『REVENGE』ACT1→2  作 ガース「ガースのお部屋」

〜ACT1〜 
○ リトル・ロック・ハイウェイ
  交差点から一台の白いワゴンが、タイヤを軋ませながら曲がってくる。猛スピードで直進している。
  続いて、その後ろをKITTが白い煙を噴き出し、ドリフトしながらやってくる。
  白いワゴンの後を追っている。

○ KITT・車内
  マイケル、ハンドルを素早く切り、アクセルを踏み込む。険しい表情で正面の白いワゴンを
  睨み付けている。
KITT「それで、イタリア系の美女とは、仲良くなれたんですか、マイケル」
マイケル「その美女のほうからいきなり泣きつかれたんだ。お犬様にも吠えられてな」
KITT「ハンバーガーショップなどに行かずに、じっとしていればリアレスを捕まえられたんです」
マイケル「グサッと来ること言うなよ。人間誰にだってミスはつきものさ。それに、
 『腹が減っては戦ができぬ』って諺があるだろ?」
KITT「『石の上にも3年』と言う諺もあります」
マイケル「奴はどこに向かってる?」
  KITTのスクリーンモニターに、市街の地図が表示され縦横にスクロールする。
KITT「旧市街地です」
  白いワゴンが、交差点を左に曲がっていく。KITTはそのまま直進し、

○ SPMのボタンを押すマイケル
マイケル「よし、スーパー追跡モードだ」
  KITTのボディが変形し、スピードアップ。交差点を曲がり一瞬で2Km先の交差点まで
  一瞬で駆け抜ける。

○ EBSのボタンを押すマイケル

○ 市街路
  後部両サイドの緊急停止用ボードが開き、立ち止まる。KITT、元の姿に戻ると、
  交差点を右折し、次の交差点をまた右折する。

○ マイケルの視点
  正面から白いワゴンが向かってくる。

○ 白いワゴン車内
  正面にKITTが向かってくることを知り、驚愕している金髪に狐目、痩せ身の男、
  リアレス・マーチ。
  リアレス、窓から左腕を出しマシンガンを撃ち放つ。

○ 市街路
  マシンガンの弾を撥ね除け、突進していくKITT。
  KITTと白いワゴンの間の交差点から18tの大型タンクローリーが現れ、二台の間に割って
  入ってくる。
  マシンガンを撃ち続けるリアレス。タンクローリーのタンクに銃弾が当たり、タンクが
  大爆発を起こす。
  リアレス、急ブレーキを踏み、車を止める。空高く燃え広がる炎。

○ タンクローリーに向かって疾走するKITT
  マイケル、「TURBO BOOST」のボタンを押す。ボタンが赤く光る。
  タービンがうなり、ボディが浮き上がる。
  KITT、舞い上がる炎を突っ切り、タンクローリーを飛び越える。
  鮮やかに着地すると、180度ターンし、白いワゴンの前を塞ぐようにして止まる。
  マイケル、車から降り、車内で気絶しているリアレスを外に引っ張り出す。
マイケル「(リアレスの胸倉を掴み)おとなしく観念しろ、リアレス」
  リアレス、観念した表情で項垂れている。

