『REVENGE』ACT3→5 作 ガース「ガースのお部屋」

〜ACT3〜 
○ ハイウェイ(深夜)
  スピードを上げ疾走するKITT。ヘッドライトとスキャナーの光が闇夜に浮かぶ。

○ KITT車内
  デジタルメーターが150の値を行き来している。
  ハンドルを握るマイケル。助手席にヘレンが座っている。
  ヘレン、ダッシュボードの計器類を見回し、
ヘレン「すごい車ね・・・」
マイケル「普通の車より、ちょっと派手なだけさ」
ヘレン「エイプリルがメカに強いことは知ってたけど、まさかこんな車の製作に関わっていた
 なんて・・・」
マイケル「君とエイプリルは知り合いなの?」
ヘレン「つきあい出したのは、彼女がアーネストのオフィスに来てからだわ」
マイケル「彼女が財団を離れる前に、友達のところで暫く世話になるって言ってたけど、
 まさか恋人の会社で働くとは思ってもみなかった」
ヘレン「学生時代、ポールは、彼女にプロポーズしたらしいわ。当時は振られたみたいだけど、
 今度は二人とも本気だったみたい」
マイケル「・・・」
ヘレン「ねぇ、話は変わるけど、リトル・ロックのこと・・・怒ってる?」
  マイケル、しかめっ面を浮かべるすぐに笑みを零し、
マイケル「いいや、」
ヘレン「ごめんなさい、あなたの仕事を邪魔するようなことして・・・私、彼氏に振られた
 ばかりで気が立ってたみたい・・・」
マイケル「気にしないでいいよ。犯人は無事逮捕できたし」
ヘレン「誰を追ってたの?」
マイケル「リトル・ロックに潜伏していたテロリストさ。一週間前からマークしてたんだ」
  ヘレン、突然寡黙になり・・・
マイケル「どうかした?」
ヘレン「いや、別に・・・」
  通信アラームが鳴り響く。
KITT「マイケル、RC−3からです」
  ヘレン、憮然とKITTを見つめている。
マイケル「調査ははかどってるか?RC−3」
RC−3の声「もう天手古舞だよ。今日一日中、新型ミサイルの開発者と軍事関係者を軒並み
 当たってみたんだが、皆さんお口の固い連中でね、知らぬぞんぜんの一点張りさ。でも一つだけ
 有力な情報が見つかりそうなんだ。その情報源に今から会いに行く」
マイケル「こっちも有力な情報提供者が現れてね。今からネバダに向かうんだ」
RC−3の声「ネバダ?」
マイケル「ああ、そこにアーネストがいる工場があるかもしれない。詳しいことは、向こうに
 着いてから報告するよ」
RC−3「わかった」
マイケル「ああ、それからKITTのシステムに不具合が出てるみたいなんだ。
 昨日ちゃんと点検してくれた?」
RC−3の声「おかしいな。調べてみたけど、何の異常も見当たらなかったぜ・・・。
 こっちの仕事が片づいたら、また調べてみるよ」
マイケル「また後でな」
  モニターからRC−3が消える。
 
○ ネバダ・ハイウェイ(翌朝)
  広大な砂漠が広がっている。地平線から微かに顔を出す太陽に向かってKITTが疾走している。

○ 有刺鉄線の張られたメッシュ状のフェンスに取り囲まれた広大な土地
  KITTがゲートの前に止まる。スキャナーが唸る。
  
○ KITT・車内
KITT「この付近一帯は核兵器の実験演習場です。これ以上先には進めません」
マイケル「とてもじゃないけど工場なんか建てられそうにない雰囲気の場所だな」
ヘレン「でも、彼の言ってた430地区は、この辺りよ」
  ヘレン、突然、顔色を変え、下を向いている。
マイケル「(ヘレンの異変に気づき)どうかした?」
ヘレン「なんだか、車酔いしっちゃったみたい」

○ KITTから降りるヘレン

○ KITT・車内
  ヘレン、マイケルに背を向けしゃがみこんでいる。
マイケル「大丈夫かい・・ヘレ・・・」
  ヘレン、突然、立ち上がり、振り返ると両手で拳銃を構え、マイケルに銃口を向ける。
  唖然とするマイケル。
マイケル「・・・何のマネだい?」
ヘレン「私の言う通りに従うのよ」
  マイケル、ヘレンを睨み付けている。
ヘレン「ドアを閉めたら、この砂漠をまっすぐ進みなさい」
マイケル「君はどうするんだい?こんなところ誰一人も寄り付かないし、ヒッチハイクもできないぜ」
ヘレン「私のことは心配しないでいいのよ。さぁ、早く行って!」
  KITT、助手席のドアを閉める。
  マイケル、アクセルを踏み込む。
KITT「これはいったい、どういうことです?」
マイケル「さぁな。とりあえず先へ行って見よう」

○ ヘレンのそばから離れていくKITT
  不適な笑みを浮かべ、KITTを見ているヘレン。

○ KITT・車内
  マイケル、前方から見える土煙を見つめている。

○ マイケルの視点
  地平線に黄色い土煙を上げながら疾走してくる一台の青い車が見える。
  急速なスピードでKITTに近づいてくる。やがて姿形がはっきりと見え始める。

○ KITT・車内
マイケル「ブルーのコルベット・・・」

○ 疾走するブルー・コルベット
  更に勢いを増して進んでいる。
  
○ KITTとブルー・コルベットの距離が縮まる。
  
○ KITT・車内
マイケル「避けずにこっちに向かってくるぞ」
KITT「マイケル、危険です。早くハンドルを切ってください!」

○ マイケルの視点
  目の前まで近づいてきたブルー・コルベットのボディが、突然タービンの爆音と共に浮き上がる。

○ 猛烈な勢いでKITTの屋根の上をスレスレで飛び越えるブルー・コルベット
  土煙が空を舞う。
  路面に着地すると、透かさず180度ターンする。

○ KITT・車内
マイケル「いったいどうなってるんだ?」
KITT「私と同じターボブースト機能を備えている車があるなんて・・・」

○ 180度ターンするKITT。
  ブルー・コルベットが無気味な爆音を立てながらKITTに向かってくる。
  
○ ブルー・コルベットの両側のリア・フェンダーの格納庫が開く
  ミサイル装置とその脇にガトリングガンが装備された兵器が姿を現す。
  ガトリングガンが回転を始め、30mm弾が勢い良く連射する。
  KITTのボンネットやフロントガラスに次々と弾が当たる。火花が散り、弾丸が
  跳ね返されている。
  コルベット、次にロケットミサイルを発射する。

