■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! ■ <前編11> 〜緊急指令〜 別荘の中で着替えを終えたアークエンジェルがベネズエル達の前に姿を表わした。彼は夏シャツに白いズボンを着ていた。 アークエンジェル「そんなところに立ってないで、そこに座ったらどうだ」 アークエンジェルは外に置かれていた木製のテーブルと椅子を指差した。ベネズエルとウォルターは椅子に座った。アークエンジェルも二人と対峙するように椅子に腰掛けた。 ウォルター「いい所ですね」 アークエンジェル「本題に入る前に名前を聞こう。話はその後だ」 ウォルターは顔を強張らせ、緊張気味に話し始めた。 ウォルター「私はウォルター・クラント。元レッドフォール空軍の少佐です」 ベネズエルも一段と低い声で話し出した。 ベネズエル「私はCIA副部長のダークエンジェル・・・今は事情がありましてベネズエルと言う名を使っております」 アークエンジェル「現CIA副部長と元軍人の二人が、いったい私に何の用だね?まさか私をCIAに連れ戻そうなんて気じゃないだろうな」 ベネズエルは額から吹き出る汗を拭いながらアークエンジェルに話し始めた。 ベネズエル「今日ここに来たのは・・・あるものを探すためです・・・それは数十年前にあなたが作ったもので・・・」 アークエンジェル「エアウルフの事か?」 ベネズエル「はい・・・」 アークエンジェル「私が興味あるのは、なぜ君がエアウルフの事を知っているのかと言う事だ。その情報をどこで掴んだ?」 ベネズエル「その話は後程する事にして・・・結論から申しますと、ある兵器の撃墜にエアウルフを使用したいのです・・・」 アークエンジェル「ある兵器?」 ベネズエルは今までの経緯を全てアークエンジェルに打ち明けた。3人は無言になり、アークエンジェルが重い口を開いた時にはすでにPM3時を回っていた。 アークエンジェル「エアウルフ3・ブラックウルフ・・・本当に奴はジョン・モフェットと名乗ったのか?」 ベネズエル「何か心当たりでも?」 アークエンジェル「まさか弟がいるとはな・・・。奴からは何も聞いていなかった」 ベネズエル「奴とは?」 アークエンジェル「エアウルフを開発したチャールズ・H・モフェットのことだ。奴はエアウルフを完成させ、その最初のテスト飛行で自らヘリを操縦した。だがその後、我々がいた管制塔を襲い、奴はエアウルフを奪い去った」 ベネズエル「つまりエアウルフは兄のモフェットが持っているのですか?」 アークエンジェル「いいや、奴は死んだよ。私が派遣した2人のテストパイロットがエアウルフを奪還し、その時彼らがモフェットを殺した。だが今度はそのパイロット達にヘリを奪われてしまってね。何とか彼らと手を取り合いながらエアウルフを利用したが、結局彼らは最後までエアウルフを手放さなかった・・・」 ベネズエル「それではヘリはまだ実存するのですか?そのテストパイロットは今どこに?」 アークエンジェル「もし今彼らが生きているとしても、彼らが君らに手を貸すとは思えん」 ベネズエル「なぜですか?」 アークエンジェルは冗談交じりに喋り出し、 アークエンジェル「年を取りすぎて、もう彼らにヘリを操る事は不可能だからさ」 ベネズエル「緊急に空軍からテストパイロットを派遣して、彼らにエアウルフを操縦させる事も可能ですが・・・」 アークンジェル「冗談だよ、ベネズエル。君がそんな兵器を作り出していたとは正直驚きだよ」 ベネズエル「申し訳ございません・・・あなたの計画は私がCIAに入った直後に知りました。あのヘリを増産すればアメリカ空軍は世界最強になれる。その思いだけを胸にエアウルフ3を完成させてしまったのです」 アークエンジェル「そんなもの作り出さなくとも十分アメリカ空軍は世界最強だと思うがね。どうやら君はとんでもない兵器を作り出してしまったようだな」 ベネズエルは恐縮し、暫く無言になる。それを見たウォルターは、彼の代わりにアークエンジェルに話し掛けた。 ウォルター「ところで、さっき言ったテストパイロットの名前はなんて言うんですか?」 アークエンジェル「・・・1人はストリング・フェロー・ホーク。そして2人目がドミニク・サンティーニ。後もう一人ケイトリン・オシャネシィという女性パイロットがいる」 ウォルター「モフェットは兄を殺した恨みを持ってる。と言う事は、まず最初に彼らの命を狙うんじゃあ?