■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<後編7> 〜死の谷『デス・ヴァレー』〜

 

翌日AM9:00。4人は白いジープに乗り、サンティーニ航空を後にした。始めは街の道路を進んでいたが、次第に郊外の深い森へと入っていた。日の当たらない、じめじめした人工的でない田舎道を進んで一時間。4人の乗るジープはある軍基地に辿りついた。ホークは基地の前にジープを止め、4人は車から降りた。

軍基地はボロボロの廃墟となっていた。窓ガラスは割れ、草も高く生い茂っている。基地の周囲を取り囲むフェンスには『外部のものは立ち入り禁止』とその下に『2万ボルトの高電流』と書かれた警告板が立てかけられていた。

マークは足元の小枝を拾い上げ、フェンスに投げた。しかし、何の反応もなく、小枝は下へ落ちた。ウォルターは基地の名前の書かれた看板を見て、3人に話し掛けた。

ウォルター「ブルーイーグルって10数年前に取り壊されたって聞いていたが、まさか残っていたとはな・・・」

ホークはウォルターに説明を始めた。

ホーク「ウォルター、ここがエアウルフの新しい基地だ」

ウォルター「新しい基地って、ホークさんが持っているあのエアウルフの基地?」

ホーク「俺達の基地じゃない。おまえの基地だ」

ウォルター「俺の基地?」

セント・ジョンが喋り出した。

ジョン「とにかく中に入ってみるか?」

ジョンはジープから太く長いペンチを取り出し、それを持ち鍵のかかった扉の前に行った。鍵は茶色く変色し、鎖も錆だらけだった。ジョンはペンチで鍵の鎖を切り落とし、扉を前に引いた。4人は中へ入り始めた。

ホーク「ウォルター、こんな事を言うのは何だが・・・もし今回の事が終わったら、新型エアウルフをおまえの手で保管してくれないか?」

ウォルター「俺が?」

ホーク「アークエンジェルはお前を新型エアウルフのパイロットにしたいと考えている」

ウォルター「俺が・・・エアウルフのパイロット?」

2人の話が終わった時、ジョンとマークは、ジープから発電機を持ち出し、手前に見える車庫のような場所へそれを運んだ。ケーブルをつなぎ、その場所の電源ケーブルにそれを取り付けた。ジョンは発電機の電源用ワイヤーを強く引いた。発電機はガタガタと音を立て、動き出した。その場所の右側にある電源ランプが点滅し、シャッターが上へと上がり始めた。4人はその内部に目をやる。その奥に見えるのは深く暗い地下トンネル。車一台が入れるスペースだった。マークはその内部の右側の壁にある電源ボックスを開き、中にあるブレーカーを上へ押し上げた。周囲のいたる所から光が明るく照り出し、地下トンネルの地面にも滑走路のように光が輝き始めた。

4人はジープに乗り、その地下内部へ進んだ。地下の道は限りなく続き、約3分くらいで突き当たりに到着した。4人は車から降りて、周囲を見回すと、広い空間を歩き出した。マークは周辺に設置されていたコンピュータを起動させた。天井の屋根がギーと音を立てながら左右に大きく開いた。明るい陽射しが地下内部を僅かに差し込んだ。ウォルターは天を見つめながら話し出した。

ウォルター「よくこんなところ見つけたな・・・。10数年前から使われていなかったのに電気もちゃんと点くなんて・・・」

マークはウォルターに向かって言った。

マーク「確かに地上は電気が通ってないが、ここは4年前に作られた場所なんだ」

ウォルター「どう言う事だ?」

マーク「ここは昔、秘密探査部隊が使っていた場所なんだ。だが、部隊は解散し、使用価値を失って、封鎖されていたんだ」

ウォルター「しかし、本当に大丈夫なのか?万が一政府に見つかったら・・・」

マーク「心配ご無用。電話線や電線は切れているし、地下だと電波は届かない」

ジョンが3人に向って喋り出した。

ジョン「さぁ、見学は終わりだ。例の基地で人を待たせてあるんだ・・・」

4人はジープに乗り込み、地下を後にした。

 

AM11:00。北アフリカ上空、高度4000kmにモフェット、ライフェル、カマル乗ったブラックウルフが飛行していた。その左右にはエアクロウがついて飛行していた。エアクロウを操縦するのはリビア軍の優秀なパイロットである。彼らはカマルの命令を受け、エアクロウの専属のパイロットになったのだ。

