『ナイトライダーvsエアーウルフ』 byガース 「ガースのお部屋」
KNIGHT RIDER vs AIRWOLF

【ACT1→3】

―ACT1―
○ 住宅地・市道
  レンガ造りの軒が連なる閑静な住宅地の一角。
  サイレンを唸らせながら暴走する救急車。前の車を次々とジグザクに追い抜いている。
  救急車の後を追っている1982型の黒いファイヤー・バード・トランザム・ナイト2000。
  車体の先端についた赤いスキャナーをなびかせている。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル・ナイト。黒い革のジーンズ、ジャンパー、赤いTシャツを身につけ、
  サングラスをはめている。
  ハンドルの上部の位置に設置されている三本ラインのイコライザー。
  赤い光を放ちながら話し出すKITT(KNIGHT INDUSTRY TWO THOUTAND)=通称・キット。
キット「早く止めないと、一キロ先は、国道につながる交差点です」
マイケル「そう焦るなよ。無理やり止めたら、ナディアの命も危険だ」
  フロントガラス越しに見える救急車の後ろ姿。左折している。
マイケル「対向車が来てないか確認してくれ」

○ 救急車内
  運転席に座る男・エイデル・ソーンズ。
  後ろに乗っている担架の上に横たわるナディア・グラシエ。ロングの金髪、美形の女性。
  白いワンピースを身につけている。意識もうろうとしているナディア。
  激しい揺れで、今にも体が担架から落ちそうになっている。
  
○ ナイト2000車内
  救急車を見つめているマイケル。
キット「マイケル、この先の道は、工事中で、対向車線から来る車は、規制されています」
マイケル「よし、今がチャンス」
  マイケル、パネルの『MICRO ROCK』のボタンを押す。
  モニターに映る救急車の3Dイメージ。
  救急車の4輪が電子音を発しながら赤く点滅する。

○ 国道
  救急車の車輪がロックされる。道路を滑り立ち止まる救急車。
  運転席から降り、走り出すエイデル。
  救急車を横切り、エイデルの後を追い続けるナイト2000。
  運転席のドアの窓とサンルーフが開き、マイケルが身を乗り出す。
  走るエイデルのそばに近づくナイト2000。マイケル、エイデルの背中に飛び掛かる。
  エイデルと共に路上を転がるマイケル。
  二人、立ち上がり、取っ組み合いを始める。マイケル、長い足を振り回し、エイデルにハイキック。
  すかさず、カウンターパンチを食らわす。
  その場に倒れるエイデル。
  パトカーのサイレンが鳴り響く。
  マイケル、エイデルを引っ張り、立ち上がらせる。
マイケル「気絶の続きは、檻の中でやってくれ」
  呆然としているエイデル。

○ ラスベガス・近郊・モハーベ砂漠
  尖った奇岩が垂直に立ち並んだ岩山が無数にそびえ立つ大地。
  赤土の道をアメリカ国旗をボディにペイントしたジープが走っている。

○ ジープ車内
  ハンドルを握る老人・ドミニク・サンティーニ。ブルーのジーパンにジャンパー、赤い帽子と
  サングラスをつけている。 陽気に鼻歌を歌う。
  ドミニク、正面を覗き込むように見つめる。
  数十メートル先の路上の真ん中で横倒しになっているシルバーの車。車のエンジンルームから
  白い煙が上がっている。
ドミニク「おっと、事故だ…」
  車の前に立ち止まるジープ。
  ドミニク、サングラスを外して、ジープから降り、車の前に近づいて行く。
  右手で口元を押さえながら、フロントガラスを覗き込む。
  車内、運転席で、意識を失っているロングの髪をした若い女。
ドミニク「大丈夫か?今助け出してやるからな!」
  ドミニク、ジープに戻る。後ろに積んであったバールを手に取ると、また車の前に行く。
  バールでガラスを割り始める。
  作業を続けるドミニク。その時、ジープに忍び寄る一人の男。
  男、ジープのドアをソッと開け、助手席の下に置いてあるダンボールの箱を取り出す。
  車内から女を引っ張り出すドミニク。
  女を抱え、歩き出す。
  ジープの助手席に女を乗せ、運転に乗り込むドミニク。
  急発進して、その場を走り去るジープ。
  道の脇に立つ男。両手で箱を持っている。ジープの後ろ姿を静かに見つめる。
  
○ 病院・駐車場
  駐車スペースに止まるたくさんの車。その真中のスペースに止まるナイト2000の
  前にやってくるマイケル。ドアを開け、中に乗り込む。
  
○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
  メインボードの右側に設置されているモニターにデボン・シャイアーが映る。
  ナイト財団本部オフィスのデスクの座席に座っている。
デボンの声「ナディアの容態は?」
マイケル「怪我のほうは、大した事はない。治療が終わったら事情を聞きに行く」
デボンの声「一週間前、新型の起爆装置を開発した爆弾製造犯のヘイデンを殺して、
 逃亡したメンデス・マリソンは、おそらく、まだロス市内に潜伏しているはずだ。ナディアが奴の
 居所を素直に話してくれるといいが…」
キット「勤続10年の優秀な刑事が、どうして殺人を犯してまで起爆装置を欲しがったのでしょう?」
マイケル「確かにな。事件を起こす前までは、何一つ問題を起こさなかったまじめなデカだったのに」
デボンの声「しかし、ナディアも気の毒にな」
マイケル「俺達が尾行中に車に轢かれて怪我した挙句、乗せられた救急車がスーパーに
 押し入った強盗に強奪されてしまうなんて…」
  
○ モハーベ砂漠
  土煙を上げながら、駆け抜けているドミニクのジープ。

○ ジープ車内
  ちらちらと女を見ながらハンドルを握るドミニク。
  助手席のシートで目を瞑る女。しばらくして、目を開け、ドミニクを見つめる。
女「おじさん、誰?」
ドミニク「やっと気づいたか。わしは、ドミニクだ。あんたの車、砂漠のど真ん中で横倒しになっていたぞ」
女「私の車が事故を?」
ドミニク「何も覚えてないのか?」
女「…あそこには…岩山の鉱石の調べに行って。私…小学校の教師をしています。
 道に迷って、随分奥地まで入り込んでしまったみたい…」
ドミニク「こんなところにやってくる車も珍しいが、事故を起こすのは、もっと珍しいぞ」
女「ここから二十キロ先に家があるんです。そこまで送ってもらえませんか?」
ドミニク「いいけど、病院に行かなくても平気なのか?」
女「平気です。骨も折れていないみたいだし…」
ドミニク「よし、じゃあ、ブッ飛ばすぞ」

