〜AIRWOLF ORIGINAL SEASON4 EPISORD〜
SUBTITLE 『WELCOME TO MIAMI』 作 ガース「ガースのお部屋」


―ACT1―

○ CIA本部・部長室
  暗室。スクリーンに映し出される無残な遺体のカラー画像。
アークエンジェルの声「これは、中国のある収容施設を撮影した写真だ」
  次の画像が巨大なスクリーンに映し出される。
  トラックの荷台に乗せられている人間達。兵士の指示に従い荷台から降りている画像。
アークエンジェルの声「場所はカシュガル近郊。3年前、中国軍によって建てられたものだ」
  次の画像が映し出される。
  頭に黒い布をかぶされ、後ろ手に手錠をされた人達が列を成し、檻の中に入れられている画像。
アークエンジェルの声「何の罪もない人たちが思想改造のために、この収容所に収監されている」
  スクリーンの画像が消え、天井のライトが点灯する。
  スクリーンの前。椅子に座っているストリング・フェロー・ホークとドミニク・サンティーニ。
  立ち上がるホーク。
  スクリーンの横に立っている白いスーツ姿のアークエンジェルの前に近寄る。
ホーク「で、俺達に何をさせたいんだ」
ドミニク「まさか、エアーウルフであの収容所の人達を救出しろって言うのか?」
アークエンジェル「そんな無茶な話じゃない」
  秘書の女性がホークに書類を渡す。
  書類の写真に写っている女の顔を見るホーク。
アークエンジェル「彼女は、レミエ・ラチェット。中国に潜伏中の我々の仲間だ」
  険しい表情を浮かべるホーク。
アークエンジェル「さっきの収容所の写真は、レミエが現地から送信してきたものだ。
 二日前、彼女は、アメリカに戻ったが、空港近くで連絡を取り合ってそれ以降、消息不明になっている」
ホーク「拉致されたのか?」
アークエンジェル「4時間前、テキサスのあるガソリンスタンドの監視カメラに
 青いジープに乗っているレミエが映っているのを確認した」
   監視カメラに映るレミエの写真を見ているドミニク。
ドミニク「それだけの情報でその諜報員を探せって言うのか?」
アークエンジェル「手がかりがもう一つ。そのガソリンスタンドでこれを見つけた」
  コップに入った砂をホークに見せるアークエンジェル。
ドミニク「どこの砂だ」
アークエンジェル「ジープのタイヤ跡から取ったものだ。マーファ辺りの砂だと言っていた」

○ テキサス・マーファ上空
  猛烈な爆音。狼のような鳴き声を上げながら
  大空を飛行するエアーウルフ。
  どこまでも続く荒野の上を高速で進んでいる。

○ エアーウルフ・コクピット
  ヘルメットを被りフライトジャケットを身につけ操縦席に座るホーク。
  後部席のフライトシステムのシートに座るドミニク。ヘルメット、フライトジャケットを身につけている。
ホーク「どうしたんだ。さっきから一言も喋らないじゃないか」
ドミニク「目的のためなら手段を選ばん奴らのやり方が気にくわんのさ」
ホーク「野蛮人はどこにだっているさ」
  フライトシステムのメインモニターに映し出されるサーモグラフィック画面。
  倉庫の中に3人の人体のグラフィック。
ドミニク「2キロ先の倉庫に3人いる」
ホーク「何の倉庫だ」
ドミニク「地図には載ってない。最近建てられたものかもな」
  険しい表情のホーク。

○ マーファ・荒野・倉庫周辺
  道の只中にポツンと佇む怪しげな倉庫。
  真新しいトタン屋根の上空を素早く通り抜けていくエアーウルフ。
ドミニクの声「貸し倉庫のような作りだな」
ホークの声「確認してみよう」
  砂煙を巻き上げながら、ホバリングするエアーウルフ。
  倉庫から数百メートル離れた荒野に着陸する。
  エアーウルフから降りるホークとドミニク。
  倉庫に向かって走り出す。

○ 倉庫前
  倉庫の壁際に身を隠すホークとドミニク。
  ホーク、ドミニクに裏に回るよう指示を出す。
  倉庫裏に向かうドミニク。
  正面のシャッターの前に立つホーク。
  聞き耳を立てる。
  倉庫裏で轟く銃声。
ドミニクの声「ホーク、危ない!」
  間一髪、シャッターから離れるホーク。
  突然、シャッターを突き破り、中から青いジープが勢い良く走り出てくる。 
  ライダースーツを身につけた頭頂部の薄い中国人の男が運転するジープが
  砂の上を滑るように走る。大きく回り込んで、ホークのほうに突進してくる。
  銃を構えるホーク。膝撃ちの姿勢になり、ジープのタイヤに何発も撃つ。
  一発の弾丸がタイヤに命中。
  激しく蛇行し始めるジープ。
  倉庫の壁に派手に激突する。
  ジープに乗り込み、運転していた男の胸倉を掴むホーク。
ホーク「なぜ俺を襲った?」
男「我们酌情对可疑人员做出回应・・・」
  助手席の足元に落ちていた女性用の化粧バックを拾い上げるホーク。
  それを男に見せつけ、
ホーク「中に女がいるのか?」
  口ごもる男。
  ホーク、男に銃を突きつけ、
ホーク「来い」
  二人がジープを降りようとした時、
  倉庫裏でエアーウルフのローター音が高鳴る。
  ホーク、男を連れ、倉庫裏に行く。