○ ナイト財団本部・全景
デボン「なんだね、この請求書は?」

○ 同・デボンのオフィス
  デボンのデスクの前に立ち塞がるマイケル。
  デボン、請求書を片手に持ち、しかめっ面をしている。
マイケル「仕方がなかったんだ。まさかあんなところでタンクローリーと出くわすなんて・・・」
デボン「いつもの君なら、国防軍の主要ビルを破壊しようとした凶悪テロリストを取り押さえる
 ことくらい、朝飯前だろ?奴を逮捕するのに10t分の石油の料金が必要かね?」
マイケル「撃ったのはリアレスだ」
デボン「そもそも今回の事故は、君の初歩的なミスだと聞いとるが?イタリア系の美女・・・」
マイケル「(小声で)KITTの奴・・・」
デボン「まぁ、いい。来月分の君の給料から差し引いておくことにするよ」
マイケル「そりゃないよ・・・」
  デボンを鞄を持ち、マイケルのそばを横切っていく。
マイケル「どこ行くんだい?」
  デボンを踵を返し、
デボン「言わなかったか?フェニックスだ。ナイト2000の製作メンバーだったブアマン博士
 からの直々の要請でな。私に米国安全技術開発促進委員のメンバーになってもらいたいそうだ。
 明日そのシンポジウムに出席するんでな」
マイケル「またやっかいな組織に名を連ねるわけね?」
デボン「世界各国から向けられているミサイルの脅威から、我国の安全をどう守るべきかという
 重要な任務の一員に選ばれたんだ。やっかいなどと言ってもらっては困る」
マイケル「ごめん、軽いジョークだよ」
デボン「ああ、今日はここに珍しい来客がお目見えしとる」
マイケル「誰?」
デボン「(笑みを浮かべ)それは、来てのお楽しみだ。じゃあな」
  デボン、そのまま立ち去り、部屋を出ていく。
  マイケル、憮然とした表情でデボンのデスクの座席に腰掛ける。
  暫くして、ノックが響く。マイケル、立ち上がり、緊張の面持ちで、
  扉が開くと、エイプリル・カーチスが姿を現す。
マイケル「(満遍の笑みを浮かべ)エイプリル!」
エイプリル「お久しぶり、マイケル」
  マイケル、エイプリルの元へ向かい、肩を寄せ合い、挨拶代りのキス。
マイケル「仕事のほうはどうだい?順調なの?」
エイプリル「ええ、まぁね」
マイケル「そうだ、昼食まだだろ?一緒に食べに行かないか」
エイプリル「そうね・・・」
  RC−3が中に入ってくる。
RC−3「マイケル、喜んでくれ、ついに完成したんだよ、あれが・・・」
  エイプリルに気づき、寡黙になるRC−3。
マイケル「おまえは、初めてだったよな、紹介するよ、エイプリル・カーチスだ」
エイプリル「あなたが新しく財団に加わったメンバーね」
RC−3「(エイプリルと握手を交わし)エイプリルってあんたかい。マイケルから噂は
 聞いてるよ。超とびっきりの美女で優秀なメカニックだってね」
エイプリル「あなたの噂も聞いてるわ。破壊されたKITTを一日で復活させたって」
RC−3「財団にいた頃、マイケルはあんたに手出ししなかったかい?」
マイケル「俺がそんなことするような男に見えるか?」
  不適な笑みを浮かべ二人を見ているRC−3。

○ 市街路を疾走するKITT

○ KITT・車内
マイケル「君が財団を離れてからいろんなことがあったよ。KITTも散々危険な目に晒されてね」
KITT「おかげで私もいろんな面で免疫がつきました」
エイプリル「大変だったわね、KITT」
KITT「危険を恐れていては、凶悪な犯罪者達に立ち向かうことはできません」
マイケル「どう?ずいぶん成長しただろ?」
KITT「私が成長したのは、エイプリルやボニーが献身的に改良を加えてくれたおかげです」
  エイプリル、微笑みながら、
エイプリル「でもなんだかますますマイケルに似てきたわね」
KITT「ほんとに?どのへんが?」
エイプリル「そうね、前と比べてタフになったわ。それにお喋りも増えたわね」
KITT「そう言えば、メモリーバンクに余計な言語データが増えてきたような気がします」
マイケル「おいおい、それじゃあ俺がおまえに余計な言葉を教えてるみたいに聞こえるぜ」
エイプリル「(笑いながら)冗談よ、KITT。あなたは以前にも増して素敵になったわよ・・・」
KITT「ありがとう、エイプリル」
  エイプリル、微笑んでいるが、どこか暗い陰が帯びている。

○ 市街路を疾走するKITTの背後を一台のBMWが追っている。

○ フェニックス・TDOミサイル研究所・門前(夜)
  エンジンを唸らせ、一台のメタリックブルーのコルベットが門を破壊し、ゲートを突破する。
  その後を巨大なコンテナを積んだ大型トレーラーが突き進んでいる。

○ 同・武器倉庫周辺
  研究所内にサイレンが鳴り響き、数人の警備員達が走行しているコルベットにライフルを撃ち放つ。
  コルベットのボディが、弾丸を跳ね返す。弾丸は、警備員の胸を貫通する。

○ 同・武器倉庫内
  コルベット、倉庫の入り口のシャッターを勢い良く突き破り、中へ侵入。
  研究所のブースの壁に次々と体当たりし、兵器庫の中へ突進して、立ち止まる。
  兵器庫の周りに警備員達が集まり、いっせいにライフルを撃ち捲る。
  コルベットのボディは、火花を散らすがびくともしていない。
  コルベットのホイールの表面の一部が開き、格納庫が現れる。手榴弾のような大きさの丸く
  白い物体が警備員に向かって打ち込まれる。
  丸い物体は、警備員達の前で赤い閃光と共に破裂し、大爆発を起こす。爆風で警備員の体が
  木端微塵になる。
  コルベットのボディの先端部から緑色のレーザーが発射され、倉庫内の壁の片隅に設置された
  ビデオカメラに当たる。カメラは一瞬のうち跡形もなく破裂してしまう。
  コルベットの運転席の扉が開き、黒いスーツを着た長身の男が降り立つ。杖をつき、左足を
  引き摺るようにして歩いている。
  トレーラーがバックで中に侵入してくる。
  数人の男達がコンテナから降り、大量に積まれたミサイルケースを次々と運び出している。
  その様子を見つめる、杖を突く男の後姿のアングル。そして目のアップ。ぎらついている
  その目は、獣のようで、野心に満ちあふれている。
  
