『ナイトライダーvsエアーウルフ』 byガース 「ガースのお部屋」
KNIGHT RIDER vs AIRWOLF

【ACT4→5】

―ACT4―
○ 岩山の麓・洞穴
  赤いスキャナーを光らせ止まっているナイト2000。運転席に座っているマイケル。
マイケルの声「どれくらい経った?」
キットの声「まもなく1時間です」

○ ナイト2000車内
  フロントガラス越しに外の様子を見つめるマイケル。
マイケル「外も薄暗くなってきた。もう諦めて、帰った頃だろう。そろそろ行くか」
キット「油断は、大敵ですよ」
マイケル「心配するなって」
  エンジンをかけるマイケル。
  アクセルを踏み込み、勢い良く発進させる。

○ モハーベ砂漠
  紫色の薄暗い空の下を当てもなく歩くドミニク。
  ドミニク、前を見つめ、また、そばの岩陰に身を隠す。
  接近してくる青いローバーの車。ヘッドライトを光らせている。
  ドミニクのそばを横切って行く車。
  ドミニク、車を見つめ、
ドミニク「まだうろちょろしてやがるのか…」
  ドミニクの後ろで物音がする。
  振り返るドミニク。
  黒いスーツを着た男・カートが立ち、銃を向けている。
  ドミニク、ジャケットのポケットに入れていた銃を放り投げ、
ドミニク「わかったわかった…降参だ…」
   ×  ×  ×
  小さな岩が点在する砂の上を土煙を上げながら走行するナイト2000。
  ヘッドライトを光らせている。
キットの声「マイケル、前方から車が接近してきます」
マイケルの声「俺達以外にも風変わりな奴がいるみたいだな…」

○ ナイト2000車内
キット「もしかしたら、さっきのヘリの仲間では?注意してください」
マイケル「ヘリは、もうどこかへ消えちまったんだろ?考えすぎだろ」
  フロントガラス越しに見える青いローバー。突然、車体を横に滑らせて、道を塞ぐ。
  男達が一斉に車から降り、ナイト2000に向けて銃を撃ち始める。
  フロントガラスやボディに当たる銃弾。火花を上げながら、跳ね返している。
キット「これでも考え過ぎだと?」
マイケル「撤回だ。キット、あの車のタイヤをパンクさせるぞ」
  マイケル、『THERMO DYNAMIC GENERATION(熱源発生装置)』の赤いボタンを押す。
  モニターに車のイメージが映る。4つのタイヤのイメージが赤く光る。

○ ローバーのタイヤが次々とパンクする
  男達、破裂音に気づき、タイヤを見つめる。
  その隙にスピードを上げ、ローバーに接近するナイト2000。
  激しく銃を撃ち続ける男達。ローバーの横を潜りぬけ、走り去るナイト2000。
  男達、必死に銃を撃ち続けている。

○ ナイト2000車内
  後ろを覗くマイケル。
マイケル「案外楽勝だったな」
キット「マイケル、100m先に人体反応を確認しました」
マイケル「またか。お次は、何人だ?」
  モニターにドミニクとその後ろを歩くカートの後ろ姿が映る。
キット「二人いますが、どうやら前を歩く男は、後ろの男に捕まっているようです」
  モニターを見つめるマイケル。
マイケル「捕まってるほうは、フライトジャケットを着てるな。さっきのヘリのパイロットかもしれない」
キット「助けるんですか?」
マイケル「人助けは、嫌いじゃないだろ?」

○ モハーベ砂漠
  歩いているドミニク、その後ろにカート。カート、ドミニクの背中に銃口を突き立てている。
  後方から聞こえてくる車のエンジン音。立ち止まり、振り返る二人。
  迫ってくるナイト2000。ヘッドライトが二人を照らす。片手で光をさえぎりながら、車に銃を撃つカート。
キットの声「男のそばから離れて」
  ドミニク、慌てて、走り出し、地面に突っ伏す。
  ナイト2000の右のドアが開く。カートに突進し、ドアで弾き飛ばす。
  急ブレーキで立ち止まるナイト2000。
  立ち上がるドミニク。車内を覗き込む。
マイケル「さぁ、早く乗って」
ドミニク「黒のトランザム…おまえ、もしかして…?」
マイケル「ここで野宿するつもりなら、無理には、誘わないけど」
ドミニク「冗談じゃない…」
  ドミニク、慌てて、駆け出し、ナイト2000の助手席に乗り込む。
  発進するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。
  ドミニク、マイケルを睨み付けている。
ドミニク「部品を返してもらおうか」
マイケル「部品?」
ドミニク「とぼけんな。エアーウルフの電子部品を盗んだのは、おまえだろ?」
マイケル「エアーウルフ?」
ドミニク「まだ白を切る気か?」
マイケル「あんた、あの黒いヘリのパイロットだろ?デボン達をどこにやった?」
ドミニク「デボン?わし達は、おまえが盗んだヘリの部品を取り戻そうとしただけだ」
キット「マイケル、もしかして、その部品と言うのは、メンデスがルビナに送ってきた荷物の事では?」
  呆然としているドミニク。
ドミニク「誰だ?今喋りやがったのは?」
マイケル「ああ…あの部品の事か…」
ドミニク「ほら、見ろ。やっぱり犯人は、おまえじゃないか」
マイケル「そうじゃない。あの部品は、俺達が調べている事件の犯人が送ってきたものだ」
ドミニク「何の事件だ?」
マイケル「最新型の起爆装置が盗まれたんだ。送られてきた部品は、その起爆装置だと思って
 犯人の姉から回収したものだ」
ドミニク「部品は、どこにあるんだ?」
マイケル「財団のトレーラーだけど…今、連絡が取れない」
ドミニク「財団?」
マイケル「俺は、マイケル・ナイト。ナイト財団と言うところで働いてる。あんたの名前は?」
ドミニク「ドミニク・サンティーニだ。どうして連絡が取れないんだ?」
マイケル「俺にもわからない。キット、もう一度回線をつないでみてくれ」
キット「何度やっても駄目です、マイケル」
  怪訝な表情でメーターパネルを覗き込むドミニク。
  マイケル、ドミニクの様子を見つめ、
マイケル「気になってるみたいだから、紹介してやれ」
キット「私は、『KNIGHT INDUSTRY 2000』。キットと呼ばれています。
 この車のメインコンピュータです。どうぞ、よろしく」
  唖然としているドミニク。
ドミニク「変わった生き物を飼っとるな…」
マイケル「よく吠えるけど、噛みつきはしないよ」