○ 倉庫裏
  離陸し、ホバリングするエアーウルフ。
  呆然と佇むホークと男。
  ローターが巻き上げる土煙を遮りながら、
  エアーウルフを見つめているホーク。
ホーク「どこに行くんだドミニク!」
 ホークに背を向け、飛び去っていくエアーウルフ。
  叫ぶホーク。
ホーク「ドミニク!!」
  遥か空の彼方へ消えていくエアーウルフ。

○ 倉庫前(数時間後)
  上空に白いヘリがあらわれ、ゆっくりと着陸する。
  後部席のドアが開く。ヘリから降り歩き出すアークエンジェル。
  ジープの運転席に座らされている男。
  ロープでハンドルに両手首を縛り付けられている。
  助手席に座っていたホークが車から降り、アークエンジェルに近寄る。
アークエンジェル「説明を聞こうか」
ホーク「あの男以外に、倉庫に後二人いたんだ」
アークエンジェル「つまり、ドミニクはその二人と一緒にエアーウルフに乗って
 どこかへ消えてしまったわけか」
  中国人の男を見つめるアークエンジェル。
アークエンジェル「あの男から何か聞き出せたか?」
ホーク「いや何も。英語が喋れないみたいだ」
  男に近づいていくアークエンジェル。
  憮然としているホーク。

○ テキサス上空
  大空を突き進むエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るドミニク。
  隣の席から銃を向けられている。
  助手席に座っている髭面の若い中国人。
  カーキーのジャケットにジーパンの姿。
  沈黙している男。
  フライトシステムに座っている女。
  赤いブラウスと黒いズボンを身につけている。
  ロープで後ろ手に縛られ、黒い頭巾を頭にかぶり顔は見えない。
ドミニク「どこまで飛ばす気だ?」
男「・・・・」
ドミニク「英語が話せないのか?」
男「黙れ」
ドミニク「なんだ。話せるじゃないか」
男「このままずっと東だ。細かい場所は地上に降りてから指示する」

○ テキサス上空
  東の方向へ猛スピードで突き進むエアーウルフ。

○ ClA本部・アークエンジェルのオフィス
  部屋の中央に立っているホーク。革ジャンにジーパンの私服の姿になっている。
  入口の自動扉が開く。
  ホークの前にやってくるアークエンジェル。
アークエンジェル「奴の名は、ジム・ファング。人民解放軍のヒューミントだ」
ホーク「中国のスパイか」
アークエンジェル「中々口の硬い男でな。自白剤を打ってようやく喋らせた」
ホーク「女のことは話したか?」
アークエンジェル「女の名前は、本当に知らなかった。もう一人の男の名は、クバル・チャング。ジムは奴と共に行動していた」
ホーク「ドミニクは、その男に捕まったのか」
アークエンジェル「おそらく、クバルとレミエをエアーウルフに乗せてどこかに向かったに違いない」
  部屋を出て行くホーク。
アークエンジェル「エアーウルフのエマージェンシーシグナルをたどる気か?ホーク」
ホーク「他に見つける方法があるなら教えてくれ」
  静かに部屋を出て行くホーク。

○ アトランタ上空(夕暮れ)
  地上に森林が広がる。
  その上空を進んでいるエア一ウルフ。
ドミニク「いかん」

○ エアーウルフ・コクピット
  計器類に目をやるドミニク。
  ドミニクのこめかみにリボルバーの銃を向ける男の名は、クバル・チャング。
ドミニク「ガス欠だ。わかるか?」
  計器類を確認するクバル。
クバル「嘘をつくな」
ドミニク「こんなところに来る予定はなかったからな」
クバル「後何キロ飛べる?」
ドミニク「せいぜい80キロ程度だ」
  前方に見える雑木林を見渡すクバル。
  右斜めを指差し、
クバル「あそこに降りろ」

○ アトランタ上空
  ゆっくりと高度を下げ、雑木林に囲まれた丘に着陸するエアーウルフ。

○ 同・道路(夜)
  雑木林に囲まれた一本道。
  ヘッドライトを照らしながら走ってくるー台のグレイのセダン。

○ セダン車内
  メガネをかけス一ツを着た精悍なサラリーマンの男がハンドルを握っている。
  前方を見つめ、慌ててブレーキを踏み込む男。

○ アトランタ郊外の雑木林・道路
  車から降りる男。
  車の前にうつ伏せで倒れているクバルに近寄る。
男「大丈夫ですか?」
  サラリーマンの男がクバルの肩に手を触れた瞬間、起き上がり、サラリーマンの男に銃を向けるクバル。

○ 高速道路(深夜)
  中央に芝生がひかれた4車線の高速道路。
  南の方向に走っているグレイのセダン。

○ セダン車内
  運転するドミニク。
  後部席の右側にクバル、左に頭巾を被ったままの女が座っている。
ドミニク「何も殺すことないのに」
クバル「お前も殺されたいか?」
  バックミラーに映る女を見つめるドミニク。
ドミニク「いい加減、頭の袋を取ってやったらどうだ?」
クバル「撃つぞ」
ドミニク「いくら身代金を積めばいい?後で用意してやるから彼女を離してやれ」
クバル「身代金なんかどうでもいい」
  女の頭に銃口を向けるクバル。
ドミニク「わかった。どこまで道なりに進めばいいんだ?」
クバル「まだ先だ」
  溜息をつくドミニク。