○ レストランの駐車場からハイウェイに向かって走り出すKITT
マイケル「地中海料理なんて、何年ぶりだったかな」
   
○ KITT・車内
マイケル「そうだ、3年前に君が財団に初めて来た時も確か地中海料理を食べに行ったね。
 デボンが、やたらパスタの味にうるさくて、店を探すのに3時間もかかったんだ」
エイプリル「もうデボンを地中海料理の店に誘うのはよそうって二人で決めたんだったわね」
マイケル「・・・ねぇ、また財団で働くのかい?」
  エイプリル、神妙な面持ちになり、
エイプリル「(首を振り)実は、今日訪ねたのは、あなたに頼みたいことがあって来たの」
マイケル「頼みたいことって?」
エイプリル「実は、うちの社長が行方不明になってしまって」
マイケル「社長ってポールのことかい?」
エイプリル「そう・・・私、まだデボンにこのこと知らせてないの、だから・・・」
マイケル「気にしないで、話を続けて」
エイプリル「・・・彼、半年前からエマドワルド社と言う会社と取り引きしてるの。次世代の
 産業用ロボットの設計を依頼されていたんだけど、その工場の視察に、二カ月前に
 サンフランシスコに向かったんだけど、定期的にあった連絡が三日前から跡絶えてしまって・・・」
マイケル「彼は、二カ月も工場で何をしてたんだい?」
エイプリル「彼、自分でロボットも作るのよ。以前、陸軍の開発部にいて武器や戦車の製造にも
 携わっていた経験があるから・・・」
マイケル「その工場には、連絡したの?」
エイプリル「したわ。でも向こうの従業員は、アーネストは来ていないって。デトロイトの本社
 にも尋ねてみたけど、エマドワルド社がアーネストをその工場に呼んだ事実はないって言われて・・・」
マイケル「じゃあ彼はいったいどこに行ったんだ?・・・」
エイプリル「最後にかけてきた電話で、ヒルトンアンドタワーホテルにいるって言ってたわ」
マイケル「よし、とりあえずそこに行ってみよう」
エイプリル「マイケル、ごめんなさい。突然こんなこと・・・」
マイケル「気にするなって、友達だろ?」
エイプリル「(笑みを浮かべ)ありがとう、マイケル・・・」

○ ローガンホテル・ゲートにKITTが入っていく
  玄関口の前に立ち止まるKITT。
  エイプリルがKITTから降りている
エイプリル「荷物を取りに行ってくる。すぐ戻ってくるわ」
  エイプリル、マイケルに軽く手を振り、立ち去っていく。
  
○ KITT・車内
KITT「デボンさんにこのことを報告しないでいいんですか、マイケル」
マイケル「いいや。デボンは、会議のことで頭がいっぱいだろう。何かあれば向こうから
 連絡してくるさ。それより、KITT、デボンに俺のミスを告げ口したな」
KITT「すいません、デボンさんにしつこく追求されて、仕方なく・・・」
マイケル「おかげで今月も懐が寂しくなりそうだ」
KITT「同情いたします」
マイケル「・・・ひさしぶりにエイプリルと会った気分はどうだ?」
KITT「生き別れていた母親と再開したような気分です」
マイケル「大げさな。じゃあボニーはどうなるんだい?」
KITT「ボニーも母親の一人です。何分私にはたくさんの育ての親がいるもので」
マイケル「その中に当然俺も入ってるんだろうな?」
KITT「もちろんですとも」
マイケル「ありがとよ」

○ ホテル前の路上脇に止まる一台のBGM

○ BMW・車内
  グレイのスーツを来た強面の男達がKITTを見つめている。

○ ローガン・ホテル5階・エレベータ前
  扉が開き、エイプリルが降りてくる。
  通路を歩きだし、505号室の扉のノブに鍵を差し込もうとするが、扉が開いている事に
  気づき、そのまま中へ入り込む。

