■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<後編2> 〜闇の戦闘機〜

 

夜の大西洋の上空、高度5000mで飛行する1機のヘリ。前方面から見ると、それはまるで狼のような形をしている。ローターの下にある左右の空気口は狼の耳に見え、鋭く伸びた先端部は狼の鼻に見える。その機体こそ正しくエアウルフV・ブラックウルフである。ヘリの操縦席にはジョン・モフェットが座り、後の席にはフライトシステムを操作するアーラン・ライフェル将軍がいる。ライフェルがモフェットに話し掛けた。

アーラン「なぜわざわざ夜に飛行をするんだ?」

モフェット「兄の友人に会いに行く」

アーラン「兄の友人?」

モフェット「リビアの夏の宮殿にいる、カマル・ラー少佐にな」

アーラン「・・・リビアへ行くのか?アメリカと敵どうしの国だな」

モフェット「彼らなら喜んで我々を向かい入れてくれるはずだ」

アーラン「大統領は約束どおりブラックウルフ用の武器を渡したし、もはや俺達はアメリカのお尋ね者だし、丁度良かったな・・・」

ライフェルが話している途中で、モフェットが口を挟む。

モフェット「ターボセット・レベル1だ」

アーラン「・・・」

ライフェルは言われたままに、ターボ用のダイヤルを1に回した。

アーラン「ターボセットオン・レベル1スタンバイ!」

モフッェトは右手のレバーに付くターボシステムボタンを親指で押す。後部のタービンがバンッと音を鳴らし、ヘリは加速する。マッハ1のスピードで夜空を翔けぬけ、機体にバキャンと強い風を叩きつかせながらアフリカへ向かった。

 

同じ頃、リビア北部の軍地・夏の宮殿にカマル・ラーがいた。年齢は40ぐらいで肌は黒く、茶色の軍服を着た軍人である。彼が今いる場所は宮殿内のレーダー室であり、部屋の周囲にはレーダーとコンピュータが置かれている。数人の軍人が各場所についている。カマル・ラーはレーダー監視の担当員に話し掛けた。

カマル「レーダーに反応はないか?」

担当員「今のところは異常ありません」

カマル「気を抜くなよ」

カマルがその場を離れようとした時、担当員が呼び止める。

担当員「カマル大佐、来てください!」

カマル「どうした?」

担当員「謎の機体がこちらに向かっています」

カマル「速度は?」

担当員「音速マッハ1.6。機種はヘリです」

カマル「音速のヘリ・・・まさか・・・」

カマル・ラーはその場を後にし、外へ向かって走り出した。広場に出ると、彼は上を見上げた。その上空にはあのブラックウルフが彼の真上を舞っていた。カマルの手下の軍兵達がヘリに銃を向け発砲し始めた。

十数人の軍兵達の発砲音は宮殿内にまで鳴り響いた。弾はブラックウルフに当たっているが、次々と跳ね返されている。ヘリの装甲性とその形を見て何かを察したカマル・ラーは軍兵達に声を上げた。

カマル「銃撃を止めろ!何もするな」

軍兵達は銃を下ろした。上空をホバリングし続けていたブラックウルフは引き込み型のタイヤを3つ出しながら広場の下に着地した。暫くしてヘリのエンジンが停止し、扉が上下にスライドして開いた。中からモフェットとライフェルがヘルメットをつけたまま姿を表わし、外に出るとカマル・ラーの前に立ち止まった。軍兵達は二人に銃を向けるがカマル・ラーは彼らに銃を下ろさせ、二人に話し掛けた。

カマル「何者だ?」

モフェット「私だよ、カマル少佐」

モフェットはヘルメットを両手で持ち上げ彼に顔を見せる。カマルはその顔を見て驚きの声を上げた。

カマル「モ、モフェット博士・・・いや似ているが違うな・・・」

モフェット「私はチャールズ・ヘンリー・モフェットの弟でジョンだ」

カマル「弟?・・・ああ、前にあった事があるな。確か君がまだ18の時、兄貴と一緒にここへ1度・・・」

モフェット「随分老けたな少佐」

カマル「今は大佐だ。ところで隣の人物は?・・・」

モフェット「ライフェル、いつまでヘルメットをしている・・・」

ライフェルはヘルメットを取り、顔を出した。そしてカマルがモフッェトに話し掛けた。

カマル「アメリカ人か?」

モフェット「空軍長官のアーラン・ライフェル将軍だ」

カマル「後ろの黒くて長いヘリは・・・前に見た事があるな・・・モフェット博士が作ったエアウルフと同じものに見えるが・・・」

モフェット「こいつはCIAが作り出した物だ。名前はエアウルフV、コードネームはブラックウルフ」

カマル「ブラックウルフ・・・まるで狼の顔だな・・・君達を私の宮殿を案内しよう」

モフッェト「彼もいいか?」

カマル「モフェット博士の弟なら歓迎だ。その友人もな」

モフッェトとライフェルはカマル・ラーに連れられ宮殿内へ向かった。ブラックウルフの機体に月の光が青黒く映し出されていた。

 