○ 高速道路
  インターチェンジを抜け、スピードを上げるセダン。

○ アメリカ北西部・神の谷(エアーウルフの秘密基地)
  暗がりの洞窟内でコンピュータを作動させているホーク。
  緊急救難信号を示す赤いランプが点滅しているのに気付く。
  キーボードを打ち始めるホーク。
  モニターにアメリカの地図が映し出される。
  アトランタにズームアップ。
  エアーウルフの現在位置を確認する。

〇 アトランタ・市街他
  街路を走るドミニク達のセダン。
  通りにある公衆電話の前に立ち止まる。
  車から降りるクバル。
  電話をかける。

〇 セダン車内
  電話をしているクバルの様子を見ているドミニク。
  後ろに座っている女に話しかける。
ドミニク「あんた、レミエ・ラチェットか?」
  女、頭を横に振るような仕草をする。
  ドミニク、クバルの様子を窺いながら
  女の頭巾をめくり上げる。
  クバルが戻ってくる。
  女の顔を見るのを諦めて慌てて前を向くドミニク。

〇 住宅地
  国道沿いにある3階建てのモーテルの駐車場に入るセダン。

〇 モーテル302号室・リビング
  天井の扇風機がカタカタと回っている。
  ドミニクと女がソファの前に座らされる。
  クバルの仲間の2人の中国人達がドミニク達を囲い、銃を向ける。
  クバル、狐目で細身のワンにメモを渡す。
クバル「その場所にへリがある。トレーラーに積んで例の場所に持っていけ」
  ワン、頷くとそのまま部屋を出て行く。
  ソファに深く座り入み、タバコに火をつけるクバル。
  テーブルにライターを置く。
ドミニク「わしを殺さずなぜここに連れてきた?」
  クバル、テーブルに置いていたリモコンを持ち、モニターの電源を入れる。
  モニターに映し出されるホーク、ドミニク、ケイトリンのアップ写真。
  サンティーニ航空で仕事をしている三人の様子が写っている。
  ほくそ笑むクバル。タバコの煙を吐き出す。
  ドミニク、モニターを見つめ、愕然とする。
―ACT1 END―


―ACT2―

○ アトランタ国際空港(翌日・朝)
  一機の航空機が滑走路に着陸する。

〇 空港付近レンタカー店
  一台の赤いカマロが店を出て、国道を走り出す。

○ カマロ・車内
  運転するホーク。助手席に座るケイトリン。
  チェックの青いシャツの上にウインドブレーカーを着込み、ジーパン姿。
ケイトリン「相手は人を人と思わない冷酷な兵士なんでしょ?」
ホーク「罪のない民族をひたすら強制収容所送りにしている連中だ」
ケイトリン「大丈夫かしらドミニク」
ホーク「後、何キロだ?」
  太腿の上に置いている電波探知機のモニターを見つめるケイトリン。
ケイトリン「6キロぐらい」
  アクセルを踏み込むホーク。

〇 高速道路
  スピードを上げ、北上するカマロ。

〇 モーテル302号室  
  テレビに映るプロレスショー。
  司会の白髪のごつい男がリングに上がる。
  対戦中の2人のプロレスラーの間に割って入り暴れ出す。
  ソファに座るクバル。スキットルに入っているウィスキーを一気飲みする。
  クバルの様子を見て思わず唾を飲み込むドミニク。
クバル「腹が減ったか?」
ドミニク「昨日から何も食ってないから」
  クバル、空になったウィスキーのボトルをドミニクの前にほうり投げる。
ドミニク「ボルドーだろうがロワールだろうが、わしには必要ない」
クバル「酒が飲めないのか」
  立ち上がり、キッチンのテーブルにある皿をドミニクたちの前に置くクバル。
  紙袋から犬の餌を皿に出す。
ドミニク「なんだこの犬の餌みたいなものは?」
クバル「犬の餌だ。大丈夫。死にはしない」
ドミニク「コンビニの弁当ぐらい用意しろってんだ」
  窃笑するクバル。
クバル「餌が出るだけでもありがたいと思え」
ドミニク「そのスキットルに水でも入れて、彼女に飲ましてやったらどうだ」
  クバル、女の頭巾をはずす。
  ブロンド、ショートヘアの女の顔が露になる。
  口はダクトテープで塞がれている。
  女の顔を見るドミニク。
ドミニク「やっと会えたなレミエ」
  俯いたまま何も話さない女。
ドミニク「気分でも悪いのか?」
クバル「この2日間ずっとこの調子だ。上海で会った時はもっとかわい気のある饒舌な女だったのに。
 俺の女にしてやってもいいと思っていた。スパイでなければな」
  部屋のドアをノックする音。
  少し背が低く肉付きの良い男・チョウ、銃を構える。
  クバル、気にして入口のほうを見る。
  チョウに銃をしまうよう合図する。
  チョウ、静かに玄関に行き、ドアを開ける。
  ハウスキーピングの中年の女が外に立っている。
女「タオルを交換しにきました」
チョウ「間に合ってる。さっさと帰れ」
  クバルが目を離している隙に、テーブルに置いてあったライターを手に取り力強く握りしめるドミニク。