○ 同・505号室内
  辺りを見回すエイプリル。
  突然、背後から近づいてきた男に体を締め付けられ、口元を布で塞がれる。

○ KITT車内
  緊急用の呼出し音が鳴り響く。
KITT「マイケル。デボンさんから緊急連絡です」
マイケル「噂をすれば」
  スクリーンモニターにデボンの姿が映し出される。
マイケル「どうしたんだ、デボン?」
デボン「一時間ほど前、TDOの倉庫に何者かが侵入して、最新の小型熱線追尾式ミサイル
 GY−3、20機が奪われた」
マイケル「なんだって」
デボン「すでにペンタゴンとCIA、米国情報機関の調査機関が情報の収集に動き出しとる」
マイケル「犯人はどうやって中に侵入したんだい?」
デボン「それなんだがな、生き残った警備員の話では、犯人達は、ブルーのコルベットと
 トレーラーで敷地に乗り込んで来たらしいんだが、そのコルベットが特殊でな。ライフルの弾を
 跳ね返したそうだ」
マイケル「つまり相手は、そこいらの武装グループとは訳が違うって事か」
デボン「ああ。3人の警備員が殺された。財団としても黙って見ておれん。マイケル、
 至急こっちに来てくれ」
マイケル「デボン、実は・・・」
デボン「何だ?」
マイケル「・・・いや、別に何もない」
デボン「じゃあ待っとるぞ」
  スクリーンモニターからデボンが消える。
マイケル「仕方ない。エイプリルに謝って来るか」
  マイケル、車から降り、玄関に向かう。

○ ローガンホテル・ロビー
  マイケルがフロント係の男に近づく。
マイケル「すまないがここに泊まっているエイプリル・カーチスの部屋の番号を教えてくれ」
フロント係の男「どちら様です?」
マイケル「マイケル・ナイト。知り合いだよ。本人に直接確認してくれてもいい」
  男、コンソールの前に立ちキーを打ち始める。モニターに宿泊名簿の画面が現れる。
  電話の受話器を上げている。
  漫然と辺りを見回しているマイケルの背後に、大きなトランクケースを押した二人組の
  男達が通りすぎていく。

○ 同・玄関口
  入り口の扉から二人組の男達が現れ、KITTの側を横切っていく。

○ 同・フロント
フロント係の男「(首を振り)電話に出られません。どうやらお留守のようです」
マイケル「なんだって?今さっき本人をここに送って来たところだぜ」

○ 市街路沿いに止まるBMW
  後部席の扉が開かれ、男がトランクケースを乗せている。
  男、扉を閉めると、助手席に乗り込む。タイヤを軋ませ、猛スピードで立ち去っていくBMW。

○ 同・フロント
フロント係「そう言えば、10分程前にエマドワルド社の社員とおっしゃっる方が、505号室に
 向かわれましたが・・・」
  怪訝に顔を歪めるマイケル。コムリンクに話しかけ、
マイケル「KITT、505号室を調べてくれ」

○ KITTのモニターにホテルのワイヤーフレームのイメージが映し出される
  505号室にズーム・インされ、赤外線透視される。

○ ローガン・ホテル・ロビー
KITT「マイケル、505号室に人の気配はありません」
マイケル「この十分間の間に玄関口で怪しげな人物や、車を見かけなかったか?」
KITT「一分程前に慌てて立ち去っていく車をキャッチしました。黒のBMWです」
  マイケル、険しい表情を浮かべ、慌てて走り去っていく。

○ 同・玄関口
  扉から飛び出してきたマイケルが、颯爽とKITTに駆け込む。KITT、運転席の扉を開く。
  マイケル、運転席に乗り込む。
  ローガン・ホテルのゲートから市街路に出て、全速力で走行を始めるKITT。

○ 閑静な住宅街の道を走り抜けるBMW
  
○ BMW・車内
  運転席と助手席に座る男。憮然と済ました様子。

○ KITT車内
  スクリーンモニターに数種類のタイヤのイメージが映し出されている。
KITT「マイケル、わかりました。この市街路にもっとも最近ついたBMWのタイヤの跡は、
 ホテル街通りの方を北へ向かっています」
マイケル「よし、スーパーモードだ」
  「SPM」のボタンを押すマイケル。
  
○ SPMモードに変形するKITT
  スピードメーターがみるみる上昇。ロケット噴射の爆音を唸らせ、颯爽と市街路を駆け抜けていく。

○ 郊外に向かう道
  緩やかなカーブを走行しているBMW。
  
○ BMW・車内
  運転席の男、ミラーに映るKITTに気づく。
運転席の男「来たぜ、奴だ!」
  助手席の男、慌てて後ろに振り返る。
  
○ BMWとの距離の差をあっと言う間に縮めていくKITT

○ SPMモードが解除され、元の姿に戻るKITT
  
○ 助手席の扉から身を乗り出し、バズーカーをKITTに向ける男
  バズーカーが発射される。
  KITTのボンネットに弾が命中。激しい炎がボディを包み込むが、暫くして消える。

