■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<後編9> 〜新型ヘリ誕生〜

 

−1ヵ月後−

6月の終わり頃、CIA第5部地下5階にある地下施設レベル1。アークエンジェルとベネズエルの2人は開発作業の最終段階に入ったあのヘリの点検を行っていた。ベネズエルは機体内部に乗り込み、コンピュータ、計器パネル、武器システムといった部分を手当たりしだいチェックしていた。アークエンジェルはヘリのローターとテールローターを点検し、その後空気口を見回った。

約3〜4時間2人は機体の前に立ち、点検作業を続けた。アークエンジェルはベネズエルに話し掛けた。

アークエンジェル「ようやく完成だな」

ベネズエル「ええ、後は例のデータと武器を取り付けるだけです」

アークエンジェル「なるべく早くテスト飛行をしなければ・・・」

ベネズエル「ブラックウルフを倒さなければ世界は終わりですよ」

アークエンジェルは機体を見つめ、

アークエンジェル「このヘリに名前はついているのか?」

ベネズエル「ええ、『スーパーエアウルフ』です」

アークエンジェル「なるほど、いい名前だ。ベネズエル、そろそろ彼らを呼び出そうか?」

ベネズエル「じゃあ、私は武器の準備を急ぎましょう」

アークエンジェルは部屋から出て行った。ベネズエルはスーパーエアウルフを見つめると、アークエンジェルの後を追うかのようにその場を立ち去った。

 

それから2時間後のPM1:30。サンティーニ航空を訪れたアークエンジェルは事務所に入り、ホーク達を探し回るが、中に人影はなかった。彼は作業場でヘリの整備をしていたケビンを見つけ、彼に叫んだ。

アークエンジェル「やぁ、ケビン。ホーク達はどこにいるんだ?」

ケビンは機械をいじりながらアークエンジェルの方を見つめた。アークエンジェルはケビンに笑みを浮かべた。

ケビン「アークエンジェルさん?」

アークエンジェル「彼らは出かけたのかね?」

ケビン「ホークさん達ならグランドキャニオンに行くと言ってましたけど・・・何か用事ですか?」

アークエンジェルは考えた末、ケビンに言った。

アークエンジェル「ケビン、悪いがヘリを出してくれないか?」

ケビン「わかりました」

 

PM2:50。グランドキャニオン。高度5000〜6000kmの上空をエアウルフは飛行していた。エアウルフには前席にウォルターとセント・ジョン、後部席にマークが乗り込んでいた。ジョンはウォルターに話し出した。

ジョン「ウォルター、用意はいいな」

ウォルター「ああ、任しとけ」

ジョン「マーク、攻撃用意だ」

マークは右側のパネルに設置されている攻撃システムのボタンを押す。エアウルフの機体の下から3つのキャノン管が表われ、左右からは30mm機関砲がスライド式に伸びた。エアウルフの攻撃準備が整った。

ウォルターはレバーを持ち、操縦を始めた。エアウルフは突然下降を始め、一気に谷の地表すれすれの高度にまで下がった。地表には70年代の古めかしい車が約8台ほど置かれ、周囲には小さな小屋が3件ほどあった。エアウルフはその地表の上を飛行し始めた。地表に置かれた車や小屋はホークとジェイソンがあらかじめ用意したテスト用のものであった。ウォルターはすでにここでシュミレーションを29回もやり続け、あたりの地面には数多くの弾の跡が残っていた。ウォルターの攻撃命中率は75%まで上がっていたが、ホークはそれを100%にするまでウォルターに訓練を続けさせていた。今日のシュミレーションは30回目にあたり、ウォルターには疲労がたまっていた。

ウォルターは右のレバーを握り、いつでも攻撃できる準備を整えていた。

ウォルター「行くぞ」

ウォルターはヘルメットのバイザーを下ろし、目標を映し出すロックサイトを出した。彼は目標物となる車を狙い、右のレバーのトリガーを引いた。30mm機関銃から勢いよく弾が発射した。弾は地面を一直線上にえぐり続け、白い煙を上げた。その直線上にあった車が爆発して炎を上げた。

ウォルターはエアウルフの方向を変え、右のレバーのボタンを親指で押した。エアウルフの機体下にあるスライクキャノンから核弾頭ミサイルが撃ち出され、小屋に向かって飛んで行った。ミサイルは小屋を撃ち抜き、大爆発した。ウォルターはそれを立て続けに目標物に向けて撃ち続けた。燃え上がる炎を突き抜けるようにエアウルフは前進していった。