〇 アトランタ効外・雑木林
  茂みを歩いているホークとケイトリン。
  吐滝のそばを通り過ぎるニ人。
  ホーク、探知機のモニターを見ながら足を進めている。
  空から聞こえるカラスの不気味な鳴き声。
ケイトリン「宇宙人でもあらわれそうな雰囲気ね」
ホーク「ゾンビよりはいいかもな」
ケイトリン「だんだんエリア51を探索している気分になってきたわ」
ホーク「UFOを探しに来たんじゃないんだぞ」
  上空から飛行機のエンジン音が聞こえてくる。
  ケイトリン、突然空を指差し、
ケイトリン「あれを見て。偵察機よ」
  空を見て呆れた顔をするホーク。
ホーク「ただのジェット機だ」
ケイトリン「本当はいるのに隠しているのかもしれないわね」
ホーク「アークエンジェルに聞いてみたらどうだ」
  ホーク、前を見つめ足を止める。
ホーク「隠れろ」
  そばの太い木の幹に身を隠す二人。
  雑木林の向こうの丘に止まっているエアーウルフ。
  三人の中国人の男たちがエアーウルフの周りを囲む。
  頭頂部が薄い男A、ドアを開け、操縦席を覗いている。
  ボサボサ頭の男B 、ハンマーで機体をカンカンと音を立てながら叩いている。
  巨漢の男C、テールロータ一やツインタービンの噴射口にカメラを向け、写真を撮っている。
  その様子を見ているホークとケイトリン。
ケイトリン「ほっといたら分解されてしまうわ」
  ホーク、上着からオートマチックの銃を出し、コッキングする。
ホーク「俺は反対側に周る。おまえはここで奴らを引きつけろ」
ケイトリン「どうやって?」
ホーク「それは任せる」
  林の中を潜り抜け向こう側に走るホーク。
  ウインドブレーカーから銃を出すケイトリン。

〇 エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座っている男A。
  計器類を見回し、適当にボタンを押し始める。
  遠くで高鳴る銃声。
  慌てて外に出る男A。
  外で待ちかまえていたホークが男Aの頭に銃を突きつける。
ホーク「両腕を上げろ。ゆっくりだ」
  静かに両腕を上げる男A。

〇 アトランタ効外・雑木林
  ケイトリンがいるほうにマシンガンを構えながら歩み寄る男BとC。
  茂みに隠れているケイトリン。
  静かに移動を始める。
  ガサガサと草の揺れる音を耳にする男B。
  音の方に向けてマシンガンを乱射する。
  茂みで跳ねる弾丸。煙が上がる。
  太い木の幹に身を隠すケイトリン。
  身を乗り出して、男Bに銃を撃つ。
  左肩を撃ち抜かれ、その場に倒れる男B。
  男Bから数m離れた場所にいる男C。
  ケイトリンに気づき、マシンガンを乱射する。
  咄嗟に横っ飛びして大木の影に隠れるケイトリン。
  木の幹にもたれて座り、右膝を撃たれ痛みをこらえている。
  ケイトリンの近くへほくそ笑みながら歩み寄る男C。
男C「そこにいるのはわかっているんだ。銃を捨てて出てこい」
ケイトリン「あなたこそ銃を置いてそこから離れたほうがいいわよ」
男C「頭の悪い女だ。そんなに地獄に行きたいか」
  マシンガンを乱射する男C。
  ケイトリンの足元で跳ねる弾丸。
  ケイトリンの目前にやってくる男C。
  万事休すの表情を浮かべるケイトリン。
  突然、鳴り響く銃声。右腕を撃たれ倒れる男C。
  男Cの後ろで銃をかまえているホーク。
  銃口から硝煙が上がっている。
  ケイトリンの前に近寄るホーク。
ケイトリン「宇宙人を見るまでは死ねないわ」
  ケイトリンの右膝を見るホーク。
ホーク「何年生きるつもりだ?」
  ホークの肩を借りて立ち上がるケイトリン。

〇 エアーウルフ・コクピット
  ケイトリンを助手席に乗せるホーク。
ケイトリン「もう一人の男は?」
ホーク「向こうに縛ってある」
ケイトリン「ドミニクたちはここにはいないみたいね」
ホーク「燃料を持ってきて正解だった。エアーウルフもガス欠状態ではウドの大木だからな」

〇 アトランタ効外・雑木林
  エアーウルフの後部、テールローターの下。ロープで後ろ手に縛りつけられ、足首も縛られうつ伏せに寝かされている男A。
  男Aの前にやってくるホーク。
ホーク「紹介が遅れたな。俺はこのへリの持ち主だ」
男A「・・・」
ホーク「ドミニクをどこにやった?」
  表情を変えず一点を見つめている男A。
ホーク「我慢すると健康に悪いぞ」
  しかめっ面の男A。
    X   X   X
  エアーウルフの左側に格納されていたチェーンガンが伸び出る。
  チェーンガンの前に立たされている男A。そばにいるホーク。
  へらへらと笑っている男A。
ホーク「風通しの良い体になりたいようだな。いい度胸だ。残り30秒」
  ぷるぷる震え出す男A。
男A「どうせハッタリだ」
  男Aから離れるホーク。
男A「我一点也不害怕!」
ホーク「後10秒」
男A「恐くねえぞこんなもん」
ホーク「5」
男A「早先我」
ホーク「3」
男A「俺は知らねえ。そんな男の名前聞いたことねえ」
ホーク「2」
男A「本当だ。このへリを調べろって言われただけだ」
ホーク「1」
男A「調べた後、輸送しろって」
  ホーク「どこにだ?」
男A「オーランド」
ホーク「クバルの居場所を教えろ」
  眉をひそめるホーク。