○ KITT・車内
マイケル「大丈夫か?」
KITT「今のところは」
マイケル「よし、前に出るぞ」

○ KITT、BMWの左横に並んで走る
  
○ BMW・車内
  助手席の男が、冷凍保存用パックから特殊弾を抜き取り、マガジンに装填。
助手席の男「(運転席の男に)顎を引いてろ」
  運転席の男、シートにめいいっぱい体を沿わせる。助手席の男が、運転席側の窓外に見える
  KITTに銃を撃つ。

○ KITTの助手席側の窓に弾丸が当たる赤い閃光と強力な衝撃波と共に窓が破裂し、助手席側の
  窓が粉砕する
  マイケル、右腕で顔を覆い、破片を避けている。
  助手席のシート下に小さな黒いセラミックの物体が落ちる。
  KITT、急ブレーキで道を滑るようににして立ち止まる。
  走り去っていくBMW。

○ KITT車内
KITT「マイケル、大丈夫ですか?」
  マイケル、腕から血を流している。
マイケル「なんとかな、お前のほうはどうなんだ?」
KITT「今の衝撃波で、いくつかの計器類とシステムに損傷を受けました。センサーの故障で
 タイヤ跡の追跡が不可能になりました」
マイケル「思ったより強力な弾丸だったようだな」
  マイケル、またハンドルを握り、アクセルを踏み込む。

○ 山の中腹・砕石場跡
  トレーラーのコンテナに乗り込むBMW。コンテナの扉が閉まると、エンジンがかかり、
  トレーラーがゆっくりと動き始める。

○ 山道の緩やかなカーブを走り抜けているKITT
  途中、トレーラーとすれ違う。
  トレーラー、道の彼方へ姿を消す・・・。

〜ACT1 END〜

〜ACT2〜   
○ 財団移動本部トレーラーがハイウェイを疾走している(深夜)
  
○ コンテナ内
  RC−3がKITTの助手席のシートに座り、ドアの窓の開閉をチェックしている。
  コンピュータコンソールの前に座り、コーヒーを飲んでいるマイケル。
  なんだか落ち着かない様子。
  RC−3、車から降り、
RC−3「KITTの窓をボロボロにするなんて、奴らただものじゃあねぇな」
マイケル「特殊な破壊兵器だった。今までに見たこともない閃光を浴びせられて・・・」
RC−3「薬莢でも残ってたら調べようがあるがな」
マイケル「KITT、何かわかったことはないか?」
KITT「私のダッシュボードに微量の液体窒素を感知しました」
マイケル「衝撃波の正体は?」
RC−3「KITTの計器類がいくつか故障しているところを察して、何かの強力な電磁波の
 影響じゃないか」
マイケル「ガラスを氷付けにされて、その後、大爆発が起きた」
RC−3「KITTの窓は、マイナス150度まで耐えられる設計だ。ちょっとやそっとで
 割れたりしないぜ」
マイケル「もしかして分子結合膜のコーティングを破られたのかもな」
RC−3「でもあれを破るには確か3つの構造式が必要なはずだろ?」
マイケル「ああ。KITTがジャガーノートに破壊された時の事を思い出したよ。あの時も
 コーティングをズタズタに破られた」
RC−3「まさか、ノルドストロムの一味が俺達に復讐を?・・・」
マイケル「いや、奴は刑務所の中だ。それに、俺達を憎んでる相手は5万といるぜ」
RC−3「しかし、構造式の謎を解ける奴なんて、他に誰が?・・・」
  マイケル、寡黙になる。
RC−3「何か思い当たることがあるのか?」
マイケル「いや。KITT、エマドワルド社について何かわかったことはあるか?」
KITT「元々は、自動車のフィルタ関連製品を製造している会社でしたが、今は、業務を拡大し、
 電化製品、食品、衣料、ミサイルまで、あらゆる商品を企画、製品化している総合商社になっている
 ようです」
マイケル「アーネストの会社の方は?」
KITT「エマドワルド社とは、主に産業用ロボットの設計部門で一年前から取り引きを続けている
 会社のようです。経営状態は至って順調。彼が失踪する要因は今のところどこにも見当たりません」
マイケル「RC−3、悪いが先にフェニックスに向かってくれないか?」
RC−3「わかった。デボンには、俺から事情を説明しとくよ」
  マイケル、KITTに乗り込み、エンジンをかけ、バックする。