○ 砂漠の大地を走り去って行くナイト2000

○ ロッキー山脈麓・牧場地(夜)
  広大な草原の大地。遠くに見える湖。
  夜空に響くローター音。
  ライトを照らしながら、飛んでくるエアーウルフ。
  ホバリングしながら、ゆっくりと高度を下げている。着陸装置から車輪を出し、着地する。

○ 同・地下牢
  らせん状の階段を下りているホーク。その後ろにルビナとタウロが続く。
  通路を歩き、ドアの前に立ち止まる。
  タウロ、ドアの鍵を開ける。

○ 同・1号監禁室
  辺り一面真っ白な壁の狭い部屋。
  中に入れられるホーク。
  後からルビナとタウロも入ってくる。
  二人と顔を合わすホーク。
ホーク「せめて、テレビか新聞ぐらいは、置いといてもらいたかったな」
ルビナ「そのうちあなた自身がテレビや新聞を賑わせるヒーローになるわ」
ホーク「俺がヒーローだって?じゃあ、おまえらは、さしづめキャットウーマンとペンギンってところか」
ルビナ「冗談を言ってる暇があるなら、お友達の心配でもしたらどう?」
ホーク「ドミニクは、連れてこなかったのか?」
ルビナ「パイロットは、あなた一人で十分。今頃、砂に埋もれて岩の一部にでもなってるかもね」
ホーク「あいつに万が一の事があったら、おまえらの寿命も縮まるぞ」
ルビナ「喋り過ぎる男は、タイプじゃないわ」
  ルビナ、不敵な笑みを浮かべながら部屋を出て行く。タウロも後に続く。
  険しい表情を浮かべるホーク。

○ 住宅街・ボニーの住むマンション前(深夜)
  4F建ての高級感のある建物。
  玄関口から歩いて出てくるマイケルとボニー・バースト。
ボニー「デボンとRC3が連れ去られたってどう言う事なの?」
マイケル「デボンのオフィスに何かの集団が侵入した形跡があった。RC3は、トレーラーごと姿を消した」
ボニー「一体誰がこんな事…」
マイケル「そいつを調べるためには、まず、キットの修理が必要なんだ」
  道路脇に止まっているナイト2000に乗り込む二人。
  エンジンをかけ、発進するナイト2000。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。助手席に座るボニー。
ボニー「キット、損傷箇所は、自分で判断できる?」
キット「自己診断回路の一部がショートしましたが、それ以外は、すでにチェック済みです」
ボニー「後で結果をプリントアウトして」
キット「わかりました」
ボニー「トレーラーに必要な機材を全て積んだままだったのよ。財団の研究所は、
 今、他の研究グループが使っているし」
マイケル「心配は、無用さ。修理場所は、こっちでちゃんと準備した」
ボニー「準備したって、どこに?」

○ サンティーニ航空・倉庫内
  事務所の前で話すケイトリンとボニー。
ケイトリン「古い倉庫だから、あまり大したものは、揃ってないけど…」
ボニー「修理をするには、十分なスペースだわ。私、ボニーバースト」
  ボニー、ケイトリンと握手する。
ケイトリン「ケイトリン・オシャネシィよ」
  ボニー、目の前に止まっている修理中のヘリを見つめ、
ボニー「できれば、あそこに止まってるヘリを少し動かしてもらいたいんだけど…」
ケイトリン「ごめんなさい。今すぐ移動させるわ」
  ケイトリン、ヘリに向かって歩いて行く。

○ 同・事務所
  話をするマイケルとドミニク。
ドミニク「あんたの上司や仲間が消えたって?」
マイケル「きっと砂漠であった連中と関係があるに違いない」
ドミニク「何か手がかりは、あるのか?」
マイケル「さっき、メンデスの姉のルビナと連絡が取れた」
ドミニク「やっぱり部品を盗んだのは、そのメンデスって男だったのか…」
マイケル「部品が盗まれたのは、昨日だったんだろ?メンデスは、二日前に殺されたんだ。
 そっちは、本当に何の手がかりもないのかい?」
ドミニク「…一つだけある。メル・リットマンって男だ」
マイケル「何者なんだ?」
ドミニク「ホークには、ベトナムで行方不明になった兄貴がいてな。そいつが兄貴の情報を
 ネタにホークに近づいてきたんだ。何か匂うんだ。ホークも薄々気づいていたのかもしれん」
マイケル「居所は、わかるのか?」
ドミニク「ホークにメモをもらった」
  ドミニク、ジャンパーの中からメモを取り出し、マイケルに手渡す。

○ 同・倉庫内
  中に入ってくるナイト2000。
  立ち止まる。運転席からボニーが降りてくる。
  事務所から出てくるマイケル。ケイトリンが慌ててマイケルの前にやってくる。
マイケル「おっと、失礼」
  ケイトリン、笑みを浮かべ、 
ケイトリン「どうも」
  事務所の中に入っていくケイトリン。
  ボニーの前で立ち止まるマイケル。
マイケル「キットの修理にどれくらいかかる?」
ボニー「故障の被害は、大した事ないわ…最低でも6時間ぐらいは必要ね…」
  唖然とするマイケル。
マイケル「大した事ないのに、朝まで?」
ボニー「必要な部品を調達する時間が要るの」
  マイケル、壁にかかっている時計を見つめる。
マイケル「じゃあ、俺は、その間ルビナのガードでもしてくるか。彼女も狙われるかもしれないしな」
  ボニー、右手に新型のコムリンクを持っている。
ボニー「マイケル、この新しいコムリンクには、非常用の信号装置が内臓してあるの。念のため、
 こっちと交換して」
  マイケル、左手首につけているコムリンクをはずし、新しいものをつける。
  キットのスキャナーが唸る。
キットの声「マイケル、くれぐれも気をつけてください」
マイケル「ああ」
  ボニーのそばから立ち去るマイケル。
  ボニー、心配気にマイケルを見つめている。

