りの半分が正夢だったらな…」
  ドミニクのそばを立ち去るホーク。
  テットと戯れるリーのそばに行く。
  その様子を複雑な表情で見つめるドミニク。
      
                                                  ―THE END―

 

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