○ ラスベガス郊外・邸宅
  二階建ての純白の屋敷が建っている敷地の門前に止まるドミニクのジープ。

○ ジープ車内
  ドミニク、屋敷を見て驚愕し、
ドミニク「どひゃー、立派な豪邸だこと…」
女「私の名前は、ロニー・レビット」
  女は、ロニー・レビット。ドミニクと握手をするロニー。
ロニー「助けてくれてありがとう」
  ドミニクの頬に口付けをするロニー。
ロニー「それじゃあ」
  車から降りるロニー。
  門を開け、中に入って行くロニーの様子を見守るドミニク。
ドミニク「ズバ抜けた回復力だな。わしも十年は、若返りたいよ」
  呆れ顔で車を発進させるドミニク。

○ CIA本部・部長オフィス
  窓の前に立ち、外の景色を眺めている白いスーツを着た男の後ろ姿。
  振り返る男。男は、マイケル・コールドスミス・ブリッジス三世=コードネーム・アークエンジェル。
  メガネの左目の部分には、黒いレンズが入っている。
アークエンジェル「政府から重要物資の運搬を依頼された」
  ソファに座っているストリング・フェロー・ホーク。
ホーク「中身は?」
アークエンジェル「ロケットの観測機器や医療用機器のエネルギー源になるアイソトープだ。
 目的地は、シアトルにある研究所」
ホーク「何でそんな危険なものを運ばなきゃならないんだ?」
アークエンジェル「輸送する部隊は、ちゃんといる。だが、極秘だったはずの輸送ルートの情報が何者かに
 漏洩している事がわかった。そこで、ルートを変更した上で…」
ホーク「エアーウルフでカモフラージュする作戦か?」
アークエンジェル「その通り。ドミニクは、何してる?」
ホーク「…顧客のクレームの対応中だ」
アークエンジェル「どうだ?引き受けてくれるのか?」
ホーク「ああ。但し、俺一人でだ」
  唖然とするアークエンジェル。
アークエンジェル「あいつと喧嘩でもしたのか?」
ホーク「つまらん勘繰りだな」
アークエンジェル「じゃあ、どうして?」
  ため息をつくホーク。
ホーク「放射能で死ぬ人間は、一人でいい」
  
○ サンティーニ航空・倉庫前
  ドミニクのジープが止まる。
  車から降り、歩いて中に入ってくるドミニク。

○ 同・倉庫内
  白いヘリの下に潜り、部品の交換作業をしている作業着姿のケイトリン・オシャネシィ。
  ケイトリンの前にやってくるドミニク。
  ヘリの下から出てきて、顔を出すケイトリン。
ケイトリン「何だ。帰ってたの。えらく時間かかったわね」
  ドミニク、空ろ気な表情。
ドミニク「道が込んでたんだ…」
ケイトリン「またケンラッド社長と長話でもしてるのかと思ったわ」
  立ち上がるケイトリン。
ドミニク「ホークは?」
ケイトリン「アークエンジェルのところよ」
ドミニク「あの白無垢野郎、また、俺達に厄介な仕事を押し付ける気だな」

○ サンティーニ航空付近・市道
  走行する250ccの黒いバイク。黒のヘルメットを被ったホークが運転している。
  道路の左の路肩に止まるセダンから男が降りる。道の真ん中に立って、両手を振る男。
  金髪、青いスーツと眼鏡をかけている。
  急ブレーキをかけ、男の前で立ち止まるバイク。
  ヘルメットのバイザーを上げるホーク。
ホーク「何やってる?轢き殺されたいのか!」
男「すみません。あなた、サンティーニ航空のホークさんでしょ?どうして知らせたい事があって…
 お兄さんの事で…」
  神妙な面持ちのホーク。

○ 酒場
  カウンター席に座るホーク。
  グラスを片手に持ち、ウォッカを一気に飲み干す。
  ホークの隣の座席に座る男。ホークに名刺を手渡す。
ホーク「メル・リットマン?」
  男は、メル・リットマン。
リットマン「LUTと言うコンピュータ会社に勤めています。警備管理システムの保守や点検が主な仕事で…」
ホーク「誰から俺のことを聞いたんだ?」
リットマン「ベトナム戦線である作戦に従事した男と親友なんです。そいつからジョンに弟がいることを聞いて」
ホーク「名前は?」
リットマン「ダルト・メーガーソン」
ホーク「聞いた事のない名前だ…」
リットマン「ダルトの奴、今、やっかいな事件に巻き込まれていましてね…その…マフィアの連中に
 捕まっているんです」
ホーク「何をやらかしたんだ?」
リットマン「三日前、酒によって、ローゼン一家の奴を殴ってしまって…」
ホーク「生きてるのか?」
リットマン「わかりません」
ホーク「どこに監禁されているんだ?」
リットマン「テキサスにある別荘だと聞きました。何とかして救い出してやりたいんですが…」
ホーク「…」

○ 病院・個室(夕方)
  ナディアのそばに立つマイケル。
  ナディア、マイケルを呆然と見つめている。
ナディア「メンデスは、見つかったの?」
マイケル「今探しているところだ。三日前、彼とサンフランシスコで会っただろ?」
ナディア「…」
マイケル「その日の行動を教えてくれないか?」
ナディア「ゴールデンゲートを渡って、市内を回り、それからケーブルカーに乗って、フィッシャーマンズ
 ワーフで観光した後、食事して、その後…」
  急に黙り込むナディア。
マイケル「その後?」
ナディア「またケーブルカーで元の場所に戻って、そのまま家に帰った…」
マイケル「メンデスが急に君のそばから離れるようなことはなかった?他の誰かと会って話していたとか?」
ナディア「…いいえ、何も変わった事は、なかったわ」
  怪訝な表情でナディアを見つめるマイケル。

○ ナイト2000車内
  モニターに映るナイト財団本部オフィスにいるデボン。
デボンの声「メンデスを探す必要がなくなった」
  運転席に座るマイケル。
マイケル「どうして?」
デボンの声「一時間前、ロス市内のホテルで奴の遺体が発見された。首筋にナイフのようなもので切られた
 痕があったそうだ。死後二日経っていたらしい」
マイケル「それで、起爆装置は?」
デボンの声「見つからなかった。何者かがそれを奪うためにメンデスを殺害したに違いない」
  ハンドルを叩くマイケル。
マイケル「クソ!」
デボンの声「ナディアは、警察に任せて、お前はもう一度、メンデスの関係者を当たれ」
マイケル「わかった」
  モニターの映像が消える。
キット「ナディアにこの事を教えた方がいいのでは?」
マイケル「彼女は、まだ事故のショックから立ち直っていない。もう少し落ち着いてからのほうが
 いいな。先にルビナに報告しよう」
キット「我々に事件の調査を依頼してきたメンデスの姉ですか?」
マイケル「…そうだ。その前にメンデスが死んだホテルに行くぞ」

