■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! ■ <後編3> 〜ブラックウルフVSミラージュ〜 翌朝、AM7:30。ホークの山荘にいた三人は小屋の裏にあるヘリ置き場へ向かった。ホークはヘリに被せていたネットを取り払い、中に乗り込むとエンジンを動かした。後からウォルターとアークエンジェルも乗り込んだ。操縦席に座るホークの隣にウォルター、そして後ろの座席にアークエンジェルが座った。ローターとテールローターが勢い良く回転すると、ホークはゆっくりと左手のレバーを引き、ヘリを浮かび上がらせた。機体はみるみる上昇し、林の中から上空へ姿を表わすと、湖の方に向かって飛行を始めた。 飛び始めてから1時間余り経った頃、ヘリは、ある飛行場にたどりつき着地した。その工場の倉庫に掲げられた看板にはアメリカ国旗の模様を背景に「SANTINI AIR」と言う文字が書かれている。ヘリのエンジンが止まると、中から三人が下りて工場の方に向かって歩き出した。倉庫から一人の青年が姿を表わす。年齢は20代ぐらいで灰色の作業着と赤い帽子を身につけている。青年はホーク達に近づいていき、話し始めた。 青年「やぁ、ホークさん。どうしたんです?今日は休みのはずじゃ・・・」 ホーク「ちょっと用があってな。ところでその帽子はドミニクのものじゃないか。どうしてもそんなものつけてるんだ?」 青年「これをつけてるとドミニクさんがいつもそばにいるような気がして・・・。あの時の罪滅ぼしにいつも被る事にしてるんです。ところでその二人は?」 ホーク「ウォルター・クラントとアークエンジェルだ」 青年は二人の前に立ち、自己紹介を始めた。 青年「ああ・・・ケビンです。ケビン・オルディン。ここで働いてる者です。よろしく」 ウォルター「よろしく」 ホーク「ケビン、悪いがアークエンジェルをCIAまで連れて行ってくれないか?」 ケビン「ええ、いいですよ。ホークさんの頼みなら。それでそのCIAってどこにあるんです?」 ホーク「アークエンジェルが知ってるから彼の言う通りに飛ばすんだ。昔みたいに派手な操縦を見せつけるんじゃないぞ」 ケビン「わかってますよ。じゃあ、アークエンジェルさん。行きましょうか」 ケビンとアークエンジェルはホークのヘリに乗り込むとエンジンを起動させ飛び上がり、CIAへと向かって行った。 ホークとウォルターは工場へ入った。中は広々としている。目の前に駐機されていた数機のヘリがウォルターの目に止まった。 ウォルター「凄い数のヘリだな」 ホーク「すべてドミニクの愛用のヘリだった」 ウォルター「ホークさんのはあるんですか?」 ホーク「ここにある3分の1は俺が使っているものだ」 ウォルター「それでここで俺は何をすればいいんです?・・・」 ホーク「社長が帰ってくるまでは何もする事ないし・・・そうだ、ウォルター、ここで働かないか?どうせ軍を辞めて何もする事がないんだろ?」 ウォルターは少し困惑した表情を浮かべ、 ウォルター「いきなり言われても・・・」 ホーク「軍にいたんだからヘリの操縦や整備ぐらい朝飯前だろ?」 ウォルター「まぁ、できない事はないですが・・・」 ホーク「うちは他より給料が高いぞ。飯は付いてるし、ビールは何杯飲んでもおかわり自由だ。休日は週2回。映画の撮影現場で有名人にだって会えるんだぞ」 ウォルター「撮影現場って・・・スタントもやるんですか?」 ホーク「ああ、そうだ。CM撮影じゃあ、主役にだってなれる。もちろん、その主役とはヘリの事だけどな・・・」 ウォルター「面白そうですね。やりましょう」 ホーク「じゃあ決まりだ。さっそくで悪いがここの清掃をしてくれないか?作業着は奥のロッカーにあるからどれでも使ってくれ」 ウォルター「わかった」 AM9:00。CIA本部の副部長室にいたベネズエルは机の引き出しを開け、中からエアウルフの設計図を取り出していた。入口の扉が静かに開き、軍服を着た一人の男がベネズエルの前に姿を表した。ベネズエルは机の上に設計図を置き、男に話し掛けた。 ベネズエル「これは、これは、エリック・モリス長官。一体何の用です?」 海軍長官エリック・モリスは激しく怒りに満ちた表情で声を上げた。 エリック「ダークエンジェル、君は我々に何か恨みでもあるのかね?」 ベネズエル「と、申しますと?」 エリックは服の中に手を入れ、一枚の写真を取り出した。それにはあのブラックウルフが映っていた。ベネズエルは何も言い出せず寡黙にうつむいた。 