○ 同・事務所
  対峙するドミニクとケイトリン。
ケイトリン「どうして、もっと早く教えてくれなかったの?」
ドミニク「いずれおまえにも話そうと思ってたさ。その前にちょっとややこしい事になっちまったけどな」
ケイトリン「ホークは、無事なの?」
ドミニク「わからん。おそらく、奴らは、エアーウルフを操縦させるために、ホークを拉致したんだ」
ケイトリン「じゃあ、その連中の狙いは、エアーウルフ?」
ドミニク「部品を盗んだのもおそらく、そいつらに違いない」
ケイトリン「そのリットマンって男、調べたの?」
ドミニク「まだこれからだ。明日の朝、そいつの会社を当たってみる」
  ケイトリン、机の上に置いてあるメモを掴み、見つめている。
  ドミニク、腰に手を当て、苦痛に顔を歪める。
ケイトリン「大丈夫?」
ドミニク「いやぁな、砂漠で地面に勢い良く突っ伏した時に変な痛みを感じたんだが、今頃本格的に
 きやがった…だが、もう平気だ」
  ドミニク、椅子に座り、一息つく。
  心配そうにドミニクを見つめるケイトリン。

○ 牧場地・地下牢・2号監禁室
  狭い部屋の中。真ん中に立っているデボン。
  ドアが開き、中に入ってくる髭を蓄えた恰幅の良い男ジェイダ・ノバク。
  ジェイダの後ろにいるナバス。
  デボンの前に立つジェイダ。
ジェイダ「こんばんは」
デボン「おまえがこの野蛮なグループのリーダーみたいだな」
  ジェイダ、ベルトにかけてあるホルダーからサバイバルナイフを取り出し、
  デボンの頬に当てる。
ジェイダ「私の部下を馬鹿にする者は、 誰一人として生かしてはおかん」
デボン「じゃあ早く殺れ」
  ジェイダ、ほくそ笑み、デボンの頬からナイフを離す。
ジェイダ「言われなくても、その時が来たら、遠慮なくそうする」
デボン「RC3は、どこにいる?」
ジェイダ「別の場所だ」
デボン「彼は、まだ若い。殺すなら私一人にしてくれ」
ジェイダ「いいや。あなた達には、あの世で感動の再会を果たしてもらう」
  ジェイダ、ナバス、部屋を出て行く。ドアの閉まる音が空しく響く。
  デボン、呆然と突っ立っている。

○ 同・通路
  並んで歩くジェイダとナバス。
ジェイダ「私は、今からメキシコへ飛ぶ。 ルビナから連絡が来たら、デボンを殺せ」
ナバス「もう一人の方は?」
ジェイダ「お前に任せる。作戦が完了したら、あのヘリをメキシコに運べ」
ナバス「わかりました」

○ 同・1号監禁室
  部屋の真ん中に立つホーク。
  扉の前に行き、拳でドアを激しく叩き始める。
  外で聞こえる足音。扉の前で立ち止まる。
男の声「うるせぇぞ」
ホーク「漏れそうだ」
男の声「壁隅で立ちションでもしやがれ」
ホーク「大きいほうだ。腸が短いんだ」
  鍵を開ける音がし、扉が開く。
  黒いスーツを着た巨漢の男が中に入ってくる。
 ホーク、咄嗟に銃を持っている男の腕を蹴り上げ、首に腕を固め、捻る。
  その場に倒れる男。
  男のスーツのポケットを探るホーク。
  中から数本の鍵が出てくる。
  ホーク、男が左に持つ銃を奪い取り、
  外に出て行く。

○ 同・2号監禁室
  部屋の中央に立つデボン。苛立った様子。
  突然、扉の鍵が開く音がする。ドアが開く。ホークが中に入ってくる。
  唖然とするデボン。
デボン「どうやって…」
  口元で指を立て、ポーズを取り、デボンを黙らせるホーク。
  小声で話し出す二人。
デボン「天井にカメラが設置されてるんだぞ」
ホーク「知ってる。もうすぐ追っ手が来る。急げ」
  急いで部屋を出て行く二人。

○ 同・通路
  走るホーク。その後を追っているデボン。
  螺旋階段を下りてくるナバスとタウロ。
  立ち止まり、ホークにライフルの銃口を向ける。
  鳴り響く銃声。二人、通路の壁の柱に身を隠す。
  ホーク、銃を構え、応戦。
  ナバスの足に銃弾が当たる。ナバス、バランスを崩し、そのまま階段を転げ落ちる。
  銃を撃ち続けているタウロ。
  ホーク、狙いを定め、引き金を引く。
  タウロの右腕に弾丸が当たる。タウロ、ライフルを落とす。
  走り出すホークとデボン。
  階段の前に立ち、タウロに銃を向けるホーク。
ホーク「二人とも命が欲しかったら、そこから離れろ」
  タウロ、ナバスを立ち上がらせ、階段を下り始める。
  デボン、ライフルを拾い上げる。

○ 同・表
  牛の鳴き声が聞こえる。
  小屋から走り出てくるホークとデボン。
  草原に止まっているエアーウルフに向かって、丘を駆け上がる二人。
  エアーウルフの前にライフルを持った迷彩服の男達が数人立っている。
  操縦席に男が乗り込み、計器類を調べているのが見える。
  草むらに身を伏せるホークとデボン。
  エアーウルフを見つめる二人。
デボン「あれは、君のヘリか?」
ホーク「ああ」
  銃のシリンダーを開け、弾の数を確認するホーク。
ホーク「もう残ってない。そっちは?」
  デボン、ライフルのマガジンを取り外し、
デボン「こっちもだ…」
  ホーク、辺りを見回す。
  小屋の裏に止まっているベージュ色のマーキュリーが見える。
ホーク「(車を指差し)あの車に乗ろう」
デボン「ヘリは、どうするんだ?」
ホーク「後で取り返す」
  二人、立ち上がり、車のほうに向かって走り出す。