レーダーに目を通したライフェルは次にモニターで周囲の風景を見た。暫くしてレーダーに反応が起き始め、ライフェルはそれを確認した。

アーラン「ミグが表われた。全部で3機。高度5000km、12時方向だ」

モフェット「速度は?」

アーラン「マッハ0.84だ」

モフェット「攻撃準備、トライアングル作戦を始める」

カマル「トライアングル作戦とは?」

モフェット「ライフェル、説明してやってくれないか」

ライフェルはコンピュータを使い、二人の前にあるモニターに画像を映し出した。画像は三角形の図面を描いている。

アーラン「我々空軍の戦法の一つだ」

カマルは画像を見た後、モフェットに言った。

カマル「この3方向からミサイルで敵を狙い撃ちするのか?」

モフェット「そう言う事だ。ライフェル、クロウを目標地点に移動させろ」

ライフェルは右側のパネルにある攻撃システムのボタンを押す。ブラックウルフの左右の部分から50mmチェーンガンが表われ、ヘリの先端からはツインスライクスキャンが伸びる。

2機のエアクロウはライフェルの命令を受け、ブラックウルフを追い抜き、先を急いだ。ブラックウルフはスピードを弱め、低速で飛行し始めた。モフェットはライフェルに話し掛けた。

モフェット「敵との距離は?」

アーラン「約4から5kmだが・・・」

モフェット「正確に言え!」

アーラン「4.7km・・・」

モフッェト「速度は?」

アーラン「マッハ0.84。まだ向こうには気づかれていない」

モフッェト「クロウは目標地点に到着したか?」

アーラン「まだだ。後3分はかかる」

3機のミグは目標地点となるところへ近づいている。そして2分後、エアクロウからの通信が入りパイロットAの声が鳴り響いた。

パイロットA「こちらエアクロウ01。作戦準備完了」

エアクロウ02のパイロットBから通信が入る。

パイロットB「エアクロウ02、同じく準備完了」

モフェットは右側にある操作レバーを前に押し出し、機体のスピードを上げ3機のミグに向い始めた。320ノットにスピードを上げたブラックウルフの空気口は風の気流により音が鳴り、高い雄叫びを上げた。その姿はまさに獲物を追う狼のようだった。

モフッェトは左手でヘルメットのバイザーボタンを押した。バイザーはシャーと音を出しながら下がり、目標を狙うためのロックサイト用レーダーがバイザーに映し出された。ライフェルの右側のパネルに設置されている計機レーダーには敵の攻撃武装や機種が映し出されていた。敵はまだブラックウルフに気づいておらず、前進し続けている。モフェットは2機のエアクロウに指示する。

モフェット「攻撃用意!」

それを聞いたエアクロウのパイロット達は武器システムを動かした。エアクロウの機体の下から3つのキャノン管が表われる。そのキャノン管はエアウルフと同じものであり、核弾頭ミサイルがセットされている。

ブラックウルフと2機のエアクロウは標的にキャノン管を向け、3機のパイロット達は一斉にトリガーを引いた。ブラックウルフのツインスライクスキャン管から2発のミサイルが炎を上げながら飛び出した。ミサイルはらせん状に回りながらミグに向った。2機のエアクロウから発射されたミサイルと合わせて4発のミサイルは3機のミグに向っていた。レーダーの画面には4発のミサイルの信号がミグの信号と重なった。ミグは爆発し、赤い炎を上げ燃え広がった。

空に黒い煙が広がった。レーダーから全ての信号が消えていた。モフェットはエアクロウのパイロット達に声をかけた。

モフェット「作戦完了。先に宮殿に戻れ」

モフェットは左手でヘルメットのバイザーボタンを押した。バイザーが上がり、モフェットの顔が露わになった。カマル大佐はモフッェトに喋り掛けた。

カマル「実に見事だった。ミグを全滅させるとはさすがだな」

モフェット「君の選んだパイロット達もいい腕をしている。残りの三人も早急に見つけ出してくれ」

カマル「わかったよ、博士・・・」

モフェット「博士?・・・」

カマル「いや、何でもない」

モフェット「・・・」

ブラックウルフはターボを噴射させ夏の宮殿に戻って行った。

 

PM1:30。 ホーク達4人の乗るジープはアメリカ西部グランド・キャニオン・モニュメントバレーに来ていた。グランドキャニオンは空にはまったく雲などなく、広大な砂漠と深い谷間が広がる場所である。モニュメントバレーは芸術とも言うべき自然に作り出された高い岩山が連なっている。手の形をした高く伸びたものなど、様々な岩山が存在している。

ホーク達はその岩山の下を通っていた。道とも言えない涸れた大地の上を、砂煙を巻き上げながらジープは進んでいた。その途中、4人は日影の場所で食事をとり、その一時間後、また出発した。

ジープの後の席に座っていたウォルターはあるカバンに目を向け、その中を覗き込んだ。ウォルターは中からジャンパーを取り出した。それはなぜか4人分入っていた。この暑さの中でなぜジャンパーが必要なのかウォルターは疑問に思った。やがて、4人は上着を脱ぎ、シャツ一枚になった。流れる汗でシャツはベトベトになっていた。

