『メトロジェノン』 TENA CODE002 「リアルポリス」 BY ガース『ガースのお部屋』

○ ある男の目線(深夜)
  歩道をゆっくりと這いずり、交番に向かっている。

○ 金下交番
  デスクに座り調書を書き込んでいる警官・佐波道広(28)。左頬に5cm程の傷がついている。
  扉の開く音がキーッと鳴る。
  佐波、扉に目をやる。立ち上がり、扉を開ける。
  入口の前で血みどろになって寝そべっている男。眼鏡をかけた白髪の中年。
  ベージュのコートを着ている。
  男、呻き声を上げ、もがきながら中へ入り込んでくる。
  男、佐波の足首を掴む。顔を上げ、佐波の顔を血走った目で凝視する。
  黒いジャケットを着た大柄、長身の男。河口満(39)。青いサングラスをしている。 
  命乞いをする男の後ろに立っている。
  河口、顎で佐波に指示を出す。
  河口を見つめ、
河口「見つけるのに苦労したぞ。感謝しろ」
  動揺する佐波。
河口「もたついてないで、さっさと殺れ!」
  佐波、辺りを見回し人がいないことを確認すると、ホルダーから拳銃を抜き、
  中年の男の背中に向けて撃つ。
  轟く銃声・・・。
 
○ 御門刑務所・表門(翌日・朝)
  門が開かれ、先頭をパトカー、その後を護送車、パトカー、覆面車が続き、市道を走り始める。

○ 国道
  疾走するB―COA。
  
○ B―COA車内
  中央コンソールに設置されている4つのマルチモニター。
  右上のモニターに容疑者リストと男の写真が映っている。吊り目で髭を生やした中年風の男。
  運転席に座る北(ほく)一真(28)。助手席に座る真坂 和久(28)に話しかける。
北「戸田孝雄。TENAの構成員だ。一週間前に自衛隊の演習場から最新型の
 水陸両用装甲車を盗み出した。それを改造して『ミッドレッドタイガー』と呼ばれる戦闘マシーンを作った」
真坂「元は何者なんだ?」
北「アメリカで戦備部品の開発に携わっていた男だが、三日前に捕まり、今日、地検に護送される」
真坂「で、俺達は何しに行くわけ?」
北「JWAロシア支部の諜報員からの報告で、戸田がTENAに奪還される可能性が出てきた」
真坂「何のためにそんなこと…?」
北「ミッドレッドタイガーを動かすためさ」
真坂「戸田がいないと動かせないのか?」
北「ああ。だが、本当の目的は、TENAの本部の襲撃。やつは、組織の重要ポストを狙ってる」
真坂「組織内の抗争か。やりあって自滅してくれリャあ、こっちからしてみれば好都合だな」
  呆れた様子の北。
北「…襲撃部隊には、アジア各地で派手なテロ活動を行なってきた凄腕の連中が揃ってるんだぞ」
真坂「…一つ聞いていいか?」
北「なんだ?」
真坂「どうしてまた俺と組む気になった?」
北「・・・総監の指示だ。止むを得ずだ」
真坂「子供騙しの車の中で同じ空気を吸うのも絶えられないって顔してるぜ」
北「子供騙し?この車を完成させるのに一体どれぐらいの時間と開発費用をかけたと思ってる?」
真坂「さぁな」
北「16年だ。37億円もつぎこんでるんだぞ」
真坂「そんな昔からこんな時代が来ることを予想してたのか?」
北「・・・事の発端は、こいつを開発した椎名財団の創始者だ。高級車には、目がない人でな。
 世界の名車を一通りコレクションした後、それでも物足りず、自分でオリジナルの車を生み出した」
真坂「で、その創始者は、どこにいるんだ?」
北「俺もまだ一度も会ったことがない。興味があるなら総監に聞け」
真坂「まだシェンズの墓参りに行ってないそうだな」
北「その話は、今はどうでもいい」
真坂「仮にも恋人だった女だろ?」
北「それ以上続けると、車から放り出すぞ」
真坂「面白い事言う奴だ」
  北、ハンドルのボタンを押す。左のドアが自動で開く。
  真坂、唖然とし、
真坂「おまえって、怖いね…」

○ 国道
  路上を緩やかに走行している護送車とその周りを取り囲むように走る警察車両。
  暫くして、それらに対峙するように薄黒い3台のRV車が迫ってくる。
  一台のRV車の助手席が開き、豹柄のレザースーツを身に付けた男が肩にロケット砲を構え撃つ。
  小型ロケット弾が護送車の運転席に命中する。運転席から巨大な爆炎が上がり、
  護送車は、中央分離帯に乗り上がると、バランスを崩し横転、そばを走行していた
  パトカーの上にのしかかる。

○ B―COA車内
  右上のモニターに国道で立ち往生している護送車の惨状が映し出されている。
北「見ろ、グタグダ言ってるから間に合わなかったじゃないか」
  アクセルを踏み込む北。
真坂「俺のせいかよ?」
  緊張の面持ちの真坂。
 
○ 横倒しになっている護送車
  後ろの扉が開き、男が出てくる。
  男は戸田孝雄(39)。煙を払いながら咽ている。ゼブラ模様のレザースーツを着た4人の男達が
  戸田を取り囲む。怪訝に男達を睨み付ける戸田。
    ×  ×  ×
  燃え盛る護送車の後ろに立ち止まるB―COA。
  北、真坂、車から降り、それぞれ、ベレッタM92F、ガバメントの拳銃を構えながら護送車に近づいていく。
  先のほうで発砲音が鳴り響く。
  二人、先頭のパトカーの方に向かって突き進んで行く。
  拳銃を構えていた警官がRV車に乗った男に撃たれ、のけ反るように倒れる。
  3台のRV車、一斉にバックし、同時に勢い良くバック・ターンすると、その場を走り去って行く。
  北、真坂、RV車に向け、銃を撃ち続ける。暫くして、撃つのを止め、
真坂「当たったか?」
北「多分な」
  北、路上に倒れている複数の警官達を見回している。体中に風穴が開いている。

○ 国道を猛スピードで疾走するB―COA

○ B―COA車内
  右上のモニターに付近の地図のイメージが表示され、白いマークが地図上を移動している。
  左上のモニターにJWA司令部総監・椎名歩夢(54)が映っている。
北「警察及び救急車を緊急手配しましたが、囚人と警官達全員がほぼ即死です…」
椎名の声「それで、戸田は?」
真坂「奴らの車に乗って移動中です」
椎名の声「今、情報が入った。警視庁の刑事の息子が誘拐された。彼らに少しでも余計な
 手出しをしたら、子供を殺すと言ってる」
真坂「汚ねぇ手使いやがって・・・」
北「このまま追って、奴らの潜伏先を掴みます」
椎名「くれぐれも厳重にな」
  モニターの画面が真っ白になり、椎名の姿が消える。

○ ビル街
  薄汚れた雑居ビルの地下の入口に一台のRV車が入っていく。
    ×  ×  ×
  B―COAがビルの前の道路脇に立ち止まる。
 
○ B―COA車内
  真坂、窓越しからビルの壁を見つめ、
真坂「今にも崩れそうなビルだな…」
  北、モニターをじっと見つめている。
真坂「どうするんだ?」
北「中を調べてくる。おまえは、ここで待て」
真坂「俺も行く」
  北、キリッと真坂を睨み付ける。
真坂「…どうぞ」
  北、ドアを開け、外へ出て行く。
  呆気にとられている真坂。
真坂「はぁ、だる…」
 