○ 病院・駐車場
  エンジンが鳴り響く。駐車スペースから勢い良く走り出て行くナイト2000。

○ サンティーニ航空・倉庫内
  中に入ってくるホーク。
  事務所から出てくるケイトリン。
ケイトリン「どうしたの?こんな時間まで…」
ホーク「車が込んでたんだ…」
ケイトリン「今日は、やけに車が多い日なのね…」
ホーク「ドミニクは?」
ケイトリン「積荷をヘリで運んでる最中よ。あと10分ぐらいで戻ってくるわ」
ホーク「そうか…」
ケイトリン「アークエンジェルに何を頼まれたの?」
ホーク「話は、聞いたけど、断る事にした。ちょっと風邪気味なんだ。じゃあな」
  足早に立ち去るホーク。
ケイトリン「待って、ホーク。ドミニクが話があるって言ってたわよ…」
  立ち止まり、振り返るホーク。怪訝な表情を浮かべる。

○ ルビナの自宅前
  ブルーの大屋根のあるバンガロ風の建物。
  ドアの前に立つマイケル。ドアをノックする。
  扉が開き、顔を出すルビナ・マリソン。
  ロングパーマの黒髪、長身の痩せ型。黒いワンピースを身につけている。
ルビナ「ああ、マイケル…」
マイケル「弟さんの事で話を…」
ルビナ「メンデスが見つかったの?」
マイケル「二時間前、ロス市内のホテルで遺体が見つかった…」
  愕然とし、放心状態のルビナ。
ルビナ「メンデスが起爆装置を盗むなんて考えられないわ…誰かに脅迫されて無理矢理…」
  ルビナ、涙を浮かべている。
  マイケル、ルビナを抱き締め
マイケル「必ず犯人を見つけ出す…」
  ルビナ、マイケルから離れ、
ルビナ「お願いよ」
マイケル「じゃあね」
  立ち去るマイケル。扉を閉めるルビナ。
  ハンカチで涙を拭きながら、リビングに戻る。
  ハンカチを顔から離すと、強かな表情を浮かべている。

○ 同・リビング
  ソファに座っているナディア。
  ナディアの前に立つルビナ。
ナディア「警察?」
ルビナ「マイケルよ」
  ため息をつくナディア。
ナディア「私がここにいる事、気づいたのかしら…」
ルビナ「メンデスの事を知らせに来たの」
  ルビナ、ナディアに背中を向け、本棚の前に立つ。
ナディア「彼、見つかったの?」
  ルビナ、デトニクスの銃にサイレンサーをセットしている。
ルビナ「いいえ…」
ナディア「ねぇ、ルビナ、あなた、三日前、フィッシャーマンズワーフでメンデスと会ってたでしょ?あの時何を…」
ルビナ「昼間の事故で死んどけば良かったのに…」
ナディア「えっ?」
  振り返り、ナディアに銃口を向けるルビナ。引き金を引く。
  ナディアの左胸に銃弾が当たる。口を開けたまま、ソファにしなだれかかり、絶命するナディア。
  ため息をつくルビナ。
ルビナ「面倒臭い事になったわ」
―ACT1 END―

―ACT2―
○ サンティーニ航空・倉庫内事務所
  テーブルの椅子に腰掛けているホーク。
  ホークと対峙するドミニク。
ホーク「エアーウルフの電子部品が盗まれただって?」
ドミニク「洞窟の中でシステムの点検をしていたら、トランスミッションの監視装置とターボシステムの
 回路に異常があったから、うちに持って帰って修理しようと思っていた。だが、ジープの助手席の
 下に置いていた箱がいつの間にか消えていたんだ」
ホーク「何か心当たりは、ないのか?」
ドミニク「帰り道、事故を起こしていた車を見つけて、ドライバーの若い女を助けた。わしの車に乗せて、
 彼女を自宅まで送り届けてやった」
ホーク「その女じゃないのか?」
ドミニク「彼女は、暫くの間気絶してたし、車から降りる時も何も持っていなかった。
 この目で確認したんだ。間違いない」
ホーク「部品がもし、東側に渡りでもしたら、アークエンジェルが黙っちゃいないぞ」
ドミニク「わしとした事が…クソォー!」
  ホーク、困惑した表情を浮かべる。
ホーク「今からその女に会いに行こう」
ドミニク「彼女は、関係ないって言っただろ」
ホーク「俺達の洞窟の近くにいたんだろ?エアーウルフの事も知られたかもしれんぞ」
  困惑した表情のドミニク。

○ ロス市内・国道
  ヘッドライトを照らしながら、走行するナイト2000。
マイケルの声「もうこれで六件目か。何一つ手応えなし…」
  
○ ナイト2000車内
キット「そうぼやかないで。音楽でも聴いて、気分転換をしては、どうです?」
マイケル「良い考えだ。でも、今は、そう言う気分じゃない」
キット「では、私が聞いてるいつもの曲をお勧めします。かなり落ち着きますよ」
マイケル「今ハマってるショパンをか?」
キット「あのしなやかで哀愁のあるメロディ、美しいピアノの旋律がたまりません。彼のセンスを
 私にも少し分けてもらいたい」
マイケル「おまえ、いつから作曲家志望になったんだ?」
キット「今、多重シンセサイザーを使って、ちょっとしたものを作っているところなんです。
 聴いてみますか?」
マイケル「仕事が片付いたらな。ボニーにタイムマシーンに改造してもらって、ショパンに弟子入りしに
 行ったらどうだ?」
  通信のアラームが鳴り響く。
キット「RCからです」
  モニターにナイト財団移動本部トレーラーのコンテナ内にいるRC3(レジナルド・コーネリウス三世)が
  映し出される。
RC3の声「さっき病院から連絡があった。ナディアが姿を消したって」
  唖然とするマイケル。
マイケル「わかった。一度病院に戻る」

