■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<後編8> 〜『神々の谷』〜

 

『神々の谷』にそびえ立つ高い岩山の洞穴の中に辿りついたホーク達はウォルターにあるものを見せつけた。そこはまさしくエアウルフの秘密基地だった。ウォルターは照明によって明るく照らし出された機体を見つめながらホーク達の話を聞いていた。ホークはジョンに話し掛けた。

ホーク「兄貴、俺とジェイソンは先に例の場所に行くから、ウォルターを頼む」

ホークはジェイソンと共にジープに乗り、洞穴の入口に向かって走り去った。ウォルター、ジョン、マークの3人はエアウルフの前に立ち、ジョンがエアウルフについて話し始めた。

ジョン「じゃあ、ウォルター。エアウルフについていくつか話しておこう。まず、装甲は完全防弾、もちろんガラスも弾丸を跳ね返す。武器は14種類。30mm機関砲、核弾頭ミサイルポッドが装備されている。速度は通常、300ノットまで上げられるが、ターボを使えば最高マッハ1強のスピードを出すことができる。わかったか?」

ウォルターは頷いた。ジョンはエアウルフの左ドアを開き、服を取り出すと、それをウォルターに手渡した。その服はグレー色で黒い筋が入っている。肩には翼をつけた狼のマークがつけられていた。それはウォルターがブラックウルフのテスト前に着ていた服とよく似ていた。

三人は服を着替え終わると、エアウルフに乗り込んだ。マークが後ろの座席に座り、操縦席にはジョン、左の席にウォルターが座った。三人は機内に置かれていた黒いヘルメットを被る。ジョンは真上に設置されているイグニションパネルのスタート1のボタンを押した。エンジンが音を立て動き出し、メインローターとテールローターがゆっくりと回転を始めた。マークは計器類と燃料計を確認する。ジョンは左のレバーを上へと持ち上げる。エアウルフの車輪が宙に浮くと、機体の中に収納され、エアウルフはゆっくりと上昇を始めた。2つのローターは徐々に回転を速めている。機体は深い山の穴を這い上がると、山の頂上から外に飛び出した。ジョンは右のレバーを前に倒す。すると、エアウルフは300ノットのスピードで前進し、『神々の谷』の大地を低空で飛行し始めた。

ウォルターはジョンのレバーを動かす手を真剣に見守っていた。エアウルフは谷間を自由自在に飛び回っていた。ウォルターは前方に見える高く伸びた岩山に目を向け、ジョンに喋り掛けた。

ウォルター「岩の柱だ。ぶつかるぞ」

ジョン「心配いらん。俺の腕を信用しろ」

ジョンは右のレバーを左へ傾けると、すれすれで岩山に避けた。その時、ジョンはマークに話し掛けた。

ジョン「ターボレバーを上げろ。両方だ。ウォルター、しっかり捕まってろよ」

ウォルター「ターボ?例のツインターボの事か?」

マークはターボレバーを上へ持ち上げ、ジョンに言った。

マーク「ターボ良し。いつでもOKだ」

ジョンは右のレバーにあるターボボタンを親指で押した。エアウルフの後部の左右についているタービンから赤い炎が吹き上がる。その反動によってエアウルフは速度を増して、スピードは最高速度のマッハ1を出し、谷間から上空へと舞い上がった。機体は空中で180度回転し、台地に向け、落下し始めた。ジョンは左レバーを操作し、エアウルフの機体を水平の状態に戻した。

ジョン「ウォルター、エアウルフを動かしてみないか?」

ウォルターは、手前に合った2つのレバーを持ち、ジョンはレバーから手を離した。ウォルターは手始めにレバーを前に押し出した。エアウルフは速度を上げながら前進する。次にウォルターは左のレバーを前へ動かした。機体は降下し、大地に向かって落下し始めた。ウォルターはこれを3、4回続けた。

ウォルター「動きはよくわかった。肩ならしに自分で動かしたい」

マークがウォルターに話し掛けた。

マーク「何言ってる?まだ少しも経ってないのにいきなり操縦なんて無理だ」

ジョンはウォルターの真剣な眼差しを見て、

ジョン「ウォルター、本当に大丈夫か?俺でもエアウルフの操縦を完全にマスターするのに、3、4時間はかかったんだぞ」

ウォルター「俺は元パイロッドだ。戦闘ヘリの操縦には慣れてる」

ジョン「じゃあ、お前の腕を見せてもらおうか」

ウォルターは無表情で右のレバーを動かした。エアウルフは『神々の谷』の大地に向かって飛び去って行った。

 

PM5:15。アメリカフロリダ州CIA第5部の地下施設レベル1。ワシントンD.Cペンタゴン(国防総省)から戻ったアークエンジェルは施設の地下へと下りるエレベーターを使い、地下5階へと向かった。

エレベーターから出て、長い通路を歩くと、アークエンジェルはあのヘリとベネズエルがいる室内へと入って行った。アークエンジェルはヘリに目を向け、驚きの声を上げた。

アークエンジェル「凄い。まだ半日も経っていないのに・・・見事だ」

ベネズエル「完全ではありませんが、全体の60%はすでに出来上がっています」

部屋の奥の方からベネズエルが表われる。アークエンジェルはヘリの周りを歩き、ベネズエルのそばに近寄り話し始めた。

アークエンジェル「見た目は悪くなさそうだが、どこが完全じゃないんだ?」

ベネズエル「前にも言ったと思いますが、ヘリのコンピュータにエアウルフのプログラムをダウンロードさせなければなりません。ウォルター達と連絡をとって早急にプログラムを手に入れなければ・・・」