○ ブルー・コルベット側の視点
  KITT、急ブレーキ。路面を滑り、やや右寄りにボディを傾けながら止まる。
  ロケットミサイルがKITT左前輪に命中。タイヤとホイールが粉々に吹き飛ばされ、
  爆風の勢いでボディが真横に勢い良く回転する。
  ブルー・コルベット、KITTから100m離れた位置に立ち止まる。
  KITTのボディの回転がおさまり、今度は、左寄りにボディを向け、立ち止まる。

○ KITT・車内
  激しい衝撃を受け意識朦朧としているマイケル。
KITT「大丈夫ですか?マイケル!」
マイケル「(なんとか気を取り戻し)ああ、KITT・・・損傷箇所をチェックしろ」
KITT「通信システム及び自己診断システムの一部の機能、左前輪のタイヤが破壊されました」
マイケル「マイクロ・ジャマーでコルベットのミサイル装置のコントロールシステムを乗っ取る
 ことはできないか?」
KITT「駄目です。マイクロジャマーも使用不能です!」

○ ブルー・コルベット(正面のショット)
  バンパー部についている2つのスキャナーに緑色の光が無気味になびいている。
モジュラー音声「無様な姿だな、KITT」

○ KITT・車内
KITT「(激しく動揺し)マイケル、あの声は・・・」
マイケル「間違いない・・・奴は、KARRだ」

○ ブルー・コルベット・車内
  計器パネルにLEDモジュラーが設置され、3つのラインからグリーンの光が
  「M」状に帯びて発光している。
モジュラー音声「KARRは、死んだ。しかし、KARRのCPUは、生き残り、
 この車に搭載され、『GAROS』として生まれ変わったのだ」

○ KITT・車内
マイケル「誰がおまえを復活させた?」

○ ブルー・コルベット・車内
GAROS「私と同様、おまえ達に復讐を遂げようとしている男だ。そして、この私を蘇らせた
 のは、おまえ達が良く知る人物だ」

○ KITT・車内
マイケル「エイプリルだ・・・奴らこれが目的で・・・」
  
○ GAROS・車内
GAROS「おまえ達は、二度も私を破壊しようとした。今度は私の番だ。二年前の苦痛を
 おまえ達にも味あわせてやる」
  ハンドル下の「WEAPON」のボタンが点滅する。

○ GAROSの発射台から、ロケットミサイルが発射する。
  ミサイルは、KITTの右前輪部に命中。タイヤとホイールは粉々に吹き飛ばされ、爆風で、
  KITTのボディがまた激しく回転を始める。
  
○ KITT・車内
  激しく揺さぶられているマイケル。
  ボディの動きが止まる。頭がふらつくマイケル。
KITT「これで完全に身動きが取れなくなりました。マイケル、後一つあのミサイルを撃ち
 込まれたら、あなたも一環の終わりです。非常手段をとらせて頂きます」
マイケル「駄目だ、KITT。やるんじゃない」
KITT「しかし、マイケル!」
マイケル「俺達は、永遠のパートナーだ」
KITT「・・・」
マイケル「・・・死ぬ時は一緒だって前の戦いの時にも言ったはずだぜ。それにこんなところで
 一人ぼっちにされたら、どっちみち奴に捕まって殺されるのがオチさ」
KITT「・・・残念です。こんな形で最後を迎えるなんて・・・」
  
○ GAROSの発射台からミサイルが発射する。 
                FADE OUT
〜ACT3 END〜

〜ACT4〜  
○ KITTの正面に向かって突進するミサイルの視点
  ロケットミサイルがKITTのボディに当たる寸前、その真横から赤い閃光が目の前に表れ、
  ミサイルを包み込む。

○ KITTの目前でロケットミサイルが爆発する
  爆風でボディが浮き上がり、激しく横転するKITT。

○ GAROS・車内
GAROS「何者だ」
  
○ KITTとGAROSより500m離れた場所に男の乗ったバイクが止まる
  茶色の皮ジャン、フルフェイスの黒いヘルメットを被り、右肩にスティンガーミサイルをのせ
  構えている。
  男、スティンガーをGAROSに向け、発射する。
  青い閃光弾が、GAROSの左側のミサイル装置付近に命中。激しい爆音が轟き、
  オレンジ色の炎に包まれるGAROS。暫くして煙が消え、GAROSのボディが姿を表わす。
  ミサイル装置が見事に破壊されている。
  GAROS、バイクの男に向かって猛然と走り出す。
  バイクの男、スティンガーをシートの後ろに固定すると、ウィリー走行しながら
  GAROSに接近。GAROSと鉢合わせする直前、スロットルレバーの先端についている
  「TURBO」ボタンを押し、空高くジャンプ。悠々とGAROSを飛び越えていく。
  バイク、着地すると、車体を横に滑らしながら立ち止まり、即座にスティンガーを構え、
  GAROSの方に向け、撃つ。
  青い閃光弾が、走行中のGAROSのリアウィンドウに命中。猛烈な爆炎と共にガラスが
  粉々に飛び散る。
  
○ GAROS・車内
  マルチ画面に自己診断システムのグラフが表示され、「SYSTEM ERROR」の
  白い文字が警告アラームと共に点滅している。
GAROS「おまえをゲストに呼んだ覚えはない・・・これは単なるデモンストレーションだ。
 マイケル、KITT、次こそ私の本当のパワーを見せてやる」
  GAROS、そのまま直進し、猛スピードで立ち去っていく。
  