○ ロス市内・国道
  エンジン音を高鳴らせ、加速するナイト2000。

○ ロニーの豪邸
  大きな黒鉄の門の前に並んで立っているホークとドミニク。
  暫くして門が開き、ロニーが姿を現す。額の右側に絆創膏を貼っている。
  ドミニク、恐縮し、
ドミニク「夜遅くにすまんな。怪我の具合は、どうだ?」
  ロニー、絆創膏を指差し、
ロニー「この程度よ。心配要らないわ…」
ホーク「ちょっと聞きたい事があるんだ」
ロニー「あなたは?」
ドミニク「わしの友人でホークって言うんだ」
ホーク「昼間、ドミニクのジープに乗った時、足元に箱が置いてあっただろ?」
ロニー「…いいえ、何もなかったわ」
ドミニク「本当にか?」
ロニー「もしあったらすぐに気づくわよ。何か大切なものなの?」
ドミニク「いや、その…」
  ホーク、冷たい目でロニーを見つめ、
ホーク「とても大事なものだ」
  ロニー、ホークの威圧的な態度を感じ取る。
ロニー「私が取ったとでも言いたげな顔ね」
ホーク「あそこで他に何か見たものはないか?」
ロニー「いいえ、何も。私の部屋を調べてみる?見つからなかったら脅迫罪で警察に突き出すわよ」
ドミニク「ホーク、やめとけ。証拠は、何もないんだ。彼女に失礼だぞ」
  ホーク、ロニーに疑いの眼差しを向けながら、その場を立ち去る。
  ドミニク、気まずそうな顔を浮かべ、
ドミニク「すまなかった。人を威嚇するのが得意な奴でな」
ロニー「いいの。何も気にしてないから」
ドミニク「それじゃあ…」
  立ち去るドミニク。
ロニー「あ、待って」
  立ち止まり、ロニーを見つめるドミニク。
ロニー「事故の前のこと、少し思い出したわ。ジープに乗り込んですぐに水筒に入ってた水を飲んだの。
 その後、急に頭がボヤッとして、気づいたらあんな事に…」
  神妙な面持ちのドミニク。

○ ラスベガス・近郊・モハーベ砂漠(深夜)
  昼間の事故付近の道路脇に止まるドミニクのジープ。
  懐中電灯を持ち、地面を照らしながら歩いているホーク。
  立ち止まり、その場にしゃがんで、地面を見つめる。
  地面に足跡がくっきりとついている。
ホーク「ドミニク!」
  遠くから聞こえるドミニクの声。
ドミニクの声「どうした?」
ホーク「こっちに来てくれ」
  ホークのそばにやってくるドミニク。
  ドミニク、ホークが電灯で照らしている
  足跡を見つめる。
ホーク「誰かが、ここに立って、様子をうかがっていたんだ」
ドミニク「つまり、この足跡をつけた奴が電子部品の入った箱を盗んだ犯人ってわけか」
  立ち上がるホーク。
ホーク「そいつは、ロニーを利用したんだ。彼女が車から離れている隙を狙って、水筒の中に
 睡眠薬を入れた…」
ドミニク「わしが横転した車の中からロニーを助けている間に、そいつがジープに近づいて、
 箱を盗み出したってわけだ…となると、やはり、犯人は、部品がエアーウルフのものだと知ってて…」
ホーク「早くエアーウルフを移動させよう」
  歩き出すホーク。動揺した面持ちで、ホークの後をついていくドミニク。

○ 『神の谷』全景(翌日・朝)
  巨大な岩山が立ち並ぶ広大な土地。
  
○ 同・岩山・洞窟内(エアーウルフ秘密基地)
  岩山の頂上の穴から差し込む太陽の光がエアーウルフの黒いボディを輝かせている。

○ エアーウルフ・コクピット
  パワーシステムの『START 1』ボタンを押す指。
  システムが起動し、が電子音が鳴り響く。

○ 同・岩山・洞窟内
  メインローター、テイルローターがゆっくりと回転し始める
  
○ エアーウルフ・コクピット
  メインエンジンのオイルメーターのレベルゲージが上昇し始める。

○ 同・岩山・洞窟内
  エアーウルフの機体がゆっくりと上昇し始める。高い岩山の頂上の穴に向かって高度を上げて行く。

○ 岩山の頂上
  大きく開いた穴から出て、姿を現すエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座り、レバーを握るホーク。フライトシテスムの座席に座るドミニク。
  二人、フライトジャケットに着替え、ヘルメットをつけている。
ドミニク「どこへ移動させるつもりなんだ?」
ホーク「飛ばしながら考える」
ドミニク「ターボは、使えんぞ」
ホーク「よちよち歩きで探すしかないな」

○ ゆっくりと推進し始めるエアーウルフ
  
○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「なぁ、ホーク。おまえ、わしに何か隠してる事はないか?」
ホーク「どうしたんだ急に?」
ドミニク「アークエンジェルにまた手間のかかる仕事を押し付けられたのか?」
ホーク「…昨日、ジョンの情報を握る男と会った」
ドミニク「何だと?ジョンの居場所がわかったのか?」
ホーク「兄貴の居所を知る男は、マフィアに捕まっているらしい。今日、エアーウルフを使って調べに
 行くつもりだったんだ」
ドミニク「なぜ、それを早く言わなかったんだ。すぐに行こう」
ホーク「いや、部品探しのほうが先だ。ターボが使えないと何かと不自由だしな」
ドミニク「すまん、ホーク」
ホーク「いいさ」

○ ナイト財団本部・全景
  建物の前に止まっているナイト2000。

○ ナイト財団本部・デボンオフィス
  デボンのデスクの前に立つマイケル。
マイケル「ナディアまで殺されるなんて…」
デボン「至近距離から胸を撃たれていたそうだ。遺体は、彼女の家の近くのゴミ箱に捨てられていた」
マイケル「これでまた、手がかりを失った」
  デスクの電話が鳴る。
  受話器を取るデボン。
  神妙な面持ちでデボンを見つめるマイケル。
デボン「私がデボン・シャイアーですが…マイケル?ええ、いますとも。ちょっとお待ちを…」
  マイケルに受話器を差し出すデボン。
デボン「ルビナさんだ。お前に話したいことがあるそうだ」
  受話器を受け取り、電話に出るマイケル。
マイケル「マイケルだ」

○ ルビナの自宅
  電話の前に立つルビナ。受話器を持ち、話している。
ルビナ「今朝、自宅にメンデスの名前で荷物が届いたんです。もしかして中身は…」
  ルビナの背後にあるテーブルの上に箱が置かれている。

○ ナイト財団本部
マイケル「俺が行くまで、絶対開けないで」
  電話を切るマイケル。
デボン「どうした?」
マイケル「ちょっと出かけてくる」
  ソファにかけていた革ジャンを持ち、部屋を出て行くマイケル。