○ トレーラーから降り、バックターンすると、夜道を疾走していくKITT
  
○ 暗闇に浮かぶ照明
  狭い牢の壁の片隅で気を失っているエイプリルの姿が見える。
  エイプリル、目を覚まし、辺りを見回している。
  入口の扉の上に監視カメラとスピーカーが設置されている。
  
○ 赤い照明に包まれた室内 
  コンソール前に一人の男が座っているが、男の顔は見えない。男は、左手に杖を持っている。
  監視カメラの映像を見つめ、マイクに向かって喋り出す。
男「またおまえと再会するとはな・・・」
  モニターに映るエイプリル。監視カメラに気づき、見つめている。
エイプリル「誰?何が目的なの?」
男「相変わらずの威勢の良さだな」

○ 地下牢
エイプリル「(驚愕し)その声・・・聞き覚えがあるわ・・・」
男の声「余計な詮索はしなくていい。それより、おまえには、やってもらわなければならない事がある」
エイプリル「アーネストを誘拐したのもあなたでしょ?彼を返して!」
男の声「黙らんと、彼氏の寿命が縮まるぞ」
  エイプリル、沸き立つ感情を押さえ、寡黙になる。
  扉が開き、二人のグレイのスーツの男が移動ラックを運び込んでくる。その上に白い布を
  被った物体が置かれている。
男の声「それをあるものにセッティングしてもらう。そして再プログラミングして俺好みの人格を
 植えつけてもらうぞ」
  男、白い布を剥ぎとる。
  エイプリル、目の前の黒いボックスを見つめ、唖然としている。
  物体からエレクトロニック・パルスの奇妙な信号音が聞こえている。
男の声「それができなければ、アーネストは、地獄行きだ」
  エイプリル、スピーカーを睨み付けている。
  物体から出る赤い光が、エイプリルの顔を照らしている。

○ サンフランシスコ外景(日の出)
  太陽の日差しに照らされた街並のシルエットが映る。

○ ダウンタウン(朝)
  色とりどりのビル群を背景にKITTが走行している。

○ ヒルトンアンドタワー・ゲート
  路上脇に立ち止まるKITT。
  ホテルのロビーの入り口から出て来るマイケル。左手に封筒を持っている。KITTに
  向かって歩いている。

○ KITT・車内
  運転席に乗り込むマイケル。
KITT「何か収穫はありましたか?」
マイケル「(落胆の面持ちで)ああ、確かに、アーネストは、二カ月前にここに滞在してたようだ。
 数人の男達と一緒にな。その後の行き先は、ホテルの従業員も何も知らなかった」
KITT「その封筒は何です?」
マイケル「アーネストがエイプリル宛に置いていったそうだ」
  マイケル、封筒を開け、中からCDケースを取り出す。
マイケル「(CDを見つめ)エイプリルのお気に入りの曲でも入ってるのかな?」
KITT「私の最新式の読み取り装置にかけてみてはどうです?」
マイケル「そうだな」
  モニターしたに設置されたCD−ROM装置にCDを挿入するマイケル。
  KITTのモニターに青い図面が映し出されるが、一瞬で不鮮明になり、映像が乱れる。
  奇妙なパルス音が鳴り響き、モニターが消える。
マイケル「どうした、KITT」
KITT「どうやらデータの読み込み中にエラーが発生してしまったようです。すみません」
マイケル「縁起悪いな、故障か。仕方ない、この付近の工場をしらみ潰しに当たるとするか」
  KITTのモニターに地図が映し出され、
KITT「マイケル、この付近には、約400近くの工場が建てられていますが、エマドワルド社の
 ロボットを契約している工場はありません」
マイケル「いつの間に調べたんだ?」
KITT「あなたがホテルに言ってる間にです。育ての親が誘拐されたんです。黙ったまま
 何もせずにはいられませんので」
マイケル「おまえの気持ちはよくわかるぞ・・・KITT、デトロイトまでの最短ルートを割り出してくれ」
KITT「すでに計算済みです」
  マイケル、笑みを浮かべ、エンジンをかける。

○ ヒルトンアンドタワー・ゲート
  KITTが発進する。
  
○ KITT・車内
KITT「マイケル、デボンさんからです」
  スクリーン・モニターにデボンが映る。
デボン「マイケル、RC−3から聞いたぞ。エイプリルが誘拐されたそうだな」
マイケル「そうなんだ。そっちに行けなくてごめんよ」
デボン「まあいい。それで、何か手がかりは掴めたか?」
マイケル「それがゼロ。デボン悪いが俺は今からデトロイトに行ってくる」
デボン「わかった。こっちの方は今、RC−3が調査に当たってる。できるだけ早く・・・と
 言うわけには行かないだろうが、無事彼女を見つけだしてくれ」
マイケル「わかった、デボン。ありがとう」
  デボン、手を軽く振ると、スクリーンモニターから消える。

