■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<前編9> 〜標的〜

 

アメリカ南部上空。ブラックウルフに乗り込んだジョン・モフェットとアーラン・ライフェルは、レーダーが捕らえたF−16に攻撃を仕掛けようとしていた。

ライフェルは向かって右側のコンピュータパネルにある攻撃用システムの『ツインスライクキャノン』『50mm機関砲』のボタンを押す。ブラックウルフの前方から、キャノン砲が姿を表わす。そして機体の左右に格納されていた機関砲も姿を表わした。

モフッェトはヘルメットの左側にあるスイッチを2回押した。バイザーが降り、ナイトスコープのシステムが動き始めた。バイザーからは周囲の風景が緑色に見え、やがてF−16の機体がくっきりと映り始めた。モフェットは右手に持つサイクリック・ピッチ・レバーを前に押す。ブラックウルフの機体は320ノットの速さでF−16に向かって突進し始めた。目標の位置に2000mまで近づいた時、モフッェトはレバーのトリガーを引いた。ツインスライクキャノンから同時に2発のミサイルが発射され、赤い閃光となってF−16へ向かった。ライフェルはレーダーを見ながらモフェットに話し掛けた。

アーラン「標的まで5、4、3、2、1・・・」

その瞬間、目の前にドッと赤く燃え広がる爆炎が立ち昇り、周囲が赤く染まった。爆炎の光りによりブラックウルフの存在に気づいた他のF−16が攻撃を仕掛けてきた。ライフェルはレーダーでF−16が放ったミサイルを目で追い、

アーラン「敵さんが気づいたぞ。ミサイルがこっちにやってくる」

モフェット「ターボエンジン作動、レベル1だ」

アーラン「馬鹿なこと言うな、ミサイルに突っ込む気か?」

モフェット「このヘリの装甲はダイヤモンド並みの強度があるんだろ?次はそのテストだ」

アーラン「気でも狂ったのか?早く方向を変えろ!」

モフェット「命令だ!早くしろ!」

アーラン「・・・ターボオン、レベル1スタンバイ」

ライフェルはターボ用のダイヤルを1に合わせる。レーダーにはブラックウルフとミサイルとの位置が表示され、その距離は5000mにまで近づいていた。ライフェルはカウントダウンを始める。モフッェトはレバーにあるターボのボタンを押した。機体の後部の左右のタービンから赤い炎が吹き上がる。ブラックウルフはスピードを上げ、マッハ1の音速でミサイルに向かって突進する。ドッバーンと大きな音が鳴り響き、そばを飛んでいた2機のF−16の前に真っ赤な炎が立ち昇った。ミサイルを発射したF−16のパイロットAが叫ぶ。

パイロットA「標的に命中した。敵は木端微塵だ」

もう一機のパイロットBがパイロットAに話し掛ける。

パイロットB「まだ残骸の確認ができてないぞ」

パイロットA「暗いから肉眼での確認は無理だ。早く基地へ引き上げよう」

パイロットBが機内のレーダーを見つめる。

パイロットB「お、おい、レーダーを見ろ・・・」

2機のF−16の前に広がる煙の中からブラックウルフが表れる。ボディは傷一つなく完全な状態で飛行を続けている。F−16はブラックウルフに攻撃を始めた。ブラックウルフのツインストライクキャノン砲の上の先端部から四角いノズル管が伸び始め、そこから2、3本の青い光が撃ち放たれた。光は2機のF−16に当たり、大爆発を起こした。ブラックウルフは最大兵器のレーザーにより瞬くもなくF−16を破壊した。だが、F−16から発射されたミサイルはブラックウルフに向かって飛んでくる・・・。

アーラン「熱追跡ミサイルが、6時方向から接近してくる」

モフェット「ターボだ、出力レベルを2に上げろ。ロータリーエンジンを切りパワーを60%間で上げる」

ライフェルはターボシテスムのダイヤルを2に回し、続いてロータリーエンジンを切る。

アーラン「レベル2セット、ロータリーエンジンからターボに切り換える」

モフェット「ターボ点火!」

モフェットはレバーのターボボタンを押す。左右のタービンとロータリーの後のタービンから火が吹き出る。ブラックウルフの速度はみるみる上昇し、最高音速マッハ2.5に到達する。機体は激しく揺れ、二人は強いGに耐えながら飛行を続けている。

ブラックウルフとミサイルとの距離は徐々に離れていく。

モフェット「ブレーキシステム作動、逆噴射だ」

ライフェルはブレーキシステムのボタンを押す。ツインスライクキャノン砲の上にある台形の部分が左右に開き、そこから噴射口が出て、赤い炎を噴出した。スピードが急激に落ち始め、ライフェルはロータリーエンジンを再起動させた。モフェットは機体をUターンさせ、ツインスライクキャノン砲を近づいてきたミサイルに目掛けて撃ち始めた。