○ KITTに向かって走行してくるバイク
  運転席側のドアの前で立ち止まる。
  黄色い砂で覆われたKITTのボディ。白い煙を上げている。
  マイケル、苦痛の表情を浮かべながら、怪訝にバイクの男を見つめている。
  ヘルメットをはずす男。男は、RC−3である。
RC−3「マイケル、大丈夫か?」
  マイケル、RC−3の顔を見て、安堵し、微笑む。
マイケル「どうしてここがわかったんだ?」
RC−3「悪魔のお告げさ」
  
○ 財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  リフトアップ装置のプレートにボディを持ち上げられているKITT。
  コンピュータ・コンソールの前に佇むマイケルとRC−3。
RC−3「それにしても昨日から災難続きだよなKITTは」
マイケル「おいおい、俺のことも少しは心配してくれよ」
RC−3「デボンも俺も今朝からずっとそっちに連絡してたんだぜ。もっと早くそっちと連絡が
 取れていたらこんな目には合わなかったはずだ」
マイケル「おかしいな。昨日の晩までは、普通に連絡できたのに。KITTの通信システムには
 故障はなかったはずだ」
RC−3「もし俺が、敵の狙いを掴んでいなかったら、スティンガー砲に太陽弾も詰め込めず、
 あんたもKITTも今頃お陀仏だったぜ」
マイケル「感謝してるよ。今度何か奢るよ」
RC−3「当然、奮発してもらうぜ」
マイケル「じゃあ説明してもらおうか、その敵の狙いって奴を」
  RC−3、チェアーに座りコンピュータのキーボードを叩く。ディスプレイに2人の男の
  モノクロ写真が映る。
RC−3「左は現DIA長官のカルメン・ハインズ。元空軍司令官。そして、隣はハインズの友人
 リチャード・ハンソン。ハンソンは最近軍のミサイル開発専門の小会社を設立した。「TDO」と
 呼ばれる軍機メーカーの社長だ。二人は空軍時代の親しい友人で、TDOの株を二人で半分ずつ
 保有してる。つまり名目上は、共同経営者ってわけだ。倉庫から盗まれた新型核ミサイルの開発に
 もこの会社が関わってる」
マイケル「それで?」
RC−3「米国情報機関に古い知り合いがいてね。そいつからハインズについて洗いざらい
 聞き出してきたんだ。聞いて驚くなよ」
マイケル「もったいぶらずに早く言えよ」
RC−3「ハインズの家族について調べてたら意外な人物に突き当たったんだ。奴には、
 三人の娘がいて、長女は外交官、そして次女は、CIAの特別秘書をしてるが、三女だけ記録が
 ないんだ」
マイケル「なぜだ?」
RC−3「ハインズの家系は皆政府の官僚役職についてるが、三女だけは例外。名前は、
 メリル・ハインズ。3年前まである高級クラブのホステス嬢をしてた。店での売り名は、
 アドリエンヌ」
マイケル「(驚愕し)アドリエンヌ?・・」
  マイケル、動揺し、険相を浮かべる。
RC−3「デボンの話だと、アドリエンヌは、昔あんた達を襲ったガースって男の愛人だったそうだな」
マイケル「二人がミサイルを盗み出したって言うのか?」
RC−3「まだ証拠はない。だけど、ハインズと交遊関係を持つ政治学者にあんたの写真を
 見せたら、前にハインズの自宅に呼ばれた時、あんたと瓜二つの男を見たと証言したんだ」
  マイケル、強面になり、思いつめた表情。
マイケル「ガースが核ミサイルを盗みだし、エイプリルを誘拐してGAROSを誕生させたと
 いうなら、それなりに理由は思いつく。それに、あの女だ。リトルロックで会った時から、
 何か嫌な感じがした」
RC−3「わかっていながら、その女と一緒にネバダに向かったのか?」
マイケル「彼女の正体を突き止めようとしただけさ。そしたら案の定、彼女は豹変し、ブルーの
 コルベットのお出ましってわけさ」
RC−3「コルベットが積んでたロケットが核ミサイルじゃなくて良かったぜ」
マイケル「じゃあ、俺達のいる場所がわかったのは・・・」
RC−3「答えは簡単。あんたに似た・・・いや、あんたの整形元の顔になったガースって男が
 デボンに連絡してきたんだ。あんた達がネバダの核施設辺りの砂漠で熱線追尾ミサイルの攻撃を
 受けるってね・・・」
  マイケル、眉間に皺を寄せ、考え深げに俯く・・・。

○ 旧軍事工場施設地下・中央コントロール室
  モニターにネバダの地図が映し出され、赤い点滅が地図上を移動している。
  コンソールの前に座るガース。葉巻を加え、煙を吐きながら、モニターを見つめている。
  白い煙が周りに立ち込めている。
  ガースの背後の扉が開き、ヘレンが中に入ってくる。
  ヘレン、ガースの背後に立ち、周囲のモニターを見つめている。
ヘレン「私にあそこまでさせといて、どうしてマイケルを仕留めなかったの?」
  ガース、ヘレンの右手を掴み、優しく口付けをする。
ガース「今回は、GAROSの性能を奴らに見せつけるための、言わばプレゼンだ。マイケルは
 俺の手で痛めつけて、最後に目の前で命乞いをさせてやる」
ヘレン「あの男に会ってみて、あなたの気持ちが少し理解できたわ。ほんと、あなた達って
 双子みたいに瓜二つね」
  ガース、へレンを睨み付ける。へレン、ガースの顔を見、恐れおののく。
ガース「奴は、俺を地獄に突き落とそうとした男だ。しかし、俺はこの通り、生きてる。
 神が奴を地獄に突き落とすため、俺にチャンスを与えてくれたんだ」
  ヘレン、そっとガースの胸元のポケットから葉巻を取り、口に加える。
  ガース、ヘレンの葉巻にマッチの火を近づける。
ヘレン「(煙を吐き)それで、弟は、いつ助けてくれるの?」
  ガース、ヘレンを見つめ、
ガース「あの時、おまえがマイケルをしっかり手名付けておけば、奴は捕まらずにすんだのにな」
ヘレン「あら、私にあの人を引きつける魅力がなかったって言いたいの?」
  ガース、薄笑いを浮かべ、
  ヘレン、憮然とし、
ヘレン「嫌な人・・・」
  ガース、ヘレンの体を自分の前に抱き寄せ、ヘレンの唇を奪おうとする。
ヘレン「やめて」
  ヘレン、ガースを突き放し、そばから離れる。
ヘレン「アーネストを苦しめる事ができるなら、弟の脱獄を条件に、あなたに手を貸す。
 そう約束しただけのはずよ」
ガース「おまえは、かつて俺が愛した女によく似ている」
  ヘレン、険相を浮かべガースを見ている。
ヘレン「それで私を誘ったの?」
ガース「いいや。それだけじゃない。おまえの望み通り、リアレスを脱走させよう。おまえ達には
 もう一つ大事な仕事してもらわなければならないんでな」