○ 砂漠の一本道を地平線に向かって疾走するKITT

○ デトロイト・シティの街並の遠景(夕方)
  ダウンタウン郊外のハイウェイを走行しているKITT。
マイケルの声「確か、この通りにエマドワルド社のビルがあったはずだな」
KITT「その通りです」
マイケルの声「先にそこへ行ってみるか」

○ エマドワルド社・玄関口
  モダンなガラス張りの建物がそびえ立つ。
  KITTが、歩道脇に立ち止まる。マイケル、車から降り、入口に向かって歩いている。

○ 同・一階フロア
  受付の前にマイケルが近づいていく。
受付係の女「何の御用でしょう?」
マイケル「産業用ロボット部門の責任者と会って話しがしたい」
受付係の女「アポイントは取られていますか?」
マイケル「(首を振り)いや、至急の用件だ。ここの取引先のアーネスト設計事務所の社長と
 その社員が行方不明になってるんだ。何か知ってるなら話を聞きたいと思って」
受付係の女「ちょっとお待ちください」
  受付係の女、手元の電話の受話器を上げ、ボタンを押し、話し始める。
  
○ KITT・車内
  マイケルが運転席に乗り込んでくる。
  溜め息を吐き、落胆した面持ち。
KITT「どうかしたんですか?」
マイケル「責任者は、ニューヨークへ商談に出かけていて、アーネストとの取り引きは、三カ月前に
 済ませていたそうだ」
KITT「じゃあ、彼に商談を持ちかけた相手とはいったい・・・」
マイケル「アーネストの事務所に行くぞ」

○ アーネスト設計事務所ビル(夜)
  ビルの前にKITTが立ち止まる。

○ KITT・車内
マイケル「中の様子を調べてくれ」
  KITTのスキャナーがフラッシュし始める。
  モニターに各階の見取り図が映し出される。
KITT「人の気配はありませんが、入口の扉の鍵が開いたままです。何者かが侵入したようです」
  モニターの画面がノイズでぼやけ始める。
マイケル「どうした、KITT?」
KITT「どうやらスキャナーのシステムの一部に不具合が発生したようです」
マイケル「またか。昨日の弾丸の影響か?・・・」
KITT「すいません、マイケル」
マイケル「まぁ、いい。気にするなって」
  マイケル、ドアを開け車から降りる。
  助手席シートの下の黒い物体が映る。
  
○ アーネスト設計事務所ビル・玄関口
  マイケルが近づいてくる。取っ手を掴み、静かに扉を開けようとする。

○ 同・一階フロア
  扉が開く。暗闇が広がっている。
  マイケル、中の様子を見渡しながらゆっくりと壁伝いに歩いていく。
  スイッチパネルを見つけ、ボタンを押す。フロアに明かりが点く。
  手前のガラス張りの仕切りの向こうに事務室が見え、辺りに書類が散乱している。
  事務室のドアを開け、中に入るマイケル。床に落ちている書類を一枚拾い上げる。
  それは、エマドワルド社からの発注依頼書である。
  
○ 同・二階
  明かり点けるマイケル。廊下を歩き、社長室へ入り込む。

○ 同・社長室
  明かりが点く。デスクの周辺が荒らされている。
  マイケル、デスク下にしゃがみこみ、落ちている書面を探り、同時に、壊れた写真立てを
  見つける。写真は、公園のベンチで映る楽しそうな表情のアーネストとエイプリルのツーショット。
  コムリンクから呼び出し音が鳴る。
マイケル「なんだ、KITT?」
KITT「今そちらの方にブロンドの女性が向かいました」