○ ルビナの自宅・リビング
  ソファに座るマイケル。
  キッチンから両手にコーヒーカップを持ったルビナがやってくる。
  テーブルの前にカップを置くルビナ。
マイケル「ありがとう」
ルビナ「あの部品、何だったの?」
  コーヒーカップを持つマイケル。マイケルのコーヒーには、睡眠薬が入っている。
マイケル「まだ、調べている途中でね。昼間、その部品と関係する場所に行ってみたんだけど、
 そこで思わぬ来客と出会った…」
  対面のソファに座るルビナ。
ルビナ「来客?」
マイケル「ヘリに襲われたんだ」
ルビナ「よく無事に戻って来られたわね」
マイケル「だけど、おかげで車を修理に出さなきゃならないはめになった」
ルビナ「じゃあ、ここには、何で来たの?」
マイケル「友達のバイクを借りたんだ」
  マイケル、コーヒーを啜ろうとする。
ルビナ「待って!」
  動きを止めるマイケル。
ルビナ「なんか虫が入ったみたい。入れ直してくるわ」
  マイケル、カップをルビナに手渡す。
  ルビナ、カップを持ち、キッチンへ進む。
  キッチンから聞こえるルビナの声。
ルビナの声「一体何者だったの?」
マイケル「実は、メンデスが送ってきた部品は、そのヘリのものだったんだ。そいつらは、俺が部品を
 盗んだ犯人だと思い込んでいたのさ」
  コーヒーカップを持って、部屋に戻ってくるルビナ。
ルビナ「メンデスは、どうしてヘリの部品なんかを私に送りつけてきたのかしら…」
  テーブルにコーヒーカップを置くルビナ。
マイケル「そこが謎なんだ。その部品が盗まれたのは、メンデスが死んだ後だ。つまり、誰かがメンデスを装って、
 君の家に部品の入った荷物を送った事になる」
  ソファに座るルビナ。
ルビナ「変な話ね…でも中身が爆弾じゃなくて本当に良かったわ。ナディアを殺した犯人も同じ奴なのかしら?」
マイケル「俺は、そう見てる」
  カップを持ち、コーヒーを啜るマイケル。
マイケル「車の修理が終わったら、彼女の関係者をもう一度調べてみるつもりだ」
    
○ ロッキー山脈・麓・砂利道
  長い坂を駆け下りているベージュのマーキュリー車。

○ マーキュリー車内
  ハンドルを握るホーク。助手席に座るデボン。
デボン「君の名は?」
ホーク「ストリング・フェロー・ホークだ」
デボン「変わった名前だな。私は、デボン・シャイアー」
ホーク「奴ら何者なんだ?」
デボン「まだはっきりとした事は、わからんが、一人だけ、知ってる顔を見た」
ホーク「誰だ?」
デボン「顔は、整形で変わっていたが声を聞いて思い出した。ジェイダ・ノバクに違いない。
 5年前、政府機関や警察署を爆破した組織の中心メンバーだ」
ホーク「あんたは、どうして捕まったんだ?」
デボン「…奴らと関係のある事件を調査していた。君もそうなのか?」
ホーク「こっちは、個人的な事さ」
デボン「町に出たら、FBIと連絡を取って、あの牧場を包囲させよう。そうすれば、君のヘリも取り戻せる」
ホーク「あんた、政府の関係者と知り合いなのか?」
  苦笑いするデボン。
デボン「まぁな」
  デボン、怪訝に見つめるホーク。

○ ロッキー山脈・麓・砂利道
  上空からライトを照らして飛んでくる小型のヘリ。灰色のヒューズ500。
  機体の左側にカービン銃が装備されている。
  激しいローター音を響かせながら、マーキュリーの後ろに迫るヘリ。
  カービン銃が回転し、弾が連射する。車のリアガラスが割れ、トランクにいくつもの風穴が空く。
  左後輪のタイヤがパンクする。
  道から外れ、急斜面に飛び出す車。斜面を勢い良く駆け下り、林の中に突っ込む。
  木の太い幹に正面から激突する。

○ マーキュリー車内
  デボン、額から血を流している。
  ホーク、ハンドルに顔を埋めている。暫くして、顔を上げ、デボンを見つめる。
ホーク「大丈夫か?」
デボン「ああ、心配ない」
  ホーク、苦痛に顔を歪めながら、左の膝を押さえる。
デボン「骨折したのか?」
ホーク「いいや。軽く打っただけだ。でも歩けそうにない」
  ホーク、窓の外を見つめる。
  ヘリのローター音がこちらに迫っている。
ホーク「先に逃げろ」
デボン「君は?」
ホーク「後で行く。ここまで逃げてきたんだ。二人とも捕まってちゃあ意味がない」
デボン「すぐに応援を呼ぶから待ってろ」
  ドアを開け、外に出るデボン。
  林の中を駆け下りて行く。
  砂利道の上に降りるヘリ。ヘリから降りるナバスとタウロ。
  二人、銃を構えながら、車に近づく。
  シートに深くもたれているホーク。ホークに銃口を向けるナバス。
ナバス「もう一人はどこだ?」
  ホーク、薄笑いを浮かべ、
ホーク「…さぁ。コヨーテと追いかけっこでもしてるんじゃないか?」
  ナバス、銃のバレルを握り、グリップでホークの頭を殴りつける。
  気絶するホーク。
―ACT4 END―

―ACT5―
○ ロス市内・町の風景(翌日・朝)
  太陽の日差しが町を包む。

○ ルビナの自宅
  ソファに座るマイケル。うとうととしている。コムリンクの時計を見つめる。
  立ち上がるマイケル。
  ベッドルームから出てくるルビナ。マイケルの前にやってくる。
マイケル「おはよう、よく眠れた?」
ルビナ「ええ、あなたがいてくれて助かるわ」
マイケル「車の修理が終わった頃だ。一度戻るよ」
ルビナ「ねぇ、マイケル。二人の事を調べるなら、私も手伝わせて欲しいの」
マイケル「…そうだな。メンデスやナディアの事に一番詳しいのは、君だし」
ルビナ「着替えてくるわ」
  ルビナ、ベッドルームへ戻る。

