■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! ■ <前編8> 〜手懸り〜 アメリカ・ワシントン郊外にあるCIA本部ビル。ベネズエルとウォルターは、エレベータの前に足を止めた。ベネズエルはボタンを押すと、30秒後に扉が開いた。2人は中へ乗り込み扉が閉まると、ウォルターがベネズエルに喋りかけた。 ウォルター「何階だ?」 ベネズエル「地下一階だ」 ウォルターはボタンを押した。エレべーターは地下に着き、2人は中から降りた。そこは薄暗く場所で、電気がほとんど消えかかっていた。中には完全に消えている照明もあり、光っているのは2、3個程度だった。2人は先を進み、狭い廊下の奥へと向う。歩きながらウォルターが話し出した。 ウォルター「随分ほころびたところだな」 ベネズエル「この建物の地下はもう何年もその用途について検討されてきたが未だに決まっていない」 ウォルター「じゃあ何のために作ったんだ?」 ベネズエル「知らんよ。今は一時的に資料室になっているがな」 ある扉の前で足を止める2人。ベネズエルは扉の横にある指紋識別装置に手をやった。設置されていた赤いランプが青の光に変わり、扉は上に登るように開き始めた。 ベネズエル「まだ私のコードは生きているようだ」 ウォルター「どういう意味だ?」 ベネズエル「大統領の命令で私のコードネームが消されただろ?」 ウォルター「コードネームは消されても指紋は消せないだろ?」 ベネズエル「しかし、私の指紋はコードネームで登録されている。コードネームがなくなれば、データも抹消されるシステムになっている。おそらくまだ私の情報がデータバンクから抹消されていないんだ」 ウォルター「じゃあ抹消されるまでにさっさと調べてしまおうぜ」 ベネズエル「そうだな」 2人は部屋の中に入る。中は広い空間で見渡す限りに本棚が並んでいた。本棚にはぎっしりとファイルが置かれている。 ウォルター「さて、どこから始める?」 ベネズエル「前よりファイルの数が増えているからな。手分けして探そう。君はモフェット、私はアークエンジェルだ。向こうの棚から回ってくれ」 ウォルター「ちょっと待った!」 ウォルターはポケットから1セントを取り出し、 ウォルター「コインで決めよう」 ベネズエル「何をだ?」 ウォルター「どっちがどっちのファイルを見つけるかだ」 ベネズエル「ふざけるのもいいかげんにしろよ、ウォルター。我々には時間がないんだ」 ウォルター「一種のおまじないさ。こうすると、ファイルがすぐに見つかるかもしれん。表が出たら、俺がアークエンジェルを探す」 ベネズエル「勝手にしろ!」 ウォルターは1セントを弾き飛ばす。コインは宙を舞い、クルクルと回転してウォルターの目の前に落ちてくる。ウォルターはそれをすかさず左手で掴み取り、右手の甲の上に乗せた。コインは表を向いていた。ウォルターは笑みを浮かべ、 ウォルター「俺がアークエンジェルだ」 ベネズエルは呆れた表情を浮かべている。 ベネズエル「いつもこんなことして物事を決めるのかね?」 ウォルター「ああ、自販機でドリンクを選ぶ時にもよく使う」 ベネズエル「・・・そんなレベルで決められちゃあ、たまったもんじゃない。まぁ、いい。さっさと取り掛かろう」 2人は片っ端からファイルを取り出し始めた。時間はあっという間に経過し、時刻はすでにPM4:00になっていた。しばらくしてウォルターが声を上げた。 ウォルター「あったぞ、ベネズエル」 ベネズエル「私もだ。こっちへ来てくれ」 ウォルターは2冊のファイルと3枚の書類を両手で持ちベネズエルのほうに向かった。二人は中央のテーブルにファイルと書類を置き、手探りで中の文書を調べ始めた。ウォルターはあるページに目を止めた。ページには右上に男の写真が貼り付けられていた。彼は文書を読み上げた。 ウォルター「アークエンジェル。本名はマイケル・コールドスミス・ブリッジス三世。CIA副長官。1964年にエアウルフ開発担当責任者に任命され、20年後の1984年にエアウルフの試作機を完成させた。しかしエアウルフはテスト飛行中にパイロットに奪い去られ、その後CIA内部のものがエアウルフを見たという記録はない。アメリカ・ワシントンのFBI捜査局がアークエンジェルを取り調べたが、エアウルフ発見につながる証言は得られなかった。