PM8:00。ホークの山小屋ではウォルターとアークエンジェル、そしてホークの三人が遅い夕食をとっていた。夕食の料理はホークが湖で取ったマスの魚と野菜サラダ、赤いワインである。三人は黙々と食事を進め、会話はなく重い空気が漂っていた。やがて、夕食を終えたアークエンジェルがホークに話し掛けた時はPM22:00を過ぎていた。

アークエンジェル「ところで・・・ドミニクは元気にしているか?」

ホークはその言葉に反応して深刻な表情を浮かべアークエンジェルを見つめた。

ホーク「死んだよ。数年前にサンティーニ航空で彼の乗ったヘリが爆発したんだ」

アークエンジェル「死んだ?あのドミニクが?」

ホーク「ヘリに爆弾が仕掛けられていたんだ。あんたはその時すでにCIAを辞めていたから知らんだろうがな」

アークエンジェル「・・・悪かった。何も知らずに」

ホーク「ああ、だがまたあんたに会えて嬉しいよ、マイケル」

アークエンジェル「やっと名前を呼んでくれたな、ホーク」

ホークとアークエンジェルは初めて心が通じ合った友人のような素振りで顔を合わせ、談笑を始めた。その光景を見つめていたウォルターは死んだ友人のフェリック・モーランとアルフレッド・キルメルのことを考えながら、立ち上がると、小屋の外のベランダへと出て行った。ウォルターは右手に酒の入ったグラスを持ち、湖を見回しながらこう呟いた。

ウォルター「あの時俺がいたら、二人を助ける事ができたんだろうか・・・」

ウォルターの頭の中に、地の海の中で死んでいった二人の光景が浮かんでいた。彼はベランダの手摺に腕を置き、月を見ながら酒を飲んだ。すると、奥の方からホークの声がした。

ホーク「そんな所にいたら風邪を引くぞ」

ホークは小屋から出て来てウォルターの背中に近づいた。ウォルターはホークを見つめ、話し掛けた。

ウォルター「俺には両親も兄弟もいない。全員死んだから。友人だった二人も死んであなたと同じ一匹狼になったよ・・・」

ホーク「酔ってるのか?」

ウォルター「酔ってなんかない・・・酔ってなんか・・・」

ウォルターは手摺に背中をもたれさせ肩を落とした。

ホーク「ああ、俺とおまえは同じ人生を歩んでいる。だが、おまえはいつまでも一匹狼でいることはないんだ」

ウォルターは薄赤い顔でホークに話し掛けた。

ウォルター「俺は友人を助ける事ができなかった。最低な男だ俺は・・・」

ホーク「・・・アークエンジェルに聞いた。俺も友人が目の前で死んでいくのは全て自分のせいだと思ってきた。ドミニクを助けられなかった事で今も自分を責め続けている。だが、おまえはまだ若い。おまえにはまだ誰かを救える力がある」

ウォルター「・・・」

ホークはウォルターの肩を掴み、小屋の中へ彼を連れて行き、ソファーに寝かせた。暖炉の前のイスに座っていたアークエンジェルがホークに話し掛けた。

アークエンジェル「ホーク、彼をサポートしてやってくれないか?」

ホーク「俺はもう腕が劣ってる。ジョンに操縦させればいい」

アークエンジェル「ジョン?」

ホーク「帰ってきたんだベトナムから。兄のセント・ジョンだ」

アークエンジェル「生きていたのか?今どこにいるんだ?」

ホーク「俺達に引き継いでエアウルフを使っている」

アークエンジェル「そうか・・・そうだったのか・・・」

ホーク「明日彼をサンティーニ航空へ連れて行く」

アークエンジェル「私もベネズエルのいるCIAに行ってみる事にするよ。彼一人では心配だからな」

ホーク「わかった。裏に俺のヘリがあるからそれで行こう」

アークエンジェル「ああ・・・」

ホークは2階へ上り、ベッドへ向かった。その晩、辺りの山に生息する狼達の鳴き声が夜空に響き渡った。

 