○ リトル・ロック拘置所・敷地内(夜)
  厚さ40cmの巨大な壁が破壊される。破片と粉塵が飛び散った後、壁に開いた大きな穴が姿を
  表わし、そこをGAROSが潜り侵入、建物の周囲をぐるくると走行し始める。
  サイレンが鳴り響き、数人の看守達が外に飛び出してくる。
  看守達、GAROSにライフルを撃ち込んでいる。が、GAROS、火花を散らしながら
  弾丸を跳ね返し、猛然と看守達に突っ込んでいく。
  看守達が次々とGAROSに跳ね飛ばされていく。

○ GAROS・車内
  センターコンソールのモニターに拘置所内の各フロアの断面図が映る。
  画面がマルチ画面に切り替わり、各階の監視カメラに割り込んだ回線映像が出力される。
  さらにスキャン、2階の檻のベッドで眠るリアレスの映像が映る。
  「DOUBLE ACTION」のボタンが点滅する。

○ 低く無気味なタービンのうなり音と共に勢い良く飛び上がるGAROS
  ビルの2階の壁に向かっている。

○ リトルロック拘置所2階・通路
  壁を突き破り、通路に着地するとそのまま直進するGAROS。
  GAROSの前方に看守達が集まり、ライフルを連射している。
  急ブレーキをかけ、立ち止まると、リアフェンダーの格納庫からミサイル台を出し、即座に
  ミサイルを発射させる。
  ミサイルは、看守達の前で爆破し、通路内にオレンジ色の爆炎が燃え広がる。炎は、
  GAROSにまで届き、ボディをも包み込むが、暫くして消え去る。
 
○ 同・ある檻の中
  白い煙に包まれ咽ているリアレス。煙を仰ぎながら、破壊された壁の穴を潜り通路に出る。

○ 同・通路
  GAROSがリアレスの前まで近づき立ち止まる。
  吃驚するリアレス。
リアレス「なんでこんなとこに車が・・・」
  GAROS、運転席のドアを開ける。
リアレス「誰だ、おまえは?」
GAROS「ヘレンに頼まれわざわざここまで来てやった。ずべこべ言わずさっさと乗れ」
  リアレス、怪訝にGAROSを見つめながら運転席に乗り込む。
  
○ GAROS車内
  リアレス、シートに座り、周囲を見渡し人がいないことに気づくと、
リアレス「誰が運転してきた?」
GAROS「(ドアを閉め)私だ」
  車が動き出す。怯え、叫び声をあげるリアレス。

○ GAROSの運転席の視点
  突き当たりの壁に向かって突き進む。

○ 拘置所の壁を突き破り、外に飛び出すGAROS
  コンクリート片が空に散らばり、低く無気味なタービン音をうならせ、夜空に浮かぶGAROS。
  月明かりがGAROSのボディをより青く照らし出している。

○ 旧軍事施設地下・中央監視室
  通信映像モニターに、GAROSのシートに座るリアレスの姿が映っている。
  ガースと共に映像を見ていたヘレンが歓喜にわき、
ヘレン「やったわ!」
  ガース、無気味な笑みを浮かべる。
    ×  ×  ×
  入り口の扉が開き、リアレスが中に入ってくる。
  ヘレン、リアレスに駆け寄り、抱きつく。熱く抱擁する二人。
ヘレン「(リアレスの胸に頬擦り)会いたかったわ、リアレス。ごめんなさい、私のせいで
 こんな目に会わせちゃって・・・」
リアレス「無事脱走できたんだ。気にするな。それより、あの男は誰だ?」
  リアレス、ガースの背中を怪訝に見つめる。
  ガース、振り返り、リアレスと顔を合わす。
リアレス「(憤然とし)俺を刑務所に入れたかと思えば、今度は脱走か?おまえいったい何考えてんだ?」
ヘレン「(ガースを見つめ)あの人は、あなたを捕まえた人とは別人よ。ガース・ナイトって言うの」
リアレス「本当か?気持ちが悪いくらいよく似てやがる。いったい何のために俺を脱走させた?」
ヘレン「私が頼んだのよ」
リアレス「いや、何か裏があるはずだ。そうだろ、ええ?」
ガース「おまえが政府を狙う理由は、空軍大佐の地位からおまえを引き摺り下ろしたハインズに
 対する復讐だ」
リアレス「だったらなんだ?」
ガース「俺とおまえの境遇は、よく似ている。言わば、同士と言うわけだ」
リアレス「あんたも政府に個人的恨みでもあるのか?」
ガース「いいや・・・」
リアレス「だったら同士でもなんでもねぇじゃねぇか」
ガース「たかだか軍人一人を見殺しにしただけで、おまえは地位を奪われ、人生は奈落の底・・・。
 集めた反政府の同士も同様だ。テロで何人もの兵士が犠牲になり、ムショの中で臭い飯を食わされ
 てる奴もいる」
リアレス「いったい何が言いたい?」
ガース「俺の計画に協力すれば、政府に対する恨みも晴らし、同士も釈放してやれる・・・」
  ガース、コントロールパネルのスイッチを入れ、十台以上あるモニターの画面に大型ミサイルの
  イメージを映し出す。
リアレス「何をする気だ?」
ガース「おまえと俺が力を合わせれば、必ず計画は成功する。奴らが恐怖にのたうち回る姿を
 拝みたくはないか?」
リアレス「勝算はあるのか?」
  ガース、不適な笑みを浮かべる。
  