○ サンティーニ航空・倉庫内
  事務所から出てくるドミニク。くたびれた様子。
  ナイト2000の前に立つボニー。エンジンルームを覗いている。
  ドミニクと顔を合わす。
ドミニク「おはようさん、車は、治ったか?」
ボニー「おはようございます。30分前に注文した部品が本部から送られてきて、今ちょうど
 取り付け作業が終わったところです」
ドミニク「あんた、カーエンジニアなのか?」
ボニー「この車のメカニックとしてナイト財団で働いています」
ドミニク「中々腕が良さそうだ。首になったらうちに来ないか?なぁに車もヘリもそう変わりゃしないさ。
 例えばあそこに置いてあるヘリのエンジンはな、中古車の…」
ボニー「すみません。まだ辞める気なんて全く考えた事ありませんので…」
ドミニク「おっと、わしとした事が。 ついついつまらんことを口走っちしまった」
ボニー「かなりお疲れのご様子ですけど…もう少し眠ったほうが…」
ドミニク「二時間も眠りゃあ、十分だ。それより、ケイトリンは?」
ボニー「着替えを取ってくるって一時間前にうちに戻ったけど…」
キットの声「ボニー、財団本部から緊急の連絡が入っています」
  ドミニク、辺りを見回す。
  ボニー、ナイト2000の運転席に乗り込む。
  モニターに財団本部のオフィスにいる事務員のモーリーが映る。
ボニー「どうしたの?モーリー…」
モーリーの声「さっき、デボンさんから連絡がありました」
  運転席のドアの前に立つドミニク。車内の様子を覗いている。
ボニー「見つかったの?」
モーリーの声「カンザスシティの警察署で保護されています。山の麓の古い牧場の地下に
 監禁されていたそうです」
ボニー「怪我はなかったのね」
モーリーの声「もう一人、パイロット服を着た若い男の人と一緒だったと言ってました」
  唖然とするドミニク。
ドミニク「ホークだ…」
ボニー「その男の人も無事なの?」
モーリーの声「逃げている途中、足を怪我をしたらしくて…FBIと特殊部隊が今、
 監禁場所にむかっているそうです」
  ため息をつくドミニク。
ボニー「わかったわ。ありがとう」
  モニターの映像が切れる。

○ 住宅街・市道
  並木の通りを軽快に走行する二人乗りの250ccのバイク。
  ハンドルを握るマイケル、後ろにルビナが乗っている。
  コムリンクの緊急信号ランプの赤い光が点滅している。
  マイケル、光に気づく。

○ 公園前
  道路脇に止まるバイク。
  ヘルメットを脱ぐマイケル。
  ルビナ、バイザーを上げる。
ルビナ「どうしたの?」
マイケル「急用を思い出した。電話をかけてくる。ちょっと待ってて」
  二人、バイクから降りる。マイケル、公園内に入り、走り出す。
  ヘルメットを脱ぐルビナ。冷たい眼差しでマイケルを見ている。

○ 同・中・公衆電話
  受話器を持ち上げ、コインを入れるマイケル。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るボニー。
ボニー「マイケル…デボンさんが見つかったわ。至急あなたに話したいことがあるそうよ」
マイケルの声「わかった。つないでくれ」

○ 公園内・公衆電話
  受話口から聞こえるデボンの声。
デボンの声「マイケルか?」
マイケル「デボン、無事で良かった。一体何があったんだ?」
デボンの声「その事については、後でまた詳しく話す。メンデスについて重要な情報を掴んだ」
マイケル「なんだい?」
デボンの声「メンデスが殺したヘイデンという男の事だが、奴は、一ヶ月前、ジェイダ・ノバクと言う男に
 爆弾の製造を依頼されていたんだ」
マイケル「ジェイダ?」
デボンの声「FBにヘイデンの家を再調査してもらったら、隠し部屋が見つかった。そこに置かれていた
 本棚からジェイダの組織の中心メンバーの名前が書かれた書類が見つかったんだ。そこに意外な人物の
 名前があった。メンデスは、その人物を守ろうとして口封じするために奴を殺した」
マイケル「そいつは、誰なんだ?」

○ 高層ビル前
  出入り口にスーツ姿の男女が行き交う。
  雑踏の中にいるリットマン。
  突然、女の手がリットマンの腕を掴む。
  立ち止まるリットマン。振り返る。
  リットマンの前に立つケイトリン。リットマンの腕を引っ張り、雑踏の中から抜け出す二人。
  ビルの壁の前で対峙する。
リットマン「君は?」
ケイトリン「ケイトリンよ」
リットマン「どこかで会ったかな?」
ケイトリン「ないわ。でも、この名前に聞き覚えあるでしょ?ストリング・フェロー・ホーク…」
  険しい顔つきになるリットマン。
リットマン「ホークとどういう関係なんだ?」
ケイトリン「友達よ」
リットマン「…ホークとは、酒場で一度会っただけだ」
ケイトリン「昔、ハイウェイパトロールで働いていた事があるの。知り合いにテキサスのローゼン一家の事を
 調べてもらったわ。ローゼンのファミリーがダルト・メーガーソンと言う男を監禁した事実は、なかった。
 それに、そんな男は、存在しない」
リットマン「…忙しいんだ。それじゃあ」
ケイトリン「地元の警察にこの事話してもいいのよ」
リットマン「勝手にやれよ。警察にばれて困るのは、そっちのほうだろ?」
ケイトリン「やっぱり、知ってたのね、私達の事…」
リットマン「…」
ケイトリン「取り引きしましょう。あなたが誰に頼まれてこんな事をしたのか、正直に話してくれたら、
 今回の事は、見逃すわ」
リットマン「…女に頼まれたんだ。ドミニクを監視して、モハーベ砂漠まで彼の車を尾行した。そこで、
 見つけたんだよ、エアーウルフを。そしたら、その後、部品を奪って、エアーウルフを誘き出すように言われて…」
ケイトリン「ジョンの情報は、嘘だったのね?」
リットマン「100万ドルの報酬だぞ。誰だって首を立てに振るだろ」
ケイトリン「その女の名前は?」
  突然、発砲音がする。リットマン、背中を撃たれ、ケイトリンに倒れかかる。
  リットマンを受け止めるケイトリン。
ケイトリン「どうしたの?」
  ケイトリン、リットマンの数十メートル後方に立つ黒いスーツの男を見つめる。右手に持っていた
  サイレンサー付きの銃をスーツの中に隠し、逃げ去る男。
  絶命しているリットマン。
  ケイトリン、リットマンを地面に寝かすと、男を追いかける。