アークエンジェル「それは心配無用だ。ホークは私の古い友人だ。彼なら喜んで協力してくれるはずだ」

ベネズエル「ペンタゴンの方はどうでした?ブラックウルフの情報は何か掴めましたか?」

アークエンジェル「ああ、わかった。あのヘリは今リビアにいる」

ベネズエル「リビア?」

アークエンジェル「昔、ホークがエアウルフを取り返した場所だ」

ベネズエル「奇妙な偶然ですな。歴史は繰り返される・・・」

アークエンジェル「もう一つ面白いものを見つけたよ」

アークエンジェルはベネズエルに写真を手渡した。それにはステルス戦闘機のF−117(ナイトホーク)に似た機体が写っていた。

アークエンジェル「それは衛星写真だ。アフリカで撮ったものだ」

ベネズエル「なぜアフリカにこんなものが?」

アークエンジェル「それはわからん。何か悪い予感がする・・・」

ベネズエル「一刻も早くこのヘリを完成させなければならないようですな・・・」

アークエンジェル「そうだな。ところで、ブラックウルフを倒すための武器は準備しているのかね?」

ベネズエル「今機体の方に重点を置いているので武器は後回しですよ。しかし新開発のシステムをヘリに取り込んだので心配要りません」

アークエンジェル「新開発のシステム?なんだね、それは」

ベネズエル「ブラックウルフのレーザーに打ち勝つために用意した新システムの『パワードスーツ』です」

アークエンジェル「なんだ、そのパワードスーツとは?」

ベネズエル「言わば、レーザーを反射させるシールドと呼んでいいでしょう。レーザーの他にも銃弾も弾き飛ばします」

アークエンジェル「なるほど・・・」

アークエンジェルはヘリにつく台形型に尖った空気口に目をやる。

アークエンジェル「ベネズエル、このヘリのエンジンはエアウルフに使われる『ライカミングエンジン』ではないのか?」

ベネズエル「まったく別物です。エンジンはNASAと共同で作った新型エンジン、その名も『オーバー・クラフト・ライカミングエンジン』です。このエンジンはヘリ用に作られ、機動性もトップクラスで最高速度マッハ1を出します」

アークエンジェル「マッハ1?ターボを使わなくとも音速で飛べるのか?」

ベネズエル「1度テストを行いましたが、余りに強力なエンジンだったので今まで使用される事はありませんでした」

アークエンジェル「他に何か私にできることはないか?」

ベネズエル「ええ・・・ありますとも」

2人は作業にとりかかった。ヘリの装甲の色は青。ジェットエンジンが合計4つつけられ、空気口も多く、その姿はエアウルフに似ているようだが、それはまるで鎧を身につけた狼のようにも見えた・・・。

 

PM6:00。『神々の谷』は夕暮れを向かえ、太陽は山々の間に沈み込んだ。その上空、高度5000kmでは、あのエアウルフが今もなお飛行を続けていた。エアウルフは上昇と落下を繰り返しながら飛行していた。コクピット内で後の座席に座るマークの声が響き渡った。

マーク「おい、ウォルター。お前の腕はわかったからもう勘弁してくれよ」

ウォルターはその言葉を無視し、操縦を続けた。その後数時間エアウルフを乗り回し、あらゆる操作方法を知り尽くそうとした。

ジョン「ウォルター、そろそろ基地に戻った方がいい。聞いてるのか?ウォルター」

ウォルターは操縦レバーを軽く戻し、エアウルフを水平にするとジョンに話し掛けた。

ウォルター「何か言いましたか?」

マーク「聞いてなかったのか?」

ジョン「お前、大丈夫か?」

ウォルター「操縦に夢中になりすぎてしまったようだ。すみません」

ジョンはウォルターの代わりにレバーを握り、エアウルフの操縦を始めた。エアウルフは『神々の谷』にある秘密基地へ向かった。

その2、3分後、エアウルフは基地の真上を飛び、ゆっくりと深い岩穴へ下りて行った。エアウルフは無事に着陸し、エンジンが停止した。2つのローターは回転を弱め、中からウォルター、ジョン、マークが扉を開け外に出た。

基地の入口前に止めてあるジープにホークとジェイソンが乗り、3人を待ち構えていた。

ホークはジョンに話し掛けた。

ホーク「ずいぶん遅かったな。1時間もここで待ってたんだぞ」

ジョン「ウォルターがエアウルフの操縦に夢中だったんでな」

ホークはウォルターに話し始め、

ホーク「ウォルター、お前もうエアウルフを操縦したのか?」

ウォルター「ええ。何とかマスターできそうですよ」

ホークは驚いた表情を浮かべると、ジョンに喋り掛けた。

ホーク「こいつは驚いたな。俺よりも覚えがいいようだ」

ジョン「ホーク、次の休日を利用して、今度はウォルターにエアウルフの武器と点検の方法を教えよう」

ホーク「しかし、もうあまり時間はないんだ」

ジョン「わかってる。向こうから連絡が来るまでの話だ。サンティーニ航空に戻ってジョーと話し合おう」

ジェイソンを除く4人はジープに乗り、秘密基地を後にした。ジェイソンはエアウルフ基地の電源ブレーカーを落とし、その場を立ち去った・・・。

 

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