エリック「これは君の作った戦闘ヘリ・ブラックウルフだったな。どういう事か説明してもらおうか?」 ベネズエル「・・・実は、そのヘリは数日前に盗まれたのです」 エリック「盗まれただと?」 ベネズエル「第2テストの際に、パイロットが入れ代わっていたもので・・・」 エリック「これは大変な事態だぞ。君はその事を認識しているのかね?私は早急にこの事を委員会に報告する」 ベネズエル「それは困ります。ブラックウルフはトップシークレットになっているんです。もう少し待ってもらえませんか?」 エリック「あのヘリの攻撃で我が軍はかなりのダメージを受けた。ハリアーにF−14は全滅し、そして私の『セント・マリーンズ』はズタボロだ」 ベネズエル「・・・」 エリック「今日中にブラックウルフを撃墜しろ。さもなければ委員会に全てを報告し、君を副長官の地位から引き摺り下ろす。いいな」 ベネズエル「・・・」 エリックはその場を立ち去リ入口に向かう。入れ代わりにアークエンジェルが部屋の中にやって来た。 アークエンジェル「大変な事になったな・・・」 ベネズエル「ああ」 アークエンジェル「それで・・・本当にブラックウルフと戦えるヘリと言うのは存在するのか?」 ベネズエル「あるが、私一人ではどうしようもない。短時間でプログラムを組むには無理がある」 アークエンジェル「じゃあ、私が手を貸そう」 ベネズエル「あなたが?」 アークエンジェル「エアウルフの事はよく知っている。少しぐらいは協力できるだろう」 ベネズエル「それはありがたい」 アークエンジェル「それで、そのヘリの場所は?」 ベネズエル「フロリダの地下施設レベル1に保管されていると思うんだが・・・とにかく行ってみましょう」 ベネズエルは机に置いた設計図を手に取り、アークエンジェルと共に部屋を後にした。 時同じくサンティーニ航空。清掃を終わらしたウォルターがヘリを整備しているホークの元に駆け寄っていた。ホークはヘリのエンジンをいじりながらウォルターに話し掛けた。 ホーク「掃除が終わったなら休んでもいいぞ」 ウォルター「ドミニクさんってどんな人だったんですか?」 ホークはヘリのエンジンをいじるのをやめ、ウォルターの方に顔を向けながら喋り出した。 ホーク「俺の親代わりをしてくれた人だった。とても気さくでいい奴だった」 ホークは手にべっとりついた油をタオルで拭き落とした。それを見ながらウォルターは話しを続けた。 ウォルター「僕も親友を亡くしたばかりで、その事が頭から離れません」 ホーク「俺も昔はそうだった。だがな、いつまでも死んだ奴の事を気にしても、死人が生き返るわけじゃなかろう」 ウォルター「・・・」 ホーク、さりげなくズボンのポケットに手を入れ、コインを取り出すと、ウォルターに手渡し、 ホーク「何か飲み物でも買ってこいよ。ケビンの分もな」 ウォルターは考え深げな表情で外へ向かって歩き始めた。ホークはウォルターの背中を悲しげに見つめていた。 AM10:30。アフリカ上空。高度6000mの空にブラックウルフが浮かんでいた。ブラックウルフは北ヨーロッパの方角に向いて飛行し続けていた。機内には三人のパイロット達がいた。ジョン・モフェット、アーラン・ライフェル、そしてモフッェトの隣にはカマル大佐が座っていた。 モフッェト「ブラックウルフの乗り心地はどうだね?カマル大佐」 カマル「悪くはないが、このヘルメットが少し重いのが気がかりだ。エアウルフVは世界最強のヘリと聞いたが、もしそれが本当なら、その強さをこの目で見てみたいものだ」 モフェット「我々はもう何度も戦い、それを実証したよ」 カマル「ヨーロッパには何しに行くんだ?エッフェル塔でも破壊するのかね?」 モフェットはカマルを見ながら笑い出し、 モフェット「ジョークがうまいな。別に破壊しに行ってやってもいいぞ。スケジュールが空いてる時にな。ついでにイギリスのビックベンもやるか?」 二人の会話に口を挟むようにライフェルが声を上げ、 アーラン「エッフェル塔は世界遺産だ。壊すなんてとんでもないぞ」 モフェット「冗談だ。本気にするな」 ライフェルはターボ用のダイヤルを1に合わせモフェットに声をかけた。 アーラン「ターボ作動、レベル1」 モフェットは右手に持つサイクリック・ピッチレバーのターボ用スイッチを親指で押す。ブラックウルフの後部にある左右のタービンから赤い炎がバァンと音を立てながら噴き上がる。ブラックウルフは音速マッハ1.5のスピードを出しながら、ヨーロッパへ向かった。 