○ 雑居ビル・地下駐車場
  暗がりのスロープを降りていく北。
  壁隅に身を寄せ、辺りを見回している。
  辺りにバイクの部品の残骸が散らばっている。奥の駐車スペースに後ろを向けて止まる
  一台のRV車がある。
  北、ゆっくりとRV車のほうへ近づいていく。
  RV車の後ろのバンパーに風穴が開いている。北、それを確認すると、運転席のドアの前に行く。
  ドアの取っ手に手をかけ、開けようとする北。
  その背後で撃鉄を起こす音が鳴る。
  北、観念した面持ちでゆっくりと両手を上げ、振り返る。
  警官が目の前に立っている。警官は、佐波である。佐波、拳銃を北に向けている。
佐波「(驚愕し)北…?」
  北、佐波を見つめ、
北「佐波か?」
  佐波、拳銃をホルダーにしまい、
佐波「何してる?ここで…」
北「車を盗まれてな。ここでよく似たのを見かけたから…」
佐波「おまえも被害にあったのか。最近この辺りで車の盗難事件が多発してるんだ」
北「2分ぐらい前にここから出て行く車を見かけなかったか?」
佐波「そう言えば、三人ぐらいの男が青いスポーツカーに乗って裏の出入り口から出て行くのを見たけど…」
北「そうか・・・」
佐波「被害届けを出せよ。俺が探してやるよ。それにしても、びっくりした。今何してるんだ?」
北「…レンタカーの店でアルバイトしてる。おまえは?」
佐波「このビルの中で少年達が暴れてるって通報を受けて来たんだが、どうも、いたずららしいな」
  北、一気に緊張感が溶け、安堵感に浸る。
  天井に設置された監視カメラのレンズが二人の方向に向いている。

○ 監視カメラのモノクロ映像
  北と佐波が会話しながら入口に向かって歩き出す姿が映し出されている。

○ B―COA車内
  通信のビープ音が鳴り響く。運転席に座る真坂、中央コンソールの『SP』の緑のボタンを押す。
  スピーカーから北の声が聞こえる。
北の声「俺だ。中を調べたが、奴らはいなかった。裏口から別の車で逃げた可能性が高い」
真坂「逃げられたのかよ」
北の声「すまん、先に本部に戻ってくれ」
真坂「何で?」
北の声「事件に関わる重要な手がかりを見つけた。追って連絡する」
  北の声が跡絶える。
真坂「…ふざけんなよ、ったく」

○ 雑居ビル前の歩道を歩く北と佐波。
  佐波、自転車を押している。その横を北が歩く。
佐波「高1の時、陸上部で学校の周りを走らされただろ。たまたまマンションの前で空き巣を見つけて、
 二人で追いかけた事覚えてるか?」
北「そんなことあったっけ…」
佐波「おまえの方が足が速くて、泥棒を捕まえただろ?俺は、あれを見て、警察官になろうと決めたんだ」
北「・・・実家は、確か自動車部品の工場だったよな?」
佐波「ああ、あれは、もう潰れた。親父が負債をかかえちまってな。廃業したんだ」
北「てっきり、あそこを継いでるものと思ってた。悪いこと聞いたな」
佐波「いいんだ。高2の時、おまえが引っ越して、東京に行った後、何度か連絡しようと思ってたけど、
 電話番号を聞くのを忘れてた事を後から気づいてな」
北「俺も連絡したけど、別の家ばかりにつながってた…きっと数字を間違えてメモったんだろうな」
佐波「でも、ちょっとがっかりだ。おまえがレンタカー屋だなんて…」
北「一流会社のエリート社員にでもなってると思ってたのか?」
佐波「お前のほうが俺よりも警官向きだと思ってたのにさ…」
  北、照れた様子で俯く。佐波の左の頬を
  ジッと見つめ、
北「その傷・・・」
佐波「・・・空き巣を追ってた時にちょっとな」
北「・・・じゃあ、またな」
佐波「待てよ、被害届けは?」
北「今、仕事の途中なんだ。また、後で寄らせてもらうよ」
  北、軽く手を振り、佐波の元から離れて行く。
  佐波、怪訝な表情で北を見つめる。
  
○ 葵港・第3臨海埠頭
  古びた倉庫がそびえ立つ。
 
○ 倉庫地下・JWA本部・通路
  真坂とディジアが歩いている。
真坂「北とシェンズは、いつからつきあってたんだ?」
ディジア「北さんがここに来てまもなく。シェンズのほうからアプローチかけたみたい」
真坂「ウソ?」
ディジア「彼女、惚れ込んだら、とことん尽くすタイプだったから」
真坂「見かけによらず古風な性格だったんだな…」
ディジア「花が好きな人で、北さんが珍しい花を見つけて、よく彼女にプレゼントしてたわ。
 二人でダンス教室に通ったり、仕事上で喧嘩もしてたけど、結構良い雰囲気だったのに…」
真坂「ダンス教室ね…」  
ディジア「北さん、変なことしないといいけど…」
真坂「自殺するようなタイプには、見えないけど…」
ディジア「直情径行があるから彼…あなたよりは、まだ冷静なところがあるみたいだけど…」
真坂「確かに俺も直情型だけど、仕事を放り出して、どこかに消えたりはしない」
ディジア「北さんとうまくいってないの?」
真坂「そんな冷め切った夫婦みたいな言い方やめてくれ」
ディジア「シェンズの事を忘れようとして、必死になってるんだわ、きっと…」
真坂「・・・」
  真坂、ディジアの顔をジロッと見つめ、
真坂「六本木の近くにおしゃれなピザ屋があるの知ってる?」
ディジア「えっ?」
真坂「奢るよ、どう?」
ディジア「あなた、子供いるんでしょ?」
真坂「施設に預けてるから大丈夫」
ディジア「かわいそうよ。ちゃんと面倒見てあげないと」
真坂「子持ちがピザ屋に誘っちゃ駄目なのか?」
ディジア「ごめん、私ピザ嫌いなの・・・」
  ディジア、資料室のドアを開け、中に入る。一人取り残される真坂。
真坂「君もかなりの直情型だと思うな・・・」
  真坂の背後から北が歩いてくる。
  北、真坂を横切り、通り過ぎる。
  真坂、北に気づき、
真坂「おい!」
  振り返る北。
北「おまえか…」
真坂「手がかりは、掴んだのか?」
  北、踵を返し、また歩き出す。
  真坂、首を傾げる。