〇 マイアミ・WTSテレビ局スタジオ
  人気番組「ご機嫌ルーニーショー」の本番中。
  司会のルーニー・フィリップス。白髪、中肉中背、びっしりした黒いタキシードに身を包んだ紳士風の男。
  二百人の観客が見ているステージの中央に立ち、マイクパフォーマンスするルーニー。
ルーニー「今日のアレックスとハルクの試合、どうでしたか皆さん。キン肉ムキムキマッチョマンの全身から
 流れる汗を見て、奥様方はもうペロペロ・・・ではなくメロメロでしたね。お次は、みなさんお待ちかねの
 チャンピオン・ブローラー・ブッティの登場だ。また二時間後に暴れてやるぜ」
  目の前のテレビカメラに手を振るルーニー。

〇 同・通路
  スタジオの出入口の扉から出てくるルーニー。
  歩いているルーニーのそばに、マネージャーのライアンがやってくる。
ライアン「ルーニーさん、また来てますよ。例のご婦人が」
ルーニー「それはお前の仕事だ」
ライアン「あなたにしつこく誘われたって。会ってくれないなら今までのこと洗いざらい週間誌にブチまけるって言ってますが」
ルーニー「好きにさせとけ。ただし、マスコミには丁重にな」
  ドレスルームの中に入るルーニー。

〇 マイアミ・WTSテレビ局前・道路
  駐車場から出てくる黒いリムジン。

〇 リムジン・後部席
  シートの真ん中で足を組み、偉そうな態度で電話しているルーニー。
ルーニー「そう焦らなくていい。私は約束を守る男だ。だからあんたもそうしてくれ」
  葉巻の煙をくゆらせるルーニー。
ルーニー「その話は聞いた。品定めをした上で、交換条件の判断をしよう。後は、ランスと交渉を進めてくれ」

〇 モーテル302号室・リビング
  電話を切るクバル。
  ドミニク達の前に行く。
クバル「一緒に来い」
ドミニク「今度は、どこに行くんだ?」
クバル「東の楽園だ」

〇 国道(数時間後)
  片側二車線の道路。
  スピードを上げ走っているカマロ。

〇 モーテル前
  立ち止まるカマロ。
  運転席から降りてくるホーク。
  革ジャンのポケットから銃を出す。コッキングして下にかまえながら階段をかけ上がる。
  302号室のドアノブを握る。
  鍵が開いている。
  ドアを開け、静かに中に忍び込む。

〇 同・302号室・中
  薄暗いリビングに侵入し、辺りを覗くホーク。
  突然、ホークの背後から現れ、斧でホークを襲うワン。
  ワンに気づき、間一髪、オノをよけるホーク。
  横っ飛びした後、ワンに向けて伏射するホーク。
  右肩を撃たれ、のた打ち回るワン。
  銃を革ジャンのポケットにしまい、ワンの胸倉を掴むホーク。
ホーク「ドミニクをどこにやった?」
  首を横に振り、口が聞けないフリをするワン。
  ホーク、男の右肩の傷口を指で強く押し続ける。
  たまらず大声をあげるワン。
ホーク「レモンみたいに押しつぶしてやろうか?」
  挑戦的な目でホークににらむワン。
  またワンの傷口を押すホーク。
ワン「わかった。マイアミビーチ近くのホテルにいる」
ホーク「どこのホテルだ?」
―ACT2 END―


―ACT3―

〇 マイアミビーチ・砂浜
  雲一つない青空。
  ビーチを歩く水着を着たスタイルの良い美男美女。
  波打ち際で遊ぶ子供達。
  あちこちに立つパラソル。
  砂浜でビーチバレーを楽しんでいる若者達や親子連れの姿もある。
  ビーチのそばのストリートを走る黒いワゴン。
  観葉植物に囲まれた白色の巨大なリゾートホテルの駐車場に入っていく。

〇 ホテル・1002号室前
  エレベータを降り、通路を歩き出すクバルたち。
  クバルを先頭にドミニクと女が横並びになり、その後ろにもう一人の中国人の男・シュウが歩いている。
  ドアの前に立ち止まる4人。
  ドアをノックするクバル。
  ドアが開き、黒いスーツにサングラスをつけた若い男が顏を出す。
  部屋の中に入る4人。