○ 工場の通りを走行するナイト2000

○ ナイト2000車内
  運転席に座るドミニク。ハンドルを握っている。ダッシュボードの周りを見回している。
キット「運転が慣れないなら、私が変わりましょうか?」
ドミニク「いやいや。自分でハンドルを握ってないとどうにも落ち着かん。にしても、まるでSF映画に
 出てくる宇宙船みたいだな」
キット「それは、褒めているんですか?」
ドミニク「一応な。だが、わしのエアーウルフと比べたら、こんな電子パネルなんて、ただの飾りに過ぎんぞ」
キット「エアーウルフは、私のように話す事は、できますか?」
ドミニク「それは…できんが、話しができなくてもなわし達は、ふかーく心で通じ合ってるんだ」
キット「心?」
ドミニク「そうとも。まぁ、お前さんに話したところで所詮理解は、できんだろうがな」
キット「いいえ。わかります。あなた達以上に私とマイケルは、心で通じ合っていますから」
ドミニク「うひゃー、コンピュータの癖に生意気言いやがって」
キット「もうすぐマイケルとの約束の場所に着きます。念のため、「サイレントモード」を使用してください」
ドミニク「なんだ?そのサイレントモードってのは?」
キット「エンジン音を消す機能です」
ドミニク「そんなのがあるのか?どのボタンだ?」
キット「右側のスイッチ盤の上から4つ目です。
ドミニク「おお、あったあった」
  ドミニク、『SILENT MODE』のボタンを押す。エンジン音が 掻き消される。
  耳を澄ますドミニク。
ドミニク「本当だ、こりゃあ、凄い。どう言う仕組みになってるんだ?」
キット「それは、企業秘密です」

○ アメリカ中西部・山岳地帯上空
  青空の中を飛行するエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  操縦席に座るホーク。レバーを握る。
  ホークの左隣に座っているナバス。
  ナバス、ホークに銃を向けている。
  ホーク、その様子を見つめ、
ホーク「ずっとその体勢じゃあ、肩が凝らないか?」
ナバス「黙って飛ばせ」
ホーク「心配してやってるんだ」
ナバス「俺もライセンスを持ってるんだぜ。いざと言う時は、こんなヘリぐらい、お前の代わりに操縦できる」
ホーク「じゃあ、そうしろよ」
  ナバス、悔しげに歯を食いしばり、銃の引き金を引こうとする。
  後ろのフライトシステムの座席に座るアストン。
アストン「やめとけ、ナバス。このヘリは、特殊なんだ。そいつがいなきゃ、他のシステムも扱えなくなる」
  ナバス、怒りを抑え、銃を下ろす。

○ とある倉庫前
  敷地内に入ってくるマイケルのバイク。
  建物の前に立ち止まる。
  バイクから降りるマイケルとルビナ。
  ヘルメットを取る。
  ルビナ、建物を見つめ、
ルビナ「ここが修理屋なの?」
  マイケル、首を横に振る。
マイケル「俺の車は、別の倉庫にある」
  唖然とするルビナ。
ルビナ「車に乗り換えるんじゃなかったの?」
マイケル「メンデス殺しの犯人がわかった…君だ、ルビナ。証拠もそろってる」
  ルビナ、苦笑し、
ルビナ「藪から棒に…何を言い出すの?」
マイケル「メンデスは、ヘイデンを通じて、ある組織の存在を知った。その中心メンバーに
 君がいる事も…」
ルビナ「私が?何の組織よ?」
マイケル「メンデスがホテルで殺された日、君は、どこにいたんだ?」
ルビナ「ナディアの家にいたって、前に言わなかった?」
マイケル「ナディアに口裏を合わせるように頼んで、メンデスに会いに行ってたんだろ?そして、
 彼を銃で殺した。ナディアを殺したのも君だろ?実の弟を殺してまでやり遂げなきゃならない
 計画ってのは、一体何なんだ?」
  ルビナ、持っていたポシェットから短銃を取り出し、マイケルに向ける。
ルビナ「あなたもこれでおしまいね、マイケル」
マイケル「君が欲しかったのは、ナイト2000か?」
ルビナ「最強の技術は、最強の革命者に与えられるべきなのよ」
マイケル「ジェイダの事を言ってるのか?奴にそんな技術を与えたら、殺しの道具にしかならない」
ルビナ「あなたに彼の信念を曲げる権利はないわ…」
  突然、バイクのエンジンがかかる。
  バイクに気を取られるルビナ。
  マイケル、ルビナが後ろのバイクに気を取られている隙に、銃を奪い取る。
  ルビナに銃を向けるマイケル。
マイケル「ありがとよ、キット」
  ルビナ、バイク向こうに止まっているナイト2000に気づく。
  ナイト2000のスキャナーがうなる。
キットの声「何とか間に合って良かったです」
  パトカーのサイレンが聞こえてくる。
  車から降りるドミニク。
  ルビナ、咄嗟にポシェットから手榴弾を取り出す。マイケル、両手で銃を構え直し、
マイケル「よせ、ルビナ!」
ルビナ「撃てるものなら撃ってみなさい」
  ルビナ、ドミニクに向かって手榴弾を投げる。
  ドミニクの足元に転がってくる手榴弾。
  慌てふためくドミニク。
ドミニク「嘘だろ、おい!」
マイケル「ドミニク、早く車に乗れ!」
ドミニク「乗れったって…」
マイケル「いいから早く!キット!」
  ドミニク、慌てて車に乗り込む。
  ナイト2000、自動走行を始め、前進。手榴弾の上に覆い被さるように車を止める。
  激しい爆音と共に爆発する手榴弾。 ナイト2000のボディの下から白い煙が吹き上がる。

○ ナイト2000車内
  運転席のシートに座るドミニク。両手で両耳を押さえ、目を瞑っている。
キット「手榴弾の処理は、終わりました。もう大丈夫です」
  目を開け、手を下ろすドミニク。呆然と周りを見渡している。
ドミニク「また修理が必要だな…」
キット「いいえ。どこにも故障はありません」
ドミニク「…お前さんみたいな車は、一家に一台は必要だな」