○ 同・OP司令室
  監視モニターに学生服を着た中学生が椅子に座り、アイマスクに猿轡、
  手や足を縛られた映像が映っている。
  中学生の太股の上に青いプラスチック板が乗っている。
  画面の右下に日付と時間が表示されている。『7/2 PM8:23』
  オペレーションシステムの前に立つ椎名。
椎名「警視庁上層部宛に送られてきたビデオの映像だ」
  椎名の背後に立つ真坂と北。
  椎名、振り返り、二人を見つめ、
椎名「捕まった中学生は、捜査一課の橋本刑事の息子さんの晴樹君」
真坂「なんで、子供を狙ったんだろうな・・・」
北「戸田を逮捕したのは、橋本刑事だ」
椎名「要求は、今のところまだ何も出されていない」
北「実は、戸田を連れ去った車が逃げ込んだ駐車場に警官がいたんです」
  唖然とする真坂。
椎名「警官?」
北「佐波道広、玉川署管轄の金下交番に勤務しています。俺の学生時代の友人です」
  真坂、不快な様子で、
真坂「おい、その話、初耳だぞ」
北「色々調べたいことがあったから、はっきりしてからお前にも伝えようと思ったんだ」
椎名「何かわかったのか?」
北「佐波と戸田がつながるような事は、何もありません。ただ・・・佐波は、一年前に重度の
 欝病で精神科の治療を受けています」
真坂「それが、今度の事件と何か関係あるのか?」
北「その時、佐波の治療に当たった三沢病院の暮内芳春と言う精神科医が、
 五日程前から行方不明になっているそうです」
椎名「行方不明?」
北「暮内が行方を暗ます前日に、病院内の喫茶店で佐波と会っていたのを看護士が目撃していたそうです」
真坂「その佐波って男、臭いな」
椎名「真坂、君が佐波をマークしろ」
北「俺がやります」
椎名「君は、面が割れてる」
北「友人だからって、片を持つようなことはしません」
  椎名、困惑した表情を浮かべる。
 
○ 同・ガレージ
  緑色の照明に照らされているB―COA。
  B―COAの運転席に乗り込む北。
  エンジンをかける。クリーンな低音が響き始める。
  暫くして、助手席に真坂が乗り込んでくる。
  右手に缶コーヒーを持ち、軽く回している。
  北、憮然とし、
北「何しに来た?」
  真坂、プルトップを開け、コーヒーをずるずる音立てながら飲み始める。
北「佐波をマークするのは、俺一人だけでいい」
真坂「俺は、お前をマークしに来た」
北「何?」
真坂「なぜ、佐波と会ったことを隠してた?」
北「さっき、説明しただろ。愚痴る暇があるなら、他の手がかりを見つけに…」
  真坂、北の話に割って入り、
真坂「総監の命令を受けたんだ。文句があるならあの人に言え」
北「おまえが言えよ。俺と組むのは、もうごめんだってな」
  真坂、コーヒーを飲み干し、
真坂「そう思ってるのは、そっちだろ。いじいじうるせぇやつだ。頭に来た!」
  真坂、北、互いに胸倉を掴み合い、殴りかかろうとする。その時、どこからか
  エコーのかかった女の声が聞こえてくる。
女の声「車内で暴れるのはやめてください」
  動きを止める二人。訳もわからず、辺りを見回している。
  中央コンソールの4つのモニターの右上の画面にポニーテールの女性のCGイメージが映っている。
  CGの女性、二人をジッと見ている。
CGの女の声「争っている暇があるなら、早く捜査を進めるべきです」
  二人、画面を見つめ、
真坂「なんだ、こいつ?」
北「こんなプログラムのこと、何も聞かされていないぞ・・・」
  左上の画面に地図のイメージが映し出される。
CGの女の声「只今、情報が入りました。晴海埠頭の港湾開設区域にミッドレッドタイガー現れたようです。
 直ちに現場に急行してください」
真坂「聞き覚えのある声だな…」
北「TENAが戦車の居所を掴んだんだ」
  北、シフトレバーをドライブに入れ、アクセルを踏み込む。
 
○ 葵港・第3臨海地域・倉庫
  シャッターが開き、ヘッドライトを光らせたB―COAがスピードを上げ、表に出てくる。
  勢い良く右に曲がると、さらにスピードを上げ、埠頭の道を疾走する。
 
○ 晴海埠頭
  90mm砲を装備した黒い6輪装甲車『ミッドレッドタイガー』が地響きを上げながら、前進している。
  やがて、サイレンを唸らせたパトカーがミッドレッドタイガーを取り囲むように四方から走ってくる。
   
○ ミッドレッドタイガー・内部
  操縦席に座る戸田。迷彩柄のヘルメットとつけ、ラフな服装をしている。
  ヘルメットから降りてきた赤いバイザーが戸田の両目を覆う。
 
○ バイザーに映し出される映像
  ミッドレッドタイガーの前面に取り付けられている監視スコープの映像が映し出されている。
  サイレンを唸らすパトカーが画面に向かって突き進んでいる。
  ターゲット表示の中心にある「+」が走るパトカーにセットされる。
 
○ ミッドレッドタイガーの砲台からミサイルが発射される
  乾いた爆破音が轟き、ミサイルがヒューッと音を立てながら、一瞬にしてパトカーに命中する。
  巨大なオレンジ色の炎と共に木端微塵にされるパトカー。
  
○ ミッドレッドタイガー・内部
  戸田、バイザーの映像を見て、ほくそ笑んでいる。
 
○ 埠頭近郊の道路を走るB―COA
  風を切るように突き進んでいる。
 
○ B―COA車内
  センターコンソールに設置されている4つのモニターの右上の画面にミッドレッドタイガーの写真、
  その左に兵器システムのリストが映し出されている。
  画面をまじまじと見ている真坂。
真坂「20mm、30mm機関砲に、90mmの主砲か。両脇にグレネードランチャーまでつけてやがる…」
北「それだけじゃない。戸田は、陸軍の科学技術開発部門にいたんだ。それ以外にも強力な
 兵器を装備している可能性がある」
真坂「この車で本当に向こうの攻撃に耐えられるのか?」
北「20mm、30mm機関砲の攻撃は、問題ない。だが、主砲のミサイルが直撃したら、アボーンだ」
真坂「おいおい、余裕こいてる場合かよ。俺は、まだ死にたくねぇぞ」
  中央コンソールの上に設置されている音声レベルケージが青く光る。
女の声「この車には、装甲強度レベルを調整するシステムが装備されています。それを 使えば、
 90mmミサイルの直撃にも耐えられます」
  唖然とする真坂と北。
真坂「コンピューター様がまた何か言ってるぞ」
女の声「ご紹介遅れました。私は、この車の自己管理システム『JENON』と呼ばれています」
北「ジェノン?」
ジェノン「ドライバーのアシストと捜査活動を支援する目的でこの車に組み込まれたプログラムです」
真坂「総監から何か聞いたか?」
北「いや…」
ジェノン「総監は、今外出中です。何か困ったことがある時は、私のプログラムに従って、行動してください」
真坂「…だってさ。大丈夫か?」
北「総監のプレゼントなら、従うしかないだろ」
 
○ パトカーを次々と破壊するミッドレッドタイガー
  そばでミサイルに撃たれたパトカーが燃えている。
  ミッドレッドタイガー、立ち止まり、ミサイルを撃っている。
  バックし退避しようとしていたパトカーにミサイルが辺り、粉々に吹き飛ぶ。
  暫くして、その後ろから、B―COAがやってくる。
 