○ 地下牢
  やつれたエイプリルが部屋の片隅の壁にもたれ、しゃがみこんでいる。
  扉が開き、ガースが中へ入ってくる。
  エイプリル、顔を見上げ、
エイプリル「(弱々しい声で)あの人は、どこなの?・・・」
ガース「アーネストのことがそんなに愛しいか?」
エイプリル「初めから私が目的だったんでしょ?彼は関係ないはずよ」
ガース「奴もちゃんと役目を果たして、あの世に逝った・・・」
エイプリル「(声を震わせ)アーネストを・・・殺したの?」
ガース「おまえも始末しようと思ったが、その美貌を無駄にするのは惜しい。私の愛人になる
 つもりがあるなら、命だけは助けてやる・・・」
  ガース、エイプリルを立ち上がらせ、強引に唇を奪おうとするが、エイプリルは、ガースの
  頬を平手打ちし、膝で急所を蹴り上げると、牢から出ていこうとするが、行き道を阻むかの
  ように、銃を構えたヘレンが表れる。
エイプリル「(唖然とし)ヘレン・・・」
ヘレン「駄目よ。逃がさないわ」
エイプリル「あなた、どうしてここに?」
ヘレン「知ってる?アーネストと私、あなたが来る前まで愛人だったの。それがあんたが会社に来た
 途端、アーネストは目の色変えてあんたに夢中になった。私と彼は日毎冷めた関係になって
 いったわ。そして私は会社を辞めさせられた。毎日あんた達の幸せそうなところ見せつけられる
 のに、うんざりしてたのよ」
エイプリル「嘘よ、あなた自分から会社を辞めたじゃない?」
ヘレン「辞めさせられたも同じよ。あんた達のせいで・・・」
エイプリル「だからってこんな・・・」
へレン「そうよ、彼をガースと引き合わせたのは、私。彼が昔軍の設計部門の仕事に携わってた
 事は知ってたわ。だから半年前、私が架空の事業計画の発注を偽装して、彼をガースの秘密工場に
 送り込んだの。彼は運が悪いわ。あんたみたいな女に引っかからなかったら、こんなことに
 巻き込まれずに済んだのに・・・」
エイプリル「ガースに魂を売るなんて・・・」
  エイプリルの背後にガースが立つ。ガース、エイプリルの肩をおもいきり杖で叩き付ける。
  エイプリル、気を失い、その場に倒れる。

○ ペンタゴン(アメリカ国防総省)DIA本部・特別室/ハインズオフィス(翌日)
  デスクの座椅子に座るカルメン・ハインズ長官。少し太柄で、顎髯を生やしている。
  ハインズの前にデボンが対峙するように座っている。
デボン「長官、私の話を聞いてください」
ハインズ「君が私とその男のつながりをどこで調べてきたか知らんが、私はそんな男の事は一切知らん」
デボン「できればこの情報を表沙汰にはしたくありません。ここは、何も言わず我々を信用しては
 貰えませんか?」
ハインズ「私を脅迫する気かね、君は?」
デボン「ガースは、2度に渡って合衆国を危機に陥れようとした男です。もしあなたがガースの
 次なる大罪に手を貸すようなことがあるならば、我々は全力でそれを阻止しなければならない」
ハインズ「(仏帳面で)私はあの男に力を貸す事など、毛頭考えてはおらん」
デボン「じゃあ、なぜ奴に新型ミサイルの兵器庫を襲わせたんです?」
ハインズ「(観念した表情を浮かべ)・・・奴が初めて私の前に表れたとき、私に国家侵略の
 戦略プランを叩き付け、開発中のミサイル兵器の保管場所を聞いてきた。それを断れば、伏兵に
 娘達を襲わせ殺すと脅迫してきたんだ」
デボン「・・・メリルはどうなんですか?」
ハインズ「メリルのことは、知らん。あの女は、数年前に私のそばから離れていった。資産を
 たらふく奪い取ってな。あの女がガースとできてたことは、ずいぶん前から知ってた。あんな男の
 言いなりになりおって。我が娘ながら、恥ずかしいよ。うちの家族を破滅させる気でいたんだ
 からな、あの女は」
  デボン、険相を浮かべる。
  