○ ネバダ州・砂漠地帯
  砂漠の真ん中に止まる白いリンカーン。
  ドライバーが車から降り、後部席のドアを開ける。白い帽子を被ったアークエンジェルが
  車から降りる。杖をつきながら車の前に立つ。
  空を見上げるアークエンジェル。
  暫くして遠くからヘリのローター音が響いてくる。
  上空に現れるエアーウルフ。
  アークエンジェルの前に迫ってくる。
  スピードを落とし、ゆっくりと高度を下げ、砂煙を巻き上げながら地上に降りてくる。
  腕で顔を覆い、砂煙を避けているアークエンジェル。
  ヘリから降りるホークとドミニク。
  アークエンジェルの前に歩いて行く二人。
アークエンジェル「私は、暇人じゃないんだぞ。わざわざこんなところに呼び出して一体何の用だ?」
  立ち止まる二人。
ドミニク「実はな…」
  話に割って入るホーク。
ホーク「エアーウルフの電子部品を盗まれた」
  愕然とするアークエンジェル。
アークエンジェル「何の部品だ?」
ドミニク「トランスミッション監視用とターボシステムの電子回路だ」
アークエンジェル「どこで盗まれたんだ?」
ホーク「それは、教えるわけにはいかない」
アークエンジェル「もしかして隠し場所がばれたんじゃないだろうな?」
ドミニク「かもしれん。わしのミスだ」
アークエンジェル「エアーウルフの部品は、我々の最先端の技術が結集されているんだ。東側の
 手に渡ったら、情報を解読されて、新たな兵器の開発に利用される」
ホーク「だから素直にあんたに報告した」
  ため息をつくアークエンジェル。
アークエンジェル「犯人の目星は、ついてるのか?」
ホーク「ああ」
  唖然とするドミニク。
ホーク「スペアが欲しい」
アークエンジェル「スペアだと?そこいらで売ってる玩具とわけが違うんだぞ」
ホーク「それくらい知ってるさ。あんたなら簡単に用意できる事もな」
アークエンジェル「24時間以内に、部品を取り戻せなかったら、エアーウルフを返してもらうぞ」
ホーク「それが条件か。わかった」
  唖然とするドミニク。
ドミニク「おい、ホーク!」
アークエンジェル「夕方までになんとかしよう」
ホーク「今から受け取りに行く」
  アークエンジェル、呆れた様子で、
アークエンジェル「…1時ジャストに来い。遅れるなよ」
  車に乗り込むアークエンジェル。
  ホーク達の前から走り去って行くリンカーン。
ドミニク「あんな無茶な条件を飲みやがって。もし見つからなかったどうするつもりだ?」
ホーク「…手掛かりはあるさ」
  ホーク、笑みを浮かべ、エアーウルフに向かって歩き出す。
  困惑しているドミニク。

○ ルビナの自宅前
  走行してくるナイト2000。
  道路脇に立ち止まる。車から降りるマイケル。急いで、玄関先に向かう。

○ 同・リビング
  テーブルの前にやってくるルビナとマイケル。ルビナ、テーブルの箱を指差し、
ルビナ「この箱よ?」
  マイケル、箱を持ち、調べている。
  左手首につけているコムリンクに話し出す。
マイケル「キット、箱の中身を調べてくれ」
キットの声「了解」
  怪訝な表情を浮かべるルビナ。

○ ナイト2000車内
  モニターに映る箱。電子音が鳴り、箱の中身をサーチしている。

○ ルビナの自宅・リビング
  コムリンクから聞こえるキットの声。
キットの声「マイケル、火薬反応は、ありません。爆弾では、ないようです」
  マイケル、箱を開ける。
  中を覗き込み、何かを取り出す。電子部品を掴んでいるマイケル。
  ルビナ、部品を見つめ、
ルビナ「何なの?」
マイケル「何かの部品みたいだ。でも、探していたものとは、違う」
ルビナ「爆弾じゃなかったのね…」
マイケル「もう大丈夫だ」
ルビナ「何かの手がかりになるといいけど…」
マイケル「言うに及ばず。十分役に立つよ」
  安堵の表情を浮かべるルビナ。
マイケル「借りていくよ」
ルビナ「ええ、どうぞ」
  マイケル、そのまま、部屋を出て行く。
  マイケルがいなくなると同時に不敵な笑みを浮かべるルビナ。
  ルビナ、電話の前に行き、受話器を上げ、ボタンを押す。
ルビナ「あ、もしもし、私、ルビナ・マリソンと申します。開発部門のメル・リットマンを呼び出して
 欲しいんですけど…」

○ 森林公園周辺・道路
  緩やかなS字の道を走るナイト財団移動本部のコンテナつきの黒いトレーラー。自動走行している。
  コンテナには、チェスの「騎士(ナイト)」のマークがついている。
  トレーラーから数百キロ後方の道を猛スピードで走行するナイト2000。
  トレーラーのコンテナの後ろに接近する。下りているゲートをよじ登り、コンテナの中に入る。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  立ち止まるナイト2000。
  車から降りるマイケル。
  奥の部屋から出てくるRC3。黄色いTシャツと黒のジーパンを身につけている。
  対峙する二人。
マイケル「ボニーは?」
RC3「今日は、お休み。大学の後輩の結婚式で、船上パーティなんだとさ…」
マイケル「パーティか。ここ最近、ご無沙汰だ。羨ましいね」
  RC3、マイケルが持っている箱を見つめ、
RC3「何それ?」
マイケル「メンデスが送ってきた荷物さ。至急調べて欲しい」
  RC3に箱を手渡すマイケル。
  二人、テーブルの前に座る。箱から部品を取り出すRC3。部品をあらゆる方向から見回している。
マイケル「キットにも調べてもらったが、手がかりになるものは、見つからなかった」
RC3「こんなもん見たことねぇな。ロケット用の部品か何かかな?」
  マイケル、箱の中に入っていた赤土を指で取り見つめる。
マイケル「キット、この土の成分を調べてくれ」
  ナイト2000に乗り込むマイケル。

○ ナイト2000車内
  パネルボードの化学分析装置の箱の蓋が開く。マイケル、指についた土を箱の中に入れる。
  箱が閉まり、分析が始まる。
  モニターに分析結果が映し出される。
キット「どこにでもある普通の赤土ですが、赤土を形成する化学物質の比率を割り出し、データを照合した結果、
 これと似た成分を持つ土のある場所を特定できました」
マイケル「どこだ?」
キット「モハーベ砂漠です」
マイケル「よし、行ってみよう」
  エンジンをかけるマイケル。

○ 森林公園周辺・道路
  走行するナイト財団移動本部トレーラー。トレーラーのコンテナのゲートをバックしながら降りている
  ナイト2000。路上に出ると、華麗に180度バックターンし、トレーラーと逆方向へ走り出す。
  ナイト2000が走り去ると同時に、道路脇の木陰に隠れていた薄茶色のジャガーXJが走り出し、
  トレーラーの後を追い始める。

○ サンティーニ航空・倉庫前
  立ち止まるドミニクのジープ。運転席からホーク、助手席からドミニクが降りる。
  倉庫に向かって歩き出す二人。二人の前に駆け寄ってくるケイトリン。
ケイトリン「二人とも朝っぱらからどこに行ってたのよ?」
ドミニク「すまんすまん、久しぶりに二人でささやかなブレイクファストがしたくてな」
ケイトリン「また柄にもない事言っちゃって。そんな事より、さっき男の人から連絡があったのよ」
ホーク「誰からだ?」
ケイトリン「それが名前を名乗らなくて。部品を盗んだ犯人を知りたければ、昨日の事故の現場へ
 来いって…一体何の事?」
  ホーク、ドミニク、慌てて、ジープに戻る。
ケイトリン「ねぇ、ちょっと、どうしたのよ?」
  ジープに乗り込む二人。スピードを上げ走り去って行くジープ。
  