○ ミッドレッドタイガー・内部
  バイザーを上げる戸田。
  フロントガラス越しに迫ってくるB―COAを見ている。
  戸田、ほくそ笑むと、またバイザーを下げる。
 
○ バイザーの映像
  ターゲット表示の『+』がB―COAに重なる。
 
○ ミッドレッドタイガー・内部
  戸田、ハンドルの真中に設置されているパネルの赤いボタンを押す。
 
○ ミッドレッドタイガーの主砲からミサイルが発射される
  スポンっと抜けたような発射音と白い煙が上がる。
 
○ B―COA車内
  驚愕している北と真坂。
真坂「撃ってきたぞ、やべぇ!」
  身を伏せる真坂。北、険しい表情。
  センターコンソールのモニターに「AUTO CONTROL」の文字が点滅する。電子音が鳴り響き、
  パネルの「SHOCK ABSORPTION SHIELD」のボタンが光る。
 
○ B―COAの先端部の車体の下から、シールドが出てくる
  シールドは、車の前面を覆い、3mの高さまで一瞬にして伸びる。
  シールドにミサイルが当たる。大きな音と共に爆炎が上がるが、B―COAのボディは、微動だにしない。
  B―COA、急停止する。
 
○ B―COA車内
  ハンドルに顔を埋めている北。顔を上げる真坂。正面を見つめる。
真坂「何も見えないぞ…あの世に来ちまったのか?」
  北もゆっくりと顔を上げる。
  フロントガラス越しに見えるシールドがじんわりと消え、ミッドレッドタイガーの姿が露になる。
北「まだ修羅場の途中だ・・・」
  コンソールの音声レベルゲージが光り、ジェノンの声が聞こえる。
ジェノン「緊急非常システムが作動しました。衝撃吸収シールドによって危険は、回避されました」
真坂「そう言うのがあるなら先に言えよ!」
北「助けてもらったんだ、感謝しろよ」
 
○ 対峙するミッドレッドタイガーとB―COA
  B―COAの外部スピーカーから北の声が聞こえる。
北の声「大人しく降伏したほうが、後々後悔しないで済むぞ、戸田」
  ミッドレッドタイガーの外部スピーカーから、戸田の声が聞こえる。
戸田の声「こいつのミサイルを食い止めるとは、驚いた。しかし、さっきのは、ほんの序の口。
 今からセットするのは、一列に並んだビル百個分を丸ごと貫く威力のあるものだ」
北の声「こっちは、それを凌ぐ防御能力があるんだ。無駄な抵抗は、やめろ」

○ ミッドレッドタイガー・内部
  戸田、操作盤の右端にある画面のタッチパネルを操作している。
  ヘルメットについているピンマイクに話しかける戸田。薄笑いを浮かべ、
戸田「天下のポリスがつまらんはったりを・・・がっかりだな」
  
○ B―COA車内
真坂「完全に舐められてるぞ」
北「はったりだからいいんだ」
  真坂、ポカンとし、
真坂「本当に撃ち込まれたらどうするんだよ?」
  北、険しい表情を浮かべ、ハンドルについている集音マイクに話しかける。
北「これ以上、東京の道を走らせんぞ。さっさと降りてこい」
   ×  ×  ×
戸田「勝ち目もないのに調子に乗ってると、早死にすることになるぞ」
   ×  ×  ×
  真坂、憤然とし、北の前に頭を出して、喋り始める。
真坂「調子に乗ってんのは、おまえだろ!そんなガラクタ自慢して、息巻いてんじゃねぇよ」
  北、唖然とし、
北「挑発するな、馬鹿!」
   ×  ×  ×
戸田「俺の車をそこまでコケにしたのは、君らが初めてだ。今日は、そんな君らに免じて、
 都心に出るのは、よそう」
   ×  ×  ×
真坂「見ろ、俺の説得が利いたんだぜ。あれぐらいストレートじゃないと効き目がねぇんだよ」  
  北、ミッドレッドタイガーを見つめ、唖然とする。真坂も見つめる。

○ ミッドレッドタイガーの周りから分厚い赤いゴムが急速に膨らんでいる。
  やがて、車体が3m持ち上げられ、ホバークラフトに変形する。
  スピーカーから戸田の声が聞こえる。
戸田の声「道路は、やめて、海を走ることにする」
  ミッドレッドタイガー、左に回り込み、岸壁に向かって突き進む。
  岸壁をジャンプし、海に飛び込むミッドレッドタイガー。
  激しい水飛沫を上げながら、地平線に向かって走り去って行く。
  岸壁の上に立ち止まるB―COA。
 
○ B―COA車内
真坂「おい、逃げられるぞ!ヘリの時みたいに、ワイヤーフックかけて引き戻せよ」
北「相手は、何十トンもあるんだ。ワイヤーがもたん」
  海の彼方へ消えて行くミッドレッドタイガーを悔しげに見つめている二人。

○ 金下交番
  交番前の反対側の脇道に止まるB―COA。
  運転席に座る北、助手席に座る真坂の車内の様子が見える。二人、交番のほうを見つめている。
真坂の声「しばらく泳がせるんじゃなかったのか?」
北の声「戸田があの化け物に乗り込んだ以上、のんびりしてられん」

○ B―COA車内
真坂「おまえが会いに行ったところで、素直に戸田の居場所を教えるとは、思えないけどな」
北「当たり前だ。まだ、奴と戸田とのつながりを示す証拠は、何もないんだ」
真坂「じゃあ、どうするんだよ?」
北「おまえが奴をマークしてくれ」
真坂「はぁ?倉庫出る前は、俺がやるって張り切ってただろ?」
北「気が変わった。こう言うのは、得意何だろ?元探偵さん」
真坂「元々は、刑事だよ。面倒な仕事ばかり押しつけやがって」
北「じゃあ、降りろ」
  真坂、ほくそ笑むと、ドアを開ける。
  唖然とする北。
真坂「わかった。おまえを怒らすと、後で面倒な事になりそうだから、やっぱ、俺が行く」
北「車は?」
真坂「足は、自分ので十分…」
  真坂、B―COAから降り、歩道を歩き出す。 
  歩き去って行く真坂の背中を憮然と見ている北。
  暫くして、連絡用のアラームが鳴り響く。
ジェノンの声「総監から連絡です」
  北、ハンドルに設置されている通信ボタンを押す。
  右上のモニターに椎名が映る。
椎名の声「海上保安庁の巡視船が晴海付近の海に包囲網をかけたが、ミッドレッドタイガーは、見つからなかった」
  北、モニターを見つめ、
北「そんな馬鹿な…」
椎名の声「もしかしたら、あの装甲車は、ホバークラフトだけでなく、潜水艇にもなれるのかもしれんぞ」
北「海の底に隠れたとでも言うんですか?」
椎名の声「その可能性も否定できん。何か情報が入ったら、また連絡する」
北「待ってください総監。この車、いつから口を聞くようになったんです?」
椎名の声「昨日の夜、プロジェクトチームが七時間かけてセッティングした。ちょっとした実験プログラムだ。
 可愛がってやってくれ」
北「まさか、後で実験結果の報告書を提出させる気じゃあ?」
椎名の声「察しがいいな。その調子で捜査を続けてくれ」
  椎名の映る画面が消える。
北「どんな話をしても通じるのか?」
ジェノン「猥談以外ならなんでもどうぞ」
北「なぜ、女性用プログラムなんだ?」
ジェノンの声「総監の趣味だと思います」
北「適度の冗談も言えるようだな。あいつと喋るよりは、ストレスがたまらなくていいかも・・・」
  北、アクセルを踏み込み、車を発進させる。
 