○ 財団移動本部トレーラー・コンテナ内
  コンピュータコンソールの前にマイケルが佇み、ディスプレイを見つめている。
  スピーカーからデボンの声が聞こえてい  る。
デボンの声「ガースは、この間盗んだ小型核ミサイルを中東諸国にばらまくと言っていたそうだが、
 実際の狙いは別にあるようだ」
マイケル「奴のアジトの手がかりは?」
  デボンがディスプレイに映っている。
デボン「それが、ハインズ自身も知らないと言ってる」
マイケル「昨日の晩、GAROSがリトルロックの刑務所を襲った件は?」
デボン「空軍時代ハインズは、リアレスを辞任に追いやっている。実弾演習中、部下を死なせた罪で
 な。しかしリアレスは、ハインズが自分を陥れるために自分に罠を仕掛けたと言い、無実を主張して
 いた。ガースは、国内の反政府組織とつながりを持ち、数百人の精鋭部隊を持っている。その中には
 元グリーン・ベレー、イギリスのSASのメンバーも含まれているそうだ。そしてリアレスの加入・・・」
マイケル「・・・デボン、財団も狙われる可能性が高いんだ。くれぐれも注意してくれよ」
デボン「わかっとるが、奴の一番の狙いはおまえだ。無茶は禁物だぞ、マイケル」
マイケル「わかってるよ」
  デボン、笑みを浮かべ、軽く手を振る。ディスプレイが消える。
  マイケル、シルバーのカーテンで閉ざされた向こう側の仕切りを覗く。
  奥でRC−3が、KITTのタイヤをチェックしている。
マイケル「そろそろ4輪で走れそうかい?」
RC−3「ああ、鋼鉄のタイヤとまでとはいかないが、ホイールカバーに新たな衝撃吸収板を
 取り付けた。KITT、試してみてくれ」
KITT「わかりました」
  「WHEEL HOLD」のボタンが光る。4輪のタイヤのホイールから円形の黒い
  セラミックが広がり、タイヤを覆う。
RC−3「これであの程度のミサイルなら軽く衝撃に絶えるはずだぜ」
マイケル「わぉ、やったね。スキャナーと通信システムのほうは、もう大丈夫か?」
RC−3「それなんだがな、KITTのシステムが次々におかしくなる原因がわかったぜ」
  RC−3、掌に乗せた黒い物体をマイケルに見せる。
マイケル「なんだい、そりゃあ?」
RC−3「超音波妨害装置。助手席のシートの下に落ちてた。これが強力な電磁波を送り出して、
 KITTの主用回路を妨害していたんだ」
マイケル「(何か思いついた様子で)エイプリルをさらった男が撃った弾丸に仕込まれていたのか」
KITT「マイケル、その超音波妨害装置から強力な信号が送られてきています」
マイケル「電波の発信源はどこだ?」
  KITTのモニターに地図が映し出され、探索し始める。ある場所の地図が表示され、
KITT「ネバダの核実験場です」
RC−3「またあそこか」
マイケル「ガースの奴、わざと電波を送って俺達を誘い出しているんだ」
KITT「また自ら罠にかかるおつもりですか?」
マイケル「さっきの戦いで自信を無くしたか、KITT。相手はガースとKARRだぞ。
 奴らを野放しにしとくのか?」
KITT「いいえ、それはできません。しかしまたあなたをあのような危険にさらす行為には
 賛成しかねます」
マイケル「いいか、KITT。俺達は今までいろんな危険にさらされてきた。しかし俺とおまえ、
 そして財団のメンバー達とのチームワークで数々の事件を解決してきた。今俺達がバラバラに
 なったら、エイプリル達も助けられず、ガース達の思う壷だ。それでもいいのか?」
KITT「・・・わかりました、マイケル」
  マイケル、KITTに乗り込む。
  RC−3、運転席のドアの前に行き、
RC−3「待った!その前にKITT」
KITT「例のアーネストの持っていたCDの画像の処理が終わりました」
  ディスプレイにワイヤーフレームの図面が映る。車の断面図が前後、上下、真横と映り始める。
マイケル「GAROSのものか?」
KITT「はい。GAROSは、水素燃料を使用した小型ガスタービンエンジンを搭載し、出力は
 850馬力。最高速度785Km。ボディは最新式の特殊大層皮膜で覆われており、それは私の
 分子結合膜をもはるかにしのぐ装甲能力を持っています」
RC−3「アーネストって奴、とんでもない怪物を作りやがったな。さすが軍の特殊車両の設計を
 担当しただけはあるぜ」
マイケル「ガースの奴、ゴライアス戦の敗北を無駄にはしなかったようだな」
RC−3「ところがだ、GAROSのテールを見てくれ」
  GAROSの後ろの断面図。右のテールランプに赤いマークがされている。
マイケル「いったいなんなんだ?」
RC−3「アーネストがGAROSに何らかの秘密の仕掛けを施したのかも・・・」
マイケル「調べてみる必要はありそうだな」
RC−3「今準備できる兵器は全てKITTに取り付けて置いたが、ウルトラマグネシウムに
 レーザーパワーパックの装備だけじゃ物足りないだろうと思って、一つ目新しい武器を用意しといた」
マイケル「何を取り付けたんだ?」
RC−3「RC特性ナパーム弾。まぁ、いざと言うときに使ってみれば何かの役には立つはずだぜ」
マイケル「ありがとう、RC−3」
RC−3「マイケル、なんだったら俺も一緒についていくぜ」
マイケル「いいや、ガースは、俺達と一対一の勝負を望んでるはずだ。おまえはここに残って俺達
 からの連絡を待ってくれ」
RC−3「・・・わかった。マイケル、絶対勝って戻ってこいよ」
  RC−3、親指を立てマイケルにサインを送る。
  マイケルも親指を立て、勇然とした表情を浮かべながら、KITTのエンジンを始動させ、
  バックさせる。

○ 走行中のトレーラーから路面に向かってバックするKITT
  路面に下りると、180度ターンし、猛スピードで走行を始める。
                     FADE OUT
〜ACT4 END〜

〜ACT5〜 
○ 砂漠の真中を通るハイウェイを疾走するKITT
  
○ ネバダ・地下核実験施設前
  施設のフェンス沿いを走行しているKITT。
マイケルの声「まだ信号に近づかないか?」

○ KITT・車内
  モニターに映し出された地図上の赤い点滅が消える。
KITT「マイケル、信号が消えました」
マイケル「気をつけろ、奴らは近くにいるぞ」

○ KITTの数百メートル後方からGAROSが表れる
  ジェット噴射の爆音を唸らせ、白い煙をまき散らしながら猛スピードでKITTに近づいてくる

○ KITT・車内
KITT「マイケル、GAROSです」
  モニターに、走行中のGAROSの正面からの映像が映し出される。
  マイケル、険しい表情でそれを見つめている。
  
○ ハイウェイ
  走行するKITTの右横に並ぶGAROS。
  
○ KITT・車内
  マイケル、GAROSの運転席に座るガースを見て、強面になる。
KITT「マイケル、助手席にエイプリルが座っています」
マイケル「命に別状はないか?」
KITT「スキャンしてみましたが、GAROSの大層皮膜が私の電波を遮断して、
 中を見通すことができません」

