■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<前編7> 〜『相棒』〜

 

アメリカワシントンDCホワイトハウス二階のマーティス・ダニエル大統領の部屋。マーティス、ウォルター、ダークエンジェルの三人が会話を続けていた。

ダークエンジェル「ブラックウルフを作る時、もう一つ別のヘリを作ったのです」

マーティス「別のヘリ?」

ダークエンジェル「デザインはブラックウルフとは全く別物です。まだ未完成ですが・・・」

マーティス「で、そのヘリはどこにあるんだね?」

ダークエンジェル「フロリダ州の地下施設レベル1で保管されていると思いますが、何しろブラックウルフに力を入れすぎて暫く様子を見ていなかったもので・・・」

マーティス「未完成と言ったが、何か問題でも?」

ダークエンジェル「攻撃用システムのコンピュータにバグが発生してしまい、思うようにいかなくて・・・」

マーティス「後、どれぐらい費用が必要だ?」

ダークエンジェル「2億ドルもあれば、コンピュータは完成できます。しかしまだプログラムが70%しか完成しておらず、残りのプログラムは、ブラックウルフに組み込んだ過去のエアウルフのプログラムをダウンロードしなければなりません」

マーティス「ブラックウルフは盗まれている。残るはそのエアウルフか」

二人の話にクリスが割り込んでくる。

クリス「一つ方法があります。元CIAのアークエンジェルを探し出せば話が早いのでは?」

三人はクリスに目をやる。マーティスはダークエンジェルとウォルターに話し出した。

マーティス「二人に命令だ。そのアークエンジェルとエアウルフのパイロットを探し出すんだ。二ヶ月以内にそのヘリを完成させ、ウォルターとエアウルフのパイロットで合同作戦を行う。その作戦が無事成功するまでダークエンジェル、君をCIAの要職から外す。いいな」

ダークエンジェル「大統領、私を下ろしてはブラックウルフを探し出すのは困難だと思いますが・・・」

マーティス「下ろすとは言っていない。暫くの間コードネームを外してもらう。君の新しい名はベネズエルだ」

ダークエンジェル「ベネズエル?どこから取ったんです?」

ウォルターはニヤッと笑い、

ウォルター「ベネズエルって聞いた事があるぞ。確か聖書に出てくるものだろ?」

マーティス「ベネズエルは悪魔と言う意味でもある。サタンもデビルも悪魔だが、それよりはまだマシだろ」

ダークエンジェル「ダークエンジェル(闇の天使)からベネズエル(悪魔)か・・・私も偉く落ちたものだ・・・」

マーティス「とにかく2人ともさっそく行動を始めてもらおう。私は午後から会議があるのでこれで失礼する。クリス、彼らを玄関までお送りしろ」

クリスは扉を開ける。ダークエンジェルとウォルターは立ち上がり、扉に向かって歩き出した。三人は部屋を出て、廊下を歩き出した。その途中、ウォルターはベネズエル(ダークエンジェル)に話し掛けた。

ウォルター「CIAをやめさせられずに済んで良かったな」

ベネズエル「ああ」

ウォルター「しかし、あんたも人が悪いな。何でもっと早く別のヘリの事を言わなかったんだ?」

ベネズエル「プログラムの問題が頭に引っかかっていたんでな」

ウォルター「一番の問題はエアウルフをどうやって見つけ出すかだ。世界は広いし、そのアークエンジェルも生きてるかどうかもわからないし・・・」

ベネズエル「まずCIA本部で個人ファイルを当たってみよう」

ウォルター「じゃあさっそくCIAに行くかな」

ベネズエル「まさか君と共に行動するとは思ってもみなかったな・・・」

ウォルターはベネズエルの右肩をポンと叩き、

ウォルター「俺達はすでに『相棒』だ」

ベネズエル「ちょっと待て、いつから私が君の相棒になったんだ?」

ウォルター「今からだよ。同じ作戦の任務を命じられたんだ。もう立場なんて関係ないぜ」

ベネズエル「・・・・」

ウォルター「じゃあ、よろしくな、相棒!」

ウォルターはベネズエルの前に右手を差し出した。ベネズエルは何も言わず左手でウォルターの手を握り、握手を交わした。そして2人は玄関の前に止まっていた黒いリムジンに乗り込んだ。

 

同じ頃、ブラックウルフを手に入れたジョン・モフェットとアーラン・ライフェルの2人は1度ロサンゼルスのレッドフォール空軍基地に戻り、2人で祝杯を交わしていた。アーランの部屋のテーブルにはウィスキーが2、3本置かれていて、そのうち2本はすでに空になっていた。2人はテーブルを挟んで対峙するように座り、右にアーラン、左にモフェットが椅子に腰掛けていた。

