■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<前編10> 〜探索〜

 

翌日、夜明けと共にブラックウルフは南アメリカへ向かって飛行を続けていた。地平線にさしかかる太陽に照らされた空を高度12000feet、320ノットで推進している。フライトシステムコントロールの座席に着くアーラン・ライフェルはモフェットに話し掛けた。

アーラン「朝早くからどこへ行く気だ?」

モフェット「どこでもいい、楽しめればな。レーダーに何か反応はあるか?」

アーラン「今のところは何もない・・・復讐以外に何かやるつもりなのか?」

モフェット「CIAはもう私の正体を掴んでいる。きっと今頃兄を殺した奴の居所を調べ回っているはずだ」

アーラン「兄貴を殺した奴を見つけ出す気か?」

モフェット「そうだ。奴を見つけ殺した後、アメリカも消す・・・」

アーラン「冗談が過ぎてるぞモフェット。本気で言ってるのか?」

モフェット「私は本気だ」

アーラン「正気の沙汰じゃないな。自分の生まれた国だぞ?」

モフェット「関係ない。私にとって奴等は邪魔者の一つに過ぎん」

アーラン「頭のお堅い高級官僚ならともかく、民間人を殺す事には、私は反対だ」

モフェット「アーラン、君は私に力を貸すと言ったな。だったら今更そういう話はナシにしよう。すでにこのヘリは2人のものだ。我々は世界を牛耳ったも同じだ」

アーラン「・・・」

ブラックウルフはメキシコを過ぎ、南アメリカへ進入した。レーダーを見つめながらライフェルはモフェットに喋りかけた。

アーラン「この先はバルア軍地だ。低空で飛行した方がいい」

モフェットはコレク・ピッチレバーをゆっくり下ろし、高度2000〜3000feetまで下りる。低空飛行により敵のレーダー網を避けながらさらに先へ進む。ライフェルはモニター画面を見つめた。そこには長く続く緑の深い森と、その間を潜り抜けるように流れるアマゾン川が見えていた。しばらくして、森の奥にぽつんと小さな地肌が見える。大きさは直径200mぐらいである。ライフェルは画面を拡大し、そこを確認する。

アーラン「ヘリ4機、飛行機2機が止まっている」

モフェット「上昇する」

ブラックウルフは一気に高度を上げた。バリア軍基地のサイレンが大きく鳴り始め、地上に止まっていた4機のヘリと2機の飛行機が動き始めた。ライフェルはコンパスイメージングレーダーUに目を向けた。

アーラン「前方12時方向から奴等がやってくるぞ」

モフェット「敵の機種をサーチしろ」

敵の機種がモニターに映る。

アーラン「ヘリはUH−1J、飛行機はドイツ製だが識別コードがない」

モフェット「攻撃準備、ターボシステムレベル1」

ライフェルは攻撃システムを作動させ、ターボ用のダイヤルを1へ回す。ブラックウルフの前部と左右の格納庫からツインスライクスキャン管と、50mm機関銃が表われる。前方からUH−1Jが見えてくる。ヘリには左右にミサイルポッドが取り付けられている。やがてヘリは2機ずつに分かれると、ブラックウルフにミサイルを撃ち始めた。ライフェルはコンパスイメージングレーダーUを見ながらモフェットに声をかけた。

アーラン「熱追跡ミサイル8発」

モフェット「逆噴射だ、40%出力ダウン」

ライフェルは逆噴射のボタンを押し、出力を40%下げる。左右の小型タービンから炎が噴き出し、ブラックウルフのスピードは150ノットまで下がる。モフェットは機体を180度回転させ、ターボ用ポタンを押す。後部のタービンがバンと音を立て、飛行速度が一気に上がり、やがて数秒の間にマッハ1の超音速に到達する。

モフェット「ミサイルまでの距離は?」

アーラン「2000〜3000mまでに伸びた。だが、このままだと全弾命中するぞ」

モフェット「スーパー・サン・バーストを投下しろ!」

ライフェルは手前のパネルにあるS・S・Vのボタンを押した。ブラックウルフの機体、右後部の格納庫が開き、、卵形の弾が落下する。2秒後、弾は光と熱を放ち、引き寄せられるように数発のミサイルがその光に飛び込んでいく。ライフェルはコンパスイメージングレーダーUを見続ける。後方から来ていた数発のミサイルがレーダーから消えた。

アーラン「三発がS・S・Vに命中、残り5発は8秒後に到達する」

モフェット「もう一度S・S・Vを発射しろ!」

アーラン「いや、いい方法がある。冷凍システムを作動する」

モフェット「なんだ、それは?」

アーラン「機体の装甲をマイナス2℃まで下げて、こちらの熱源をシャットアウトする」

モフェット「面白い、早くやれ!」

ライフェルは右奥の冷却システムを押す。ブラックウルフの装甲はマイナス2℃まで下がり、エンジンが停止する。5発の熱追跡ミサイルがブラックウルフに到達するまで後3秒に迫った時、モフェットはサイクリックレバーを押し下げた。ブラックウルフは急激に高度を下げ、放物線を描くように落下し始めた。5発のミサイルはブラックウルフの真上を通り過ぎ、アマゾンの森へ落ち、5つの炎が燃え広がった。ブラックウルフのエンジンが起動し始め、2つのタービンから赤い炎が噴き出した。ブラックウルフは地上すれすれの高度から一気に急上昇した。そのまま180度ターンし、4機のUH−1Jの方へ突進する。前方のヘリが両方のポッドからミサイルを発射した。ライフェルは攻撃システムの「レーザー」のボタンを押した。ブラックウルフの機体の先端に四角いノズルが姿を表わした。モフェットはバイザーを下ろし、ターゲットをロックすると、レーザー用のボタンを押した。四角いノズルから青い光線が飛び出し、光は向かってきたミサイルを貫き、その向こうにいた一機のUH−1Jまでも破壊した。ヘリは爆炎を上げながらアマゾンの森へ落ちる。