○ GAROS・車内
GAROS「また潰されに来たのかKITT。おまえも懲りない奴だ」

○ KITT・車内
KITT「呼び出したのは、お前のほうだぞGAROS」

○ GAROS・車内
  ガース、険しい表情でマイケルを見つめ、不適な笑みを浮かべると、アクセルを踏み込み、
  KITTの前を猛スピードで走り去っていく。

○ KITT・車内
  アクセルを踏み込むマイケル。アクセルのレベルゲージランプが光る。
  デジタルメーターが200を超える。

○ GAROSの後を猛スピードで追うKITT

○ 地下核実験施設の入口の扉のフェンスを猛スピードで突き破り疾走していくGAROS
  後からGAROSが突き破ったフェンスの穴をKITTが擦り抜けていく。

○ GAROSの両側のリア・フェンダーからミサイル発射台とガトリングガンが姿を表わす
  ガトリングガンから30mm弾が連射される。KITTのボンネットから
  フロントガラスにかけて銃弾が当たる。マイケルの目の前のガラスにも銃弾が当たるが、
  火花を散らし、跳ね返している。
  次に、ロケットミサイルがKITTに目掛けて発射される。
  
○ KITT・車内
  モニターにKITTとGAROSのイメージが映り、ミサイルの赤い点滅がKITTに
  急速に接近している。
KITT「ミサイルは、またタイヤを狙っています」
マイケル「また同じ手でやられてたまるか!」
  マイケル「WHEEL HOLD」のボタンを押す。
    ×  ×  ×
  KITTの前輪のタイヤが鋼鉄板に覆われる。
    ×  ×  ×
  マイケル、「ULTRA MAGNESIUM」のボタンを押す。
    ×  ×  ×
  フロントバンパー下から赤い閃光弾が発射される。ミサイルは、それに引きつけられ、
  爆発する。爆炎を潜り抜けているKITT。
  
○ GAROS・車内
  モニターに映るKITTの様子を見つめているガース。
ガース「(不適な笑みを浮かべ)なかなかやるな。そうでないと困る」
  ガース、ブレーキを踏み込み、ハンドルを素早く切り込む。

○ 180度ターンし、立ち止まるGAROS
  数百メートル先でKITTも立ち止まる。対峙するKITTとGAROS。
  GAROSのミサイル発射台に、緑色のロケットミサイルがセットされる。

○ KITT/GAROS・運転席のアングル
ガース「復讐の砦へようこそ、マイケル・ナイト」
    ×  ×  ×
マイケル「あの断崖から落ちて、よく生き残っていたな、ガース」
    ×  ×  ×
ガース「俺は、不死身だ。怪我を完治するのにずいぶん時間はかかったがな」
    ×  ×  ×
マイケル「今度はどうやって俺達と戦うつもりなんだ?」
    ×  ×  ×
ガース「海の藻屑に消えたアドリエンヌとゴライアスの代わりに、今度は素晴らしい同士と共に
 おまえ達を地獄の底に引き摺り落としてやる」
  ガース、エイプリルの蟀谷に銃口を突きつける。
    ×  ×  ×
マイケル「やめろガース、エイプリルに手を出すな」
    ×  ×  ×
ガース「GAROSの発射台にセットされたミサイルが見えるか?」
    ×  ×  ×
KITT「マイケル、盗まれた核ミサイルです」
マイケル「なんだって!」
    ×  ×  ×
ガース「こいつを撃たれたくなかったら、車から降りろ!」
    ×  ×  ×
KITT「マイケル、危険です。私から降りないでください」
マイケル「エイプリルの命がかかってる。奴の指示に従うしかない」
KITT「GAROSのミサイルが、あなたを狙っています」
マイケル「心配するな。ガースはそう簡単に俺を殺しやしないさ」
  マイケル、ドアを開け、外に出ていく。

