■ 超音速攻撃ヘリ新エアウルフU〜ミレニアムエピソード〜指令・ブラックウルフを撃墜せよ! 

 

<後編10> 〜『アル』〜

 

CIA第5部地下施設レベル1。完成したスーパーエアウルフを目にしたホーク達はアークエンジェルとベネズエルからヘリの詳しい情報を聞き出していた。

アークエンジェル「問題と言うのはだな・・・エアウルフのプログラムデータの事だ。それと武器に詳しいエンジニアがいる」

ホーク「プログラムデータは兄貴が持っている。武器に詳しい奴って・・・まさかこのヘリには武器がついていないのか?」

ベネズエル「その通りだ。ブラックウルフを倒す武器がなかなか見つからないんだ。だから、私の作ったコンピュータと相性の合う武器マニアが必要なんだ」

ジョン「俺とマークとジョーはエアウルフを動かせるが、コンピュータを使えるのはマークだけだ。ホークは引退したし、残るはジェイソンか、あんただぜ、アークエンジェル」

アークエンジェルとジェイソンは同時に左右に首を振った。ウォルターは考えた末、全員の前で話し出した。

ウォルター「・・・昔レッドフォール空軍基地にいた軍人に一人いる。そいつの頭の中にはあらゆる国のあらゆる兵器の種類と性能が頭の中に完全にインプットされていて、コンピュータの知識と戦争経験も豊富だ。周囲からは危険人物として恐れられていたが、頼りになる奴に違いない」

ホーク「男の名前を知っているのか?」

ウォルター「アルバート・ホーキンス・・・通称『アル』と呼ばれている。俺の無二の親友だった男さ・・・」

 

PM4:00。アメリカミシガン州のある街の一角に立ち並ぶビルの中に古めかしい灰色をした店があった。そこへ酔いつぶれた一人の男がふらふらと店にやってきて、中へ入った。店内は薄暗く、その奥の壁には長いライフル銃がずらっと並んでいた。年齢60過ぎの丸々と太ったその大柄な男は店を見回し、いきなり叫び出した。

男「おい、誰もいねぇのか?」

店の奥の通路から男が表われた。年齢40だが、まだ若々しさを保っている凛々しい顔をした男だ。若い男は大柄な男に目をやりながら口を開いた。

若い男「何の用だ?酒屋なら13番道路沿いにある店に行けよ」

男「こんな古ぼけた店で酒なんて飲めねぇよ」

若い男「何の用だ?」

男「何の用って、おまえ俺は客だぞ!」

若い男「そんなことはわかってるよ、酔っ払いのデブ男」

男は顔を真っ赤にして若い男に怒鳴り声を上げた。

男「テメェー、その口の聞き方は何だ?ぶっ殺すぞ!」

若い男「俺をぶっ殺すための武器が欲しいのか?いくら持ってるんだ?」

男「30万ドルだ。30口径のマシンガンをよこしやがれ」

若い男「マシンガンね・・・」

男「さっさと出しやがれ!」

若い男はカウンターの下に置いていたケースを開け、マシンガンを取り出し、男の前に置いた。男はマシンガンを両手で持ち、笑みを浮かべた。若い男は男を見て話し出した。

若い男「それで何をやらかすつもりなんだ?」

男は若い男にマシンガンを向けて言った。

男「こいつが炎を噴く前に店の銃を全部よこしな」

若い男「おいおい、マジで俺を殺す気か?困った客だ」

男「早くしろ!」

若い男「撃ってみろよ」

男はマシンガンのトリガーを引いた。しかし、弾は発射されない。

若い男「おっさん、あんたマシンガンを使うのは初めてだろ?外の看板を見なかったのか?『未経験者はおことわり』ってな」

男「テメェー、初めっから弾無しの銃を出しやがったな!」

若い男「いや、弾は入ってるぞ」

若い男は男からマシンガンを奪い取り、トリガー部分についていたボタンを押してこう言った。

若い男「言うのを忘れていたが、俺んとこの売り出している武器には全て暴発用のロックシステムがついてるんだ。そいつを解除する方法は俺にしかわからない。陸海空軍をオールマイティに渡り歩いてきた元軍人の前でなんてザマをさらしやがるんだ?」

男は若い男を一瞥し、突然怯えた表情を浮かべ、

男「あんた・・・ひょっとしてあの噂のア、『アル』かい?」

若い男は男にマシンガンを向け、こう言った。

若い男「もし俺が『アル』だったら、あんた生きてここから出られないぜ。こいつで蜂の巣にされてな」

男「待ってくれ、俺には女房がいるし・・・それに息子が来月結婚するんだ。式に出席してやらないと息子がかわいそうだろ?」

男はそう言うと、咄嗟に店を出て行った。若い男は重い体を揺らしながら立ち去っていく男の後を追い、外に出ると、空に向けてマシンガンを撃ち放った。若い男は男に向かって大声を上げた。

若い男「息子によろしくな。今度はもっとマシな嘘を考えろ」

若い男は店に戻ろうとした時、彼の背後から男の声がした。

「相変わらずだな・・・アル中佐」

若い男は振り向いて、男の方にマシンガンを向けた。彼の目の前に立っていたのはウォルターだった。若い男はマシンガンを下ろし、ウォルターに話し掛けた。

若い男「そりゃあ、昔の話だ。ウォルター・・・久しぶりだな」

若い男は通称『アル』と呼ばれる、アルバート・ホーキンスだった。

アルバート「とにかく中に入れよ。ビールぐらいはご馳走してやるよ」

ウォルターとアルバートは店に入り、カウンターの奥の部屋に向かった。ウォルターは部屋のソファに腰掛け、アルバートは冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、ウォルターに手渡した。アルバートはウォルターと向かい合うようにして座った。