ウォルターはヘルメットのバイザーを上げた。ジョンはヘルメットの通信機を使い、地上にいるホークに呼びかけた。

ジョン「ホーク、もうこれで十分だろ」

ホークの声「ああ、そのまま飛行を続けてくれ」

ホークはテスト場から約700mあたり離れた場所に立ち、ジェイソンやジョーも肩を並べ、三人は双眼鏡を片手に持っていた。ホーク達のそばには機材を乗せたジープが止まり、ホークは機材の計器から出る小さいメモを読んでいた。ジョーとジェイソンはジープに近づき、通信機に向かって声をかけた。

ジェイソン「ウォルター、大分腕が上がってきたな」

ジョー「本当。たった一ヶ月でエアウルフを使いこなせるなんて、凄いわ」

ジェイソン「ホーク、もうこれでいいだろ」

その時、ホークは後ろに振り返り空を見上げた。2人もホークと同じ方向に目を向けた。空には民間機用のヘリが飛び、やがて三人の前に下りてきた。ホークはとっさに銃を構え、ヘリに向けた。着地したヘリのドアが開き、中からアークエンジェルとケビンが降りてきた。ホークは銃をしまい、歩いてくる2人に近づいていった。

ホーク「アークエンジェル、なぜここに?」

アークエンジェル「君達を探していたんだよ。ケビンに頼んでここに連れてきてもらったんだ。ウォルターはどこだ?」

ホークはケビンの事を気にかけ、

ホーク「彼にヘリの操縦を教えていたんだ」

ジープに置かれている通信機からジョンの声が聞こえる。

ジョンの声「ホーク、聞こえるか?」

ホークは受信機を取り話し出した。

ホーク「どうした?」

ジョンの声「ウォルターが何かをしたいそうだ」

ホーク「ウォルター、一体何をするつもりだ?」

ウォルターの声「俺の得意技を見てくれ」

ホーク「得意技?」

ケビンは思わず声を上げ、

ケビン「もしかして、例の空中大回転をするんじゃ・・・」

ホーク「ケビン、おまえウォルターから何か聞いたのか?」

ケビン「すいません・・・実は僕も前からエアウルフの事は知っていました・・・」

ホーク「・・・今更隠しても仕方ないようだな・・・」

ウォルターはレバーを持ち上げた。エアウルフは谷間をすり抜け、300ノットの速度で低空飛行をしていた。ウォルターはタイミングを見計らい、両方のレバーを上げた。エアウルフは急上昇し、一気に高度3000kmまで上り詰め、機体を垂直にして飛んでいた。エアウルフ内はかなりのGがかかり、三人は押しつぶされそう圧迫感を味わっていた。ウォルターはさらにレバーを上げ、同時にターボスイッチを押した。機体は空中で円を描くように進み、ある地点で完全に逆さまになった。ジョンとマークは強いGに耐えながら、しがみつくような状態を維持していた。やがて機体は元の状態になり、推進を始めた。エアウルフはホーク達の上空を横切り、そのまま飛び去っていった。

地上にいた5人は呆然とし、やがてアークエンジェルがポツリと声を出した。

アークエンジェル「なんて奴だ・・・あのエアウルフを一回転させるなんて・・・」

ホーク「俺も現役の時はかなり無茶をしたが、奴はそれ以上だ」

アークエンジェル「さすがは、君の弟子だな・・・」

ホーク「今度あんな事をしたら、尻を引っぱたいてやる」

ホークは冗談の混じりの笑顔を浮かべた。

 

PM3:30。CIA第5部地下施設レベル1。ケビンを除いた7人は地下5階の長い通路を歩いていた。通路の周囲は銀色の鉄で覆われ、所々に錆がついていた。

アークエンジェルは案内し、6人を部屋の中へ入れた。ウォルターたちの目の前に青く輝く物体が見えた。それは完成したばかりのあのヘリだった。ヘリの機体にはエアウルフと同じベル機で、青、紫、白の色が塗装されていた。見た目は鋭く尖った狼のように見え、耳のような空気口もその特徴の一つだった。

ウォルター達がそのヘリに見とれていると、暫くして、ギーギーと音が鳴り響いた。彼らは音のする方に振り向いた。黒いシートを被った大きな台車がゆっくりと彼らの前に姿を表した。それを押しているのはベネズエルだった。彼の姿を見たジェイソンはいきなり怒鳴り声を上げた。