○ JWA本部・総監室
  黒い革張りの椅子に座っている椎名。
  入口の扉がスライドし、ディジアが入ってくる。
  ディジア、デスクの前で立ち止まり、
ディジア「TENAと民間企業が関わったここ三年間の事件報告調書をまとめたファイルを持ってきました」
  デスクの上にファイルを置くディジア。
椎名「それで、結果は?」
ディジア「総監が仰ってた通り、暮内は、二年前に『TENA』の構成員として登録されています」
椎名「北に報告してやってくれ」
ディジア「わかりました」
  ディジア、入口に向かって歩き出すが、途中で立ち止まり、踵を返す。
ディジア「もう北さんと真坂さんは、知ってるんですか?ジェノンのこと・・・」
  椎名、ファイルのページを次々と捲っている。
椎名「さっき、北に聞かれたから、実験プログラムとだけ伝えておいたよ」
  椎名、捲るのを止め、あるページをジッと見ている。
ディジア「あのプログラムに、シェンズの記憶の一部と能力が兼ね備えられていることは・・・?」
  椎名、ページの男の写真を見つめる。名前の欄に『荒崎伸也』と書かれている。
椎名「それは、まだ言わなくてもいい・・・」
  ディジア、不安げな表情を浮かべる。
 
○ 金下交番前
  手前の交差点の横断歩道を自転車に乗った佐波が渡っている。
  佐波、自転車を止め、スタンドを下ろすと、交番の中へ入って行く。
  その向かい側のマンションの2階の通路に真坂が立っている。
  真坂、佐波の様子をまじまじと見ている。
  真坂、左手に持っているコンビニの袋からパンを出し、黙々と食べ始める。
  携帯の着メロが鳴り出す。
  真坂、携帯のディスプレイを見つめる。番号非通知になっている。電話に出る。
真坂「もしもし…」
 
○ 真坂のクルーザー内
  狭い通路を右往左往している茶髪のセミ・ロングの女。三原葉菜美(20)。
  細身だがグラマーなボディ。ピンクのシャツにショートパンツを履いている。
  リップクリームを塗りながら携帯を耳にしている。
葉菜美「朝から連絡してんのに、電源切っちゃってさ」
   ×  ×  ×
真坂「最近、そっちには戻ってないんだ」
   ×  ×  ×
葉菜美「どうして?」
   ×  ×  ×
真坂「仕事だよ」
   ×  ×  ×
葉菜美「割りの合わない仕事に必死になっちゃって。でも変。探偵社に電話しても誰も出てくれないのよね…」
   ×  ×  ×
  真坂、険しい表情を浮かべ、
真坂「皆忙しいんだよ。切るぞ」
   ×  ×  ×
  ベッドに座る葉菜美。
葉菜美「この間は、言わなかったけどさ・・・ああ、まっ、いっか・・・」
   ×  ×  ×
真坂「そう言うのイライラするんだよ。早く言え」
   ×  ×  ×
葉菜美「赤ちゃん…できるの・・・」
   ×  ×  ×
  真坂、苦笑し、
真坂「…へぇ、誰の子?」
  携帯の受話口から葉菜美の叫ぶ声が聞こえる。
葉菜美の声「おまえじゃ!」
 
○ 金下交番
  デスクに座り、調書を書き込んでいる佐波。暫くして、携帯のアラームが鳴り出す。
  佐波、静かに携帯に出る。
佐波「もしもし…」
 
○ 高速を走る巨大なコンテナを連結したトレーラー
  湾曲した坂道をスピードを上げ、下りている。
男の声「私だ。新しい仕事を用意したから取りに来てくれないか?」
   ×  ×  ×
  佐波、溜め息を漏らし、
佐波「もう勘弁してもらえませんか?」
   ×  ×  ×
  トレーラー車内。
  助手席に戸田が座っている。戸田、サングラスをかけ、携帯を耳にしている。
戸田「君が警察官であり続けるための大切な仕事だ。断れば、君は、ただの殺人犯だ」
   ×  ×  ×
佐波「暮内を殺させたのは、あんただろ?」
  受話口から戸田の声が聞こえる。
戸田の声「なら、自首して、同僚に助けを求めるがいい」
  佐波、おどおどして、深いため息を吐く。
  
○ 倉庫地下・JWA本部・ガレージ
  丸い台の上に止まるB―COA。
  運転席から北が降りている。
  暫くして、ディジアが北の前に近寄ってくる。
ディジア「サーフは?」
北「佐波をマークしてる。暮内の資料を見せてくれないか?」
ディジア「その前に見てほしいものがあるの。戸田がまた警視庁にビデオを送ってきたの」
  唖然とする北。
  二人、通路に向かって走り出す。
  
○ 同・OP司令室
  オペーレーションテーブルのモニターにミッドレッドタイガーの中にいる戸田とその左隣に赤い布で
  目隠しをされた晴樹が座っているのが映る。
戸田の声「この通り、おまえの息子は、俺と一緒にミッドレッドタイガーの中にいる」
  モニターを見ている椎名、北、ディジア。
戸田の声「君たちヘタレ刑事達は、使い物にならないので、新宿駅前を歩いているOLさんに前金の一億円を
 持ってきてもらおうか。橋本刑事さんよ、息子を助けたかったら、おまえがナンパして、女に懇願するんだ」
  戸田、嘲笑し、
戸田の声「ランチタイムきっかりにだぞ。私の仲間が監視しているからな。もし、おまえの 仲間を見かけたら、
 この子をミサイル代わりに空に打ち上げてやる・・・」
  映像が止まる。
北「運び役、どうします?」
椎名「一般人を危険に晒すわけにはいかない…」
  椎名、北、同時にディジアを見つめる。
  ディジア、二人の視線に気づき、
ディジア「えっ?」
 
○ 金下交番
  入口のドアが開き、佐波が出てくる。
  佐波、自転車にまたがり、歩道を走り出す。
  向かいのマンションの通路。
  まだ携帯で話し続けている真坂。
  真坂、佐波に気づく。
真坂「…わかった。そこまで言うなら、今晩話しつけようぜ。じゃあな」
  真坂、携帯を切ると、慌てて階段を降り始める。
 
○ 新宿駅前
  慌ただしく行き交う人の群れ。
  駅前の広場の中央に茶色のスーツを着た中年の男が立っている。橋本刑事(46)である。
  中肉中背、白髪交じりの短い髪、眼鏡をかけている。
  足下にスポーツバックが置かれている。
  左腕につけている腕時計を見つめる橋本。
  
○ 新宿界隈の市道を走るB―COA
  公園前の脇道に停車する。
 
○ B―COA車内
  運転席に座る北。
  センターコンソールの4つのモニターに駅前の様子が映し出されている。
  連絡用のアラームが鳴り響く。
ジェノンの声「サーフの携帯からです」
北「つないでくれ」
  コンソールとドアの内側につけられているスピーカーから真坂の声と激しい息遣いが聞こえてくる。
真坂の声「佐波が動き出した。今、自転車で 代々木方面に向かって進んでる」
  北、険しい面持ちになり、
北「今から新宿駅で戸田と取り引きするんだ」
  