ウォルターはジャンパーの事についてマークに質問した。

ウォルター「このジャンパーはどこで着るんだ?」

ウォルターの隣に座っていたマークが喋り出した。

マーク「今はまだ必要ないが、持ってないと後で後悔する事になるぜ」

ウォルター「どう言う事だ?」

前の席に座っていたジョンが振り返り二人を見ながら話し始めた。

ジョン「ウォルター、『神々の谷』って知っているか?」

ウォルター「『神々の谷』はインディアンも近づかない場所だ」

ジョン「なんだ、知っていたのか・・・」

ウォルター「いや、パイロット時代にその上空を飛んだことがあるんだ。あそこの上空を飛ぶと、時々妨害電波が発生して、それを浴びた戦闘機がよく故障するって噂を仲間から聞いた。なぜそこへ行くんだ?」

ジョン「エアウルフをお前に見せてやる」

ウォルター「エアウルフ・・・じゃあここに?」

ジープを運転するホークが声を上げた。

ホーク「ウォルター、この事は誰にも喋るなよ」

4人の乗るジープは北の方角へ突き進んだ。気温が徐々に低くなり、所々に積もる雪も見え始めた。ここが『神々の谷』である。夏を前にして雪が溶けだし、またここは別世界に変わろうとしていた。ジープは雪の上を走行しながらやがて小さな道へと入り込んだ。長く伸びた終わりのない道をジープは突き進んだ。

 

PM3:40。彼にの前にそびえ立つ高い岩山に洞穴があり、その前には一人の男が立っていた。男は黒人で年齢は50歳くらい、厚いジャンパーを着ていた。

ジープは男の前に止まり、ジョンが男に喋り掛けた。

ジョン「すまんな、ジェイソン。少し遅れてしまった」

男はジェイソン・ロックCIA部長である。

ジェイソン「約束した時間を一時間も遅れといて、少しはないだろ?」

ジョンはウォルターに話し掛けた。

ジョン「ああ、ウォルター、彼はCIAのジェイソン・ロック部長だ」

ウォルターはジェイソンを見て喋り出した。

ウォルター「元レッドフォール空軍のウォルター・クラントです。しかし、CIAの部長って確かベネズエルのはずじゃあ?・・・」

ジェイソンはウォルターに話し掛けた。

ジェイソン「ベネズエル?私の部下にそんな名のつく奴はおらんが・・・。まぁいい。ジョン、彼が新しい仲間か?」

ジョン「ああ、そうだ。ヘリは安全か?」

ジェイソン「ここには君ら以外、人っ子一人も来んよ」

ジョン「そりゃあ、そうだな」

4人の乗るジープは洞穴の中に入り、続いてジェイソンも中に入って行った。中は暗い闇がはびこり、その天井からは太陽の陽射しが差し込んでいた。それはあの軍基地で見た光景とよく似ていた。天井から見える太陽の光は黒いボディと銀のローターをつけた一機のヘリが映し出されている。それこそまさにウォルターとベネズエルが探し求めていたあのエアウルフである。

ジェイソンは岩の壁に設置されていた鉄のボックスを開き、中にあるレバーを上に持ち上げた。カシャと音が鳴ると同時に周囲のスポットライトが光った。洞穴の内部が明るくなり、ウォルターは基地の中を見回した。周囲には大型コンピュータとモニター画面、計器レーダーにパソコンが置かれていた。ジョンはウォルターに声をかけた。

ジョン「俺達のエアウルフ基地へようこそ」

ウォルターはエアウルフに近づき、丸みを帯びたヘリのボディに手を触れる。

ウォルター「凄いなあ。いいツヤ出しだ」

ジョン「機体は少し古いかもしれないが、中身は新しく作り変えたんだ。最近のコンピュータシステムが備わっている。ウォルター、乗ってみる気はないか?」

ウォルター「俺がエアウルフに?いいのか?」

ジェイソンがジョンに喋り掛けた。

ジェイソン「ホークから話は大体聞いたが、もしかしてブラックウルフを作ったのはダークエンジェルじゃないよな?」

ジョンはホークの方を見つめた。それに気づいたホークはジェイソンに事情を説明した。ジェイソンは声を荒げホークに言った。

ジェイソン「あのバカが!勝手な事をしやがって。委員会に知れたらタダじゃすまんぞ!」

ホーク「そう怒るなよジェイソン。俺達の使命はウォルターにエアウルフの操縦を完全マスターさせる事とブラックウルフを破壊する事だ」

それを聞いたウォルターが振り向いて声を上げた。

ウォルター「俺がエアウルフのパイロットに?」

全員がコクッと頷いた。

 

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