アーラン「ミサイル到達まで6000m、4000m、2000m・・・」

レーダーにはブラックウルフの撃った弾2発とF−16のミサイルが映り、1つに重なる。ブラックウルフの前で大きな爆炎が舞い上がる。

アーラン「ミサイル命中、やったなモフッェト・・・」

モフェット「今日はこれぐらいにしておこう・・・」

モフェットはターボのボタンを押す。ブラックウルフはマッハ1の音速で飛行を始め、闇夜の空に消えていった・・・。

 

PM10時頃、ベネズエルとウォルター・クラントの2人はJ・F・ケネディ空港ロビーに立っていた。ロビーの窓越しには4、5機の飛行機が止まっているのが見え、中には古い機体もある。ウォルターは飛行機を見つめながら、ベネズエルに話し掛けた。

ウォルター「俺たちの乗る飛行機はどれだ?まさかあのオンボロ飛行機じゃないだろうな?」

ウォルターのそばに立っているベネズエルが口を開ける。

ベネズエル「あれはフロリダ行きの便だ。あの飛行機がオーストラリアまで飛べるとは到底思えんがね・・・」

ウォルター「一つ気になっていることがあるんだ。オーストラリアに行くのに、その黒いスーツはどうかな?・・・」

ベネズエル「人の事が言えるのか?軍を辞めさせられて未だに軍服を着ている君の方がどうかしてるぞ」

ウォルター「これを着てると落ち着くんだ、別にいいだろ。それより、どの飛行機に乗るんだ?」

ベネズエルが左の人差し指を窓の方に向ける。ウォルターはその指の方向に目を向けると、ヒューと口笛を鳴らす。長く大きな翼を持ち、先端に長く伸びたくちばしをつけた白いボディの飛行機が見える。

ウォルター「コンコルドか。悪くないな」

2人はコンコルドの機内に入る。2人は機内の中央部に進み、搭乗券の番号を見ながら、座席を探した。座席を見つけると、ベネズエルは窓側の席に座り、ウォルターはその横に座る。その数分後、コンコルドは滑走路を走り始めた。機内は振動によりガタガタと揺れ始めた。2人はシートベルトをとりつけた。

ウォルター「まさか音速旅客機に乗れるとはね」

ベネズエルはウォルターに顔を向け、

ベネズエル「手っ取り早い方がいいだろう」

ウォルター「・・・なぁ、一つ聞いていいか?」

ベネズエル「何だ?」

ウォルター「なぜ危険だと知りながら、あのヘリを作ったんだ?・・・」

ベネズエルは笑って答える。

ベネズエル「フフ・・・もう君に話してもいい頃かな。あのヘリは元々設計ミスから生まれたものだよ」

ウォルターはその言葉に驚き、大声で叫ぶ。

ウォルター「ナニィー、設計ミスだ???

ウォルターの大声にベネズエルは両手で両耳を塞ぎ、

ベネズエル「ウォルター、そんな大声出すな。もっと冷静になれ」

ウォルター「どう言うことだ?設計ミスって・・・」

ベネズエル「コンピュータで設計している途中にバグを見つけたんだ。それを処理している時に、コンピュータが誤ってエアウルフとエアウルフUのデータを勝手に融合させてしまった。元々ブラックウルフのデザインは元のエアウルフのデザインに近づけるつもりだったんだが・・・」

ウォルター「つまり、バグが作り出したヘリってことか?・・・」

ベネズエル「あのバグがなければ、設計に2年、プログラムを作るのに1年を費やすところだった。その融合データのおかげで計画より2年も早く完成することができたんだ・・・」

ウォルター「ブラックウルフって名はあんたがつけたのか?」

ベネズエル「そうだ。覚えやすいようにステルスのブラックバードにちなんでつけた名前だ。だがあのヘリを破壊することになれば、この8年間は無駄骨に終わる事になる。何のために50億ドルも費やしたのか・・・」

ウォルター「そうがっかりするなよ。俺も友人を2人も失ったんだ・・・」

ベネズエル「確かに今回の事では犠牲者を出しているし、君にも悪い事をしたと思っている・・・」

ウォルター「・・・それはさておいてだ、本当にブラックウルフに弱点はないのか?」

ベネズエル「・・・タービンに直接ミサイルを撃ち込むか、ローターを壊すかだ・・・」

ウォルター「自爆装置をつけてないのか?」

ベネズエル「50億ドルもするヘリにそんなものつける必要があるかね?」

2人の会話はそこで止まった。コンコルドは速度を上げて飛び立ち、音速でオーストラリアに向かった・・・。

 

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