○ とある倉庫前
  車から降りるドミニク。ルビナの前に近づく。
ドミニク「よくもはめやがって、このぉ!」
  ルビナ、ドミニクを見つめ、
ルビナ「生きてたのね。砂漠で日干しになってると思ってたのに」
ドミニク「ホークに何をさせるつもりなんだ?」
ルビナ「知らないわ…」
  ドミニク、ルビナの胸倉を掴み、
ドミニク「女でも容赦せんぞ!」
  ドミニクを止めるマイケル。
  二台のパトカーがナイト2000の後ろに止まる。警官達が一斉に降りてくる。
マイケル「落ち着けよ。後は、警察に任せよう」
  ルビナから手を放すドミニク。
  二人の警官がルビナの腕を掴む。連行されるルビナ。
  ドミニク、呆然と佇み、
マイケル「ホークってのは、あんたの息子さんなのかい?」
ドミニク「…みたいなもんだ」
マイケル「デボンも見つかった事だし、ホークが見つかるのも時間の問題さ」
ドミニク「そうだといいが…」
キットの声「マイケル、デボンさんから連絡が入っています」
  マイケルとドミニク、慌てて、ナイト2000に乗り込む。

○ ナイト2000車内
  運転席に座るマイケル。助手席に座るドミニク。
  車内のスピーカーからデボンの声が聞こえる。
デボンの声「FBIが牧場を調べたが、敷地内や地下は、もぬけの殻だった」
ドミニク「ホークは?エアーウルフは、どうした?」
デボンの声「…ん?聞き慣れない声だな?」
マイケル「ホークは、無事なのか?」
デボンの声「残念ながら、ホークも彼のヘリも消えていた」
  愕然とするドミニク。
デボンの声「そのホークって男が自分を犠牲にして私を助けてくれたんだ」
  ドミニク、呆然と俯く。
マイケル「RC3は?」
デボンの声「まだ消息を掴めていない」
マイケル「ルビナは、捕まえた。彼女の取り調べが終わるのを待つしかないな」
デボンの声「私も今そっちに戻っているところだ」
キット「マイケル、サンティーニ航空から連絡が入っています」
マイケル「ボニーか。デボン、後でまた連絡する」
デボンの声「わかった…」
  回線が切り替わる。
ボニーの声「マイケル?」
マイケル「ああ」
ボニーの声「ドミニクさんは?」
ドミニク「ここにいるぞ」
ボニーの声「来客が来られています」
ドミニク「来客?こんな朝早くに誰が…」
ボニーの声「白いスーツを着て、メガネの左目に黒いレンズを入れた男の人なんですけど…」
  唖然とするドミニク。

○ サンティーニ航空・倉庫内
  立ち止まるナイト2000。車から降りるマイケルとドミニク。
  事務所の前に立っているアークエンジェル。そばにボニーもいる。
  アークエンジェルの前に立ち止まるドミニク。
  アークエンジェル、マイケルやボニーを見つめ、
アークエンジェル「いつの間に社員を増やしたんだ?」
ドミニク「臨時雇いだ。中で話そう」
  ドミニク、アークエンジェルの背中を押し、事務所の中に入るとドアを閉める。
  ボニー、マイケルと顔を合わし、
ボニー「洋服の趣味が悪過ぎるわ…」
マイケル「そうかな?結構似合ってたと思うけど…」
  ボニー、呆気にとられ、
ボニー「本気で言ってるの?」
マイケル「本気も本気。白衣装を着こなせる紳士は、そうざらには、いないぜ」
キットの声「マイケル、先程FBIから連絡がありました。至急あなたに来て欲しいと言っています」
  マイケル、車に乗り込む。エンジンがうなる。
   バックで加速して、倉庫を出るナイト2000。華麗にバックターンし、走り去って行く。

○ 同・事務所内
アークエンジェル「何だあいつらは?」
ドミニク「ちょっと訳ありでな」
アークエンジェル「約束の24時間が過ぎたぞ。エアーウルフの部品は、取り戻せたんだろうな?」
ドミニク「…いや、まだだ」
アークエンジェル「ホークは、どこだ?」
ドミニク「…実は、部品を探している途中で妙な奴らに襲われてな…」
アークエンジェル「エアーウルフと一緒に行方をくらましたとでも言いたいのか?」
ドミニク「…どうして、知ってるんだ?」
アークエンジェル「事情は、ケイトリンから聞いた」
ドミニク「ケイトリンの奴、勝手なマネをしやがって…今どこにいるんだ?」
アークエンジェル「うちのオフィスにいるよ。メル・リットマンと言う男が何者かに暗殺された。リットマンは、
 CIAの情報機器の保守・点検を担当していた男で、しょっちゅう局内を出入りしていたんだ。奴は、
 おまえをずっと監視して、何者かに情報を売り渡していたに違いない」
ドミニク「おそらくジェイダ・ノバクとか言う奴の組織に殺されたんだ」
アークエンジェル「ジェイダ?」
ドミニク「そいつの片腕の女がさっき捕まった。今、FBIが取調べ中だ」
  入り口のドアが開く。白いスーツを着た秘書の女・リンジーが中に入ってくる。
リンジー「部長、本部から連絡が入っています」
アークエンジェル「用件は?」
リンジー「何者かが我々しか知らないアクセス方法で信号を送ってきているそうです」
アークエンジェル「発進地点は?」
リンジー「コロラド州のアスペン上空、北緯39.7℃、西経106.52℃地点を北北西に向かって
 高速で移動中です」
ドミニク「きっと、エアーウルフから発信されているんだ」
  険しい表情のアークエンジェル。

○ FBI・ロサンゼルス支局・通路
  並んで歩くマイケルとデボン。ベージュのスーツを着た中年のディーボ捜査官。
デボン「ルビナが君を呼ばないと何も喋らないと言って、ずっと口をつぐんだままなんだ」
マイケル「ちょうど良い。こっちも色々と話したい事がある」

○ 同・取調室
  透明の仕切り板越しに顔を合わせるマイケルとルビナ。
マイケル「RC3とトレーラーは、どこに隠した?」
ルビナ「教えてもいいわ。但し、条件があるの」
マイケル「ナイト2000を渡せって言うのか?」
ルビナ「私をここから出して。そして、あなたに指定の場所まで送ってもらいたいの」
マイケル「…俺の一存じゃ決められない」
ルビナ「なら、さっさと相談してきなさいよ」
  ルビナを鋭い眼差しで見つめるマイケル。