○ 階段を降りるマイケル
  事務所の方に静かに近づく。
  中にいる女性が床に落ちている書類を拾い上げている。
  女性は、背は小柄で、セミロングに青い目をしている。マイケル、女性にゆっくりと近づき、
マイケル「そこで何してる?」
  女、マイケルを見、驚愕する。
女「あなた、誰?」
マイケル「通りすがりのものさ、君は?・・」
  マイケル、女の顔を見て唖然とし、
マイケル「おたく、どこかで・・・」
  女、弱々しい表情でマイケルを見つめ、
マイケル「思い出したぞ、ハンバーガーショップで俺に声をかけてきた・・・」
女「あなた、マイケル・ナイト?」
マイケル「どうして俺の名を?」
女「私、ヘレン・パーカー。三カ月前までここで秘書をしていたの。あなたの名は、エイプリルから
 聞いてるわ。写真を見せてもらったの」
マイケル「こんな時間に何しに来たの?」
ヘレン「彼女からアーネストがいなくなったって聞いたから、何か手がかりがないかと思って
 久しぶりに来てみたんだけど、この有り様・・・。もしかして、あなたがやったのこれ?」
マイケル「いや、俺が来たときにはもう・・・ 」
ヘレン「私も何か力になれればと思ったんだけど、今度はエイプリルまで連絡が取れなくなって・・・」
マイケル「彼女、何者かに連れ去られたんだ」
  ヘレン、驚愕し、
ヘレン「・・・実は、私がやめる前の日に、エマドワルド社の社員とアーネストがオフィスで話を
 していたのを聞いたの。その時、ネバダの新しい工場で産業用ロボットの視察に出かけるような
 ことを言ってたの思い出して・・・」
マイケル「本当かい?他に知ってることは?」
ヘレン「・・・そう言えば、その時、430って言葉を何回も聞いたわ・・・ 」
  マイケル、神妙な面持ちになり、
マイケル「・・・何のことかわかるかい?」
ヘレン「おそらく場所の事じゃないかしら」
マイケル「ありがとう、助かったよ」
  マイケル、ヘレンの元から離れていく。
ヘレン「(振り返り)待って、心配だから私もついて行くわ」
  マイケル、ヘレンを怪訝に見つめているが、やがて微笑む。

○ 旧軍事施設・地下実験場
  ある車の前輪のアングル。
  激しく唸るエンジン音。呻くようなタービンの轟きが、時に無気味に聞こえる。

○ 同・中央コントロール室
  男が、モニターで実験場の様子を見つめている。

○ 同・実験場
  ある車の前部バンパーにつけられた2つのスキャナー。グリーンの光がなびいている。
  運転席のシートに座っていたエイプリルが車から降りる。
  壁隅に取り付けられたカメラを睨み付けながら、 

○ 同・中央コントロール室
  モニターに映るエイプリル。
エイプリル「最終チェックは、終わったわ」
男「よくやった」
エイプリル「こんなもの作り出して・・・今度はいったい何をするつもり?」
男「あえて説明しなくとも、おまえには、俺の狙いがわかっているはずだ」
エイプリル「マイケルなのね・・・」
男「余計な勘繰りはよせ。それよりさっそくその車の実力を試そうではないか」
  エイプリル、黒いスーツを着た男達に両腕を掴まれ、その場から連れ出される。

○ 同・実験場
  ブルーのコルベットのフルショット。
  コルベット、エンジンを高鳴らせ、勢い良く発進し、地下通路を走り出す。

○ ブルーのコルベット・車内
  センターコンソールの上部につけられたデジタルスピードメーターが瞬時に200を超える。
  M型のハンドルが左右に動いている。
  コンソール中央部につけられたマルチモニターが、全8方向の周囲の状況を映し出している。
  コンソール側面につけられたスピーカーから男の声が聞こえる。
男「その地下通路は10キロ程しかない。どうすればそこを出られるか、わかっているな」
  ハンドル周りに装備された数種類のパネルの「WEAPON」というボタンが緑色の
  点滅を始める。
  
○ コルベット・後方の両側のフェンダーに設置された格納庫の扉が開く。
  中から短型のミサイル装置が現れる。
  2つのミサイルが同時に発射され、通路奥の天井が破壊される。
  爆風と共に巨大な炎がコルベットを包み込む。

○ ブルーのコルベット・車内
  「DOUBLE ACTION」と言うボタンが点滅する。パルス信号が小刻みに音を奏でる。

○ 地中から土砂を吹き飛ばしコルベットが地上の砂漠へ飛び出してくる。
  暗闇の空に高く舞い上がり、スマートに地上に着地する。
  ターンし、砂ぼこりを起こしながら立ち止まるコルベット。
  スキャナーがフラッシュし、無気味な共鳴が聞こえる。
  
○ 地下・中央コントロール室
  コルベットの車内からの映像が映るモニターを見ている男。
男「(拍手し)素晴らしい。見事な出来映えだ。これで戦いの準備は整った。後は我々に近づいて
 くる、間抜けな標的を迎え撃つだけだ」
  男の顔が映る。
  男は、ガースである。左目の目元から顎にかけての長い傷が痛々しい。
    FADE OUT
〜ACT2 END〜

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