ライフェルは目の前のシステムコンピュータに設置されているレーダーを見つめる。 アーラン「レーダーに何か見えた。機種は戦闘機ミラージュ。速度300ノット、10時方向からだ」 モフェット「攻撃用意。距離と高度を割り出せ」 アーラン「距離は4000m。高度6000m上空。全4機」 ライフェルは攻撃スイッチを押す。機体の左右に設置された50mm機関砲と先端のツインスライクスキャン管が姿を表わした。 ミラージュとの距離が2000mぐらいになった時、モフェットはヘルメットのバイザーを下ろした。ヘルメットに装備された3つのカメラのうち、上部に取り付けられたカメラを作動させた。このカメラはブラックウルフから前方1万kmの先の映像を右目に取り付けられた小型ディスプレイで見ることができる。 モフェットはそのカメラを使い、敵を視認した後、コントロールレバーのトリガーを引いた。すると前方のキャノン管からミサイル2発を発射され、ミラージュに向かって飛び出した。ライフェルはレーダーでミラージュとミサイルの距離を確認していた。レーダーに映る1機のミラージュと2発のミサイルが重なった瞬間、ブラックウルフの前方で爆炎が広がった。 残り3機になったミラージュがこちらに向かってくるのをレーダーで確認したライフェルはモフェットに声をかけた。 アーラン「残り3機のミラージュが接近中」 モフェット「もはや妨害装置は無効だ。レーザーを作動しろ」 カマル「レーザー?」 モフッェト「さぁ、大佐。ここからが本番だ。ブラックウルフの強さをとくとお見せしよう」 ライフェルは攻撃スイッチの『LASER』を押し、作動させる。ブラックウルフ前方のパーツが浮き上がり、その中から四角いノズル管が姿を表わした。 アーラン「レーザー作動。100%使用可能」 ブラックウルフはスピードを上げミラージュに接近する。前方に見えたミラージュはブラックウルフを捉え、ミサイルを発射した。3発のミサイルがブラックウルフに近づいてきた。 アーラン「熱追跡ミサイル全3発。10秒後に命中する確立は75%」 モフッェト「スーパーサンバースト弾投下、ターボレベル2」 ライフェルはターボ用のダイヤルを1から2へ回し、スーパーサンバーストのスイッチを押した。ブラックウルフの後部から卵型の弾が飛び出した後、モフェットはレバーを上に持ち上げた。ブラックウルフの角度は60度にまで傾いた時、モフッェトはレバーのターボスイッチを親指で押した。後部のタービンがレベル1の時よりも激しく炎が噴き出し、機体のスピードはマッハ2から3を超えた。落下した卵形の弾は酸素を取り込み、中の装置が作動を始めた。やがてその弾は強い熱と光を発生し、ミサイルはそれに向かって突っ込んだ。3発のミサイルのうち、1発はスーパーサンバーストに当たり、残りの2発はブラックウルフに直進していた。 モフェットはミラージュ戦闘機に向かってレーザー発射した。前方のノズル管から青白い光が飛び出し、急激な速さで1機のミラージュに当たった。光を受けたミラージュは瞬く間に爆発を起こし、赤い炎を燃え上がらせた。ブラックウルフはその炎の中に飛び込み、爆炎を通り抜けた。残りの2機のミラージュはブラックウルフに再度ミサイルを発射した。 アーラン「5時方向より熱追跡ミサイル4発。スーパーサンバーストは無効」 モフェット「到達までの時間と距離は?」 アーラン「15秒。距離は4800・・・」 4発のミサイルがブラックウルフの後方に迫る。モフッェトは機体をUターンさせ、ミサイルに向かってレーザーを発射した。ブラックウルフ先端に装備されたノズル管から出されたレーザーが分散し、近づいてきたミサイル全てを貫いた。ブラックウルフはそれをあざ笑うかのように機体を上下左右に激しく揺らしながら、爆発したミサイルのそばをすり抜けた。2機のミラージュはブラックウルフのレーザー銃の威力を恐れて逃げ去った。 カマルはモフッェトに話し掛けた。 カマル「確かに世界最強と言える破壊力はあるようだが、2機のミラージュを逃したのは残念だな。わざとかね?」 モフェット「雑魚相手に無駄な戦闘力を使う必要はないだろう。大佐はまだブラックウルフの強さを理解されていないようだ」 カマル「そんな事はない。このヘリの強さを十分に味合わせてもらった」 モフッェト「いずれまた、お見せする事にしよう」 ブラックウルフは大空を舞いながらタービンを噴射させヨーロッパの方角へ飛び去っていった。 |
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