〇 同・寝室
  海が一望できるおしゃれインテリアの部屋。
  べッドの上に座らせられるドミニクと女。
  二人とも後ろ手にダクトテープを巻かれ、両足首にも巻かれている。
クバル「しばらくここで大人しくしてろ」
ドミニク「一つだけ教えてくれ。どうやってわしたちのことを知った?」
クバル「一ヵ月前のカンザスシティでの出来事を覚えているか?」
ドミニク「・・・いや」
クバル「国際銀行強盗団のへリを追いかけただろ」
ドミニク「・・・あれか」
クバル「我々の仲間がいたんだあの中にな。おまえたちはあのへリで同士を撃ち殺した」
ドミニク「確か奴はマシンガンを乱射し続けて、攻撃をやめなかった。仕方がなかった・・・」
クバル「あの時、レストランのオーナーが現場を撮影していたんだ。我々は、奴からフィルムを奪い、
 お前たちの写真を入手した。それを元におまえの会社を見つけ出した」
ドミニク「目的は、わしたちへの復讐か」
クバル「近々お前の会社を襲うつもりでいたが、おまえらのほうから先にわざわざ出向いてくれたので手間が省けた」
ドミニク「ホークたちをどうする気だ?」
クバル「必ず見つけ出して報いを受けさせる。そのトップはお前だ」
  部屋を出て行くクバル。
  女に話しかけるドミニク。
ドミニク「大丈夫かレミエ」
女「・・・」
ドミニク「本当はテキサスで君を助けるつもりだったのに、わしのせいでこんなことに」
女「私、レミエじゃないの」
  唖然とするドミニク。
ドミニク「なんだって?」
女「レミエの妹のエリーナよ」
  女はエリーナ・ダレス。
ドミニク「どういうことだ一体」
エリーナ「奴らは姉と勘違いして私を拉致したの。姉と私は双子の姉妹なの」
ドミニク「じゃあ、レミエはどこにいる?」
エリーナ「わからない。あなたClAの人?」
ドミニク「ただの飛行機会社の経営者だ」
エリーナ「なぜ姉を探しているの?」
  辺りを見回すドミニク。部屋の片角に小さな監視カメラが仕掛けられていることに気づく。
  カメラから目をそらすドミニク。
ドミニク「それは後で話そう」

〇 同・リビング
  革張りの黒い奇子に座り、テーブルに置いている小型モニターでドミニクたちの様子を見ている
  黒いスーツを着た中年の男・ランス。
ランス「感づかれたな」
  ランスの後ろに立っているクバル。
クバル「あの女、レミエじゃなかったのか」
  右手に持っているベレッタをコッキングするクバル。
ランス「慌てるな。まだ利用価値はある」
クバル「・・・」
ランス「それより、ヘリのほうはどうなってる?」
クバル「まだ連絡がこない」
  呆れた表情をするランス。
クバル「ボスともう一度話をしたい」
  電話が鳴る。キッチンカウンターの上に置いてある電話に出るクバル。
クバル、電話をランスに渡す。
ランス「はい。すでに準備はできています。一時間後には」

〇 リムジン車内
  後部席に座るルーニー。パインアイスをかじりながら話している。
ルーニー「プロデューサーに再三反対されたが、今日は私の番組の10周年の記念日だから
 私こよなく愛してくれた視聴者にアッと驚くものを見せてやりたいんだって言ったら、何とかGOサインが出た。
 これで間違いなく視聴率はうなぎ上りだ」
ランスの声「実は・・・クバルが連れてきた女はレミエではなく、その妹でした。双子の姉妹だそうで」
ルーニー「あの女をほっとけば、いずれやばいことになる」
ランスの声「でも、クバルは手に入れたヘリと交換に話をしたいと言っています」
ルーニー「それで、へリの方は?」
ランスの声「まだ現地で作業中です」
ルーニー「クバルの話から察するに、それは噂に聞いていたエアーウルフと呼ばれるヘリだ。
 早急に手に入れて中身を確かめなければならん」
ランスの声「女のほうは?」
ルーニー「おまえが探せ。今週が期限だ」
ランスの声「はい・・・」
ルーニー「全てが終了したら私はへリでオーランドのホテルに向かう。奴らはまだ二流の軍隊だ。
 技術を大量に欲しがっている我々の最大の商売相手だからな。クバルにしっかりとデモンストレーションを見せておけ」
  電話を切るルーニー。
  パインアイスをサクッとかじる。

〇 ClA本部・部長室
  デスクの前に立ち、電話をしているアークエンジェル。
アークエンジェル「今どこにいるんだ?」

〇 マイアミ市内
  アールデコ調の建物の前の公衆電話。
  ホークが電話で話している。
ホーク「マイアミだ」
アークエンジェルの声「エアーウルフは無事なんだろうな?」
ホーク「ああ。問題はドミニクだ」
アークエンジェルの声「まだ見つからないのか?」
ホーク「この市内のホテルにいるはずなんだ」
ア一クエンジェルの声「まさか、一人で乗り込む気か?」

〇 ClA本部
アークエンジェル「実は、今朝うちに差出人不明の封書が届いた。その中に私と
  ドミニクがサンティ一ニ航空で会話をしている時の写真が入っていた」

〇 マイアミ市内・公衆電話
アークエンジェルの声「つまり、我々の関係を知る何者かがいるということだ」
ホーク「エアーウルフのことも漏れたのか?」
ア一クエンジェルの声「それは今調査中だ。それからクバルと接点のある武器密売グループがいることが判明した。
 何やら物騒な物を取引しているとの情報を入手した」
ホーク「物騒な物って?」
アークエンジェルの声「新型の戦車だ。無人のな。どんな最新のシステムを搭載しているのかはまだわからん。気をつけろホ一ク」