ジェイソン「ウェ〜ルクス!」

その声に聞き覚えのあるベネズエルは彼の顔を見て驚いた。

ベネズエル「ジェ、ジェイソン・ロック部長・・・なぜここに?」

ジェイソン「貴様、こんなところに雲隠れしていたのか?今度の一件は重大だぞ。わかっているのか?」

ベネズエルはその場から逃げ去ろうとするが、ジェイソンに腕を掴まれた。そのままベネズエルはジェイソンにきつい叱咤激励を20分もの間受け続けていた。

それが終わると、ウォルターは戻ってきたジェイソンに話し掛けた。

ウォルター「ジェイソン部長、『ウェルクス』って何のことです?」

ジェイソン「あいつの本名はアクネイト・ウェルクスと言うんだ」

ウォルター「『ダークエンジェル』の方がまだマシだな・・・」

しかめっ面をして戻ってきたベネズエルが二人の前に近づいた。

ウォルター「少しやつれたんじゃないか?」

ベネズエル「・・・」

ウォルター「今度からウェルクスと呼ぼうか?」

ベネズエル「私をおちょくるな」

ウォルター「3つも名前があるなんてあんたぐらいなもんだ。ギネスブックに載るぞ」

ベネズエル「いいかげんにしろ!」

2人の喧嘩をそばで見ていたジョンがホークに言った。

ジョン「あいつら意外と相性がいいみたいだな」

ホーク「まるで、兄弟みたいだ」

マークとジョーがホーク達の会話に入り込んでくる。

マーク「俺には仲が良いようには見えないけどな・・・」

ジョー「いいな・・・私も喧嘩相手が欲しいわ」

マーク「俺が相手になってやろうか?」

ジョー「あなたじゃ役不足だわ・・・」

マーク「それ・・・どういう意味だよ?」

マークは口を曲げる。4人のそばでジェイソンとアークエンジェルが話していた。

ジェイソン「あの2人はどういう関係なんだ?」

アークエンジェル「さぁね。私に言える事は彼らが似た者同士だって言う事だけだ」

アークエンジェルはベネズエルにジョン達を紹介した。暫くして、ウォルターがベネズエルにまた話し掛けた。

ウォルター「このヘリについて説明してくれないか?」

ベネズエル「私の力作だ。名前は『スーパーエアウルフ』と呼ぶ」

ウォルター「スーパーエアウルフ・・・」

ベネズエル「装甲はブラックウルフよりも強力な設計で、最高推進速度は335ノット。ターボを使えばマッハ4以上の音速で飛ぶ事ができる」

ウォルター「もっと詳しく教えてくれないか?」

ベネズエル「じゃあ、まず装甲からだ。スーパーエアウルフの装甲はブラックウルフと同じ最強化被と呼ばれるものと、ステルスの『RAM』に新金属の特殊合金を組み込んでいる。レーダーには絶対捕らえられる事はなく、敵の領空をも安全に飛行する事ができる。しかし、ブラックウルフのように一時的に姿を消す能力はない」

ウォルター「つまり、こいつを使えばブラックウルフに楽勝できるって事だろ?」

ベネズエル「そうでもない。残念ながらこのヘリのボディはブラックウルフ用のレーザーに耐える事ができない」

ホークはベネズエルに話し掛けた。

ホーク「ブラックウルフのレーザーはジェキンスの作ったエアウルフUのレーザーと同じものなのか?」

ベネズエル「いや、あれは最新型のレーザー銃だ」

ベネズエルはさらに話を進めた。

ベネズエル「エンジンはエアウルフと同じ型のライカミングですが、NASAの協力で最新型の『オーバークラフト』を搭載しています。機体に多くの空気管が取り付けてあるのは後部のタービンを瞬時に冷やすためとより多くの空気を吸い込んで、強力なパワーを得るためです。タービンは全部で4管。点火後十秒以内で最高マッハ5の音速で飛行する事が可能です」

ウォルター「マッハ5だって?そんなスピードで飛ぶヘリは今まで聞いたことがない」

ベネズエル「簡単に言えば、スーパーエアルウフはエアウルフとブラックウルフの融合型、まさに史上最強のモンスターヘリと言える」

ウォルター「あんた、CIAなんか辞めて、技術者で食っていったらどうだ?」

ベネズエル「・・・だが、テストがまだなんだ。実際にM5で飛行できるかどうかはまだわからない」

マーク「じゃあ、さっさと始めようぜ」

ベネズエル「残念だが、まだテストはできない」

ウォルター「どうして?」

ベネズエル「一つ問題が残っている」

ホーク「その問題とはなんだ?」

 

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