○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  突然、扉が蹴り開けられる。
  黒いマスクと迷彩服を着た4人の男達がマシンガンを持って現れる。
  先頭にいる男が天井にマシンガンの銃口を向け、撃つ。激しい銃声が轟く。
  天井にぶら下がっていたシャンデリアが瞬間的に破壊され、勢い良く床に落ちる。
  デボン、咄嗟に電話の受話器を掴む。
  男、デボンにマシンガンの銃口を向け、
男「受話器を下ろせ!」
  デボン、男を睨み付けながら、ゆっくりと受話器を下ろす。

○ 森林公園付近・道路
  緩やかな勾配を上っているナイト財団移動本部トレーラー。

○ ナイト財団移動本部トレーラー・コンテナ車内
  テーブルの前に座るRC3。口笛を吹きながら部品のネジをドライバーではずしている。
  突然、激しい振動が起きる。激しく揺さぶられるRC3。
  ブレーキ音が鳴り、トレーラーが急停止する。
  警告音のアラームが鳴り始める。
RC3「うさぎでも轢いちまったか?」
  RC3、コンピュータの前に行き、スイッチを押す。コンテナの扉がゆっくりと下に降り始める。

○ 森林公園付近・道路
  トレーラーの前方の道を二台の黒いロールスロイスが互いに前を向き合うようにして
  立ち止まり、道を塞いでいる。
  ロールスロイスから一斉に黒いスーツを着た男達が降りてくる。
  コンテナから降りているRC3。
  コンテナ前に勢い良く迫ってくるジャガーXJ。車体を横に滑らせながら立ち止まる。
  セダンから降りる黒いスーツとサングラスをした男達。
  男達を見つめるRC3。
  振り返り、トレーラーの前方を確認する。
  数人の男達がトレーラーの周りを取り囲んでいるのが見える。
  前を向くRC3。近づく二人の男。
RC3「誰にも頼んだ覚えないのに、一体何の祭りだ?」
  左側に立つ巨漢の男がRC3の顔をいきなり殴りつける。
  ノックアウトし、その場に倒れるRC3。
  男、RC3を起き上がらせ、肩に乗せて歩き出す。

○ ナイト財団本部・デボン・オフィス
  両手を挙げ、立たされているデボン。
  デボンと対峙する男達。
  真ん中の男の両脇に立つ男達がデボンにマシンガンの銃口を向けている。
  真ん中の男、黒いめざし帽をはずす。
  薄毛の金髪の男・タウロ。大きな鋭い目でデボンを見ている。
デボン「何しに来た?」
タウロ「まぁ、落ち着けよ。すぐに殺しは、しない」
デボン「金か?ならば要求を聞こう」
タウロ「あえて言うなら、我々は、お前たちの見張り番を任されているだけだ。余計な手出しをさせないためにな」
デボン「我々が何の邪魔をしたと言うんだ?」
タウロ「一緒に来てもらおうか。仲間もお待ちかねだ」
デボン「マイケルやRC3も襲ったのか?」
タウロ「行けばわかる。連れて行け」
  デボンの前に向かう二人の男。デボンの腕を掴み、部屋から連れ出す。
―ACT2 END―

―ACT3―
○ モハーベ砂漠
  土の大地を高速で駆け抜けているナイト2000。
  スピードを落とし、立ち止まる。
  エンジンを止め、ドアを開けるマイケル。
  車から降り、辺りを見回す。
マイケル「キット、この付近を調べてくれ」
  ナイト2000のスキャナーが赤い光を横になびかせながら、唸る。
キットの声「確認できるのは、鉱物の塊の岩石や砂ばかりで、他には、何も見当たりません」
マイケル「きっと、あの部品の元になるものがどこかに隠されているのかもしれない」
  マイケル、車に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。
マイケル「RC3を呼び出せ」
  通信の呼び出し音が鳴り響くがノイズ音が続き、
キット「おかしいですね。回線がつながりません…」
マイケル「トレーラーが走行している位置は、確認できるか?」
キット「駄目です。信号が途絶えています」
マイケル「デボンと話す」
  通信の呼び出し音が鳴り響く。
キット「マイケル、本部の回線にも何らかの異常が見受けられます…」
マイケル「急いで戻るぞ」
  マイケル、エンジンをかける。

○ モハーベ砂漠
  土煙を上げながら、勢い良くバックターンし、走り出すナイト2000。
   ×  ×  ×
  切り立った岩山の上空を飛行しているエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席にホーク、フライトシステムの座席にドミニクが座っている。二人、ヘルメットを被っている。
ドミニク「トランスミッションの監視制御装置もターボシステムも今のところ正常に動いている。
 アークエンジェルの奴、なんだかんだ言って、簡単に新しい部品を譲ってくれたが、何か裏がありそうだな」
ホーク「そりゃあ、喜んで手を貸すさ。俺達が部品を見つけ出せなかったら、自分の手元に
 エアーウルフが戻るんだ。きっと戻らない方の可能性に賭けているに違いない」
ドミニク「あいつが薄ら笑いしている顔を想像したら、なんだかむかっ腹が立ってきた」
  モニターを見つめるドミニク。
ドミニク「北北西7キロ前方、わし達の洞窟の付近を走る車を確認した」
ホーク「特徴は?」
  モニターに走行する車の3Dイメージが映し出される。データがサーチされ、車種が特定される。
ドミニク「黒いトランザムだ。部品を盗んだ犯人かもな」
  ホーク、ヘルメットのバイザーを下ろし、
ホーク「バイザーに映してくれ」
ドミニク「了解」
  キーボードを打つドミニク。
ホーク「もっとアップだ」
  ホークのバイザーにカメラの映像が映し出されている。
  砂漠の道を走行しているナイト2000の後ろ姿が小さく映る。

○ ナイト2000車内
  ダッシュボードの『SURVEILLANCE MODE(監視モード)』のレベルゲージが光る。
キット「マイケル、上空からヘリが近づいてきます」
マイケル「海兵隊か何かのか?」
キット「いいえ。そうではないみたいです。スピードを上げてこっちに接近しています」
マイケル「確認する必要があるな」
キット「どうするんです?」
マイケル「ちょっと遊んでやるか」
  マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ スーパー追跡モードに変形するナイト2000
  Uターンして、逆方向に走り出すと、爆音を響かせ、瞬間的に200キロ以上のスピードで走り出す。