捜査は1993年に打ち切られた」 ベネズエル「他には何か書かれていないか?」 ウォルター「エアウルフについては別の書類に一枚だけ書かれている。でもアークエンジェルの事は何も・・・」 ベネズエル「それは弱ったな・・・まぁ、いい、エアウルフの書類をこっちにくれないか」 ウォルターはベネズエルに2枚の書類を手渡した。ベネズエルはざっと書類に目を通し、 ベネズエル「こいつは凄い・・・さすがはブラックウルフの原型になっただけのことはある。すでに80年代に音速を超えるヘリが誕生していたとは、もはや今の政府関係者は誰も知るまい・・・」 ウォルター「それはアパッチよりも凄いヘリなのか?」 ベネズエル「ああ。この設計図を見てみろ」 ウォルターは設計図を見、そしてファイルを読み上げた。 ウォルター「ファイルNO.A56−7W。攻撃用音速ジェットヘリ・エアウルフは1984年チャールズ・ヘンリー・モフェットの手により設計され完成された。エアウルフは極秘的プロジェクトとして計画が進められたが、開発費の高騰により、試作機はこの一機のみである。スピードはマッハ1プラス、武器は14種類、30mm機関銃から小型ミサイルまで装備されている」 ベネズエルはウォルターに顔を向け、こう言った。 ベネズエル「このヘリが今もどこかに現存しているなら、1度この目で見てみたい」 ウォルター「もし見つかったとしても、もう使い物にはならないかもな。十数年前に作られたヘリなんだろ?」 ベネズエル「それは見つけてみないとわからんぞ。これでおおよその謎は解けた。ブラックウルフを盗んだ男はエアウルフの開発者だった男の弟だと言う事だ。問題は彼がどこからブラックウルフの情報を仕入れたかということだが・・・」 ウォルター「CIAに内通者でもいるのか?」 ベネズエル「確かにブラックウルフの情報を知るものはいるが、あのヘリを操れる人間は限られている。それにあのヘリのシステムはNASAと共同開発を進めたXL5と呼ばれるコンピュータで、とてもじゃないが優秀なパイロットの君でも扱いには困難を極める」 ウォルター「それはどうかわからんぞ。俺ならそのヘリをほんの数秒で操ってやる」 ベネズエル「大した自信だが、そういう奴ほど、後で泣きを見ることになるんだ」 ベネズエルは書類を束ね始めた。ウォルターも複雑な表情で書類を片付け始めた。その時、書類の中から一枚の小さい紙がヒラヒラとテーブルの下に落ちる。ウォルターは、それを拾い上げ読み出した。 ウォルター「アークエンジェル・・・ワシントンの命を受けオーストラリア・シドニーに滞在。当局ではこれ以上の彼の一切の情報を抹消する・・・」 ベネズエル「シドニーだと?」 ウォルター「やったなベネズエル。もうここには用はない。さっそくシドニーに向かおう」 ベネズエル「ウォルター、6時間後にJ・F・ケネディ空港だ。ちゃんと準備をしておけ」 ウォルター「俺のおまじない、利いただろ?」 ベネズエル「たまたま偶然が重なっただけだ。私はそんなもん信用せんぞ」 ベネズエルはウォルターに背中を向け、先に部屋を出て行った。ウォルターは彼を見つめながら笑みを浮かべていた。 アメリカ南部上空PM6:00。ジョン・モフェットとアーラン・ライフェルの乗ったブラックウルフは高度12000feetの上空を飛行していた。周囲は薄暗く、オレンジ色の日の光が機体を照らし、ブラックウルフは黄金色に輝きながら、西へと向かっていた。 フライトシステムのコンピュータを使うアーランは『コンパス・イメージング・レーダーU』に目を向ける。このレーダーは核弾頭ミサイルを探知するレーダーであり、ミサイルのスピードからから形、大きさまで詳細に識別する装置である。 アーラン「レーダーが何かを捕らえた。機体は3つで2時方向から向かってくる」 モフェット「機種をスキャンしろ」 アーランの目前のモニターに機体が映る。 アーラン「F−16だ。どうやら向こうはこちらに気づいていないようだ」 モフェット「思わぬ標的のご登場だ。ブラックウルフの性能を試すのに丁度いい獲物になる」 アーラン「攻撃したら、アメリカを敵に回すことになるぞ」 モフェット「構わんよ。アメリカはもはや敵だ。ライフェル、攻撃準備だ」 |
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