ブラックウルフの強さを知った3機のヘリは方向を変え、方々の空へ散らばり立ち去った。モフェットはターボ用ボタンを押し、マッハ1.5で逃げ去る2機のUH−1Jの後を追う。モフッェトは再びターゲットをロックし、トリガーを引いた。ツインスライクスキャン砲から2発の核弾頭が発射され、一機のヘリと、その右後方にいたもう1機のヘリを同時に撃墜した。モフッェトはバイザーを上げ、ライフェルに話し掛けた。

モフェット「さっきのは少しヤバかったな」

アーラン「もう気が済んだか?武器の量のことも少しは考えろ」

モフェット「考えるてるさ。だがこうも敵が弱いと力を持て余すな。このヘリに対抗できるぐらいのヘリでも表われてくれると倒しがいがあるんだがな」

アーラン「このヘリを超えるヘリなどあるわけないだろ。さっさと基地に戻ろう」

モフッェトはターボ用のスイッチを押す。後部の2つのタービンから炎が噴き出すと、ブラックウルフは「カシャーン」と音を鳴らしながら音速で北の空へと消えて行った。

 

PM1:00。オーストラリアに着いたベネズエルとウォルター・クラントは小さなメモを頼りにシドニー内を歩き回っていた。付近の住民からの情報で、アークエンジェルはシドニーから4、5km先の別荘に住んでいる事がわかる。二人は航空業者から民間ヘリを借り、シドニー上空から東海岸へと向かった。二人はある砂浜を見下ろした。そこにはプールつきの小さな白い別荘があった。

二人の乗った民間ヘリは砂浜に下りた。エンジンを停止させると、二人はヘリから降り、砂の上を歩き始めた。別荘につながる階段を上ると、二人は辺りを見回した。白い壁、青いプール、ビーチ用のテーブルにイスが3つ。別荘の屋根は赤茶色のレンガでできている。二人は入口の前へ進み、

ウォルター「こんちは・・・・あの・・・いますか?」

家の中はシーンとしていて人の気配はなかった。ウォルターはベネズエルに話し掛け、

ウォルター「いないみたいだな。もう出ていったのか?」

ベネズエルはテーブルの上を見た。食器が2つ、コップが1つが置かれていた。

ベネズエル「いや、食事をした後だろ。そう遠くには行ってないはずだ」

ウォルター「・・・なぜ遠くに行ってないってわかるんだ?」

ベネズエル「出かけるなら、食器を洗っていくだろ?時間が経つと生臭くなるからな」

ウォルター「それでも平気な奴はいくらでもいるぜ。俺みたいに」

ベネズエル「君は食器を洗わずにいつも出かけるのかね?」

ウォルター「ああ、めんどくさい時は一週間ぐらいはためてる」

ベネズエル「君は早く嫁さんを貰った方がいいぞ」

ウォルター「嫁さん候補は沢山いるがな・・・なかなか決まらなくて」

ベネズエル「そりゃあ羨ましいこった・・・」

二人は外に出て海を見渡す。ベネズエルは遠くの砂浜を歩く人影を目にした。その人物は黒いゴム製のスーツに、白いサーフボードを持っていた。やがて男は二人の前に近づいてきた。年齢は60歳ぐらい、白人男性で髪は真っ白に染まっていた。左眼は黒いゴム製の眼帯で覆われている。ヒゲは口の上だけ生えている。

男「私に何かようかね?」

ウォルターは階段の下まで歩いてきた男に話し掛ける。

ウォルター「俺達はアークエンジェルと言う男を探してるんだ。彼がオーストラリアに住んでると聞いてここまでやってきた」

男は階段を上り、サーフボードを手すりに立てかけた。そして、二人の方に向いた。

男「アークエンジェルは私がCIAにいた頃の名だ」

ベネズエル「あなたがアークエンジェル・・・」

男はアークエンジェルだった。アークエンジェルは続けて彼らに話し掛けた。

アークエンジェル「話をする前に・・・先に服を着替えたいんだが・・・」

アークエンジェルは別荘に入った。ベネズエルとウォルターは外で彼が着替え終わるのを待っていた。

ウォルター「ついに見つけたな」

ベネズエル「ああ、だがこれからが問題だぞ」

ウォルター「問題って?」

ベネズエル「彼に今回の事を、どう説明すべきか・・・」

ウォルター「何を気にしてるんだ?」

ベネズエル「私は言わばその・・・彼の計画を盗み取った男だ・・・彼が素直に我々に協力してくれるかどうか・・・」

ウォルター「あんたらしくないぞ、ベネズエル。とにかく彼に真実を話すしかない」

ウォルターはどこか気弱に見えるベネズエルをなだめていた・・・。

 

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