ウォルター「店に置いてある銃がずいぶん減ったような気がするんだが・・・」

アルバート「最近盗人が多いから、別の場所に隠してあるんだ」

ウォルター「隠し場所?」

アルバート「お前さんの座っている床の下だよ」

ウォルターは自分の足元を一瞬見つめた。

アルバート「それにしてもお前一人で来るなんて珍しいな。アルフレッドとフェリックは元気にしてるのか?ここに来る時はいつも3人一緒だっただろ?」

ウォルター「・・・死んだよ、2人とも」

アルバート「死んだだと?どうしてだ?」

ウォルターはアルバートに今までの事を話し始めた・・・。

アルバート「ブラックウルフ・・・CIAが極秘で戦闘ヘリを作っているって噂で聞いたことがあるが、まさか事実だったとはな。つまりお前達はそのヘリのテストパイロットとして派遣されたわけだな。2人を殺したそのモフェットと言う男は今どこにいるんだ?」

ウォルター「奴の居所はもうわかっている。お前にも協力してもらいたいんだ」

アルバート「俺に何をさせようって言うんだ?」

ウォルター「ヘリを操縦するのに、コンピュータと武器に詳しいエンジニアが必要なんだ。戦争好きのお前にはもってこいの仕事だが、どうだ?」

アルバート「ブラックウルフに対抗できるヘリがあるのか?」

ウォルターは頷いてこう言った。

ウォルター「俺達にはもう時間がないんだ。頼むよアル」

アルバート「わかった。あいつらの仇討ちをしてやらないとな・・・」

2人は缶ビールを飲み終えると、立ち上がり、アルバートはウォルターが座っていたソファを5cm程押した。すると、イスの足元からカチッとスイッチが入ったような音が鳴り、床の部分がスライドしながら開き始めた。それは大きく広がり、地下へ下りるための足場ができた。2人は暗い穴場へと下りて行き、アルバートは電気のスイッチを押し部屋の明かりをつけた。そこには沢山の銃器が立てかけられてあり、小型ミサイルからロケット弾まで、世界のあらゆる武器が揃っていた。

アルバート「第二次世界大戦から湾岸戦争にかけて使用された兵器がコレクションしてある。手榴弾、地雷、PC爆弾・・・この部屋を作るのに70万ドルもつぎ込んだんだぜ」

ウォルターは歩み出して周囲を見渡した。機関銃、ガトリングガン、バズーカーなどあらゆる武器が彼に目に止まった。ウォルターはガラスケースに入った巨大な兵器の前で立ち止まり、中を覗き込んだ。

ウォルター「なぁ、アル。この中の兵器は一体なんだ?」

アルバートはウォルターのそばに行き、武器を見つめた。

アルバート「ああ、こいつは幻の兵器と言われている世界に二つとないものだ」

ウォルター「幻の兵器?」

アルバート「いつの時代に作られたか忘れたが、こいつの攻撃力は他の武器とは比べ物にならないくらいの破壊力を秘めているぜ」

ウォルター「こいつで、ブラックウルフを倒せそうか?」

アルバート「ヘリに装備しようって気か?」

ウォルター「ああ」

アルバート「やってみるか」

ウォルター「こいつの名は?」

アルバート「ギガブラスキャノン。俺がつけた名だ」

 

翌日AM8:00。ウォルターとアルバートの乗るトラックがフロリダに向けて走っていた。トラックは茶色のドイツ製で、かなりの大きさだ。トラックは緑の森の間に伸びる長い道を駆け抜けていた。助手席に座っていたウォルターは運転しているアルバートに話し始めた。

ウォルター「レッドフォール空軍を去ってから何年になる?」

アルバート「もう5年ぐらいになるかな・・・」

ウォルター「商売は儲かっているのか?」

アルバート「まぁ、ぼちぼちだな。食って行けるだけの売上はあるさ。なぁ、ウォルター、裏部隊の事を知ってるか?」

ウォルター「裏部隊?」

アルバート「フランス・ドイツ・ロシア・アラビア・アフリカにいる反ゲリラ組織の手助けをしている闇組織の事だ。俺はそいつら相手に武器の売買をしているんだ。つまり御得意様って訳さ」

ウォルター「そんな奴等相手にして大丈夫なのか?」

アルバートはウォルターに笑って見せてこう言った。

アルバート「まぁ、俺のやっている事は犯罪の片棒を担いでいるのと同じ事だからな。政府に見つかれば、即独房入りだ」

ウォルター「わかっているなら、さっさと手を引いた方がいいぞ」

アルバート「仕方ないだろ?これが俺の仕事なんだ」

ウォルター「・・・」

アルバートは暗い森の向こうを見つめこう言った。

アルバート「それにしてもこんな森の中に地下施設を作るなんて・・・CIAも中々手が込んでるな。まだつかないのか?」

ウォルター「もうすぐだ」

トラックが森の道に入って3時間後、ウォルター達の目の前に2階建ての施設が見え始めた。トラックは施設の前で立ち止まり、2人は車から下りると、施設の中へと入っていった・・・。

 

ご意見、ご感想は、『外国テレビ映画BBS』方へよろしくお願いします。

また、呉藤氏に直接メールでお話されたい方は、メールでご一報よろしくお願いします。

 

←後編9へ 後編11へ→

 

MAIN

MENU

HOME