○ 歩道を走る真坂
  真坂の100m前方を佐波の自転車が走っている。
  真坂、携帯を耳にして、歩く人の合間を縫って、必死に駆けている。
真坂「へぇー、そりゃあ、面白いことになってきたな」
  
○ B―COA車内
真坂の声「やっぱり、車借りときゃ良かったぜ」
北「自分の足のほうが信用できるんじゃなかったのか?」
 
○ 新宿駅前
  雑踏に紛れて立っている橋本。
  腕時計を見つめる。時間は、十二時ジャストを差している。
  橋本、辺りを見回し、手前を歩いてきたピンク色のスーツを着たOLの元に駆け寄って行く。
  OLと対峙する橋本。OLは、セミロングに茶髪、縁なしの眼鏡をし、少し厚化粧をして、扮装したディジアである。
橋本「お願いがあります」
  不思議そうな顔をするディジア。
  橋本、スポーツバックをディジアの前に差し出し、
橋本「息子の命がかかってるんです。これを運んでもらえませんか?」
  ディジア、困惑し、
ディジア「突然、そんなこと言われても…お昼休みあと三十分しかないし、ご飯まだ食べてないし…」
 
○ 双眼鏡からの視点
  駅前にいる橋本とディジアの様子が見えている。
  橋本、突然、その場に座り込み、ディジアに土下座している。
  辺りを歩く人々が不思議そうにその様子を見ている。
  ディジア、仕方なく、スポーツバックを受け取っている。

○ とあるビル・屋上
  青いTシャツを着た若い男が双眼鏡を覗いている。
 
○ B―COA車内
  右上のモニターにディジアがスポーツバックを持って、改札に向かって歩いている姿が映っている。
  北、それを確認すると、シフトレバーを入れ、車を急発進させる。
 
○ 代々木駅前
  雑踏の中、自転車を押して歩く佐波の姿がある。
  佐波、立ち止まり、腕時計を見つめる。
  デジタル表示の時計が「12:03」を表示している。
  佐波の後方六十メートル付近に立つ真坂。まじまじと佐波の様子を窺っている。
  真坂、携帯を耳に当て、
真坂「代々木駅に到着だ。そっちは?」
  受話口から北の声が聞こえる。
北の声「あと三十秒でディジアの乗った電車がそっちに着くはずだ」
  
○ B―COA車内
  左下のモニターにディジアの現在位置を示す地図のイメージが映し出されている。
  赤丸の発光が代々木駅向かって進んでいる。
  
○ 代々木駅・プラットホーム
  電車が止まり、一斉に扉が開く。
  車内から雪崩れ込むようにしてホームに降りてくる乗客。その中にスポーツバックを持ったディジアがいる。
  ディジア、階段を下りている。
  
○ 同・トイレ前
  ディジア、女性トイレに駆け込んで行く。
  暫くして、トイレの前に男がやってくる。
  佐波である。佐波、男性トイレの前に立ち止まり、辺りを見回している。
  やがて、ディジアが外に出てくる。ディジアと目を合わす佐波。たじろぎ、俯く。
  ディジア、佐波を一瞥すると、駆け足でその場を立ち去って行く。
  佐波、ディジアが立ち去るのを確認すると、颯爽と女性トイレの中に駆け込んで行く。
  
○ B―COA車内
  助手席のドアが開き、ディジアが乗り込んでくる。
  ディジア、かつらと眼鏡を外し、一息ついている。
ディジア「こう言うの、ひさしぶりだから、ちょっと緊張しちゃった。電車の中で男からメモを渡された」
  ディジア、北にメモを手渡す。
  メモをまじまじと見つめる北。
北「男?」
ディジア「若い会社員だった。新宿駅のホームで大柄の男に頼まれたらしいの」
北「佐波は?」
ディジア「いたわ。今頃トイレに駆け込んでるはずよ」 
  
○ 新宿駅・1Fトイレ前
  中から女性の悲鳴が聞こえてくる。
佐波の声「違う、ここに痴漢が逃げ込んだと言う情報を聞いたんで駆けつけたんだ。もう、出て行くから」
  女性トイレからスポーツバックを背負った佐波が慌てた様子で出てくる。
  佐波、辺りを見回しながら、ゆっくりと通路を歩いている。
  数メートル離れた所に置かれている自販機の陰に隠れている真坂。立ち去る佐波を見つめ、
  携帯に話しかける。
真坂「佐波がバックを持って出てきた」
  真坂、佐波を追って、ゆっくりと歩き出す。
  
○ 歩道を疾走する佐波の乗った自転車
  汗を掻きながら必死にペダルを漕いでいる佐波。籠にスポーツバックが入っている。
  
○ 金下交番
  表で自転車を止め、スタンドを立てている佐波。
  スポーツバックを持って、中に入ってくる。
  佐波、待ち構える男の背中が映る。
  佐波、男を見つめ、驚愕する。
  河口が左手に持った拳銃を佐波に向け、立っている。
  佐波を息を飲み、
佐波「約束通り、金を取りに行ったんだぞ」
河口「もう限界だろ?重荷をはずしてやる」
  河口、引き金を引く。佐波の右腕に銃弾が貫通する。その場に倒れる佐波。
  河口がまた引き金を引こうとした瞬間、窓ガラスが割れる。河口の左肩に銃弾が当たる。
  のけ反る河口。外を見つめる。
  割れたガラスの向こうに両手で銃を構えた真坂が立っている。
真坂「銃を下ろせ、デカザル野郎…」
  河口、透かさず、真坂に拳銃を向け、発砲する。真坂、前転し、弾をかわす。
  弾切れになり、拳銃をその場に投げつける河口。スポーツバックを持ち、外に走り出て行く。
  
○ 同・前
  急スピードで真坂の前に近づいてくるワゴン。真坂、地面を転がり、突進してくるワゴンを避ける。
  ブレーキを鳴らし、立ち止まるワゴン。
  後ろのドアがスライドして開き、河口が乗り込む。間髪入れず、素早く走り去って行くワゴン。
  暫くして、B―COAがやってくる。
  立ち止まるB―COAに近づいて行く真坂。助手席からディジアが降りてくる。
  真坂、ディジアと対峙し、
真坂「佐波が撃たれた。救急車を呼んでやってくれ」
ディジア「わかった」
  真坂、B―COAに乗り込む。ディジア、
  交番に向かって駆け出す。
  ドアが閉まると共に、急発進するB―COA。
  
○ B―COA車内
  ハンドルを握る北。助手席に真坂が座っている。
北「どこを撃たれた?」
真坂「かすり傷だ。心配すんな」
北「TENAなんかに利用されやがって、あの馬鹿・・・」
  真坂、失笑し、
真坂「この間の俺みたいだな」
  北、寡黙に前を向いている。
  
○ 市街の交差点
  信号を無視して右に曲がるワゴン。
  両方から走ってきた車が立ち止まり、立ち往生している。
  暫くして、B―COAも交差点に進入。
  立ち止まる車を避けながら、右に曲がる。