・・・」 アークエンジェル「・・・もし彼がホーク達の事を知れば、間違いなく狙われるに違いない」 ベネズエルが話に割り込み、 ベネズエル「彼らは今どこにいるんです?」 アークエンジェル「アメリカだ」 ベネズエル「なら我々は早く戻って、彼らの命を救わなければなりません。お願いです。できればあなたにもついて来てもらいたい・・・」 アークエンジェル「そのために、ここに来たんだろ?」 ベネズエルの強張って表情が少し綻ぶ。 アークエンジェル「出来るなら、出発するのは明日にしてくれないか?いろいろと準備が必要でね」 ベネズエル「わかりました。それでは・・・」 ベネズエルの会話にアークエンジェルが割って入り、 アークエンジェル「君らは、これで帰るのかね?どうだ、夕食を食べていかないか?」 ベネズエルとウォルターは一瞬顔を合わす。そして、同時にアークエンジェルに顔を向け、二人で一斉に、 「お言葉に甘えて・・・」 PM16:00、ブラックウルフはアメリカ大陸を過ぎ、太平洋に向かって突き進んでいた。海面から400mの高度を320ノットのスピードで飛行していた。 機内のライフェルは格レーダーに目を向けていた。暫くしてレーダーが反応を示し、目の前のモニターに映像が出力される。映像は海面上に浮かぶ黒く長い物体を映し出した。ライフェルはスキャナーで物体を割り出すと、モフェットに話し掛けた。 アーラン「アメリカ海軍、エリック・モリス長官の艦隊だ」 モフェット「種類は?」 アーラン「X9−589空母『セント・マーリンズ』」 モフェット「攻撃用意だ」 アーラン「おい、待てよ。エリックの部隊にまで攻撃を仕掛けるのか?」 モフェット「からかうだけだ。心配するな」 アーラン「・・・・」 ライフェルは攻撃システムを押す。機体左右の50mm機関銃とツインスライクキャノンが表われる。ブラックウルフは低空で空母の前方に近づいていく。ライフェルは妨害装置を使い、レーダーの周波数を変える。ブラックウルフと空母の距離は3000mに迫ると、モフェットはレバーのターボスイッチを親指で押した。機体の後部のツインタービンが点火し、急速に速度が上がる。速度メーターが340ノットを上回り、マッハ1の音速の数値を表示した。空母の管制室では乗組員がレーダーを見つめているが、何の反応もなく、ブラックウルフの存在に気づいていなかった。空母の飛行甲板にはヘリが4機、F−14トムキャットが6機、ハリアー8機が駐機されている。 乗組員の一人が艦首に目を向けた時だった。黒く長いヘリが空母の真下から姿を表わし、急速に高度を上げた。ローターの風がハリケーンのように空母に吹きつける。空母の艦長はレーダーを監視する乗組員に喋りかけた。 艦長「なぜ早くヘリの事を知らせなかった?」 乗組員「レーダーには何も映っていません!」 艦長「何だと?いったいどういうことだ」 乗組員「わかりません。おそらく低空で飛んできたのでレーダーが捕らえきれなかったのでは」 艦長「全員攻撃態勢につけ。全機に緊急出動を発令する!」 それを聞いた他の乗組員達は一斉に慌しく艦内を駆け回り、空母からハリアー全機、F−14トムキャット2機が動き始めた。トムキャットは甲板を飛び立ち、ハリアーは胴体中央のジェットエンジンの向きを変え、自らの機体を垂直に浮き上がらせ、ある程度の高度に達すると、ブラックウルフに向かって水平飛行を始めた。 ライフェルはコンピュータのコンパスイメージングレーダーUを起動させ、モフェットに話し掛けた。 アーラン「モフェット、こりゃあ偉い事だぞ。母艦の戦闘機10機が一斉にこちらに向かってくる」 モフェット「弾数の残量はいくらある?」 アーラン「どうする気だ?」 モフェット「私の質問に答えろ!」 アーラン「・・・50mm機関砲80%、ツインスライクキャノン弾20%、レーザー65%・・・」 モフェット「ターボをレベル2に上げろ。先に空母を攻撃する」 アーラン「からかうだけじゃなかったのか?正気か?おまえ・・・」 モフェットは高笑いすると、すぐさまライフェルに話しかけ、 モフェット「こんなことを恐れていてどうする?本当の敵を相手にする時はもっと数多くの兵器と迎え撃たなければならんのだぞ、ライフェル」 アーランは言葉を失い、モフェットの指示通りにターボのレベルを2に上げた・・・。 |
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