○ 上空を飛行するエアーウルフ

○ エアーウルフ・コクピット
  モニターに映るナイト2000の姿を見つめ、仰天しているドミニク。
ドミニク「あの車、逆方向に走り出したぞ」
ホーク「俺達に気づいて逃げ出したようだな」
ドミニク「どうなってんだ、こりゃあ?」
ホーク「どうした?」
ドミニク「信じられん。あの車、300キロ以上のスピードが出てるぞ」
ホーク「計測システムが故障したんじゃないか?」
ドミニク「いいや、狂いはない」
  ホーク、レバーを引く。

○ 機首を下げ、急角度で高度を下げるエアーウルフ
  地上から300mのところで機首を上げ、低空飛行を始める。
  猛スピードで走行するナイト2000の後方の上空数百メートルまで近づくエアーウルフ。

○ ナイト2000車内
キット「ヘリが高度を下げて、さらに接近しています」
  後ろを向くマイケル。
マイケル「やっぱり、狙いは、俺達のようだな」
キット「どうします?」
マイケル「もっと、近づかせて、マイクロジャマーで、引きずり下ろしてやろう」

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「どうだ?」
ホーク「お前の言ったとおりだ。どんなチューンナップをしたら、あんなスピードが出るんだ?」
ドミニク「まぁ、どんだけスピードが出ようが、エアーウルフ様に適う相手じゃない」
ホーク「こっちも驚かしてやろう」

○ エアーウルフの両翼の先端についているチェーンガンの砲身が伸びる
  30mm機関砲、40mmキャノン砲から勢い良く連射される弾丸。
  走行するナイト2000のそばをいくつもの弾丸が跳ねる。ボディにも激しく当たっているが、
  火花を上げて、跳ね返っている。

○ ナイト2000車内
キット「かなり攻撃力のあるヘリのようです」
マイケル「そのようだな。派手にやってくれるぜ」

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「おまえらしくないぞ。どこを狙ってるんだ?」
ホーク「弾は、ちゃんと当たってる」
ドミニク「じゃあ、何か…あの車のボディには、戦車並みの装甲がしてあるとでも言いたいのか?」
ホーク「常識では、考えられんが、それもありうる。ランチャーを下ろせ」
ドミニク「馬鹿を言え。まだ犯人かどうかわからんのに。それに車の中に部品を乗せているかもしれんぞ」
ホーク「軽く横転させるだけだ」
  ドミニク、困惑した表情を浮かべながら、『ADF POD』のボタンを押す。

○ エアーウルフ機体下部の格納庫が開く
  『ADF POD』ランチャーが現れる。

○ エアーウルフ・コクピット
  ホークのバイザーにターゲット補足のセンサーが光り始める。
  レバーの赤いボタンを押すホーク。

○ ランチャーからヘルファイヤー・ミサイルが発射される

○ ナイト2000車内
キット「マイケル。ミサイルです!」
  マイケル、さらにアクセルを踏み込む。

○ モハーベ砂漠
  エンジン音を轟かせ、さらにスピードを上げるナイト2000。
  右に曲がりミサイルをスッと避ける。ナイト2000を逸れ、道路脇の砂の上に着弾するミサイル。
  爆音と共に地面の砂を吹き飛ばし、大きな炎を上げる。

○ エアーウルフ・コクピット
  唖然とするドミニク。
ドミニク「ミサイルをかわされたぞ!」
  ヘルメットのバイザーを上げるホーク。
ホーク「普通の車ならあの一撃でストップしてるはずだ…甘く見過ぎていたようだ。先回りして今度は、
 正面から狙う」
  ホーク、レバーの『TURBO』の赤いボタンを押す。

○ 電子音と同時にエアーウルフのツインローターから赤い閃光がほとばしる
  瞬間的にスピードを上げ、高速で飛行し始めるエアーウルフ
  ナイト2000を追い越し、一瞬で飛び去って行く。

○ ナイト2000車内
  フロントガラス越しに見えるエアーウルフ。一瞬で空の彼方に消えて行く。
マイケル「異常なスピードだ…」
キット「一応、映像を記録しましたが、一瞬で飛び去ってしまったので確認できるかどうか…」
マイケル「向こうも只者じゃなさそうだな」
キット「試しに飛行速度を測定したところ、時速400キロから瞬間的にマッハ1にまで
 数値が跳ね上がりました」
マイケル「マッハ1だって?コンコルドも真っ青だな」

○ 上空を勢い良く旋回するエアーウルフ
  180度旋回して、高度を下げる。地上から20mの高度で飛行し、
  走行するナイト2000の正面に向かって突き進んで行く。

○ ナイト2000車内
  マイケル、正面を見つめ、
キット「また戻ってきました」
マイケル「今度は、本気でかかってくるぞ」
キット「ミサイルを喰らったら、一環の終わりです。気をつけてください」
  マイケル、『SMOKE RELEASE』のボタンを押す。

○ ナイト2000のリアバンパーの下から白い煙が発生する。
  高速で車体をスピンさせながら、煙を撒き散らすナイト2000。

○ エアーウルフ・コクピット
  地上に広がる白い煙を見つめるホーク。
ドミニク「姿が見えなくなったぞ!」
ホーク「サーモグラフィック(熱感知)に切り替えろ」
  バイザーを下ろすホーク。
ドミニク「ちゃんと狙いをはずせよ」
ホーク「わかってる」
  ホーク、レバーの先端の赤いボタンを押す。

○ エアーウルフのADFポッドからヘルファイヤー・ミサイルが発射される

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、ミサイルです!」
マイケル「よし、もっとヘリに近づくぞ!」
  マイケル、『TURBO BOOST』のボタンを押す。
  
○ ジェットエンジンの爆音を轟かせながら空高くジャンプするナイト2000
  ジャンプするナイト2000のそばに勢い良く落ちるミサイル。空高く炎を上げる。

○ エアーウルフ・コクピット
  フロントのウインドウ越しにジャンプするナイト2000が迫ってくる。
  バイザーを上げるホーク。驚愕する。

○ ナイト2000車内
キット「マイケル、マイクロジャマーの有効範囲に入りました」
マイケル「よし!」
  マイケル、『MICRO JAMMER』のボタンを押す。
  モニターに、宙に浮かぶヘリとそれに向かってジャンプする車の3Dイメージが映し出される。
  車の前部から妨害電波を表す波のイメージが表示される。

○ 前進するエアーウルフの機体下部とジャンプして宙に浮かぶナイト2000の
   ルーフが接触する

○ エアーウルフ・コクピット
  機体が少し揺れる。興奮気味に怒鳴り散らすホーク。
ホーク「なんなんだ、あの車は?」
ドミニク「ぶったまげだな」
ホーク「機体に何か当たったぞ」
ドミニク「少しかすった程度だろう。とくに異常はない」