モフェット「君も相当の悪だな、ライフェル」

アーラン「何の話だ?」

モフェット「ヘリを盗み出すのに、わざわざ自分の部下を送り込んでいたとは・・・」

アーラン「普通のパイロットの代わりならいくらでもいる・・・しかし、ウォルター・クラントのようなエース・パイロットを失うのは惜しい」

モフェット「彼も消すべきだったんじゃないか?」

アーラン「ウォルターにはあの2人しか友人がいなかったんだ。悲しみに暮れてヘリ探しどころじゃない」

モフェット「君は甘いな。ウォルターはすでに私達の関係を知ったかもしれんぞ」

アーラン「心配性だな、君は。たとえ知っていたとしても、彼には何もできんよ」

アーランはウィスキーの入ったグラスを持ち、一気に飲み干した。それを見ていたモフェットが喋りだし、

モフェット「それで、あのブラックウルフをどうするつもりだ?武器が来るまで眠らせておくのか?」

アーラン「テスト飛行を続けよう。完全に使いこなすまでに時間がかかる」

モフェット「まぁ、退屈しのぎにはなるがな。午後から飛ばすか?まだアルコールが抜けきれてないがね」

アーラン「そう焦らずとも大丈夫さ。あの倉庫は昔から誰も近づかない場所だ。ばれっこない」

アーランとモフェットは互いに持っていたグラスを合わせ、乾杯した。

 

アメリカ・ワシントン郊外にあるCIA本部ビルの周辺には緑の華をつけた数十万本もの木が立ち並んでいた。木々に囲まれた道路を黒いリムジンが進んでいた。やがてリムジンはCIA本部の玄関前に立ち止まり、うしろの扉が開いた。中からウォルターとベネズエルが表われ、ビルの中へと突き進んで行った。ホワイトハウスより遥に広い空間を歩く2人。ウォルターは上下左右に辺りを見回していた。

ウォルター「ほんとにここがCIA本部か?高級ホテルかと思ったぜ」

2人は受付カウンターの前に立つ。カウンターには金色の髪をした20歳ぐらいの女性が立ち2人に話し掛けてきた。

受付の女性「ご用件はなんでしょうか?」

ベネズエル「私はCIA副長官のダークエンジェルだが・・・身分証明書はいるかね?」

受付の女性「はい、できれば・・・あの、後の方は?」

ベネズエルはスーツの内ポケットから身分証を取り出し、彼女に見せる。

ベネズエル「彼は・・・親友だ。どうしても中が見たいというので・・・見学させてやりたい」

受付の女性「しかし外部の人間を入れるのはちょっと・・・」

ベネズエル「少し見回るだけだ。私が責任を取る」

ウォルターは小声でベネズエルに話し掛け、

ウォルター「親友じゃなくて相棒だろ?」

ベネズエル「こんなときに冗談はよせ」

受付の女性「今何か言いました?」

ベネズエル「いや、彼が早くトイレに行きたいと言うんでね・・・」

受付の女性「・・・身分証の確認が終わりました。どうぞ、ダークエンジェル様」

ベネズエルは彼女から身分証を受け取る。受付の女性はウォルターに話し掛けた。

受付の女性「ところで、あなたの名前は?」

ウォルター「ウォルター、ウォルター・クラント」

彼女はカウンターに紙と名札を置き、

受付の女性「ウォルターさん、この紙に名前と年齢を書いてください。それとこの名札をつけてください。それから、レベル1とレベル3は立ち入り禁止になっていますのでくれぐれも近寄らないでくださいね」

ウォルターはベネズエルの前に出て、カウンターに肘をつき、その紙にサインする。書いた後、紙を彼女に差し出し、

ウォルター「これでいい?」

受付の女性「ええ」

ウォルター「ところで、君の名前は?」

受付の女性「エレナ・・・エレナ・リグス」

ウォルター「エレナか、いい名前だ。今度の休みの日に食事なんてどう?」

エレナ「考えておくわ・・・ウォルターさん」

エレナはウォルターに名札を手渡した。ベネズエルとウォルターはカウンターを離れ、左奥のエレベーターに向かって歩き出した。その途中ベネズエルが話し始めた。

ベネズエル「まさかこんなところでナンパするとはな。大胆な奴だ」

ウォルター「美しい女性なら、場所なんてお構いなしさ」

ベネズエル「女は外見だけじゃないぞ。知性・教養・性格・そしてなにより優しさを備えていなければならん」

ウォルター「あんたも結構女にはうるさいんだな」

ベネズエル「やっぱり君をここに連れてくるんじゃなかったな」

ウォルター「でも俺達いいコンビになりそうな気がするぜ」

ベネズエル「・・・・」

 

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