○ CIA本部・部長オフィス
  スクリーンに映し出されるアメリカ合衆国の地図のイメージ。
  信号を示す赤い光がコロラド州の中部付近で点滅し続けている。
  スクリーンを見つめるドミニクとケイトリン。ドミニク、小声でケイトリンに話し掛ける。
ドミニク「リットマンが死んだのは、俺達にとっては、あれだが…でも、どうやって奴を吐かせたんだ?」
ケイトリン「色々と試行を凝らして、鎌をかけてやったのよ」
  ドミニク呆れた表情を浮かべ、
ドミニク「…お前さんもよくやるよ」
  デスクの椅子に座るアークエンジェル。デスクの前にやってくるリンジー。
  アークエンジェルにファイルを手渡す。
アークエンジェル「ジェイダと言う男は、6年前、CIA当局にも爆弾を仕掛けた前歴がある。その時は、
 未遂で終わったが、当時、KGBのスパイとの関係も指摘されていた」
ケイトリン「それより、どうなってるの?さっきからちっとも動かないんだけど」
ドミニク「おそらく、地上に降りてるんだ」
アークエンジェル「この付近を飛行している旅客機は、全部で4機だったな?」
リンジー「はい。そのうち、今日は、ルートを変更して飛行する機体が3機あります」
アークエンジェル「なぜ、ルートを変えているんだ?」
リンジー「ロスへ向かって飛行中の大統領専用機が約一時間後にそのルートを通る予定に
 なっているからです」
ドミニク「奴らの狙いは、それだ!エアーウルフで大統領の飛行機を撃墜する気なんだ」
アークエンジェル「至急、エア・フォース・ワンに連絡を取れ」
リンジー「了解しました」
  立ち去る女。

○ ロス市内・道路
  交通量の多い二車線の道路。左側を走行するナイト2000。その後をFBIの覆面車が追っている。

○ ナイト2000車内
  ハンドルを握るマイケル。助手席に座るルビナ。
  ルビナ、ナイト2000のパネルを見つめている。
ルビナ「噂通りの車ね」
マイケル「どこで俺達の情報を仕入れた?」
ルビナ「財団の噂は、前々から聞いていたわ。この車によって捕らえられた仲間は、数知れない」
マイケル「その仲間に教えてもらったのか?」
ルビナ「この車とエアーウルフがあれば、この国を乗っ取る事も容易いわ」
キット「私をその道具にするつもりなら、無駄ですよ、ルビナ。私のプログラムは、人命を傷つける行為は、
 禁止されているんです」
ルビナ「心配ないわ。私達の物になったら、私達が扱いやすいように、プログラムを変えてあげるから」
キット「非常に忌まわしい気分です。マイケル、早くRC3の居場所を聞き出してください」
ルビナ「RC3は、財団のトレーラーと一緒にメキシコ国境近くの砂漠にいる。取り戻したければ、この車に乗って
 あなた一人で来なさい。他に誰かを連れてきたら、RC3の命はないわ」
マイケル「…」

○ ネバダ州砂漠地帯
  砂の大地に止まるナイト2000。後ろの覆面車も立ち止まる。
  上空からやってくる一台の白いヘリ・ヒューズ500。
  ホバリングしながら、ゆっくりと地上に降りてくる。
  ルビナ、ほくそ笑みながら、ヘリに乗り込む。
ルビナ「じゃあ、マイケル。また会いましょう!」
  険しい目つきでルビナを見つめるマイケル。
  ヘリ、離陸し、空の彼方へ消えて行く。
  マイケルのそばにやってくるデボン。
デボン「場所は、わかったのか?」
マイケル「ああ、でも、条件をつきつけられた」
デボン「どんな条件だ?」
マイケル「俺とキットだけでRC3のところへ行く事だ」
デボン「きっと、大きな罠を仕掛けてくるぞ」
マイケル「わかってる」
  コムリンクのアラームが鳴る。コムリンクに応答するマイケル。
マイケル「どうした?」
キットの声「ドミニクさんから連絡が入っています」
  マイケル、ナイト2000に戻る。

○ ナイト2000車内
  運転席のシートに座るマイケル。
  スピーカーから聞こえるドミニクの声。
ドミニクの声「エアーウルフが見つかった」
マイケル「どこにいるんだ?」
ドミニクの声「コロラドの山の中だ。奴らは、エアーウルフを使って15分後にその上空を通り過ぎる
 エアフォース・ワンを撃墜する気だ」
マイケル「エアフォースワンとは、連絡は、とれたのか?」
ドミニクの声「ああ。今、コースの変更を指示してもらっているところだ。そっちは、どうなんだ?」
マイケル「仲間のいる場所がわかった。今からメキシコ国境の砂漠地帯へ向かう」
ドミニクの声「俺達も今からコロラドに向かう。気をつけろよマイケル。キットもな」
キット「ホークとエアーウルフが無事に戻る事を祈ります」
マイケル「よし、メキシコ国境までの最短ルートだ。スーパーモードで行くぞ」
キット「了解」
  マイケル『SUPER PURSUIT MODE』のボタンを押す。

○ ナイト2000のボディがスーパー追跡モードの形態に変形する
  エンジンがかかる。
  勢い良くUターンし、爆音を立てながら猛スピードで走り去って行くナイト2000。

○ 山岳地帯・麓
  切り立った岩山に囲まれた草原の上に着陸しているエアーウルフ。

○ エアーウルフ・コクピット
  腕時計を見つめるナバス。
ナバス「そろそろ時間だ」
ホーク「こんなことして何になるんだ?」
ナバス「いいから、さっさと飛ばせ」
ホーク「仮に成功したとして、その後俺は、どうなる?」
アストン「よくやった、褒美をくれてやるからどこかへ消えちまいな…とでも言うと思ったか?」
ナバス「お前の処分は、俺が決める」
  ホーク、憮然とした表情でヘルメットを被る。

○ 離陸するエアーウルフ
  機体を180度横に回転させながら、高度を上げて行く。
  ツインターボの噴射口から赤い炎が上がる。エンジン音を立てながら超高速で推進し始めるエアーウルフ。
―ACT5 END―
           

【ACT6】完結編は、ネット上では公開していません。続きをご覧になりたい方は、
メールで管理人の方にお知らせください。
後程メールでテキストファイルをお送り致します。

←【ACT1→3】 

戻る