〇 マイアミ市内リゾートホテル・1002号室寝室
エリーナ「さっきの話の続きだけど」
ドミニク「ああ、わしがなぜレミエを探してるかって話か?CIAにちょっとした知り合いがいてな。そいつに頼まれたんだ」
エリーナ「捕まる2日前に、一度だけ私の家に姉から連絡があったわ。もうすぐ帰るからブルーベリーパンケーキを
 用意しといてって」
ドミニク「でもレミエは戻ってこなかった」
エリーナ「今まで姉さんがどんな仕事をしているのかわからなかったけど、今はよくわかる。
 こんなに危険がある中で毎日生きてきたんだって」
ドミニク「もし、無事に助かったら、わしがブルーベリーパンケーキをたらふく食べさせてやる」
エリーナ「私はそれほど好きじゃないけど」
  自分の両手首に巻かれているダクトテープをライターの火で焼いているドミニク。

〇 同・ホテル前のストリート
  道路協に止まるカマロ。

〇 カマロ車内
  ハンドルにもたれかかり、ホテルを見回しているホーク。
  助手席に置いている通信機のアラームが鳴る。
  レシーバーに話し出すホーク。
ホーク「今どこだ?」

〇 アトランタ郊外・雑木林上空
  ゆっくりと飛行しているエアーウルフ。
ケイトリンの声「さっき出発したばかりよ」

〇 エアーウルフ・コクピット
  操縦しているケイトリン。
  スピーカーからホークの声が聞こえる。
ホークの声「急いでくれ。なんだかイヤな予感がする」
ケイトリン「ホーク、あの・・・」

〇 カマロ車内
ホーク「どうした?」
ケイトリン「燃料のことなんだけど、注入中にこぼしてしまって・・・半分ほど」
ホーク「何があった?」
ケイトリン「捕まえた男達が逃走したのよ。取り押さえようと走り出した時に、燃料の入ったタンクを倒してしまったの・・・」
ホーク「・・・」
ケイトリン「怒ってるわよね?」
ホーク「ターボは使うなよ。半分しか燃料がないんだ」
ケイトリンの声「了解」
  マイアミビーチの公衆トイレから出てくる男を睨み付けるように見つめるホーク。
  男はクバル。
  道路脇に止まっていた荷台つきのトラックの助手席に乗り込むクバル。
  発進するトラック。
  ホーク、アクセルを踏み込み後を追う。

〇 マイアミ・WTSテレビ局8Fスタジオ
  観客の黄色い声援と共に、ステージに登場するルーニー。
  右手に持っていたマイクで話し出す。
ルーニー「二時間ぶりのご無沙汰です。今日は、ハロー、ルーニーショー10周年を記念しての特別プログラム。
 サウスビーチの特設ステージにいるフィリップと交信してみるよ」
  ステージ右側に設置されている大型ビジョンに映し出されるサウス・ビーチ。
  Tシャツを着た水着姿の若いレポーター、フィリップがマイクで喋る。
フィリップ「ルーニーさん、10周年おめでとう!」
  突然、バケツの水をかけられて、びしょびしょになるフィリップ。
  スタジオの観客が大笑いしている。
ルーニー「おいおい、どうしたフィリップ。今日は高波なのかい?」
  観客、大爆笑。
フィリップ「想定外の波のプレゼントだったけど、汗がひいて今とっても気持ちいいですよ。
 これからお見せするものすごくビッグなゲストも想定外なやつですからね。みなさん居眠りしないでくださいね」
ルーニー「そのビッグなやつって一体何だい?」
フィリップ「(小さい声で)教えない」
  また笑いにつつまれるスタジオ。
ルーニー「また下手なクイズにもちこむ気じゃないだうな?」
フィリップ「いえいえ今日はもう巻いていきますからね。では、お見せしましょう。10周年のビッグゲストはこいつだ!」
  砂浜の上に作られたハリボテの大きな小屋から、けたたましいディーゼルエンジンの音が鳴り響く。
  砲塔が小屋の壁を突き破る。ブルーの鋼鉄とセラミック素材で作られた無人走行戦車ACSL4が姿をあらわす。
  バラバラに崩れる小屋。
  驚嘆するスタジオの観客達。
  キャタピラですいすいと砂浜を走り抜け、大きく回って立ち止まる。
フィリップ「見ましたかみなさん。こいつが今日のゲスト、アンドリューくんです」
  観客、大爆笑。
ルーニー「なんでアンドリューなんだ?」
フィリップ「だって昔うちの牧場で飼ってた牛に似てるんだもん。1時間前にぼくが勝手に名付けたんですけどね」
  観客、爆笑の渦。
ルーニー「だったらモーモーくんのほうがわかりやすいだろ」
  笑う観客。
フィリップ「じゃあモーモーくんにしちゃいましょう。実はこの戦車誰も乗っていないんです」
ルーニー「人工知能でもついているの?」
フィリップ「それに匹敵する最新型の制御システムが搭載されているんです。最高時速100km、
 チョバム・アーマーをさらに改良した『ハイパーネスアーマー』は鋼鉄の4倍以上の強度があり、
 125mm主砲の下に隠されている格納庫には、4つの・・・」

〇 マイアミビーチ・ストリート
  前の車を追い抜き走っているクバルのトラック。
  その後をずっと追っているカマロ。

〇 クバルのトラック車内
  ドアミラーを見つめるクバル。
  尾行しているカマロに気づく。
  ベレッタを持つクバル。

〇 カマロ車内
  クバルが窓から身を乗り出し、こちらに銃を向けているのがフロントガラス越しに見える。
  銃を乱射するクバル。
  カマロのフロントガラスにいくつも銃弾の穴が開く。
  頭を低くして弾を避けているホーク。
  アクセルを踏み込み、猛スピードでトラックに迫る。