○ ワゴンのトランクのドアが開く
  マシンガンを構える二人の男。走ってくるB―COAに向けてマシンガンを撃ち放つ。
  ボンネットやフロントガラスに激しく当たる弾丸。だが、火花を散らしながら跳ね返している。
  
○ B―COA車内
  真坂、大笑いしている。
真坂「無駄、無駄!」
  険しい表情の北。
  フロントガラス越しに見えるワゴンのトランクの中の様子。左側の男がしゃがみこみ、
  ロケットランチャーを構えている。
  真坂、焦った様子で、
真坂「おい、あれぐらいは、耐えられるよな?」
  モニターに男が持つロケットランチャーが映り、データの写真と照合し始める。
  コンソール上に設置されているレベルケージが光る。
ジェノン「ロシア製60mmロケットランチャーです。装甲強度レベルを「7」にセットしてください」
  北、パネルのボタンを操作し、
  
○ 男が構えているロケットランチャーからミサイルが発射する
  ミサイルは、勢い良く飛び出し、B―COAのボンネットに命中する。激しい炎がB―COAのボディを包み込む。
  しかし、暫くして、炎は、瞬く間に消える。
  
○ B―COA車内
真坂「すげぇ・・・」
北「まだ俺達の技術力を馬鹿にするのか?」
真坂「いや、こいつなら、あの装甲車にも楽勝するような気がしてきた」
北「やっぱり、おまえは、好きになれん」
真坂「なんで?」
  
○ 海岸線を走るワゴン
  その後を追うB―COA。
  対向車線から巨大なトレーラーがやってくる。ワゴンが通り過ぎた後、
  道を塞ぐようにして立ち止まるトレーラー。
  B―COA、急ブレーキをかけ、立ち止まる。
  コンテナの扉が開き、中からミッドレッドタイガーがバックしながら降りている。
  ミッドレッドタイガーそのまま、B―COAに向かってゆっくりと走り始める。
  
○ B―COA車内
  フロントガラス越しから迫ってくるミッドレッドタイガーを見つめる北と真坂。
  圧倒されている二人。
  ミッドレッドタイガーの外部スピーカーから戸田の声が聞こえる。
戸田の声「わざわざ殺されにやってくるとは、素晴らしい度胸だ」
真坂「わざわざおまえを捕まえに来てやったんだぜ」
戸田の声「言葉に気をつけろ。おまえの一言は、癪に障る」
北「(真坂に)そうだ。余計なこと喋るな」
  真坂、悔しげに黙り込む。
戸田の声「…この間使い損ねたスペシャルミサイルの的になってもらおうか。
 滅多に手に入らない貴重な一発だ。ありがたく受け取れ」
  ミッドレッドタイガーの砲台が音を立てて動きだし、B―COAのほうに傾く。
真坂「やべぇ、なんとかしろ!」
  北、シフトレバーを「R」に入れ、アクセルを踏み込む。
  
○ 後輪をスピンさせ、勢い良くバックを始めるB―COA
  ミッドレッドタイガーとの距離がどんどん離れて行く。
  砲台からミサイルが発射される。
  
○ B―COA車内
  真坂、前を見て、驚愕し、喚き出す。
真坂「マジやべぇ、超やべぇ!」
  北、必死の表情で後ろを向き、バックさせている。
  コンソール上に設置されているレベルゲージが光る。
ジェノン「シールドを使用してください。電磁システムでミサイルの進路方向を変えることができます」
真坂「だから、そういうことができるんなら、さっさと言えって!」
北「さっさとボタンを押せ」
  慌てて、コンソールのパネルのボタンを探し始める真坂。
  「SHOCK ABSORPTION SHIELD」のボタンを押す。
  
○ B―COAの先端部
  車体の下からシールドが這い上がり、高さ3m程伸びて、車の前面を覆う。
  シールドの表面が緑色の電磁パルスに覆われる。
  向かってきたミサイルがシールドに当たる直前に90度方向を変え、空に向かって垂直に飛び上がって行く。
   
○ B―COA車内
  モニターに空に上がっていくミサイルの様子が映し出されている。
  モニターを見て笑い出す真坂。
真坂「ハハ、宇宙でさまよってろ!」
  北、ブレーキを踏み、車を止める。
  北、モニターを見つめ、
北「本当にミサイルの方向を変えたのか?」
真坂「おまえ、この機能のこと知らなかったのかよ?」
北「乗り始めてから間もないんだ」
真坂「オペレーター失格だな」
北「お前に言われたくないね」
ジェノン「お二人とも興奮しないで。先程ミッドレッドタイガーを分析しました」
  モニターにミッドレッドタイガーのイメージが映る。
  左の前輪のタイヤにズームアップする。
ジェノン「エンジンは、左側にあります。前輪をワイヤーで固定して、動きを封じ込めてから『V』ショックで
 エンジンを停止させてみては、いかがでしょう?」
真坂「…俺も今それを考えてたところだ」
北「嘘つくな!」
  北、シフトレバーを「D」に入れる。
  
○ ゆっくりと走行し始めるミッドレッドタイガー
  B―COAも装甲車に向かって、突進し始める。
  
○ B―COAの前バンパーのフレームが開く
  格納庫からフックのついた太いワイヤーが勢い良く飛び出す。
  ワイヤーは、ミッドレッドタイガーの左前輪に絡みつく。前進するタイヤにワイヤーがへばりつき、
  回転ができず、煙が上がる。
  ワイヤーから青白い発光と共に電流が流れ出す。
  
○ ミッドレッドタイガーのエンジン部
  強い電流がエンジンに流れている。
  
○ ミッドレッドタイガーの底部から白い煙が上がる
  エンジンが停止する。
  ミッドレッドタイガーの前に立ち止まるB―COA。真坂が車から降り、銃を構えながら、
  ミッドレッドタイガーの上部に駆け上がって行く。
  
○ ミッドレッドタイガー・内部
  ハッチが開く。ハッチの穴から銃を構えた真坂の姿が見える。真坂を中を覗き、唖然とする。
  中には、人の気配はない。
  
○ 病院・治療室
  椅子に座っている佐波。
  そのそばにディジアが立っている。
ディジア「じゃあ、あなた以外に五人の警官がTENAに雇われてるって言うの?」
佐波「ああ。戸田は、警察の動きを熟知してる・・・」
ディジア「戸田は、警視庁の警察官の子供を誘拐したのよ」
  唖然とする佐波。
佐波「じゃあ、さっきの鞄の中身は…」
ディジア「その身代金よ」
  ディジアの腕時計が赤く発光する。
  ディジア、それに気づき、
ディジア「ちょっと待ってて・・・」
  ディジア、外に出て行く。
  愕然とする佐波。
  
○ B―COA車内
  ハンドルを握る北。ハンドルに設置されているスピーカーに話しかけている。
北「ミッドレッドタイガーには、誰も乗っていなかった。遠隔操作されていたんだ」
  