○ 砂漠に立つマイケル
  ガースを睨み付けている。
  ガース、ドアを開け、砂漠に降り立つ。
  マイケルの後方から黄色い土煙を上げながら、トレーラーが近づいてくる。
  左足を引き摺りながらマイケルに向かって歩くガース。
  対峙して佇むマイケルとガース。
  マイケル、ガースの左足が義足であることに気づく。
ガース「また再会できて光栄だよ。(左足を一瞥し)お前のおかげで、このザマだ」
マイケル「悪行を繰り返すからそうなるんだ。当然の報いさ」
ガース「ゴライアスは、優秀な装甲能力と攻撃力、そしてパワーを身に付けた俺にふさわしい
 車だったが、お前の車を見て、少し勉強した。GAROSは、機動性抜群の言わば、『高速で
 走れる戦車』だ」
マイケル「アーネストにこんなんもん作らせるとはな。彼は、どこにいる?」
ガース「奴はとおの昔に死んで墓に埋めてやったよ。おまえにも、特別の死に場所をプレゼントして
 やる。その前に・・・我が同士がおまえの車とここで勝負をつけたいと言うんでな」
  トレーラーが立ち止まり、迷彩服を来た男達がライフルを持って降りてくる。輪になって
  マイケルの周りを取り囲み、ライフルの銃口を一斉に向ける。
  コムリンクに向かって話しかけるマイケル。
マイケル「聞いたか?KITT」
KITTの声「聞きました」
マイケル「俺抜きでも大丈夫か?」
KITTの声「GAROSは、私が必ず破壊します」
マイケル「KITT・・・頼むぞ」
KITTの声「後で必ず迎えに行きます」
  マイケル、男達に両手を掴まれ、連れられて行く。
  エイプリルも男達に腕を掴まれガースのそばを通り過ぎていく。
  ガース、GAROSのルーフを叩き、
ガース「おまえのパワーを思い存分あの車に見せつけてやれ」
  GAROSの2本のスキャナーが無気味に共鳴し、なびく。
  ガース、不適な笑みを浮かべると、杖を突き、その場を立ち去っていく。
  無気味な爆音を立て、Uターンを始めるGAROS。そのまま猛スピードで走り始める。
  KITTもGAROSを追い始める。
KITTの声「この前のようにはいかないぞGAROS」
  GAROSと並んで走行するKITT。
GAROSの声「私はおまえよりも数倍優れた機能と装甲能力を兼ね備えているのだ。ウィルトン・
 ナイトの作ったその野暮なボディとシテスムでは、おまえに勝ち目はない」
  GAROS、KITTに体当たりをする。互いのボディが擦れ合い、激しい火花を撒き散らして
  いる。
  GAROS、ロケット噴射で加速し、猛烈にスピードを上げ、KITTの前を走り去っていく。
  GAROSのミサイル装置が走るKITTを捕える。
  緑色のミサイルが発射される。KITT、ミサイルを躱す。ミサイルは、KITTを横切り
  数キロメートル後方で着弾。茸雲の巨大な炎が空に舞い上がる。
  GAROS、ガトリングガンを発射する。KITTのフロントガラスからボンネットにかけて
  弾が当たっているが、次々と跳ね返している。
  GAROS、透かさずロケットミサイルを発射する。ミサイルは、KITTのボンネットに
  当たる。オレンジ色の巨大な爆炎に包まれるKITT。
    ×  ×  ×
  KITTのダッシュボード下に設置されている各種基盤が火を吹く。
  計器パネルや、モニター画面が暴走し、奇妙なパルス音が次々と鳴り響く。
    ×  ×  ×
GAROS「しくじったなKITT。これで終わりだ」
    ×  ×  ×
  KITTの装置パネルの「LASER」ボタンが光る。
    ×  ×  ×
  KITTの先端部から青色の光線が発射され、GAROSの右のテールランプを撃ち抜く。
  激しい火花が散り、テールが割れる。その中の薄い半透明の偏光板が剥き出しになる。
    ×  ×  ×
  KITT、偏光板をスキャンする。
  モニターに偏光板に書かれた複数の化学式が映る。それを読み取り、データを集計する。
    ×  ×  ×
GAROS「おまえの力がこの程度とはな。とても空しい気分だ」
  GAROS、さらに両方の発射台からミサイルを同時に発射する。
  走行するKITTのボンネットにミサイルが次々と命中し、大爆発を起こす。
  爆風で横転するKITT。数十回転砂漠に叩き付けられた後、元の状態で立ち止まり、
  エンジンルームから白い煙を上げている。
  KITTのダッシュボードの計器類の光が一斉に消える。なびいていたスキャナーの光も力なく
  消える。
GAROS「口ほどでもない奴だ、バカめ」
  GAROS、ロケット噴射で一気に500Kmまで加速し、KITTの前から瞬時に姿を消す。
    
○ ナイト財団移動本部トレーラー内
  バイクを磨いているRC−3。思いつめた表情をしている。
  奥の部屋の扉が開き、中からデボンが出てくる。片手に一枚のリストを持っている。
デボン「ガース達が襲撃しそうな施設のリストが届いたぞ」
  RC−3、デボンの前に行き、リストを見つめる。
デボン「ランドルフ空軍基地、バンデンバーグ空軍基地、西部宇宙センター、DIA国防情報局、
 NRO国防偵察局、他16の施設。いずれも元ハインズの部隊のメンバーが今そこでトップクラス
 の地位についている。そして我々の財団本部だ」
RC−3「GAROSに核ミサイルでも撃ち込まれたら、ひとたまりもないな」
デボン「そんなこと想像したくもないが、奴らならやりかねん」
  憮然と顔を歪めるRC−3。
デボン「それからリアレスの姉のヘレンのことだが、彼女は、3年前まで空軍の女性補助要員として
 働いていた経験があるそうだ。兄弟2人がそろいもそろって軍の精通者だったとはな・・・それにし
 ても遅いな。まだマイケルからの連絡はないのか?」
RC−3「そう急かさないでくださいよ。俺だってずっと気になってんだから」
  コンソールのスピーカーから流れているラジオの音が聞こえてくる。
男の声「米国エネルギー省より発表されたネバダの核実験施設で行なわれる新型プルトニウム核爆弾
 の地下爆破実験は、予定通り今日の午前10時より開始され・・・」
  慌てふためいた表情で、コンソールの方に近づいていくデボンとRC−3。
  コンピュータのモニターに、ニュース映像を出力させる。
  実験場施設に群がる数十人の科学者達が映し出されている。
デボン「こりゃあ、大変だ!」
  RC−3、キーボードを打ち、
RC−3「マイケル、聞こえるか!」

○ 砂漠の真中で止まるKITT
  砂で汚れたボディに風が注ぎ、黄色い土煙があがっている。
RC−3の声「KITT、どうした、返事しろよ!」
  
○ トレーラー・コンテナ内
  薄暗い明かりの中で、壁に縛り付けられているマイケル。
  コンピュータコンソールの前に座り、モニターを見つめているガース。そして隣にヘレンが
  立っている。ガース、突然笑い出し、マイケルの元に近づく。
ガース「今、GAROSから連絡が入った。KITTを破壊したそうだ」
  マイケル、険しい表情を浮かべる。
ガース「これであの車は、高性能爆弾で跡形もなくなり、放射能の渦の中で砂漠の藻屑と消える・・・」
マイケル「高性能爆弾と放射能の話は聞いてないぜ、いったい何のことだ?」
ガース「今日、プルトニウムを使った地下核実験がある。あの車は、その実験材料になるわけだ」
マイケル「おまえは、また必ず俺の手で地獄に送り返してやるからな」
ガース「(嘲笑いし)おお、負け犬の遠吠えか。それができるのも今のうちだ」
  ガース、高笑いしながらマイケルのそばから離れていく。
  ガースを睨みつけるマイケル。
                     FADE OUT
〜ACT5 END〜

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