〇 マイアミビーチ・ストリート
  カマロがトラックの後部に激突する。その禅みでトラックは蛇行し、道の真ん中で派手に横転する。
  フロント部が激しく潰れているカマロ。
  横倒しになって止まっているトラックの近くで立ち止まる。
  車から降り、銃をかまえながらトラックに近づくホーク。
  トラックのドアの上に立ち、車内に銃を向ける。
  車内でドライバーの男とクバルが重なり気絶している。
  銃を下ろすホーク。
  遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
  シルバーのBMWがホークのそばをゆっくりと横切る。

〇 BMW・車内
  運転しながら車載電話で話しているランス。
ランス「プランCに変更する。戦車を10分後にテレビ局のビルに突っ込ませて自爆させる」

〇 マイアミビーチ・ストリート
  トラックの中からクバルを引っ張り上げるホーク。
ホーク「ドミニクのいるところに案内してもらおうかクバル」
クバル「俺に何かあればあのじいさんは死ぬことになっている。今頃地獄でぼやいてやがるぜ」
  けたたましく笑い出すクバル。
  クバルの顔面にきついパンチをくらわすホーク。
ホーク「来い。おまえもそこに送ってやる」

〇 マイアミ・ビーチ
  ACSL4の125mm主砲が不気味に回転し始める。
  実況するフィリップ。
フィリップ「これからこのモーモーちゃんのデモンストレーションを始めますから、スタジオのみなさんも眠らずに見てくださいね」
  ACSL4の主砲が砂浜にいる水着の若者たちの方に向く。
フィリップ「おっと、いきなり若者たちをターゲットにしはじめたモーモーくん。ビーチにいる熱いカップルに妬いているのか?」
  砲塔が下を向き、若者たちにロックオン。
若い男A「おい、やばい本気で撃ちそうだぜ」
  一斉に逃げ惑う若者たち。
フィリップ「落ちついて。これはデモ・・・」
  発射する砲弾。
  砂浜が爆発。空高く砂が舞い上がり、周囲にいた若者たちが吹き飛ばされる。
  空を舞っていたカモメが一斉に海に向かって飛んでいく。

〇 ホテル・1002号室前・寝室
  銃を持ち部屋に入ってくるシュウ。
  開いたドアの裏側に立ち、待ちかまえていたドミニク。
  シュウの背後にしのび寄り、右手に持った電気スタンドでシュウの頭を殴りつける。
  頭を押さえながらその場にうずくまるシュウ。
ドミニク「さあ、行こう」
  べッドの上に座り、ダクトテープで縛り付けられているフリをしていたエリーナ。
  体に巻きついたテープをはずし、口のテープもはずして立ち上がる。
  シュウの前を横切るエリーナ。
  その瞬間、ムクッと起き上がり、エリーナの背中に銃口を向けるシュウ。
  シュウの銃を右足で蹴り飛ばすドミニク。
ドミニク「先に行って、助けを求めるんだ」
  頷くエリーナ。走って部屋を出て行く。
  立ち上がり、ドミニクに回し蹴りをくらわすシュウ。
  隣のリビングに倒れ込むドミニク。

〇 同・リビング
  エリーナの後を追い、かけ出すシュウ。
  すかさず、カーペットを引っ張るドミニク。
  カーペットの上を走っていたシュウが
  勢いよく、床の上に転倒する。
  ゆっくりと立ち上がるドミニク。
ドミニク「まだまだ若い奴には負けんぞ。さあ来い!」
  起き上がりこぼしのように立ち上がるシュウ。
  空手の構えをして、気合を入れている。
  ドミニクも息を弾ませながらファイティングポーズ。
  声を張り上げながら、ドミニクに拳を向けるシュウ。
  轟く銃声。
  左スネを撃たれ倒れるシュウ。
  部屋の入口のほうを向き、安堵の表情を浮かべるドミニク。
ドミニク「遅かったかな。くたびれたぞ」
  銃をかまえ立っているホーク。隣にエリーナがいる。
  銃を下ろし、ドミニクに近づくホーク。
ドミニク「エマージェンシーシグナルが故障したのかと思った」
  ドミニクの腫れ上がった顔を見るホーク。
ホーク「随分派手にやられたな」
ドミニク「あと10年若けりゃこんな奴」
ホーク「30年だろ」
ドミニク「10年だ」
  外から大きな爆音が聞こえてくる。
  急いでバルコニーに向かう二人。

〇 同・バルコニー
  サウスビーチのほうを見つめるホークとドミニク。
  大勢の人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。
  砂浜を出て、沿道のヤシの木をなぎ倒し、ストリートを暴走し始めるACSL4。
  車体の右横の格納庫からガトリング砲を出す。
  銃身を高速回転させて周囲に乱射する。
  沿道のビルディングや駐車場に止まる車やバスが弾丸のシャワーを浴びる。
  周囲の惨状に愕然とする二人。
ドミニク「一体何の祭りだ?」
ホーク「アークエンジェルが言ってた無人戦車っていうのはどうやらアレのようだな」
ドミニク「無人戦車?」
  部屋に戻るホーク。後を追うドミニク。
―ACT3 END―


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