○ 病院・玄関口
  携帯を持ち、話をしているディジア。
北の声「佐波が何か知ってるかもしれない。戸田の情報を聞き出してくれないか?」
ディジア「わかった」
  
○ 同・治療室
  部屋に入ってくるディジア。
  佐波の姿が消えている。
  
○ B―COA車内
  スピーカーからディジアの声が聞こえてくる。
ディジアの声「佐波が病院から消えたわ・・・」
 北、唖然とし、
北「なんだって?」
ディジアの声「ごめんなさい…私、佐波に誘拐の事を喋っちゃった」
  北、ハッと閃き、突然、ブレーキを踏み込む。

○ 市道
  白い煙を上げ、スピンターンするB―COA。そのまま、逆方向に走り始める。

○ B―COA車内
  助手席の真坂、体を揺さぶられている。
真坂「なんだよ、いきなり!」
北「戸田が脱走した時に乗りこんだRV車が逃げ込んだビル・・・あそこが奴らのアジトだ」
真坂「じゃあ、佐波は、そのビルに?・・・」
  北、険しい表情でアクセルを踏み込む。
  低く音で唸るエンジン。
  
○ 雑居ビル・4F
  解体前の古びたフロア。廃材があちこちに積まれている。
  奥の窓辺にあるテーブルに座る戸田。その後ろに河口が立っている。
  スーツケースの中に収納されているコントロールシステムのキーボードを叩いている戸田。
  ディスプレイに映るミッドレッドタイガーのイメージ。画面が静止したままである。
  戸田、キーボードを拳で殴りつけ、
戸田「クソ!」
河口「これじゃあ、捕まり損だな。戸田さんよ」
戸田「面倒臭いが、また作るさ。もっとどでかいのをな」
  スーツケースを叩き付けるように閉める戸田。
  コンクリートの上を足音を立てながら歩いてくる佐波。
  足音に気づき、佐波を見つめる二人。
  河口、スーツの中のホルダーから銃を出し、佐波に銃口を向ける。
  佐波、立ち止まり、二人と対峙する。
佐波「子供を離してやれ」
戸田「なぜその事を知ってる?」
佐波「遅かれ早かれおまえ達は捕まる」
河口「やけに威勢が良いじゃないか。普段からそれぐらいの正義感があれば、
 「TENA」に入る必要もなかったのにな」
佐波「そうだ、俺は、気の弱い駄目駄目の警官だ。だから、最後ぐらい警官らしい事をする」
  戸田、河口、顔を合わせ、大笑いする。
戸田「じゃあ、あのガキより先に昇天させてやるよ」
  河口、撃鉄を起こし、佐波の額に銃口を向ける。
  
○ 同・ビル前
  B―COAが脇道に立ち止まる。
  
○ B―COA車内
  北、ジェノンに呼びかける。
北「ビルの中に人がいないか確認できるか?」
ジェノン「生命熱源スキャン装置を起動させてください。ボタンは、ハンドル中央部のパネルの上から二つ目です」
  北、ボタンを押す。
  マルチモニターにビルのイメージが映る。4Fのフロアに三人の人間の熱反応。
  さらに、5Fにもう一人の人間の熱犯の反応が感知される。
  4Fにいる一人の人間のイメージが激しく動き回り始める。それを追うもう一人の人間のイメージ。
  右手から高い熱反応が見られる。
  真坂、モニターを見つめ、
真坂「佐波が銃で襲われてるんだ」
  真坂、銃を右手に持ち、急いで車から降りる。
  北、ハンドルの左そばにあるシステムボードの『WIRE』のボタンを押す。
  
○ B―COAの前バンパーから空に向かって垂直に飛び上がるフックつきのワイヤー

○ 雑居ビル・4F
  窓を貫くフック。
  ガラスの割れる音に気づき、振り返る戸田。
  フックの先端についている放射口から戸田に向かって空気砲が発射される。
  戸田、空気砲を体に受け、その衝撃で弾き倒される。
  廃材の陰に身を隠す佐波。
  その奥に銃を構えた河口がいる。
  河口、佐波を見つけ、銃を発射する。
  佐波の右の脇腹に弾丸が当たる。
  倒れる佐波。
  河口、佐波に歩み寄る。瞬間、河口の背後に真坂が表われる。真坂、両手で銃を構え、引き金を引く。
  河口の背中に弾が当たる。
  河口、微動だにせず、すかさず振り返り、真坂に銃口を向ける。
  真坂、河口、同時に引き金を引く。
  フロアに鳴り響く二つの銃声。
  河口の腹に弾が貫通している。河口、そのまま前のめりに倒れる。
  真坂、河口の胸倉を掴み、引っ張り上げ、
真坂「おら、まだ死ぬなよ。TENAの親玉は、どこだ?なんか言え!」
  意識もうろうとしている河口。 
  真坂、物凄い形相で河口の体を揺さぶる。やがて、河口の首を両手で絞める。
北の声「真坂!」
  河口を睨みつけている真坂。背後に北が立っている。
北「早く子供を助けてやれ」
  いやいや河口から手を離す真坂。立ち上がり、北を睨みつけながら、階段に向かって走り出す。
  北、佐波の元に駆け寄って行く。
  
○ 警察病院・2F個室(翌日)
  ベッドに横になっている佐波。
  その前に北が立っている。
佐波「暮内を殺したのは、俺だ…」
  北、落胆し、顔を俯ける。
佐波「一年前、公園で暴れていた少年達を止めて、注意したんだ。ところが奴ら、それを逆恨みして、
 交番に押しかけてきやがった。その時、俺は、重傷を負った…」
北「…頬の傷は、その時に」
  頷く佐波。
佐波「その後、精神科に通うようになって、暮内と知り合ったんだ」
北「…」
佐波「暮内に誘われてTENAの構成員になり、警察の犯罪者データの資料を持ち出した。
 だが、その途端、暮内は、俺を脅迫し始めた。おまえのやった事を警察に密告するって言って…」
北「…」
佐波「嬉しいよ、俺…」
北「何が?」
佐波「特別捜査官なんだろ?」
北「…」  
佐波「おまえなら世の中をマシな方向へ変えられる…」
  北、険しい表情を浮かべる。
  
○ 倉庫地下・JWA本部・通路
  真坂とディジアが歩いている。
真坂「結局、佐波は、警官に向いてなかったってことか・・・」
ディジア「でも、人の心の弱さを利用するなんて、許せないわね・・・」
真坂「早く親玉を見つけて、市中引き回しにしてやるよ」
ディジア「ねぇ、この間言ってたピザ屋、連れてってよ」
真坂「ピザ嫌いだって言わなかったっけ?」
ディジア「駄目?」
真坂「今晩、用事が・・・」
ディジア「せっかくその気になったのに・・・」
真坂「わりぃ・・・」
  ディジア、ふくれっ面の真似をして、足早に立ち去って行く。
  真坂、左の通路に入って行く。
  通路の壁にある小窓の向こうにガレージに止まるB―COAの様子が見える。
  真坂、ふと、小窓を見つめ、立ち止まる。
  B―COAの運転席に椎名が座り、センターコンソールに向かって親しげに喋りかけている。
  真坂、その様子を見つめ、苦笑いし、
真坂「あのおっさん、ああ言うのが趣味か・・・」
  真坂、首を傾げ、その場を歩き去って行く。
  
                                                        ―THE END―

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