○ 勢い良く着地するナイト2000
  また、高速で走行し始める。

○ ナイト2000車内
  一瞬後ろを覗き込むと雄叫び上げるマイケル。
マイケル「ワォ!やばかったぁ」
キット「マイケル、あのヘリには、マイクロジャマーが通じませんでした」
マイケル「ヘリは、どこに行った?」
  モニターにレーダー画面が映る。
キット「我々の後方2.5キロ地点を飛行中です」
マイケル「元に戻すぞ!」
  マイケル、『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。
  
○ ボディ各所の突き出たパーツが収納され、元の姿に戻るナイト2000

○ ナイト2000車内
キット「ミサイルの衝撃でボディに30%のダメージを受けました。また、高速でジャンプしたため、
 着地した際にサスペンション及び数箇所の回路に故障が出ました」
マイケル「また戻ってくる前にどこかへ非難しないと」
  モニターに周囲の地形のワイヤーイメージが映る。岩山のイメージにズームアップ。山の麓の
  部分が赤く光る。
キット「良い場所が見つかりました」
マイケル「いいぞ。急ごう」

○ 上空を飛行するエアーウルフ
  機体を右側に大きく傾ける。

○ エアーウルフ・コクピット
ドミニク「あれは、戦車よりもたちの悪いマシーンだぞ」
ホーク「…どこに行った?」
  キーボードを打ち込んでいるドミニク。
ドミニク「駄目だ、どこかに消えちまった」
  ため息をつくホーク。
ホーク「仕方ない。降りるぞ」

○ ホバリングしながら地上に降りてくるエアーウルフ
  砂煙が舞い上がる。着陸装置のタイヤを出し、砂の大地に着地する。
  ヘリから降りるホークとドミニク。
ホーク「俺は、東に行く。おまえは、西のほうを探せ」
  方々に分かれて走り出すホークとドミニク。
  
○ 岩山・麓
  小さく空いた洞穴の中に隠れているナイト2000。
  マイケル、運転席に座ったまま、険しい顔つき。
マイケルの声「様子は、どうだ?」

○ ナイト2000車内
キット「申し訳ございません。どうやらレーダーにも故障が出始めているようです」
マイケル「参ったな。デボンやRC3とも連絡がつかないんじゃ、おまえを修理する事もできない」
キット「ボニーなら、夜には、自宅に戻るはずです」
マイケル「日が暮れるまでずっとここに隠れてろって言うのか?」
キット「ヘリのミサイルでやられるよりは、マシです」

○ モハーベ砂漠
  ホーク、しゃがみこみ、地面を見つめる。砂の上についているタイヤ跡を見つける。
  立ち上がるホーク。
  ホークの後ろから聞こえてくる車のエンジン音。振り返るホーク。白いフォード・トリノがホークの前に
  突進してくる。ホーク、車と軽く接触し、弾き飛ばされる。地面を転がるホーク。
  立ち止まる車。車の運転席から黒いスーツの男・アストン・テロル、助手席からサングラスをかけ、
  ベージュのワンピースを着たルビナが降りてくる。
  アストン、うつ伏せで倒れているホークに近寄る。しゃがみこみ、ホークの様子をうかがっている。
ルビナ「死んだの?」
アストン「いいえ…息は、あります」
ルビナ「もう一人は?」
アストン「ナバスが探しています」
ルビナ「その男を運んで」
  アストン、ホークを抱き上げ、肩に乗せて車へ運ぶ。
  辺りを見回すルビナ。
   ×  ×  ×
  西の方角。遠くに見える赤い岩山。砂の大地を歩いているドミニク。
  正面を見つめ、咄嗟にそばにある小さな岩の陰に身を隠す。
  スーツを着た二人の男達が近づいてくる。
  二人、片手に銃を持っている。
  男達、辺りを見回しながら、二手に分かれて、立ち去る。
  首を傾げ、憂いの表情を浮かべるドミニク。
ドミニク「一体どうなってやがる…」
    ×  ×  ×
  エアーウルフの前に立ち止まるトリノ。
  車から降りるアストンとルビナ。
  後部座席に座っているホーク。男、ホークに銃を向ける。
アストン「早く降りろ」
  ホーク、しぶしぶ車から降りる。
  ルビナ、ホークと対峙し、
ルビナ「見事なパフォーマンスだったわね。さぁ、もう一度飛ばしてもらおうかしら」
ホーク「断る」
ルビナ「そう。じゃあ代わりにお友達をあの世に飛ばしてもいいけど」
ホーク「おまえら何者なんだ?」
  サングラスをはずすルビナ。薄笑いする。
ルビナ「リットマンと言う男に二週間ほどドミニクを監視させたの。二日前ようやく、
 突き止めたのよ。この場所を…」
ホーク「じゃあ、兄貴の情報は、でっちあげか?」
ルビナ「残念ね。エアーウルフは、テキサスで奪うつもりだったけど、当初の計画にずれが出始めたから、
 ここであなた達を引き合わせることにしたの」
ホーク「あなた達?おまえらの狙いは、エアーウルフだけじゃないのか?」
  ルビナ、鋭い眼光をホークに向け、
ルビナ「早く乗って」
  ホーク、男に腕を捕まれ、エアーウルフのドアの前に向かう。
  ルビナの前にやってくる二人の男。
  ルビナ、ナバスに話しかける。
ルビナ「ドミニクは、見つかった?」
ナバス「いいえ…」
ルビナ「車のほうは?」
ナバス「カート達が探していますが、まだ連絡がありません」
ルビナ「もういいわ。カートと合流して車を早く見つけ出して」
ナバス「わかりました」
  ナバス達、ルビナの元から立ち去る。
  ルビナ、エアーウルフに乗り込む。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。その隣に座るルビナ。ホークに銃を向けている。
ホーク「そんな物騒なもん持って…俺に当たったら、どうする気だ?」
  ルビナ、銃を下ろし、
ルビナ「それもそうね」
  ホーク、ヘルメットを被り、レバーを握る。

○ 離陸するエアーウルフ
  3つの車輪をしまい、ホバリングしながらゆっくりと高度を上げている。機体を右に回転させている。

○ モハーベ砂漠
  岩陰に座るドミニク。遠くから聞こえるヘリのローター音を耳にし、空を見上げる。
  上空を飛ぶエアーウルフ。赤い岩山を越えて、飛び去って行く。
  寂しそうにエアーウルフを見つめるドミニク。
ドミニク「ホークの野郎…わしをこんなところに置き去りにしやがって…」
   
○ 夕陽に向かって突き進んでいくエアーウルフ
―ACT3 END―

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