AM2:00。リビアの夏の宮殿、カマル・ラー大佐の部屋にモフェットとライフェルがいた。カマルは二人にウィスキーの瓶とコップを渡しながら話し掛けた。

カマル「私がアメリカ人をもてなしたのは君達で5人目だ」

モフェット「5人?」

カマル「君の兄のモフェット博士と彼が連れてきた2人のパイロット・・・そして君達だ。ところでこんな砂漠地帯に何の用があって来たのかね?」

モフェット「私の目的は兄を殺した奴を見つけ復讐する事だ。カマル大佐、兄貴がエアウルフでここへ逃げ込んできた時の事を覚えているか?」

カマル「もう10数年前の話だからな・・・待てよ」

モフェット「何か思い出したか?」

カマル「その時、2人のアメリカ人がここへ乗り込んできて、エアウルフを奪い取ろうした。その一人に私は顔を殴られてな・・・」

アーラン「そのアメリカ人達がエアウルフを操縦できたって事は、奴らは軍人だったはずだ」

モフッェト「他に何か覚えている事はないか?」

カマル「さぁな、後の事は私にもよくわからんよ」

アーラン「大佐、どこかにパソコンはあるか?」

カマル「何をする気だ?」

アーラン「パソコンをブラックウルフにつないで、軍のサーバーにアクセスする。そして、過去の軍関係者のリストを検索する」

カマル「危険すぎやしないか?」

アーラン「心配ない。こちらのルートがたどられぬよう、ブラックウルフが特殊な信号を送り出すシステムになっている」

モフェット「ライフェル、調べはおまえに任せるぞ」

カマル「博士が亡くなる前に我々にビッグなプレゼントをしてくれてな。それが今も地下に眠ったままになっている」

モフェット「プレゼント?なんだそれは?」

カマル「クロウだよ」

モフェット「クロウ?鳥の名前か?」

カマル「ステルス戦闘機を改造したもので、全部で5機ある。だが完成しているのはそのうちの2機だけでまだ1度も使った事がないんだ。操縦の仕方を教わる前に彼が死んでしまったのでな。良かったら見せてやろうか?」

三人は宮殿の地下へ通じる階段を下り、暗い闇の中を突き進んでいた。下に着くとカマルは左の壁の電源レバーを上げた。天井のライトが光ると、そこには並列に置かれた鳥のような形をしている不気味な戦闘機が5機姿を表わした。モフェットとライフェルはその機体を見て驚いた。

カマル「君の兄貴は正しく天才だ。数年でこれだけのものを設計し、完成させたのだからな。だが彼が死んでからここは閉鎖し、誰も近づくことはなかった」

ライフェルは機体に触れながらカマルに話し掛けた。

アーラン「何十年もほっといたわりに、錆一つもない」

カマル「私も驚いてるんだ。博士は死ぬ前にこの兵器に名前をつけた。コードネームは『エアークロウ』だ」

アーラン「エアークロウか・・・まるで大きな鷲そのものだ・・・」

モフェットはカマルを見ながら話し掛けた。

モフェット「ところで使える機体はどれなんだ?」

カマル「右側にある2機だけだが・・・少し問題があってな・・・」

モフェット「問題?何だそれは?」

カマル「博士の話によると、エアークロウは高性能の戦闘機で、ステルスF−117ナイトホークを上回る最高速度マッハ2で飛行する事が可能だが、その際には可変ウイングとターボ点火を同時で起動させなければならないと言っていた。問題なのは、そのコンピュータシステムで、飛行時にそれをやると、機能停止状態に陥ってしまうんだ」

モフェット「つまりコンピュータのプログラムミスが残っていると言う事だな。だったら自分達で書き換えればいいじゃないか」

カマル「博士は自分以外にコンピュータが触れないよう、パスワードを全機に仕掛けたんだ。それでもし3回パスワードを間違えると、機体は完全に使用不能になってしまう」

モフェット「パスワードか・・・兄のやりそうな事だ」

アーラン「コンピュータなら私に任せろ。パスワードぐらい解いてみせる」

カマル「3回間違えたらオジャンだぞ」

アーラン「だったらどうすればいい?」

カマル「博士が昔使っていた部屋にクロウの設計図があるはずだ・・・後で探してみよう」

モフェット「なら、その設計図が見つかるまで・・・ライフェル、おまえはリストの検索を開始しろ」

カマル「ところでジョン・・・一つお願いがある」

モフェット「何だ?大佐」

カマル「私は博士のエアウルフを見たことがあるが、乗った事がない。君が乗ってきたあのブラックウルフに私を乗せてもらえないか?」

モフェットは笑いながら答え、

モフェット「お安い御用だ、いいだろう。但し条件がある。この2機のクロウをブラックウルフの後衛部隊にしたい」

カマル「この機体は元々君の兄のものだからな、自由にしてくれ。だが、全てが動くようになったら我々にも使わせてくれ」

モフェット「わかった」

三人はクロウを見届けた後、階段を上りその場を後にした。

 

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